遊戯王ARC―V TAG FORCE VS   作:鉄豆腐

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あれおかしいな……格好いい黒咲さんを書きたかったのに、何だこのコンビ芸人は……いや、黒いのを合わせるとトリオか……。


第15話 彼はLDSではない(無言の腹パン)

「おい、デュエルしろよ」

 

遊矢が黒き地のデュエリストと邂逅していた頃、赤い帽子を目深に被り、ゴーグルを着用した少年、コナミは遊勝塾に帰る道すがら、手当たり次第に野良デュエルを挑んでいた。

勿論、満足ジャケットを身に付けて、である。ある意味で正しい使用方法と言えよう。今のコナミはデュエルギャングそのものなのだから。その証拠に声を掛けられた少年は酷く怯えており、対するコナミは獲物を狙う肉食獣のように目を輝かせている。しかしそんな猛獣に近づく影が1つ。

 

「ああ、もう!やめろっつってんだろ!!」

 

バシリと硬い竹刀による打撃音がコナミの脳髄に響く。茶髪を無造作に伸ばした少年、彼はコナミを打ったであろう竹刀を振り回し、八重歯を剥き出しにして、コナミを睨めつける。如何にも不機嫌と言った様子の彼の名は、LDSシンクロコース所属、刀堂 刃。コナミの敵……であった。

 

「さっきから、目が合った奴に片っ端からデュエル挑みがって!何回目だと思ってやがんだテメェ!!」

 

肩をワナワナと震わせ、青筋を立てつつ、白目を剥いてコナミに怒りの矛先を向ける刃。そもそも何故、LDS所属である自分が、本来、敵である遊勝塾の問題児の世話をしなけばならないのか?

かと言って、他に彼を止められる者がいない以上、放って置く訳にもいかない。放って置いたら、この赤いのは何を仕出かすか分からないのだ。この時ばかりは自分の世話焼きな性分が恨めしく思える。

せめて遊勝塾(犬小屋)に戻すまでは目を離す訳にもいかないだろう。

 

「……4回位か?」

 

「13回目だ、このヤロォォォォぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」

 

瞬間、14歳の少年の怒りが爆発した。最早、我慢の限界だった。それもそうであろう、13回もコナミの暴走を止め、それでも、止まらず、挙げ句の果てには、ストレスの原因である本人が首を傾げるのである。

可愛げなくて憎さ千倍である。コナミの肩に爪を食い込ませ、ガクガクと揺する刃。そんな彼の肩を掴む者が1人。

 

「テメェ、刃!兄貴に何してんだ!その手を離しやがれ!」

 

「何で、お前はこのアホを庇ってんだ暗次ぃ!?」

 

大きな黒のヘアバンドで緑の髪を止め、鼻に絆創膏、耳にピアスをつけた、目付きの悪い、黒の道着を気崩した少年、刃の親友である、黒門 暗次だ。

彼はルビーのような赤の瞳をクワッ、と力強く見開き、刃の胸ぐらを掴み、睨めつける。何とも不良と言うか、チンピラ染みた行動である。彼がコナミ同様、デュエルギャングになる日も近いかもしれない。

 

「おい、ねね!お前からも何とか言ってくれ!このアホ共、ダメだ!コイツに関しては不良グループのリーダーだったわ!」

 

「がんばれー、コナミさーん!」

 

「そう言えば、お前もグループのメンバーだったなぁ!?」

 

救いを求める刃の視線の先にいるのは、暗次同様、黒の道着を細い身体に纏った、茶髪の少女、光焔 ねね。

彼女は口元に両手でメガホンを作り、目の前でデュエルに臨むコナミを応援していた。味方1人いない、あんまりにもあんまりな光景に、刃がツッコミを入れる。どうしてこうなった。刃の脳内にはその言葉がグルグルと渦巻き、埋めつくされていた。

そもそも、事の発端はデュエル後のこのアホっ子2人による、子分にしてください宣言である。コナミが迷っていた時に、道を示してくれた事に、感動したのか、彼等は恩義を感じ、自分達を売り込んだのだ。

対するコナミの反応はと言うと。

 

「構わん、好きにすると良い」

 

と言った簡素過ぎるものであった。彼らしいと言えば、彼らしいと言えるかもしれない。そんな無機質な台詞にも2人は歓喜し、はしゃいでいたが。

刃としては頭が痛い。因みに看板の件については刃が何とか諦めて貰った。刃は頑張った、超頑張った。

 

「兄貴、すげぇ…!」

 

「これで私達の分を含めて14勝ですね!内、13戦は公式戦じゃないですけど!」

 

気がつけば、先程まで刃の胸ぐらを掴んでいた暗次まで応援していた。しかも何時の間にかデュエルまで終わっている始末である。

得意気に微笑を浮かべ、暗次とねねとハイタッチをするコナミが何とも腹立たしい。イエーイじゃない。

 

「刃……」

 

「……何だ……?コナミ?」

 

口元を思いっきり引き吊らし、ひくひくと動かす刃。まるで張り詰めた弦のように必死に我慢している。少しの衝撃で激昂し、手元の竹刀は振り回されるであろう。

 

「イエーイ」

 

無情にも、コナミが手を天に向かって上げ、刃にハイタッチを要求してきた。これをアホと言わず何をアホと言おうか、その証拠にプツンッ、と刃の中で何かが切れた。

 

「イエーイじゃねぇよ!このアホ!今何回目だと思ってやがる!!」

 

「……3回目?」

 

「減ってんじゃねぇよ、このバカ!何時になったら遊勝塾に辿り着けるんだよバーカ!!」

 

額に幾つもの青筋を浮かべ、右手に握られた竹刀をブンブンと振り回す刃。

憎たらしい事に、コナミはひょいひょいとその攻撃をかわしつつ、右手を上げて、ハイタッチを迫っている。はっきり言って、ウザい、これ以上なくウザい。余りにも自由すぎる動きに、逆に振り回され、息を切らす刃。

 

「イエーイ」

 

「……ハァッ……!……ゼェッ……ゼェッ……ウブッ!……ゴフッ、ヒュー……ヒュー……!」

 

全身から滝の如く汗を流し、息切れを起こす、最早グロッキー状態の刃。彼は体力が少ない方ではない。むしろLDSのカリキュラムを受けている彼は人一倍、体力が多い方だ。今回は相手が悪かった。

その原因たるコナミは汗1滴垂らさず、ペチンと刃の掌に自らの掌をぶつける始末である。

もう刃が対抗できる手段はありったけの憎悪を込めた視線をコナミにぶつけるのみ、しかし、視線は物理的干渉能力を持っていない為、全て無駄になる。

勿論、コナミはその視線にすら気づいていないが。

人生とは理不尽なものである。14の少年が知るには早すぎた。

 

「凄かったなぁ、ねね!」

 

「はいっ!やっぱり、コナミさんは強いです!」

 

視線をふと、2人へと移す。自分の親友である黒門 暗次と光焔 ねね。

コナミの世話は酷く面倒だ。それでも、それでも、前のように彼等の暗い表情を見るよりかはマシなのだろう。

元通りの、親友として笑い合えるなら、この程度の代償、安いものかもしれない。

結局、刃もコナミの事を心から憎んでいる訳ではないのだ。むしろ好ましくさえある。敵であるにも関わらず、自分を、その親友を助けてくれた、赤帽子の少年。

彼の言葉に救われたのは暗次とねねだけではない。自分だってそうだ。迷って、捜し求めた答え。その答えを導き出せたのは彼のお蔭だ。

コナミだって刃にとって友達だ。世話を焼くのは面倒だが――友達なのだ。この程度、焼いてやろう。そう決意を新たに、胸を張り、前を見据える。

 

「おい、デュエルしろよ」

 

「目指せ20勝!いや、100勝だぜ!兄貴!」

 

「がんばれー!」

 

「何でだよコンチクショォォォォォォォォ!!?」

 

前言撤回、誰か、助けてください。そう、心から叫びたい、LDSシンクロコース所属、刀堂 刃であった。

 

――――――

 

「あちこちに怪我を負っているが……大丈夫か?」

 

「あ……ああ……」

 

コナミが14戦目の野良デュエルに臨んでいる一方で、遊矢は2人の少年を前に、動揺していた。原因は遠巻きに鋭い目付きで遊矢を睨めつけるコートを羽織った少年――ではなく、目の前で遊矢を心配する、黒きマントを羽織り、前髪を跳ねさせた、“自分と似た顔立ちの”少年。

正直、夢でも見ているんだろうか、と自身に疑いを抱いてしまう。それもそうであろう、先程、コナミと似た少年にあったばかりなのだ。今度は自分と似た少年とは、悪い夢か質の悪い冗談としか思えない。

取り敢えず、立ち上がろうと身を起こすも、黒コナミとのデュエルで受けた傷のせいか、直ぐによろめいてしまう。あわや地面にぶつかろうとした時、遊矢の身体を支える者が1人、遊矢に似た少年である。

 

「無理に動かない方が良い、手遅れになってからじゃ目も当てられない。身体は大事にするんだ」

 

「あ……ああ、ありがとう」

 

少年の真剣な表情に思わず首を縦に振る遊矢。何故だろうか?彼の言葉には妙な説得力がある。本当に聞いておかなければ、自分がダメになりそうで怖い。そう思える程に彼からは哀愁が漂っている。本当に同じ年頃であろうか?

 

「そんな話はどうだっていい!こいつが奴やお前が言っていたアカデミアの手先じゃないのか!」

 

遊矢が将来の事を心配していた時、その隣より、コートの男の横槍が入る。まるで何かに追われているかのような男の表情に遊矢にも緊張が走る。

今にも遊矢に飛びかかり、胸ぐらに掴みかからんであろう勢いである。しかし、鬼気迫る彼に少年の待ったがかかる。

 

「待つんだ隼!何時も思うがお前は話を良く聞いた方が良い。彼の服装を見るにスタンダードの人間だろう。融合ではない」

 

左手で隼と呼ばれた男を制し、遊矢に向き直る少年。しかし、隼は一層、鼻息を荒くし、鋭い眼光で遊矢を睨む。まるでその姿は獲物を見つけた大型の猛禽類のようですらある。

 

「成程、分かったぞユート」

 

先の様子より一変し、スッと目を伏せ、穏やかな表情で口元に薄い笑みを作る隼。その表情を見た、遊矢に似た少年、ユートはほっと安堵した表情を作り、胸を撫で下ろす。が、次の瞬間、再び隼がカッ、と目を見開き、右腕を突きだし、遊矢を指差す。

 

「貴様、LDSだな!」

 

「彼はLDSでもない!」

 

漫画ならばバァーン!と派手な擬音がつき、果ては集中線までかかっているであろう隼の行動を見かね、その鳩尾に鋭いストレートを抉り込ませるユート。コントである。その一連の流れを苦笑いで見ていた遊矢は隼と言う男の印象を大幅に変える。目付きの悪い怖そうな男から、アホっぽい男へと。そんな失礼な事を考えている間にユートが遊矢へと向き直る。

 

「すまないな、本当はこんな奴じゃないんだが、ここの所ポンコツでな、叩いておいたから直るだろう」

 

「そんなステレオタイプのテレビじゃないんだから……」

 

腹を抑え、地面に蹲る隼を横目で見ながら、ユートの突然のお婆ちゃんの知恵袋披露に呆れ返る遊矢。このユートと言う少年も疲れているのかもしれない。眼にうっすらとだが、隈が見える。

ユートは必死に呻き声を上げる隼を無視し、会話を続ける。

 

「俺の名はユート。あれは黒咲 隼と言う。君の名前を聞いていいか?」

 

「あっああ、俺は榊 遊矢だけど」

 

「遊矢、ここで何があったか聞いてもいいか?そこで倒れ伏せているLDSの連中と言い、建物の不自然な傷の事と言い、気になる事がある。もしかしたらアカデミアの仕業かもしれないしな」

 

最後の台詞は小声で遊矢には聞き取れなかったが、まぁいいかと持ち直す、彼は見た目こそ怪しいものの、その態度はとても真摯なものだ。

それに遊矢としても、自分と似たユートを放って置けない、できる限りならば力になりたい。

 

「えっと……最初は知り合いを捜してて、この裏通りに入ったんだけど……突然なんかこう……黒いのに襲われて……」

 

流石にその知り合いに似た少年に教われたなどと言えないし、コナミの名を出すのも気が引けて、その事は伏せて話す遊矢。

一方で、ユートは何か思うところがあるのか、「黒いの……いやまさかな」などぶつぶつと呟いている。

隼にいたってはぐったりとしている。当然のようにユートは気にした素振りを見せないが。こちらも気にしない方が良いのだろうな、と遊矢は言葉を続ける。

 

「この広場に出たと思ったら、そこに今みたいにLDSの人達が倒れていて、その原因が黒いのって分かったら、許せなくて、デュエルを挑んだんだ」

 

「……許せない……か……」

 

遊矢の発言に目を伏せ、自嘲気な、しかし嬉しそうに口元に薄い笑みを描くユート。その表情にどんな意味が隠されているかな分からない。遊矢はその表情に気づかず話を続ける。

 

「俺は……デュエルは、皆を笑顔にする為にあるって信じてる。見てる人を楽しませるものだって思ってる。だから……人を傷つけるデュエルをするあいつが許せなくて……分かって貰おうと、俺のエンタメデュエルで闘ったんだけど……負けちゃったみたいだな」

 

「……エンタメ……デュエル……」

 

自嘲気に笑顔を作り、弱気な自分を隠す遊矢。しかし、隠していても何かを察したのだろう、ユートの表情は真剣そのものである。そんな遊矢へと思わぬ一言が投げ掛けられる。

 

「くだらん」

 

その正体は倒れ伏していた筈の隼のものだ。未だにダメージが抜け切らないのか、壁にもたれ掛かりながら、よろよろとその身体を何とか立ち上がらせる。そんな彼の台詞が癪に触ったのだろう、遊矢はむっとした表情となり、反論をする。

 

「何が……!何が下らないって言うんだ!エンタメデュエルは!父さんのデュエルは下らなくないんかない!」

 

「そんなものは所詮、綺麗事だ。デュエルを……人を傷つけるための手段としか思わん奴等には通用しない!」

 

「ッ!」

 

隼の言葉には確かな重みがある。彼自身、そんな人物に心当たりがあるのだろう。そして遊矢も先程、デュエルした少年の事を思っていた。

果たして彼を、黒いコナミを自分のエンタメデュエルで笑顔に出来るのか、とデュエルで誰かを傷つける彼には夢見事でしかないのかもしれない。それでも。

 

「それでも……それでも、俺は……諦めたくない、俺は、エンタメデュエリストだから」

 

遊矢は信じる、信じたいのだ。自分の憧れた父親が人々を魅せた。奇跡とも言えるあの光景を、依存なのかもしれない、切望なのかもしれない。それでも、一筋でも希望があるなら、それに賭けてみたい。

それがデュエリストと言う者なのではないだろうか。

 

「……鉄の意志とは言えんが……銅(あかがね)の意志と言ったところか」

 

「隼、そこまでにしておけ、彼の信念は決して、下らないものではないだろう」

 

「……どうだかな、それよりユート、思ったより痛みが酷いんだが、ちょっと強く殴り過ぎでは――」

 

「少なくとも俺は、君の信念を否定などしない、その思い、大切にするんだ」

 

脂汗をかく隼の言葉を途中で遮るユート、何故だろうか?彼は少々隼に対して冷たい気がする。彼等の関係を知るよしもない遊矢には、首を傾げるしかない。

 

「兎に角、ここにいる怪我人は……遊矢、連絡か何かを入れて、俺達は離れよう。君も怪我をしているからな、俺が送ろう。隼はどうする?」

 

「……俺はいい」

 

「そうか、なら連絡だけでも寄越してくれ。何処にいるか分からないんじゃ、合流の仕様がない」

 

「分かった……榊 遊矢と言ったな」

 

その場を離れようとした隼が遊矢に対して声を掛ける。その意外な行動に驚いたのか、遊矢はびくりと肩を揺らす。

 

「……その思いを貫きたいなら、力をつけろ。力なき信念など、誰の胸にも届きはしないのだから」

 

そう言って踵を返し、コートを風に靡かせながら、隼はその場を後にする。その言葉の真意は何なのだろうか?と遊矢は首を傾げる。

 

「……彼なりのエールだろう。彼も、プロデュエリストを目指した身だ、君の信念を無視はできないのだろうな」

 

ユートの言葉にハッとする。そうか、彼は不器用ながらも、ほんの少しだが、遊矢を応援してくれたのだろう。初対面で彼の事は良く知らない。だけど、その思いには応えてみせたいと、遊矢は思った。

 

「さぁここを離れよう。何時までもここにいては、俺達が犯人だと思われてもおかしくはない」

 

「あ……ああ」

 

確かにそうだ。この前のLDS襲撃のような事があってもおかしくはない。倒れ伏したLDSのデュエリストを一瞥した後、後ろ髪を引かれる思いで、遊矢は自らと似た顔立ちの少年、ユートと共に、その場を後にするのであった。

 

――――――

 

ユートは考える。自分と似た顔をした少年、榊 遊矢、彼の信じると言ったデュエル、人々を笑顔にするエンタメデュエル。それはもしかすれば、自分が長い戦いの中で諦めてしまっていたデュエルではないのか?もう1度、取り戻したいものではないだろうか?

彼は言った。諦めたくない、と、例え人を傷つける者にも――デュエルの楽しみを――。彼は、遊矢は信用できる人物なのだろう。彼ならば――自分達の力になってくれるかもしれない、でも。

 

「イテテ……?どうかしたのか?」

 

「……いや、何でもない」

 

寂しげに口元を緩めるユート。きっと助けを求めれば、この少年は2つ返事で頷いてくれるかもしれない。信頼出来る仲間になってくれるだろう。だけど、だからこそ、彼を巻き込む訳にはいかない。

彼のデュエルは誰かを笑顔にする為にあるべきだ。自分達の戦いに巻き込めば、彼の平和は壊れてしまう、その信念は曲がってしまう可能性がある。

 

「あ!見えてきた!あれが遊勝塾だ!」

 

「……遊勝塾……」

 

遊矢が指差す方向を見る。河川敷近くに位置する独創的な建物、遊勝塾。遊矢が通い、学ぶ場所に自然とユートの興味も沸く。

しかし、その次の瞬間にはユートの顔は驚愕に変わる。その原因は建物の入り口付近に佇む人物。舞網市立第二中学特有の脇をざっくりと開いた、女子制服、ピンク色の髪をツインテールに纏め、右手首にブレスレットを嵌めた、その少女の顔立ちは――。

 

「瑠……璃……?」

 

驚く程、ユートの知る少女に、そっくりだった。

 

「……?遊矢……きゃっ!?」

 

彼女が2人の少年を視界に入れたと同時に、少女の右手首のブレスレットが眩き輝きを放ち、ユートの身体が淡く光る。

 

「っ!?ユート!?」

 

遊矢が必死に手を伸ばすも、ユートの姿は光の粒子となって消え去ってしまう。まるで夢でも見ているかのような、現実離れしたその光景に、遊矢と少女、柚子は目を丸くする。一体何が起こっているのか、理解が追い付かない。

 

「えっ……と、さっき、遊矢にそっくりな人がいたような……?」

 

「あ、ああ」

 

小走りで駆け寄る柚子に、気の抜けたような、心ここにあらずと言った様子で、返事を返してしまう。遊矢とて訳が分からないのだ。

自分そっくりな少年に助けられ、その少年が突然、目の前で消えた。まるで意味が分からない。幻覚か何かでも見ているのだろうか?

いや、確かに彼は、ユートは存在したのだ。とそんなところで。

 

「腹が減ったな……」

 

「刃ぁ!兄貴が腹を空かせているぞ!」

 

「ああもう!飴でも食っとけ!」

 

「あっ、私も欲しいです!」

 

「ああ、ほらよぉ!」

 

「刃ぁ!俺の分はねぇのかぁ!?」

 

「うるせぇバカ!お前は飴って顔じゃねぇだろ!」

 

騒がしいお供を連れて、遊勝塾の問題児が頬袋に飴を詰めて帰った来た。彼の傍には、2人の少年と1人の少女、その内1人は、遊矢と柚子の知る、LDSシンクロコース所属の刀堂 刃。残る2人は黒い道着を纏った、緑髪の不良らしき少年と顔色の悪い茶髪の少女。しかし、2人の目を引いたのは彼等ではない。2人の視線の先には。

 

「……コナミ、何だ、その格好」

 

満足ジャケット着用の、コナミがいた。

 

 




刃がユートの仲間になりそう、いや、もうなってるか。つまり刃は遊矢シリーズだった……?
そう言えばシンクロ次元には苦労してそうな名前の人がいましたねぇ(ゲス顔)

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