遊矢 うすのろ。ドラゴンを様々な目に会わされる事が多い為、評価は低い。
ユーリ かなり覇王に向いてるけど太るのはちょっと……。
ユーゴ クリアウィングを活かすプレイングは素質あり。しかしアホ。
ユート 普段は冷静であるが、怒った時はピカイチの素質あり。良いぞ良いぞと目をつけられている。
少年は飢えた。闘いに、勝利に。幾ら食い尽くしても腹が減り、右眼が疼く。こんな不味い飯じゃ満足出来ないと、何者かが訴えるのだ。美味い飯にありつけない少年は――その空腹を、物理的に食う事で満たそうとした。違う、そうじゃない。何者かが焦ったように訴えたが、構わず少年は食って食って――当然のように太った。中二病的なものを空腹と勘違いしてしまった結果である。何とも無惨だ。
少年、ユーリの丸くなった腹を目を細めて見つめるドクトルは思う。
「ユーリ君……ランキングは……?」
「えっとね、確か30位かな?」
やはりか……ドクトル額を抑えて溜め息を吐く。上がってはいるものの、思った程では無い。ドクトルの予想では今頃は15位以内には入っていたのだが――圧倒的に、食費が足を引っ張っている。頭が痛い。
「これは……食生活を改める必要がありますねぇ……」
「えー、やだよ」
「やだじゃありませんよ……!このままじゃ貴方、ランキング上位に相手にされず強くなれませんよ……っ!」
「ッ!確かに……!そうだよねおじさん。でもこのスパゲティ食べてからでも……」
「おいバカやめろ」
説得しても最早大食らいが染み込んでしまっているのか、ズルズルとスパゲティを啜るユーリから皿を奪い取る。何故自分がこんな保護者のような事をしなければならないのか。再び深い溜め息を吐いた時――闘技場の方から歓声が爆発する。何事か――それでも黙々と食うユーリを尻目に、視線を移したそこには、彼を驚愕させるには充分なものがあった。
これならば――ドクトルがニヤリと口角を上げ、ユーリに向き直る。
「ユーリ君……」
「何?これはあげないからね」
「帝王のデュエルを、見たくはありませんか――?」
ポカン、不気味に笑うドクトルを見て、呆けるユーリ。何が何だか分からないが、何故かその時、ズキリとユーリの右眼が疼いた――。
――――――
地獄とも呼ばれる、アカデミアの暗き地下の中心に存在する闘技場にて、2人のデュエリストが対峙していた。1人はユーリと同じくドクトルの口車に乗り、自ら地下送りを望み、見事ランキング2位まで登り詰めた男、白い軍服と軍帽を被り、オベリスク・フォースを率いるデイビット・ラブだ。ユーリも何度か顔を合わせた事がある。嫌みな性格で、ユーリには劣るが、中々の強者だ。2位と言う事は、その頃よりも強くなっているのだろうか。
そんなデイビットと向かい合うのは黒いジャケットを纏った鋭い目付きの男。ユーリには何者かは分からないが、彼が纏うその闘気は余りにも桁違い。あのランクアップした黒コナミをも越えるかもしれないとユーリは冷や汗を掻く。
「あれが……帝王……?」
「ええ、そうです。彼こそがランキング1位、常勝無敗、アカデミア真の最強、カイザー、丸藤 亮」
大観衆に呑まれながら、ユーリとドクトルはカイザー、丸藤 亮を見つめる。彼が最強。ユーリが目指すべきデュエリスト。一体、デイビット相手にどんなデュエルをするのか。
「やぁカイザー、Youと闘えるのを楽しみにしていたよ。アカデミア最強、その座、Meに譲って貰おうか」
「……疑問だな、貴様はどうやって2位まで辿り着いた?奴等が貴様程度に負けるとは思えん」
ニヤニヤと笑みを張り付け、亮を挑発するデイビット。対する亮はこんな挑発慣れているとばかりに受け流し、こちらも挑発――では無く、本心からそう思っているのだろう。ハァ、と深い溜め息を溢す。まるでデイビットが眼中に入ってないと言わんばかりの態度だ。
「You以外は興味ないさ、雑魚を倒して、さっさとYouまで辿り着いただけだよ」
「……成程、良く分かった。貴様では俺を満足させられない事を」
失望、冷徹な視線がデイビットを射抜く。まるで氷のような眼光にデイビットが怯み、凍てつく。亮はそのままデュエルディスクを操作、驚くべき行動に出る。
「このデュエル、俺はLPを100残し、全て賭ける」
「「なっ!?」」
オールベット、最低限を残し、全てを賭けるその馬鹿げた行動に、奇しくもユーリとデイビットの声が重なる。負ければ帝王の座から引き摺り下ろされると言うのに――ユーリと同じような事をする等、ふざけているとしか思えない。舐められている、プライドに泥を塗られたと感じたデイビットは青筋を立て、ガリッ、と歯軋りを鳴らす。
「後悔させてやる……MeはLPを100ベット、このデュエルが終点なら、大量に賭ける必要も無い!MeのLPは10万!訂正するなら今の内だぜ、カイザー!」
「訂正しようにも、これ以上は賭けられん」
「ッ……!どこまでも……っ!なら良いさ。くたばれカイザー!」
LP100VS100000。どちらが不利なのかは一目瞭然。例えカイザーでも、これでは勝てるかどうか、それ程までに自身の実力に自信を持っているのか、何にせよ、帝王のデュエルが幕を上げる。
「「デュエル!!」」
始まる金網デスマッチ、先攻はデイビットだ。彼は5枚のカードを引き抜き、ニヤリと口角を上げる。どうやら良いカードを引いたらしい。分かりやすい反応に、亮とユーリが目を細める。
「オイオイこれじゃ…Meの勝ちじゃないか!魔法カード、『火炎地獄』!相手に1000の、自分に500のダメージを与える!」
放たれたのはバーンカード、早速のピンチ、勝負を決定付ける一手が亮へ襲いかかる。これで終わればたった1枚のカードをプレイした1ターンキル。が、当然これど終わる帝王では無い。
「手札の『ハネワタ』を捨て、このターンの効果ダメージを0にする」
デイビット・ラブ LP100000→99500
成程、自分でLPを100にするだけあってバーン対策も出来ていると言う訳か。それにしてもこのカードを引き込むとは運が良いのかそれとも――。
「チッ、ただ運が良かっただけじゃないか……!Meは永続魔法、『機甲部隊の最前線』と『補給部隊』を発動!『マシンナーズ・ギアフレーム』を召喚!」
マシンナーズ・ギアフレーム 攻撃力1800
召喚されたのはオレンジ色のボディを持つ、スマートな人型ロボット。ギョロギョロとマシンアイを蠢かせ、眼前の帝王を捉える。下準備の『機甲部隊の最前線』と『補給部隊』も敷いた。良好な手札と言える。
「召喚時、デッキの『マシンナーズ・フォートレス』をサーチ、カードを1枚セットしてターンエンドだ」
デイビット・ラブ LP99500
フィールド『マシンナーズ・ギアフレーム』(攻撃表示)
『機甲部隊の最前線』『補給部隊』セット1
手札1
デイビットは気づかない。このターン、彼はカイザーを倒せる最大のチャンスを逃した事に。
「俺のターン、ドロー。俺は『サイバー・ドラゴン・コア』を召喚」
サイバー・ドラゴン・コア 攻撃力400
亮のターンとなり、彼が最初に召喚したのはアナ……球体状のパーツを繋げて作られた機械の竜だ。尤も見た目、攻撃力共に貧弱で剥き出しにするには不安なカードだ。
「召喚時、デッキから『サイバー・リペア・プラント』をサーチする。そして魔法カード、『機械複製術』。攻撃力500以下の機械族、『サイバー・ドラゴン・コア』と同名モンスターを2体、デッキよりリクルートする。コアはフィールド、墓地では『サイバー・ドラゴン』として扱う。よって特殊召喚されるのは当然――2体の『サイバー・ドラゴン』」
サイバー・ドラゴン 攻撃力2100
攻撃力の低さを利用し、攻撃力2000越えのモンスター2体を呼び出す亮。黒く染まった機械の竜。サイバー流と言う流派において使われるモンスターだ。
「これで、レベル5の機械族が2体……」
「ッ!まさか……!?」
「2体のモンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築!エクシーズ召喚!『サイバー・ドラゴン・ノヴァ』!」
サイバー・ドラゴン・ノヴァ 攻撃力2100
エクシーズ召喚――まさかの一手にデイビットが瞠目する中、亮の眼前に星を散りばめた渦が広がり、2体の『サイバー・ドラゴン』が光となって飛び込み、爆発。黒煙を裂き、咆哮を上げたのは双翼を広げ、白黒の体躯を唸らせる機光竜。胸に抱いたコアが光輝き、亮の隣に並び立つ。
「エクシーズモンスター……はっ、それがどうした?」
「使えるなら何だって使う。俺はノヴァ1体でオーバーレイ・ネットワークを再構築!ランクアップ・エクシーズ・チェンジ!」
「ランクアップだと!?」
ただのエクシーズならまだしも、更にその上を行くランクアップ。有益な力ならば――この男はいとも容易く会得し、使役すると言う事か。たった今召喚されたのはノヴァが再び発生した渦に飛び込み、一筋の閃光が天に昇り、3つの星が周囲を回転する。弾ける光、天空に飛翔せしはより攻撃的なフォルムとなった機光竜。
「『サイバー・ドラゴン・インフィニティ』!」
サイバー・ドラゴン・インフィニティ 攻撃力2100→2700
「……ふぅん、ちょっとびっくりしたけど、何の変哲も無いモンスターじゃないか。それにMeのLPは90000以上もある。どうやってもYouに勝ち目は無い。ゆっくりやらせてもらうよ」
「貴様がそうしたいのは構わんさ。『機甲部隊の最前線』に『補給部隊』、この2枚があれば余裕も出て来るんだろうが……貴様が機械族デッキなのが運のツキだ。俺は『サイバー・ドラゴン』扱いのコアと貴様のフィールドの機械族モンスター、『マシンナーズ・ギアフレーム』で融合!」
「What!?Meのモンスターを!?」
「自分と相手のモンスターでの融合が2流……だったか。融合召喚!『キメラテック・フォートレス・ドラゴン』!」
キメラテック・フォートレス・ドラゴン 攻撃力2000
今度はアカデミアらしく融合召喚。それも融合魔法無し、相手モンスターを巻き込んでの特異なものだ。フィールドに円盤状の物体が数珠繋ぎとなり、白銀の竜の頭と尾が伸びる。とんでも無い男だ。彼の操る奇妙なカードに、デイビットでさえ勝鬨る。
「キメラテック・フォートレスは素材となったモンスターの数×1000の攻撃力となる。因みにインフィニティはORUの数×200攻撃力を上げる。さて、バトルだ、インフィニティでダイレクトアタック!」
「甘いよ!罠発動!『業炎のバリア-ファイヤー・フォース-』!相手の攻撃宣言時、相手フィールドの攻撃表示モンスターを全て破壊!そしてMeはその攻撃力合計のダメージを受け、その後そのダメージを相手にも与える!Meには些細なダメージさ!」
デイビットのリバースカードが展開され、ワインレッドのフレームから爆発が巻き起こり、業炎が金網内を支配する。立ち込める黒煙、白銀の輝きが晴らし、中から無傷のインフィニティとフォートレスが咆哮する。そんな馬鹿な――デイビットが動揺し、一体どうやって切り抜けたのかと推理する。そして目に入ったのは、インフィニティのORU、3つあった星が2つとなり、竜の周囲を回転している。これか――。
「俺には決定的か?インフィニティのORUを1つ取り除く事で、カードの効果を無効にし、破壊する」
サイバー・ドラゴン・インフィニティ 攻撃力2700→2500
ORU1つで万能カウンター。とんでも無く強力な効果だ。200の攻撃力を犠牲にして使えるような効果では無い。
「攻撃続行、インフィニティとフォートレスで攻撃!エヴォリューション・リザルト・アーティレリー!」
デイビット・ラブ LP99500→97000→95000
「がぁぁぁぁぁっ!?」
2体の機械竜のアギトより熱線が放たれ、4500ものダメージが電流と共にデイビットの肉体を襲い、駆け抜ける。LPが大量にあると言う事は同時にそれだけのダメージを受ける可能性があると言うデメリットを兼ねている。
「これで1回目、メインフェイズ2、魔法カード、『サイバー・リペア・プラント』を発動。『サイバー・ドラゴン・コア』をサーチ、カードを2枚セットし、ターンエンドだ。さて、デュエル終了まで、貴様は何度敗北する?」
丸藤 亮 LP100
フィールド『サイバー・ドラゴン・インフィニティ』(攻撃表示)『キメラテック・フォートレス・ドラゴン』(攻撃表示)
セット2
手札3
恐らくLPが4000だった場合で計算しているのだろう、ニヤリともせず、無表情で問いかける亮。嫌味でも、挑発でもない。だからこそその問いはデイビットのプライドを傷つける。ガリッ、歯軋りを鳴らし、苛立つデイビット。プライドの高い彼からすれば、見下される事程屈辱的なものは無い。
何より2ターンを通し、手も足も出ない事が腹立たしい。何とかしなければ、このターンのドロー次第ではサンドバックにされかねない。
「Meのターン、ドロー!良し……!手札の『マシンナーズ・メガフォーム』を捨て、『マシンナーズ・フォートレス』を特殊召喚!」
マシンナーズ・フォートレス 攻撃力2500
何とかカードを引き込んだ。ここで召喚されたのは青いボディとカノン砲を持つ戦車のようなモンスター。召喚ルール効果の為、インフィニティと言えども無効には出来ない。このカードであれば、インフィニティの僅かな隙を突けると言う訳だ。
「ほう……」
「バトル!フォートレスでキメラテック・フォートレスに攻撃!」
「永続罠、『強制終了』!キメラテック・フォートレスを墓地に送り、バトルフェイズを終了する!」
それでも――帝王には届かない。
「クッ、ターンエンドだ!」
デイビット・ラブ LP95000
フィールド『マシンナーズ・フォートレス』(攻撃表示)
『機甲部隊の最前線』『補給部隊』
手札0
全くと言って良い程事が上手く運ばず、常にこちらのプレイングの上を行く。強い――これが帝王と呼ばれるデュエリスト。フォートレスを呼び出したは良いものの、相手の手札にはフィールド、墓地で『サイバー・ドラゴン』として扱うコアが握られている。つまりはフォートレスを復活させても、キメラテック・フォートレスの素材にされ、攻めの手は『強制終了』で防がれる。効果で切り開こうとしてもインフィニティが無効化する。最悪と言って良い状況。せめてもの救いはLPが大量にある事か。その戦略の高さに観戦しているだけのユーリもゾッとする。
「俺のターン、ドロー!威勢が良いのは最初だけか?『サイバー・ドラゴン・コア』を召喚」
サイバー・ドラゴン・コア 攻撃力400
「召喚時、『サイバー・リペア・プラント』をサーチ、発動。デッキから最後のコアをサーチ、そしてコアとフォートレスで融合。融合召喚!『キメラテック・フォートレス・ドラゴン』!」
キメラテック・フォートレス・ドラゴン 攻撃力2000
「バトル、2体でダイレクトアタック!」
デイビット・ラブ LP95000→92500→90500
「がふっ……!」
一方的、コーナーに追い詰められ、サンドバックにされているような光景だ。あのデイビットが何も出来ず、されるがまま。実力に差があり過ぎる。
「これで2回目。カードを1枚セットしてターンエンドだ」
丸藤 亮 LP100
フィールド『サイバー・ドラゴン・インフィニティ』(攻撃表示)『キメラテック・フォートレス・ドラゴン』(攻撃表示)
『強制終了』セット2
手札3
LPがたった100なのに、デイビットが無力と化している。その姿に、ユーリは思わず彼の姿に黒コナミを重ねる。高い次元に存在する、孤高の強者達。自分は果たしてそこまで辿り着けるのか、と。
「Meのターン、ドローッ!来た……!クク、ククク……!さぁ、亮、これならどうだ?Youのモンスターを2体リリースし、Youのフィールドに『溶岩魔神ラヴァ・ゴーレム』を特殊召喚!」
溶岩魔神ラヴァ・ゴーレム 攻撃力3000
亮の2体の強力なモンスターを糧とし、現れたのはマグマと岩石で作られた巨人。亮の背に登場し、彼を檻に閉じ込める。檻in檻。何とも斬新な光景だ。だがこれならばモンスターを除去した上でダメージを与えられる。
「成程……ならばこいつをリリースし、速攻魔法、『神秘の中華なべ』を発動。攻撃力分、LPを回復する」
丸藤 亮 LP100→3100
「チッ、だけどこれで厄介なインフィニティはもういない。ターンエンドだ」
デイビット・ラブ LP90500
フィールド
『機甲部隊の最前線』『補給部隊』
手札0
「俺のターン、ドロー!魔法カード、『カップ・オブ・エース』を発動。表だ。2枚ドロー!」
丸藤 亮 手札3→5
「もう1枚発動。表、2枚ドロー」
丸藤 亮 手札4→6
「魔法カード、『二重召喚』を発動。『サイバー・ドラゴン・ツヴァイ』を召喚」
サイバー・ドラゴン・ツヴァイ 攻撃力1500
現れたのは『サイバー・ドラゴン』の2号機。黄緑のラインを体躯に走られた機械竜だ。
「そしてコアを召喚」
サイバー・ドラゴン・コア 攻撃力400
「最後の『サイバー・リペア・プラント』をサーチ、発動。デッキから『サイバー・ドラゴン・ドライ』をサーチ、墓地のノヴァをエクストラデッキに。そして手札の魔法カード、『置換融合』を公開し、ツヴァイは『サイバー・ドラゴン』の名を得る。たった今公開した『置換融合』を発動。フィールドの『サイバー・ドラゴン』扱いのツヴァイとコアを融合!融合召喚!『サイバー・ツイン・ドラゴン』!」
サイバー・ツイン・ドラゴン 攻撃力2800
2体の機械竜を束ね、現れたのは2頭となった機械竜。『サイバー・ドラゴン』の融合モンスターでも比較的使いやすいモンスターだ。
「墓地の『置換融合』を除外し、キメラテック・フォートレスをエクストラデッキに戻し、ドロー」
丸藤 亮 手札3→4
「ふん……バトルだ、ツインは2回攻撃が出来る。やれ、エヴォリューション・ツイン・バースト!」
デイビット・ラブ LP90500→87700→84900
「……ッ!」
2頭の竜が光線を放ち、デイビットの肉体を焼き焦がす。これでLPが1万以上削られた。1ターンに1回敗北する勢いだ。火力が桁違いにも程がある。
「これで3回。速攻魔法、『融合解除』、ツインをエクストラデッキに戻し、素材となったツヴァイとコアを特殊召喚」
サイバー・ドラゴン・ツヴァイ 攻撃力1500
サイバー・ドラゴン・コア 攻撃力400
ここで更なる追い討ち。『融合解除』によりツインが2体に分かれて呼び出される。2体とも墓地で『サイバー・ドラゴン』として扱う為、『融合解除』で呼び出すのも可能と言う訳だ。
「ツヴァイで攻撃」
デイビット・ラブ LP84900→83400
「ずぁっ……!」
「コアで攻撃」
デイビット・ラブ LP83400→83100
「くっ……!」
2体によるブレスが更にデイビットを追い詰める。脅威的な火力だ。反撃する暇すら与えてくれない。
「メインフェイズ2、手札の『フォトン・ジェネレーター・ユニット』を公開し、ツヴァイを『サイバー・ドラゴン』に。そして発動。2体の『サイバー・ドラゴン』をリリースし、デッキから『サイバー・レーザー・ドラゴン』を特殊召喚!」
サイバー・レーザー・ドラゴン 攻撃力2400
次は尾がレーザー砲となったスマートなフォルムの『サイバー・ドラゴン』だ。
「ターンエンドだ。4度、貴様は敗北したぞ」
丸藤 亮 LP3100
フィールド『サイバー・レーザー・ドラゴン』(攻撃表示)
『強制終了』セット1
手札2
「~~~っ!舐めるなぁっ!Meのターン、ドロー!魔法カード、『命削りの宝札』!3枚ドロー!」
デイビット・ラブ 手札0→3
ここに来て手札増強カード。この男もつくづく悪運が強い。このドローでどれだけ盛り返せるかがかかっている。
「2枚目の『補給部隊』を発動!モンスターとカードを1枚セットしてターンエンドだ!」
デイビット・ラブ LP83100
フィールド セットモンスター
『機甲部隊の最前線』『補給部隊』×2セット
手札0
3枚をフルに防御に活用。これで多少はマシになった。後は亮がどう出て来るかに賭けられている。
「俺のターン、ドロー!魔法カード、『七星の宝札』!レーザー・ドラゴンを除外し、2枚ドロー!」
丸藤 亮 手札2→4
「相手フィールドにモンスターが存在し、自分フィールドに存在しない事で、墓地のコアを除外し、デッキから『プロト・サイバー・ドラゴン』をリクルートする!」
プロト・サイバー・ドラゴン 守備力600
何度も亮のフィールドに現れる『サイバー・ドラゴン』モンスター。今度は黒い円柱状のパーツを繋げたプロトタイプの『サイバー・ドラゴン』だ。ステータスはコアに次いで低く、コアと違って優秀な効果も無いが、この状況では役立つ。
「『サイバー・ドラゴン・ドライ』を召喚」
サイバー・ドラゴン・ドライ 攻撃力1800
お次は『サイバー・ドラゴン』の3号機。ツヴァイと同じ黄緑のラインを持ち、鋭く攻撃的なフォルム、長い体躯を唸らせる機械竜だ。攻撃力も複製品にしては下級アタッカーラインを維持している。
「召喚時、フィールドの『サイバー・ドラゴン』のレベルを5に。プロト、ドライ共にフィールドでは『サイバー・ドラゴン』として扱う」
サイバー・ドラゴン・ドライ レベル4→5
プロト・サイバー・ドラゴン レベル4→5
「2体でオーバーレイ・ネットワークを構築!エクシーズ召喚!『サイバー・ドラゴン・ノヴァ』!」
サイバー・ドラゴン・ノヴァ 攻撃力2100
「っ!またインフィニティに繋げる気か……!」
「残念ながらノヴァとインフィニティはテストカードとして1枚ずつしか投入されていない。安心しろ」
このままランクアップし、またインフィニティの制圧が来ると焦るデイビットだが、どうやらエクシーズは1枚ずつしか投入していないらしい。ほっと胸を撫で下ろす。
だが1ターン目はインフィニティに直ぐに繋げられたが、当然このモンスターにも油断ならない効果がある。ただの下敷きでは無いのだ。
「ノヴァのORUを1つ取り除き、墓地の『サイバー・ドラゴン』を蘇生」
サイバー・ドラゴン 攻撃力2100
「バトルだ!『サイバー・ドラゴン』でセットモンスターを攻撃!エヴォリューション・バースト!」
「セットモンスターは『A・ボム』!光属性モンスターとの戦闘で破壊された事で、Youのノヴァと『強制終了』を破壊!『補給部隊』のエフェクトで2枚ドロー!Meのデッキが『マシンナーズ』だけと思ったか?情報は少ないが、対策は立てて来たんだよ!この地下のカードを使って!」
デイビット・ラブ 手札0→2
「ノヴァが相手の効果によって墓地に送られた事でエクストラデッキから『サイバー・ツイン・ドラゴン』を特殊召喚する。対策が裏目に出たようだな」
サイバー・ツイン・ドラゴン 攻撃力2800
「ッ!」
デイビットのセットモンスター、『A・ボム』が飛び出し、ノヴァに吸着して爆発する。『A・O・J』、ある光属性モンスター達を殲滅する為に作り出されたと言うバックボーンのあるメタモンスター軍の1体だ。光属性機械族で構成される『サイバー・ドラゴン』には効果覿面、上手くいったとほくそ笑むデイビットだが、爆煙を引き裂き、2頭の竜が姿を見せると、その表情は驚愕に変わり、歯噛みする。
「2回、攻撃!」
デイビット・ラブ LP83100→80300→77500
「がふっ――!」
更なる追撃がデイビットを焦がす。最悪だ。折角の反撃もダメージを増やす結果になってしまった。
「カードを1枚セットし、ターンエンド。5回目だな」
丸藤 亮 LP3100
フィールド『サイバー・ツイン・ドラゴン』(攻撃表示)『サイバー・ドラゴン』(攻撃表示)
セット2
手札2
「Meのターン……ドロー……ッ!Meは永続罠、『リビングデッドの呼び声』を発動!復活させるのは、『A・ボム』!」
A・ボム 攻撃力400
「……何?」
デイビットの行動を見て、僅かながら亮の目が細くなる。おかしい、このカードがあるならば先程のツイン・ドラゴンのダメージも防げた筈だ。プレイングミスとも思えない。一体何を考えている。亮が興味を示したその時――。
「チューナーモンスター、『A・O・Jサイクロン・クリエイター』を召喚!」
A・O・Jサイクロン・クリエイター 攻撃力1400
現れたのはレベル3、鳥類を模したオレンジ色の機械族チューナー、成程、そう来たかと亮が納得する。全てはシンクロを確実なものにする為。その為だけに彼は電流を受ける事も良しとした。
「レベル2の『A・ボム』に、レベル3の『A・O・Jサイクロン・クリエイター』をチューニング!シンクロ召喚!『A・O・Jカタストル』!」
A・O・Jカタストル 攻撃力2200
サイクロン・クリエイターの姿が光となって弾け飛び、3つのミントグリーンのリングが『A・ボム』を包み込み、閃光がフィールドを覆う。シンクロ召喚、デイビットが新たに得た力で召喚されたのは、昆虫のようなフォルムを持ち、頭部に黄金に輝くリングを装着した兵器のモンスター。
『マシンナーズ』と言い、『A・O・J』と言い、つくづく兵器を模したモンスターに縁がある男だ。しかしこのモンスターならば強力な『サイバー・ドラゴン』に対抗出来る。
「魔法カード、『マジック・プランター』!リビングデッドをコストに2枚ドロー!」
デイビット・ラブ 手札2→4
「手札の『A・O・Jコズミック・クローザー』を捨て、墓地の『マシンナーズ・フォートレス』を蘇生!」
マシンナーズ・フォートレス 攻撃力2500
「まだだ!魔法カード、『アイアンコール』!墓地のサイクロン・クリエイターを蘇生!」
A・O・Jサイクロン・クリエイター 攻撃力1400
「そしてサイクロン・クリエイターを墓地に送り、魔法カード、『トランスターン』を発動!墓地に送ったモンスターと同じ種族、属性を持ち、レベルが1つ高いモンスターをデッキから特殊召喚する!来い!『A・O・J D.D.チェッカー』!」
A・O・J D.D.チェッカー 攻撃力1700
ここで呼び出されたのは正八面体から小型のロボットが飛び出したような奇妙な形状のモンスター。このモンスターこそ、『サイバー・ドラゴン』を封じる必殺のカードとなる。
「クク、このカードがいる限り、互いに光属性モンスターは特殊召喚出来ない……!どうだカイザー!これならば――」
「口だけは達者なようだな。そんなもの、俺を止める枷になるとでも?」
「チッ、良いだろう!なら力を持って証明してやる!カタストル!ツイン・ドラゴンへ攻撃!そしてカタストルが闇属性以外と戦闘を行う場合、ダメージ計算を行わず破壊する!」
カタストルの頭部より黒に彩られたレーザーが放たれ、ツイン・ドラゴンのエヴォリューション・ツイン・バーストとぶつかり合う。その時、カタストルの放ったレーザーはツイン・ドラゴンの熱線を呑み込み、勢いを増して2頭の竜を撃破する。
「ふん……」
「ハッハー!ノッて来たよぉ!フォートレスで『サイバー・ドラゴン』に攻撃ィ!」
「永続罠、『サイバー・ネットワーク』、デッキより『サイバー・ドラゴン・ドライ』を除外し、ドライが除外された事でこのターン、『サイバー・ドラゴン』は戦闘及び効果では破壊されない」
丸藤 亮 LP3100→2700
フォートレスの砲撃が『サイバー・ドラゴン』に襲いかかるも、異次元より現れたドライが身代わりとなって防ぐ。
『サイバー・ドラゴン』が場に残る、それは次のターン、デイビットの機械族がキメラテック・フォートレスの素材となる事を暗示している。そうなっては目もあてられない。
しかし――やっと、やっとだ。漸くカイザー、丸藤 亮にダメージを与えた。これは大きな収穫と言える。この勢いのまま――デイビットは突き進む。
「D.D.チェッカーで『サイバー・ドラゴン』へ攻撃!」
「……ほう」
デイビット・ラブ LP77500→77100
ここでまさかの自爆特攻、折角呼び出した『サイバー・ドラゴン』の対抗策であるD.D.チェッカーを手放すデイビット。一体何を考えているのか、彼の事だ。ダメージを背負ってでも亮を追い詰める策を思い付いたのだろう。
「『機甲部隊の最前線』と『補給部隊』のエフェクトで、『A・O・Jアンノウン・クラッシャー』をデッキより特殊召喚し、2枚ドロー!」
A・O・Jアンノウン・クラッシャー 攻撃力1200
デイビット・ラブ 手札1→3
破壊を引き金に、デイビットの手に2枚のカードが、フィールドにマンモスを模した機械兵が降り立つ。成程、このモンスターならば破壊耐性をすり抜けられる。
「アンノウン・クラッシャーで『サイバー・ドラゴン』へ攻撃!」
デイビット・ラブ LP77100→76200
またも自爆特攻、ダメージも躊躇せずにモンスターに指示を出し、アンノウン・クラッシャーが『サイバー・ドラゴン』に迎撃される。しかし――アンノウン・クラッシャーは長い鼻を『サイバー・ドラゴン』に巻き付け、異次元へと放り投げる。その後朽ちるアンノウン・クラッシャー。役目は果たした。
「成程な……」
「アンノウン・クラッシャーと戦闘を行った光属性モンスターは除外される!メインフェイズ2、カードを2枚セットし、ターンエンドだ。さぁ、カイザー!地獄の始まりだぁッ!HAHAHAHAHA!HAーッHAHAHAッ!!」
デイビット・ラブ LP76200
フィールド『A・O・Jカタストル』(攻撃表示)『マシンナーズ・フォートレス』(攻撃表示)
『機甲部隊の最前線』『補給部隊』×2セット2
手札1
見事反逆は成功し、状況は一変、6個目の魂を翳し、デイビットが哄笑を上げる。果たしてカイザーはどう乗り越えるのか、期待、不安、様々な思いを胸に、観戦するユーリは今、4皿目のスパゲティを口にする――!
「NO、ユーリ君、NOです」
「だめぇ?」
当然、ドクトルに止められた。
デイビット君は強いんです、格好良いんです、お気に入りのキャラなんです。でも噛ませ臭が凄いんです……。