遊戯王ARC―V TAG FORCE VS   作:鉄豆腐

115 / 202
島君とモブハノイの完璧なデュエルを見て大爆笑。現実でも使ってみたいですね、完璧な手札(震え声)。
ところでサモン・ソーサレスのお陰で100%1キル可能なデッキが生まれてしまったとか。……定期講読しようかなぁ……(遠い目)。


第110話 俺、カードに選ばれスギィ!

地獄とも言える収容所で繰り広げられる、アクションデュエルと言う名のエンターテイメント。観客達が魅了され、熱狂して声を上げる。囚人も、看守も、熱に浮かされたように――遊矢と沢渡の対決に見入っている。一瞬たりとも目を放すまいと、彼等を惹き付けて止まない。

 

「もっともっと盛り上げてやるぜ!俺のターン、ドロー!俺はサッシー・ルーキーをリリースし、アドバンス召喚!『光帝クライス』!」

 

光帝クライス 攻撃力2400

 

再び、沢渡のフィールドに現れる黄金の皇帝。仕掛けて来る。遊矢はグッ、と拳を握り締めて身構える。

 

「さぁ、黄金劇場の幕を上げろ!クライスとワイルド・ホープを破壊し、2枚ドロー!」

 

沢渡 シンゴ 手札2→4

 

「更にぃ、ワイルド・ホープの効果で『魔界劇団-ダンディ・バイプレイヤー』をサーチ!良いカードを引いたぜ。いや、引き込んだと言うべきか!魔法カード、『貪欲な壺』を発動!墓地の『妖仙獣凶旋嵐』、『妖仙獣木魅』、『光帝クライス』2体、『怨邪帝ガイウス』をデッキに戻し、2枚ドロー!」

 

沢渡 シンゴ 手札4→6

 

遊矢に比肩する程のドローラッシュ、それにより、沢渡の手札が見る見る内に回復する。準備は整った。ドローした2枚を見て、沢渡の口角が持ち上がる。

 

「やっぱ俺、カードに選ばれスギィ!俺は魔法カード、『妖仙獣の神颪』を発動!自分フィールドにモンスターが存在しない場合、デッキの『妖仙獣右鎌神柱』、『妖仙獣左鎌神柱』をセッティング!」

 

「1枚で2枚の交換……!って言うか、そのカードが来たって事は……!」

 

沢渡の背に現れる2本の柱、そのカードの登場に遊矢が瞠目し、口元を緩ませる。本当にこの男は――面白いデュエルをしてくれる。

 

「右鎌神柱のスケールを11に変更!」

 

右鎌神柱と左鎌神柱、2つの柱が1つの鳥居となり、その奥が異次元に繋がり、木の葉を巻き上げる突風が吹き荒れる。鳥居の奥から覗くは獰猛なる唸り声と爛々と赤く輝く獣の眼。来る、来る、来る。鳥肌が止まらない。アドレナリンが放出しっぱなし、熱き血が加速して流れる。心臓が早鐘を打つ。エンターテイメントが、昇華する――。

 

「ペンデュラム召喚!『妖仙獣閻魔巳裂』!烈風纏いしあやかしの長よ。荒ぶるその衣を解き放ち、大河を巻き上げ大地を抉れ!出でよ、『魔妖仙獣大刃禍是』!!」

 

魔妖仙獣大刃禍是 攻撃力3000

 

妖仙獣閻魔巳裂 攻撃力2300

 

修験の妖社 妖仙カウンター 2→3

 

獣が飛び出す。風を纏う、いや、風で作られた一角獣が。フィールドに君臨し、雄々しき咆哮を上げ、天を裂く。『妖仙獣』、最強のモンスター、沢渡 シンゴ、第2のエースモンスターが登場した。

 

「大刃禍是……!」

 

「さぁ、効果発動だ!閻魔巳裂の効果で『EMインコーラス』を破壊!大刃禍是の効果でヘイタイガーとドクロバット・ジョーカーをバウンス!ここで発動!永続罠、『妖仙郷の眩暈風』!『妖仙獣』モンスター以外のモンスターがバウンスされる場合、デッキに戻す!妖仙ロスト・トルネード!」

 

「させない!罠発動!『スキル・プリズナー』!ヘイタイガーを対象に取るモンスター効果を無効に!」

 

炸裂、妖仙ロスト・トルネード。しかしこのコンボは『妖仙大旋風』と『妖仙郷の眩暈風』のコンボ、大刃禍是で代用した事で遊矢が防ぐ決定打となる。チッ、と舌打ちを鳴らしつつ、そうでなくてはと笑う沢渡。所詮これは過去の戦法だ。通じてれば恩の字しか思ってない。こう言った割り切った考え方も沢渡の強みだ。

 

「カウンターを3つ取り除き、『妖仙獣鎌壱太刀』をサーチするぜ」

 

修験の妖社 妖仙カウンター3→0

 

「そして魔法カード、『マジック・プランター』!眩暈風を墓地に送り、2枚ドロー!」

 

沢渡 シンゴ 手札3→5

 

「速攻魔法、『揺れる眼差し』!スケールを破壊し、500のダメージを与える!」

 

榊 遊矢 LP5500→5000

 

「『魔界劇団-デビル・ヒール』をサーチし、ドクロバット・ジョーカーを除外!さぁ、バトルだ!大刃禍是でヘイタイガーに攻撃!」

 

榊 遊矢 LP5000→3700

 

「ぐうっ――!」

 

大刃禍是がその刃のような角を閃かせ、ヘイタイガーへ突進し、風の刃を纏って切り刻む。強力な一撃、遊矢はブロックを壁として何とか防ぐ。

 

「次は閻魔巳裂でダイレクトアタックだ!」

 

「永続罠、『EMピンチヘルパー』!直接攻撃を無効にし、デッキの『EMジンライノ』を効果を無効して特殊召喚!」

 

EMジンライノ 守備力1800

 

続いて閻魔巳裂の攻撃が遊矢を襲う。巨大な刀を降り下ろした一撃。これを受ければひとたまりも無い。直ぐ様遊矢はリバースカードをオープンし、そのカードの中から角に雷を纏った鋼鉄の身体を持つサイが現れ、攻撃を防ぐ。

 

「カードを1枚セットしてターンエンドだ。この瞬間、2体の『妖仙獣』は手札に戻る」

 

沢渡 シンゴ LP4900

フィールド

『修験の妖社』セット1

手札6

 

「俺のターン、ドロー!スタンバイフェイズ、刻剣とビッグ・スターがフィールドに戻る。もう1度除外、魔法カード、『命削りの宝札』を発動!3枚ドロー!」

 

榊 遊矢 手札0→3

 

「そして魔法カード、『マジック・プランター』!ピンチヘルパーをコストに2枚ドロー!」

 

榊 遊矢 手札2→4

 

「『EMチェーンジラフ』、『EMホタルクス』をセッティング!カードを2枚セット、ターンエンドだ」

 

榊 遊矢 LP3700

フィールド『EMジンライノ』

セット3

Pゾーン『EMチェーンジラフ』『EMホタルクス』

手札0

 

「何だ何だぁ?それで終わりかよ遊矢!だとしたら拍子抜けも良い所だぜ!俺のターン、ドロー!『魔界劇団-ダンディ・バイプレイヤー』と『魔界劇団-デビル・ヒール』をセッティング!ペンデュラム召喚!『魔界劇団-ワイルド・ホープ』!『魔界劇団-プリティ・ヒロイン』!『魔界劇団-サッシー・ルーキー』!『魔界劇団-ダンディ・バイプレイヤー』!『妖仙獣閻魔巳裂』!」

 

魔界劇団-ワイルド・ホープ 攻撃力1600

 

魔界劇団-プリティ・ヒロイン 攻撃力1500

 

魔界劇団-サッシー・ルーキー 攻撃力1700

 

魔界劇団-ダンディ・バイプレイヤー 守備力700

 

妖仙獣閻魔巳裂 攻撃力2300

 

修験の妖社 妖仙カウンター0→1

 

またまたペンデュラム召喚。もうこのデュエル何度目か分からないそれにより、沢渡のフィールドが賑やかなものとなる。その中で厄介なのは――。

 

「ダンディ・バイプレイヤーのペンデュラム効果でエクストラデッキの『魔界劇団-エキストラ』を回収!閻魔巳裂の効果で『EMジンライノ』破壊!」

 

「墓地の『スキル・プリズナー』を除外し、防ぐ!」

 

このカード、閻魔巳裂。ペンデュラム召喚すればフィールドのカードの種類を問わず破壊し、ターンの終了には手札に戻るこのカード。厄介としか言いようが無い。

 

「ハッ、そう来るだろうな!だから俺はこうするぜ!まずはダンディ・バイプレイヤーをリリースし、エクストラデッキの『魔界劇団-ファンキー・コメディアン』を特殊召喚!」

 

魔界劇団-ファンキー・コメディアン 守備力200

 

防ぐ遊矢の手も折り込み済み。その不敵な笑みを崩さず沢渡は次の手に出る。恐るべき猛攻、遊矢はどこまで堪えられるか。食らいつくだけでも必死。

 

「ファンキー・コメディアンの効果!フィールドの『魔界劇団』モンスターの数×300、このカードの攻撃力をアップする!」

 

魔界劇団-ファンキー・コメディアン 攻撃力300→1500

 

複数の腕を持った太った悪魔、ファンキー・コメディアンに劇団の力が集まっていく。そしてそのままエネルギーを4本の腕で掴み、ワイルド・ホープへとパスする。

 

「そしてこのカードの攻撃力をワイルド・ホープに加える!」

 

魔界劇団-ワイルド・ホープ 攻撃力1600→3100

 

「もう一丁、ワイルド・ホープ自身の効果で攻撃力アップ!」

 

魔界劇団-ワイルド・ホープ 攻撃力3100→3500

 

攻撃力、3500。下級モンスターにしては余りにも馬鹿げた数値が遊矢の前に立ち塞がる。強力、凶悪、一体この男はいくつものネタをデッキに仕込んでいるのか。臨機応変、あの手この手で来られたら、こちらの方がジリ貧だ。

 

「対策が追いつかない――そんな顔だなぁ?」

 

「――ッ!」

 

そんな遊矢の考えを、沢渡は見透かしたように口にする。顔に出ていたか。エンターテイナーが感情を気取られるとは、何たる失態。だが沢渡はそんな事も気にせずに言葉を続ける。

 

「違うね、俺には誰も追いつけない!時代さえも置き去りにする、それがこの俺、沢渡 シンゴだ!」

 

「「「沢渡さぁーん、それでも俺達はついていきますよぉーっ!!」」」

 

「へっ、当たり前だ!ぼさっとしてると置いてくぜ☆」

 

ああ違った。ただ単に何時ものヤツだったと遊矢は半眼となる。相変わらず仲が良い4人を見て、遊矢が溜め息を吐き、もう1度吸い込んで気を引き締める。呆れていても油断は出来ない。相手は沢渡 シンゴ。遊矢が心の底から尊敬し、憧れ、ライバルとして認めるエンタメデュエリストだ。

 

「更に俺はぁ!サッシー・ルーキーとファンキー・コメディアンをリリースし、アドバンス召喚!大刃禍是!!」

 

魔妖仙獣大刃禍是 攻撃力3000

 

修験の妖社 妖仙カウンター1→2

 

再び下界に現れ、暴風を引き起こす人ならざる超常の妖獣。だが今回はアドバンス召喚の為、手札には戻らない。攻撃力3000のモンスターが場に居座るのも面倒である。

 

「効果でチェーンジラフとホタルクスをバウンス!そいつ等の効果は分かってんだよぉ!チェーンジラフで戦闘破壊したジンライノに耐性を与えて復活し、このターンを堪えるぅ?それともホタルクスでジンライノをリリースし、バトルフェイズを終了するぅ?二段構えで隙が無いように見えるが――こっちも二段構えで行けば何の問題もねぇんだよ!」

 

正当だ。二段構えと一気に2枚突き崩してしまえば何の問題も無い。それに手痛いのは『スキル・プリズナー』をジンライノに使わざるを得なかった事だ。チェーンジラフとホタルクス、どちらもモンスターがいて成り立つカードだ。だからこそジンライノを守らざるを得なかった。こんな事ならピンチヘルパーを手放さなかった方が良かったか。

 

「バトルだ!大刃禍是でジンライノに攻撃!」

 

「罠発動!『エンタメ・フラッシュ』!相手モンスターを守備表示に!」

 

だが何も防ぐ手立てが無い訳では無い。ランサーズトップクラスの防御力は伊達では無いのだ。ジンライノがその巨大な角に雷を落とし、スパークさせて沢渡のモンスターを地に縛り付ける。表示形式の変更も封じるこのカードを受けては流石の沢渡も追撃不可能。

 

「チッ、うざってぇ。ピンチヘルパーが無きゃ何とかなると思ったが読み間違えたか……!俺はこれでターンエンドだ。閻魔巳裂を手札に戻す」

 

沢渡 シンゴ LP4900

フィールド『魔界劇団-ワイルド・ホープ』(守備表示)『魔界劇団-プリティ・ヒロイン』(守備表示)『魔妖仙獣大刃禍是』(守備表示)

『修験の妖社』セット1

Pゾーン『魔界劇団-ダンディ・バイプレイヤー』『魔界劇団-デビル・ヒール』

手札5

 

「俺のターン、ドロー!スタンバイフェイズ、刻剣とビッグ・スターがフィールドに戻り、もう1度除外!罠発動!『強欲な瓶』!1枚ドロー!」

 

榊 遊矢 手札3→4

 

「魔法カード、『手札抹殺』!お互いに手札を捨て、その分ドローする!これでもう閻魔巳裂は召喚出来ない!」

 

「チッ!」

 

手札に戻ったホタルクスとチェーンジラフを処理しつつ、沢渡の『妖仙獣』を墓地に送らせる。尤も、大刃禍是がフィールドに残っているのが惜しい所だが。

 

「『EMキングベアー』と『曲芸の魔術師』をセッティング!ペンデュラム召喚!『EMペンデュラム・マジシャン』!『EMカレイドスコーピオン』!『EMシルバー・クロウ』!『EMウィップ・バイパー』!」

 

EMペンデュラム・マジシャン 攻撃力1500

 

EMカレイドスコーピオン 攻撃力100

 

EMシルバー・クロウ 攻撃力1800

 

EMウィップ・バイパー 攻撃力1700

 

4体同時召喚、ペンデュラムの本領発揮で現れたのは振り子のマジシャンに万華鏡の尾を持つ蠍。銀狼に紫の蛇と個性豊かなモンスター。そしてこの状況で遊矢の助けとなる核を担うのは――シルバー・クロウ。

 

「まずは『EMペンデュラム・マジシャン』の効果でジンライノと曲芸を破壊し、『EMオッドアイズ・ユニコーン』と『EMドラネコ』をサーチ!カレイドスコーピオンの効果をシルバー・クロウに使用!このターン、シルバー・クロウは特殊召喚されたモンスター全てに攻撃可能!更にウィップ・バイパーの効果でカレイドスコーピオンの攻守を反転!」

 

EMカレイドスコーピオン 攻撃力100→2300

 

「バトルだ!シルバー・クロウでワイルド・ホープを攻撃!攻撃宣言時、シルバー・クロウの効果で『EM』の攻撃力を300アップ!」

 

EMシルバー・クロウ 攻撃力1800→2100

 

EMペンデュラム・マジシャン 攻撃力1500→1800

 

EMカレイドスコーピオン 攻撃力2300→2600

 

EMウィップ・バイパー 攻撃力1700→2000

 

シルバー・クロウの遠吠えが『EM』達を鼓舞し、その攻撃力をアップさせる。しかもこの効果はターン1制限が無い。爪が食い込み、切り裂かれるワイルド・ホープ。そして――。

 

「くっ、ワイルド・ホープの効果!『魔界劇団-ビッグ・スター』をサーチ!」

 

「続けてプリティ・ヒロインへ攻撃!」

 

EMシルバー・クロウ 攻撃力2100→2400

 

EMペンデュラム・マジシャン 攻撃力1800→2100

 

EMカレイドスコーピオン 攻撃力2600→2900

 

EMウィップ・バイパー 攻撃力2000→2300

 

「破壊されたプリティ・ヒロインの効果でデッキの『魔界台本「魔界の宴タ女」』をセット!」

 

「『EMペンデュラム・マジシャン』で大刃禍是に攻撃!」

 

「チッ――!」

 

畳み掛ける猛攻を受け、沢渡のモンスターが全滅する。道は開いた。後は突き進むまで。

 

「ウィップ・バイパーでダイレクトアタック!」

 

「罠発動!『ダメージ・ダイエット』!ダメージを半分に!」

 

沢渡 シンゴ LP4900→3750

 

ウィップ・バイパーが一直線に沢渡へと襲いかかり、彼に強烈なダメージを与える。半減したとは言え、これは手痛い。均衡も崩れ始め、ペースは遊矢に傾いて来た。だが――同時に沢渡の手に、反撃の手段を与えてしまった。

 

「カレイドスコーピオンで攻撃!」

 

「アクションマジック、『回避』!」

 

「メインフェイズ2、『EMドラネコ』をセッティング!ターンエンドだ。この瞬間、『EMキングベアー』を破壊し、エクストラデッキの『オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン』を回収!」

 

榊 遊矢 LP3700

フィールド『EMペンデュラム・マジシャン』(攻撃表示)『EMシルバー・クロウ』(攻撃表示)『EMカレイドスコーピオン』(攻撃表示)『EMウィップ・バイパー』(攻撃表示)

セット2

Pゾーン『EMドラネコ』

手札2

 

「俺様のターン、ドロー!やるじゃねぇか!だがまだまだ!ペンデュラム召喚!『魔界劇団-ビッグ・スター』!!『魔界劇団-ワイルド・ホープ』!『魔界劇団-プリティ・ヒロイン』!『魔界劇団-サッシー・ルーキー』!『魔界劇団-ダンディ・バイプレイヤー』!」

 

魔界劇団-ビッグ・スター 攻撃力2500

 

魔界劇団-ワイルド・ホープ 攻撃力1600

 

魔界劇団-プリティ・ヒロイン 攻撃力1500

 

魔界劇団-サッシー・ルーキー 攻撃力1700

 

魔界劇団-ダンディ・バイプレイヤー 守備力700

 

今度は沢渡がペンデュラム召喚を繰り広げ、5体の『魔界劇団』がフィールドに揃う。最も面倒なのはやはりエースカードのビッグ・スターだろう。ペンデュラムの特性にカテゴリ限定とは言え、魔法カードをサーチする効果は強力だ。

 

「まずはワイルド・ホープの攻撃力をアップ!」

 

魔界劇団-ワイルド・ホープ 攻撃力1600→2100

 

「そしてビッグ・スターの効果でオープニング・セレモニーをセット、発動!」

 

沢渡 シンゴ LP3750→6250

 

「折角削ったLPが……!」

 

2500ものLPが沢渡へと与えられる。破壊された時のドロー効果も脅威的だが、こうして長期戦となるとこの回復効果も充分厄介だ。魔王の降臨でチェーン不可の全体除去をし、豪快に攻める沢渡に対し、遊矢の攻めはどうしても小さく見えてしまう。このままでは不味い。何か、『魔界劇団』のような悪魔的な手を取らねば――。

 

「ダンディ・バイプレイヤーをリリースし、エクストラデッキのファンキー・コメディアンを特殊召喚!」

 

魔界劇団-ファンキー・コメディアン 守備力200

 

「ファンキー・コメディアンの特殊召喚時、攻撃力アップ!」

 

魔界劇団-ファンキー・コメディアン 攻撃力300→1800

 

「そしてこの攻撃力をビッグ・スターへ譲渡!」

 

魔界劇団-ビッグ・スター 攻撃力2500→4300

 

「更に更にぃ?リバースカード、オゥプン!永続魔法、『魔界台本「魔界の宴タ女」』!ファンキー・コメディアンをリリースし、墓地の魔王の降臨をセットォ!そのまま発動!モンスター全てを破壊だ!」

 

「良い加減にして欲しいね……!」

 

破壊、破壊、破壊。何度も何度も遊矢のフィールドを蹂躙し、降臨しまくる魔王を見て、遊矢が嫌になると思わず呟く。いくら防いでいるとは言え、ここまで押されては遊矢の方が参ってしまう。

 

「これ位で参るなよ!まだまだ!お楽しみはこれからなんだからよぉ!永続魔法、『冥界の宝札』発動!サッシー・ルーキーとプリティ・ヒロインをリリースし、アドバンス召喚!『冥帝エレボス』!!」

 

冥帝エレボス 攻撃力2800

 

魔界の劇団を退け、今まで玉座に腰かけ彼等の芸を見物していた『帝王』が参戦する。山羊のような捻れた角に漆黒の鎧。巨大な体躯を玉座から起こし、その真紅の眼で遊矢を一瞥する。沢渡 シンゴ、第3のエースカード――。

 

「……うそぉん」

 

「クククッ!『冥界の宝札』でドロー!」

 

沢渡 シンゴ 手札2→4

 

「エレボスの効果により、手札の『帝王の凍気』とデッキの『帝王の溶撃』を墓地に送り、テメェの右のセットカードをデッキに送り込む!」

 

「クソッ!」

 

「まだだぜ!墓地の『帝王の凍気』と『帝王の溶撃』を除外、最後のセットカードを破壊ィ!」

 

「――!破壊されたのは『運命の発掘』!」

 

「何ぃ!?」

 

遊矢がエレボスの登場に驚くのも束の間、今度は沢渡が遊矢の強運に驚愕する。こんの、2分の1の確率でこれを当ててしまうとは――。

 

「3枚ドロー!」

 

榊 遊矢 手札2→5

 

これで3枚、遊矢に新たな手札が渡った。だが沢渡の手札はまだ4枚。攻めに使うか、防御に使うのか、どちらにせよ、充分な枚数だ。

 

「墓地の木魅を除外、俺様は『妖仙獣鎌壱太刀』を召喚!」

 

妖仙獣鎌壱太刀 攻撃力1600

 

修験の妖社 妖仙カウンター2→3

 

ここで現れたのは羽織に袴を纏った鎌鼬の長男だ。バウンス効果を持った優秀なモンスターがフィールドにトンと足を降ろし、連鎖を刻む。

 

「召喚時、手札の『妖仙獣鎌弐太刀』を召喚!」

 

妖仙獣鎌弐太刀 攻撃力1800

 

修験の妖社 妖仙カウンター3→4

 

お次は日本刀を手にした次男坊。そして最後は――。

 

「最後に壱太刀と弐太刀をリリースし、アドバンス召喚!『魔妖仙獣大刃禍是』!!」

 

魔妖仙獣大刃禍是 攻撃力3000

 

修験の妖社 妖仙カウンター4→5

 

三男なんていなかった。2体の鼬をリリースし、またまた『妖仙獣』の長が姿を見せる。ビッグ・スター、エレボス、太刀禍是。3大エースの揃い踏み、強力なモンスターが遊矢を攻める。

 

「『冥界の宝札』でドロー!」

 

沢渡 シンゴ 手札1→3

 

「手札の『D.D.クロウ』を捨て、ジンライノを除外、太刀禍是の効果でドラネコをバウンス!バトルだ!ビッグ・スターでダイレクトアタック!」

 

「墓地の『クリアクリボー』を除外し、デッキトップをドロー!そのカードがモンスターなら特殊召喚し、攻撃を移し変える!これで引ければビッ『クリボー』!」

 

「ここに来て賭けかぁ!?面白ぇ!やって見ろよ!遊矢ぁ!」

 

このデュエルの勝敗を賭けた運命のドロー。ここでモンスターを引かなければ沢渡の勝ち。引いてもただのモンスターではビッグ・スターにそのまま破壊され、第2第3のエースのダイレクトアタックでフィニッシュ。つまり、モンスターでもこのバトルフェイズを堪え切る事が出来るモンスターでなければならない。正に綱渡り、ギリギリの一手。心臓が早鐘を打つ。怖い、怖い、怖い。恐怖が頭の中を駆け巡る。だが――。

 

「ここで引ければ面白いっ……!来い、来い、来い――!Ledies and Gentlemen!!」

 

榊 遊矢 手札6→7

 

デッキを信じ、自分を信じ、今引き抜かれる1枚のカード。その軌跡が虹色に輝き、空に橋がかかる。翳したカードにチラリと視線を移し――遊矢は笑う。

 

「俺、カードに選ばれスギィ!」

 

「何ぃ!?」

 

「お楽しみはまだまだこれからってね!さぁ、来い!『EMバリアバルーンバク』!」

 

EMバリアバルーンバク 守備力2000

 

今度は沢渡のエンタメをコピーし、現れたのは紫色の風船のように膨れ上がったバクのモンスター。このモンスターが、遊矢の危機を救う為、ビッグ・スターの攻撃を受ける。

 

「チッ、ならワイルド・ホープで攻撃!」

 

「手札の『EMディスカバー・ヒッポ』を捨て、バリアバルーンバクを復活!」

 

EMバリアバルーンバク 守備力2000

 

「攻撃変更!そのボケッとしたバクをぶっ倒せ!」

 

「ぐっ!」

 

攻撃、攻撃、猛攻撃。襲い来る沢渡のモンスターの手から何度も逃れ、遊矢がフィールドを駆け抜ける。

 

「エレボスで攻撃!」

 

榊 遊矢 LP3700→900

 

「大刃禍是でダイレクトアタック!」

 

「手札の『クリボー』を捨て、ダメージを0に!」

 

バクが破壊され、エレボスによる一撃が遊矢へと突き刺さる。だが――堪えた。恐るべき猛攻を、堪え抜いた――。

 

「チィッ!ビッグ・スターの攻撃を最後にしておけば……!カウンターを使い、『妖仙獣辻斬風』をサーチ!」

 

修験の妖社 妖仙カウンター5→2

 

「カードを2枚セットし、ターンエンドだ」

 

沢渡 シンゴ LP6250

フィールド『魔界劇団-ビッグ・スター』(攻撃表示)『魔界劇団-ワイルド・ホープ』(攻撃表示)『魔妖仙獣大刃禍是』(攻撃表示)『冥帝エレボス』(攻撃表示)

『魔界台本「魔界の宴タ女」』『修験の妖社』『冥界の宝札』セット2

Pゾーン『魔界劇団-ダンディ・バイプレイヤー』『魔界劇団-デビル・ヒール』

手札1

 

揺れ続ける振り子の軌跡、速度を上げてそれは遊矢へと戻る。さぁ、今度は遊矢の番だ。思いっ切り――返してやろう。ニヤリと笑みを浮かべ、彼は3体のエースを出した沢渡へと答えを見せる。

 

「俺のターン、ドロー!フィールドに刻剣とビッグ・スターが帰還!刻剣とエレボスを除外!まずは――『EMオッドアイズ・ユニコーン』と『EMドラネコ』をセッティング!ペンデュラム召喚!『オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン』!!『EMユーゴーレム』!『EMカレイドスコーピオン』!『EMペンデュラム・マジシャン』!『曲芸の魔術師』!」

 

オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン 攻撃力2500

 

EMユーゴーレム 攻撃力1600

 

EMカレイドスコーピオン 守備力2300

 

EMペンデュラム・マジシャン 攻撃力1500

 

曲芸の魔術師 守備力2300

 

振り子の軌跡を描き、遊矢のフィールドに5体のモンスターが現れる。2色の眼の竜に命を宿した岩石に万華鏡の尾を持つ蠍、最後に振り子のマジシャンと派手な衣装の『魔術師』だ。

 

「『EMペンデュラム・マジシャン』の効果発動!自身とドラネコを破壊し2枚の『EM』をサーチ!」

 

「カウンター罠、『無償交換』!『EMペンデュラム・マジシャン』の効果の発動を無効にし、破壊!相手は1枚ドロー!」

 

榊 遊矢 手札1→2

 

「魔法カード、『ナイト・ショット』!セットカードを破壊!」

 

「甘いぜ遊矢!墓地の『ダメージ・ダイエット』を除外し、このターン受ける効果ダメージを半分に!更にチェーンして永続罠、『ドラゴン族・封印の壺』!これでテメェの『オッドアイズ』は守備表示となる!」

 

発動されたのは竜の顔を模したデザインの壺カード。随分と古臭いが、成程、これならば遊矢の扱う強力なドラゴンを封じる事が出来る。

 

――おい、うすのろ、さっさとあの壺を破壊しろ!ドラゴンを封印とか許さんからな――

 

その効果に遊矢の脳裏にまたもや謎の声が聞こえるが――この程度で遊矢は止まらない。

 

「残念だったな、沢渡!今から始まるのは――榊レジェンドコンボ『EM』ロスト・バーンだ!」

 

「なっ、何ぃ!?何だそのイカしたコンボは……っ!?」

 

ニヤリ、本当に沢渡のデュエルを模倣し、自分のものにするつもりなのか、敢えて彼のセンスで即興のコンボを言い放つ遊矢。思わず戦慄、沢渡の脳裏に電撃が駆け抜け、遊矢の、いや、沢渡をコピーした遊矢のセンスに惚れ惚れと痺れる。この状況で、一体どんなコンボで沢渡を倒すと言うのか。

 

「と言っても、お前みたいに凄いコンボじゃないさ。だが――お前みたいに悪魔的で豪快な手だ!カードをセットし、ユーゴーレムの効果!このカードと『オッドアイズ』を素材とし、融合召喚する!」

 

「融合召喚……!?そのモンスターの種族は……!」

 

「言っただろ!悪魔的にってね!二色の眼の竜よ。土より生まれし巨人と一つになりて、新たな種族として蘇れ!融合召喚!現れよ!『EMガトリングール』!」

 

EMガトリングール 攻撃力2900

 

遊矢の背後に青とオレンジの渦が広がり、混ざり合って1体のモンスターとなる。現れたのはシルクハットにスーツに身を包み、鋭い牙を見せ、ガトリング砲を持ったグールのモンスター。遊矢の、言う通り、攻撃的で『魔界劇団』と似た悪魔族のモンスターだ。

 

「何だ、そのモンスターは……!?」

 

「さぁ、新顔の効果!融合召喚時、フィールドのカード×200のダメージを与える!フィールドのカードは18枚!よって3600のダメージだ!」

 

「シャレになんねぇ……!『ダメージ・ダイエット』の効果で効果ダメージを半分に!」

 

沢渡 シンゴ LP6200→4400

 

とんでもないバーン効果、18発の弾丸が雨のように降り注ぎ、沢渡のLPを削り取る。半分とは言え1800、そして、LPをロストさせるバーンはまだ終わらない。

 

「更に更にぃ!ペンデュラムモンスターを素材にした事で、大刃禍是を破壊し、その攻撃力分のダメージを与える!さぁ、天空に花火を打ち上げろ!」

 

「うそぉん!?」

 

沢渡 シンゴ LP4400→2900

 

ガトリングールが大刃禍是を捕らえ、そのガトリン砲に無理矢理押し込んで天空に打ち上げる。瞬間、パァンと言う乾いた音と共に赤い花が咲き誇り、その種が沢渡のLPを焦がす。祭りに相応しい大輪の花火だ。『ダメージ・ダイエット』が無ければこの二撃で終わる所だった。

 

「魔法カード、『破天荒な風』!ガトリングールの攻撃力を1000アップ!カレイドスコーピオンの効果で複数攻撃を可能に!」

 

EMガトリングール 攻撃力2900→3900

 

「バトルだ!ガトリングールで、ビッグ・スター2体とワイルド・ホープに攻撃!」

 

沢渡 シンゴ LP2900→1500→100→0

 

決着――勝者、榊 遊矢。エンタメデュエリスト同士の対決、大歓声の中、ガッツポーズを取った――。

 

――――――

 

時は遊矢達がシンクロ次元にやって来た頃に遡る。場所はアカデミアの地下、堕ちたデュエリスト達が地獄の中で闘う場所へと、アカデミアの研究者、ドクトルは足を運ばせていた。目的は当然、ユーリの様子を見る事。

マッドドッグ犬飼との一戦以降、修羅に目覚めた彼がどこまでランキングを上げたか、それとも堕ちたか。後者の可能性は低いだろうが。ランキング上位の者と闘えばその可能性も出て来る。少しばかり興味が沸き、彼を見ようと思ったのだ。彼は一体どこにいるのか、丁度良く視界に入った、レストランの椅子に座り、黙々とスパゲティやらカレーライス等の大量の食べ物を口に運ぶ太った少年に尋ねる。

 

「もし少年、ユーリと言う少年を探しているのですが、どこにいるか分かりますか?」

 

ピタリ、そこで少年の手が止まり、ガツガツと食べ物を掻き込んでいた顔が上げられる。右眼に黒い眼帯を着用し、蛇を思わせる赤い眼をした少年の顔。その顔はどこかで見た事があるような。はて、と首を傾げるドクトル。少年はそんなドクトルを見て、口の周りに赤いケチャップをつけたままニコリと笑いかける。

 

「あっ、おじさん!やだなぁ、おじさん。僕ならここにいるじゃないか」

 

「……うん?」

 

言われて――ドクトルが丸々と太った少年を頭から爪先まで見て――瞠目する。まさかまさかと口元がわなわなと震える。蛇のような赤い眼に、アカデミアの紫の軍服。何より、この声は――。

 

「……えぇと、まさか、ユーリくぅん?」

 

「?どこからどう見たって、僕はユーリだけど?」

 

いや、どこからどう見ても別人です。太った少年を見て、ドクトルが頬を引き吊らせて思う。この少年は――闘いだけでなく、物理的にも飢えてしまっていた――。天を仰ぎ、ドクトルは右手で顔を覆う。

どうして、この少年はこう、アレなのか。想像の斜め上を行ってしまうのか――。




草毒タイプで特性厚い脂肪って何てメガフシギバナ。と言う訳で飢えてしまったユーリ君は生まれ変わりました。彼のファンの方はすまない……。
ズァーク様「飢えるってそう言う事じゃ……おお、もう……」

沢渡「何故勝てないんだ……」
バスブレ「力が欲しいか」

人物紹介22

沢渡 シンゴ
所属 LDS→ランサーズ
遊矢とのデュエル後、エンタメデュエルに目覚めた自意識過剰な少年。ただ自意識過剰と言ってもカリスマ、デュエリストとしての発想や着眼点、更に混合デッキを操る運命力は高く、かなりの実力者。社長から謎の信頼を得ているのはそこら辺が関係しているのかもしれない。
また、遊戯王では珍しく、マルチデッカーの一面も持つ。
素の実力で言えばランサーズ中堅レベルなのだが、子分や観客の応援、また、調子次第では実力が浮き沈みしやすいタイプ。遊矢やコナミ相手ならば更に強くなると言う主人公キラー。
新しいものが大好きで、ネオにニューを重ねる点から見てもそれが窺える。反面、エクシーズや他の召喚法には興味を示さないと言う面もある。中学生らしい中学生なのかもしれない。
因みにエンタメデュエリストとしては遊矢より上手。
使用デッキは『魔界劇団妖仙獣帝』。エースカードは『魔界劇団-ビッグ・スター』。


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。