遊戯王ARC―V TAG FORCE VS   作:鉄豆腐

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色々頑張ったら一万文字に達した、やったぜ。


第23話 あの時のお前の眼はもっと輝いていたぞ!

「何?侵入者?」

 

世界に名を馳せる大企業、レオ・コーポレーションの社長室、そのデスクの上でレオ・コーポレーションの社長である赤馬 零児は両手を目の前で組み、専属補佐である中島の報告を受けていた。予想外の悪いニュースを耳に挟んだ為か、眉を寄せ、少しばかり不快そうだ。

 

大企業の社長として激務に勤しんでいるが彼はまだ若い。たまには羽を伸ばし、デュエルでもしたいものだ、と心の中で溜め息を吐くが顔には出さない。

と、そこでコンコンコン、と扉よりノック音が響く。この忙しい時に一体誰であろうか?零児は扉に目もくれず「入れ」と言い放つ。暫くして「失礼するわ」と台詞と共に扉が開き、1人の女性が姿を見せる。

 

艶やかなピンクの髪は首より下から紫へと変色し、女性の端整な顔立ちに良く似合っている。切れ長の眼、エメラルドの瞳、スッと通った鼻筋は美女と言っても良いであろう。

その身体も女性らしい曲線美を描き、特にその豊満な胸は同性であろうと羨むに違いない。白を基調とし、脇をざっくりと開いた一風変わった衣装を身に纏っている。

 

「……君は確か……最近入って来た、そう、瑠那だったか」

 

「ええ、それで社長、このシンクロ反応なのですが--」

 

「少し待ってくれ、今は侵入者の確認が先だ」

 

「侵入者、ですか?」

 

PCを起動し、カメラの確認を始める零児に対し、侵入者についての話を聞いていない瑠那は首を傾げる。やがてPCのモニターにLDSのデュエルコートの景色が写る。どうやらデュエルを行っているようだ。数は4人、背が高い、茶髪をリーゼントのような形にした男性はLDSの融合コースの講師、マルコ。彼の腕は零児も認めている。性格には少々難があるが講師の中でも1、2を争い、講師で無ければプロの道を進んでいたであろう人物だ。

彼の生徒は優秀な成績を修め、LDSに大きく貢献してくれている。最近ではグレート・モスを究極完全態まで進化させる生徒を育てたとか。……融合関係なくね?と言うのは藪蛇だろう。

 

彼の隣に立つのはLDS総合コースに所属する沢渡 シンゴの姿。此方も性格に難があるが実力は高く、様々なデッキを使いこなすマルチデッカーだ。その腕には零児も感心している。

様子を見るにタッグデュエルだろう、この2人が手を組むとは一体相手は誰なのだろうか?と零児の中で少しばかりの興味が沸く。

 

対面するのは光津 真澄。LDSジュニアユース融合コース所属トップの少女だ。マルコの弟子でもあり、彼女の実力も評価している。

しかしどこか様子がおかしい。親しい師とのデュエルだと言うのに彼女の顔は優れない。沢渡がいるから?それなら仕方無いと頷けるが違うようだ。

 

カメラをズームアウトし、彼女とペアを組むパートナーへと目を配らせる。そこには見覚えのある赤帽子の少年がデュエルディスクのプレートを展開して立っていた。

 

「はぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!?」

 

横目でPC画面を覗いていた瑠那が零児の耳元で大声で叫ぶ。キーンと頭の中まで響き渡る衝撃に眉を寄せる零児。

 

「貴様っ!社長に何を!」

 

「中島、お前も充分に五月蝿い。少し落ち着け」

 

「もっ、申し訳ございません社長ッ!!!」

 

「……」

 

話を聞いているのかいないのか、先程よりも大きな声で頭を下げる中島を無視し、瑠那へと向き直る。

 

「知り合いかね?」

 

と瑠那へと先程の反応を追求する零児。彼のジッ、とただ此方を伺うような視線を受け、澄まし顔をしていた瑠那が右へ左へまるで振り子のように忙しなく泳がせながら両手の指先をツンツンとつつく。明らかに動揺している。瑠那は滝の如く脂汗を浮かべながらもその口を開く。

 

「ホ……ホホホホッ……何を一体……?わ、ワタクシはただ、こっこの帽子の男、驚く程バカっぽいなーって思っただけですのことよ?ほっほうらアホ面!デュエルばかりやってそうなアホ面ですわ!」

 

余りにもアレな言い訳にこれ以上問い詰める気が削がれ、「そうか」と憐憫の籠った眼で返す零児。気のせいか、零児の言葉を受けた瑠那が目の端に涙を浮かべているように見える。

 

「確かこの男は、コナミとか言う--デュエルを中止させますか?」

 

「……いや、このまま続けさせよう。少し、彼のデュエルに興味がある」

 

眼鏡のフレームを指で抑え、中島に答える零児。さて、どんなデュエルをするか--。珍しく期待を胸に秘め、PCのモニターへと向き直る。このデュエルで彼について何かが得られるなら善し、コナミについては不明瞭な部分が多い。だからこそ零児はコナミを警戒している。果たして--彼は味方なのか、と。

 

------

 

「……エクシーズ……モンスター……」

 

ルビーの瞳を驚愕に揺らし、真澄は渇いた唇で目の前で翼を広げ、羽ばたくモンスターの種類を絞り出すように呟く。

エクシーズモンスター。それは基本、同じ星のモンスターを2体以上フィールドに揃え、そのモンスターを素材にし、上に重ねる事でエクストラデッキからエクシーズモンスターをエクシーズ召喚し、多くのものは素材となったモンスター、所謂オーバーレイ・ユニットを使用する事で効果を発揮するモンスターだ。簡易に出せ、強力な効果を持つが代わりとして制限を設けている。

 

問題はそのエクシーズモンスターを融合コースの講師であるマルコが使用した事だ。真澄は確かに他の召喚法も尊重しているが、師が教えてくれた融合こそが偉大であると信じている。それなのに何故、どうしてマルコはエクシーズを--?

 

「アッハーッハァッ!驚いたかい?真澄ん。成長するのが子供だけの権利だと思ったら大間違いだよ、真澄ん。『ジェムナイト』だってほぅら、エクシーズを得て進化している」

 

バッ、と大袈裟に両手を広げ、自らのモンスターを披露するマルコ。彼にしては珍しく本気で自分のモンスターを自慢しているようだ。その口には楽しそうな笑みを浮かべている。

 

「さぁて気になるエメラルさんの効果!オーバーレイ・ユニットを1つ使い、墓地の効果モンスター以外のモンスター1体を特殊召喚する!僕が選択するのはジェムナイトのリーダー、『ジェムナイト・クリスタ』さんさ!キラッ☆」

 

ジェムナイト・クリスタ 攻撃力2450

 

ダイガスタ・エメラルが両の手から淡い光の球を作り上げ、クリスタルの英雄が戦場へと復活を遂げる。

西洋風の兜と騎士甲冑、その両肩には水晶が山のようにそびえ立ち、美しき白の輝きを放っている。

 

「更に!『ジェムナイトレディ・ブリリアント・ダイヤ』の効果発動!『ジェムナイト・クリスタ』を墓地へ送り、エクストラデッキから『ジェムナイト』融合モンスター1体を召喚条件を無視して特殊召喚する!グラインド・フュージョン!『ジェムナイトレディ・ラピスラズリ』!」

 

ジェムナイトレディ・ラピスラズリ 攻撃力2400

 

『ジェムナイトレディ・ブリリアント・ダイヤ』が剣を振るうと同時に『ジェムナイト・クリスタ』がその身よりも巨大なダイヤモンドの殻へと閉じ込められる。ダイヤモンドの殻が眩き光へ包まれ、ブリリアント・ダイヤの剣線が走る。バキリ、殻がひび割れ、ガラスの破裂音のような音と共に紫電が迸る。

 

殻より新生するは瑠璃色の巫女。女性らしきシルエットに着物を纏ったような姿、つぶらな眼を輝かせたモンスターだ。

 

「『ジェムナイトレディ・ラピスラズリ』の効果発動!デッキから『ジェムナイト・ラズリー』を墓地に送り、フィールドの特殊召喚されたモンスター×500のダメージを与える!」

 

ラピスラズリが自身の周囲に存在するモンスターからエネルギーを吸収し、球体状におさめ、息を吹きかける。すると球体が吹雪のように空中を飛び、コナミへと迫る。

 

「させん!罠発動!『ピケルの魔法陣』!効果ダメージを0に!」

 

「ふぅん?ラズリーの効果で『ジェムナイト・アイオーラ』回収!墓地の『ジェムナイト・ラズリー』を除外し、墓地の『ジェムナイト・フュージョン』を回収!『魂吸収』の効果で500ポイント回復ぅ!」

 

マルコ&沢渡 シンゴ LP1250→1750

 

「そして発動!ダイガスタ・エメラルとアイオーラで融合!光渦巻きて新たな輝きと共に一つとならん!融合召喚!現れよ!幻惑の輝き、『ジェムナイト・ジルコニア』!」

 

ジェムナイト・ジルコニア 攻撃力2900

 

更に展開、追い打ちをかけるように現れたのは真澄も使用したモンスター。効果は持たないものの、『ジェムナイト』では出しやすく、高い攻撃力を有したカードだ。

 

「墓地のアイオーラを除外、『ジェムナイト・フュージョン』回収、ライフを回復」

 

マルコ&沢渡 シンゴ LP1750→2250

 

「そして手札の『ジェムナイト・フュージョン』を捨てる事で『ブリリアント・フュージョン』の効果発動!『ジェムナイトレディ・ブリリアント・ダイヤ』の攻守を元々の数値分アップする!」

 

ジェムナイトレディ・ブリリアント・ダイヤ 攻撃力0→3400

 

ブリリアント・ダイヤが本来の眩い輝きを取り戻す。攻撃力3400。その攻撃力を見て真澄が冷や汗を垂らす。デッキ融合を行ってデメリット有りかと思いきやこれである。頬は引き吊り、ルビーの眼は「インチキ効果も大概にしろ!」と雄弁に語っている。

 

「ちょっ、あんた大丈夫なの!?このままじゃ負けちゃうわ……!」

 

目を丸くし、わたわたと焦る様子でコナミを問い詰める真澄。しかしコナミは何時も通りの無表情で真澄へと向き直る。

 

「落ち着け真澄ん。つい最近デメリットも何もないデッキ融合と当たったばかりだ。それにある時はカード2枚で攻撃力5000を2体並べられた事がある。少し前のカードプールで試してみたが……あれは悪い事をした……」

 

「こっ……攻撃力5000……」

 

そう言ってあの時の出来事を思い返すコナミ。知り合いのドラゴン使いを喜ばせようと思い、禁止制限など無視して作ったデッキで「んほぉ!しゅごいのぉ!」と言わせたかったのだが、場をドラゴンが覆いつくし、その知り合いが「おお……!おお……!?」と壊れたスピーカーのように同じ台詞を繰り返したのは良い思い出である。征竜、ダメ、絶対。

 

帽子を深く被り、反省するコナミ。一方で攻撃力5000と言う冗談染みた数値に顔を青くし、コナミを見つめる真澄。余りのショックに真澄ん呼びにも気づかない。

 

「更に墓地の『ジェムナイト・クリスタ』さんを除外して『ジェムナイト・フュージョン』を回収、『魂吸収』の効果で500ポイント回復するよー!」

 

マルコ&沢渡 シンゴ LP2250→2750

 

「さぁ、バトルだ!『ジェムナイトレディ・ブリリアント・ダイヤ』でシャイニングを攻撃!」

 

ブリリアント・ダイヤがその手に持つ剣を握りしめ、ダン、と地を蹴り、シャイニングへと肉薄する。冴え渡る剣技、一瞬の内に剣は煌めき、シャイニングを細切れにし、コナミにダメージを与える。

 

コナミ&光津 真澄 LP3700→3200

 

「シャイニングの効果で除外されているオーシャンを手札に戻す!」

 

「さぁ、次だ『ジェムナイト・ジルコニア』で『オッドアイズ・ドラゴン』を攻撃!」

 

模造ダイヤの騎士が雄叫びを放ち、白煙を吹いて巨腕を振り上げ、凄まじい速度でコナミに接近、風切り音を鳴らして『オッドアイズ・ドラゴン』へと振り抜く。

 

コナミ&真澄 LP3200→2800

 

「ラピスラズリでダイレクトアタック!」

 

ラピスラズリが再びエネルギーを集め、球体状に構成して吹雪を放つ。これを食らえば一巻の終わり、その寸前。

 

「手札の『速攻のかかし』を捨てバトルフェイズを終了させる!」

 

キィンッと甲高い音を鳴らし、両手のY字に別れた木の棒を胸の前でクロスさせたかかしがその攻撃を防ぐ。くたびれた三角帽子、無造作に伸びた緑の髪を揺らし、ジェット噴射で現れたニヒルに笑うかかし。

優秀な手札誘発の効果を持つカードだ。コナミもこのカードを頼りにしているのか、「かかし先生、がんば」と相変わらずのテンションのエールを送っている。

 

「ターンエンド」

 

「罠カード『裁きの天秤』を発動、お前のフィールドのカードと俺のフィールド、手札の差分、4枚をドローする」

 

コナミ 手札1→5

 

たった1枚となったコナミの手札が5枚まで回復する。攻撃を凌ぎ、次の布石を用意するプレイングにマルコがほう、と息をつく。

 

マルコ&沢渡 シンゴ LP2750

フィールド 『ジェムナイトレディ・ブリリアント・ダイヤ』(攻撃表示) 『ジェムナイトレディ・ラピスラズリ』(攻撃表示)『ジェムナイト・ジルコニア』(攻撃表示)

『ブリリアント・フュージョン』『魂吸収』 セット1

手札1(マルコ) 手札3(沢渡)

 

「私のターン、ドロー」

 

「さて、真澄ん、今の君には足りないものは分かったかな?」

 

デッキより1枚のカードを引き抜く真澄に対し、マルコが目を細めて質問する。その表情はあくまで試すような教師としての顔。決して答えだけを与えず、ヒントを与えて生徒自らの手で答えを導かせようとしている。だが。

 

「……分かりません、どうすれば良いのか……だけど……」

 

「うん?」

 

俯き、項垂れる真澄。その顔には影が差し、長い黒髪で瞳は隠れ、表情は窺い知れない。彼女からか細い呟きが漏れ、マルコがその顔を覗き込む。瞬間、真澄が気丈さを取り戻した顔を持ち上げ、鋭い視線をマルコへとぶつける。

 

「分からないまま、終わりたくはありません」

 

気の強い眼、弟子の闘志を見てか、マルコも爽やかな笑みを向ける。

 

「魔法カード、『打ち出の小槌』!手札を交換!私は既にセッティングされたペンデュラムスケールでペンデュラム召喚!『ジェムナイト・アンバー』!『ジェムナイト・ガネット』!」

 

ジェムナイト・アンバー 攻撃力1600

 

ジェムナイト・ガネット 攻撃力1900

 

コナミの設置したペンデュラムカードを利用し、手札から宝石の騎士達を呼び起こす真澄。1体は琥珀の騎士。もう1体は柘榴石の騎士。彼等は真澄につき従うように膝をつく。

 

「私は、『ジェムナイト・アンバー』を再度召喚!手札の『ジェムナイト・フュージョン』を墓地に送り、効果発動!除外されている『ジェムナイト・ラズリー』を手札に戻す!墓地の『ジェムナイト・ジルコニア』を除外して『ジェムナイト・フュージョン』を手札に!」

 

「ならこっちは『魂吸収』の効果で500回復だ」

 

マルコ&沢渡 シンゴ LP2750→3250

 

「『ジェムナイト・フュージョン』を発動!『ジェムナイト・アンバー』と『ジェムナイト・ラズリー』を融合!光渦巻きて新たな輝きと共に一つとならん!融合召喚!現れよ!『ジェムナイト・プリズムオーラ』!」

 

ジェムナイト・プリズムオーラ 攻撃力2450

 

真澄の背後に渦が巻き起こり、その中へと2体の騎士が飛び込む。次の瞬間、渦は爆発を起こし、新たな騎士が姿を現す。ダイヤのレイピアと盾を持ち、角を伸ばした鬼のような出で立ちの騎士。

その手に握るレイピアを振るい、マントが揺れる。攻撃力ではマルコのフィールドのモンスターが明らかに上、しけしこのカードには優秀な効果がある、と真澄はその右腕を突き出す。

 

「『ジェムナイト・ラズリー』の効果で墓地の『ジェムナイト・アンバー』を手札に加えるわ。そして墓地の『ジェムナイト・ラズリー』を除外、『ジェムナイト・フュージョン』を手札に」

 

マルコ&沢渡 シンゴ LP3250→3750

 

「そして『ジェムナイト・フュージョン』をコストにプリズムオーラの効果発動!ブリリアント・ダイヤを破壊!」

 

プリズムオーラのレイピアと雷が落ち、そのまま纏ってブリリアント・ダイヤを切り裂く。これで強力なモンスターを打ち倒した。

 

「バトル!『ジェムナイト・プリズムオーラ』で『ジェムナイトレディ・ラピスラズリ』を攻撃!」

 

火花を散らし、『ジェムナイト・プリズムオーラ』がフィールドを駆ける。正に電光石火、光を纏い、一瞬の内にして瑠璃色の巫女の眼前にオーラクリスタルの白騎士が迫る。

降り下ろされるレイピア、瑠璃の巫女が反撃しようとするも、既に遅く、砕け散る。

 

マルコ&沢渡 シンゴ LP3750→3700

 

「くっ、やるねぇ……!」

 

「ガネットでダイレクトアタック!」

 

「アクションマジック、『回避』!悪いけど防がせてもらうよ!」

 

「ターンエンド!」

 

コナミ&光津 真澄 LP2800

フィールド『ジェムナイト・プリズムオーラ』(攻撃表示)『ジェムナイト・ガネット』(攻撃表示)

Pゾーン 『竜穴の魔術師』 『法眼の魔術師』

手札4(コナミ) 手札1(真澄)

 

「俺様のターンだぁっ!ドロー!俺は手札の『進撃の帝王』を墓地に送り、『汎神の帝王』を発動!2枚ドロー!更に!墓地の『汎神の帝王』を除外し、デッキより『帝王』魔法、罠カードを3枚見せ、相手が選んだ1枚を手札に加える!さぁ、どれにするぅ?光津ぅ!」

 

「どれも同じじゃない!ふざけんじゃないわよ!この萎びたバナナ頭!真ん中よバーカ!」

 

「し、萎びたバナナ……、俺は『帝王の深怨』を手札にぃ……!この怨みぃ!深いぞ光津ぅ……!『魂吸収』効果で回復!」

 

マルコ&沢渡 シンゴ LP3700→4200

 

「手札の『天帝アイテール』を公開し、『帝王の深怨』発動!デッキより『汎神の帝王』を手札に!手札の『連撃の帝王』を墓地に送り、2枚目の『汎神の帝王』だ!2枚ドロー!」

 

真澄が妙に的を得た罵倒を吐き、沢渡の表情が憎悪に染まる。確かに彼の前髪がそう見えない事もない。怒りに火がついた沢渡が今の彼に相応しい名のカードを発動し、2度の手札交換をする。

 

「更に永続罠『始源の帝王』!発動後、攻撃力1000守備力2400、宣言した属性のモンスターとなり、同属性のモンスターをアドバンス召喚をする場合、2体分のリリース要員となる!俺が宣言するのは光だ!」

 

始源の帝王 守備力2400

 

「『始源の帝王』をリリースし、『天帝アイテール』をアドバンス召喚!!」

 

天帝アイテール 攻撃力2800

 

エレボスの影が大きく姿を変える。光の柱がスポットライトのように何本も走り、真源たる『帝王』が降臨する。

イデアと同じ金色の装飾が見受けられる白銀の『帝王』。背より伸びた数本の羽衣がキラキラと光を反射し、風を受ける。カツリ、と金の鳥を模した杖を鳴らし、玉座に座す巨大なるモンスター。その威圧感は『冥帝エレボス』に劣らない。

 

「アイテールの効果発動!手札の『真源の帝王』とデッキの『帝王の凍気』を墓地に送り、デッキより攻撃力2400守備力1000のモンスターを特殊召喚する!『光帝クライス』!」

 

光帝クライス 攻撃力2400

 

アイテールの杖から放たれる光に導かれ、黄金の『帝王』が降り立つ。『帝王』をも統べるアイテールの力、次々と出現するモンスターに真澄がその額に汗を垂らす。

 

「お前の場の『竜穴の魔術師』と『ジェムナイト・プリズムオーラ』を対象として発動!そのカードを破壊し、その枚数分、相手はドローする!」

 

光津 真澄 手札1→3

 

「ジルコニアでガネットへ攻撃!」

 

コナミ&光津 真澄 LP2800→1800

 

「『天帝アイテール』でダイレクトアタック!」

 

黄金の杖から眩き光が放たれる。眼前を覆い尽くす強大な波。真澄の手に反撃のカードは――無い。これで終わりか、諦めかけたその時。

 

「諦めるな!こんな所で満足して堪るか、アクションマジック!『回避』!」

 

コナミの叱咤が響き渡り、真澄を光の壁が守る。終わってない、その事実に、声の主へと振り返る。その表情は気のせいか、少しばかりの怒りを含んでいるように見える。

一体どうしたのか、そんな事を考える内に、コナミはつかつかと真澄に歩み寄り、何を思ったか真澄の両頬を掴み、ジッ、と真澄の瞳を見つめる。

 

「……え?ちょっ……!あんた何を!?近っ、近い――」

 

「くすんでるな」

 

「……は?」

 

顔を真っ赤に燃やし、ばたばたと焦る真澄。そんな彼女を真剣な面で見つめながら、マルコと同じような台詞を吐くコナミ。

その突然の言葉に顔から赤みは一瞬で引き、固まる。

 

「――何をっ!?」

 

「何故、先程諦めた?」

 

「ッ!?」

 

グサリ、ナイフのような鋭いコナミの言葉が真澄の胸に突き刺さる。眉を吊り上げ、強気を取り繕い、コナミを睨む。

 

「だって、あんなのどうしたって――」

 

言い訳染みた言葉が喉で止まる。どうしたって負けるじゃない。小さな子供のような思考、何故、どうしてそんな台詞が頭に浮かんだ?

こんなの何時も自分じゃない、どうしてそんな言葉が出てこようとするのだ。訳が分からない、落ち着いて、深呼吸をしても頭から雑念が消えてくれない。

 

負ける?どうして?諦めたから――?どうして、諦めた――?

 

「……成程な、確かにくすんでいる。おい、光津」

 

「っ!!なにっ、何、よ」

 

何とか力を振り絞って喉の奥から声を出す。からからに渇いた嗚咽にも似たそれ、何とも不様な姿を見せてしまい、真澄は顔を真っ赤にしながらコナミを睨む。これ以上見るなと言わんばかりの視線を受け、コナミが薄く笑う。

 

「お前はどうして、マルコに弟子入りした?」

 

「――え――?」

 

不意の質問に声を漏らす真澄。そんな彼女に言いたい事は言ったとその手を放し、改めてマルコ達に向き直るコナミ。

左腕に嵌めたデュエルディスクを構え、背中越しに語りかける。

 

「こんなところで満足されて堪るか、最初にオレに食ってかかっていたお前の眼の方が輝いていた」

 

「だけど、だけどどうしたら……!」

 

頭を振り、すがりつくかのような眼をコナミの背に向ける真澄。弱々しく、彼女らしくもない態度、それを見てか、コナミは人差し指を立て、笑う。

 

「答えならデュエルの中にある筈だ。お前は奴の生徒だろう?知恵を絞れ、案外、簡単な事だ」

 

頼もしい背中、真澄はその背を見て目を見開く、まるでその姿は、授業を行うマルコのようだ、と。

答えは分からない。だけど彼が言うのだ、簡単な事だと、ならばLDS融合コースのトップである自分が解けない筈が無い。そんな恥ずかしい真似が出来るものか。

 

ルビーの瞳が燃える、負けて堪るか、少しでもその力をものにして見せる。弱気を吹き飛ばし、強い意志を瞳に宿す。

 

「話は終わったか?カードを1枚伏せてターンエンドだ。『光帝クライス』はアイテールの効果で手札に戻るぜ」

 

マルコ&沢渡 シンゴ LP4200

フィールド『天帝アイテール』(攻撃表示) 『ジェムナイト・ジルコニア』(攻撃表示)

『ブリリアント・フュージョン』 『魂吸収』 セット1

手札1(マルコ) 手札4(沢渡)

 

沢渡のターンが終了し、コナミが自らのデッキに手を添える。瞬間、コナミの右腕を電撃が駆ける。

 

「――ッ!来たか……!暴れ馬め……!」

 

腕が焼かれるような激しい痛みにコナミが顔をしかめる。気を抜くと此方が食われるような激痛を堪え、震える手に力を入れ、カードを手に取る。その間にもそのカードは暴れ、コナミに牙を剥く。

他のカードは大人しいと言うのに、このカードだけはコナミに反抗的だ。手を離したい衝動を抑えつけ、勢い良くドローする。

 

頭を過るのは触れるもの全てを切り裂く獰猛な竜の姿。

 

「ド……!ロォォォォォ!」

 

引き抜かれるは正しく切り札。口角を吊り上げ、竜が姿を見せるに相応しい舞台を整える。

急げ――この暴れ竜は、待ってはくれない――。

1枚のカードに注意しながら手札よりカードをディスクに乗せる。

 

「オレはっ!手札を1枚捨て、『ペンデュラム・コール』を発動!デッキから『竜穴の魔術師』と『竜脈の魔術師』を手札に加え、『竜穴の魔術師』をセッティング!」

 

2枚のペンデュラムカードが揃い、コナミのデュエルディスクのプレートが七色に光輝く。

空に光の柱が2本伸び、輝く魔方陣が描かれる。

右腕に走る激痛、着実に此方の喉笛を狙う竜に苦笑いし、頬を汗が伝う。

 

「さぁいくぞ!揺れろ光のペンデュラム!虚空に描け魂のアーク!」

 

光の振り子が揺れ動き、魔方陣に巨大な穴が空く。流星の如く3本の柱が地を響かせ、モンスター達がその姿を見せる。

 

「ペンデュラム召喚!!『E・HEROオーシャン』!『竜脈の魔術師』!」

 

E・HEROオーシャン 攻撃力1500

 

竜脈の魔術師 攻撃力1800

 

降り立つ2体のモンスター、その光景は奇しくも先程のコナミのターンと同様に英雄と『魔術師』が並ぶ形となる。

青き体躯の『HERO』と両方に刃を持つ秤を手にした、白いコートを羽織った三つ編みの『魔術師』。

 

「力を貸してくれ遊矢!いでよ、絶望の暗闇に差し込む、眩き救いの光!」

 

そう、先のターンと同じ光景。コナミの背後に地響きを轟かせ、降り立つは、白銀の鎧を纏い、金色の剣を翼のように背に広げた、刃のような鋭い赤い眼の竜。

 

「『オッドアイズ・セイバー・ドラゴン』!!」

 

オッドアイズ・セイバー・ドラゴン 攻撃力2800

 

その竜の眼は、剣の如き意志を秘めていた――。

 

 




少し真澄んがくすみんになってるけど許してくれ……!
瑠那さんの事が知りたい人は漫画ゼアルを見よう!おっぱいが大きいぞ!
三好先生、ユニちゃんとコンちゃんを出してくれてありがとうございます!良いおっぱいでしたありがとうございます。

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