遊戯王ARC―V TAG FORCE VS   作:鉄豆腐

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今回と次回を合わせ、禁止制限は以前のものを使用します。
まぁ、モンキーボードはOPにも出てるし問題ない……何で出てきてんだろうね。憎しみをどう消せと。
しかしローラースケートが気になります。似合ってるなぁあれ。


第32話 程遠いんだよねぇ!

「『ビーストアイズ・ペンデュラム・ドラゴン』の効果!戦闘によってモンスターを破壊した場合、このカードの融合素材となった獣族モンスターの元々の攻撃力分、つまり『EMシルバー・クロウ』の攻撃力1800のダメージを与える!」

 

権現坂 昇 LP1400→0

 

コナミ達のデュエルに決着がついた頃、同じく権現坂道場にて、遊矢と権現坂のデュエルが終局を迎えていた。

遊矢の新たなる融合モンスター、『ビーストアイズ・ペンデュラム・ドラゴン』。獣の骨を纏い、巨大な角を唸らせる竜により、権現坂が刃との修業の末に導き出したシンクロモンスター、『超重荒神スサノ―O』を打ち砕き、勝利したのだ。

 

ソリッドビジョンによって発生したアクションフィールドが消滅していく中、デュエルで高揚し、乱れた息を整える遊矢。これで遊矢は舞網チャンピオンシップに出場する資格を得た。だが喜ぶのはまだだ。まずはデュエル相手である権現坂に感謝の言葉を。

 

「権現坂……ありがとな」

 

敗北しても堂々と仁王立ちする親友に向かい、手を差し伸べる遊矢。感謝の言葉はスッと出てくる。親友だから、だけと言う理由ではない。

遊矢自身の実直さもあるだろう。彼の眩しい笑顔に権現坂もまた「うむ」と頷き、笑って手を取る。

 

「俺も必ず、チャンピオンシップへ出場する」

 

「ああ!」

 

握手の形を崩し、互いに拳同士でコツン、とぶつけ合う。約束した以上、権現坂は必ず果たすだろう。男らしく真面目な性格は昔から良く知っている。

と、そんな彼等へバタバタと慌ただしい音を響かせ、見慣れた仲間達が姿を現す。

 

「遊矢!おめでとう!」

 

「痺れるデュエルだったぜぇ!」

 

「おめでとう!」

 

「2人共凄かったよー!」

 

「ぺんでゅらむもしんくろも面白いな!」

 

「キッ、キキー!」

 

「うぉぉぉぉぉ!2人共最高だぁぁぁぁぁっ!!」

 

上から柚子、フトシ、タツヤ、アユ、セレナとSALに修造と随分と大所帯で遊矢と権現坂を囲む。皆見ていたのか、と驚きながら受け入れる遊矢。

不意に気づく。皆、笑顔だ。遊矢と権現坂のデュエルを見て、あれやこれやと笑い合っている。それが何だか嬉しくて――頬に力を入れないと、変にニヤけてしまう。

 

「……君達のデュエル、見せてもらった」

 

「――え?」

 

笑い合う遊矢へと語りかける者が1人。蒼の髪をオールバックで流し、左目に眼帯をつけ、胸に傷を負った大柄の男。見慣れない人物だ。

権現坂道場の者だろうか、傍に権現坂の父が控えている。

 

「む、どうしたバレット?」

 

「バレット殿、見ていたのですか?」

 

大柄の男へ話しかけるセレナと権現坂。2人の知り合いだろうか?セレナの方は保護者だろうと推測する。

バレットと呼ばれた男は遊矢へ向かって人の好い笑みを浮かべる。

 

「ふむ……似ているな……」

 

「え?」

 

「いや、何でもない。エンタメデュエル、素晴らしかった。勲章ものだ」

 

「あ、ありがとうございます!」

 

目を細め、遊矢を褒め称えるバレット。知らない人物だがどこか父に似たその笑みにむず痒さを感じ、照れて鼻頭を掻く。だが――。

 

「だが」

 

「?」

 

キュッ、と口を引き締め、先程とは打って変わって厳しい顔つきで遊矢と目を合わせる。一気に空気が変わり、歴戦の軍人を思わせる雰囲気を放つバレットを見て、遊矢が唾を飲み込む。

 

「まだ、君の目指す、皆を笑顔にするデュエルには、程遠い」

 

「ッ!?」

 

鋭き言葉の刃が遊矢の胸を貫く。不安そうに瞳を揺らす遊矢を見て、バレットは静かにデュエルディスクを腕に嵌め、デュエルフィールドへと足を踏み入れる。そして彼は重々しく閉ざされた唇を開く。

 

「デュエルだ少年、それに昇さん。2人纏めてかかって来なさい」

 

「「なっ!?」」

 

名を呼ばれた遊矢と権現坂が驚愕する。それもそうだろう、目の前の男は2人を相手にたった1人でデュエルを挑むと言うのだ。

遊矢自身、自惚れている訳ではないがここ数戦での成長で自分は強くなっていると感じている。そして権現坂も先程のデュエルを通して改めてその強さを実感したのだ。

 

だが同時にこの男は2人がかりでも勝てるのかと言う疑問が沸く。それ程までに彼の纏う“それ”が違う。

だが、遊矢は知っている。本物の化物を、それを考えれば恐れる事などない。

それに彼は――自分の力となってくれる。遊矢は覚悟を決め、フィールドに踏み込む。

 

「遊矢……?」

 

「行こう、権現坂」

 

「遊矢君、本気ですか?」

 

フィールドへ向かう遊矢に対し、彼の4連戦を組んだ敏腕マネージャーであるニコが声をかける。彼の言いたい事は分かる。

折角、チャンピオンシップ出場の資格を勝ち取ったのにここで敗れれば水の泡となってしまう。闘わずに大人しくしていれば安心なのだ。だが、それでも――動かなければ、振り子は揺れない。勇気を持って、一歩踏み出す。

 

「ごめん。でも、俺はエンタメデュエリストだから」

 

「……それでこそ、私の見込んだデュエリストです」

 

逃げるのはもう、充分だから。きっと遊矢の望むものは、進んだ先にあるから。

 

「……そこまで言うなら、俺も共に闘おう」

 

「ありがとう、権現坂。正直1人じゃ不安でさ」

 

ニッ、と笑い、自らの背中を預ける親友へと拳を合わせる。彼がいてくれるなら、これ以上に頼もしい事はない。

 

「覚悟は決まったか……ルールは私はシングル、君達はLP、フィールド、墓地を共有するタッグフォースルールだ。それでも良いか?」

 

「「はい!」」

 

バレットの問いかけに勢い良く返事をする2人。このルール上、遊矢達にデメリットはあるが、同時にメリットもある。2人が如何にして戦術を合わせられるかが重要となるだろう。それを試す為にも、バレットは権現坂を引き込んだのだ。

 

「さぁいくぞ!戦いの殿堂に集いしデュエリスト達が!」

 

「モンスターと地を蹴り、宙を舞い!」

 

「フィールド内を駆け巡る!」

 

「見よ、これぞデュエルの最強進化形!」

 

バレット、遊矢、権現坂、バレットの順で口上を紡ぎ、その最中にフィールドが光を纏い、姿を変えていく。先程のデュエルでも使用された『剣の墓場』だ。荒野の中、無数の剣が突き刺さった光景は正に墓場と言う他ないだろう。

 

「「「アクショーン!!」」」

 

このデュエルで、大事な何かが見つけられる。

 

「「「デュエル!!」」」

 

そんな気が、遊矢にはした。

 

「先んずれば人を制す。私のターン、私は永続魔法、『補給部隊』発動。1ターンに1度、自分フィールド上のモンスターが戦闘、効果で破壊された場合、デッキから1枚ドローする」

 

まずは下準備から、2人を相手するのだ。カードの消費を抑える為にこのようなカードを使うのは定石と言える。

ただ、彼の戦法からして、リカバリー手段を置きたいと言う理由もあるが。

 

「『キャリア・センチネル』を召喚」

 

キャリア・センチネル 攻撃力1000

 

バレットの場に現れたのはトラックを模したようなモンスターだ。ライトをチカチカと怪しく輝かせる。このモンスターこそ、バレットのデッキにとって起点となるカードだ。

 

「『キャリア・センチネル』の召喚時効果、デッキより『漆黒の豹戦士パンサーウォリアー』を手札に加え、魔法カード、『融合』を発動。フィールドの『キャリア・センチネル』と手札の『漆黒の豹戦士パンサーウォリアー』で融合。獰猛なる黒豹よ、歴戦の番兵と混じり合いて、新たなる雄叫びを上げよ!融合召喚!現れ出でよ!『獣闘機パンサー・プレデター』!」

 

獣闘機パンサー・プレデター 守備力2000

 

火花を散らし、バレットのエースカードが雄叫びを上げる。身体の左半分を機械化した黒豹。その手には鋭い剣が握られており、背には緑のマントと戦闘機の翼が伸びている。融合素材となったパンサーウォリアーの攻守が反転したステータスだ。

 

「パンサー・プレデターの効果、1ターンに1度、このモンスターの攻撃力の半分のダメージを与える」

 

榊 遊矢&権現坂 昇 LP4000→3200

 

パンサー・プレデターの左半身よりバルカン砲が出現し、猛スピードで弾丸が遊矢達へ襲いかかり、身を焦がす。ツン、と硝煙の独特の匂いが立ち込め、思わず顔をしかめる2人。

ダメージは少ない。しかしLPの5分の1が削られたと思えば痛手だ。

 

「私はカードを1枚伏せ、ターンエンド」

 

バレット LP4000

フィールド『獣闘機パンサー・プレデター』(守備表示)

『補給部隊』セット1

手札1

 

バレットの1ターン目が終わる。別段おかしな所など無い1ターンだ。だが遊矢はどこか違和感を覚える。バレットの発する強者特有の気配がそうさせるのか、何とも不気味だ。

 

「権現坂……俺が先で良いか?」

 

「む?ああ、構わんが……」

 

「……っし、俺のターン!」

 

考えていて分からないものは分からない。見て分からないなら手探りを入れるまで。遊矢は深呼吸をした後、デッキよりカードを引き抜く。良い手札だ、顔を綻ばせ、メインフェイズに移る。

 

「俺は手札の『EMオッドアイズ・ユニコーン』と『EMモンキーボード』でペンデュラムスケールをセッティング!これでレベル2から7のモンスターが同時に召喚可能!」

 

まずはお得意のペンデュラムだ。デュエルディスクに2枚のペンデュラムカードが設置され、2体の『EM』が光の柱となって空を上る。続いて上空に巨大な魔方陣が描かれ、振り子が右へ左へと揺れる。だがまだだ。まだ仕込みは終わってない。

 

「俺はモンキーボードのペンデュラム効果発動!デッキからレベル4以下の『EM』モンスター1体を手札に加える。俺が手札に加えるのは『EMドクロバット・ジョーカー』!そのまま召喚!」

 

EMドクロバット・ジョーカー 攻撃力1800

 

遊矢のフィールドでステップを刻むのはボロボロのハットに黒い仮面、トランプのスペード、ハート、ダイヤ、クラブが随所に散りばめられた燕尾服を着用したおどけた姿の道化師。

しかし見た目とは裏腹にその能力は実に優秀だ。遊矢もこのカードには信頼を寄せている。

 

「ドクロバット・ジョーカーが召喚に成功した時、デッキからこのカード以外の『EM』モンスター、『魔術師』ペンデュラムモンスター、『オッドアイズ』モンスターの中から1体を手札に加える!俺が手札に加えるのは『EMペンデュラム・マジシャン』!」

 

ドクロバット・ジョーカー がハットより鳩を取り出し、遊矢へと飛ばす。嘴の先には1枚のカード。鳩は遊矢の肩に止まり、カードを差し出すがその枠内には何も描かれてはいない。と、思いきや鳩がポン、と煙を上げ、次の瞬間にはあら不思議、枠内にはペンデュラム・マジシャンのイラストが。

 

鳩がペンデュラム・マジシャンに姿を変えたのだろう。前回と違う手品を繰り出したのは本人のポリシーか。人差し指を口の前に持ち、歯を見せてクツクツと主人へ向け、笑みを溢す。団員はやる気マンマン、団長の遊矢はそれに応えるべく魔方陣へ手を翳す。

 

「揺れろ、魂のペンデュラム!天空に描け光のアーク!ペンデュラム召喚!『EMペンデュラム・マジシャン』!『EMシルバー・クロウ』!『EMウィム・ウィッチ』!」

 

EMペンデュラム・マジシャン 攻撃力1500

 

EMシルバー・クロウ 攻撃力1800

 

EMウィム・ウィッチ 守備力800

 

赤、銀、ピンクと3色の光の柱が地鳴りを響かせ、遊矢の元へと落ちる。現れたのは3体のモンスター。

1体目はシルクハットを被り、振り子を手にしたマジシャン。2体目は名の通り、美しき銀の毛並みを持ち、鋭い爪を地に食い込ませた吠える狼。ピンクの猫型の魔法使い。

 

「ペンデュラム・マジシャンの効果!このカードとウィム・ウィッチを破壊し、デッキより2枚の『EM』モンスターを手札に加える!」

 

「させん!罠カード、『奈落の落とし穴』!特殊召喚された攻撃力1500以上のモンスターを破壊し、除外する!」

 

「だが!ウィム・ウィッチはペンデュラム・マジシャンの効果で破壊される為、デッキより『EMスライハンド・マジシャン』を手札に加える!」

 

これでペンデュラム召喚したモンスターは全滅し、遊矢のフィールドにはドクロバット・ジョーカーのみが残った。しかもシルバー・クロウとペンデュラム・マジシャンは除外された為、エクストラデッキからのペンデュラム召喚も狙えない。かなりの痛手だ。幸いなのはペンデュラムスケールを破壊しなかった事か。これで権現坂のサポートが出来れば良いが。

 

「俺はカードを……っと、やっぱりこのままターンエンドだ」

 

榊 遊矢&権現坂 昇 LP3200

フィールド『EMドクロバット・ジョーカー』(攻撃表示)

Pゾーン『EMオッドアイズ・ユニコーン』 『EMモンキーボード』

手札3(遊矢) 手札5(権現坂)

 

罠を伏せようとするが思い止まる。このデュエルでは遊矢と権現坂はフィールド、墓地を共有する。魔法や罠を使えばフルモン使いである権現坂がその実力を発揮できないのだ。足を引っ張る訳にはいかない。

 

「……すまん、遊矢」

 

そんな遊矢の行動を察し、顔を俯かせる権現坂。

 

「いいって、何時もは俺の方が助けられてるんだ。権現坂に自分の信念は曲げて欲しくないし、気にするなって」

 

そんな権現坂に笑みで答える遊矢。そうだ、何時も助けられているのだ。今回は自分が助ける番だと意気込む。

 

「私のターン、ドローだ。手札の『サンダー・ドラゴン』を捨て、同名モンスターを2体サーチ、加えて『手札断札』で捨て、2枚ドロー!パンサー・プレデターの効果で800のダメージを与える」

 

榊 遊矢&権現坂 昇 LP3200→2400

 

「更に私は『幻獣機テザーウルフ』を召喚」

 

幻獣機テザーウルフ 攻撃力1700

 

現れたのは狼を模したヘリコプター。先程までとは全く毛色が違うモンスターに遊矢がピクリと反応する。

 

「テザーウルフが召喚に成功した時、『幻獣機トークン』を特殊召喚する。更にこのカードのレベルは『幻獣機トークン』のレベルの合計分だけ上がる」

 

幻獣機トークン 守備力0

 

幻獣機テザーウルフ レベル4→7

 

「私はパンサー・プレデターを攻撃表示に変更し、バトルだ!パンサー・プレデターでドクロバット・ジョーカーへ攻撃!」

 

「ッ!バトルフェイズに入る前に手札から『EMレインゴート』を捨てる!」

 

バレットがパンサー・プレデターへと指示を飛ばし、それに応じるように『剣の墓場』を駆け抜け、地面から1本の刀を引き抜き、自前の剣との二刀流でドクロバット・ジョーカーへと斬りかかる。

しかしドクロバット・ジョーカーが地面に突き刺さった刀を引き抜き、投擲する事により刀は弾かれ、その喉へと突き刺さる。

 

「パンサー・プレデターが戦闘によって破壊された場合、融合素材となったモンスター一組を墓地より特殊召喚する。更に『補給部隊』の効果で1枚のドロー」

 

バレット 手札1→2

 

漆黒の豹戦士パンサーウォリアー攻撃力2000

 

キャリア・センチネル 攻撃力1000

 

一瞬の爆発の後、パンサー・プレデターは2体のモンスターへと生まれ変わる。テザーウルフも合わせれば合計攻撃力は4700。このままでは負けてしまうが……手は打ってある。

 

「まずはテザーウルフでドクロバット・ジョーカーを攻撃!この瞬間、『幻獣機トークン』をリリースする事によりテザーウルフの攻撃力を800アップする!」

 

幻獣機テザーウルフ 攻撃力1700→2500

 

テザーウルフの腹部よりガトリング砲が出現し火を吹く。パンサー・プレデターに猛威を振るっていたドクロバット・ジョーカーも更なる強者の前では無力だ。

 

榊 遊矢&権現坂 昇 LP2400→1700

 

「『EMレインゴート』の効果によりこのターン中、ドクロバット・ジョーカーは破壊されない!」

 

「ならばパンサーウォリアーでドクロバット・ジョーカーへ攻撃!この時!パンサーウォリアーの効果により『キャリア・センチネル』をリリースする!」

 

先程の怨みを晴らすように剣を叩きつけるパンサーウォリアー。対するドクロバット・ジョーカーは手に持ったレインコートを闘牛士のように操り、ひらりひらりとかわす。

 

榊 遊矢&権現坂 昇 LP1700→1500

 

「魔法カード、『強欲で貪欲な壺』を発動。デッキの10枚を除外し、2枚ドロー」

 

バレット 手札1→3

 

「カードをセットして、ターンエンドだ」

 

バレット LP3800

フィールド『漆黒の豹戦士パンサーウォリアー』(攻撃表示) 『幻獣機テザーウルフ』(攻撃表示)

『補給部隊』セット1

手札2

 

「俺のターン、ドロー!」

 

「私はここで手札の『増殖するG』を切る」

 

「俺の墓地に魔法、罠カードが存在しない場合、超重武者ヌス―10を特殊召喚!」

 

超重武者ヌス―10 攻撃力1000

 

バレット 手札1→2

 

「ヌス―10をリリースし、相手の魔法、罠カードを破壊し、そのカードをセットする!俺はセットカードを奪う!そして、使わせてもらうぞ遊矢!俺は既にセッティングされたペンデュラムスケールでペンデュラム召喚!現れよ!『超重武者ホラガ―E』!『超重武者ビッグワラ―G』!」

 

超重武者ホラガ―E 守備力600

 

超重武者ビッグワラ―G 守備力1800

 

バレット 手札2→3

 

フィールドに現れる2体のモンスター。権現坂のデッキは全てがモンスターで構成されたフルモンだ。魔法や罠を使わない代わりとしてペンデュラムとはすこぶる相性が良い。

 

「ビッグワラ―Gをリリースし!アドバンス召喚!『超重武者ビッグベン―K』!」

 

超重武者ビッグベン―K 攻撃力1000

 

権現坂のエースカードが姿を見せる。機械的なマスクを被り、頑強な鎧を纏った武骨なモンスター。守備力は圧倒的とも言える3500の数値。相棒である遊矢もこのモンスターの登場に笑みを浮かべる。

 

「召喚後、守備表示に変更、更に!俺はレベル8の『超重武者ビッグベン―K』にレベル2の『超重武者ホラガ―E』をチューニング!荒ぶる神よ、千の刃の咆哮と共に砂塵渦巻く戦場に現れよ!シンクロ召喚!いざ出陣!『超重荒神スサノ―O』!」

 

超重荒神スサノ―O 守備力3800

 

バレット 手札3→4

 

ホラガ―Eが弾け、3つのリングとなり、ビッグベン―Kを包み込む。光が満ち溢れ、晴れたそこには緑の装甲に黒の鎧を身につけ、鬼のような面をした武神が胡座をかいて座していた。

星10、守備力3800。先程のビッグベン―Kを超える力に流石のバレットも息を飲む。

 

「そして!スサノ―Oの効果発動!1ターンに1度、自分の墓地に魔法、罠カードが存在しない場合、相手の墓地の魔法、罠を1枚対象として自分のフィールドにセットする!『奈落の落とし穴』を頂こう!」

 

「ほう……」

 

中々良いチームワークだ、と、感心めいた態度で遊矢達を観察するバレット。流石は親友と言ったところか。

遊矢がペンデュラムで権現坂のフルモンを活かし、権現坂がスサノ-Oで遊矢の次の展開を支える。大量展開と圧倒的防御による布陣、並みのデュエリストなら突破は難しいだろう、そう、並みのデュエリストなら。

 

「バトル!スサノ―Oでパンサーウォリアーに攻撃!このカードは守備表示のまま、守備力を攻撃力として扱い、攻撃できる!クサナギソード・斬!」

 

バレット LP3800→2000

 

武神の放つ斬撃により黒豹の戦士が悲鳴を上げて吹き飛ぶ。舞い上がる土煙に顔をしかめながらもバレットは手を動かせる。

 

「『補給部隊』の効果で1枚ドロー!」

 

バレット 手札4→5

 

「ドクロバット・ジョーカーでテザーウルフへ攻撃!」

 

「させん!アクションマジック!『回避』!攻撃を無効に!」

 

「むぅ……俺は墓地の『ADチェンジャー』を除外、ドクロバット・ジョーカーを守備表示に変更、これでターンエンドだ」

 

榊 遊矢&権現坂 昇 LP1500

フィールド『超重荒神スサノ―O』(守備表示) 『EMドクロバット・ジョーカー』(守備表示)

セット2

Pゾーン『EMオッドアイズ・ユニコーン』 『EMモンキーボード』

手札3(遊矢) 手札2(権現坂)

 

互いのLPが並ぶ。しかし油断は出来ない。バレットはまだ何かを隠していると、遊矢は感じ取っていた。

 

「私のターン、ドロー!速攻魔法『手札断殺』を発動!互いに手札を2枚交換!更に魔法カード、『暗黒界の取引』を発動、手札を交換、2枚の速攻魔法、『サイクロン』でセットカードを破壊し、2体目の『幻獣機テザーウルフ』を召喚」

 

幻獣機テザーウルフ 攻撃力1700

 

バレットの手札よりもう1体のテザーウルフが姿を見せる。スサノ―Oを前に果たしてどんな戦術を取るのか、遊矢と権現坂は緊張を走らせる。

 

「テザーウルフの効果、『幻獣機トークン』を生成、同時に2体のテザーウルフはレベル7となる」

 

幻獣機トークン 守備力0

 

幻獣機テザーウルフ レベル4→7×2

 

「これで……レベル7のモンスターが2体と言う訳だ」

 

「ッ!まさか!?」

 

権現坂の表情が驚愕に染まる。今のバレットの言葉の意図を考えれば自ずと答えが分かるだろう。権現坂の、そして遊矢の推理が正しいなら、彼は今――。エクシーズモンスターを出そうとしている――。

 

「2体のモンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築!」

 

見事予測は的中し、バレットの言葉と共に背後に星空を思わせる幻想的な渦が巻き起こり、2体のテザーウルフが飛び込み、1つとなる。

そして渦の中より禍々しい赤き輝きが遊矢の眼に焼きつく。赤よりも深い、真紅の光。それを見た途端、2人の背筋に寒気が走る。

 

「エクシーズ召喚!発進せよ!『No.42スターシップ・ギャラクシー・トマホーク』!!」

 

No.42スターシップ・ギャラクシー・トマホーク 守備力3000

 

バレットの右手の甲に42の紋様が浮かび上がる。同時に『剣の墓場』の夕空に巨大な黒き機体が姿を見せる。途方もなく巨大な戦艦。海に漂うエイを思わせるステルス機特有の形状をしたモンスターに遊矢達は戦慄する。

 

「ナン……バーズ……!?」

 

遊矢が今までにない程顔を強張らせ、息を飲む。コナミの使うモンスターと同じ『No.』を冠するモンスター。そう、あの黒い帽子の少年が扱うモンスターと同質の力を放つ、遊矢が敗北を喫した、赤き呪いを宿したカードが眼前に現れたのだ。

あの時の事はうろ覚えだと言うのに震えが止まらない。じわじわと恐怖が遊矢の身体を侵食していく。

 

「ッ!こちらの自由を奪おうとするか……!舐められたものだ……これしきで屈する程老いてはおらん……!」

 

対するバレットはその額から大粒の汗を流しながら右手の甲を抑え、ブツブツと呟いている。一体どうしたと言うのだろうか?

 

「……ふぅ……私はギャラクシー・トマホークのORUを2つ取り除き。効果発動!自分フィールド上に可能な限り『バトル・イーグル・トークン』を特殊召喚する!この効果を使用したターン、相手が受けるダメージは0となる」

 

バトル・イーグル・トークン 攻撃力2000×3

 

「攻撃力2000が3体だと!?」

 

母艦より次々と現れるトークンに権現坂が狼狽える。だがまだだ。まだバレットは止まらない。左手を突き出し、次なる手へ移る。

 

「魔法カード、『龍の鏡』!フィールドの『幻獣機トークン』と『バトル・イーグル・トークン』を融合!融合召喚!『始祖竜ワイアーム』!!」

 

始祖竜ワイアーム 攻撃力2700

 

ここに来て大型の竜がフィールドに登場する。青の体躯を飛翔させ、体中に刺々しく、攻撃的な角や棘を持った四肢のない雄々しい竜。

 

「まだ行くぞ。墓地のチューナーモンスター『グローアップ・バルブ』の効果発動!デッキの1番上のカードを墓地に送り、特殊召喚する!」

 

グローアップ・バルブ 守備力100

 

ここで現れたのはチューナーモンスター。植物に目が生えた不気味なモンスターに一瞬びくりとするが、これからバレットが行おうとする事に気づいたのか権現坂がその目を見開く。

 

「まさかっ!?」

 

「そのまさかだ。私はレベル6の『バトル・イーグル・トークン』にレベル1の『グローアップ・バルブ』をチューニング!シンクロ召喚!『幻獣機コンコルーダ』!!」

 

幻獣機コンコルーダ 攻撃力2400

 

黄金のボディを煌めかせ、ガルーダを模した『幻獣機』が空を旋回する。これで融合、シンクロ、エクシーズ、3色のモンスターがバレットのフィールドに揃った。それでも何とか膝をつかずにいられるのはコナミと赤馬 零児のデュエルを見ていたからだ。

これからが本番、遊矢と権現坂は気を引き締め、更なる闘いへと身を投じる。




バレットさん強化回。ヴォルカニックと迷ったけどギャラクシー・トマホークもあるので幻獣機に。ビーストボークとの混合型にしてみました。

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