遊戯王ARC―V TAG FORCE VS   作:鉄豆腐

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第158話 闘う舞台

赤馬 零児は苛立っていた。原因としてはシティに襲来したアカデミア、オベリスク・フォース達だ。加えて――目の前で、零児の出陣を遮るように現れたセキュリティ達、どうやらもうアカデミアとの繋がりを隠す気はないらしい。どう言うつもりかは分からないが、こちらとしてはありがたい。が、他のランサーズメンバーを助けにいけないのは心苦しい。

一応月影にはランサーズの解放を、零羅には遊矢達との合流を命じた。後者は家族と言う事もあり、少々心配であるが、零羅の実力、そして今のメンタルならば問題ないと判断した。こちらも早々に終わらせたい所だが――零児の実力を警戒してか、数が多い。加えて――。

 

「頑張れ頑張れ零児殿」

 

「負けるな負けるな零児殿」

 

「ホッホッホ」

 

後ろの評議会がうるさい。これが一番のストレスの原因だ。こんなんじゃ俺、守る気がなくなっちまうよ……である。いっその事ピンチを演出して慌てるさせてやろうかと思う程である。時間の無駄だからやらないが、個人の好き嫌いが通用する立場では無いのだ。これが終われば一言物申すつもりだが。

 

「『DDD疾風王アレクサンダー』、『DDD神託王ダルク』でダイレクトアタック!」

 

デュエルチェイサー114 LP2300→0

 

デュエルチェイサー514 LP1400→0

 

「ぐぅぅぅっ!?」

 

白い騎士王と悪魔の翼を広げた鎧纏う魔女が風を切り、凄まじい速度でセキュリティに肉薄し、白刃を振るって切り裂く。また1人、また1人とセキュリティが倒れ伏す。零児無双である。流石ですお兄様。その圧倒的な強さにセキュリティ達がこれ倒せねぇんじゃね?と一歩退く。

 

「行け行け押せ押せ零児殿」

 

「イエー」

 

うるさい。額に浮かぶ青筋を沈める為、ストレス解消が為に、零児は一歩前に出てセキュリティ達を睨む。

 

「次は……誰だ……」

 

その一声を皮切りに、怯えながらも、セキュリティ達がデュエルディスクを構える。だから――気づけなかったのだろう。リンの姿が、消えている事に。

 

――――――

 

一方、オベリスク・フォース達が襲撃をかけるシティ、意外にも、彼等の手による被害は抑えられていた。原因はツァンや牛尾達による、現地民でも強力なデュエリストの加勢、そしてここてを、オベリスク・フォースを食い止めるのは――。

 

「チ、面倒な……せめてサンダーがいれば……柊!瑠璃!悪いが君達にも踏ん張ってもらうぞ!」

 

「勿論!」

 

「分かっているわ!流石に遅れは取らない!」

 

三幻魔を操る三沢 大地。そして柚子と瑠璃の3人だ。本来ならば守るべき2人であるが、いかんせん敵の数が多い為、彼女等の手も借りている。面倒なものだ。だが――何故だろうか、敵の数がは確かに多い、実力も上がっている。にも関わらず、ギリギリの所で食い止められている。その事は助かるが、妙に引っかかる。それ程の戦力が、こちらを助けているのか――その事を物語るように、遠くで、黒い暴風が、オベリスク・フォースを薙ぎ倒していた――。

 

そして場所は地下にて、そこでは隼の案により、コモンズ達の統率に長けたシンジ・ウェーバーの指揮の下、地下送りにされた者達が革命を開始していた。

 

「オラオラ革命の時だ。テメェ等!遊矢達が困ってる、それに誰だか分からねぇ奴に俺達のシティを好きにさせるんじゃねぇ!」

 

「……流石だな、コモンズ達が1つに纏まっている」

 

「へ、そっちもな!」

 

シンジと隼が背を合わせ、敵に応戦する。トニーやデイモン、クロウも協力してくれている。このままならばコモンズの独走も抑えられ、時間もかからず地上に出れるだろう。と、そんな時だった――。

 

「……そこに、誰かいるのか……」

 

壁際の隅から、か細い声がかけられたのは。どこかで聞き覚えのある声、反応し、キョロキョロと辺りを見渡せば、そこには隠れるように小さな独房があるではないか。誰かが捕まっているのだろうか。警戒しながらも、悪い奴じゃないならついでに出してやろうと、鍵を壊し、扉を開く。すると、そこにいたのは――。

 

「ん……眩しいな……」

 

ボロボロの姿となり、少々痩せ、変わり果ててしまった――ジャック・アトラスの姿があった――。

 

――――――

 

同じく地下にて、セキュリティのデュエルチェイサー227は悩んでいた。遊矢達に負け、地下送りになってから――彼の言葉について。

自分が何故、セキュリティになったのか。左腕に装着したデュエルディスクを撫で、考える。あれは、確か――。

 

「おっと待ちな。全く手間かけさせやがって……お前等全員、大人しくしてもらうぜ?」

 

そんな彼の前に、1人の男が現れる。黒い肌に、金のサングラス。派手な衣装を纏った、ダンディな中年。確か――プロモーターの、ギャラガーと言ったか。彼は不機嫌そうにデュエルディスクを構え、227達の前に立ち塞がる。

 

「さぁてお前さん達、覚悟は出来てんだろうな……俺様を怒らせたんだ、この禁止カードデッキで、ボコボコにしてやんよぉ!」

 

ニヤリと不敵な笑みを浮かべ、光のプレートを展開するギャラガー。派手なデュエルディスクだ。だがまぁ、悩んでいた自分には、丁度良い相手だろう。自分が何をしたいのか、まだ分からないが、取り敢えず、目の前のレギュレーションも守れず、ルールを守ってデュエルを出来ないような奴には――セキュリティが、お似合いだ。

 

「まずはお前か、227ぁ」

 

ギャラガーがデュエルディスクよりワイヤーを放ち、227のデュエルディスクへと繋げる恐らくこれは、デュエルギャングが良く使用するものだろう。227の勘によれば――。

 

「こいつは敗けた奴のデュエルディスクを爆破する特別装置だぁ」

 

「上等じゃないか……」

 

今、導火線に、火が着く。

 

「「デュエル!!」」

 

――――――

 

そして――治安維持局にて、プラシドはモニターを見つめ、セキュリティやオベリスク・フォースを応援するロジェを視界の端に追いやり、状況を整理していた。

 

「ククク、ハーハッハッハ!さぁ、行けお前達!私のセルゲイを傷つけた輩を、榊 遊矢を叩きのめせぇっ!」

 

「……ふむ、思ったよりもデュエルエナジーが溜まっていない、食い止められているのか?セクトもこちらに戻す訳にはいかないだろうし、ジャック達を向かわせるべきか……榊 遊矢の成長は喜ばしいが、ランサーズが地上に出るにはもう少し時間がかかるか……それまでチクチクと現状維持か」

 

独り言が多いのか、考え事が多いのがクセなのか、顎に手を当てて思考に耽るプラシド。そこに――モニターの端に、彼にとって興味深いものが写り込む。

 

「む、ほう、これはこれは――」

 

表情は一変、不機嫌そうな声色も、喜色を含んだものとなる。彼の計画は、順調に進む。

 

――――――

 

場所は変わり、シティの中、錆び付いた歯車が回転する街、アクションフィールド、『歯車街』にて、2人のデュエリストが対峙していた。

1人は多くの強敵とぶつかり、最早一流のエンタメデュエリストと言って良い実力と経験を身につけた少年、榊 遊矢。もう1人はアカデミアの使者、とある神を模した仮面を被った精鋭、オベリスク・フォース。

彼は新たな力を身に付け、強力な戦術を駆使、見事なまでに遊矢を苦戦させている。オベリスク・フォース全員が、ここまでパワーアップしているのなら、恐るべき事だ。

 

「俺のターン、ドロー!」

 

ターンはオベリスク・フォースに移り、彼はデッキから1枚のカードを引き抜く。『アンティーク・ギア』の上級モンスターを何度も繰り出す彼のデュエルは脅威的だ。このターンも、何を仕掛けて来るか。

 

「ここまでやるとは……!だが俺とてアカデミアのデュエル戦士!ここで終わる程ヤワでは無い!魔法カード、『貪欲な壺』!墓地より『古代の機械混沌巨人』と『古代の機械巨人』2体、アルティメット・パウンド2体をデッキに戻し、2枚ドロー!」

 

オベリスク・フォース 手札1→3

 

「『古代の機械猟犬』を召喚!」

 

古代の機械猟犬 攻撃力1000

 

現れたのは彼等オベリスク・フォースが愛用する、遊矢にとってのディスカバー・ヒッポのようなモンスターだ。本来は融合召喚の為に使用するのだが――今回は少々趣が異なる。

 

「召喚時効果で貴様に600のダメージを与える!」

 

榊 遊矢 LP1600→1000

 

「魔法カード、『ワン・フォー・ワン』!手札のモンスター1体を捨て、デッキからレベル1モンスター、『トルクチューン・ギア』をリクルート!」

 

トルクチューン・ギア 守備力0

 

次はレベル1のチューナー、これで準備は整った。

 

「『トルクチューン・ギア』を猟犬に装備!攻守を500アップし、チューナーとして扱う!」

 

古代の機械猟犬 攻撃力1000→1500

 

「ほんっと……思いもよらないプレイングをして来るね、飽きないよ」

 

「光栄だな、だが褒めても出るのは、強力のモンスターだ!俺はレベル3の『工作列車シグナル・レッド』に、レベル3の『古代の機械猟犬』をチューニング!シンクロ召喚!『ゴヨウ・ガーディアン』!」

 

ゴヨウ・ガーディアン 攻撃力2800

 

猟犬が青とオレンジの渦に呑まれ、3つのリングとなった後、シグナル・レッドがランプに赤い光を灯してリングの中を突き進む。そして一筋の閃光がシグナル・レッドをリングごと貫き、フィールドを覆う光を裂いて、中より歌舞伎化粧をした岡っ引きが見栄を切って現れる。

 

「バトル!『ゴヨウ・ガーディアン』でラフメイカーへ攻撃!」

 

榊 遊矢 LP1000→700

 

「うぐっ……!罠発動!『運命の発掘』!『補給部隊』と合わせ、2枚ドロー!」

 

榊 遊矢 手札0→1→2

 

「今度は俺の有利だな、ターンエンド」

 

オベリスク・フォース LP200

フィールド『ゴヨウ・ガーディアン』(攻撃表示)

『補給部隊』

手札0

 

「俺のターン、ドロー!魔法カード、『ペンデュラム・コール』を発動!手札を1枚捨て、デッキから『時読みの魔術師』と『星読みの魔術師』をサーチ、セッティング!ペンデュラム召喚!『相克の魔術師』!『EMラディッシュ・ホース』!『EMパートナーガ』!『EMバブルドッグ』!」

 

相克の魔術師 攻撃力2500

 

EMラディッシュ・ホース 守備力2000

 

EMパートナーガ 守備力2100

 

EMバブルドッグ 攻撃力2300

 

「パートナーガの効果でラディッシュ・ホースの攻撃力を900アップ!」

 

EMラディッシュ・ホース 攻撃力500→1400

 

「ラディッシュ・ホースの効果を、『ゴヨウ・ガーディアン』と相克に使用!」

 

ゴヨウ・ガーディアン 攻撃力2800→1400

 

相克の魔術師 攻撃力2500→3900

 

「バトル!相克で『ゴヨウ・ガーディアン』へ攻撃!」

 

「無駄だ!墓地の『超電磁タートル』を除外し、バトルフェイズを終了する!」

 

「『ワン・フォー・ワン』の時……カードを1枚セット、ターンエンド!」

 

榊 遊矢 LP700

フィールド『相克の魔術師』(攻撃表示)『EMラディッシュ・ホース』(守備表示)『EMパートナーガ』(守備表示)『EMバブルドッグ』(攻撃表示)

『補給部隊』セット1

Pゾーン『時読みの魔術師』『星読みの魔術師』

手札0

 

「俺のターン、ドロー!バトルに移る!」

 

「罠発動!『妖怪のいたずら』!フィールドのモンスターのレベルを2つ下げる!」

 

相克の魔術師 レベル7→5

 

EMラディッシュ・ホース レベル4→2

 

EMパートナーガ レベル5→3

 

EMバブルドッグ レベル6→4

 

ゴヨウ・ガーディアン レベル6→4

 

「レベルを……?それがどうし――!?」

 

遊矢の不可解なカードの発動に、眉をひそめるオベリスク・フォース。だがそれは直ぐに分かる。パートナーガが『ゴヨウ・ガーディアン』の四肢に絡みつき、自由を奪い取っているのだ。

 

「パートナーガがモンスターゾーンに存在する限り、レベル5以下のモンスターは攻撃が出来ない……!」

 

「……チッ、メインフェイズ2、魔法カード、『命削りの宝札』を発動!3枚ドロー!」

 

オベリスク・フォース 手札0→3

 

「モンスター1体とカードを2枚セット、ターンエンドだ」

 

オベリスク・フォース LP200

フィールド『ゴヨウ・ガーディアン』(攻撃表示)セットモンスター

『補給部隊』セット2

手札0

 

「俺のターン、ドロー!面白くなって来たな、ラディッシュ・ホースの効果を使い、『ゴヨウ・ガーディアン』の攻撃力を下げ、バブルドッグの攻撃力をアップ!」

 

「速攻魔法、『神秘の中華なべ』!『ゴヨウ・ガーディアン』をリリースし、その攻撃力分、LPを回復!」

 

オベリスク・フォース LP200→3000

 

「バブルドッグでセットモンスターへ攻撃!」

 

「『補給部隊』の効果でドロー!」

 

オベリスク・フォース 手札0→1

 

「相克でダイレクトアタック!」

 

「墓地の『カイトロイド』を除外し、ダメージを0に!」

 

「ッ、魔法カード、『七星の宝刀』!レベル7のモンスター、相克を除外し、2枚ドロー!」

 

榊 遊矢 手札0→2

 

「カードを2枚セット、ターンエンドだ」

 

榊 遊矢 LP700

フィールド『EMラディッシュ・ホース』(守備表示)『EMパートナーガ』(守備表示)『EMバブルドッグ』(攻撃表示)

『補給部隊』セット2

Pゾーン『時読みの魔術師』『星読みの魔術師』

手札0

 

「俺のターン、ドロー!速攻魔法、『ツイン・ツイスター』!手札を1枚捨て、ペンデュラムを破壊!ターンエンドだ」

 

オベリスク・フォース LP3000

フィールド

『補給部隊』セット1

手札0

 

「俺のターン、ドロー!ラディッシュ・ホースとパートナーガをリリース!アドバンス召喚!『法眼の魔術師』!」

 

法眼の魔術師 攻撃力2200

 

現れたのは『慧眼の魔術師』と対をなす『魔術師』ペンデュラムモンスター、銀色の髪を靡かせ、筋骨隆々とめ言える体躯を誇り、神聖なオーラをその身に纏う。

 

「バトル!法眼でダイレクトアタック!」

 

「罠発動!『リジェクト・リボーン』!バトルフェイズを終了し、『ゴヨウ・ガーディアン』と『ジュッテ・ナイト』を蘇生!」

 

ゴヨウ・ガーディアン 攻撃力2800

 

ジュッテ・ナイト 守備力900

 

「ターンエンドだ」

 

榊 遊矢 LP700

フィールド『法眼の魔術師』(攻撃表示)『EMバブルドッグ』(攻撃表示)

『補給部隊』セット2

手札0

 

「俺のターン、ドロー!」

 

「墓地の『妖怪のいたずら』を除外し、『ゴヨウ・ガーディアン』のレベルを1つダウン!」

 

ゴヨウ・ガーディアン レベル6→5

 

「チッ、ならばバトルだ!」

 

「罠発動!『ペンデュラム・リボーン』!エクストラデッキのパートナーガをフィールドに!」

 

EMパートナーガ 守備力2100

 

「バブルドッグの攻撃力をアップ!」

 

EMバブルドッグ 攻撃力2300→2900

 

「やるな……カードを1枚セット、ターンエンドだ」

 

オベリスク・フォース LP3000

フィールド『ゴヨウ・ガーディアン』(攻撃表示)『ジュッテ・ナイト』(守備表示)

『補給部隊』セット1

手札0

 

「俺のターン、ドロー!バトルだ!法眼で『ジュッテ・ナイト』へ攻撃!」

 

「罠発動!『緊急同調』!バトルフェイズにシンクロ召喚を行う!俺はレベル6の『ゴヨウ・ガーディアン』に、レベル2の『ジュッテ・ナイト』をチューニング!お上の威光の前にひれ伏すが良い!シンクロ召喚!『ゴヨウ・キング』!」

 

ゴヨウ・キング 攻撃力2800

 

現れたのは『ゴヨウ』モンスター達を統べる王。『ゴヨウ・ガーディアン』の正統進化形、歌舞伎化粧に日本刀と十手を構えた岡っ引きのモンスター。下駄の音をカカンッ、と鳴らし、居合いの構えを取って法眼を睨む。

 

「バトルを中断、バブルドッグで『ゴヨウ・キング』へ攻撃!」

 

「アクションマジック、『回避』!」

 

「カードを1枚セット、ターンエンドだ」

 

榊 遊矢 LP700

フィールド『法眼の魔術師』(攻撃表示)『EMパートナーガ』(守備表示)『EMバブルドッグ』(攻撃表示)

『補給部隊』セット2

手札0

 

「俺のターン、ドロー!バトル!『ゴヨウ・キング』でバブルドッグへ攻撃!この瞬間、攻撃力を400アップ!」

 

「罠発動!『ドレイン・シールド』!攻撃を無効にし、『ゴヨウ・キング』の攻撃力分、回復!」

 

ゴヨウ・キング 攻撃力2800→3200

 

榊 遊矢 LP700→3500

 

「フン、カードを1枚セット、ターンエンドだ」

 

オベリスク・フォース LP3000

フィールド『ゴヨウ・キング』(攻撃表示)

『補給部隊』セット1

手札0

 

「俺のターン、ドロー!法眼とパートナーガをリリースし、アドバンス召喚!『降竜の魔術師』!」

 

降竜の魔術師 攻撃力2400

 

今回かなり使用されるアドバンス召喚、現れたのは竜の血を宿す『魔術師』モンスター。ここからが反撃開始だ。遊矢の意気に応え、杖を回転させ、地面に突き刺して両手を合わせる。

 

「降竜の効果でこのカードをドラゴン族に変更!そして降竜とバブルドッグをリリース!出でよ!野獣の眼光りし獰猛なる龍!『ビーストアイズ・ペンデュラム・ドラゴン』!」

 

ビーストアイズ・ペンデュラム・ドラゴン 攻撃力3000

 

ここで遊矢が、このデュエル初めて、ペンデュラム以外のエクストラデッキからのモンスターを呼ぶ。雄々しい咆哮を放つのは、獣骨の鎧を纏い、青い毛並みを伸ばした竜。赤と緑、加えて額に獣の眼を開いた『オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン』の進化形だ。

 

「バトル!ビーストアイズで『ゴヨウ・キング』へ攻撃!ヘルダイブバースト!」

 

「やれやれ、足下がお留守だぞ?罠発動!『セキュリティー・ボール』!攻撃モンスターを守備表示に!」

 

ビーストアイズがアギトに炎を集束し、放とうとしたその瞬間、ズボリと地面から黄色く発光する赤い球体が出現、コアから光の糸を放ち、ビーストアイズの脚に引っかけて転ばせ、その間に糸を張り巡らせ、地面に縛りつける。

 

「ッ――ターンエンドだ」

 

榊 遊矢 LP3500

フィールド『ビーストアイズ・ペンデュラム・ドラゴン』(守備表示)

『補給部隊』セット1

手札0

 

「俺のターン、ドロー!クク、必死だなぁ?魔法カード、『一時休戦』!互いに1枚ドローし、次のターン終了までダメージを0に!」

 

オベリスク・フォース 手札0→1

 

榊 遊矢 手札0→1

 

「魔法カード、『ミラクルシンクロフュージョン』!墓地の『ゴヨウ・ガーディアン』と『ゴヨウ・プレデター』を除外し、融合!融合召喚!出でよ、荘厳なる捕獲者の血統を受け継ぎし者!『ゴヨウ・エンペラー』!」

 

ゴヨウ・エンペラー 攻撃力3300

 

『ゴヨウ・キング』に並び立つのは更なる『ゴヨウ』の進化形、皇帝の名を与えられた幼き少年の姿をし、玉座に腰かけたモンスターだ。

 

「『ゴヨウ・キング』でビーストアイズへ攻撃!」

 

「永続罠、『光の護封霊剣』!LPを1000払い、攻撃を無効!」

 

榊 遊矢 LP3500→2500

 

「『ゴヨウ・エンペラー』で追撃!」

 

「『光の護封霊剣』の効果!」

 

榊 遊矢 LP2500→1500

 

「ビーストアイズを守ったか……まぁ、LPを2000削れたんだ、良しとしよう。ターンエンド」

 

オベリスク・フォース LP3000

フィールド『ゴヨウ・キング』(攻撃表示)『ゴヨウ・エンペラー』(攻撃表示)

『補給部隊』

手札0

 

「俺のターン、ドロー!魔法カード、『マジック・プランター』!『光の護封霊剣』をコストに2枚ドロー!」

 

榊 遊矢 手札1→3

 

「『EM小判竜』を召喚!」

 

EM小判竜 攻撃力1800

 

ビーストアイズ・ペンデュラム・ドラゴン 攻撃力3000→3500

 

「ビーストアイズを攻撃表示に変更し、バトルに入る!ビーストアイズで『ゴヨウ・キング』へ攻撃!」

 

「ッ、『補給部隊』の効果でドロー!」

 

オベリスク・フォース 手札0→1

 

「カードを1枚セット、ターンエンド!」

 

榊 遊矢 LP1500

フィールド『ビーストアイズ・ペンデュラム・ドラゴン』(攻撃表示)『EM小判竜』(攻撃表示)

『補給部隊』セット1

手札1

 

「俺のターン、ドロー!2枚目の『補給部隊』を発動!そしてモンスターをセット、バトル!『ゴヨウ・エンペラー』で小判竜へ攻撃!」

 

「罠発動!『攻撃の無敵化』!ダメージを0に!『補給部隊』の効果でドロー!」

 

榊 遊矢 手札1→2

 

「ターンエンドだ」

 

オベリスク・フォース LP3000

フィールド『ゴヨウ・エンペラー』(攻撃表示)セットモンスター

『補給部隊』×2

手札0

 

「俺のターン、ドロー!モンスターをセット、バトルだ!ビーストアイズでセットモンスターへ攻撃!」

 

「セットモンスターは『カードガンナー』、2枚の『補給部隊』の効果も合わせ、3枚ドロー!」

 

「ビーストアイズの効果で素材となったバブルドッグの攻撃力分、ダメージを与える!」

 

オベリスク・フォース LP3000→700 手札0→3

 

「ぬぅぅぅぅ……!」

 

ビーストアイズのアギトから青い炎が放たれ、オベリスク・フォースを呑み込む。強力な一撃、思わず両腕を交差し、盾とする。

 

「メインフェイズ2、魔法カード、『一時休戦』を発動!」

 

榊 遊矢 手札1→2

 

オベリスク・フォース 手札3→4

 

「ターンエンドだ」

 

榊 遊矢 LP1500

フィールド『ビーストアイズ・ペンデュラム・ドラゴン』(攻撃表示)セットモンスター

『補給部隊』

手札2

 

「俺のターン、ドロー!魔法カード、『古代の整備場』を発動。墓地の『古代の機械箱』をサルベージ。そしてドロー以外でデッキ、墓地から加わったこのカードの効果で『古代の機械素体』をサーチ、召喚!」

 

古代の機械素体 攻撃力1600

 

現れたのは『古代の機械巨人』から重厚なボディを奪ったような、骨格のみのモンスターだ。

 

「効果を使い、手札を1枚捨て、デッキから『古代の機械融合』をサーチ!発動!フィールドの『古代の機械素体』、手札の『古代の機械箱』、『古代の機械巨竜』、『古代の歯車機械』の4体で融合!融合召喚!『古代の機械混沌巨人』!!」

 

古代の機械混沌巨人 攻撃力4500

 

再び現れるオベリスク・フォースの切り札。青錆を纏う、『アンティーク・ギア』最大最強の巨神。圧倒的力を誇る超弩級のモンスター。『ゴヨウ』最強の『ゴヨウ・エンペラー』と並び立ち、赤い眼を妖しく光らせる。

 

「バトル!混沌巨人でビーストアイズとセットモンスターへ攻撃ィ!」

 

「う、あっ……!」

 

混沌巨人が右腕にエネルギーを充填し、バチバチと雷が囀ずる黒い球体を撃ち出し、ビーストアイズに着弾、ドーム状に衝撃が広がり、遊矢のモンスターを跡形もなく破壊する。

 

「『補給部隊』の効果でドロー!」

 

榊 遊矢 手札2→3

 

「カードを1枚セット、ターンエンドだ」

 

オベリスク・フォース LP700

フィールド『古代の機械混沌巨人』(攻撃表示)『ゴヨウ・エンペラー』(攻撃表示)

『補給部隊』×2セット1

手札0

 

「俺のターン、ドロー!『EMヘルプリンセス』を召喚!」

 

EMヘルプリンセス 攻撃力1200

 

遊矢のターン、手札より出現したのはマジックハンドを持つ紫色の髪をツインテールに結んだ少女だ。攻撃力は低く、この場に出すカードには向いていない。本人もオベリスク・フォースのフィールドに揃ったモンスターを見て、ビクリと肩を震わせ、涙目となる。

 

「魔法カード、『龍の鏡』!墓地の『ビーストアイズ・ペンデュラム・ドラゴン』と、フィールドのヘルプリンセスを除外し、融合!今一つとなりて新たな命ここに目覚めよ!融合召喚!現れ出でよ!気高き眼燃ゆる勇猛なる龍!『ブレイブアイズ・ペンデュラム・ドラゴン』!」

 

ブレイブアイズ・ペンデュラム・ドラゴン 攻撃力3000

 

フィールドに巨大な炎が発生し、その中を裂いて新たなモンスターが産声を上げる。彼のエース、『オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン』を正統進化させたような、赤い鱗を宝石のように輝かせ、黄金の角を煌めかせるオッドアイのドラゴン。雄々しく勇猛な遠吠えを放ち、その体躯から赤い竜の影が何本か伸び、オベリスク・フォースのモンスターに突き刺さる。

 

「ブレイブアイズの効果!お前のモンスターの攻撃力を0に!」

 

古代の機械混沌巨人 攻撃力4500→0

 

ゴヨウ・エンペラー 攻撃力3300→0

 

「!」

 

「バトルだ!ブレイブアイズで混沌巨人へ攻撃!灼熱のメガフレイムバーストッ!」

 

「罠発動!『パワー・ウォール』!デッキトップから6枚のカードを墓地に落とし、ダメージを0に!そして『補給部隊』の効果でドロー!」

 

オベリスク・フォース 手札0→2

 

「ぬうっ……!」

 

ブレイブアイズのアギトに大気が集束し、火炎が迸って混沌巨人に撃ち出される。力が錆び付いた混沌巨人は反撃する事も出来ず、高熱で燃やされ、陽炎が揺らめいた後に姿を消す。

 

「カードを1枚セット、ターンエンドだ」

 

榊 遊矢 LP1500

フィールド『ブレイブアイズ・ペンデュラム・ドラゴン』(攻撃表示)

『補給部隊』セット1

手札1

 

「俺のターン、ドロー!魔法カード、『死者への手向け』!手札を1枚捨て、ブレイブアイズを破壊!」

 

「速攻魔法、『禁じられた聖槍』!ブレイブアイズの攻撃力を800ダウンし、魔法、罠への完全耐性を与える!」

 

ブレイブアイズ・ペンデュラム・ドラゴン 攻撃力3000→2200

 

「逃したか……構わん!『ゴヨウ・エンペラー』をリリース、『歯車街』の効果でリリースを軽減し、アドバンス召喚!『古代の機械巨人』!!」

 

古代の機械巨人 攻撃力3000

 

フィールドに現れる、『アンティーク・ギア』の代表的な大型モンスター。この状況でブレイブアイズを引き抜いて来た。この男も大概ツイているとしか言いようが無い。古びた歯車を回転させ、銅の体躯が稼働する。鈍く、赤く輝くモノアイを輝かせ、遊矢を睨み、強者のオーラを放つ。

 

「バトルだ!『古代の機械巨人』で、ブレイブアイズへ攻撃!アルティメット……パウンドォォォォォッ!!」

 

榊 遊矢 LP1500→700

 

ギギギも鈍い音が響き、『古代の機械巨人』が駆動、右腕を大きく振りかぶってブレイブアイズを押し潰し、フィールドに亀裂を走らせて砂塵を巻き起こす。

 

「ぐあっ……!『補給部隊』の効果でドロー!」

 

榊 遊矢 手札1→2

 

「ターンエンド……さぁ、貴様のターンだ……!」

 

オベリスク・フォース LP700

フィールド『古代の機械巨人』(攻撃表示)

『補給部隊』×2

手札0

 

強い――脅威的な戦術を繰り出し、進化を遂げたオベリスク・フォースのデュエル。最早一流以上の域まで達している。驚かされるばかりだ。だけど、だからこそ楽しい。何が起こるか分からない、ワクワクドキドキするデュエル。1つだけ分かるのは、彼も、デュエルが好きで、楽しんでいる事。それが、彼のデッキから、デュエルから伝わってくる。アカデミアにも、こんなデュエリストがいる。

 

「へへ、やっぱり凄いなアンタ……」

 

「当然だ、アカデミアの精鋭をなめてもらって困る」

 

「凄いし、強い。それに面白い……だけど、ここで逆転すれば、もっと面白いよな?」

 

「ほう……出来るものなら、やって見せろ!」

 

デュエリストとしての闘気が迸る。熱き血潮が流れ、脈を打つ。互いに全身全霊、全力全開、まだまだ、高みへと昇る。

 

「行くぞ!お楽しみは、これからだぁっ!」

 

引き抜かれる、1枚のカード、その軌跡が、天空に虹色のアークを描く。デッキは――遊矢へと応える。

 

「来たか……!俺は魔法カード、『ペンデュラム・パラドックス』を発動!エクストラデッキより、スケールが同じ、ラフメイカーと小判竜を回収!そして魔法カード、『EMキャスト・チェンジ』!小判竜をデッキに戻し、2枚ドロー!『EMウィム・ウィッチ』を召喚!」

 

EMウィム・ウィッチ 攻撃力800

 

現れたのはピンク色の猫のモンスター。後は――。

 

「魔法カード、『二重召喚』!ウィム・ウィッチはペンデュラムモンスターのアドバンス召喚に使用する場合、2体分のリリース要員となれる!ウィム・ウィッチをリリース!アドバンス召喚!『EMラフメイカー』!」

 

EMラフメイカー 攻撃力2500

 

現れたのはこのデュエル、2度目の登場となる魔法使い。ステッキとトランプを手に持った、マジシャンのような出で立ちのこのカードが、遊矢を勝利へ導く鍵となる。

 

「フ、またそのモンスターか……だが、そいつでは俺の『古代の機械巨人』には届かん!」

 

「焦るなよ、『EM』には『EM』の闘う舞台があるんだぜ?Ladies and Gentleman!魔法カード、『スマイル・ワールド』を発動!」

 

EMラフメイカー 攻撃力2500→2700

 

古代の機械巨人 攻撃力3000→3200

 

そしてこれが――このデュエルのラストを飾る、フェイバリットカード。発動と同時に、『歯車街』に色とりどりの笑顔のスタンプが散りばめられ、世界を鮮やかに変えていく。これが――『EM』の、戦う舞台、心を惹き付けるショーこそ、彼等の本領が発揮出来る場所。

 

「この効果で互いのモンスターは、フィールドのモンスターの数×100、攻撃力がアップする。バトルだ!ラフメイカーで、『古代の機械巨人』へ、攻撃!」

 

ラフメイカーがステッキを振るい、稲妻が激しくスパークしながら放たれる。そんな中――遊矢の脳裏に、ある光景が過る。昔、とある場所で、学生服の少年と、青いコートを纏った金髪の男性が向かい合い、デュエルをおこなう光景、そのデュエルは、佳境を向かえ――赤と緑の人型のモンスターが、背に伸びた翼を広げ、竜の頭部が生えた右腕を巨人へと向けて。

 

「ラフメイカーの、効果発動!」

 

EMラフメイカー 攻撃力2700→4700

 

今、決着する。

 

「ラフィングスパークッ!!」

 

オベリスク・フォース LP700→0

 

勝者、榊 遊矢。ソリッドビジョンのモンスターとフィールドが光の粒子に消えいく中、彼は記憶の中の少年と同じく、中指と人差し指を突き出し、眩しい笑顔を見せる。

 

「ガッチャ!楽しいデュエルだったぜ!」

 

まるで太陽を思わせるような、溢れんばかりの笑み。対するオベリスク・フォースは、口端を吊り上げ、不敵に笑って強気を見せようとするが――上空より影が差し、見上げる間もなく、頭部を踏みつけられ、ガンッ、と鈍い音を鳴らして地面に倒れる。

 

「がぁっ――!?」

 

余りにも突然の出来事に、目を見開き、思考が混乱する遊矢。一体、何が起こっている、と、目の前に表れ、オベリスク・フォースの上に着地した人物に、視線を移す。この、男は――。

 

「……久し振りだな、榊 遊矢……!」

 

風に揺れる、白いマント、首にかけられた重々しいヘッドフォン、マントの下には黒いジャケットを纏い、左腕には黄金のデュエルディスクが装着されている。そして何よりも目を引くのは――彼のキャラクターを決定つける、頭に被ったつばの欠けた黒い帽子。

遊矢に向かい、好戦的な笑みを浮かべる、この少年は――。

 

「黒い、コナミ……!」

 

絶望をもたらす、希望の使者が、白き大地に降り立った。

 

「さぁ、デュエルを始めようか……!」

 

ニヤリ、笑みを浮かべ、デュエルディスクを構え、光輝くプレートを展開する、黒コナミ。この乱戦の中、遊矢は思いもよらぬ再会を果たした。


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