遊戯王ARC―V TAG FORCE VS   作:鉄豆腐

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第173話 未来を導くサーキット

後少し――後少しで目的の数値までデュエルエナジーが溜まりきる。プラシドはケープの下に笑みを隠し、頭の中の算盤を弾き、計画を完全なるものにしていく。

始めは少々不安が残ったが、蓋を開けて見れば随分とスムーズなものだった。それもこれも、予想外の乱入者であるコナミ達のお蔭だ。

鬼柳 京介とキース・ハワード。榊 遊矢と黒コナミ、バレット等の対戦カードも多くのデュエルエナジーを生成したが、彼等3人のぶつかり合いはその3倍はいく。

このままなら間もなくあれを呼び出せるだろう。皮肉なものだ。街を守る彼等が、街を滅ぼす物を作り出そうとは。

 

「さぁ……現れろ、未来を描くサーキットよ……!」

 

絶望の足音が、刻一刻と近づいていく。

 

――――――

 

かつて、こことは異なる次元、異なる世界で、誰よりもカードの声を聞き、カードと共に歩み、カードを愛した少年がいた。

その少年は優れたデュエルタクティクスやデュエルにおいての勘、ドロー力や運は人並み外れて長けていたものの、それ以外はどこにでもいる心優しい少年だった。

 

だがそんな彼はある事件を境として大きく変わる事となり――その果てに、人を越えた覇王となった。

そして、この場にいるのはなんの因果か、それとも必然か、覇王の魂を宿す似た顔立ちの少年。

異なる次元、異なる境遇で育ち、多くの強敵と凌ぎを削り、修羅場を潜り抜け、成長したデュエリスト。ユーゴとユーリ、シンクロ次元と融合次元の住人である2人がデュエルディスクを構え、睨み合っていた。

 

「先攻は俺が貰うぜ」

 

「どうぞ、しっかし、普通のデュエルは久し振りだなぁ。お互いLP4000なのが新鮮に感じるよ」

 

息巻くユーゴに対し、ユーリはどこまでもマイペースに自身のデュエルディスクに視線を落とす。彼がこう言うのも無理はない、何せこのシンクロ次元に来るまで魑魅魍魎が跋扈する闘技場で魂を削るような闇のデュエルを行っていたのだ。自身が不利なのは当たり前だったユーリとしてはフェアな闘いは最早違和感となっていた。

そんな彼を無視し、ユーゴは士気を高めたままデッキから5枚のカードを引き抜く。

 

「俺は『SRベイゴマックス』を特殊召喚!」

 

SRベイゴマックス 守備力600

 

現れたのは赤いベイゴマを数珠繋ぎにし、蛇のような形状となったモンスター。『スピードロイド』の中核となるカードであり、初手に引き込めたのは大きい。デッキもユーゴの意気に応えようとしているのだろうか。

 

「このカードは自分フィールドにモンスターが存在しない場合に手札から特殊召喚出来、また召喚、特殊召喚に成功した時、デッキからこのカード以外の『スピードロイド』モンスター1体を手札に加える事が出来る!俺は『SRタケトンボーグ』をサーチ、特殊召喚!」

 

SRタケトンボーグ 守備力1200

 

ベイゴマックスの効果でデッキから1枚のカードが引き抜けと言わんばかりに排出され、ユーゴはその1枚を手にし、直ぐ様フィールドへ呼び出す。フィールドにソリッドビジョンのカードが出現し、中から姿を見せたのは懐かしい玩具、竹トンボ。瞬く間に音を立てて変形し、丸いガラスの目をしたロボットとなる。

 

「こいつは俺のフィールドに風属性モンスターが存在する場合、特殊召喚出来、このカードをリリースする事でデッキから『スピードロイド』チューナーを特殊召喚出来る!来な!『SR三つ目のダイス』!」

 

SR三つ目のダイス 守備力1500

 

タケトンボーグと入れ替わりに、クルリと回転し、火を吹きながら現れたのは通常6面のサイコロと違い、4つの面かろ構成された三角錐の青いダイス。レベル3のチューナーモンスターだ。早速彼の武器、高速展開からシンクロへ繋げるか。

 

「俺はレベル3のベイゴマックスに、レベル3の三つ目のダイスをチューニング!十文字の姿持つ魔剣よ。その力で全ての敵を切り裂け!シンクロ召喚!現れろ、『HSR魔剣ダーマ』!」

 

HSR魔剣ダーマ 攻撃力2200

 

シンクロ召喚、三つ目のダイスが光輝く3つのリングとなって弾け飛び、ベイゴマックスがその中を潜り、3つの星となる。その後一筋の閃光がリングごと星を貫き、眩い光がフィールドを覆う。光を裂き、中から現れたのはけん玉のような形状をした意思持つ青い魔剣。

攻撃力はあまり高くないが、条件さえ揃えば毎ターン蘇生出来る貫通効果を有したモンスターだ。攻めて良し、壁にして良しのカード。様子見としては向いているか。

 

「シンクロ召喚か……」

 

「そして俺はまだ通常召喚を行っていない。『SRーOMKガム』を召喚!」

 

SRーOMKガム 攻撃力0

 

続けて現れたのはタケトンボーグと同じ変形ロボットモンスター。今回はガムを包む白い箱。音を立てて変形し、機械戦士としてフィールドに立つ。これでフィールドにはレベル6の非チューナーとレベル1のチューナーモンスター。どうやら彼の狙いはエースモンスターを呼び出す事のようだ。

 

「俺はレベル6の魔剣ダーマに、レベル1のOMKをチューニング!その美しくも雄々しき翼翻し、光の速さで敵を討て!」

 

ドクン、と両者の心臓が高鳴り、胸が締め付けられるような痛みが走る。2人にとっては因縁深きモンスターの登場が、彼等の本能に何かを訴えかけるのだろう。胸を掻き毟るように抑え、目を細める。

 

「シンクロ召喚!現れろ、『クリアウィング・シンクロ・ドラゴン』!!」

 

クリアウィング・シンクロ・ドラゴン 攻撃力2500

 

薄いミントグリーンの光の翼を広げ、天空に向かって吠え猛るのはユーゴが最も信頼するエースモンスター。その青と白のカラーリングをした体躯に土を着けた事は数度と言う戦績を誇るだけあり、圧倒的なエネルギーを秘めている事が見るだけで分かる。そして――このモンスターを見た時、ユーリの眼帯に覆われた右眼がズキリと唸った後、何故か涙の滴が溢れていく。

 

「あ……れ……?」

 

「な……!」

 

いきなりの涙を見て、ユーゴが僅かに動揺し、ユーリは流れる涙に呆然とする。理由も分からない。まるで、前世の恋人と再びあいまみえた衝撃が、ユーリを襲っているのだ。

 

「……何でだろう、涙が止まらないね。それに……心の底から、そのカードが欲しくて堪らなくなって来たよ……!」

 

ギィ、途端にユーリは彼本来の邪悪な笑みを浮かべる。ゾッとするような笑みだ。ユーゴは怯まずにデュエルを続ける。

 

「……シンクロ素材となったOMKガムの効果でデッキトップを墓地へ。『スピードロイド』モンスターの為、『クリアウィング』の攻撃力を1000アップする!」

 

クリアウィング・シンクロ・ドラゴン 攻撃力2500→3500

 

「カードを2枚セット、ターンエンドだ」

 

ユーゴ LP4000

フィールド『クリアウィング・シンクロ・ドラゴン』(攻撃表示)

セット2

手札1

 

いきなりのエースカードの登場。怨敵を相手に焦っているのかと見えてもおかしくないが、ユーゴにとってはこれ以上ない程慎重に事を運んでいる。

まず『クリアウィング』の存在。このカードは対モンスターに特化しており、不安な攻撃力もOMKガムで強化された。その上彼の墓地には自身を除外する事で攻撃を無効にする三つ目のダイスが存在し、もしもの時の為に蘇生可能なダーマが落ちている。ダーマを経由したのもこの為。

 

攻撃出来ない先攻だからこそ、迎撃の布陣を敷いたユーゴ。

至って冷静、いや、もしかすると今まで以上に冷静かもしれない。ユーリを憎んでいても、警戒は怠っていない。最初からフルスロットルでユーリを置き去りする勢いだ。足並みなんて揃えてやらない。

 

「ふぅん?何か企んでるみたいだね。反応が素直だ。そのドラゴンが厄介そうなのは勿論、フィールド、墓地にも仕込んでるね」

 

ジロリと睨む視線に、ユーゴの肩が僅かに揺れる。見抜かれた、とユーゴがユーリの観察眼に戦慄する中、ユーリはフ、と不敵な笑みを溢す。

 

「本当に反応が素直だねぇ、こんな分かりやすい手に引っかかってけれるなんて」

 

どうやらカマをかけられたらしい。意地の悪い少年だ。引っかかったユーゴはまたも分かりやすく、しまったと言う表情を作る。だがユーリは油断しない。この手のタイプは土壇場で思いもよらない戦術を見せるからだ。

 

「僕のターン、ドロー!始めようか、『捕食植物オフリス・スコーピオ』を召喚!」

 

捕食植物オフリス・スコーピオ 攻撃力1200

 

先鋒を任されたのは『捕食植物』にとってのベイゴマックスと言って良い、蠍の姿をしたモンスター。彼のデッキもまた、ユーゴのデッキを相手に意気込みは充分。

 

「召喚時、手札のモンスター1体を墓地に送る事でデッキからオフリス・スコーピオ以外の『捕食植物』をリクルートする。僕が呼ぶのは『捕食植物ダーリング・コブラ』」

 

捕食植物ダーリング・コブラ 守備力1500

 

次は蛇を模した『捕食植物』。ズルリと蔦を垂らしてフィールドに現れる姿は動物にしか見えない。

 

「ダーリング・コブラが『捕食植物』の効果で特殊召喚して事で、デッキから『融合再生機構』をサーチし、発動」

 

『融合』及び『フュージョン』魔法のサーチ。デュエル中1度しか使えないものの、融合使いであるユーリにとって生命線と言える効果だ。サーチするカードは迷うが、前半の為、消費を抑えられるこのカードを選ぶ。

 

「そして『融合再生機構』の効果発動。手札1枚を捨て、デッキから『置換融合』をサーチするよ」

 

こちらもユーゴに負けじと得意の召喚法の条件を整える。ユーリの手札に渡る『融合』魔法を見て、「融合じゃねぇ、ユーゴだ!」と叫びそうになるが、呑み込んで警戒に徹する。

 

「そして発動!僕はオフリス・スコーピオとダーリング・コブラで融合!融合召喚!『捕食植物キメラフレシア』!」

 

捕食植物キメラフレシア 攻撃力2500

 

融合召喚、ユーリの背後に突如として青とオレンジの渦が広がり、2体の『捕食植物』が溶け、混ざり合う。そしてユーリが両の手を合わせた瞬間、中より牙を持った蔦が渦を裂き、激臭を放つ巨大な花弁が咲き誇る。

ユーゴが全力なのに対し、こちらは警戒してか様子見らしい。エースを温存、代わりに準エースとも言える、ユーリの頼れる1枚が登場した。

 

「さて……『クリアウィング・シンクロ・ドラゴン』を対象に、キメラフレシアの効果発動!対象のこのカードのレベル以下のモンスターを除外する!」

 

「それじゃ『クリアウィング』は倒せねぇぜ!このカード以外のレベル5以上のモンスターのモンスター効果が発動された事で、『クリアウィング』の効果発動!その発動を無効にし、破壊!そしてこのカードの効果でモンスターを破壊した事で、破壊したモンスターの元々の攻撃力をこのカードに加える!ダイクロイック・ミラー!」

 

クリアウィング・シンクロ・ドラゴン 攻撃力3500→6000

 

「ふぅん……?」

 

キメラフレシアの蔦が『クリアウィング』に向かって伸びた時、『クリアウィング』の背から伸びる翼に幾何学的な紋様が浮かび上がり、紋様が針のように尖り、キメラフレシアの蔦を突き刺し、蔦の中を光の線が駆け抜け、全身にラインが描かれた後、キメラフレシアの身体がボロボロと光のブロックに変わって崩れ落ち、『クリアウィング』の翼へと吸収される。

 

しかしプレイングミスで自分のモンスターを失い、相手モンスターが強化されたにも関わらず、ユーリは動揺らしい動揺も見せない。

 

「成程ね。僕はカードを2枚セット、ターンエンド。この瞬間、『融合再生機構』の効果で素材として使ったオフリス・スコーピオを回収」

 

「『クリアウィング』の攻撃力も元に戻るぜ」

 

ユーリ LP4000

フィールド

セット2

『融合再生機構』

手札2

 

「それで終わりか?肩慣らしだぜ、全く!」

 

「肩透かし、でしょ」

 

結局無駄足とも言えるユーリの融合を見て、鼻を笑うユーゴに対し、彼の間違いに半眼で呆れるユーリ。ユーゴは「う」と頬を染め、恥ずかしそうな表情を見せ、誤魔化すように右手を大きく回す。

 

「同じようなもんだ!俺のターン、ドロー!」

 

「スタンバイフェイズ、墓地に送られたキメラフレシアの効果でデッキから『融合回収』をサーチする」

 

「俺は『SRシェイブー・メラン』を召喚!」

 

SRシェイブー・メラン 攻撃力2000

 

現れたのはタケトンボーグ、OMKガムと同じく変形ロボット型の『スピードロイド』。ユーゴの手に巨大なブーメランが出現し、彼がそれを空に向かって投擲、クルクルと宙に舞う最中、ガチャガチャと変形する。

 

「シェイブー・メランの効果!このカードを守備表示に変更し、『クリアウィング』の攻撃力を800ダウン!」

 

「……何……?」

 

「そして『クリアウィング』の効果発動!フィールドのレベル5以上のモンスターを対象として発動してモンスター効果を無効にし、破壊!」

 

「2つの破壊効果……」

 

クリアウィング・シンクロ・ドラゴン 攻撃力3500→5500

 

レベル5以上のモンスター1体のみを対象として発動したモンスター効果の無効、2つのモンスター効果対策を持つ『クリアウィング』。その全貌がユーリの前で明らかとなる。成程、これは予想以上に厄介な効果だ。キメラフレシアでは手も足も出ない。抜け道である打点は補強されているのも辛い。魔法、罠での攻略が肝となるか。

 

「バトル!『クリアウィング』でダイレクトアタック!旋風のヘルダイブスラッシャー!」

 

「相手モンスターの直接攻撃宣言時、手札の『捕食植物セラセニアント』を特殊召喚する!」

 

捕食植物セラセニアント 守備力600

 

そしてユーリはもう1つの抜け道を見つけ、手札から背中に植物を伸ばす蟻を呼び出す。このモンスターは対『クリアウィング』と言って良いモンスターだ。

 

「はっ、そんなモンスターで俺の『クリアウィング』を止められるかよ!行け、『クリアウィング』!」

 

ユーゴに応えるように、『クリアウィング』はその推進力を高め、猛スピードでセラセニアントに向かって突き進み、風を逆巻かせた翼で切り裂く。まるで名工が鍛え上げた日本刀のような切れ味の鋭さだ。思わず得意気な笑みを浮かべるユーゴ。

しかし、これこそがユーゴの狙い。ユーゴはまんまと嵌まってしまった。

 

「セラセニアントと戦闘を行ったモンスターはダメージ計算後、破壊される!」

 

「何だと!?」

 

レベル5以上のモンスター効果でも、対象に取るモンスター効果でもない。弱者だからこそ出来た『クリアウィング』殺し。ユーゴが驚くのも束の間。

ユーリが凄絶な凶笑を浮かべるのを合図に、切り裂いた時に仕込まれていたのだろう、翼に絡みついた葉、植えつけられた種が急激に成長、『クリアウィング』を覆い尽くし、貪り食らう。まるで蝶の死骸を食らう蟻の如き光景。植物の恐ろしい生命力の前に『クリアウィング』な力なく倒れ伏す。

 

「更にフィールドのセラセニアントが戦闘、効果で墓地に送られた事で、このカード以外の『プレデター』カードを手札に加える。『プレデター・プランター』を手札に加える」

 

そして『クリアウィング』の死骸から1本の蔦が伸び、ユーリの手に1枚のカードを渡す。減った分の手札も回復する始末だ。流石のユーゴも苦い顔となる。

 

「これでキメラフレシアの分は取り返したよ」

 

「ハッ、そうじゃなきゃなぁ……!ターンエンドだ!」

 

ユーゴ LP4000

フィールド

セット2

手札1

 

「僕のターン、ドロー!魔法カード、『融合回収』を発動!墓地の『置換融合』とダーリング・コブラを回収!オフリス・スコーピオを召喚!」

 

捕食植物オフリス・スコーピオ 攻撃力1200

 

「召喚時効果により、ダーリング・コブラをコストにデッキから『捕食植物ドロソフィルム・ヒドラ』を特殊召喚!」

 

捕食植物ドロソフィルム・ヒドラ 守備力2300

 

オフリス・スコーピオに並ぶのは伝説上の生物、ヒュドラを模した上級『捕食植物』。墓地に置いて損はないモンスターだ。

 

「そして永続魔法、、『プレデター・プランター』を発動!効果でセラセニアントを効果を無効にし、蘇生!」

 

捕食植物セラセニアント 守備力600

 

『融合』を使うデッキは揃えなければならないカードが多い為、展開に欠ける事が多いのだが、ユーリはそれがどうしたとばかりに展開、3体のモンスターを並べ立てる。

 

「そして『置換融合』を発動!フィールドのオフリス・スコーピオとセラセニアントで融合!融合召喚!『捕食植物キメラフレシア』!」

 

捕食植物キメラフレシア 攻撃力2500

 

「セラセニアントの効果で『捕食接ぎ木』をサーチ、発動。墓地のキメラフレシアを蘇生し、このカードを装備する」

 

捕食植物キメラフレシア 攻撃力2500

 

「『融合再生機構』の効果で手札1枚をデッキの『置換融合』へ変え、発動。フィールドのキメラフレシアとドロソフィルム・ヒドラで融合!融合召喚!『捕食植物ドラゴスタペリア』!」

 

捕食植物ドラゴスタペリア 攻撃力2700

 

次は竜を模したスタペリアのドラゴン。少々消費が多くなってしまったが、その効果故フィールドに置きたかったカードだ。

 

「良いのか?そんなにカードを使って」

 

「構わないさ。取り戻す方法は幾らでもある。こんな風に墓地の『置換融合』を除外し、キメラフレシアを戻し、ドロー!」

 

ユーリ 手札0→1

 

「バトル!ドラゴスタペリアでダイレクトアタック!」

 

「罠発動!『ピンポイント・ガード』!墓地のベイゴマックスに耐性を与え蘇生!」

 

SRベイゴマックス 守備力600

 

「効果で『スピードロイド』を――」

 

「ドラゴスタペリアの効果でベイゴマックスに捕食カウンターを乗せる。このカウンターが乗ったモンスターはレベルが1となり、ドラゴスタペリアはカウンター持ちのモンスターが発動するモンスター効果を無効にする!」

 

SRベイゴマックス レベル3→1 捕食カウンター0→1

 

「永続罠、『捕食惑星』を発動。捕食カウンターが乗ったモンスターがフィールドを離れた場合、『プレデター』カードをサーチする。墓地のドロソフィルム・ヒドラの効果、捕食カウンターが乗ったベイゴマックスをリリースし、蘇生」

 

捕食植物ドロソフィルム・ヒドラ 守備力2300

 

ベイゴマックスが存在する地面が崩れ、鋭い牙を見せる穴が開く。ドロソフィルム・ヒドラの胸にある口だろう、擬態してこの機会をうかがっていた訳だ。ペロリと耐性のついたベイゴマックスをたいらげ、ユーリのフィールドに呼び出される。

 

「『捕食惑星』の効果で『プレデター』カードをサーチ。ターンエンド。『融合再生機構』の効果でオフリス・スコーピオを回収」

 

ユーリ LP4000

フィールド『捕食植物ドラゴスタペリア』(攻撃表示)『捕食植物キメラフレシア』(攻撃表示)『捕食植物ドロソフィルム・ヒドラ』(守備表示)

『プレデター・プランター』『捕食惑星』セット1

『融合再生機構』

手札3

 

「俺のターン、ドロー!」

 

「キメラフレシアの効果で『融合回収』をサーチ」

 

不味い、これで0だったユーリの手札は4枚まで回復、一定の手札補充サイクルが出来た。しかもユーゴのモンスターを引き摺り込んだ上で、だ。このままだと一方的にやられかねない。ユーゴは何かないかと自らの手札に視線を落とす。

 

「速攻魔法、『魔力の泉』!お前のフィールドに存在する表側表示の魔法、罠の数、3枚分ドローし、俺のフィールドの表側表示の魔法、罠のカード1枚分を捨てる!」

 

ユーゴ 手札1→4→3

 

「悪くない手だ。だけど同時に、次のターン終了まで僕の魔法、罠は無効にならず、破壊耐性を得る」

 

「承知の上だ!『SR赤目のダイス』を召喚!」

 

SR赤目のダイス 攻撃力100

 

現れたのはその名の通り、赤い出目を光らせたサイコロのモンスターだ。

 

「リバースカード、オープン!速攻魔法、『スピードリフト』!俺のフィールドのモンスターがチューナー1体のみの場合、デッキからレベル4以下の『スピードロイド』をリクルートする!来な、『SRバンブー・ホース』!」

 

SRバンブー・ホース 守備力1100

 

今度は馬と竹馬を合体させたダジャレのようなモンスター。これでレベル1のチューナーとレベル4の非チューナーが揃った。

 

「レベル4のバンブー・ホースに、レベル1の赤目のダイスをチューニング!その躍動感溢れる、剣劇の魂。出でよ、『HSRチャンバライダー』!」

 

HSRチャンバライダー 攻撃力2000

 

今度は下半身が日本刀を模したバイクとなった侍のモンスター。廃墟の中をギュルリと駆け、ユーゴとユーリのモンスターの間に滑り込むように現れる。

 

「魔法カード、『ハイ・スピード・リレベル』!墓地の『SRビードロ・ドクロ』を除外、そのレベル×500、チャンバライダーの攻撃力をアップする!ビードロ・ドクロのレベルは7!3500アップだ!」

 

HSRチャンバライダー 攻撃力2000→5500 レベル5→7

 

「バトルと行こうぜ!」

 

「……ドラゴスタペリアの効果でチャンバライダーに捕食カウンターを乗せる」

 

HSRチャンバライダー レベル7→1 捕食カウンター0→1

 

「チャンバライダーでドラゴスタペリアへ攻撃!」

 

「罠発動!『ダメージ・ダイエット』!このターンのダメージを半分に!そしてドロソフィルム・ヒドラの効果で墓地のモーレイ・ネペンテスを除外し、チャンバライダーの攻撃力を500ダウンする!」

 

HSRチャンバライダー 攻撃力5500→5000

 

ユーリ LP4000→2850

 

「チッ……」

 

「そしてチャンバライダーは2回攻撃可能!チャンバライダーでキメラフレシアへ攻撃!攻撃時、攻撃力を200アップ!」

 

「キメラフレシアが戦闘を行う攻撃宣言時、その相手モンスターの攻撃力は1000ダウンし、このカードの攻撃力は1000アップする!」

 

HSRチャンバライダー 攻撃力5000→5200→4200

 

捕食植物キメラフレシア 攻撃力2500→3500

 

ユーリ LP2850→2500

 

一気に2体の融合モンスターの破壊、圧倒的な逆境から覆したユーゴにユーリがニヤリと口角を上げる。強い、待ち望んでいた相手だ。

 

「良いね君……!退屈しなくて済みそうだ!」

 

「言ってろタコ助。カードを1枚セット、ターンエンドだ。『ハイ・スピード・リレベル』の効果で上がったチャンバライダーの攻撃力は元に戻る」

 

ユーゴ LP4000

フィールド『HSRチャンバライダー』(攻撃表示)

セット1

手札0

 

「僕のターン、ドロー!スタンバイフェイズ、『プレデター・プランター』の維持コストとしてLPを800払い、キメラフレシアの効果で『融合回収』をサーチするよ」

 

ユーリ LP2500→1700

 

「そして『捕食接ぎ木』を発動!来い、『捕食植物キメラフレシア』!」

 

捕食植物キメラフレシア 攻撃力2500

 

「『プレデター・プランター』の効果でセラセニアントを蘇生する!」

 

捕食植物セラセニアント 守備力600

 

「魔法カード、『融合回収』!墓地の『置換融合』とダーリング・コブラを回収、オフリス・スコーピオを召喚!」

 

捕食植物オフリス・スコーピオ 攻撃力1200

 

「手札のダーリング・コブラを墓地に送り、デッキから『捕食植物サンデウ・キンジー』をリクルート!」

 

捕食植物サンデウ・キンジー 守備力200

 

驚くべき展開力、現れたのはモウセンゴケとエリマキトカゲを合わせたモンスター。ドロソフィルム・ヒドラと並び、強力のカードだ。

 

「魔法カード、『置換融合』!」

 

「罠発動、『裁きの天秤』!お前のフィールドには10枚のカード。俺のフィールド、手札は2枚。その差8枚をドロー!」

 

ユーゴ 手札1→9

 

安定するユーリの手札調達に対し、ユーゴは爆発力で勝負する一気に8枚のドロー。迎撃に備える。

 

「良いカードは引けたかな?フィールドのキメラフレシアとセラセニアントで融合!融合召喚!『捕食植物ドラゴスタペリア』!」

 

捕食植物ドラゴスタペリア 攻撃力2700

 

「セラセニアントの効果で最後の『捕食接ぎ木』をサーチ、『融合回収』を発動。セラセニアントと『置換融合』を手札に加え、サンデウ・キンジーが存在する限り、捕食カウンターが乗った相手モンスターは闇属性となり捕食カウンターの乗ったモンスターとこのカードで融合する事が出来る。当然……君のチャンバライダーもね」

 

「!」

 

「サンデウ・キンジーとチャンバライダーで融合!融合召喚!『捕食植物キメラフレシア』!」

 

捕食植物キメラフレシア 攻撃力2500

 

「チャンバライダーの効果でビードロ・ドクロを回収!」

 

「まだまだ行くよ!『捕食惑星』の効果で『プレデター』カードをサーチ!『置換融合』を発動!キメラフレシアとオフリス・スコーピオで融合!融合召喚!『捕食植物ドラゴスタペリア』!」

 

捕食植物ドラゴスタペリア 攻撃力2700

 

「墓地の『置換融合』を除外し、キメラフレシアを戻し、ドロー!」

 

ユーリ 手札4→5

 

「2枚目の『プレデター・プランター』を発動。何でも良いや、サンデウ・キンジーを蘇生」

 

捕食植物サンデウ・キンジー 守備力200

 

「手札を1枚捨て、『融合再生機構』の効果で『融合』をサーチ!発動!サンデウ・キンジーとドロソフィルム・ヒドラで融合!融合召喚!『捕食植物キメラフレシア』!」

 

捕食植物キメラフレシア 攻撃力2500

 

「装備魔法、『捕食接ぎ木』!ドラゴスタペリアを蘇生し、このカードを装備!」

 

捕食植物ドラゴスタペリア 攻撃力2700

 

これでユーリのフィールドに4体の融合モンスターが揃った。酷いソリティアを見た。とは言え笑えない状況だ。何せ捕食カウンターを乗せ、効果発動を封じるドラゴスタペリアが3体も存在しているのだ。

 

「こんなもんかな?バトル!ドラゴスタペリアでダイレクトアタック!」

 

「手札の『SRメンコート』の効果!このカードを特殊召喚し、お前のモンスターを守備表示に変更する!」

 

SRメンコート 攻撃力100

 

ユーゴが手札より1枚のカードをデュエルディスクに叩きつけると共に、メンコの形をしたモンスターが出現、ユーリのモンスターが風圧で宙を舞い、地面に叩き伏せられる。

 

「ハッ、そう来なくちゃ!メインフェイズ2、ドラゴスタペリアの効果でメンコートに捕食カウンターを乗せる」

 

SRメンコート レベル4→1 捕食カウンター0→1

 

「更に魔法カード、『アドバンスドロー』!『捕食接ぎ木』を装備したドラゴスタペリアをリリースし2枚ドロー!」

 

ユーリ 手札1→3

 

「更に魔法カード、『カップ・オブ・エース』!コイントスを行い、表が出れば僕が、裏なら君がドローする。表だ、2枚ドロー!」

 

ユーリ 手札2→4

 

「メンコートをリリース、ドロソフィルム・ヒドラを蘇生」

 

捕食植物ドロソフィルム・ヒドラ 守備力2300

 

「魔法カード、『マジック・ガードナー』を発動。『融合再生機構』に破壊耐性を与えるカウンターを乗せる」

 

融合再生機構 カウンター0→1

 

「カードを2枚セット、ターンエンド。『融合再生機構』の効果でオフリス・スコーピオを回収」

 

ユーリ LP1700

フィールド『捕食植物ドラゴスタペリア』(守備表示)×2『捕食植物キメラフレシア』(守備表示)『捕食植物ドロソフィルム・ヒドラ』(守備表示)

『プレデター・プランター』×2『捕食惑星』セット2

『融合再生機構』

手札2

 

「俺のターン、ドロー!」

 

「スタンバイフェイズ、キメラフレシアの効果で『決闘融合ーバトル・フュージョン』と『再融合』をサーチ」

 

「なら俺も手札のビードロ・ドクロの効果発動!エクストラデッキから特殊召喚されたモンスターが相手フィールドに存在する事で、スタンバイフェイズにこのカードを特殊召喚する!」

 

「手札の『増殖するG』を捨て、君がこのターン特殊召喚に成功する度にドロー!」

 

SRビードロ・ドクロ 攻撃力0

 

ユーリ 手札3→4

 

「魔法カード、『ハンマーシュート』!ドラゴスタペリアを1体破壊!そして『ハーピィの羽帚』!テメェの魔法、罠を全て破壊させてもらうぜ!」

 

「チェーンして罠発動、『強欲な瓶』!速攻魔法、『非常食』!逆順処理だ。『非常食』の効果でこのカードと『融合再生機構』以外の魔法、罠、計4枚を墓地に送り、4000回復。『強欲な瓶』の効果でドロー!」

 

ユーリ LP1700→5700 手札4→5

 

「次は『ハーピィの羽帚』の効果だけど――んん?僕の魔法、罠はカウンターに守られた『融合再生機構』と発動中の『非常食』だけだねぇ」

 

「小芝居やめろ!」

 

融合再生機構 カウンター1→0

 

ユーリの手札を補充する機関を潰しにかかるユーゴであるが、先を見越したかのようなユーリの手によって回避される。しかしこれで魔法、罠が消えた事は事実。バックを気にせずに済むと何とか持ち直す。

 

「魔法カード、『スピードリバース』!墓地の『スピードロイド』モンスター……『HSRチャンバライダー』を蘇生する!」

 

ユーリ 手札5→6

 

HSRチャンバライダー 攻撃力2000

 

ここはベイゴマックスと迷うが、ドラゴスタペリアを視界におさめ、チャンバライダーへと切り替える。

 

「墓地の『SRバンブー・ホース』を除外、デッキの『SR電々大公』を墓地へ送る。装備魔法、『7カード』を2枚、チャンバライダーに装備!」

 

HSRチャンバライダー 攻撃力2000→2700→3400

 

「成程……!」

 

「バトルだ!」

 

「その前に、墓地の『捕食惑星』を除外、フィールドのドロソフィルム・ヒドラとキメラフレシアで融合を行う!」

 

「惜し気もなく……!」

 

融合モンスターも使い、何でもないとばかりに素材とする。手痛いとも思ってないのか、ユーリは表情を曇らせる事なく、決断を下す。地下でデュエルを行って来たユーリにとって、最早勝利しかデュエルに価値はない。

 

「魅惑の香りで虫を誘う二輪の美しき花よ!今一つとなりて、その花弁の奥の地獄から、新たな脅威を生み出せ!」

 

そして――ドクン、ユーリが召喚口上を述べると共に、2人の心臓が熱く脈打つ。『クリアウィング』の時のように、身体の奥から何か巨大なものが引っ張り出されるのような感覚。一体何がこの先にあると言うのか、ユーゴら不安に駆られ、ユーリは凶笑を深め、互いに異なる反応を見せる。

 

「融合召喚!現れろ!飢えた牙持つ毒龍!『スターヴ・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン』!!」

 

スターヴ・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン 攻撃力2800

 

通常の融合の渦と異なる、漆黒の渦が出現、雷鳴が轟く中、2体のモンスターが吸い込まれ、バキバキと木々を重ねて折ったような音――違う、噛み砕き、咀嚼する音が響き、黒雲より深紅の光が灯り、放射状に広がるそれが渦を空中に溶かす。

 

そして中より姿を見せたのは、悪魔の化身。本来存在する筈の片眼は砕け散り、どこまでも深い闇が覗いている。紫の鱗を纏う肉は限界まで削ぎ落とされているが、その弱々しい姿とは裏腹に、竜の片眼は爛々と輝き、鋭い牙が唾液に濡れ、不気味に光っていてとても笑う事は出来ない。まるで手負いの獣。

圧倒的な存在感を放つ『スターヴ・ヴェノム』に、ユーゴが呆然とする。

 

「『スターヴ・ヴェノム』の融合召喚時、相手フィールドに特殊召喚されたモンスター1体を選び、その攻撃力を吸収する!チャンバライダーを選択!」

 

スターヴ・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン 攻撃力2800→6200

 

『スターヴ・ヴェノム』の背部の器官に赤い雷が迸り、食虫植物のように開き、眩き閃光を放つ。思わず両腕をクロスさせて視界を塞ぐユーゴ。その中で『スターヴ・ヴェノム』の影がチャンバライダーの影に食らいつき、貪り食らう。これでチャンバライダーの攻撃力を超えられたが、これは逆にチャンスだ。

 

「なら……ビードロ・ドクロで『スターヴ・ヴェノム』へ攻撃!」

 

「ッ、一体何を……!」

 

「ビードロ・ドクロの戦闘で発生する俺へのダメージは、代わりに相手が受けるのさ!」

 

「何っ!?くっ、ドラゴスタペリアの効果で捕食カウンターを乗せる!」

 

SRビードロ・ドクロ レベル7→1 捕食カウンター0→1

 

そう、これこそユーゴの狙い。本来ドロソフィルム・ヒドラへ攻撃し、その効果を発動させて2300のダメージを与えようとしたのだが、『スターヴ・ヴェノム』を出した事がユーリの仇となった。これが決まれば6200のダメージがユーリを襲う。ドロソフィルム・ヒドラの効果を使っても5700、ギリギリで削り切れる。

 

「無駄ぁ!この効果は永続効果だ!エースを出した事が運のツキだぜ!行け、ビードロ・ドクロ!」

 

ユーゴが拳を振り抜き、ビードロ・ドクロが列車の如く『スターヴ・ヴェノム』へ突っ込み、腹部に激突、その勢いのままユーリへと突き進む。そして、着弾。轟音と共に黒煙が上がる。

 

「しゃあっ!見たかこの野郎!」

 

凄まじい一撃を食らわせ、ユーゴが自然とガッツポーズを取る。漸く、ムカつく面に重い一発を与えてやった。肩で息を切らす中、彼の勝利を祝うかの如く、彼の最も大切な人が駆けつける。

 

「――ユーゴッ!」

 

「――この、声……!」

 

その、昔から聞き慣れた、鈴の音がなるような声を耳に入れ、ユーゴの身体がクルリと振り返る。そこにいたのは――。

 

「リン――!」

 

白いローブを纏い、ライダースーツを下に着込んだ緑のふわりとした髪、黄金の目を光らせ、息を切らした少女、リンの姿。

今まで記憶喪失となっていた筈の少女が、ユーゴを探し求め、ここまで駆けつけ、ユーゴの名を呼んだのだ。その事実に、ユーゴは感極まって彼女の下に走る。

 

「リン……!リン!お前、記憶が……!」

 

その瞬間だった。ユーゴの背後、リンから見て前方の黒煙より真っ赤な、禍々しい光が鈍く灯ったのは。

 

「フフ……ハハハハハ!ヒヒハハハハハ!」

 

「――ッ!?」

 

ズオッ、凄まじい勢いで黒煙が晴れ、その中より狂ったような哄笑が上がる。そんな馬鹿な、あの一撃を食らって立っている等――とユーゴが驚愕と共にリンを守るようにユーリの方へと向き直れば、そこにいたのは、ボロボロの姿になりつつも、フラリと幽鬼の如くこちらを射抜く、最悪の敵の姿。

 

「ハァ……凄い、凄いね君ィ。まさかこんな方法で勝とうとするなんて……思いもよらなかったよ。あぁ、期待以上だ……!ん?そこにいるのは――確か、リンだっけ?」

 

「!貴方は……」

 

ニィ、と口角を上げ、目を皿のようにしてこちらを見るユーリからリンを庇うように立ち、ユーゴは無理矢理に意識を自分に向ける為、そして謎を解く為にユーリを睨み、口を開く。

 

「一体どうやって、あの攻撃を堪えた?LPは減ってるが……」

 

「ん?あーうん、このカードをダメージ計算時に手札から捨てたのさ。『ガード・ヘッジ』。『スターヴ・ヴェノム』を戦闘から守る代償に、ターン終了まで攻撃力を半分にするカード」

 

スターヴ・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン 攻撃力6200→3100

 

ユーリ LP5700→2600

 

「そう言う事かよ……!」

 

「そう言う事だねぇ。さて!これで勝つ事は出来なかったけど大ダメージを与え、ビードロ・ドクロは破壊された。次はどんな手で来る?もっともっと楽しませてよ!じゃなきゃ満腹になんてなれない!」

 

「ッ、ユーゴ……!」

 

未だ余裕を見せるユーリの姿に、彼に拐われた時の事を思い出したのか、リンが不安気にキュッ、と彼の袖を掴む。心配なのだろう、それ程に、この少年の狂気は底知れない。だが、ユーゴは惚れた少女のこんな表情を見て、引き下がる男ではない。守り通す。この少女だけは、何としてでも。例え、命が燃え尽きようと。

 

「上等だぜ……!リン、安心しろ、お前は俺が守るからよ……!」

 

「ユーゴ……!わ、私も……!」

 

「へぇ……格好良いねぇ。そうじゃなくちゃ!って言う事らしいからぁ……」

 

バチン、リンがユーゴを助けようと自らもデュエルディスクを構え、参戦しようとしたその時、ユーリがその瞬間を逃さず、その掌から赤い稲妻を放ち、彼女のデュエルディスクをショートさせる。

 

「きゃっ」

 

「リン!テメェ!」

 

「安心しなよ、ちょっと大人しくしてもらうだけさ。君と僕の楽しいデュエル、誰にも邪魔はされたくないしね」

 

「ハッ、そんなに食い足りなきゃ、腹が破れる位食らわせてやるよ!チャンバライダーでドラゴスタペリアへ攻撃!」

 

「2枚目の『ガード・ヘッジ』を切る!」

 

「2回目の攻撃ぃ!」

 

「3枚目の『ガード・ヘッジ』を切る!」

 

捕食植物ドラゴスタペリア 攻撃力2700→1350→675

 

「チッ、メインフェイズ2、墓地の『SR電々大公』を除外し、『SR赤目のダイス』を蘇生!」

 

SR赤目のダイス 守備力100

 

ユーリ 手札3→4

 

「効果でチャンバライダーのレベルを6に変更!」

 

HSRチャンバライダー レベル5→6

 

「更に速攻魔法、『スター・チェンジャー』!赤目のダイスのレベルを1つ上げる!」

 

SR赤目のダイス レベル1→2

 

「僕は手札の『儚無みずき』を捨て、このターンのメインフェイズとバトルフェイズ中に君が特殊召喚した効果モンスターの攻撃力分のLPを回復する」

 

「レベル6のチャンバライダーに、レベル2の赤目のダイスをチューニング!神聖なる光蓄えし翼煌めかせ、その輝きで敵を討て!」

 

ズキリ、一瞬激しい痛みが胸を襲うも、グッと堪え、ユーゴは自らの切り札を呼ぶ。セクトとのデュエルの中、自分の全てを賭け、生み出した最強のカードが今、白き光を纏い、天に飛翔、水晶の輝きが散る。

 

「シンクロ召喚!出でよ!『クリスタルウィング・シンクロ・ドラゴン』!!」

 

クリスタルウィング・シンクロ・ドラゴン 攻撃力3000

 

ユーリ LP2600→5600 手札3→4

 

神々しいとも言える光を放ち、水晶の鱗持つ竜は、頼もしき背をユーゴ達に見せ、『スターヴ・ヴェノム』と向かい合う。全力全開。己の全てで、守り抜く。クリスタルウィングの登場と共に、ユーゴとユーリが笑みを深める。

 

「カードをセット、ターンエンドだ」

 

「『融合再生機構』の効果でキメラフレシアをエクストラデッキへ戻すよ」

 

「さぁ、かかって来やがれ!」

 

ユーゴ LP4000

フィールド『クリスタルウィング・シンクロ・ドラゴン』(攻撃表示)

セット1

手札1

 

相対する輝きの竜と闇の竜。心に光を持つ覇王と邪悪纏う覇王。新たな切り札を手に、飢えし者を迎え撃つ。ユーゴを前に、ユーリは一段、闇を深め、堕ちていく。


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