遊戯王ARC―V TAG FORCE VS   作:鉄豆腐

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第190話 光差す道

ガコン、とシティ中に奇妙な音が響き渡る。一体何の音なのか、ただ1人を除き、この音の正体を分からぬ者達が音の発生源、天を見上げ眉をひそめる。

ガコン、2回目。またもや響く音に反応し、空を見つめる者が増える。シンクロ次元、シティの住民、ランサーズメンバー、ロジェ達アカデミアの人間。全ての者が奇妙な音を怪しみ――。

ガコン、3回目の音が伝わると同時に、それは起こった。

シティの上空を覆うアーククレイドルに、ミントグリーンに光輝くラインが走り抜け、サーキットが完成する。

どよめく人々、そしてそんな彼等を嘲笑うように、アーククレイドルが――動き出す。

 

「ッ、何が……!?」

 

『な、な、何コレーッ!?』

 

『一体何が起こっているのでしょう!?突如上空の物体を光が包み込み、動き、いや、変形しだしぞぉーっ!』

 

そう、変形。これは変形だ。アーククレイドルのパーツがまるでルービックキューブのように別れ、回転し形を変えていく。

現実離れした圧倒的な光景に、遊矢を始めとし、誰もが呆然と口を開く。

 

ただ1人、この異変を作り出した男である白コナミを除いては。

彼は驚愕する遊矢をニヤリと笑いながらアーククレイドルの変形を続け、自身の持った巨大Dーホイールごと呑み込まれる。そして轟音が鳴り響き終わった後、それはシティ上空で完成する。

 

鋭く尖った頭部に、巨大な翼、長い尾、まるで天使を思わせる姿の神々しき竜――『スターダスト・ドラゴン』が、君臨した。

 

「これは……!?」

 

何と巨大で美しく、雄々しく神々しい存在か。ゴクリと唾を呑み込む遊矢に対し、巨大『スターダスト』の頭部から上半身をさらけ出した白コナミがデュエルディスクを構え、不敵な笑みを浮かべる。

 

「ククク、ハハハハハ!これこそが俺の新たなDーホイール、アーククレイドルだ!」

 

これがデュエルディスクだと言うのか、白コナミが愉快そうに笑う。これが彼言う通りデュエルディスクと言うならば、世界一巨大なデュエルディスクだろう。

まるで天より舞い降りし神のような姿に、一部のシティの人間の心が折れ、許しを乞う者達までもが現れる。

 

遊矢とて、心が挫けそうになる。だけど――どれだけ巨大で強大な敵が相手だろうと、彼が諦める訳にはいかないのだ。

彼が諦めては、シティが、シンクロ次元が終わる。背負っているものは余りにも重い。それを投げ出す事は許されない。

震える手でDーホイールのハンドルを握り締め、自在に動くようになったアーククレイドルにぶつからないように周囲を旋回する。

 

「それが、どうしたぁっ!」

 

「そうだ、その意気だ!俺は『ジャンク・アンカー』を召喚!」

 

ジャンク・アンカー 攻撃力0

 

現れたのはまるで宇宙服のような姿をした赤と白のカラーリングのロボット。アーククレイドルに比べれば余りに小さなモンスターだ。とは言え油断は禁物、彼がDーホイールと合体したと言う事は、全力で遊矢を倒しに来ていると言う事なのだから。

 

「『ジャンク・アンカー』の効果発動!手札を1枚捨て、墓地の『ジャンク・サーバント』を蘇生する!」

 

ジャンク・サーバント 攻撃力1500

 

続けて現れたのはどこか不格好に作られた赤いロボット。『ジャンク』を寄せ集めて作られたと言う事だろうか。頭部や肩が左右非対称になっている。

 

「そしてその後、蘇生したカードとこのカードでシンクロ召喚する!『ジャンク・アンカー』は『シンクロン』モンスターの代わりに出来る!レベル4の『ジャンク・サーバント』に、レベル2の『ジャンク・アンカー』をチューニング!集いし力が大地を貫く槍となる。光差す道となれ!シンクロ召喚!砕け、『ドリル・ウォリアー』!」

 

ドリル・ウォリアー 攻撃力2400

 

アーククレイドルの一部の壁がぶち抜かれ、中より姿を見せたのはオレンジ色のボディを持ち、肩、右腕、脚部にドリルを伸ばし、首に黄色いマフラーを巻いた戦士。『ウォリアー』シンクロモンスターの中でもフットワークが軽く、攻防、更には展開にも使える優秀なモンスターだ。

 

「『ジャンク・バーサーカー』の効果発動!墓地の『ジャンク・ウォリアー』を除外して『覚醒の魔導剣士』の攻撃力を2300ダウン!」

 

覚醒の魔導剣士 攻撃力2500→200

 

「バトル!『ジャンク・バーサーカー』で『覚醒の魔導剣士』へ攻撃!」

 

榊 遊矢 LP2800→1550

 

「づぁっ……『レッド・ミラー』を『レッド・スプリンター』と交換、そして『補給部隊』の効果でドロー!」

 

榊 遊矢 手札1→2

 

「『ドリル・ウォリアー』でダイレクトアタック!ドリル・ランサー!」

 

榊 遊矢 LP1550→350

 

「ぐあっ!?」

 

『ジャンク・バーサーカー』の鉄斧が『覚醒の魔導剣士』を切り裂き、背後から猛スピードで加速する『ドリル・ウォリアー』が赤い翼を貫き、遊矢の体勢が大きく崩れる。

翼は炎のように形を取り戻したもの、LPがかなり削られてしまった。勝負は互角、いや、モンスターの数では不利になっている。

 

「ターンエンドだ」

 

白コナミ LP250

フィールド『ドリル・ウォリアー』(攻撃表示)『ジャンク・バーサーカー』(攻撃表示)

『補給部隊』『スピリット・バリア』

手札1

 

「俺のターン、ドロー!魔法カード、『強欲で金満な壺』!エクストラデッキからカードを6枚除外し、2枚ドロー!」

 

榊 遊矢 手札2→4

 

「『レッド・スプリンター』を召喚!」

 

レッド・スプリンター 攻撃力1700

 

「召喚時、墓地の『レッド・リゾネーター』を蘇生する!」

 

レッド・リゾネーター 攻撃力600

 

「効果発動!『ジャンク・バーサーカー』の攻撃力分回復!」

 

榊 遊矢 LP350→3050

 

「ペンデュラム召喚!『EMインコーラス』!『EMシルバー・クロウ』!『EMオオヤヤドカリ』!」

 

EMインコーラス 攻撃力500

 

EMシルバー・クロウ 攻撃力1800

 

EMオオヤヤドカリ 攻撃力500

 

インコーラスとシルバー・クロウと共に現れたのは巨大な貝殻に籠るヤドカリ型のモンスター。大家のヤドカリの名の通り、自らの貝殻に子ヤドカリを住まわせている面白いモンスターだ。

 

「オオヤヤドカリの効果によりシルバー・クロウの攻撃力をフィールドの『EM』モンスターの数×300アップする!」

 

EMシルバー・クロウ 攻撃力1800→2700

 

「バトルだ!インコーラスで『ドリル・ウォリアー』へ攻撃!」

 

榊 遊矢 LP3050→2100

 

「インコーラスの効果でデッキから『EMハンマーマンモ』をリクルートする!」

 

EMハンマーマンモ 攻撃力2600

 

肉を切らせて骨を断つ。ダメージ覚悟の自爆特効。インコーラスも遊矢の意図を汲み、仲間を呼び出す。そして傍に現れたのは鼻先がハンマーになったマンモス。

『EM』の重鎮とも言えるモンスターだ。実際、遊矢がペンデュラムを手にする前には優秀なアタッカーとして重宝したカードである。

 

「ハンマーマンモで『ドリル・ウォリアー』へ攻撃!この攻撃宣言時、相手フィールドの魔法、罠カードをバウンスする!いただきマンモー!」

 

「ッ!」

 

白コナミのフィールドの『補給部隊』と『スピリット・バリア』が弾け飛び、彼の手元に強制的に戻される。これが遊矢の狙い。手札補充とダメージ遮断が封じられた。

 

白コナミ LP250→50

 

「やってくれる……!」

 

「次!シルバー・クロウで『ジャンク・バーサーカー』に攻撃!この瞬間、俺の『EM』達の攻撃力はターン終了まで300アップする!」

 

EMシルバー・クロウ 攻撃力2700→3000

 

EMハンマーマンモ 攻撃力2600→2900

 

EMオオヤヤドカリ 攻撃力500→800

 

「アクションマジック、『ダメージ・バニッシュ』!戦闘ダメージを0に!」

 

「くっ、オオヤヤドカリでダイレクトアタック!」

 

「墓地の『クリボーン』を除外し、『クリアクリボー』を蘇生する!」

 

クリアクリボー 守備力200

 

「攻撃続行、破壊し、次は、『レッド・スプリンター』でダイレクトアタック!」

 

「『クリアクリボー』の効果発動!このカードを墓地から除外し、1枚ドロー!」

 

白コナミ 手札3→4

 

「そしてそのカードがモンスターならば特殊召喚し、攻撃を移し変える!来い、『スターダスト・ファントム』!」

 

スターダスト・ファントム 守備力0

 

ここで白コナミが引き抜いたのは、遊矢の予想の上をいく最悪の一手。正しくディステニードロー。この強運、いや悪運の強さはやはり、コナミを思わせる。

現れた『スターダスト・ドラゴン』を模した法衣を纏う魔法使いが攻撃を受け止め、天空に飛翔、眩き光に包まれ、晴れたそこにいたのは――。

 

「『スターダスト・ファントム』が相手によって破壊された事で、墓地の『スターダスト・ドラゴン』を守備表示で呼び出す!飛翔せよ!」

 

スターダスト・ドラゴン 守備力2000

 

神に仕える天使のように舞い降りる『スターダスト・ドラゴン』の姿であった。

 

「ッ、メインフェイズ2、レベル5のオオヤヤドカリに、レベル2の『レッド・リゾネーター』をチューニング!その美しくも雄々しき翼翻し、光の速さで敵を討て!シンクロ召喚!現れろ、『クリアウィング・シンクロ・ドラゴン』!」

 

クリアウィング・シンクロ・ドラゴン 攻撃力2500

 

「『クリアウィング』……!?」

 

ここで姿を見せたのは薄いミントグリーンの翼を広げた青と白のカラーリングが美しい竜。このシンクロ次元で絆を培った友、ユーゴから受け取った彼のエースだ。

対モンスターに対して強力な効果を発揮する汎用性の高いカード。それが今、遊矢の手で飛翔する。

 

「『レッド・ミラー』を回収、ターンエンド」

 

榊 遊矢 LP2100

フィールド『クリアウィング・シンクロ・ドラゴン』(攻撃表示)『EMハンマーマンモ』(攻撃表示)『EMシルバー・クロウ』(攻撃表示)『レッド・スプリンター』(攻撃表示)

『補給部隊』

Pゾーン『EMモモンカーペット』『曲芸の魔術師』

手札3

 

「俺のターン、ドロー!魔法カード、『手札断札』を発動、『金華猫』を召喚!」

 

金華猫 攻撃力400

 

現れたのは数あるカードの中でも珍しいスピリットと呼ばれるカードの一種。このカードは青い毛並みを逆立たせた猫の姿をしている。レベル1モンスターを大量に投入している彼のデッキならばかなり優秀なモンスターだ。

 

「『金華猫』の効果により、墓地のレベル1モンスター、『シンクローン・リゾネーター』を蘇生する!」

 

シンクローン・リゾネーター 守備力100

 

「レベル1の『金華猫』に、レベル1の『シンクローン・リゾネーター』をチューニング!集いし願いが新たな速度の地平へ誘う。光差す道となれ!シンクロ召喚!希望の力、シンクロチューナー、『フォーミュラ・シンクロン』!」

 

フォーミュラ・シンクロン 守備力1500

 

そしてシンクロ。遊矢の得意分野がペンデュラムなら、白コナミはシンクロ。互いに競うように放たれた召喚法により、フィールドに登場したのはF1カーを模した『シンクロン』モンスター。

他の『シンクロン』と同じようにこのモンスターもチューナーの特性を持つ。そう、シンクロモンスターであり、チューナーである特性を。

これは遊矢達が過ごすスタンダード次元では見られなかったカードだ。本場シンクロ次元なら、シンクロチューナー程度は驚くべきものではないようだが。エクシーズ次元の『RUM』と同じようなものだろう。

 

「『フォーミュラ・シンクロン』のシンクロ召喚時、1枚ドロー!『シンクローン・リゾネーター』の効果で『レッド・リゾネーター』を回収!」

 

白コナミ 手札3→4

 

「さぁ、来るか……!」

 

そしてこのチューナーがなければ出せないモンスターと言うのが存在する。シンクロモンスターとシンクロチューナーを使ってのシンクロを越えたシンクロ。その名を、アクセルシンクロ。

 

「レベル8の『スターダスト・ドラゴン』に、レベル2の『フォーミュラ・シンクロン』をチューニング!集いし夢の結晶が新たな進化の扉を開く。光差す道となれ!アクセルシンクロ!」

 

「消え……た!?」

 

そして、白コナミがアーククレイドルごとフッ、と消え、遊矢の背後に巨大な穴が出現。中よりヘルメット状の頭部と戦闘機のような翼、逞しい四肢を持つ白亜の竜と、アーククレイドルが飛び出し、遊矢が目を見開く。

このままではアーククレイドルが遊矢に激突し、大破するのは確実。遊矢は歯を食い縛って天高く飛翔、ジェットコースターのように逆回転、アーククレイドルを回避する。

 

「生来せよ、『シューティング・スター・ドラゴン』!!」

 

シューティング・スター・ドラゴン 攻撃力3300

 

「『シューティング・スター・ドラゴン』の効果発動!」

 

「ッ!」

 

そして発動される、流星竜の効果。彼とコナミの激闘を見ていた遊矢はゴクリと喉を鳴らす。

 

「デッキトップから5枚のカードをめくり、その中のチューナーモンスターの数まで攻撃権を得る!」

 

聞けば誰もがギャンブル性の高いものだと思う効果。実際その通りだ。特に厄介なのは攻撃権を増やす、のではなく、得る点。5体引き込めば5回攻撃とロマンはあるが、逆に1枚も引けなければ1度も攻撃出来なくなるのだ。

2枚引ければ充分、3枚以上ならお釣りが来る。5枚はあくまでロマンの域だろう。普通ならの話であるが。この男は、普通ではない。

 

「1枚目、チューナーモンスター、『ドリル・シンクロン』!2枚目、チューナーモンスター、『灰流うらら』!3枚目、チューナーモンスター、『ターボ・シンクロン』!4枚目、チューナーモンスター、『ハイパー・シンクロン』!5枚目、チューナーモンスター、『エフェクト・ヴェーラー』!」

 

5回連続チューナーモンスター。化け物染みた豪運が炸裂する。中々どうして、ふざけている。

 

「本当にそれ、喧嘩売ってんのかって位当てるよな……!」

 

「売っているのさ、喧嘩をな!バトル!『シューティング・スター・ドラゴン』で、『クリアウィング・シンクロ・ドラゴン』へ攻撃!スターダスト・ミラージュ!」

 

榊 遊矢 LP2100→1700

 

「ぐあっ!?」

 

『シューティング・スター・ドラゴン』が急上昇し、急降下。アップダウンを繰り返しながら『クリアウィング』の眼前で分身、それぞれ赤、青、緑とまるでオーロラのような色合いに変化し、突き貫く。まずは一撃、エース級の『クリアウィング』を狙って来た。

召喚したばかりなのに直ぐ様破壊され、ユーゴに申し訳ない。

 

「『補給部隊』の効果でドロー!」

 

「こちらは速攻魔法、『グリード・グラード』を発動!」

 

白コナミ 手札3→5

 

榊 遊矢 手札2→3

 

「次だ!『EMハンマーマンモ』へ攻撃!ダイニダァッ!」

 

榊 遊矢 LP1700→1350

 

「づぅっ!」

 

続けて青い『シューティング・スター・ドラゴン』が弾丸の如くハンマーマンモに突撃。凄まじい速度でハンマーマンモを吹き飛ばし、落下の途中で消滅させる。

 

「『EMシルバー・クロウ』へ攻撃!ダイサンダァッ!」

 

榊 遊矢 LP1350→600

 

「くぅ……!」

 

更にもう一撃、怒濤の連続攻撃は例外なくシルバー・クロウにも襲いかかり、インパクトの瞬間に大爆発。黒い煙が遊矢の視界を覆い尽くす。

 

「とどめだ!『レッド・スプリンター』へ攻撃!ダイヨンダァッ!」

 

黒煙を裂き、『シューティング・スター・ドラゴン』が出現、これを食らえばいくら『EMモモンカーペット』の効果でダメージを半減しているとは言え、800のダメージを受けて終わり。そんな事を許せる筈がない。

 

「お断りだ!手札の『EMバリアバルーンバク』を捨て、ダメージを0に!」

 

遊矢の周囲を紫色のバクが現れて覆い、薄い風船の中にいるようなバリアを作り出す。破れはするも、中にいる遊矢にダメージはない。見事攻撃をかわした。

 

「ダイレクトアタック!グォレンダァッ!」

 

「それも嫌だね!手札の『EM』を捨て、墓地の『EMバリアバルーンバク』を守備表示で特殊召喚!」

 

EMバリアバルーンバク 守備力2000

 

バリアバルーンバク大活躍。ダメージを防いだ上に『シューティング・スター・ドラゴン』の猛攻を防ぐ壁となり、その身を盾にして遊矢を守る。何とか5回連続攻撃を回避したが、実に肝が冷える体験だった。遊矢は胸を撫で下ろす。

 

「魔法カード、『打ち出の小槌』を発動。速攻魔法、『異次元からの埋葬』を発動。除外されたモンスター3体を墓地へ戻す。カードを2枚セット、ターンエンドだ」

 

白コナミ LP50

フィールド『シューティング・スター・ドラゴン』(攻撃表示)

セット2

手札1

 

「俺のターン、ドロー!やってくれるよ本当に……!魔法カード、『星屑のきらめき』!墓地のモンスターのレベルが7になるように除外し、『クリアウィング』を蘇生する!」

 

「手札の『増殖するG』を捨てる!」

 

クリアウィング・シンクロ・ドラゴン 攻撃力2500

 

白コナミ 手札0→1

 

「除外された『電脳堺姫ー娘々』の効果で除外されているカード1枚をデッキへ戻す。ペンデュラム召喚!『EMシルバー・クロウ』!『EMインコーラス』!『EMオオヤヤドカリ』!」

 

EMシルバー・クロウ 攻撃力1800

 

EMインコーラス 守備力500

 

EMオオヤヤドカリ 守備力2500

 

白コナミ 手札1→2

 

「レベル7の『クリアウィング』に、レベル3のインコーラスをチューニング!平穏なる時の彼方から、あまねく世界に光を放ち、蘇れ!シンクロ召喚!現れろ、『涅槃の超魔導剣士』!」

 

涅槃の超魔導剣士 攻撃力3300

 

白コナミ 手札2→3

 

ペンデュラム召喚したペンデュラムモンスターをチューナー扱いとするシンクロ召喚。白コナミのアクセルシンクロに対抗し、遊矢もまたシンクロの先、そしてペンデュラムの先を放つ。

シンクロペンデュラムモンスター。2つの特性を持つ、極めて特異なモンスターだ。

青い鎧を纏う超魔導剣士が剣を振るう。

 

「そしてペンデュラム召喚したペンデュラムモンスターをチューナー扱いとしてシンクロ召喚した事で、『涅槃の超魔導剣士』の効果発動!墓地のカードを回収!」

 

「手札の『エフェクト・ヴェーラー』を捨て、その効果を無効に!」

 

「『レッド・ミラー』を回収。オオヤヤドカリの効果発動!『涅槃の超魔導剣士』の攻撃力を600アップ!」

 

涅槃の超魔導剣士 攻撃力3300→3900

 

これで『涅槃の超魔導剣士』の攻撃力が『シューティング・スター・ドラゴン』の攻撃力を越えた。

 

「バトル!『涅槃の超魔導剣士』で『シューティング・スター・ドラゴン』へ攻撃!トゥルース・スカーヴァティ!」

 

「『シューティング・スター・ドラゴン』の効果発動!このカードを除外し、攻撃を無効に!」

 

「シルバー・クロウでダイレクトアタック!」

 

EMシルバー・クロウ 攻撃力1800→2100

 

EMオオヤヤドカリ 攻撃力500→800

 

「罠発動!『星墜つる地に立つ閃光』!特殊召喚された相手モンスターの直接攻撃宣言時、その攻撃力が俺のLPを越えているならば攻撃を無効にし、ドロー!」

 

白コナミ 手札2→3

 

「その後、墓地の『スターダスト』モンスターを呼ぶ!来い、『スターダスト・ドラゴン』!!」

 

スターダスト・ドラゴン 攻撃力2500

 

再び白コナミのピンチに駆けつける星屑の竜。何度も遊矢の前に立ちはだかり、白き翼で火の粉を払う。

 

「更に罠発動!『バスター・モード』!」

 

「ッ!?」

 

ダメ押しとばかりに発動される罠。その正体は遊矢にとって最悪の手。アクセルシンクロと同じく、シンクロモンスターの先を行く一手。『スターダスト・ドラゴン』を更に異なる姿に進化させるカードだ。

 

「『スターダスト・ドラゴン』をリリースし、デッキから『スターダスト・ドラゴン/バスター』に進化させる!来い、『スターダスト・ドラゴン/バスター』!!」

 

スターダスト・ドラゴン/バスター 攻撃力3000

 

『スターダスト・ドラゴン』の身体を眩き閃光が覆い、光が格納され青い鎧として纏われる。ターン終了までリリースする事で、モンスター、魔法、罠の効果発動を無効にする万能カウンターとなるカード。面倒なものの出現を許してしまった。

 

「くっ……!カードを2枚セット、ターンエンドだ……!」

 

「この瞬間、『シューティング・スター・ドラゴン』が帰還する」

 

シューティング・スター・ドラゴン 攻撃力3300

 

榊 遊矢 LP600

フィールド『涅槃の超魔導剣士』(攻撃表示)『EMシルバー・クロウ』(攻撃表示)『EMオオヤヤドカリ』(守備表示)

『補給部隊』セット2

Pゾーン『EMモモンカーペット』『曲芸の魔術師』

手札1

 

「俺のターン、ドロー!速攻魔法、『リロード』!そして墓地の『スターダスト・ファントム』を除外し、『シューティング・スター・ドラゴン』を選択しておく。『シューティング・スター・ドラゴン』の効果発動!1枚目、チューナーモンスター、『灰流うらら』!2枚目、チューナーモンスター、『ジャンク・シンクロン』、3枚目、チューナーモンスター、『ハイパー・シンクロン』!4枚目、チューナーモンスター、『エフェクト・ヴェーラー』!5枚目、チューナーモンスター、『ターボ・シンクロン』!」

 

再び5回の連続攻撃権を得る『シューティング・スター・ドラゴン』。最早何時もの事なので驚きはしないが、脅威には変わらない。この攻撃をどう防ぐかが問題だ。

 

「バトル!『/バスター』でシルバー・クロウへ攻撃!」

 

「カウンター罠、『攻撃の無力化』!その攻撃を無効にし、バトルを終了させる!カウンター罠なら『/バスター』の効果でも追いつけない!これこそが不動の守りだ!」

 

「考えたな……カードを2枚セット、ターンエンドだ」

 

白コナミ LP50

フィールド『シューティング・スター・ドラゴン』(攻撃表示)『スターダスト・ドラゴン/バスター』(攻撃表示)

セット2

手札1

 

「俺のターン、ドロー!魔法カード、『カップ・オブ・エース』成功だ、2枚ドロー!」

 

榊 遊矢 手札1→3

 

「『EMドクロバット・ジョーカー』を召喚!」

 

EMドクロバット・ジョーカー 攻撃力1800

 

「召喚時効果により、『EMガンバッター』をサーチ!」

 

「止めよう、『/バスター』をリリースし、効果を無効!」

 

どうやら遊矢はペンデュラム召喚で押しきるつもりなのだろう。ドクロバット・ジョーカーを呼んで『EM』を増やし、オオヤヤドカリの効果でシルバー・クロウかドクロバット・ジョーカーの攻撃力を1200アップ。攻撃力3000となったどちらかと『涅槃の超魔導剣士』で『シューティング・スター・ドラゴン』と『スターダスト・ドラゴン/バスター』を相討ちに持ち込む。

当然『シューティング・スター・ドラゴン』は自身の効果でエスケープするも、『/バスター』だけでも倒せる。そしてこの作戦の厄介な所はオオヤヤドカリの効果を無効にしても破壊されたオオヤヤドカリは再びペンデュラム召喚で現れると言う事。ならばせめて遊矢の手札に目当てのカードを渡さない為、ここで効果を使う。

 

「『補給部隊』の効果でドロー!」

 

榊 遊矢 手札2→3

 

「魔法カード、『手札抹殺』!手札を交換!魔法カード、『ペンデュラム・ホルト』!2枚ドロー!」

 

榊 遊矢 手札1→3

 

「ペンデュラム召喚!『EMドクロバット・ジョーカー』!『EMインコーラス』!」

 

EMドクロバット・ジョーカー 攻撃力1800

 

EMインコーラス 守備力500

 

「そしてオオヤヤドカリの効果発動!シルバー・クロウの攻撃力を1200アップ!」

 

EMシルバー・クロウ 攻撃力1800→3000

 

「バトル!シルバー・クロウで『シューティング・スター・ドラゴン』へ攻撃!この瞬間、攻撃力をアップ!」

 

EMシルバー・クロウ 攻撃力3000→3300

 

EMドクロバット・ジョーカー 攻撃力1800→2100

 

EMインコーラス 攻撃力500→800

 

EMオオヤヤドカリ 攻撃力500→800

 

「除外された『スターダスト・ファントム』の効果により、『シューティング・スター・ドラゴン』に戦闘耐性を与える!尤も、この効果を使用した後、攻守が800ダウンするがな」

 

シューティング・スター・ドラゴン 攻撃力3300→2500

 

「『涅槃の超魔導剣士』で追撃!」

 

「攻撃を無効!」

 

「ドクロバット・ジョーカーでダイレクトアタック!」

 

「罠発動、『星屑の残光』!墓地の『スターダスト・ドラゴン』を蘇生する!!」

 

スターダスト・ドラゴン 攻撃力2500

 

これで4度目。再び飛翔する白き翼、『スターダスト・ドラゴン』。まるで繭のように翼を折り畳み、白コナミを守ろうと防御体勢を取る。これでは進もうにも進めない。遊矢は仕方なく攻撃を止める。

 

「カードを3枚セット、ターンエンドだ」

 

「この瞬間、シューティング・スターと『/バスター』が帰還する」

 

シューティング・スター・ドラゴン 攻撃力3300

 

スターダスト・ドラゴン/バスター 攻撃力3000

 

榊 遊矢 LP600

フィールド『涅槃の超魔導剣士』(攻撃表示)『EMドクロバット・ジョーカー』(攻撃表示)『EMインコーラス』(守備表示)『EMオオヤヤドカリ』(守備表示)

『補給部隊』セット3

Pゾーン『EMモモンカーペット』『曲芸の魔術師』

手札0

 

「俺のターン、ドロー!『天輪の葬送士』を召喚!」

 

天輪の葬送士 攻撃力0

 

現れたのはまるで棺のような形をした天使族のモンスター。レベル1、攻守0、相変わらず低ステータスのモンスターを主軸とした戦術。次はどんな効果が飛び出すか。

 

「召喚時、墓地の光属性、レベル1モンスターを特殊召喚!来い、『救世竜セイヴァー・ドラゴン』!」

 

救世竜セイヴァー・ドラゴン 守備力0

 

棺の中から現れたのはクリアピンクに輝く小さな竜。まるで蜻蛉のような昆虫に見える。これもレベル1、攻守0と低いステータスには恵まれているものの、サポートが無ければ本当にちっぽけなカードだろう。

そんなモンスターを見て、遊矢の目が見開かれ、ゾッ、と背筋が凍りつく。『シューティング・スター・ドラゴン』や『スターダスト・ドラゴン/バスター』と言う最悪の脅威と出会った時のように。

このちっぽけなモンスターを前に遊矢が怯えにも似た感情を浮かべる。

 

「まさか……!」

 

「そのまさかだ。レベル8の『スターダスト・ドラゴン』とレベル1の『天輪の葬送士』に、レベル1の『救世竜セイヴァー・ドラゴン』をチューニング!集いし星の輝きが、新たな奇跡を照らし出す。光差す道となれ!」

 

救世竜の身体が膨張し、その中に『スターダスト・ドラゴン』が入り込む。そして『スターダスト・ドラゴン』の周囲に光が満ち溢れ、パンクするかのように眩き光が漏れ出し、1体のモンスターの姿を照らし出す。

 

「シンクロ召喚」

 

光が流星のように降り注ぐ中、姿を見せたるはクリアブルーの鱗持つ4枚の翼の神々しき竜。星の滅亡を救う究極のシンクロモンスターが今、覚醒する。

 

「光来せよ、『セイヴァー・スター・ドラゴン』!!」

 

セイヴァー・スター・ドラゴン 攻撃力3800

 

『スターダスト・ドラゴン』の進化形態、3体目。最悪の絶望が遊矢の前に立ち塞がる。

 

「上等だよ……!本当にエンタメってくれるよなぁ!」

 

最早ヤケクソ気味に叫び、己を奮い立たせる遊矢。確かに状況は絶望的、だが僅かでも希望はある。

 

「『セイヴァー・スター・ドラゴン』の効果により、『涅槃の超魔導剣士』の効果を無効にし、コピー!サブリメーション・ドレイン!『シューティング・スター・ドラゴン』の効果発動!当然全てチューナーだ」

 

ピッ、説明は不要だとばかりにデッキトップから5枚のカードをめくり、遊矢に見せつける白コナミ。彼の言う通り、全てチューナーのカードだ。

 

「バトル!『セイヴァー・スター・ドラゴン』でドクロバット・ジョーカーへ攻撃!」

 

「罠発動!『次元幽閉』!攻撃を仕掛けた『セイヴァー・スター・ドラゴン』を除外!」

 

「『セイヴァー・スター・ドラゴン』の効果発動!このカードをリリースし、その効果を無効にして相手フィールドのカードを全て破壊!スターダスト・フォース!」

 

「チェーンして罠発動!『EMショーダウン』!俺のフィールド上に存在する表側表示の魔法カードの数まで相手モンスターを裏側守備表示に変更!『シューティング・スター・ドラゴン』と『スターダスト・ドラゴン/バスター』を選択!」

 

「ならばチェーンして『/バスター』の効果発動!このカードをリリースし、その効果を無効にして破壊!」

 

相次ぐ効果の応酬。凄まじいまでの攻防に打ち勝ったのは白コナミだ。無効に無効を重ね、遊矢の策を見事突破。更にフィールドのカードを全滅させる。これでペンデュラムも破壊し、遊矢の逆転は難しくなった。

 

「勝負は決まったか?」

 

「いいやまださ!モンスターゾーンで破壊された『涅槃の超魔導剣士』の効果でこのカードをペンデュラムゾーンへセッティングし、相手の効果で破壊された『運命の発掘』の効果発動!墓地のこのカードの枚数分、5枚のカードをドローする!」

 

そう、遊矢はこの時『セイヴァー・スター・ドラゴン』の効果でこのカードが破壊される事こそを待っていた。

このドローで――『シューティング・スター・ドラゴン』の5回攻撃を防ぐカードを引き抜く。実に分の悪い賭けであるが、今これしか手がない。

 

「お楽しみは、これからだぁっ!」

 

榊 遊矢 手札0→5

 

引き抜かれる5枚のカード。遊矢は視線を運び――ニヤリと笑みを浮かべる。どうやら運命は彼をここで終わらせないらしい。

 

「『シューティング・スター・ドラゴン』で、ダイレクトアタック!」

 

「参ったな……こんなの……」

 

迫る流星、『シューティング・スター・ドラゴン』を前にし、遊矢は瞼を閉じ顔を俯かせる。一体どうしたのだろうか、先程の様子を見る限り窮地を覆すカードは引けている筈だが。それにしては様子がおかしい。

ハッタリだったのか、白コナミが訝しみながらも止めを刺そうとした、その時。

遊矢の両目が開き、瞬間、翡翠に輝く左眼から、紫電が迸る。

 

「熱くならない訳がない!そうだろ――ユーゴォッ!」

 

遊矢が口角を持ち上げ、叫んだその時。

 

『融合じゃねぇ、ユーゴだっ!』

 

友の声が、聞こえた。

 

『「手札の『SRメンコート』の効果発動!相手モンスターの直接攻撃宣言時、このカードを攻撃表示で特殊召喚し、相手フィールドのモンスターを守備表示に変更する!」』

 

SRメンコート 攻撃力100

 

遊矢の手札から1枚のカードがデュエルディスクに叩きつけられ、基盤が輝く。そしてフィールドにメンコのようなモンスターが降り立ち、神風を起こして『シューティング・スター・ドラゴン』を吹き飛ばす。

『スピードロイド』。古き良き玩具を模した、風属性機械族のカード群。遊矢がこのシンクロ次元で友になった、自分と良く似た顔立ちの少年、ユーゴが使用するモンスターだ。

 

「『スピードロイド』……だとっ……!?」

 

思わず白コナミが動揺して叫ぶ。その驚きは、『クリアウィング』を呼び出した時よりも、更に大きい。

遊矢のデッキは『オッドアイズ』、『EM』、『魔術師』の3種を混合し、いくつかの汎用カードを投入したデッキの筈。その中に、新たに『スピードロイド』が入っている等と、誰が思う事か。

 

『これがエンタメって奴よぉ!なぁ相棒!』

 

そんな予想外の一手を打つ遊矢の口から、彼のものとは違う声が放たれる。どこまでも底抜けに明るく、無鉄砲で調子者な声、そう、ユーゴの声が。

遊矢の中に眠っていた彼が、遊矢のピンチに今、駆けつけてくれたのだ。

 

「全く、調子の良い相棒だよ……!」

 

そんなユーゴに対し、呆れ様子を見せながらも、声を弾ませる遊矢。その口元からは隠し切れない嬉しさが表れている。

 

「その声、その左眼、ユーゴと融合したと言うのか……!」

 

『ユーゴと融合……ブフォッ!ゆ、融合じゃねぇつってんだろ……ブフーッ!』

 

「笑いのハードル低いな」

 

ギリッ、偶然ハマったダジャレに対し吹くユーゴを見て、白コナミが歯軋りを鳴らす。茶化されている事に対してではない。榊 遊矢が、まるで伝説のデュエリストのように、2つの魂をその身に宿している事に対してのものだ。

だが白コナミはその口元を今度は笑みに変え、獰猛に牙を剥く。

 

「いや、面白いじゃないか……!俺も奴を吸収したのだ。2人のデュエリスト!このデュエル、楽しませてもらおう!」

 

「言った筈だ、俺達は1人で闘ってるんじゃないって!行くぞ、ユーゴ!」

 

『応よ兄弟、お望み通り、たっぷり楽しませてやろうじゃねぇか!』

 

「ターンエンド。『/バスター』を帰還」

 

スターダスト・ドラゴン/バスター 攻撃力3000

 

「さぁ、満足させてもらおうか!」

 

白コナミ LP50

フィールド『シューティング・スター・ドラゴン』(守備表示)『スターダスト・ドラゴン/バスター』(攻撃表示)

セット1

手札1

 

シティの命運を賭けた究極のライディングデュエル。アーククレイドルと一体化を果たした白コナミに対し、遊矢はユーゴと共に闘う。デュエルは更に続いていく――。


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