遊戯王ARC―V TAG FORCE VS   作:鉄豆腐

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シャーマンキングが再アニメ化するとか何とか。
完全版集めたりしてたんで嬉しいです。



第185話 我が名はクロウ

まるで、黒い大海だと『切り込み隊長』は考える。

見渡す限り敵、敵、敵、敵意の波が戦場を濡らす。部隊とは分断され、今や彼の背後を任せられる仲間は数人。敵は数千。

絶望しか感じないだろう、そう、彼と出会う前ならば。

今は不思議と恐怖すらも感じない。

 

「フフ、参っちゃうわね全く……!」

 

「余計な口を叩くなマッスラー」

 

彼の右隣で巨大な注射器なメスを構えるのは、隆々とした筋肉で衛生服を弾けんばかりに膨らませた男、『衛生兵マッスラー』。

普段ならば遥か背後の陣営にて戦士の治療を行う者だが、今は彼の好意で戦場に参戦している。その腕は正しく一騎当千。そんな力があるならば最初から戦士として志願しろと言いたくなって来る。

 

「そう言うな、お前も彼には助けられているだろう」

 

「……フッ、そうですね……」

 

左隣で剣を構える、金の長髪と口髭、銀の鎧が特徴的な彼等の将、『無敵将軍フリード』が軽い口調で『切り込み隊長』をたしなめる。

彼もまた、将ながらも前線で残ってくれた。ならば、ここで負ける訳にはいくまい。

 

「ハッ、安心しな、この俺様が全員薙ぎ倒してやるからよぉ!」

 

「頼もしいな、ガガギゴ……!」

 

『切り込み隊長』の前で啖呵を切ったのは、煌めく鎧を纏う竜人、彼とフリードの戦友、『覚醒の勇士ガガギゴ』だ。

少し前は敵軍に洗脳され、敵として立ち塞がった事もあるが――今ではそれが頼もしい。

彼とこうして肩を並べ、共に戦えるのも――『切り込み隊長』の背後にいる男のお陰と言って良い。

 

「お前にも暴れてもらうぞ……デュエリストよ!」

 

「……ああ!」

 

背中を合わせた帽子の、デュエルディスクを構えた少年が言うと共に、彼等は地を蹴り、敵軍に襲いかかった――。

 

ーーーーーー

 

「何故だ、何故、何故、何故私の邪魔をする!赤馬 零児ィッ!」

 

シティの中心部に建築された巨大なビル。治安維持局のデュエルルームにて、1人の男が半狂乱になりながら侵入者を睨み付け叫んでいた。

男の名は、ジャン・ミシェル・ロジェ。このシティにおける権威者、治安維持局の長官であり、融合次元、アカデミアの幹部、シンクロ次元統括指揮官だ。

そして侵入者は、アカデミアに対抗するスタンダード次元精鋭部隊、ランス・ディフェンス・ソルジャーズ、通称ランサーズを纏めるリーダーにしてアカデミアの親玉、赤馬 零王の息子、赤馬 零児。

敵対する2つの組織におけるリーダーが今、相対していた。

 

「何故、だと?決まっている。貴様達の目論見を全て、叩き潰す為だ!アカデミア!」

 

ロジェの疑問に、零児が一喝する。彼にしては珍しく感情を剥き出しにし、怒りを露にしている様子だ。

眉間に皺を寄せ、眉を吊り上げる零児を見て、柚子が呆然とする。何時も冷徹とも言える彼の鉄面皮しか見ていない為、意外に思っているのだろう。

 

「くっ、プラシドォッ!」

 

「悪いが無理だな。赤き竜を相手に消耗しているんだ。そんな状態で赤馬 零児と闘うとなると厳しい。それに……俺も俺で、こいつの相手をせねばならん」

 

焦りを浮かべ、プラシドに助けを求めるも、一蹴される。流石のプラシドも神を相手にして、タダで済んでいる筈がない。既にボロボロの状態。とは言えそれでも零児相手に厳しいで済ませる辺り、実力の底が見えないが。

 

しかもプラシドの前に立つは、零児の部下、風魔 月影。

彼がプラシドをマークするようにデュエルディスクを構えている。

 

グッ、と唇を噛むロジェ。どうすればと悩む中、零児の背後に大きな影が現れる。

 

「ッ!?」

 

「おお、セルゲイ!」

 

銀色の短髪に、巨大な体躯。顔から首元にかけて幾つものマーカーを刻んだ男、セルゲイ・ヴォルコフ。

遊矢との対決で大破し、今まで治療を受けていたロジェの忠実なる僕が無感情な表情を浮かべ、そこに佇んでいた。

 

「ククク、フハハハハ!よくぞ来てくれたセルゲイ!さぁ、お前の前にいる赤馬 零児を叩き潰してやれ!」

 

心強い味方の登場に、180度態度を変え掌を返して哄笑を上げるロジェ。

彼にとってセルゲイは実力を度外視して信頼する部下だ。プラシドよりも、白コナミよりも。何故なら彼が、一から手塩をかけて育て上げた者なのだから。だから。

 

「……お断りします」

 

「……は?」

 

彼の言葉が、理解出来なかった。

 

「……き、聞き間違いか?セルゲイ。今、お前が私の命令を拒んだように聞こえたが……」

 

頬を引き吊らせ、プルプルと指先を震わせながらセルゲイを差すロジェ。誰の目にも分かる程の動揺っぷりだ。

いや、ロジェだけでなく柚子や零児、プラシドまでもが動揺していた。無理もない、セルゲイは、ロジェの忠実なる僕なのだ。それが反抗するとは誰も思うまい。

 

「お断りしますと言ったのです。ロジェ長官」

 

「何故だ……何故、お前が裏切る!」

 

「榊 遊矢と言う男に、惚れたからです」

 

「な、に……!?」

 

「ええっ!?」

 

思わず柚子が頬を赤らめ、声を出す。セルゲイがロジェに歯向かう理由、それは。

 

「俺は榊 遊矢とデュエルしました。彼と剥き出しの裸でぶつかり合いました。彼の心に触れました。その中で俺は彼を好きになってしまいました。だから彼の夢を手伝いたいのです。彼が悲しむ事をやりたくないのです。彼の笑顔を見たいのです」

 

遊矢とデュエルしてしまったから。真っ直ぐな想いに触れたから。彼と言う男に、惚れ込んでしまったから。彼を、美しいと思ったから。だからセルゲイは、ロジェを止めに来た。

 

「本当の美しさを教えてくれた彼を、俺を救ってくれた彼を、今度は俺が救いたい。だから、間違っている貴方を、止めに来ました。貴方には助けてもらった恩義も、長い年月を共にした情もある。だからこそ、俺が貴方を止めに来たのです」

 

「反抗期と言う訳かセルゲイ……!許さん、許さんぞ!貴様をたぶらかした榊 遊矢等認めるものか!」

 

「子は何時しか巣立つもの、それが今になっただけの事です!」

 

向かい合う父と子、その姿を見て、零児は少々羨ましいと思い目を細める。何時かセルゲイのように、怯む事なく父と向き合えるだろうかと唇を引き締めて、彼に負けぬよう、隣に並ぶ。

 

「止まるなら今の内だぞ、ジャン・ミシェル・ロジェ!」

 

「誰が、誰が止まるものかっ!今更止まれるかぁっ!我等がアカデミアの前に、私の野望の前に立ち塞がると言うなら、セルゲイ!例え貴様が相手だろうと倒してくれるわ!私自らの手で朽ち果てるが良い!」

 

激情のまま、デュエルディスクを構えるロジェ。しかしプラシドから見れば赤馬 零児とセルゲイ・ヴォルコフを相手に、ロジェが勝てる筈がないと判断する。だから、その手にある1枚のカードを、ロジェへと投げ渡す。

 

「ッ!プラシド……っ?」

 

「受け取れ、ロジェ。赤き竜の力、その身に宿すが良い」

 

渡したカードは神のカード。赤き竜の力本体を宿した白いカード。『アルティマヤ・ツィオルキン』が、ロジェのデッキに入り込む。

 

「お、おお……これは……力が、力が漲る!漲るぞぉぉぉぉっ!!」

 

突如として深紅に染まったオーラがロジェを包み込み、彼の背中に赤き竜の痣が浮き出る。吹き荒れる赤黒の突風がビシビシと壁を軋ませ、窓ガラスをひび割る。更にロジェの足元から雷光が迸って砕く。

とんでもない力の奔流、氾濫した激流のような光景に零児とセルゲイが腕を交差させて顔を守り、ジリジリと後退させられる。

 

「くっ、何が……!」

 

「オオオオオッ!!」

 

そして、ロジェが雄叫びを上げると共に、服の内部にある筋肉が膨張、貧弱だった筈のロジェがボディビルダーも顔負けの肉体を得、服を破り捨てる。

 

「フハ、ハハハハハ!これこそが王の力!私こそがこの国をおさめる王、いや、神だぁっ!」

 

事態、急転。

 

――――――

 

「ヒャーハッハッハッハァッ!やれぇ!『地縛神CcapacApu』!ダイレクトアタック!」

 

「やらせるかよぉ!墓地の『仁王立ち』を除外し、その攻撃を『インフェルニティ・デス・ドラゴン』に移す!」

 

シティの下層、コモンズ街にて。ここでもプラシドが用意したゴーストと闘うデュエリストがいた。

グレーのコートを纏う、淡い水色の長髪の男、このシンクロ次元において最強格とされる男、鬼柳 京介だ。

そんな彼と対するは淡い水色の髪に、青いラインが走ったローブを羽織る、黒い眼に金の瞳と言う、異常な虹彩の男、鬼柳 京介。

そう、ジャックやクロウと同じ対本人用に作られたゴーストだ。とは言えジャック・Dのような異常進化していないゴースト程度で鬼柳の実力が引き出せる筈もなく、当然数段劣るが。

 

「チッ、まさかダークシグナー時代の俺が相手とはなぁ!」

 

「そうだ!この時こそが、鬼柳 京介が最も輝いていた時!永続罠、『ディメンション・ガーディアン』の効果で、俺のCcapacApuは戦闘、効果で破壊されねぇ!」

 

「冗談キツいっつーの!墓地の『復活の福音』を除外し、『インフェルニティ・デス・ドラゴン』の破壊を防ぐ!」

 

天を突く程に大きな巨人が身体に浮き上がった青いラインを輝かせ、腕を鬼柳へ振るう。しかしその直前、間に昆虫のような腕を持つ黒い竜が滑り込み、スモークのブレスを放って押し戻す。

この通り猛攻をしかけるダークシグナー鬼柳であるが、オリジナル鬼柳には上手くかわされるばかり。このままでは埒があかないと考える中、彼等の傍に忍び寄る影が1つ。

 

「クク、流石は鬼柳 京介と言った所か、奴相手に1人でな分が悪いか……」

 

銀にも近い白髪に褐色の肌、ダークシグナー鬼柳と同じく、死者である事を示す黒い眼。赤いラインを走らせた黒のローブ。

ルドガー・ゴドウィン。かつてジャック達がチーム5D'sと呼ばれる前に死闘を繰り広げた男だ。その性格は策略家にして冷酷非道。

味方には慈悲を与えるが、敵には苛烈なまでの悪意を見せる男だ。蜘蛛の巣の如く張り巡らせた2重3重もの策で獲物を絡め取る慎重さを持つ男、今回も最も脅威となる鬼を仕留める為、こうして出向いたのだ。

 

「余裕そうだが、2人相手ならば貴様とて苦しいだろう?鬼柳よ!」

 

バサリ、ローブを翻し、2人の鬼柳が対峙する場に降り立つルドガー。ニヤリと悪意を込めた笑みを浮かべる彼に、2人が振り向き、似て非なる表情を見せる。

 

「ルドガー……テメェまでいるとはな……ゴーストとは言え、複雑な気分だぜ……!」

 

「チッ、俺1人で充分と言いたい所だが……仕方ねぇ、来たからには手伝ってもらうぜ。勝って満足させてもらおうか!」

 

「言われるまでもない。さぁ鬼柳。貴様を闇の底に叩き落としてやろう……!」

 

ダークシグナーNo.1とNo.2の揃い踏み。この2人相手では流石の鬼柳だろうと勝てるか分からない。例え1人落としても、その隙に鬼柳が倒れる事は充分にありえる。頬に汗を垂らし、ギリッ、歯軋りを鳴らす鬼柳。

そんな、彼の下に。

 

「させっかよぉっ!」

 

「ッ!誰だッ!?」

 

新たなる来客が降り立つ。この場の誰よりも小柄な身体、頭にはヘルメットとゴーグルを被り、ライダースーツとスカーフを巻いた少年。彼は鬼柳を守るように彼の背後に、そしてルドガーの前方に割り込み、左腕に装着したデュエルディスクから光輝くプレートを展開する。

 

「貴様はっ!?」

 

「セクト……ッ!」

 

伊集院 セクト。チームサティスファクションのメンバーで、鬼柳 京介の弟分だった少年だ。

そう、だった。彼はプラシドによって憎悪を刺激させられてたとは言え、鬼柳に対して明確に敵意を持ち、それをぶつけてしまった。切欠はどうあれ、その負の感情は本物だったのだ。どの面下げて……と言う気持ちはある。だがそれでも。

 

「アニキ……俺……」

 

鬼柳を助けたいと言うこの思いも、本物だ。

 

「伊集院 セクト。貴様何をしに来た?まさか今更鬼柳を助けようと等言うまい?裏切り者の貴様が!」

 

「そぉうだ。俺には分かるぜぇ。信じていた仲間に裏切られ、陥れられたんだ。憎くて仕方ねぇよなぁ。俺もお前も同じ鬼柳なんだ。言ってやれよ!もうお前の面なんざ見たくねぇってなぁ!」

 

「ッ……!」

 

その脇からダークシグナー2人が口元を歪め、セクトの罪悪感を重くする。策謀家のルドガーと、鬼柳の想いを代弁するかのようなダークシグナー鬼柳の言葉が、深くセクトの心に突き刺さる。

 

「確かに、そうだな」

 

「ッ」

 

ポツリと鬼柳が溢す。誰でもない本人の言葉だ。セクトは思わず泣きそうになる。仕方ない事だ。セクトはそれだけの事をした。それだけの事を言ってしまった。許されない事は重々承知している。

 

「昔の、俺ならな」

 

「え……?」

 

「……何?」

 

だが、その先の言葉に、全員が戸惑い、鬼柳へ視線を向ける。それは、どう言う。

 

「人間、変わるもんなんだよ。確かに、昔の俺なら間違いなく憎んでたろうなぁ。その結果がお前だ。だけどよ、所詮過去の残像でしかねぇテメェ等が今の俺を決めんじゃねぇ。今の俺達の繋がりを決めんじゃねぇよ。俺達の絆は、俺達が決める」

 

「アニ、キ……」

 

ダークシグナー鬼柳も、ルドガーも、既にこの世に存在しない。そしてこの2人は、彼等のゴーストでしかない。そんなものに鬼柳は自分達の事を語らせる事は、断固として許さない。

 

「背中、任せたぜ、セクト」

 

トンッ、鬼柳がその大きな背中を、セクトの小さな背中に預けるように軽くぶつける。その瞬間、セクトはまた、思わず泣きそうになる。

あんな事をしたのに、彼はこんな自分を心から信頼してくれている。

苦しい。許される事が。嬉しい。彼の背中を守れる事が。

自分には過ぎた背中。セクトとは違う大きな背中。今はまだ、セクトとは吊り合わないものだ。だけど、何時か、この背中が、この重みが軽くなるように、大きな男に、なりたいと思った。未来を守りたいと思った。

 

「へへっ……!アニキも負けんじゃねぇぞ!アンタを倒すのは、この俺なんだからよぉ!」

 

シンクロ次元、最強のコンビが駆け抜ける。

 

――――――

 

ジャック・アトラス・D、クロウ・ゴースト。この2人は他のゴースト同様に、プラシドが製造したもの……と言う訳ではない。

詳しく言うのならば、プラシドが破壊されたこの2人を別次元からサルベージし、改造したものだ。

 

もしもジャック・アトラスやクロウ・ホーガンが記憶を取り戻した際、対抗出来るように現在に合わせて発展させた機体。

 

しかし――改造の際、大きな誤算があった。ジャック・アトラス・Dの自我の発現である。

プラシドはそもそも、2人を意思なきロボットとして、使いやすい兵士として改造したつもりだった。

だが、何が原因か、ジャック・Dには失われた世界の記憶があり、ジャック・アトラスに対するライバル意識があった。

 

自我を消そうかとも悩んだものの、ジャック・Dには自らを復活に至らせたプラシドに対する恩義があり、ジャックと闘えさえすれば彼の命令には特別逆らう事もない。

何より彼は強かった。ひたすらに、単純に、強かったのだ。

 

これを手放すのは惜しいとプラシドは考えた。偶然の、奇跡で産み出された最強のゴースト。

不安要素の自我はあれど、充分な範囲でコントロールは可能。

彼はジャック・アトラスとは全く異なる個体であれど、ジャック・アトラスに勝るだろうとさえプラシドは確信した。

 

しかし、プラシドはこの偶然に頼る事を良しとはしなかった。

故にクロウ・ゴーストは本来のコンセプトで開発する事にしたのだ。

本来のコンセプト――それは、オリジナルであるクロウ・ホーガンを単純に上回る事。プラシドの目論見通り、それは叶った。

ジャック・Dの時のように、過去の記憶が蘇るような奇跡もなく、彼はクロウ・ホーガンの上位互換として産み出されたのだ。

 

当時の……いや、現在の性能で至ってもジャック・Dはクロウ・ゴーストを上回る。

しかし、プラシドはクロウ・ゴーストは学習の果てにジャック・Dをも超えるだろうと考えた。

クロウ・ゴーストはジャック・Dより最新の機体だ。ジャック・Dは機械にして天然の怪物なれど、クロウ・ゴーストの成長性は目を見張るものがある。

 

別次元にて、破壊される前のクロウ・ゴーストを開発した男はこう語る、「こいつこそ、最強のゴースト」だと。

故に、プラシドはクロウ・ゴーストの成長性に賭けた。

 

だが――同時に、彼の本心が訴えていたのだ。心なき機械に、オリジナルを超える事は出来るのか?と。

 

「俺のターン、ドロー!」

 

シティを囲むように建造された巨大サーキットにて。荒くなった声が木霊する。

その持ち主の名はクロウ・ゴースト。伝説のチーム5D'sの1人、鉄砲玉のクロウ・ホーガンを倒す為に作られた新世代のゴーストだ。

 

彼が搭乗するDーホイール、クロウとは異なり、純白の装甲を煌めかせるブラック・バード・アルビオンはブラック・バードを改造した機体であり、そのスペックは総合能力だけなら上を行き、マシーンデュエリストであるクロウ・ゴーストの手に渡る事によりその能力は十全に発揮される。

そして使用デッキはクロウ・ホーガンと同じく『BF』。しかし内容はプラシドの手によって製造された新型の『BF』を投入した最新最強の『BF』。旧型であるクロウ相手ならば負ける筈がないのだが――。

 

「くっ……!」

 

勝てない。それどころかクロウがベテランの実力を発揮して食い下がり、互角以上の闘いを繰り広げている。計算や性能外の力、デュエリストの魂の差がクロウ・ゴーストを追い詰めているのだ。

クロウ・ゴーストには無いのものが、クロウ・ゴーストを追い詰めている。クロウ・ゴーストには理解出来ないものが、実力の差を埋めている。

 

「レベル5のソハヤに、レベル1の『シンクローン・リゾネーター』をチューニング!シンクロ召喚!『BFー星影のノートゥング』!」

 

BFー星影のノートゥング 攻撃力2400

 

現れたのは汎用レベル6のシンクロモンスターにして『BF』には必須級のモンスター。煌めく大剣を持つ鳥頭の鳥人だ。

クロウのLPは800、この状況でこのカードを出されてはかなり不味い。

 

「ノートゥングの効果と『シンクローン・リゾネーター』の効果発動!800のダメージを与え、墓地の『レッド・リゾネーター』を回収!」

 

「罠発動、『レインボー・ライフ』!手札を1枚捨て、ダメージを回復に!」

 

クロウ・ホーガン LP800→1600

 

だが、彼は堪える。何故ならクロウ・ホーガンだから。

 

「魔法カード、『暗黒界の取引』。カードを1枚セット、ターンエンド!」

 

クロウ・ゴースト LP900

フィールド『BFー星影のノートゥング』(攻撃表示)

セット1

手札0

 

「俺のターン、ドロー!どうした?機械の癖に表情豊かだなぁ。余裕そうな顔が崩れてるぜ!ま、アイツ等もそうだったけどよ!墓地のゼピュロスの効果発動!『黒い旋風』を手札に戻し、このカードを蘇生!」

 

BFー精鋭のゼピュロス 攻撃力1600

 

「その後、俺は400のダメージを受ける」

 

クロウ・ホーガン LP1600→1200

 

「バトル!アーマード・ウィングでノートゥングへ攻撃!ブラック・ハリケーン!」

 

「罠発動!『ブラック・ソニック』!自分フィールドの『BF』が攻撃宣言を受けた事で、相手フィールドの攻撃表示モンスターを全て除外する!」

 

「何ィ!?」

 

発動されたのは『BF』専用の『聖なるバリアーミラーフォース』。尤もあちらと違い、こちらはモンスターを除外する。再利用も難しくなるものだが。

 

「やるじゃねぇか……!俺はカードを1枚セット、ターンエンドだ!」

 

クロウ・ホーガン LP1200

フィールド

セット1

手札1

 

「俺のターン、ドロー!魔法カード、『カップ・オブ・エース』!コイントスを行い、表を選択、当たれば俺が、外れればお前が2枚ドローする。……当たりだ、2枚ドロー!」

 

クロウ・ゴースト 手札0→2

 

「『BFー銀盾のミストラル』を召喚!」

 

BFー銀盾のミストラル 攻撃力100

 

クロウ・ゴーストの手より飛び出したのは銀色に輝く鎧を身に纏い、盾のような姿をした『BF』モンスターだ。

 

「レベル6のノートゥングに、レベル2の銀盾のミストラルをチューニング!漆黒の風を纏い、末世から飛翔せよ!シンクロ召喚!『玄翼竜ブラック・フェザー』!!」

 

玄翼竜ブラック・フェザー 攻撃力2800

 

現れたのは彼が持つ決闘竜の1体、クロウの持つシグナー竜。『ブラック・フェザー・ドラゴン』と酷似し、対をなす漆黒の翼を広げた竜。赤と黒の羽、鳥の嘴に胸から腰にかけて生やした6本の鋭い爪、これこそが彼のエース、『玄翼竜ブラック・フェザー』だ。

 

「ブラック・フェザー……『レッド・デーモン』と似たような奴か!」

 

「カードをセットし、バトル!ブラック・フェザーでダイレクトアタック!」

 

「させねぇよ!罠発動!『ガード・ブロック』!ダメージを防ぎ、1枚ドロー!」

 

クロウ・ホーガン 手札1→2

 

「ッ、ターンエンドだ!」

 

クロウ・ゴースト LP900

フィールド『玄翼竜ブラック・フェザー』(攻撃表示)

セット1

手札0

 

「俺のターン、ドロー!永続魔法、『黒い旋風』を発動し、『BFー暁のシロッコ』を召喚!」

 

BFー暁のシロッコ 攻撃力2000

 

「旋風の効果でゲイルをサーチし、特殊召喚!」

 

BFー疾風のゲイル 守備力300

 

「ゲイルの効果発動!ブラック・フェザーの攻守を半減!」

 

玄翼竜ブラック・フェザー 攻撃力2800→1400

 

「そしてシロッコの効果発動!ゲイルの攻撃力を吸収!」

 

BFー暁のシロッコ 攻撃力2000→3300

 

「カードをセット、バトル!シロッコでブラック・フェザーへ攻撃!」

 

「永続罠、『デモンズ・チェーン』!シロッコの攻撃と効果を封じる!」

 

互いに息もつかせぬ攻防。シロッコの攻撃力がブラック・フェザーに2倍以上に跳ね上がり、あわやワンショット・キルとなろうとした所に鎖が飛び出し、翼を巻き取って動きを封じ込める。クロウもしぶといが、クロウを模して作られた為か、クロウ・ゴーストも堪える。いや、これは――クロウから学習していると言う事か。

曲者同士の知略がぶつかり、攻防が更に加速する。クロウ・ゴーストは確かにクロウの言う通り、クロウを倒す為に生み出され、プラシドの命令通りに動いて来た。

だがこうして本物と相対した事で、彼の心は動き出す。

 

「お前の、言う通りだ」

 

「あん?」

 

「俺は、自らの意志を持たず、他者の望むままに闘って来た」

 

「……」

 

「なら、ここから俺を始めよう。お前を倒し、そこからクロウ・ゴーストの意味を探すとしよう!彼の……ジャック・Dのように!」

 

クロウ・ゴーストの眼に、僅かな光が宿る。その四肢に、逞しい力が宿る。クロウ・ゴーストはまだ生まれてもいないから。このデュエルを生まれるものにしようと彼の心が産声を上げる。

 

「へ、上等だぜ!勝負だ、クロウ・ゴースト!」

 

「ああ……クロウ・ホーガン!」

 

何の為に生まれたか、何の為に生きるか、結局それは自分の意志で決める事。クロウ・ゴーストにとってこのデュエルは、自分の事を知るデュエルだった。

 

「お前の心意気に、俺も応えようか!俺は、レベル5のシロッコに、レベル3のゲイルをチューニング!黒き疾風よ!秘めたる思いをその翼に現出せよ!シンクロ召喚!舞い上がれ、『ブラック・フェザー・ドラゴン』!!」

 

ブラック・フェザー・ドラゴン 攻撃力2800

 

そして、クロウのフィールドに現れたのは、眼前に立ち塞がる『玄翼竜ブラック・フェザー』と全く同じ姿をしたモンスター。

黒と白の両翼に、鳥類の嘴を模したアギト、胸部から腰にかけて生えた6本の昆虫の如き爪。『ブラック・フェザー・ドラゴン』。

『レッド・デーモンズ・ドラゴン』と同じく、赤き竜に連なるシグナーの竜にして、クロウのエースモンスターが雄々しく咆哮を上げる。

鏡写しの光景、似て非なる竜の共演にこのデュエルを見ていた市民達が感嘆の息を漏らす。

 

「クロウ・ホーガンのエース、『ブラック・フェザー・ドラゴン』……!」

 

「ここからが本番だ!『レッド・ミラー』を回収、ターンエンドだ!」

 

クロウ・ホーガン LP1200

フィールド『ブラック・フェザー・ドラゴン』(攻撃表示)

『黒い旋風』セット1

手札1

 

「俺のターン、ドロー!」

 

デッキからカードを捲り、引き抜く行為に思わず熱が込められ、クロウ・ゴーストが僅かに動揺する。あれだけ冷え切り、淡々とデュエルをしていた自分が、驚く程高揚している。

これが、自分を持つと言う事、身体が軽く感じる。性能以上に速度を引き出せる。デュエルが、楽しい。

 

「魔法カード、『マジック・プランター』!『デモンズ・チェーン』をコストに2枚ドロー!」

 

クロウ・ゴースト 手札0→2

 

捕らえる者を失った鎖が砕け散り、新たな手札に変わる。悪くない、これならば状況を動かせる。

 

「魔法カード、『アゲインスト・ウィンド』を発動!墓地のオロシを選択、その攻撃力分のダメージを受け、対象のモンスターを回収する!」

 

クロウ・ゴースト LP900→500

 

肉を切って骨を断つ。回収するカードによれば大ダメージを受けようこのカード。低攻撃力で優秀なモンスターが多い『BF』ならば『ダーク・バースト』の方がまだ使い勝手が良く、汎用性が高いだろう。それでもクロウ・ゴーストがこのカードを採用しているのは。

 

「この瞬間、『玄翼竜ブラック・フェザー』の効果発動!」

 

自らのエース、玄翼竜とのコンボを考えているからだ。

 

「1ターンに1度、自身がダメージを受けた際、デッキトップからカードを5枚墓地に送り、その中にモンスターが存在する場合、攻撃力を400アップする!送った中にはモンスターが存在、よって強化される!」

 

玄翼竜ブラック・フェザー 攻撃力1400→1800

 

5枚もの墓地肥やしと攻撃力アップ。戦闘ダメージでも起動する緩い条件がクロウの『ブラック・フェザー・ドラゴン』と異なる。

打点アップは物足りないが、本命は墓地肥やしだ。

クロウの『ブラック・フェザー・ドラゴン』はダメージ自体を無効にしてしまう為、『アゲインスト・ウィンド』とは噛み合わないが、このカードならば共存出来る。

攻撃力での爆発力は見込めないが、墓地肥やしの点では強力なモンスターだ。打点で突破の『ブラック・フェザー・ドラゴン』と、サポートの『玄翼竜ブラック・フェザー』。姿や効果の条件は似ているが、用途は大きく違う。

 

「墓地のヴァーユとシロッコを除外し、エクストラデッキのノートゥングを特殊召喚!」

 

BFー星影のノートゥング 攻撃力2400

 

本来であればレベル5のシンクロモンスターを呼び、オロシとシンクロさせ、アームズ・ウィングを呼び、2体のコンボで『ブラック・フェザー・ドラゴン』を突破し、大ダメージを与えての勝利を狙うのだが。

生憎クロウのシンクロモンスターはノートゥングとソハヤ以外ピン刺しだ。このノートゥングも2枚の投入となる。

エクストラデッキもそろそろ切れて来た。決着を急ぎたい。クロウ・ゴーストは確かに『ABF』を得た事で様々な戦法を取れるが、ほとんど1枚積みの為、どうしても薄くなってしまう。

 

「突風のオロシを特殊召喚!」

 

BFー突風のオロシ 守備力600

 

「レベル6のノートゥングに、レベル1のオロシをチューニング!黒き旋風よ、天空へ駆け上がる翼となれ!シンクロ召喚!『BFーアーマード・ウィング』!」

 

BFーアーマード・ウィング 攻撃力2500

 

「オロシの効果で『ブラック・フェザー・ドラゴン』の表示形式を変更!」

 

「チィッ!」

 

「バトル!アーマード・ウィングで『ブラック・フェザー・ドラゴン』へ攻撃!ブラック・ハリケーン!」

 

「手札の『レッド・ミラー』をスプリンターと交換!更に墓地の『復活の福音』を除外、破壊を防ぐ!」

 

「アーマード・ウィングの効果で『ブラック・フェザー・ドラゴン』に楔カウンターが乗る」

 

ブラック・フェザー・ドラゴン 楔カウンター0→1

 

何とか破壊を逃れるが、この効果はあくまで1度きり、それにアーマード・ウィングは離れる際、自らの翼を1枚毟り取り、鋼鉄の楔として『ブラック・フェザー・ドラゴン』の胸部に打ち付ける。

余りの激痛に絶叫する『ブラック・フェザー・ドラゴン』。しかしクロウ・ゴーストは容赦なく次の手に移る。

 

「『玄翼竜ブラック・フェザー』で『ブラック・フェザー・ドラゴン』へ攻撃!」

 

休む暇なく黒羽の竜が強襲し、『ブラック・フェザー・ドラゴン』の喉に噛みつく。『ブラック・フェザー・ドラゴン』は数秒反応が遅れるものの、空中で体躯を唸らせながら翼を玄翼竜の顔面に打ち付けて怯ませ、尾を振るって胴を打つ。

しかし『ブラック・フェザー・ドラゴン』の反撃には力がなく、容易く受け止められ、玄翼竜が羽をクナイのように射出、胸部の楔を更に食い込ませ、『ブラック・フェザー・ドラゴン』を絶命に至らせる。

 

「『ブラック・フェザー・ドラゴン』まで……!」

 

「速攻魔法、『グリード・グラード』!シンクロモンスターを破壊した事で2枚ドロー!」

 

クロウ・ゴースト 手札0→2

 

「メインフェイズ2、魔法カード、『七星の宝刀』を発動。アーマード・ウィングを除外し、2枚ドロー!」

 

クロウ・ゴースト 手札1→3

 

「魔法カード、『貪欲な壺』!墓地のモンスターを5体デッキに戻し、2枚ドロー!」

 

クロウ・ゴースト 手札2→4

 

「更に魔法カード、『カップ・オブ・エース』!当たりだ、2枚ドロー!」

 

クロウ・ゴースト 手札3→5

 

「『ゴブリンドバーグ』を召喚!」

 

ゴブリンドバーグ 攻撃力1400

 

「効果で手札のオロシを特殊召喚し、自身を守備表示に!」

 

BFー突風のオロシ 守備力600

 

「レベル4の『ゴブリンドバーグ』に、レベル1のオロシをチューニング!シンクロ召喚!『ABFー五月雨のソハヤ』!」

 

ABFー五月雨のソハヤ 守備力2000

 

「ソハヤの効果発動!墓地の『ABFー驟雨のライキリ』を蘇生!」

 

ABFー驟雨のライキリ 攻撃力2600

 

「ライキリの効果発動、セットカードを破壊!」

 

「破壊されたカードは、『やぶ蛇』!相手の効果で破壊された事で、エクストラデッキか、モンスターを呼び出す!」

 

「何だと……!?」

 

次々と『BF』を呼び出し、布陣を整えるクロウ・ゴーストだが、ここに来て除去が文字通り『やぶ蛇』となってしまった。

これがトリックスター、クロウ・ホーガンの口元に笑みを描き出す。

互いに一歩も退かぬ効果の応酬、今度はクロウの番だ。自らの意志で闘うクロウ・ゴーストに、クロウが応える番。

彼に勝ちたい、彼を倒したいと言う想いが、形となり、クロウのエクストラデッキに1枚のカードを生み出す。

 

「現れろ――『BFーフルアーマード・ウィング』ッ!!」

 

エクストラデッキから光に包まれたカードが引き抜かれ、デュエルディスクに叩きつられた瞬間、天に光の柱が立ち上る。

そして――光を裂き、現れたのはクロウ・ホーガンだけの新型。『ABF』よりも新しい、最新鋭の『BF』。

頭部から薄紫の長髪を伸ばし、漆黒の鎧を身に纏う鳥獣騎士。右手には剣を、左腕は銃へと変形させ、巨大な翼を背から広げしアーマード・ウィングの進化形態。

『BFーフルアーマード・ウィング』が、覚醒する。

 

「『BFーフルアーマード・ウィング』だと……!?ここに来て、新たな力に目覚めたのか!?」

 

「そう言う事らしいな!これでテメェとのスペック差、埋めてやるぜ!」

 

「ぐっ、カードを3枚セット、ターンエンド!」

 

クロウ・ゴースト LP500

フィールド『玄翼竜ブラック・フェザー』(攻撃表示)『ABFー驟雨のライキリ』(攻撃表示)『ABFー五月雨のソハヤ』(守備表示)

セット3

手札0

 

「俺のターン、ドロー!魔法カード、『貪欲な壺』!墓地から5体のモンスターをデッキに戻し、2枚ドロー!」

 

クロウ・ホーガン 手札1→3

 

「魔法カード、『シンクロ・クリード』!2枚ドロー!」

 

クロウ・ホーガン 手札2→4

 

「魔法カード、『手札抹殺』!手札を3枚捨て、3枚ドロー!そして墓地の『BFー南風のアウステル』を除外し、効果発動!」

 

またも新たな『BF』の効果が炸裂する。クロウ・ゴーストの持たない『BF』。その効果は。

 

「相手フィールドのモンスター全てに、楔カウンターを乗せる!」

 

玄翼竜ブラック・フェザー 楔カウンター0→1

 

ABFー驟雨のライキリ 楔カウンター0→1

 

ABFー五月雨のソハヤ 楔カウンター0→1

 

相手モンスター全てに、楔カウンターを乗せる効果。楔カウンターはアーマード・ウィングによって使用されるもの、アーマード・ウィングの進化体であるフルアーマードも、楔カウンターを利用する効果を持っていると言う事か。

 

「フルアーマード・ウィングの効果発動!1ターンに1度、楔カウンターを乗せたモンスター1体のコントロールを得る!俺が奪うのは、『ABFー驟雨のライキリ』!」

 

「コントロール奪取効果!」

 

強力なコントロール奪取により、クロウのフィールドへ電光の剣が渡る。『BF』では無類の強さを誇る。そしてクロウもまた、『BF』使い。

 

「ライキリの効果発動!セットカードを破壊!」

 

「罠発動、『ハーフ・アンブレイク』!ブラック・フェザーの破壊を防ぐ!」

 

「永続魔法、『強者の苦痛』!相手モンスターの攻撃力はレベル×100ダウン!」

 

玄翼竜ブラック・フェザー 攻撃力1800→1000

 

ABFー五月雨のソハヤ 攻撃力1500→1000

 

「カードを1枚セット、バトル!ライキリでソハヤを、フルアーマードでブラック・フェザーへ攻撃!」

 

「罠発動、『ホーリージャベリン』!フルアーマード・ウィングの攻撃力分回復!『ハーフ・アンブレイク』の効果でダメージは半分に!」

 

クロウ・ゴースト LP500→3500→2500

 

フルアーマード・ウィングは効果を受けないが、対象に取る事自体は可能だ。よって『ホーリージャベリン』の効果が通り、クロウ・ゴーストのLPが回復。更に。

 

「ダメージを受けた事で、ブラック・フェザーの効果発動!」

 

ブラック・フェザーの効果が起動する。これで大量のカードを墓地に落とし、逆転を狙うクロウ・ゴースト。しかしクロウはここまでの流れを読んでいた。

 

「待ってたぜ、この時を!手札からカウンター罠、『ブラック・バード・クローズ』を発動!」

 

「手札から、カウンター罠!?」

 

これこそがクロウの十八番。相手の予想の上を行く奇襲。罠カードを自在に操る技。クロウと言えば高速シンクロが頭に浮かぶが、忘れてはいけない、彼は罠を扱う事にも長けているのだ。

 

「相手モンスターが効果を発動した時、俺のフィールドの表側表示の『BF』、『ABFー驟雨のライキリ』を墓地に送る事で、その発動を無効にし、破壊!そしてエクストラデッキの『ブラックフェザー・ドラゴン』を特殊召喚する!!」

 

「何だと!?」

 

クロウ・ゴーストのブラック・フェザーがライキリの特攻を受け、楔を打ち付けられたカ所を中心としてひび割れ、粉々に砕け散る。そして空中に飛び散った光の粒子はクロウのフィールドへと渡り、再構成、竜の星座を描き出す。

 

「舞い上がれ!『ブラックフェザー・ドラゴン』!!」

 

ブラックフェザー・ドラゴン 攻撃力2800

 

現出する黒き翼。クロウのエース、『ブラックフェザー・ドラゴン』。このカードこそが、彼等のデュエルに決着をつけるカードと化す。

 

「これで終わりだ!『ブラックフェザー・ドラゴン』で、ダイレクトアタック!ノーブルストリームッ!!」

 

『ブラックフェザー・ドラゴン』が広げた翼から幾枚もの羽がクロウ・ゴーストへと降り注ぎ、彼の周囲を舞い踊るように吹雪、竜巻を起こし、羽の刃がクロウ・ゴーストに突き刺さる。

 

「俺の、負けか……!」

 

クロウ・ゴースト LP2500→0

 

クロウ・ゴースト、敗北。しかしその顔色は、今までのどんなデュエルの後よりも晴れやかで輝いていて、彼の心を成長させてくれた。

きっと、彼も、ジャック・Dも同じ気持ちだったのだろう、彼がいれば、自分の事のように喜んでくれたのだろうかと想って、クロウ・ゴーストは意識を手放す。

 

(今、行くよ……ジャック……)

 

最後の瞬間に、彼は未来を想い、夢を見る。遥か先の、未来の世界で。

荒廃した世界を救おうとする、4つの星。青いオールバックと赤いバイザーが特徴的なDーホイーラーと、巨大な体躯をした青年、金と紫の髪の男に赤いヘルメットを被った、誰かに似た青年の元で、自分がジャック・Dと共に未来を変える夢を。

素敵な夢だな、と思って。彼もまた、短い人生を走りきる。人生と言う名の、ライディングデュエルを。何時かの未来に繋がる、サーキットを。

 

「……じゃあな、クロウ・ゴースト……テメェとのデュエル、悪くなかったぜ」

 

これでチームARCー5D's、2勝1敗。残るはラストホイーラー、白コナミのみ。

クロウ・ゴーストとデュエルした後だ。この化物相手にどこまで通じるかは分からないが、後続の遊矢を少しでも楽にさせてやらねばとクロウは気合いを入れ直す。

 

「さぁっ……て、かかって来な、コナミ!」

 

「面白い……予想以上に楽しいデュエルになりそうだ……!」

 

サーキットに巨大なDーホイールが降り立ち、爆発的な速度でクロウ・ゴーストを追う。シティの命運を賭けて、最後の敵が動き出す。

 

「「ライディングデュエル、アクセラレーション!!」」




平行世界のどこかで、復活したジャック・Dとクロウ・ゴーストが不動遊星を名乗る男とジョニーと言うDーホイーラーに拾われたとか何とか。
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