遊戯王ARC―V TAG FORCE VS   作:鉄豆腐

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今回からアクションフィールド関連が整理させています。今まではフィールド自体に効果のみが適用される、ルール介入型だったのですが、今回よりフィールドを離れないルール効果を持ったフィールド魔法に変更です。因みにフィールド書き換えは適用され、書き換えた後のフィールド魔法が破壊されれば元のアクションフィールドへと戻ります。


第109話 振り切った限界をまた乗り越えて

始まった榊 遊矢VS沢渡 シンゴ。2人のエンタメデュエリストのアクションデュエル。祭舞台を中心としてフィールドに青白く輝くブロックが並ぶ中、遊矢は思考する。

このデュエルは目眩まし、看守達も巻き込んで目をこちらに向け、その間に交流戦で警備が手薄となった別室のエヴァとセレナを救出後、ダクトからの抜け道で脱出するように零児が策を走らせている。彼がいれば心強い。

手を抜くつもりは毛頭無いが、その為にも全力のエンタメデュエルを見せねばならない。

 

「さぁ、野郎共!俺を見ろ!俺のターン!」

 

先攻を取ったのは沢渡だ。ダン、と力強く地を蹴りながら走り、ソリッドビジョンで形成されたブロックを駆け上がる。その物珍しさに観客達は興味深そうにフィールドに目を向ける。

 

「俺は永続魔法、『修験の妖社』を発動!そして『魔界劇団-エキストラ』を召喚!」

 

魔界劇団-エキストラ 攻撃力100

 

現れたのは円盤状の投影機から写し出される3体の隻眼の悪魔。まずは落ち着いてエキストラからの登場だ。何事も焦りは禁物。エンタメデュエリストならば尚更気をつけねばならない。

 

「エキストラをリリースし、デッキの『魔界劇団-ダンディ・バイプレイヤー』をセッティング!更に『魔界劇団-ワイルド・ホープ』もセッティングだ!これでレベル3から7までのモンスターを同時に召喚可能!ペンデュラム召喚!『魔界劇団-プリティ・ヒロイン』!」

 

魔界劇団-プリティ・ヒロイン 守備力1000

 

沢渡の背後に髭をたくわえ、ラッパを鳴らす老人とハットを被り、光線銃を持った新入りが現れて光の柱に包まれ、上空に線を結んで光の魔方陣を描き出す。早速ペンデュラム、観客達がお祭り騒ぎで盛り上がる中、登場したのは可愛らしい『魔界劇団』の姫君だ。

 

「ダンディ・バイプレイヤーの効果でエクストラデッキのエキストラを回収、カードを1枚セットし、ターンエンドだ」

 

沢渡 シンゴ LP4000

フィールド『魔界劇団-プリティ・ヒロイン』(攻撃表示)

『修験の妖社』セット1

Pゾーン『魔界劇団-ダンディ・バイプレイヤー』『魔界劇団-ワイルド・ホープ』

手札1

 

沢渡のターンが終了し、遊矢のターンへ、見た所沢渡の手札は良くも無く、悪くも無くと言った様子だろう。それにしても『魔界劇団』と『妖仙獣』を合わせたデッキとは。相性が良いとは余り言えないが、彼の事だ。何とかして来るだろう。それとも複数のカテゴリを投入した遊矢やコナミのデッキに対抗したのかもしれない。

 

「さぁ、お前のターンたぜ?カードを引きな!」

 

「ああ!俺のターン、ドロー!俺は『EMシルバー・クロウ』と『EMゴムゴムートン』の2体でペンデュラムスケールをセッティング!これでレベル2から4のモンスターを同時に召喚可能!揺れろ、魂のペンデュラム!天空に描け光のアーク!ペンデュラム召喚!『EMヘイタイガー』!」

 

EMヘイタイガー 攻撃力1700→2000

 

今度は遊矢のペンデュラム召喚、振り子の軌跡で現れたのは赤い軍服を着用した虎の兵士だ。腰からサーベルを引き抜き、果敢に吠える。

 

「シルバー・クロウのペンデュラム効果で俺の『EM』モンスターの攻撃力は300アップ!バトルだ!ヘイタイガーでプリティ・ヒロインに攻撃!」

 

ヘイタイガーがサーベルを振るい、プリティ・ヒロインの鞭を捌きながら前進、見事その懐に飛び込む。しかしそれはプリティ・ヒロインの仕掛けた罠。ヘイタイガーが歩み寄った所に鞭を振るい、その頭に命中――だがヘイタイガーとて負けていない。デフォルメされて隠されているが、ヘイタイガーは獰猛な肉食獣。その鋭い牙で鞭を噛み切り、サーベルで一閃、プリティ・ヒロインをエクストラデッキに送り込む。

 

「ひゅう、やるねぇ。だがプリティ・ヒロインの効果でデッキの魔法カード、『魔界台本「魔王の降臨」』をセットするぜ」

 

「俺もヘイタイガーの効果でデッキの『EMペンデュラム・マジシャン』をサーチ!」

 

互いにこれは前哨戦、モンスターが破壊された事を機に、カードを呼び込む。勝負は次のターンからと言う事か。ニヤリと笑みを浮かべながらフィールドを駆け抜ける。

 

「モンスターとカードをセット、ターンエンドだ」

 

榊 遊矢 LP4000

フィールド『EMヘイタイガー』(攻撃表示)セットモンスター

セット1

Pゾーン『EMシルバー・クロウ』『EMゴムゴムートン』

手札2

 

「俺のターン、ドロー!ペンデュラム召喚!『魔界劇団-プリティ・ヒロイン』!『光帝クライス』!」

 

魔界劇団-プリティ・ヒロイン 攻撃力1500

 

光帝クライス 攻撃力2400

 

再び揺れ動くペンデュラム。今回現れたのはプリティ・ヒロインと黄金に輝く甲冑を纏った皇帝だ。帝に『魔界劇団』、『妖仙獣』。今までの沢渡のデッキを纏めて混合したかのようなデッキだ。ダーツ?知らない子ですね。

 

「クライスの効果!ダンディ・バイプレイヤーとワイルド・ホープを破壊し、2枚ドロー!」

 

沢渡 シンゴ 手札1→3

 

「更に破壊されたワイルド・ホープの効果で『魔界劇団-ファンキー・コメディアン』をサーチするぜ!」

 

これこそが沢渡の持つ強力な手札補充のドローエンジン。遊矢の『EMギタートル』と『EMリザードロー』とも言うべき黄金パターン。クライスターボ。ここにワイルド・ホープが加わる事で3枚のカードを回復出来るのだ。

 

「まだだ!リバースカードオープン!魔法カード、『魔界台本「魔王の降臨」』を発動!自分フィールドの攻撃表示で存在する『魔界劇団』の数まで相手フィールドの表側表示のカードを破壊!『EMゴムゴムートン』を破壊!」

 

「ッ!」

 

アタッカーであるヘイタイガーでも、攻撃力アップのシルバー・クロウでも無く、戦闘破壊を防ぐゴムゴムートンの破壊。成程、どうやら沢渡には攻撃力2000になったヘイタイガーを処理する方法があるのだろう。だから戦闘耐性とスケールを割る意味でもこちらを選んだのだ。折角攻撃に備えようとしていたのだが、そう上手くいかないか。これならば手早く『EMペンデュラム・マジシャン』を召喚していれば良かった。

 

「そして『妖仙獣木魅』を召喚!」

 

妖仙獣木魅 攻撃力0

 

風に吹かれ、登場したのは木の葉で身を包んだバレーボールサイズの目玉のモンスター。血走った眼をギョロギョロと動かす姿は不気味であるが、その小柄なサイズを見ると可愛らしくも見える。

 

「『修験の妖社』に妖仙カウンターが乗る」

 

修験の妖社 妖仙カウンター0→1

 

「そして木魅をリリース、『修験の妖社』にカウンターを3つ乗せるぜ!」

 

修験の妖仙社 妖仙カウンター1→4

 

「妖仙カウンターを3つ取り除き、デッキの『妖仙獣凶旋嵐』をサーチ!」

 

修験の妖社 妖仙カウンター4→1

 

「木魅を墓地から除外し、俺はもう1度『妖仙獣』の召喚権を得る!プリティ・ヒロインをリリース、アドバンス召喚!『妖仙獣凶旋嵐』!」

 

妖仙獣凶旋嵐 攻撃力2000

 

修験の妖社 妖仙カウンター1→2

 

次に現れたのは禍々しい瘴気を放つ漆黒の鎌鼬。巨大な赤い数珠を首から下げ、ボロボロのマフラーを風に揺らし、鋭い牙が並ぶ口から長い舌を出し、鎌刀を舐めるその姿は不気味で恐ろしい。

 

「凶旋嵐の召喚時、デッキの『妖仙獣閻魔巳裂』を特殊召喚!」

 

妖仙獣閻魔巳裂 攻撃力2300

 

修験の妖社 妖仙カウンター2→3

 

お次は僧の姿をし、頭に2本の角を伸ばし、巨大な刀を持った獣人だ。成程、確かにこれならばヘイタイガーを倒す事が出来る。

 

「バトルだ!閻魔巳裂でヘイタイガーに攻撃!」

 

榊 遊矢 LP4000→3400

 

閻魔巳裂がその大刀を力任せに振るい、ヘイタイガーへと襲いかかる。だがヘイタイガーがその並外れた脚力で地を蹴り、俊敏な動きで閻魔巳裂を翻弄、細く鋭いサーベルで閻魔巳裂を突き刺そうとするも――ガキン、閻魔巳裂の鋼鉄の肉体を前にポッキリと真っ二つに折れてしまう。まさかの展開にその場に固まって瞠目するヘイタイガー。瞬間、閻魔巳裂はニィッ、と頬が破けんばかりに獰猛で好戦的な笑みを浮かべ、その大刀を目にも止まらぬ速度でヘイタイガーへと振り下ろし、ヘイタイガーが光の粒子となって砕け散る。

 

「凶旋嵐でセットモンスターへ攻撃!」

 

「セットモンスターは『EMインコーラス』だ!戦闘破壊された事でデッキの『EMロングフォーン・ブル』をリクルート!」

 

EMロングフォーン・ブル 守備力1200

 

続けて凶旋嵐が狂ったように笑い声を上げながら鎌刀に身を任せるように振りまくり、セットモンスターを切り刻もうとする。セット状態からチラリとフィールドを覗き、慌てて捕食者から逃げるインコーラス。3羽で飛翔して音波を放った後、遊矢のエクストラデッキへと逃げ込む。そして電波を受信し、登場したのは角に受話器をかけた青い牡牛。その効果で更に次のモンスターに連絡する。

 

「特殊召喚時、『EMセカンドンキー』をサーチする!」

 

「チッ、後続を残したか……ま、そうで無くちゃ面白くねぇ。俺はファンキー・コメディアンをエキストラをセッティング!カードを1枚セットし、ターンエンド。この瞬間、特殊召喚した閻魔巳裂を手札に戻す」

 

沢渡 シンゴ LP4000

フィールド『妖仙獣凶旋嵐』(攻撃表示)『光帝クライス』(攻撃表示)

『修験の妖社』セット2

Pゾーン『魔界劇団-ファンキー・コメディアン』『魔界劇団-エキストラ』

手札1

 

「俺のターン、ドロー!俺は『EMペンデュラム・マジシャン』をセッティング!ペンデュラム召喚!『EMインコーラス』!『EMセカンドンキー』!」

 

EMインコーラス 攻撃力500→800

 

EMセカンドンキー 攻撃力1000→1300

 

何度も続くペンデュラム合戦、今度は遊矢の番となり、2体のモンスターが呼び出される。現れたのは先程も遊矢を助けてくれた3羽のカラフルなインコとロバのモンスターだ。バッ、と遊矢は肩からかけた制服をはためかせ、セカンドンキーに跨がり移動を開始する。

 

「『EMペンデュラム・マジシャン』のペンデュラム効果で『EM』の攻撃力を1000アップ!セカンドンキーの効果で『EMドクロバット・ジョーカー』をサーチ!」

 

EMインコーラス 攻撃力800→1800

 

EMロングフォーン・ブル 攻撃力1900→2900

 

EMセカンドンキー 攻撃力1300→2300

 

「『EMドクロバット・ジョーカー』を召喚!」

 

EMドクロバット・ジョーカー 攻撃力1800→2100

 

怒濤の展開、次に遊矢のフィールドに現れたのは継ぎ接ぎだらけのシルクハットに黒い仮面、トランプのマークを散りばめた燕尾服を纏った道化師のモンスターだ。

 

「効果で『オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン』をサーチ!」

 

ドクロバット・ジョーカーがガサゴソと自身の燕尾服のポケットを漁り、ポイポイと様々な道具を出しては捨てていく。目的の物が中々見つからないのか、映画版ドラえもんのような奴である。そして漸く見つけたのは風船ガム。クッチャクッチャと何度も口の中で噛み、ぷくりと膨らませ、キュッ、キュッと器用に壊さず捻ってバルーンアートを作り出す。その姿はデフォルメされた『オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン』に酷似しており、風船は風に流され遊矢の下へ向かい、破裂して中から1枚のカードがヒラリと舞い、遊矢の手札に加えられる。

 

「バトルだ!インコーラスで凶旋嵐へ攻撃!」

 

「アクションマジック、『回避』!その攻撃を無効にするぜ!」

 

「ドクロバット・ジョーカーで凶旋嵐を攻撃!」

 

沢渡 シンゴ LP4000→3900

 

ドクロバット・ジョーカーの飛び蹴りが凶旋嵐に炸裂し、彼が乗っていたブロックから突き落とす。何ともコミカルな光景だ。

 

「ロングフォーン・ブルでクライスへ攻撃!」

 

沢渡 シンゴ LP3900→3400

 

更なる追撃が沢渡を襲う。ロングフォーン・ブルが蹄で地を蹴り、クライスに突進、破壊する。そして防御札が無いと思い、これを好機と捉えた遊矢が更に追撃をかける。

 

「セカンドンキーで攻撃!」

 

「罠発動!『ガード・ブロック』!ダメージを0にして、1枚ドロー!」

 

沢渡 シンゴ 手札1→2

 

だが沢渡は防御札が使えなかったのでは無く、使わなかっただけ。このドクロバット・ジョーカーよりも重いダメージを凌ぐ為、隠していた盾でこれを防ぐ。

 

「ターンエンドだ」

 

榊 遊矢 LP3400

フィールド『EMドクロバット・ジョーカー』(攻撃表示)『EMインコーラス』(攻撃表示)『EMロングフォーン・ブル』(攻撃表示)『EMセカンドンキー』(攻撃表示)

セット1

Pゾーン『EMシルバー・クロウ』『EMペンデュラム・マジシャン』

手札3

 

「俺のターン、ドロー!妖仙カウンターを3つ取り除き、『妖仙獣大幽谷響』をサーチ!」

 

修験の妖社 妖仙カウンター3→0

 

「罠発動!『魔界劇団の楽屋入り』!デッキの『魔界劇団-ビッグ・スター』と『魔界劇団-サッシー・ルーキー』をエクストラデッキに加える!ペンデュラム召喚!『魔界劇団-ビッグ・スター』!!『魔界劇団-ワイルド・ホープ』!『魔界劇団-プリティ・ヒロイン』!『魔界劇団-サッシー・ルーキー』!『妖仙獣閻魔巳裂』!」

 

魔界劇団-ビッグ・スター 攻撃力2500

 

魔界劇団-ワイルド・ホープ 攻撃力1600

 

魔界劇団-プリティ・ヒロイン 攻撃力1500

 

魔界劇団-サッシー・ルーキー 攻撃力1700

 

妖仙獣閻魔巳裂 攻撃力2300

 

修験の妖社 妖仙カウンター0→1

 

振り子の軌跡の下、沢渡のフィールドに5体のモンスターが姿を見せる。まずは沢渡のエースにして『魔界劇団』の大スター、メタリックで渦巻く赤髪が特徴的な隻眼の悪魔。ビッグ・スターに、劇団期待の新人コンビ、ワイルド・ホープにサッシー・ルーキー。姫君、プリティ・ヒロイン。そして最後はゲストである閻魔巳裂だ。

 

「閻魔巳裂のペンデュラム召喚時、お前のセットカードを破壊!」

 

「ッ!」

 

「ワイルド・ホープの効果!モンスターゾーンの『魔界劇団』の種類×100攻撃力をアップ!」

 

魔界劇団-ワイルド・ホープ 攻撃力1600→2000

 

「ビッグ・スターの効果でデッキから2枚目の魔王の降臨をセット、オープン!テメェのドクロバット・ジョーカー、インコーラス、シルバー・クロウ、『EMペンデュラム・マジシャン』の4枚を破壊!」

 

ビッグ・スターの背から6枚の翼が生え、その羽ばたきによる強風が遊矢のフィールドを蹂躙する。思わず遊矢もセカンドンキーから落ちそうになるが、何とか持ち堪え、セカンドンキーの背を蹴って上空に浮かぶブロックへと避難する。

 

「バトル!ビッグ・スターでロングフォーン・ブルを!閻魔巳裂でセカンドンキーへ攻撃!」

 

「アクションマジック、『ダメージ・バニッシュ』!セカンドンキーの戦闘ダメージを0に!」

 

榊 遊矢 LP3400→2500

 

悪魔と妖怪によるタッグが遊矢へと襲いかかり、彼のモンスターを破壊し尽くす。アクションマジックで防げたのも1体だけだ。そして猛攻は更に続く。

 

「さぁ、皆の衆、やってやれ!ダイレクトアタック!」

 

「させない!墓地の『光の護封霊剣』を除外し、このターンのダイレクトアタックを封じる!」

 

カカカンッ、と遊矢に向かって駆けるモンスター達の眼前に、天空より降り注ぐ光輝く剣の雨が行く手を遮る。それを見て舌打ちを鳴らす沢渡。てっきり『EMピンチヘルパー』だと思っていたが、そのイメージが強過ぎたか、やはりそう簡単にはいかないらしい。

 

「チッ、俺はカードを1枚セットし、ターンエンド。閻魔巳裂は手札に戻るぜ」

 

沢渡 シンゴ LP3400

フィールド『魔界劇団-ビッグ・スター』(攻撃表示)『魔界劇団-ワイルド・ホープ』(攻撃表示)『魔界劇団-プリティ・ヒロイン』(攻撃表示)『魔界劇団-サッシー・ルーキー』(攻撃表示)

『修験の妖社』セット1

Pゾーン『魔界劇団-ファンキー・コメディアン』『魔界劇団-エキストラ』

手札3

 

「俺のターン、ドロー!速攻魔法、『魔力の泉』を発動!相手フィールドの表側表示の魔法、罠の数までドローし、自分フィールド上の表側表示の魔法、罠カードの数だけ手札を捨てる!お前のフィールドはアクションフィールドを含めて4枚、よって4枚ドローし、俺のフィールドのこのカードとアクションフィールド2枚分を捨てる!」

 

榊 遊矢 手札3→7→5

 

「ここで手札増強と墓地肥やしか!俺程じゃねぇが、やっぱ持ってやがる……!」

 

「まぁね!更に魔法カード、『強欲で貪欲な壺』!デッキから10枚除外し、2枚ドロー!」

 

榊 遊矢 手札4→6

 

「俺は『EMブランコブラ』と『EMウィム・ウィッチ』でペンデュラムスケールをセッティング!魔法カード、『ペンデュラム・ターン』を発動し、ウィム・ウィッチのスケールを10に拡張!ペンデュラム召喚!『EMドクロバット・ジョーカー』!『EMインコーラス』!『EMペンデュラム・マジシャン』!『EMシルバー・クロウ』!雄々しくも美しく輝く二色の眼!『オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン』!!」

 

オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン 攻撃力2500

 

EMドクロバット・ジョーカー 攻撃力1800

 

EMインコーラス 守備力500

 

EMペンデュラム・マジシャン 攻撃力1500

 

EMシルバー・クロウ 攻撃力1800

 

振り子の軌跡で現れる遊矢のモンスター達。仮面の道化師に3羽のインコ、真っ赤な衣装に身を包んだ振り子のマジシャン。鋭い鉤爪を持つ銀狼。そして遊矢の頼もしいエースカード、真紅の体躯を唸らせる、オッドアイの竜だ。揃う5体のモンスター、遊矢と沢渡のペンデュラムモンスターが睨み合う。

 

「『EMペンデュラム・マジシャン』の効果!スケールを破壊し、『EMギタートル』と『EMリザードロー』をサーチ!セッティング!ギタートルの効果でドロー!リザードローを破壊し、もう1枚ドロー!」

 

榊 遊矢 手札2→3→4

 

「厄介だぜ、そのドロー……!」

 

これこそが遊矢の黄金パターン、沢渡のクライスターボに対する遊矢の対抗手だ。エクストラデッキを肥やし、新たな手札を呼び込む。ペンデュラムにとってエクストラデッキは何よりも大切なものだ。ここでの手数の多さが重要となる。

 

「俺はシルバー・クロウとドクロバット・ジョーカーでオーバーレイ・ネットワークを構築!漆黒の闇より愚鈍なる力に抗う反逆の牙!今、降臨せよ!エクシーズ召喚!現れろ!『ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン』!!」

 

ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン 攻撃力2500

 

ここで遊矢が一気に勝負に出る。彼の背後に星を散りばめた渦が広がり、道化師と銀狼が光の線となって飛び込み、渦は集束、爆発を引き起こし、黒煙が舞い上がる。そして中から赤き雷が迸り、鋭い牙が雲を引き裂く。現れたのはユートのエースカード、刃物のような牙と翼を広げ、体躯に赤い血流を走らせた黒竜だ。

 

「ダーク・リベリオンのORUを2つ取り除き、効果発動!ビッグ・スターの攻撃力を半減し、このカードに加える!トリーズン・ディスチャージ!」

 

魔界劇団-ビッグ・スター 攻撃力2500→1250

 

ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン 攻撃力2500→3750

 

ダーク・リベリオンの双翼に嵌め込まれた紅玉から赤き電流が駆け抜け、ビッグ・スターから力を吸収する。攻撃力2500分のダメージを無理矢理通す強力な効果、これで沢渡へ打って出る。

 

「まだまだ!魔法カード、『置換融合』!フィールドの『オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン』と『EMペンデュラム・マジシャン』で融合!融合召喚!出でよ!秘術ふるいし魔天の龍!『ルーンアイズ・ペンデュラム・ドラゴン』!」

 

ルーンアイズ・ペンデュラム・ドラゴン 攻撃力3000

 

エクシーズに続き、融合へ。2つのペンデュラムが重なり、現れたのは背の三日月を満月へと変え、金属で左目を覆った『オッドアイズ』の進化形態。この2体の竜で沢渡へ挑戦する。

 

「バトル!ルーンアイズでプリティ・ヒロインへ攻撃!」

 

「ここで決着をつけようってか!?冷たいじゃねぇか、ツレねぇじゃねぇか。そんな事言うなよ!罠発動!『攻撃の無敵化』!ダメージを0にし、破壊されたプリティ・ヒロインの効果でデッキの『魔界台本「魔界の宴タ女」』をセット!」

 

「くっ、やるなぁ、沢渡……!」

 

攻撃を防ぎつつ、次のターンの準備を。見事な手腕を見て、舌を巻く遊矢。そうだ、これこそが沢渡 シンゴ。遊矢と何度もぶつかり、観客達を熱狂に包み込んだエンタメデュエリスト。やはり彼とのデュエルは面白い。今もその証拠に囚人達もこのデュエルに夢中になってエキサイトしている。

 

正直、遊矢とて分かっている。エンタメデュエリストとしては、彼が上手だと。予想もつかないデュエルに言葉巧みに観客を乗せ、相手を誘導する口の上手さ。そして声援を受け、どんどん強くなる特異なスタイル。これ程までにエンターテイナーとして秀でたものはいない。デニスだってそうだろう。彼等の人の琴線に触れる力と言うものは遊矢よりも優れている。だけど――負けるつもりは毛頭無い。

 

劣っているならこのデュエルの中で、彼のデュエルを吸収して見せるまで。ニヤリ、口の端を吊り上げ、更に踏み込み、フィールドを駆ける。沢渡もまた、2人のデュエルはぶつかり合い、高め合う。際限無く、振り切った限界をまた乗り越えて。

 

「もっともっと面白く!俺はカードを2枚セットし、ターンエンド!」

 

榊 遊矢 LP2500

フィールド『ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン』(攻撃表示)『ルーンアイズ・ペンデュラム・ドラゴン』(攻撃表示)『EMインコーラス』(守備表示)

セット2

Pゾーン『EMギタートル』

手札1

 

「俺のターン、ドロー!そうだ!このデュエルでどんな名勝負も過去のものにしてやる!あのチャンピオンシップの、俺とお前の激闘も、このデュエルで塗り変える!歴史は繰り返す?違うな!どんなにスゲェ記録も、それは越える為にある!リバースカード、オープン!永続魔法、『魔界台本「魔界の宴タ女」』を発動!サッシー・ルーキーをリリースし――墓地の『魔界台本「魔王の降臨」』をセット!発動!テメェのダーク・リベリオンとインコーラスを破壊!」

 

沢渡のエンタメデュエルを表すようなカードが発動され、再び魔王の降臨が炸裂、遊矢のモンスターを蹂躙する。脅威的な爆発力、これこそが彼の『魔界劇団』の厄介な所だ。しかもこの強力な魔王の降臨が3回で終わると思いきや、再利用されると来た。流石にこれは辛い。

 

「まだだ!これだけじゃ終わらねぇ!俺はビッグ・スターの効果でデッキから『魔界台本「オープニング・セレモニー」』をセットし、ビッグ・スターとワイルド・ホープをリリース、アドバンス召喚!『怨邪帝ガイウス』!」

 

怨邪帝ガイウス 攻撃力2800

 

アドバンス召喚――最も基本の召喚法で現れたのは邪悪な魂を司る漆黒の帝王。その身に纏ったマントを靡かせ、黒く燃える霊魂を操り、遊矢へと撃ち出す。

 

「その、カードは――!」

 

「アドバンス召喚時、テメェのフィールドのカードを1枚除外する!更に闇属性モンスターをリリースして召喚された為、もう1枚も除外、更にぃ、この効果で闇属性モンスターを除外すればぁ、相手に1000のダメージを与える!ここは両方セットカードといきたい所だが――フリーチェーンだと困るからなぁ、ルーンアイズと右のセットカードを除外!これでテメェはバーンに加え、このターンを防いでも『置換融合』でドロー出来なくなるって訳よ!ナーハッハッハァッ!」

 

「ご丁寧な説明ありがとう!これだけ盛り上げられてすんなり通しちゃエンタメデュエリストの名が廃る!対象となったセットカードを発動!速攻魔法、『神秘の中華なべ』!」

 

「うそぉん!?」

 

次々と説明し、フラグを立てる沢渡に答え、見事遊矢がこの危機を回避する。発動されたのはこの状況では最も正解と言えるカードだ。

 

「ルーンアイズをリリースし、攻撃力3000分、LPを回復!」

 

榊 遊矢 LP2500→5500

 

ルーンアイズを墓地に送りつつ、LPを大量に回復、何とか難は逃れたものの、これで遊矢のフィールドががら空きになってしまった。対する沢渡にはまだペンデュラム召喚が残っている。

 

「だけどこいつはかわせるかな!?ペンデュラム召喚!『魔界劇団-ビッグ・スター』!『魔界劇団-ワイルド・ホープ』!『魔界劇団-サッシー・ルーキー』!『妖仙獣閻魔巳裂』!」

 

魔界劇団-ビッグ・スター 攻撃力2500

 

魔界劇団-ワイルド・ホープ 攻撃力1600

 

魔界劇団-サッシー・ルーキー 守備力1000

 

妖仙獣閻魔巳裂 攻撃力2300

 

修験の妖社 妖仙カウンター1→2

 

幾度も揺れ動く振り子の軌跡、遊矢が勢い良く踏み込めば、沢渡は更に力を込めて返す。繰り返す度、その軌跡は鮮やかなものになっていく。

 

「閻魔巳裂の効果でセットカードを破壊!」

 

「破壊された『運命の発掘』の効果発動!墓地のこのカードの数だけドローする!2枚ドロー!」

 

榊 遊矢 手札1→3

 

「チッ、とことん裏目に出やがる。だがこれでテメェのカードはギタートルだけ!俺はセットした『魔界台本「オープニング・セレモニー」』を発動!フィールドの『魔界劇団』モンスターの数×500回復!」

 

沢渡 シンゴ LP3400→4900

 

「まだまだ行くぜ!ビッグ・スターの効果で3枚目の魔王の降臨をセット、オォゥプン!ギタートルも破壊ィ!放置すればテメェはそれで逆転する。どんな小さな種を摘み取ってやるよ!」

 

遊矢の実力を認めているからこそ、沢渡は全力で、出し惜しみ無く遊矢を追い詰める。ランサーズ内でこれ程までに遊矢を相手に的確な手を取れる者はいないだろう。敵であったからこそ、味方であるからこそ、この2側面を充分に活かして、有利に事を運べるのだ。対榊 遊矢に関して彼以上の適役は無い。

 

「ここまで買ってくれるとはな……!益々ここで終われなくなって来たじゃ無いか!」

 

「ぬかせ!ワイルド・ホープの効果で攻撃力アップ!」

 

魔界劇団-ワイルド・ホープ 攻撃力1600→1900

 

「バトル!ビッグ・スターでダイレクトアタック!」

 

「手札の『速攻のかかし』を捨て、攻撃を無効、バトルフェイズを終了!」

 

赤いサングラスをかけ、三角帽子を被ったかかしが行く手を遮る。思わず急停止する沢渡のモンスター。彼等は急激に止まった事で崩れ、重なって身動きが封じられる。

 

「つくづく運の良い奴だ。俺様は魔法カード、『一時休戦』を発動。互いに1枚ドローし、次のターン終了までダメージを0に」

 

沢渡 シンゴ 手札1→2

 

榊 遊矢 手札3→4

 

「カードを1枚セット、ターンエンドだ。この瞬間、閻魔巳裂を手札に戻るぜ」

 

沢渡 シンゴ LP4900

フィールド『魔界劇団-ビッグ・スター』(攻撃表示)『魔界劇団-ワイルド・ホープ』(攻撃表示)『魔界劇団-サッシー・ルーキー』(守備表示)『怨邪帝ガイウス』(攻撃表示)

『魔界台本「魔界の宴タ女」』『修験の妖社』セット1

Pゾーン『魔界劇団-ファンキー・コメディアン』『魔界劇団-エキストラ』

手札2

 

フィールドを走りながらもう何度目か分からないピンチに陥る遊矢。やはり厄介なのはその核となっている『魔界台本』をサーチするビッグ・スター。だがこのカードを対処してもまだ問題はある。今の問題は――『魔界台本「魔界の宴タ女」』。このカードが有る限り、『魔界劇団』をリリースし、魔王の降臨が連発される。そうなっては押し切られるのは遊矢の方だ。

 

「俺のターン、ドロー!墓地の『置換融合』を除外、ルーンアイズをエクストラデッキに戻し、1枚ドロー!」

 

榊 遊矢 手札4→5

 

「魔法カード、『金満な壺』!エクストラデッキのギタートル、リザードロー、墓地のドクロバット・ジョーカーをデッキに戻してドロー!」

 

榊 遊矢 手札4→6

 

ドロー、ドロー、ドロー。呆れる位の3連続ドローによる手札補充で一気に遊矢の手札が6枚まで膨れ上がる。当然そのデメリットも重い。このターン、遊矢はペンデュラム召喚しか行えないのだ。

 

「『EMドクロバット・ジョーカー』を召喚!」

 

EMドクロバット・ジョーカー 攻撃力1800

 

「戻したカードを直ぐに引くかよ……」

 

「召喚時に『EMギタートル』をサーチ!リザードローと共にセッティング!ギタートルのペンデュラム効果でドロー!リザードローを破壊し、もう1枚ドロー!」

 

榊 遊矢 手札4→5→6

 

「『EMダグ・ダガーマン』をセッティング!ペンデュラム効果で『EMヘイタイガー』を回収し、ペンデュラム召喚!『EMペンデュラム・マジシャン』!『EMヘイタイガー』!『EMインコーラス』!『刻剣の魔術師』!」

 

EMペンデュラム・マジシャン 攻撃力1500

 

EMヘイタイガー 攻撃力1700

 

EMインコーラス 守備力500

 

刻剣の魔術師 攻撃力1400

 

ここで召喚されたのは赤いマジシャンと虎の兵士、3羽のカラフルなインコと剣を持った少年『魔術師』。

 

「まずは『EMペンデュラム・マジシャン』の効果でこいつとダグ・ダガーマンを破壊し、『EMカレイドスコーピオン』と『EMラディッシュ・ホース』をサーチ!カレイドスコーピオンをセッティングし、速攻魔法、『揺れる眼差し』を発動!互いのペンデュラムゾーンのカードを全て破壊!『EMモモンカーペット』をサーチ!『魔界台本「魔界の宴タ女」』を除外!」

 

サーチ、除外と2つの効果が炸裂し、沢渡のフィールドを崩していく。これで厄介な魔界の宴タ女を除去した。後はビッグ・スターのみ。このカードはペンデュラムモンスター。破壊しても次のターン、沢渡がスケールを揃えれば再び現れる。ならば――。

 

「刻剣の効果!このカードとビッグ・スターを除外!」

 

刻剣がその剣で次元を裂き、ビッグ・スターを連れて次元の裂け目へ飛び込む。これで魔王の降臨による全体破壊を封じた。残るはモンスター、ガイウスの打点が驚異的だが、その対策も手札に呼び込んでいる。

 

「『EMモモンカーペット』と『EMラディッシュ・ホース』をセッティング!そしてラディッシュ・ホースのペンデュラム効果!『EMドクロバット・ジョーカー』の攻撃力分、ガイウスの攻撃力をダウン!」

 

怨邪帝ガイウス 攻撃力2800→1000

 

ペンデュラムゾーンに現れたラディッシュ・ホースが大根の角を飛ばして弾けさせ、ガイウスを弱体化させる。見事な逆転劇。遊矢の快進撃は止まらない。

 

「バトル!ヘイタイガーでガイウスに攻撃!」

 

ヘイタイガーがサーベルを抜き、ガイウスの黒炎を切り払いながら突き進む。しかし帝王は弱体化しても帝王。残る力を振り絞り、サーベルを拳で砕く。空中で舞い、バラバラになるサーベルの破片。その煌めく鏡面のような刀身が写したのは――長銃を構えるヘイタイガーの姿。ズドンッ、と重い音が響き、ガイウスが倒れ伏す。

 

「ヘイタイガーの効果で『EM小判竜』をサーチ、魔法カード、『打出の小槌』を発動し、手札を入れ替え、カードを3枚伏せ、ターンエンドだ」

 

榊 遊矢 LP5500

フィールド『EMドクロバット・ジョーカー』(攻撃表示)『EMヘイタイガー』(攻撃表示)『EMインコーラス』(守備表示)

セット3

Pゾーン『EMモモンカーペット』『EMラディッシュ・ホース』

手札0

 

加速していく2人のデュエル。振り子を波のように、押しては返す。続く沢渡のターン、彼は一体どんな手を取り、遊矢を、そして観客達を驚かせ、楽しませてくれるのか、上がるハードル、だけどきっと、彼は難なくそれを乗り越えるだろう。その為に――遊矢はカードを伏せ、沢渡を迎え撃つ。

 

「さぁ、遊矢!俺様のエンタメデュエル、その目に焼きつけやがれ!」

 

「かかって来い!沢渡!俺はそれを、乗り越える!」

 

互いに不適な笑みを浮かべ、激闘に更なる拍車をかける。まだまだデュエルは始まったばかり――。

 




魔界劇団妖仙獣帝書くのクッソ楽しい……。

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