遊戯王ARC―V TAG FORCE VS   作:鉄豆腐

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最近ギャグ書けて無くて辛い……。早くランサーズメンバーでわちゃわちゃさせたい。


第114話 OKAWARIだ!

地下で繰り広げられる電撃デスマッチ、フィールド魔法の影響によって、深紅の月に照らされた城の下、ユーリとカミューラ、2人の化物が見る者の背筋が凍るような闘いをしていた。最も目を引き付けるのは――やはり、ユーリのフィールドで、今は静かに沈黙する紫の竜。

 

巨大な花弁、2体のキメラフレシアを両隣に連れ、文字通り両手に花状態になっているユーリのエースカード、『スターヴ・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン』。

しかし――そのデザインはカードイラストと180度異なり、肉が削ぎ落とされたかのようにか細く痩せこけ、水分も失ったように皺だらけ、そして左の眼は砕け、どす黒く染まっている。弱々しい姿に変わり果てているからと侮るなかれ、その力は色褪せる事無く、その気性はより荒々しく飢えている。

もしかすればこの姿こそがこの竜のあるべき姿なのかもしれない。この竜によってカミューラのモンスターは食い尽くされ、がら空きとなってしまったのだ。不気味で凶悪。『ヴァンパイア』すらそう思う程のモンスター。

 

何よりこの竜の影響なのか知らないが、ユーリに起こった変化も見逃せない。激しきデュエルのせいか――彼は太りに太った身体から元のスマートなボディにダイエットを果たし、その左に装着された眼帯の奥から淡い金色の光を灯している。異常、異様、どちらが『ヴァンパイア』なのか分からない。しかし――まだカミューラの策謀は尽きない。

 

確かにこの竜は強力だ。だが、彼女の扱う『ヴァンパイア』は不死。死して尚蘇り、人々の生き血を啜り、恐怖へ突き落とす崇高にして高貴な存在。よって彼女も貴婦人らしく余裕の笑みを浮かべる。

 

「確かに驚いたけど――この程度ならまだまだ。私達の領域には至らない!ドロー!スタンバイフェイズ、相手によって破壊されたブラムは守備表示で蘇る!」

 

紅貴士-ヴァンパイア・ブラム 守備力0

 

再びフィールドに舞い戻る深紅の騎士。強力なエクシーズモンスターの復活は喜ばしいが、守備表示の為、戦力としては期待出来ない。壁としての運用が望ましいが、ORUも無い為、相手モンスターの蘇生も不可能だ。一応レベルを持たない為、ユーリのモンスターの効果を受けないが。

 

「僕もキメラフレシアの効果で『融合回収』をサーチ」

 

「私は『ゴブリンゾンビ』を召喚!」

 

ゴブリンゾンビ 攻撃力1100

 

現れたのは剣を手にした小鬼のゾンビ。低ステータスであるが、その効果は実に優秀、『ヴァンパイア』とも種族、属性、効果の点から相性も良い。カミューラとしては見た目が気になる所だが。

 

「魔法カード、『トランスターン』!『ゴブリンゾンビ』を墓地に送り、デッキより『ヴァンパイア・デューク』をリクルート!」

 

ヴァンパイア・デューク 攻撃力2000

 

「デュークの特殊召喚時、魔法カードを宣言!『ゴブリンゾンビ』が墓地に送られた事で『ヴァンパイア・デューク』をサーチ!」

 

「チッ、なら『シャッフル・リボーン』を墓地に送るよ」

 

「そして『ヴァンパイア帝国』の効果で『ヴァンパイア・ソーサラー』を墓地に送り、『スターヴ・ヴェノム』を破壊!」

 

「ははぁ、それは悪手って奴さ!融合召喚した『スターヴ・ヴェノム』が破壊された事で相手フィールドの特殊召喚されたモンスター全てを破壊!」

 

「何ですって!?」

 

デュークの効果によって起動した『ヴァンパイア帝国』が竜を呑もうとするも、最後の足掻きに『スターヴ・ヴェノム』がジタバタと駆け、頬を裂いて大口を開け、2体の『ヴァンパイア』を食らう。恐ろしい食欲、最後までその空腹は満たされない。

 

「くっ――ふざけた効果を――私はカードを1枚セットしてターンエンドよ!」

 

カミューラ LP9400

フィールド

セット1

『ヴァンパイア帝国』

手札1

 

「僕のターン、ドロー!」

 

「スタンバイフェイズ、ブラムが蘇る!」

 

紅貴士-ヴァンパイア・ブラム 守備力0

 

「バトル!キメラフレシアでブラムへ攻撃!」

 

紅貴士-ヴァンパイア・ブラム 攻撃力2500→1500→2000

 

捕食植物キメラフレシア 攻撃力2500→3500

 

「追撃だ!2体目のキメラフレシアでダイレクトアタック!」

 

「罠発動!『ガード・ブロック』!」

 

カミューラ 手札1→2

 

「ふぅん?僕はカードを1枚セット、これでターンエンド」

 

ユーリ LP1400

フィールド『捕食植物キメラフレシア』(攻撃表示)×2

『再融合』×2セット2

手札3

 

「私のターン、ドロー!スタンバイフェイズ、ブラムが蘇る!」

 

紅貴士-ヴァンパイア・ブラム 守備力0

 

キメラフレシアに破壊されて尚、灰から蘇る吸血騎士ブラム、過労死の予感を感じさせるカードだ。

 

「墓地の『ヴァンパイア・ソーサラー』を除外し、『ヴァンパイア・デューク』を召喚!」

 

ヴァンパイア・デューク 攻撃力2000

 

「デュークが召喚に成功した時、墓地の『ヴァンパイア』を特殊召喚する。来なさい、『ヴァンパイア・デューク』!」

 

ヴァンパイア・デューク 守備力0

 

「この瞬間、デュークと墓地の『ヴァンパイア・グレイス』の効果発動!アンデット族の効果でレベル5以上のアンデット族モンスターが特殊召喚された時、LPを2000払ってグレイスを特殊召喚し、デュークの効果で魔法カードを宣言!」

 

「2枚目の『シャッフル・リボーン』を墓地へ」

 

カミューラ LP9400→7400

 

ヴァンパイア・グレイス 攻撃力2000

 

現れたのは赤い宝玉を設置した杖とワイングラスを手にし、頭にティアラを、そして女教皇のようなドレスを纏った『ヴァンパイア』の貴婦人。ライフコストは重いものの、蘇生効果持ちが多い『ヴァンパイア』では比較的特殊召喚しやすい上級モンスターだ。

 

「そして『ヴァンパイア帝国』の効果でデッキの『ヴァンパイア・ロード』を墓地に送り、『再融合』を破壊!」

 

展開、デッキ破壊、カード破壊。『ヴァンパイア』達は群れを成し、知恵を使って人を陥れる。人に近い姿に、人知を越える知性を誇る存在に、赤き花弁が摘まれ、散らされる。面倒なコンボだ。思わずユーリは舌打ちを鳴らす。

 

「グレイスの効果で魔法カードを宣言、さぁ、デッキから墓地に送りなさい」

 

「……『捕食生成』を墓地に」

 

「フフ、吸われ過ぎて貧血かしら?もしかして痩せちゃったのも血の気が引いたから?私は魔法カード、『置換融合』を発動!フィールドのデューク2体で融合!2体の亡者の魂が冥界の主を呼び覚ます!冥界の扉を破り現れよ!幽合召喚!『冥界龍ドラゴネクロ』!!」

 

冥界龍ドラゴネクロ 攻撃力3000

 

融合召喚――今度は2体のデュークを1体に束ね、フィールドに骨の鎧を纏う黒翼の竜が姿を見せる。決闘竜の1体にして、唯一の融合モンスター。その素材はアンデット族2体と軽く、効果を置いても攻撃力3000のアタッカーとして期待が出来る。

 

「これが私のドラゴン……尤も、人から貰ったものなんだけれど。さぁ、バトルよ!ドラゴネクロでキメラフレシアに攻撃!ソウル・クランチ!」

 

「永続罠発動!『強制終了』!キメラフレシアを墓地に送り、バトルフェイズを終了する!」

 

カミューラのドラゴン、骸骨を模したようなドラゴネクロがキメラフレシアに襲いかかろうとしたその瞬間、ユーリがリバースカードでキメラフレシアをコストに攻撃を防ぐ。何とか難を逃れた。ユーリは気づいていないが、このままだと危うかったのだ。

 

「やるわね、カードを1枚セットしてターンエンドよ」

 

カミューラ LP7400

フィールド『冥界龍ドラゴネクロ』(攻撃表示)『紅貴士-ヴァンパイア・ブラム』(守備表示)『ヴァンパイア・グレイス』(攻撃表示)

セット1

『ヴァンパイア帝国』

手札0

 

「僕のターン、ドロー!スタンバイフェイズ、キメラフレシアの効果で『融合回収』をサーチ!墓地の『置換融合』を除外、『スターヴ・ヴェノム』をエクストラデッキに戻し、1枚ドロー!」

 

ユーリ 手札5→6

 

「魔法カード、『マジック・プランター』!『強制終了』をコストに2枚ドロー!」

 

ユーリ 手札5→7

 

「『融合回収』を発動!墓地の『融合』とオフリス・スコーピオを回収!更に永続魔法、『プレデター・プランター』を発動!墓地より『捕食植物セラセニアント』を蘇生!」

 

捕食植物セラセニアント 守備力600

 

「墓地の『シャッフル・リボーン』を除外、『プレデター・プランター』をデッキに戻し、ドロー!」

 

ユーリ 手札7→8

 

「装備魔法、『捕食接ぎ木』を発動!墓地のキメラフレシアを蘇生し、このカードを装備する!」

 

捕食植物キメラフレシア 攻撃力2500

 

「キメラフレシアの効果でグレイスを除外!まだだよ!魔法カード、『融合』!キメラフレシアとセラセニアントで融合!融合召喚!『捕食植物ドラゴスタペリア』」

 

捕食植物ドラゴスタペリア 攻撃力2700

 

融合モンスターを使っての融合。2体のモンスターが混ざり合い、現れたのは腐肉臭を漂わせる竜を模した植物。キメラフレシアと並ぶ『捕食植物』融合モンスターの1体だが、その素材は重く、もっぱらキメラフレシアが使用される事もあり、影に隠れがちだ。

 

「セラセニアントの効果で『捕食接ぎ木』をサーチ!ドラゴスタペリアの効果でドラゴネクロに捕食カウンターを置く!」

 

紅貴士-ヴァンパイア・ブラム 捕食カウンター0→1

 

「オフリス・スコーピオを召喚!」

 

捕食植物オフリス・スコーピオ 攻撃力1200

 

「召喚時、手札のモンスターを捨て、デッキから『捕食植物サンデウ・キンジー』をリクルート!」

 

捕食植物サンデウ・キンジー 守備力200

 

「永続罠、『捕食惑星』を発動し、捕食カウンターが乗ったブラムをリリースし、墓地の『捕食植物ドロソフィルム・ヒドラ』を蘇生!」

 

捕食植物ドロソフィルム・ヒドラ 守備力2300

 

地面が突如開き、穴となってブラムを吸い込んで捕食する。その正体は腹にブラムを捕食した口を持つヒドラを模した植物。これで破壊されず、墓地に送られたブラムは蘇生されない。壁を残す事も無くなったと言う訳だ。

恐るべき展開力、次々とユーリのフィールドに『捕食植物』が生い茂り、緑に染まる。だがまだまだこれから、ここからがユーリの本領発揮だ。

 

「捕食カウンターが置かれたモンスターがフィールドを離れた事で『捕食惑星』の効果で『捕食接ぎ木』をサーチ!魔法カード、『融合回収』!墓地の『融合』とプテロペンテスを回収!『捕食接ぎ木』を発動!キメラフレシアを蘇生!」

 

捕食植物キメラフレシア 攻撃力2500

 

「そして融合を発動!キメラフレシアとオフリス・スコーピオで融合!融合召喚!『捕食植物ドラゴスタペリア』!」

 

捕食植物ドラゴスタペリア 攻撃力2700

 

「効果でドラゴネクロにカウンターを設置!」

 

冥界龍ドラゴネクロ レベル8→1 捕食カウンター0→1

 

「サンデウ・キンジーの効果!このカードと捕食カウンターが置かれたドラゴネクロを融合!融合召喚!『捕食植物ドラゴスタペリア』!」

 

捕食植物ドラゴスタペリア 攻撃力2700

 

ドラゴネクロが融合モンスターである事を活かし、ドラゴスタペリア、3体目――重い素材をものともせず、3体のドラゴスタペリアを並ばせる。その手腕は流石と言うべきか。

 

「最後に装備魔法、『捕食接ぎ木』を発動!来い、キメラフレシア!」

 

捕食植物キメラフレシア 攻撃力2500

 

「――ッ!この瞬間、罠発動!『裁きの天秤』!私のフィールドと手札のカードは2枚!貴方のフィールドのカードは7枚!よってその差5枚をドロー!」

 

カミューラ 手札0→5

 

圧倒的不利を回避する為、カミューラが逆境を利用して手数を増やす。だがまさか、あれ程の布陣を1ターンで崩され、更にここまで融合モンスターを展開して来る等、誰が予想出来ようか、大粒の汗がカミューラの額から伝う。これで危機を回避するカードを引き込まなければ――彼女が負ける。だがここで終わる程、彼女も甘くない。ランキング上位は伊達では無いのだ。

 

「バトル!ドラゴスタペリアでダイレクトアタック!」

 

「ッ!手札の『バトル・フェーダー』の効果発動!このカードを特殊召喚し、バトルフェイズを終了!」

 

バトル・フェーダー 守備力0

 

闘いを止める鐘を鳴らし、現れたのは蝙蝠と鐘を合わせたようなモンスター。『速攻のかかし』と並び、手札誘発でバトルフェイズを終了させる強力なカードだ。こちらは場に残り、リリース要員となる事が出来る為に採用された訳だ。

見た目としても『ヴァンパイア』に近い。このカードを引き込めたお蔭で融合モンスターの連撃を受けずに済んだ。残る手札は4枚、これならば充分に巻き返せる。

 

「キメラフレシアの効果で『バトル・フェーダー』を除外!カードを1枚セットしてターンエンド。『シャッフル・リボーン』の効果で手札を1枚除外」

 

ユーリ LP1400

フィールド『捕食植物ドラゴスタペリア』(攻撃表示)×3『捕食植物キメラフレシア』(攻撃表示)『捕食植物ドロソフィルム・ヒドラ』(守備表示)

『捕食接ぎ木』『捕食惑星』セット1

手札2

 

「私のターン、ドロー!」

 

「スタンバイフェイズ、キメラフレシアの効果で『決闘融合-バトル・フュージョン』をサーチ!」

 

「魔法カード、『強欲で貪欲な壺』を発動!デッキトップから10枚を除外し、2枚ドロー!」

 

カミューラ 手札4→6

 

「魔法カード、『シャッフル・リボーン』!墓地のドラゴネクロを蘇生!」

 

冥界龍ドラゴネクロ 攻撃力3000

 

再びフィールドに蘇る冥界の竜。効果が無効にされるものの、攻撃力3000と言うだけで強力なアタッカーとしての活躍を見込める。だがカミューラの事だ。これだけで終わらないだろう。その予想通り――彼女はこのモンスターをも踏み台とし、ユーリの戦略を越える手を打つ。翳された1枚のカード、カミューラの白魚をような指からデュエルディスクにカードが叩きつけられる。

 

「魔法カード、『生者の書-禁断の呪術』!墓地より『ヴァンパイア・ロード』を蘇生!貴方の墓地のキメラフレシアを除外!」

 

ヴァンパイア・ロード 攻撃力2000

 

ここで現れたのは『ヴァンパイア』の美青年。最も代表的なモンスターだ。

 

「『ヴァンパイア・ロード』を除外、手札の『ヴァンパイアジェネシス』を特殊召喚!!」

 

ヴァンパイアジェネシス 攻撃力3000

 

『ヴァンパイア帝国』から蝙蝠達がバサバサと飛び交い、『ヴァンパイア・ロード』を覆い隠す。見る見る内に増殖する蝙蝠達。そして全ての蝙蝠が飛び散った時、そこにいたのは異形の吸血鬼。

紫の肌に膨れ上がった筋肉、背より伸びた巨大な翼。真っ赤に充血した輝く眼。『ヴァンパイア・ロード』と似ても似つかぬ、吸血鬼の真祖が理性を捨て雄々しく咆哮する。

 

「チューナーモンスター、『ゾンビキャリア』を召喚!」

 

ゾンビキャリア 攻撃力400

 

次に登場したのはアンデット族において代表的なチューナーモンスター。低いステータスながら強力な効果を持っている。このモンスターが登場したと言う事は――エクシーズ、融合に続き、彼女はシンクロをも操るオールラウンドのデュエリストと言う事。やはりここは――上での常識は通じず、予想だにしない手が飛んで来る魔境だ。だが、ユーリも魔境の住人、それを通さない為の手を取る。

 

「ドラゴスタペリアの効果でドラゴネクロと『ヴァンパイアジェネシス』にカウンターを設置!」

 

冥界龍ドラゴネクロ レベル8→1 捕食カウンター0→1

 

ヴァンパイアジェネシス レベル8→1 捕食カウンター0→1

 

これでドラゴネクロ達のレベルが一気に変動し、シンクロする事も叶わない。エクシーズにも切り換えられない為、融合以外のエクストラデッキの召喚法に対する強力なメタだ。

しかも『ヴァンパイアジェネシス』の効果を奪われた事も痛い。このカードには手札のアンデット族を捨て、そのレベル以下のアンデット族を蘇生する効果がある。デュークを蘇生され、グレイスを展開、『ヴァンパイア帝国』とのコンボでカードを削られる事も許さない。

 

カミューラは舌打ちを鳴らし、次の手に移る。まだだ、まだ終わった訳では無い。ユーリの手を掻い潜る――。

 

「舐めるなぁッ!墓地の『シャッフル・リボーン』を除外、ドラゴネクロをエクストラデッキに戻し、1枚ドロー!」

 

カミューラ 手札2→3

 

「魔法カード、『貪欲な壺』!墓地の『紅貴士-ヴァンパイア・ブラム』、『ヴァンパイア・デューク』2体、『シャドウ・ヴァンパイア』、『ヴァンパイア・ロード』をデッキに戻し、2枚ドロー!」

 

カミューラ 手札2→4

 

「魔法カード、『龍の鏡』!墓地のデュークとグレイスを除外し、融合!融合召喚!『冥界龍ドラゴネクロ』!!」

 

冥界龍ドラゴネクロ 攻撃力3000

 

何度もフィールドに蘇る冥界の竜。不死性のあるアンデットのドラゴンとは言え、その過労ぶりのせいか、竜の表情は曇っているようにも見える。

 

「はいお疲れ様、ドラゴスタペリアの効果でカウンターを乗せるよ!」

 

「させないわ!速攻魔法、『禁じられた聖杯』!最後のドラゴスタペリアの効果を無効にし、攻撃力を400アップ!」

 

捕食植物ドラゴスタペリア 攻撃力2700→3100

 

3体のドラゴスタペリアの妨害を回避し、何とかカミューラがシンクロへの道を開く。こうして見るとシンクロやエクシーズの妨害が出来る捕食カウンターをフリーチェーンで設置可能なドラゴスタペリアは強力だ。しかも3体、改めてその有能さと、それを潜り抜けたカミューラの実力を思い知る。

 

「レベル8のドラゴネクロにレベル2の『ゾンビキャリア』をチューニング!冥界を流るる嘆きの河より亡者の激流を逆巻き浮上せよ!シンクロ召喚!『冥界濁龍ドラゴキュートス』!!」

 

冥界濁龍ドラゴキュートス 攻撃力4000

 

シンクロ召喚――『ゾンビキャリア』の身体が光のリングとなって弾け飛び、ドラゴネクロを包み込む。そしてリングを閃光が貫き、更なる進化を遂げ、胸の骸骨の面を持ち、より攻撃的な姿となったドラゴネクロ――いや、ドラゴキュートスが雄々しき咆哮を放ち、空気を裂くように震撼させる。

攻撃力4000――圧倒的な数値がユーリの眼前に立ち塞がる。進化した決闘竜、一体どのような効果を持っているのだろうか。

 

「魔法カード、『復活の福音』!墓地よりドラゴネクロを蘇生する!」

 

冥界龍ドラゴネクロ 攻撃力3000

 

ここで更にドラゴネクロが復活し、ドラゴキュートスと並び立つ。壮観だ。尤も、やはりドラゴネクロは蘇生のし過ぎか、疲れているように見えない事は無いが。これでカミューラのフィールドには攻撃力3000のモンスターが2体と、攻撃力4000のモンスターが1体、圧倒的攻撃力の布陣だ。

 

「バトルよ!『ヴァンパイア・ジェネシス』でキメラフレシアへ攻撃!ヘルビシャス・ブラッド!」

 

「罠発動!『攻撃の無敵化』!このバトルフェイズのダメージを0に!」

 

『ヴァンパイアジェネシス』が自らの胸を貫き、ボタボタと流れる血を固め、1本の巨大な槍、いし、串を作り出す。不死の力で傷はたちまち修復され、ジェネシスはその串をキメラフレシアに投擲し、文字通り串刺しにする。その一撃を受け、花弁を散らし、腐って朽ちるキメラフレシア。まるで生け花だ。鮮血に染まったそれはおぞましくも美しい。

 

「ドラゴネクロでドラゴスタペリアに攻撃!」

 

「ドロソフィルム・ヒドラの効果により墓地のダーリング・コブラを除外、ドラゴネクロの攻撃力を500ダウン!」

 

冥界龍ドラゴネクロ 攻撃力3000→2500

 

カミューラ LP7400→6900

 

「チッ、だけど私は墓地の『復活の福音』を除外し、破壊を防ぎ、ドラゴネクロの効果!このモンスターと戦闘するモンスターは破壊されず、そのモンスターの攻撃力を0に!そしてそのモンスターの元々のレベルと攻撃力を持つ『ダークソウルトークン』を特殊召喚する!」

 

捕食植物ドラゴスタペリア 攻撃力2700→0

 

ダークソウルトークン 攻撃力2700

 

ドラゴネクロがドラゴスタペリアの胴を掴み、もう一方の腕で頭を掴み、何かを剥がす。白く染まり、龍の姿をしたそれは恐らく魂だろう。カミューラのフィールドに移り、冥界の龍として魂を配下に加え、魂を奪われたドラゴスタペリアはグッタリと力を無くす。成程、強力な効果だ。『攻撃の無敵化』が無ければユーリの敗北となっていただろう。

 

「『ダークソウルトークン』で攻撃力0となったドラゴスタペリアに攻撃!続いてドラゴキュートスでドラゴスタペリアに攻撃!冥界の幽鬼奔流!」

 

ドラゴキュートスのアギトより紫色に染まった水のようなブレスが放たれ、攻撃力がアップしたドラゴスタペリアを砕く。重い一撃――しかし、これだけでは終わらない。

 

「モンスターを破壊した事で3体目のドラゴスタペリアに追撃!」

 

更なる追撃が3体目のドラゴスタペリアを巻き込む。これでユーリの融合モンスターは全滅、残ったのはドロソフィルム・ヒドラのみとなった。

 

「カードを1枚セットし、ターンエンドよ」

 

カミューラ LP6900

フィールド『冥界濁龍ドラゴキュートス』(攻撃表示)『冥界龍ドラゴネクロ』(攻撃表示)『ヴァンパイアジェネシス』(攻撃表示)『ダークソウルトークン』(攻撃表示)

セット1『ヴァンパイア帝国』

手札0

 

カミューラのフィールドには『ヴァンパイア』の最高打点モンスター、『ヴァンパイアジェネシス』が1体、モンスターの魂を吸い取り、配下に加えるアンデットの支配者にして決闘竜の1柱、『冥界龍ドラゴネクロ』。そしてその進化形態、融合からシンクロへと転生し、より巨大で強大な姿となった『冥界濁龍ドラゴキュートス』。

恐るべき不死者の布陣。並の者ならばこの3体を同時に相手取るだけで恐怖に陥るだろう。だが――ユーリの表情に浮かぶのは、これを待っていたとばかりの喜色。漸く――待ち焦がれたご馳走が目の前にあると言う飢え。その欲望のままに――ユーリは身を任せ、デッキトップから1枚のカードを引き抜く。

 

「僕のターン、ドロォォォォォッ!!」

 

勢い良く引き抜かれた1枚のカードは空中に漆黒のアークを描き出し、ユーリの眼帯に覆われた眼が金色に輝く。来る――カミューラがデュエルディスクを構え直し、警戒を露にする。何故だか分からない、だが――このデュエルにおいて、彼女はただの人間である筈のユーリに、ある筈の無い怯えを抱いている。

まるで――帝王に対するように。しかし、そんな事がある筈が無いと直ぐ様振り払う。あれは特別だ。人外を飛び越えた超越者。力のみを求める求道者。こんな小僧が、彼の領域に辿り着く事等、あってはならない。

 

「魔法カード、『マジック・プランター』!僕は『捕食惑星』をコストに2枚ドロー!」

 

ユーリ 手札2→4

 

新たにユーリの手元に2枚のカードが引き寄せられる。これで手札は3枚。そして――これで、ユーリの勝利への下準備が整った。ナイフとフォークを両手に、絶対的捕食者が打って出る。

 

「速攻魔法、『ツイン・ツイスター』手札を1枚捨て、セットカードと『ヴァンパイア帝国』を破壊!」

 

「チェーンして発動!『ブレイクスルー・スキル』!ドロソフィルム・ヒドラの効果を無効!」

 

まずは露払いを。ユーリの手札より竜巻が舞い、カミューラのカードを砕き、城が崩れ落ちる。

 

「『捕食植物モーレイ・ネペンテス』を召喚!」

 

捕食植物モーレイ・ネペンテス 攻撃力1600

 

「墓地の『捕食惑星』を除外し、フィールドのモーレイ・ネペンテスとドロソフィルム・ヒドラを融合!融合召喚!『スターヴ・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン』!!」

 

スターヴ・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン 攻撃力2800

 

2体の『捕食植物』を糧とし、再び紫毒の竜が舞い戻る。飢えた牙が照明に照らされ、その細い身体からは想像もつかないような、地獄の底から響く雄叫びが木霊する。目の前には特上のご馳走が3つ。ジュルリと背の口より唾液が滴り落ち、地面を溶かす。

 

「融合召喚時、ドラゴキュートスの攻撃力を奪う!」

 

スターヴ・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン 攻撃力2800→6800

 

『スターヴ・ヴェノム』の失われた瞳が赤く輝き、ドラゴキュートスより力を奪い、食らい尽くす。それだけでは無い。腹を空かせた紫竜は、これだけでは満たされない。

 

「『スターヴ・ヴェノム』の効果により、ドラゴキュートスの効果をコピー!さぁ、バトルだ!『スターヴ・ヴェノム』で『ヴァンパイアジェネシス』へ攻撃!」

 

カミューラ LP6900→3100

 

『スターヴ・ヴェノム』の背の口が開き、本来ならば赤き稲妻が放出される器官より、どす黒い濁流が放出され、そのままロケットの如く激しく推進、頬を裂いて大口を開き、『ヴァンパイアジェネシス』を食らう。同時に『スターヴ・ヴェノム』の隻眼が一際赤く輝く。

 

「ぐっー!」

 

「ドラゴキュートスの効果を得た『スターヴ・ヴェノム』は追撃が可能!おかわりだ!『スターヴ・ヴェノム』でドラゴキュートスへ攻撃ィ!」

 

「だけど私のLPは――」

 

「残す訳無いじゃん!速攻魔法、『決闘融合-バトル・フュージョン』!もう1度ドラゴキュートスの攻撃力を『スターヴ・ヴェノム』へ!」

 

スターヴ・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン 攻撃力6800→10800

 

最後の手札が切られ、『スターヴ・ヴェノム』に更なる力を与える。攻撃力、一万越え。暴力的な数値を前に、カミューラは瞠目し――紫竜のアギトが、不死の竜を食らう。

 

カミューラ LP3100→0

 

勝者、ユーリ――。

 

――――――

 

時は戻り、シンクロ次元にある孤児院、コナミ達はシンクロ次元において最高権力を持つ評議会を名乗る者達に囲まれていた。何でも遊矢達は彼等の比護を受けており、同じランサーズのメンバーであるコナミ達も保護しようとの事。コナミとしても遊矢達と合流出来るならば望む所だ。

しかし――彼等が保護するばでは、男女が分けられるらしい、当然と言えば当然だが、そうなると柚子がまた分断される事となる。そこでコナミは少し待てと評議会の人間を牽制し、ゴソゴソとポケットから紙とペンを取り出し、柚子へと渡す。

 

「何か遊矢達に伝言があるならこれに書け。オレが必ず渡すと約束する」

 

どうやら――これはコナミなりの優しさらしい。何時も通り無愛想に紙とペンを差し出すコナミに呆然とした後、柚子は口元を緩ませて礼を述べ、サラサラと女の子らしい綺麗な字で紙にありったけの想いを書き綴る。

が、何か余計な事か、恥ずかしい事を書いてしまったのか、彼女は急に顔を赤くし、一部をペンで黒く塗り潰し、折り畳んでコナミに渡す。

 

「お願いね、ダニエル。あ、勝手に読まないように……無茶しないでね?貴方は目を離すと危なっかしいんだから」

 

「承った」

 

クスリと小さく笑みを溢し、背伸びしてコナミの頭――帽子の上に手を乗せる柚子。コナミの背は柚子より少し高い為、彼女が頭に触れようとすると爪先を立たせる事となる。その姿は――優しい弟に対する、姉のようで。

 

「ありがとう、ダニエル」

 

「何、美味い飯を食わせてくれてる礼だ」

 

「そんな事言って、私は知ってます。貴方が塾で店番をしてる時に作ってるデュエルモンスターズのプラモやフィギュアを売って、店の稼ぎを少しでも良くしてくれている事位」

 

「バレてーら」

 

「フフ、お姉さんみたいなもんだからねっ、あ、私やセレナがいなくても、朝はちゃんと起きて、歯を磨いたり、顔を洗う事」

 

「承った」

 

「ならば良しっ!」と柚子はツインテールを揺らし、少女らしいあどけない笑顔を浮かべる。敵わないな、とコナミは自分よりも少し背の低い姉に苦笑を溢す。家族の暖かさに胸を満たし――コナミは振り向く。準備は整った。向かう先は、評議会。ランサーズメンバーと合流し、舞台は、フレンドシップカップへと――。

 

 




次回からフレンドシップカップ編に入ります。有能月影が社長の役目を兼ねている以外は概ね原作通り。柚子ちゃんは可愛いから可愛さ2割増しで書いてます。あざとくても仕方無いね。
では次回からのデュエル、何ターンで終わるでしょう?

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