遊戯王ARC―V TAG FORCE VS   作:鉄豆腐

3 / 202
前回のあらすじ
レベル4のモンスターが2体……来たぞ遊馬!ほらほら私の言う通りだろう!?(大歓喜)


第2話 まだ俺のバトルフェイズは終了してないぜ!

圧倒的な存在感は放つコナミのモンスター『No.39希望皇ホープ』腕を組み、コナミの傍らに控えるその姿はまるで誇り高き騎士。全員が唾を飲み込む中少女はコナミとホープに向けて驚愕の表情を見せる。

 

「エクシーズ……召喚……」

 

驚くのは無理もない、コナミが先程行ったエクシーズ召喚、それは基本同じレベルのモンスターを2体以上並べ、重ねる事による成立する召喚方法だ。シンプルであるからこそ強く、その強力な効果を使うには基本的に素材となったモンスターを墓地に送らねばならず、数回限りとなる。

 

しかし、驚くべきはこの舞網市においてエクシーズ召喚はあまり流通しておらず、使い手は大半がレオ・デュエル・スクール通称LDSに所属している。

 

因みにコナミの対戦相手であるネオ沢渡、彼もLDS所属である。そのネオ沢渡と敵対しているという事はコナミはLDS所属ではなく、にも関わらずエクシーズ召喚を使用したという事になり、当然警戒されるのだ。

 

「希望皇ホープぅ?見た事ねぇカードだな、まぁ興味ねぇけど」

 

しかしこの男、ネオ沢渡には大したことではない、何故ならば彼の興味を引くのは魔術の如くモンスターを呼び出す召喚法、世界でたった1人が扱う、新たなる召喚法のみ。コナミのエクシーズ召喚を興味ねぇの一言で切り捨て、デッキよりカードをドローする。

 

「へっ今度はこっちの番だなぁ?『太陽風帆船』を特殊召喚!!」

 

太陽風帆船 守備力1200

 

ネオ沢渡の場に現れたのは巨大な帆を張った船、効果により守備力が下がるが、特殊召喚できるというのは優秀ではある。

 

「まだまだぁ!!『太陽風帆船』をリリースし『氷帝メビウス』をアドバンス召喚だ!!」

 

氷帝メビウス 攻撃力2400

 

帆船と入れ替わって現れたのは銀色の鎧を纏い、青い外套を靡かせた氷の帝。彼の登場と共に倉庫の気温が下がり、地面が凍って行く。

 

「メビウスの効果発動!!アドバンス召喚に成功した時、フィールドの魔法、罠を2枚まで破壊する!」

 

ネオ沢渡の宣言と共にメビウスの足元より氷が走る、氷の線はコナミのセットカードを侵食し砕け散らした。

 

「フリーズ・バースト!まっ、1枚だけだがなぁ」

 

「「「さすがっス!ネオ沢渡さぁーん!」」」

 

得意気に前髪をかきあげ、取り巻きのエールを受け入れるネオ沢渡、コナミもほうと息をついている。

 

「バトルだ!メビウスでホープに攻撃!アイスランス!!」

 

「なっ、攻撃力はホープが上なのに!?」

 

ネオ沢渡が宣言すると同時に少女が戸惑いの声を上げる。無論ネオ沢渡とて何も考えていない訳ではない。

 

「この瞬間速攻魔法『禁じられた聖杯』を発動!メビウスの効果を無効にし攻撃力を400ポイントアップさせる!」

 

聖女の杯がメビウスに禁じられた力を授ける。だがしかし、ネオ沢渡はメビウスの効果を使った事により高揚していたのであろう。今ここで、このカードを使うべきではなかった。

 

「希望皇ホープの効果発動」

 

少年の命を受け、皇は翼を主の前に展開し、盾とする。白き盾を前にあれほど猛威を奮っていた氷の槍が打ち砕かれてしまう。

 

「ムーンバリア」

 

「何ィ!?」

 

「希望皇ホープはORUを1つ使う事でモンスター1体の攻撃を無効とする」

 

「チィッ!カードを2枚伏せてターンエンドだ」

 

ネオ沢渡 LP4000

フィールド 『氷帝メビウス』(攻撃表示)

セット2

手札1

 

皇と帝を名に冠するモンスターによる激しい攻防、それを見守る少女は不安そうにコナミの表情を見る。コナミの様子はというと。

 

(笑ってる……?)

 

嬉しそうにその口元は弧を描き、赤帽子の奥に潜む瞳は真紅の闘志を見せている。気がつけば此方まで笑ってしまうほどに彼の横顔は輝いていた。ふとその顔が一人の少年と重なる。

 

(遊矢……?)

 

「どうしたぁ!?さっさとドローしねぇか!!」

 

急かすようなネオ沢渡の台詞にハッと我に返り、頭をふるふると左右に振る少女、ふとコナミを見ると何故だろう、コナミがドローするのを躊躇っている。そして、コナミはその笑みを更に深め答える。

 

――いや――

 

コナミが自然にデッキの上に手を差し出す。その姿にこの場にいる全員が見とれる。まるで時が止まったかのような感覚。

 

――このターンで終わると思ったら寂しいだろう?――

 

コナミの右手に赤き閃光が走る。彼は引き抜いた一枚のカードを見もせず、光のプレートに叩きつけた。

 

「『カメンレオン』召喚!!」

 

カメンレオン 攻撃力1600

 

現れたのは仮面のような顔をしたカメレオン、『カメンレオン』は地面に渦を作りその中へ自身の長い舌を突き刺す。

 

「『カメンレオン』は召喚成功時、墓地の守備力0のモンスター1体を特殊召喚する、来い『ゴブリンドバーグ』!」

 

舌に吊るされて出て来たのは先のターンもコナミのフィールドを旋回した、小さな飛行機に乗ったゴブリン、俺の出番か、とばかりににやけている。

 

「ハッ!またエクシーズ召喚かぁ?それにこのターンで俺様を倒すだぁ?やれるもんならやってみな!」

 

「お前の言う通り、エクシーズ召喚は同じ星のモンスターを揃える事で条件を満たす召喚法だ」

 

「エクシーズの講義はいいよ、興味ないんでね」

 

「いや、今は……」

 

「?」

 

――シンクロの講義だ――

 

突如『カメンレオン』の体が光の輪となって弾ける。

 

「チューナーモンスター……!?」

 

少女が驚愕の声をもらす、チューナーモンスター、そう呼ばれるモンスターは多くのものが低いステータス、星を特徴としている。だがそれでいい、何故ならば彼等は他のモンスターと力を合わせる事で新たな可能性を生み出すのだから。

 

一人の青年が言った。シンクロは俺達の絆の証なのだと、その信条は遠く離れたコナミにも引き継がれている。離れていても、仲間だとどこかにいる彼に応えるように、コナミは示す。

 

「レベル4の『ゴブリンドバーグ』にレベル4のチューナーモンスター『カメンレオン』をチューニング」

 

飛行機がプロペラを回し光の輪をくぐり抜け、光を受けた飛行機は輝き、その姿を変えていく。

 

――星海を切り裂く一筋の閃光よ!!魂を震わし世界に轟け!!――

 

光の輪より生まれしは白く輝く星屑の竜。

 

「シンクロ召喚!!」

 

その竜の名は。

 

「『閃光竜スターダスト!』」

 

閃光竜スターダスト 攻撃力2500 ※『こう』が変換できないので『光』で代用

 

竜の咆哮と共に煌々と雪のように星屑が舞い落ち、暗い倉庫を照らし消えていく。

 

「……綺麗……」

 

少女がほうと息を吐く倉庫内に降り立った光の竜は幻想的でここにいる誰もが見惚れてしまっていた。それは主たるコナミも同じ事である。赤帽子の奥に隠れた瞳は細められ、どこか憂いを帯びている。もっともその内容もふつくしい…と褒めているのか分からないが。

 

「魔法カード『カップ・オブ・エース』発動、コイントスを行い、表ならオレが裏ならお前が2枚ドローする」

 

「ふぅん運頼みか、上手くいくかねぇ」

 

コナミがポケットより1枚のコインを取りだし、不敵に笑う。

 

「悪いが」

 

ピンとコナミの手よりコインが弾かれる。地面に落ちたコインは数回カラカラと回った後ピタリと止まる。……結果は……表。

 

「運は良い方だ。」

 

効果により2枚のカードをドローするコナミ、全ての準備が整った。

 

「魔法カード『融合』発動」

 

「融合まで!?」

 

「手札の『E・HEROオーシャン』と『E・HEROフォレストマン』を融合、現れろ」

 

地に亀裂が走る、氷はひび割れ、地より吹く熱により溶けていく。マグマより現れたるはコナミの新たなるモンスター。頭頂部、両肩に紫色の球体状の物体が嵌め込まれた全身白の英雄、胸の赤き宝石は彼の命の胎動を全身に伝えている。

 

「『E・HEROジ・アース』」

 

E・HEROジ・アース 攻撃力2500

 

コナミのフィールドを融合、シンクロ、エクシーズの三色のモンスターが降り立つ。彼の腕前にネオ沢渡でさえ冷や汗をかく。成る程、躊躇なく決闘を挑むだけはある。そんな彼を知ってか知らずかコナミは片手を突き出し、モンスターに命を下す。

 

「バトルだ、希望皇ホープで『氷帝メビウス』に攻撃!ホープ剣スラッシュ!!」

 

腕を組み少年の傍らでたたずんでいた皇が腰の二刀を抜き放ち氷帝を切り裂かんと駆ける。だがネオ沢渡にはその程度の攻撃は届かない。

 

「あめぇよ!罠発動!『次元幽閉』!!ホープには退場を願うぜ!」

 

勇猛なる皇は突然発生した次元の狭間に呑まれいく。

 

「ORUとなっていた『E・HEROシャドー・ミスト』の効果、墓地に送られた場合デッキより『HERO』モンスターを手札に加える。『E・HEROブレイズマン』を手札に加える」

 

皇は自らが呑まれる前にシャドー・ミストの力と思われる黒い霧を操り、1枚のカードをコナミに渡す。

 

「『閃光竜スターダスト』で『氷帝メビウス』に攻撃、流星突撃(シューティング・アサルト)!!」

 

その身を弾丸として撃ち出す竜、白い線が真っ直ぐにメビウスに向かう。

 

「まだだ!罠発動!!『サンダー・ブレイク』!手札を1枚捨て、『閃光竜スターダスト』を破壊するぜ!」

 

ネオ沢渡が口角を吊り上げ光の竜を指差す、それに呼応するかのようにメビウスが指を突き出し稲妻を放つ。コナミはネオ沢渡の背後で『雷帝ザボルグ』が泣いている幻覚が見えた気がしたが今は無視した。

 

「スターダストの効果発動、1ターンに1度自分フィールド上のカードを選択しそのカードに戦闘、効果破壊耐性を付与する。当然選択するのは『閃光竜スターダスト』自身、波動音壁(ソニック・バリア)」

 

しかし無駄、閃光の前に稲妻は弾け飛ぶ。ネオ沢渡の背後のザボルグはメビウスを鼻で笑っていた。

 

「チィッ!!」

 

ネオ沢渡 LP4000→LP3900

 

「ジ・アースでダイレクト・アタック!アース・コンバスション」

 

『E・HEROジ・アース』の胸のコアよりビームが放たれる。ネオ沢渡にそのビームを防ぐ術はなくまともに受けてしまう。

 

「ぐぁっ!!」

 

ネオ沢渡 LP3900→LP1400

 

ビームにより爆煙が吹き荒れ、倉庫内を覆う。

 

「ぐっ…!だがこれでお前のモンスターは全て攻撃を終えた!このターンで俺を倒す事は……」

 

――何勘違いしてやがる……?――

 

「ひょ?」

 

カッと2つの光が煙の中より跳躍する。――一体何が――

視界の端の銀の光を目で追う、それは光輝くジ・アースとスターダスト。

 

――まだオレのバトルフェイズは終了してないぜ?――

 

2つの影は重なり合い姿を変えていく、白のスーツに金の線が走る。背には太陽を型どった金色の翼。

 

「速攻魔法発動『瞬間融合』『E・HEROジ・アース』と『閃光竜スターダスト』を融合、融合召喚『E・HEROTheシャイニング』」

 

E・HEROTheシャイニング 攻撃力2600

 

まばゆき光を放ちながら現れし、このデュエル最後の審判者。光の英雄は組んでいた腕を解き、両腕をネオ沢渡へ突き出す。

 

「Theシャイニングでダイレクト・アタック!オプティカル・ストーム!」

 

光輝く嵐がネオ沢渡を襲った。

 

「うっそぉぉぉぉぉぉん!?」

 

ネオ沢渡LP1400→LP0

 

――――――――――

 

「何?強力な召喚反応エネルギー?」

 

レオ・コーポレーションの社長室、そこにはレオ・コーポレーションの若き社長、赤馬零児が椅子に腰掛け専属補佐である中島の報告を受けていた。

 

「エクシーズ、シンクロ、それに融合まで……か……場所は……?」

 

中島より受け取ったPCを片手で操作し召喚反応エネルギーであろうグラフを見つめながら問う赤馬。

 

「ここより南東の倉庫……ですね」

 

それに……と中島が奥歯に何が詰まったかのように言いよどむ、果たして『彼』は本当に起こった事なのだろうかと中島自身も疑心暗鬼で赤馬に報告していいものかと戸惑う。

 

「?まだ何かあるのか?」

 

「……ええ、ちょうどその倉庫の逆の方角、信じられない事ですが――」

 

今までのどのエネルギーよりも強大な、エクシーズ反応が確認されました――

 

――――――――

 

心地よいさざ波の音が耳に伝わって来る。舞網市のとある海岸、「彼」はそこにいた。

 

「ぐっうう――!?」

 

LP800→LP0

 

白を基調とし金の装飾に彩られた皇が片刃の剣を振るう、相対する者はその無慈悲なる一刀により斬り伏せられる。

 

「ぐぅっ……うう……!」

 

気がつけば何人ものデュエリストが「彼」の足元に転がっている。これで後1人か――。

 

「ひっひぃっ!?」

 

くるりと最後の相手に向き合う、これで終わるのか、と「彼」の顔はどこか残念そうだ。しかし「彼」の理不尽なまでの力を近く見ていた少年は逃げ出してしまう。

 

(いやだ……!いやだいやだっ!!)

 

ガキンと鉄の音がした。それを理解すると同時に左腕が重くなりバランスを崩し倒れてしまう。

 

「ぎっ!」

 

倒れてながらも恐る恐る左腕を見る。自らの愛用するデュエルディスク、それに伸びる冷たい鉄の鎖、そしてその先には「彼」の金色に輝くデュエルディスク、言葉が出ない。

 

「……あっ……あっ……!」

 

何とか後ずさるも足に上手く力が入らない、その間にも死神が近づいてくる。星がプリントされたTシャツ、黒いジャケットにジーパン、首には重々しいヘッドフォンがかけられている。何よりも目を引くのは目深に被られた『黒い帽子』その奥には爛々と輝く肉食獣のような瞳。

 

「――デュエル――」

 

死神の鎌が降り下ろされた――。

 

 




おまけ

茄子「すまない、トイレに行ってくる。少し待っててくれ」

クロワッサン「わかった」

黒いの「(こくり)」

数分後

茄子「…………どこ行ったあいつ等?」

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。