遊戯王ARC―V TAG FORCE VS   作:鉄豆腐

18 / 202
ウィング・レイダーズを6箱買った結果、何時の間にかRR組んでた。あれぇ幻影騎士団はぁ?黒咲さんの意地でもRR組まそうとする鉄の意志を感じる……ストリクス5枚もいらねぇから後1枚だけでもライガーとブーツ下さい!
超量が思ったより回る。初手で合体ロボ出るとか鬼畜過ぎるぜ!


第16話 何!?海老フライと海老天は同じじゃないのか!?

遊勝塾の塾生、榊 遊矢は目の前のテーブルに盛り付けられた一口カツを咀嚼しながら自身の置かれている状況について悩んでいた。あの時、コナミが帰ってきた時に彼が腹を鳴らし、揚げ物が食べたいと言ったからだろうか。正直、あれ程激しいデュエルを行った後だ。油っぽい食べ物は避けたかったが……違う、そうじゃない。

自身で自身の思考にノリツッコミを入れながら、苦々しい表情でダン、とテーブルに音を響かせ、右手に持った柚子風味のぽん酢を自分の小皿の横に置く。改めて、今の状況を再確認すべきだ。

 

「……遊矢……食事中に激しい音を立てるのは、余り気分が良い行為ではないぞ?」

 

テーブルを挟み、目の前のソファに対面するように座した赤帽子の上にゴーグルを着けた少年、コナミが右手に箸を、左手に茶碗を持ち、遊矢に注意を促す。因みに先程までのノースリーブのジャケットから、何時もの赤いジャケットを肩に掛け、落ち着いている。遊矢としては先程までのジャケットは見ている方が恥ずかしいものがあった為、助かっている。

そこまでは良いだろう。彼は自分にとっての友達で、遊勝塾の仲間なのだから、この遊勝塾に居ても可笑しくはない。問題は彼側のソファに座る3人の人物だ。

 

「遊矢さん、大丈夫スか?もしかして揚げ物嫌いだとか?」

 

「成程、それならカリカリするのも仕方ない。揚げ物だけに、な」

 

「ハハッ、そりゃあお手揚げだ!」

 

HAHAHA!と海外ドラマのような笑い声が目の前で響く。茶番である。揚げ物だけに、は堪えられたのに、そこでお手揚げが来るなんてズル過ぎる、ちょっとクスッと来てしまったではないか。抗議の視線を送るも、目の前のコナミと少年の2人は気にする素振りを見せず、肩を組んで、HAHAHAと笑い合う、お手揚げである。

 

そもそもこの緑髪の少年は誰だ。いや、遊勝塾に揚がる……いや、上がる前に自己紹介は行ったが。

確か名前は黒門 暗次。緑色の髪を大きなバンドで止め、鼻に絆創膏を貼り、耳に幾つものピアスを着けた、黒い道着の少年、見た目こそ不良だが中身は気さくなようである。何故かコナミを兄貴と慕い、遊矢にさん付け、柚子の事を姉御と呼んでいるが、何でも、兄貴の友達なら尊敬すべき人だとか。

コナミとは逆の、隣に座る少年はその範囲外らしいが。

 

「いや何でだよ!」

 

とそこでその少年がテーブルをダン、と強く叩き、立ち上がる。茶髪を無造作に伸ばし、頬をひきつらせるその少年は、遊矢にとっても見覚えのある人物である。

刀堂 刃。遊矢達、遊勝塾を乗っ取ろうとし、襲撃をかけたLDSの生徒であり、シンクロ召喚を使いこなす、自分達にとって、当面の敵……だった筈である。いや何でだよ!と叫びたいのは遊矢の方である。

 

「刃……さっき、兄貴が言ったばっかだろ?激しい音を立てるなって」

 

「カリカリしてるのか?」

 

「お手揚げですぜ兄k」

 

「おいマジそれやめろウザいから、上手いと思ってんのか」

 

再び茶番を始めた2人に、刃の慈悲の欠片もない視線が突き刺さる。流石に懲りたのか、2人は黙りこくって、茄子の天ぷらを頬張っている。

 

「茄子術も無い、か」

 

「お手揚げですぜ兄貴」

 

違った。新しい駄洒落を考えているだけだった。もう何なのコイツ等と項垂れ、両手で顔を覆い、しくしくと泣く刃。最早、刃にもお手揚げである。そんな刃の姿に目を丸くし、驚愕する遊矢。あの刀堂 刃がここまで折れるとは、流石に心配になって声をかける。

 

「えっと……大丈夫か?刀堂?なんか、コナミの道場破りを止めてくれたらしいな、ありがとう」

 

そう、目の前のソファに膝を抱えて座り、しくしくと涙を流しているこの刀堂 刃こそ、コナミの暴走を止めてくれたらしいのだ。まさか敵側の彼がそんな事をしてくれるなんて、と驚きと共に、感謝の言葉を送る。

この少年がいなかったら今頃、コナミが看板を担いで帰ってきたかもしれないのだから、彼には感謝してもし切れない。

 

「別に良い、こっちもコナミのお蔭で助かった事もあるしな」

 

「?」

 

膝を抱え、唇を尖らせ、呟く刃に、首を傾げる遊矢。一体、どう言う事だろうか?と遊矢の頭の周りには幾つもの疑問符が飛び交っている。

まさか道場破りついでに喧嘩していた親友達の仲を取り持っていたとは考えもつかないだろう。

実際に、今の駄洒落を連発するコナミを見て、そのような考えに至る者はいないだろう。

 

「この天ぷら、美味しいですっ!」

 

箸でかぼちゃの天ぷらを摘まみ、目を輝かせ、感嘆の声を漏らしたのは、コナミの左隣で座る少女、名前は光焔 ねね。

茶髪の少し顔色が悪い少女である。この小動物を思わせる少女が暗次と同じ道場の門下生で、刃と暗次の親友だと言うのだから、人と言うのは分からない。

 

「ありがとう。作った甲斐があったわ。ところで、うちのコナミが迷惑掛けてない?」

 

口に手を当て、小さく微笑むのは遊矢の隣に座った柚子。ここ最近、料理の腕が上がったのは、美味しいと言ってくれる人が増えたからであり、その腕を存分に奮えて、結構、楽し気であったりする。

 

「いえ、そんな事ないですよ!?むしろ……コナミさんのお蔭で私達は前に進む事が出来ました」

 

「そうですよ柚子の姉御!燻っていた俺達に、前を進む切欠をくれたのは、コナミの兄貴なんですから!」

 

「コナミが……?」

 

恥ずかしそうに両手を振るねねと、テーブルから身を乗り出す暗次。正直に言うと遊矢と柚子は驚いた。まさか道場破りに出掛けた筈が、苦悩している少年、少女を救っていたとは思いもしなかった。

今、2人の視界に映る、黙々と海老フライを食べるコナミを見ても想像がつかない。

因みにコナミが頬張っている海老フライ、刃の皿に乗っていたものである。刃がコナミの頬をつねる中、部屋の扉から、コンコンコン、と3つのノック音が響く。来客だろうか。

 

「はーい、どうぞー」

 

口を開き、間延びした声を上げたのは柚子だ。彼女は手に持っていた小皿をテーブルに置き、扉に視線を移す。「失礼する」と前置きをして部屋に入って来たのは、白い学ランに袖を通し、髪をリーゼントに固め、真っ赤な鉢巻きを巻いた大男。

 

「権現坂!どうしたんだ?」

 

下駄を鳴らし、現れた親友の姿にパッと顔を明るくする遊矢。遊矢にとって、彼は最も信頼する付き合いの長い男友達であり、今まで幾度となく自分を救ってくれた彼の訪問は歓迎すべきものだ。

権現坂もそんな彼の様子に顔を綻ばせ、うむ、と頷き返す。

 

「突然の訪問、すまない。今日はコナミに折り入って頼みがあるのだが……刀堂 刃!?それにその2人は……?」

 

男らしい眉を引き締め、コナミの座るソファに視線を移す権現坂、そうすればコナミ側のソファに共に座る、刃と暗次、ねねが視界に入るのは必然で――、LDSに所属する刃に驚愕し、警戒するのも当然であろう。先述した通り、彼は最近、この塾を襲撃したばかりなのだから。

そんな関係とも露知らず、暗次は人懐っこい笑顔を、ねねははにかみながら権現坂に向けて立ち上がる。

 

「初めまして!俺はコナミの兄貴の子分で、黒門 暗次って言います!兄貴のお友達の方ですよね?よろしくお願いしまっス!」

 

「おっ同じく光焔 ねねです!よっよろしくお願いしましゅっ権現坂さん!……ぁぅ、噛んじゃった……」

 

ピシリとまるで敬礼するかのように、身体の芯から背筋を伸ばし、勢い良く頭を下げる子分2人。その元気一杯と言った様子に少し気圧されたのか、権現坂は一歩退き、目をパチクリと瞬かせる。しかし、次の瞬間には顔を引き締め、2人に向かって手を差し出す。

 

「顔を上げてくれ、俺の名は権現坂 昇と言う。黒門、光焔、こちらこそよろしく頼む」

 

そう言って、気持ちの良い笑顔を向けて、頭を下げる権現坂、2人は彼の手を取り、3人は自己紹介を終える。すると、やるべき事は終えたと言わんばかりに、その表情を険しくし、刃を睨みつける権現坂。

 

「それで、お前は何故ここにいる?返答次第では、この男、権現坂、容赦はせんぞ?」

 

再び警戒の色を示し、右腕に嵌めたデュエルディスクを身体の前に差し出し、刃に向かって闘志の籠った視線をぶつける権現坂。

彼とて、彼とのデュエルの結果に完全に納得している訳ではないのだ。むしろ、助太刀したにも関わらず、刃を倒せなかった事を悔いている。

刃の事は認めている。だからこその警戒だ。しかし、刃の方はと言うと、顔に疲労の色を見せ、面倒そうな顔で、片手をひらひらと振る。

 

「まぁお前と決着を着けるってのも良いが、今回はそんな事をしに来た訳じゃねー、と言うか、そんな元気残ってねーよ。ダチのいる塾を乗っ取ろうなんて思わねーし、そんな事より、この赤いのに用事があんだろ?」

 

「ダチ……?ああ、そうだ。コナミに用があったのだ。それでコナミ、頼みがあるのだが」

 

「?」

 

一先ず、刃から視線を外し、コナミに向かい、頭を下げる権現坂。何事も礼を怠らないその態度にも、コナミは何時も通りの様子でししゃもを食べている。

 

「何でも良い、どれか1つだけでいい、俺に、融合やシンクロ、エクシーズを教えてくれ!」

 

膝をつき、額を地に擦り付け、必死に懇願する権現坂。何が彼をそうさせるのか、コナミはどうしても気になり、聞く。何故そこまで教えを乞うのか、と。

 

「……力が、欲しいのだ。俺はLDS襲撃の際、遊勝塾を守ろうと、友を守ろうと助太刀したにも関わらず、引き分けとなってしまった。いや、引き分けに持ち込むので精一杯だった。今のままではダメなのだ。不甲斐ない自分でいたくない、俺の考える不動は、決して今の実力に胡座をかく事ではない!」

 

「……権現坂……」

 

不動、彼のデュエルはどんな状況でも退かぬ、誇り高きもの、大樹のように、山のように構え、あらゆる攻撃をものともせず、跳ね返す。不退の覚悟を持つ、漢のデュエル。

しかし、彼はそのデュエルに変化を望んだ。何時までも、保守的なままでは、本当に大事なものを守れないから、進化せねばならない。新たな不動の境地へと、まだ見ぬカードの荒野へと。そんな彼の決意に感銘を受け、1人のデュエリストが立ち上がる。

 

「俺が教えてやるよ」

 

刀堂 刃だ。彼は短い言葉と共にニヤリとした笑みを権現坂に向ける。その意外な台詞に目を丸める一堂。その間にコナミは刃の皿から海老フライを奪い、暗次とねねは当然のような顔をしている。2人は知っているのだろう、刀堂 刃が彼を助ける理由を、立ち上がった訳を。

 

「どう言うつもりだ?何故、敵であるお前が」

 

「簡単な事だ。俺はお前の心意気に惚れた!何より俺も誰かを導いてやれるようなデュエリストになりてぇ、お前とのデュエルは楽しかったしな」

 

疑いの視線を送る権現坂に対し、チラリとコナミを見た後、邪気の無い笑顔を見せる刃。それは本心だった。世話好きな刃は自分の認めたデュエリストである権現坂を放っては置けなかったのだ。それに、彼のデュエルを側で見た後だ。迷う誰かを見捨ててはいられない。だからこそ刃は教えを買って出たのだ。

 

「……感謝する。刀堂、いや刃殿!俺を鍛えて欲しい!よろしく頼む!」

 

自らの師となる刃に改めて向き直り、頭を下げる権現坂、それを見た刃は。

 

「おう!ビシバシいくから覚悟しろよ!」

 

屈託のない笑顔で頷いたのだった。

 

「ね、ねぇもし良ければ、私も――」

 

そんな彼等のやり取りを傍で見て、立ち上がったのは柚子。親友である権現坂が変化を望んだ事に焦りを覚えたのか、自分も教えを乞い、強くなろうと考えたのだが。

 

「じゃあ柚子には僕が教えて上げるよ」

 

柚子の台詞を遮り、ひょっこりと扉から顔を出したのは、遊勝塾の生徒である紫雲院 素良だ。彼はとてとてと遊矢達が座るソファに歩み寄り、刃の皿からかぼちゃの天ぷらをひょいと摘まんで、口に含む。

 

「素良?」

 

「やっぱり尊い融合を教えて上げないとね。ソリティアばっかりでつまんないシンクロより、ずっと楽しいよ?」

 

「おい、いきなり出てきて何だちっこいの、融合だってソリティアするぞ、後それ俺のかぼちゃ」

 

突然出てきて、刃を挑発するような言動を取る素良に対し、ねねを横目で見ながら、八重歯を見せる。遊矢と柚子、権現坂がハラハラと見守る中、ソファに座るコナミと暗次は刃の皿から次々とおかずを奪っていく。本当に刃に対して容赦のない2人である。

 

「なら賭けようか、僕が融合を教えた柚子と君がシンクロを教えた権ちゃん、どっちがより強くなれるか」

 

「上等ぉ!遊勝塾の摘まみ食い野郎共には負けるか!ほら行くぞ権現坂!こうなりゃ時間が惜しい、揚げ物食ってる場合じゃねぇ!」

 

「そうこなくっちゃね!いくよ柚子!融合召喚を教えるくらい、アイスクリームの天ぷらを食べながらだって出来る!」

 

「ええ!?」

 

「刃殿!?」

 

そうこうしている内に話が纏まり、混乱する2人の腕をぐいぐいと引っ張り、慌ただしく部屋を出ていく2人の師匠。

彼等を最後まで見守っていた遊矢としては呆然とするしかない。そんな中、食事を終えたコナミが立ち上がる。

 

「コッ、コナミ……?」

 

「道場破りしてくる」

 

「ついていきますぜ、兄貴!」

 

「張り切っていきましょー」

 

2人の愉快なお供を引き連れ、スタスタと部屋を出るコナミ。遊矢はそんなコナミの背中を見送るしかなかった。

部屋に残ったのは遊矢1人、誰もいなくなった部屋で、遊矢は自分の掌に視線を落とす。

 

「……皆、前に進んでいる。新しい何かを得ようとしている」

 

形は違えど、目指すものは違えど、彼等は望んだ。新たな力を、守る為の力を遊矢の脳裏にある人物の台詞が過る。

 

『その時には、君達のペンデュラムのその先を、見たいものだ』

 

浮かぶのはLDS最強のデュエリスト、赤馬 零児の姿。融合、シンクロ、エクシーズ、そしてペンデュラムを使い、コナミを追い詰めた強敵。

 

「――俺も立ち止まってはいられない……!見つけ出すんだ!ペンデュラムのその先を!」

 

それぞれに歩み出した、成長の道。置いていかれるのはイヤだ。自分も皆のように進もう。決意を新たに、遊矢はご飯を口に掻きこみ、デュエルディスクを手に、部屋を飛び出す。目指すは次なるステージ、ペンデュラムのその先を、導き出す為に。

 

――――――

 

「それで、次は何処に行きますか?兄貴?」

 

「……決めてないな」

 

遊勝塾を後にして、コナミ達は街の大通りに出ていた。多くの塾が建ち並ぶここなら、相手には困らないと思ったのだ。しかしどれもコナミには魅力的で選ぶに選べない。なんなら、片っ端から殴り込もうとした所で、暗次が1つの案を出す。

 

「でしたら、兄貴が満足出来そうな強敵がいる塾を紹介しますぜ!こっちです!」

 

ニカッと眩しい笑顔を見せ、駆け出す暗次、コナミもねねも彼に習い駆け出す。一体どう言った塾なのだろうか?期待を胸に膨らませ、口元に笑みを作り、暗次の後を追うコナミ。

やがて辿り着いたのは大通りの中心に構えられた中華風の巨大な建物。成程、確かにここなら、まだ見ぬ強敵がいるだろう。そんな厳かな雰囲気を肌で感じ取れる。

 

「あれ?先客ですかね?入り口の前に誰かいますよ」

 

ねねが呟く、確かに巨大な門の前には、1人の少年が佇んでいる。紫色の癖のある髪、中華風の鎧を思わせる服装。鋭い視線を門に向ける少年はその口を開く。

 

「たのもー!道場破りに参った!梁山泊塾の勝鬨 勇雄だ!門を開けてもらおうか!」

 

巨大な門へ向けて名乗りを上げる少年、勝鬨。そこへコナミが。

 

「オレもいいか?」

 

と名乗りを上げる。こうして、ルールを知らない非常識な少年と、ルールに厳しい非常識な少年は出会う。歯車は狂う。それが、良い方向なのか、悪い方向なのかは、まだ誰も――知らない――。

因みに、少しして、彼等の名乗りに苦笑いする塾の講師が現れるのは聞くまでもないだろう。

 




Q何!?刃の次は真澄んか北斗ー君じゃないのか!?
K何!?自分では不服なのか!?

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。