九庵堂・暗黒寺「「へ、へぇ…」」
遊矢達のデュエルに決着がついた頃、スタジアムでは第3試合の対戦者が向かい合い、火花を散らしていた。
1人はリーゼントを固め、襷を巻き、白い学ランに鉄下駄と応援団スタイルの漢。キリリと太い眉を吊り上げた体格の良いその少年の名は権現坂 昇。権現坂道場にて不動のデュエルを極める遊矢の親友である。
そんな彼に相対するは権現坂とは対称的に小柄で髪を無造作に伸ばした、八重歯が特徴的な少年。権現坂の師にしてLDSシンクロコース所属、刀堂 刃。正に夢の師弟対決と言う訳である。
「へっ、この時を待っていたぜ……!俺様が手塩にかけて育てたお前を、完膚無きまでにぶっ倒す時をよぉ!」
「それは俺とて同じ!お前との特訓、いや、俺の全てを出し、師を越えるこの時を、今か今かと待ちわびていた!」
師弟であるからこその対抗心、互いを良く知っているからこそ燃え上がる。ライバル、今の2人に相応しい関係はこれに限るだろう。
互いに白い歯と不快ではない敵対心を惜し気も無く剥き出しにして、左腕に嵌めたデュエルディスクをカチリとぶつけ合う。
これは2人にとってデュエルの合図のようなものだ。鞘を合わせ、カードと言う名の刀で斬り合う。それこそが彼等のデュエル。
準備は整った。デュエルディスクより光輝くソリッドビジョンのプレートを出現させる彼等を見て、司会進行役のニコがマイクを手に取る。
『お待たせしましたぁ!これより第3試合、権現坂道場所属、権現坂 昇選手対LDS所属、刀堂 刃選手を始めます!この2人、師弟関係との事!一体どのような試合を見せてくれるのでしょうか!アクションフィールド――発動!』
スタジアム内が光の粒子に包まれ、石畳が侵食していく。眩き厳かな納骨所が創造され、中心に巨大な台座が出現し、空から光の剣が突き刺さる。
アクションフィールド、『セイバー・ヴォールト』。『X―セイバー』モンスターの攻撃力をレベル×100アップし、逆に守備力をダウンする。刃にとって有利になってしまうフィールドだ。
「俺にとって有利になったが……容赦はしねぇ!戦いの殿堂に集いしデュエリスト達が!」
「モンスターと共に地を蹴り、宙を舞い!」
「フィールド内を駆け巡る!」
「見よ、これぞデュエルの最強進化形!」
2人の師弟によって紡がれるアクションデュエルの口上、デュエルディスクから出現したプレートで斬り結び、赤い火花を散らす。その様はまるで――剣舞を繰り広げる、剣士のようだ。
「「アクショーン……デュエル!!」」
始まるデュエル。互いにデッキより5枚のカードを引き抜き、デュエルディスクのランプを確認する。先行は刃だ。刃はニヤリと意地の悪い笑みを見せ、早速手札を切る。
「さぁ行くぜ!まずは勝鬨も使ったこのカード!永続魔法、『炎舞―「天キ」』!発動時、『XX―セイバーボガーナイト』を手札に加え、そのまま召喚!」
XX―セイバーボガーナイト 攻撃力1900→2400
フィールドに飛び出す『X―セイバー』の切り込み役。荒くれ者と言った風貌の捻れた角が生えた兜やマント、その手には妖しい輝きを放つ剣を持っている。
その攻撃力は『セイバー・ヴォールト』と天キの効果によって帝ラインまで引き上げられる。
「手早く行こうかぁ!ボガーナイトの召喚時、手札よりレベル4以下の『X―セイバー』を特殊召喚する!来い、チューナーモンスター、『X―セイバーエアベルン』!」
X―セイバーエアベルン 攻撃力1600→1900
2体目の『X―セイバー』は金色の鬣を靡かせた獅子の頭持つ兵士。その両手にはフック状になった3本の鉤爪が伸びた手甲を纏っている。
これで刃のフィールドにチューナーと非チューナーが揃った。だがまだまだ一休みとはいかない。刃は3本目の剣を抜き出す。
「さぁさぁお次はこいつだ!フィールドに2体の『X―セイバー』が存在する事で手札の『XX―セイバーフォルトロール』を特殊召喚!」
XX―セイバーフォルトロール 攻撃力2400→3000
ついに現れる『X―セイバー』のキーカード。真紅の鎧とマントを纏い、地より大剣を引き抜き振り回す単眼の巨人。
このカードこそが『X―セイバー』の大量展開と高速化を可能とする。そのステータスもフィールド魔法の影響を受け、単体でも充分戦えるものとなる。
「巻いて行こうか!レベル4のボガーナイトにレベル3のエアベルンをチューニング!光差する刃持ち屍の山を踏み越えろ!シンクロ召喚!出でよ!『X―セイバーソウザ』!」
X―セイバーソウザ 攻撃力2500→3200
シンクロ召喚。刃の背後のエアベルンが弾け、3つのライトグリーンのリングとなる。そしてその中をボガーナイトが跳躍して潜り抜け、色素を失った後、7つの星が一直線に並ぶ。更に白き光がそれを撃ち抜き、フィールド上を照らす。
光が晴れたそこに立っていたのは2本の剣を交差し、ボロボロのマントを纏った狂人。
ここからが刀堂 刃の本領発揮。すかさず次の手へと移る。
「フォルトロールの効果ぁ!墓地よりレベル4以下の『X―セイバー』を特殊召喚する!再びフィールドに舞い戻れ、エアベルン!」
X―セイバーエアベルン 攻撃力1600→1900
「レベル6のフォルトロールにレベル3のエアベルンをチューニング!白銀の鎧輝かせ刃向かう者の希望を砕け!シンクロ召喚!出でよ!『XX―セイバーガトムズ』!」
XX―セイバーガトムズ 攻撃力3100→4100
リングを潜り抜けた巨人の身体に、白銀の兜と鎧が装着され、フィールドに降り立つ。鎧の中より青白い光が伸び、真紅のマントが風に吹かれる。手に持った大剣が中心で割れ、二又の剣となって振るわれる。
このモンスターこそが刀堂 刃の切り札にして代名詞。攻撃力4100。脅威の数値が立ち塞がる。
「次ィ!魔法カード、『ガトムズの非常召集』!自分フィールド上に『X―セイバー』モンスターが存在する場合、墓地の2体の『X―セイバー』を対象として発動!攻撃力を0にして特殊召喚する!そしてこのカードを発動したターン、バトルフェイズを行えず特殊召喚したモンスターは破壊される!俺はボガーナイトとエアベルンを特殊召喚!」
XX―セイバーボガーナイト 攻撃力1900→500
X―エアベルン 攻撃力1600→300
「エンジン全開!アクセル踏み切るぜぇ!魔法カード、『戦士の生還』!墓地の戦士族モンスター、フォルトロールを手札に戻してそのまま特殊召喚!」
XX―セイバーフォルトロール 攻撃力2400→3000
これで刃のモンスターゾーンが埋まり、手札も使い切り満足状態に入った。有無を言わさぬソリティアに権現坂が目付きを鋭くし、表情が険しいものへと変わる。短い間の付き合いだがここより先の事など容易に想像できる。切れ味の高い名刀で――希望が切り裂かれる。
「満足させてやるぜ!フィールド上のソウザ、ボガーナイト、エアベルンをリリースし、ガトムズの効果発動!お前の手札をランダムに3枚捨てる!」
権現坂 昇 手札5→2
3体の『X―セイバー』が光となってガトムズの剣に吸収され、その剣を振るった事で発生した斬撃が権現坂の手札を切り裂く。
少し前までは苦悶の表情も見せただろう。しかし今の権現坂は眉1つ動かさない。この程度で驚くならば師弟などやっていられない。そして権現坂は不動の志を持つデュエリストだ。微動だにしない。
「フォルトロールの効果により墓地のエアベルンを特殊召喚!」
X―セイバーエアベルン 攻撃力1600→1900
「全弾発射!フォルトロールとエアベルンをリリースし、残りの2枚もぶった切れ!」
権現坂 昇 手札2→0
ついに両者の手札が満足する。これで権現坂は次のターン、手札1枚の状態から始める事になってしまった。しかも刃のフィールドには攻撃力4100のガトムズ。逆転は難しいだろう。それでも、権現坂は焦らない。そんな彼とは対照的に観客席の者達が口元を引き吊らせる。
「うっわ……えげつねぇ……友達やめようかな俺」
「刃君には血が通ってないんじゃないでしょうか……?」
「あいつ僕の事言えないだろ」
「クソ外道ね」
「満・足!満・足!」
「聞こえてっぞお前等ぁ!後そこの赤いのそのダセェジャケット脱げ!」
上から暗次、ねね、北斗、真澄、コナミが口々に喋る。コナミは何故か満足ジャケットを着用してサイリウムを振っている。そんな彼等の台詞が耳に届いたのか、刃が竹刀をぶんぶん振り回して吠える。
「チッ、後で覚えてろよ……!俺はこれでターンエンド。さぁ、テメェのターンだ」
刀堂 刃 LP4000
フィールド『XX―セイバーガトムズ』(攻撃表示)
『炎舞―「天キ」』
手札0
「俺のターン、ドロー!」
大きな挙動と共に引き抜かれる1枚のカード。風を逆巻いてドローしたそのカードに権現坂はチラリと一瞥し、迷う事なくデュエルディスクへと叩きつける。
「モンスターをセット。ターンエンドだ」
『おぉーっと、権現坂選手早くもターンを終了したーっ!やはりこの状況は厳しいかぁー!?』
「無理もねぇ……刃のクソ外道ソリティアコンボをモロに食らったんだ……モンスターをセット出来ただけ儲けもんだ」
「権現坂のデッキはフルモン、モンスターは必ず引けるが、特殊召喚出来ない上級が来れば腐るからな。全く、何てクソ外道ソリティアコンボだ……」
刃とは違い権現坂の短いターンが終了した。ニコの司会を耳に入れながら暗次とコナミが冷静に戦況を観察する。若干刃の事を貶しているが言う事は的を得ている。
問題はここからどうするか、刃がどう動くか、だ。
権現坂 昇
フィールド セットモンスター
手札0
「だから聞こえてるっつーの……さぁて、何か肩透かしなターンだったが……これで終わる訳ねぇよなぁ。俺のターン、ドローだ!バトルに移る!ガトムズでセットモンスターを攻撃!」
「セットモンスターは『超重武者ツヅ―3』!フィールドのこのカードが破壊され、墓地へ送られた場合、ツヅ―3以外の墓地の『超重武者』を対象として発動!そのカードを蘇生する!『超重武者―テンB―N』を特殊召喚!」
超重武者―テンB―N 守備力1800
ガトムズが権現坂のフィールドまで接近し、青い球体状となっているセットモンスターを切り裂く。セットモンスターが裏返り、現れたのは真っ二つに切られた鼓。その音色に誘われて天秤を担いだ深緑の武者が飛び上がる。
「テンB―Nが召喚、特殊召喚に成功した場合、テンB―N以外の墓地のレベル4以下の『超重武者』を対象として発動し、守備表示で特殊召喚する!俺が対象とするのは先程墓地へ送られたチューナーモンスター、ツヅ―3!」
超重武者ツヅ―3 守備力300
テンB―Nが肩に担いだ秤を墓地と思われる渦へと浸し、その中へズシリと何かが乗る。すかさずテンB―Nは釣り上げるように秤を素早く傾け、中に乗ったものを上へと放り投げる。クルクルと回りながら出てきたのは先程破壊されたばかりのツヅ―3。テンB―Nは落ちて来るそのモンスターをもう片方の秤でキャッチする。
「へっ、ここからが本番って訳か。俺はカードを1枚伏せ、ターンエンド!」
刀堂 刃 LP4000
フィールド『XX―セイバーガトムズ』(攻撃表示)
『炎舞―「天キ」』セット1
手札0
「俺のターン、ドロー!往くぞ!レベル4のテンB―Nにレベル1のツヅ―3をチューニング!シンクロ召喚!『超重剣聖ムサ―C』!」
超重剣聖ムサ―C 守備力2300
権現坂が手を翳し、ツヅ―3が弾け飛び1つのリングとなる。テンB―Nが潜り抜け、現れたのは髷や道着を模した赤と黒、金色のチューブを纏わせた2本のメカメカしい刀を持った、正しく剣聖の名に相応しいモンスター。
その名の由来は格好や2刀流を見ると宮本武蔵か。ジェット推進で地を削り、停止するムサ―Cを見て刃は漸くかと言った様子でニヤリと笑う。
「待たせたようだな」
「全く、弟子が師匠を待たせるもんじゃねぇぞ」
「フ、意地の悪い師匠のせいで遅れてな」
皮肉気に意地の悪い事を言う刃と軽口で答える権現坂。それを見てまたもや観客席が騒がしくなる。
「何かあれっスね、自分が無理難題ふっかけたのに、今更それ終わったの?って言う無能上司みたいな」
「クソだな」
「権ちゃぁぁぁぁぁん!そんなクソ野郎に負けるなぁー!」
「ただいまー、試合どうなってる?何か暗黒寺が凄い応援してるんだけど。コナミ、今北産業」
上から暗次、コナミ、暗黒寺、そして帰ってきた遊矢だ。暗次とコナミは相変わらず好き勝手に言いたい放題刃を罵倒し、暗黒寺は権現坂と同じ服装で太鼓を片手に応援している。何時の間にか権ちゃん呼び、驚きの白さである。そんな異様な光景に遊矢がコナミに尋ねる。
「刃がクソ外道
権現坂不動
暗黒寺はホモ」
「成る程、刃がクソ外道な事は分かった。暗黒寺は分かりたくない」
「何も分かってねぇ!アホ共の言う事を真に受けんな遊矢!」
ラップ調で答えるコナミに頷く遊矢。そんな彼等に刃がまたも竹刀をぶんぶん回して吠える。
「何やら騒がしいが……俺はムサ―Cの効果発動!このカードがシンクロ召喚に成功した時、墓地の機械族モンスター1体を手札に加える!俺はテンB―N手札に加え、そのまま召喚!」
超重武者テンB―N 攻撃力800
「効果によりツヅ―3を特殊召喚!」
超重武者ツヅ―3 守備力300
再び現れるテンB―Nとツヅ―3。この2体が揃ったと言う事は導き出される答えはまた――。
「俺はレベル4のテンB―Nにレベル1のツヅ―3をチューニング!シンクロ召喚!『超重剣聖ムサ―C』!」
超重剣聖 守備力2300
フィールドに揃う2体のムサ―C。2刀流が2つ、冴え渡る。
「ムサ―Cの効果により、墓地の『超重武者装留バスター・ガントレット』を手札へ!バトルだ!ムサ―Cは守備表示のまま守備力を攻撃力として扱い、攻撃出来る!俺は勿論、ガトムズを攻撃!」
「墓地のボガーナイトとソウザを対象として、罠発動、『ガトムズの緊急指令』!フィールドに『X―セイバー』モンスターが存在する場合、対象の2体を特殊召喚する!テメェの魂胆なんて分かってんだよ!」
XX―セイバーボガーナイト 攻撃力1900→2400
X―セイバーソウザ 攻撃力2500→3200
「やはり分かっていたか!手札のバスター・ガントレットを墓地へ送り、効果発動!戦闘を行うムサ―Cの守備力を元々の数値の倍とする!」
超重剣聖ムサ―C 守備力2300→4600
刀堂 刃 LP4000→3500
権現坂の手札からバスター・ガントレットが飛び出し、ムサ―Cの腕へと装着される。ジェット噴射で一直線に進み、高速の突きをガトムズへと放つ。
ガトムズも剣で防ぐが突きは剣を砕き、頑強な白銀の鎧をも貫く。これで刃の切り札を倒した。追撃はかけられないが得たものは大きい。
「俺はこれでターンエンドだ」
権現坂 昇 LP4000
フィールド『超重剣聖ムサ―C』(守備表示)×2
手札1
「面白くなって来やがったぜ!俺のターン、ドロー!『XX―セイバーレイジグラ』を召喚!」
XX―セイバーレイジグラ 攻撃力200→400
小さな人型をしたカメレオンがフィールドに現れる。その手には2本の短刀を握っており、身体をすっぽりと覆う赤のマントも相まって暗殺者のような風貌だ。
「レイジグラの召喚成功時、墓地の『X―セイバー』モンスターを手札に戻す!俺はフォルトロールを手札に加え、そのまま特殊召喚!」
XX―セイバーフォルトロール 攻撃力2400→3000
再びフィールドに帰還する赤き巨人。戦士族の『X―セイバー』であるフォルトロールはサルベージがとても用意であり、強みの1つと言える。
「フォルトロールの効果!墓地のエアベルンを特殊召喚!」
X―セイバーエアベルン 攻撃力1600→1900
「レベル6のフォルトロールにレベル3のエアベルンをチューニング!シンクロ召喚!『XX―セイバーガトムズ』!」
XX―セイバーガトムズ 攻撃力3100→4100
刃のエクストラデッキより2枚目の剣が抜き放たれる。折角倒したと思ったのにまさかの2枚目の登場。この調子では3枚目も有り得るだろう。
「置いてけ手札ぁ!レイジグラをリリースし、その手札を捨ててもらう!」
権現坂 昇 手札1→0
ハンドレス以外は許さない。そんな確固たる意志で権現坂の手札を切り刻む刃とガトムズ。これで再び2人は満足。刃の猛攻が権現坂へと降り注ぐ。
「ガンガン行くぜ!ボガーナイトで1体目のムサ―Cを攻撃!」
「墓地の『超電磁タートル』を除外し、バトルフェイズを終了する!」
しかし権現坂のフィールドへクルクルと円盤状のものが回転してボガーナイトの剣を防ぐ。円盤より赤と青の電流が迸り、発生した磁場が丸いドームを作り出し権現坂のフィールドにバリアが完成する。
流石にバトルフェイズを終了されては攻め続ける事は出来ない、刃は舌打ちを鳴らす。
「チッ、このヤロー……前の攻撃はツヅ―3の効果の為に温存してやがったな……!だけどこれで使わせてやった、次はねぇ。ターンエンドだ」
刀堂 刃LP3500
フィールド『XX―セイバーガトムズ』(攻撃表示)『X―セイバーソウザ』(攻撃表示)『XX―セイバーボガーナイト』(攻撃表示)
『炎舞―「天キ」』
手札0
「俺のターン、ドロー!俺はチューナーモンスター、『超重武者タマ―C』を召喚!」
超重武者タマ―C 攻撃力100
権現坂の召喚したチューナーはバレーボールのような大きさと形をした鎧武者。短い手にはこれまた短い槍を持っており、何処か愛嬌のあるカードだ。
そのレベルは2、『超重武者』にはレベル7から12のシンクロモンスターは無い筈だが、このモンスターとシンクロを行うモンスターは、少し範囲が広い。刃はタマ―Cを見て、しまったと息を詰まらせる。
「『X―セイバーソウザ』を対象としてタマ―Cの効果発動!ソウザとタマ―Cを墓地に送り、2体のレベルの合計となる『超重武者』をシンクロ召喚する!レベル7のソウザにレベル2のタマ―Cをチューニング!動かざること連山の如し。大岩に宿りし魂、今、そびえ立つ砦となれ!シンクロ召喚!出でよ!『超重魔獣キュウ―B』!」
超重魔獣キュウ―B 守備力2500→4300
裂帛の気合いと共に重量感のある地鳴りがフィールドに響く。土煙を巻き上げ、顕現したのは9つの炎の尾を伸ばした白い獣機。
人馬のような姿をし、頭部から獣の耳を模した炎がゴウゴウと燃え、その手には黒い杖状の銃器が握られている。
「キュウ―Bも同じく守備表示のまま攻撃可能、そしてこのカードの攻撃力は相手モンスターの数×900アップする!バトル!キュウ―Bでガトムズを攻撃!」
刀堂 刃LP3500→3300
超重魔獣キュウ―B 守備力4300→3400
キュウ―Bが杖をくるりと回し、その砲門をガトムズへと向け、エネルギーを集束させる。オレンジ色の光が点滅し、激しい耳鳴りが響き渡る。そして――耳鳴りが止むと同時に、極太のビームがガトムズを呑み込んだ――。
その余波によるダメージが刃へと襲いかかり、LPを削り取る。これで2体目のガトムズは倒した。しかも刃が再びガトムズを出しても2体以上のモンスターを扱うならばキュウ―Bは倒せないと言うおまけつきだ。
「俺はこれでターンエンドだ」
権現坂 昇 LP4000
フィールド『超重魔獣キュウ―B』(守備表示)『超重剣聖ムサ―C』(守備表示)×2
手札0
「俺のターン、ドロー!ボガーナイトでムサ―Cを攻撃!」
権現坂 昇 LP4000→3900
ここでついに権現坂のLPにダメージが与えられる。ボガーナイトの見た目に反した流麗とも言える剣技がムサ―Cの2刀流を翻弄し、高速と化した突きが胸部を貫く。
「ちと賭けだが……メインフェイズ2に入り、魔法カード、『命削りの宝札』を発動!手札が3枚になるようにドローする!」
刀堂 刃 手札0→3
強力なドローソースである宝札が発動される。最大3枚のドローを行えるカードだが3つもの制限があり、特殊召喚が出来ないと言う厳しい誓約効果。発動した後のダメージが0となる効果は先にバトルを行った為逃れたが、エンドフェイズに全ての手札を墓地へ送る効果が残っている。
「うし、モンスターをセット、カードを2枚セットしてターンエンドだ」
刀堂 刃 LP3300
フィールド『XX―セイバーボガーナイト』(攻撃表示)セットモンスター
セット2
手札0
「俺のターン、ドロー!来たか、俺は2体目のテンB―Nを召喚!」
超重武者テンB―N 攻撃力800
「効果によりツヅ―3を特殊召喚!」
超重武者ツヅ―3 守備力300
フィールドに揃うテンB―Nとツヅ―3の過労死コンビ。両者モンスターを蘇生しまくり過労死させている。これこそがシンクロ使いと言えよう。シンクロは過労死させてからが本番なのである。
「俺はレベル5のムサ―Cとレベル4のテンB―Nにレベル1のツヅ―3をチューニング!荒ぶる神よ、千の刃の咆哮と共に砂塵渦巻く戦場に現れよ!シンクロ召喚!いざ出陣!『超重荒神スサノ―O』!!」
超重荒神スサノ―O 守備力3800
ツヅ―3が1つの巨大な光輪と化し、ムサ―CとテンB―Nの2体を包み込む。満ち溢れた光が弾け、フィールドへと轟きと共に降り立つは深緑の装甲に黒い鎧を纏い、鬼の面をした武神。
クルクルと薙刀を回し、構え直し、威厳溢れる姿で仁王立ちする。
このモンスターこそ権現坂の最初のシンクロモンスターにして切り札だ。
「スサノ―Oの効果発動!相手の墓地の魔法、罠カードを自分フィールドにセットする!『ガトムズの緊急指令』をいただく!」
「チッ、面倒くせぇ!」
スサノ―Oの効果により刃の墓地の『ガトムズの緊急指令』が権現坂のフィールドへと渡る。その行動に観客席の遊矢は首を傾げ、コナミに問いかける。
「なぁ、コナミ。何で権現坂はあのカードをセットしたんだ?あのカードは『X―セイバー』の専用カードだろ?」
「……まぁ、そうだが、鋭すぎる刃は諸刃の剣となると言う事だ。あのカードの発動条件はフィールド上に『X―セイバー』が存在する事、つまり自分の場にいなくても構わないし、その効果範囲は自分と相手の墓地」
「そうか……!サポートカードであると同時にメタカードでもあるのか……!権現坂はそれを狙って!」
「ああ、師弟ならば知っているだろう。そしてスサノ―Oは刃の教えで得たカード、『X―セイバー』と『XX―セイバー』は決して仲間と言えない点と言い、運命的なものを感じさせてくれる」
正しく天敵。互いを良く知っているからこそそれが武器となる。2人の師弟、ライバルは互いにニヤリと好戦的な笑みを見せ、更に闘気を増していく。
「バトルだ!キュウ―Bでボガーナイトへ攻撃!」
「そう来ると思ったぜ!罠カード、『幻獣の角』!発動後ボガーナイトの装備カードとなり、その攻撃力を800アップする!」
「だがそれでも!足りん!」
キュウ―Bへ指示を飛ばし、ボガーナイトへとビーム砲を放たせる。刃も罠カードで応戦し、攻撃力をアップするがその数値は3200。後僅か200足りない。しかし、刃は更に笑みを深め、その言葉を待っていたとばかりに手を打つ。
「誰が1枚って言ったよ!ダブルオープン!『幻獣の角』ォ!」
XX―セイバーボガーナイト 攻撃力2400→4000
「そう来るか!」
放たれる2振りの懐刀。刃のフィールドで2枚の『幻獣の角』が表となり、ボガーナイトの兜の側頭部に生えた2本の角が黄金色に輝き、更に攻撃的なものへと変化する。獣のような遠吠えを上げ、ボガーナイトは手に持った剣を角と同じく金色に輝かせ、ビームを打ち返す。極太のビームはそのままキュウ―Bへと向かい、その巨体を呑み込み、消し炭すら残さず消滅させる。
権現坂 昇 LP3900→3300
「更に『幻獣の角』の装備モンスターが戦闘でモンスターを破壊し墓地へ送った時、デッキからドローする!2枚あるから2枚ドローだ!」
刀堂 刃 手札0→2
これで両者のLPが並んだ。キュウ―Bを倒したのもかなり大きい収穫だろう。ボガーナイトの攻撃力はスサノ―Oの守備力も上回っている。
「ならばスサノ―Oでセットモンスターを攻撃!クサナギソード・斬!」
「セットモンスターは『XX―セイバーダークソウル』!破壊はされるが、エンドフェイズにデッキから『X―セイバー』1体を手札に加える!」
「俺はこれでターンエンドだ」
「ダークソウルの効果でフォルトロールを手札に加える」
権現坂 昇 LP3300
フィールド『超重荒神スサノ―O』(守備表示)
セット1
手札0
一進一退、互いに譲れぬ勝負を繰り広げるデュエルに会場がヒートアップする。それは選手である2人も同じ。身を焦がすような、燃え上がるような激闘に刃はこれ以上なく笑う。
これだ、全力で全力を迎え撃つ剣戟の如く火花を散らす、一瞬たりとも気が抜けないデュエル。これこそが刃が求めていたもの。熱に浮かされたように汗を振り落とし、彼は全力で弟子を潰す。
「俺のターン、ドロー!生意気だぜ、師匠にさっさと勝利を譲らねぇなんてなぁ!俺は2枚目の天キを発動!デッキよりレイジグラを手札に加える!」
XX―セイバーボガーナイト 攻撃力4000→4100
「更にレイジグラを召喚!」
XX―セイバーレイジグラ 攻撃力200→500
「召喚時効果でフォルトロールを手札に加え、そのまま特殊召喚!」
XX―セイバーフォルトロール 攻撃力2400→3000
「この瞬間、俺は『ガトムズの緊急指令』を発動!相手の墓地からガトムズとエアベルンを特殊召喚する!」
XX―セイバーガトムズ 攻撃力3100→4000
X―セイバーエアベルン 守備力200→0
権現坂のフィールドへ渡るガトムズとエアベルン。主力であるモンスターとチューナーを奪う事でこのターン中の刃のシンクロ召喚は封じた。
だが刃とて負けていない。その手札より対抗策を打つ。
「手札のモンスターを墓地へ送り、魔法カード、『ワン・フォー・ワン』!デッキよりレベル1チューナー、『X―セイバーパロムロ』を特殊召喚!」
X―セイバーパロムロ 守備力300→0
刃のフィールドに蜥蜴の姿をした剣が現れる。レベル1チューナー、どうやら刃は多少強引な切り口でもシンクロ召喚を行うらしい。
「フォルトロールの効果により墓地のダークソウルを特殊召喚!」
XX―セイバーダークソウル 守備力100→0
「レベル6のフォルトロールにレベル1のパロムロをチューニング!シンクロ召喚!『X―セイバーソウザ』!」
X―セイバーソウザ 攻撃力2500→3200
再び刃の場に2刀流のシンクロモンスターが登場する。展開に次ぐ展開、怒濤の剣技が冴え渡る。だがまだまだ、上昇するボルテージと共に更に加速していく。
「ソウザの効果!レイジグラとダークソウルをリリースし、このターン中、ソウザは戦闘を行う場合、ダメージ計算を行わずモンスターを破壊する効果と罠カードの効果では破壊されない効果を得る!そして手札のフォルトロールを特殊召喚!」
XX―セイバーフォルトロール 攻撃力2400→3000
「フォルトロールの効果ぁ!墓地のレイジグラを特殊召喚!」
XX―セイバーレイジグラ 守備力1000→900
権現坂に対抗するようにフォルトロールとレイジグラの過労死コンビを過労させる刃。しかもこれはただの過労死ではない。その恐るべき事実に観客席のコナミとねねが戦慄する。
「これは……!?あのクソ外、刃の奴、何て事を……!」
「コナミ教授、これは一体!」
「それは私が答えましょう……刃君は今、過労死フォルトロールループを行おうとしているのです……!」
「フォルトロールでレイジグラを蘇生し、レイジグラでフォルトロールを回収する。言わばシフト制の仕事で「遊矢君、7時~15時までね、15時~22時は遊矢君に交代してもらうから、22時~7時は……遊矢君か」みたいな感じ……!」
「笑顔を売るだけの簡単な仕事です」
「エガオヲ……エガオヲ……!」
恐ろしい仕事である。親友の暗次のデッキはホワイトなのにブラック過ぎる刃の手口に遊矢が天に向かってブツブツと呟く人形と化す。
この刃ボロクソに罵る事も1つのループと言えよう。無限ループって怖くね?
「社長の影響かしらね。LDSが頭おかしいと思われたら堪ったものじゃないわ」
「『星邪の侵食』と『魂吸収』を積んだ君が言うの?」
これぞ不動性ソリティア理論の賜物である。
「外野うるせぇ!俺はレイジグラの効果でフォルトロールを回収!更に墓地の『グローアップ・バルブ』の効果でデッキトップを墓地へ送り、自身を特殊召喚!」
グローアップ・バルブ 守備力100
刃のフィールドに次なるソリティアループの使者が送り込まれる。植物に目が生えたようなモンスターはチューナーモンスター、シンクロへの布石である。
「レベル6のフォルトロールにレベル1の『グローアップ・バルブ』をチューニング!3体目ぇ!『X―セイバーソウザ』!」
X―セイバーソウザ 攻撃力2500→3200
「ソウザの効果でレイジグラをリリースし、1つの目の効果を得る!そしてフォルトロールを特殊召喚!」
XX―セイバーフォルトロール 攻撃力2400→3000
「フォルトロールの効果!レイジグラ蘇生!」
XX―セイバーレイジグラ 攻撃力200→500
「レイジグラの効果でフォルトロール回収、特殊召喚!」
XX―セイバーフォルトロール 攻撃力2400→3000
「バトルに入るぜ!2体のソウザでガトムズとエアベルンを攻撃!」
2体のソウザの2刀流、計4刀の刃の閃き、仲間であるガトムズとエアベルンを切り裂く。前任の司令と現在の司令との剣戟、制したのは嘗ての司令であるソウザだ。
「次!ボガーナイトでスサノ―Oを攻撃!」
ボガーナイトが刃の指示を受け、瞬時にスサノ―Oに肉薄する。スサノ―Oが防御をしようとするが時既に遅し、幻獣の力を得たボガーナイトの高速の剣線が幾重も走り、結ばれる。一撃で倒せないなら二撃三撃、数え切れぬ剣戟が鎧を切り裂き、機神の命をも葬る。
権現坂 昇 LP3300→3100
「『幻獣の角』の重複効果で2枚ドロー!」
刀堂 刃 手札1→3
更にドローブースト。止まらぬ加速、刃は更にアクセルを踏み込む。
「フォルトロールでダイレクトアタック!」
「まだだ!墓地の『クリアクリボー』を除外し1枚ドロー!そしてそのカードがモンスターの場合、特殊召喚し、攻撃対象に移し変える!往くぞ!これが俺の、ドローッ!!」
権現坂のドローが土煙を巻き上げ、突風を巻き起こす。吹き荒れる砂塵の中、フォルトロールは気配のする方向に大剣を振るう。
斬っ、確かに切り裂く感覚、砂煙が晴れ、破壊されたモンスターは――。
超重武者ツヅ―3 守備力300
逆転への引き金だった――。
「まじかよ……!?」
「ツヅ―3の効果!墓地より『超重荒神スサノ―O』、再び出陣!」
超重荒神スサノ―O 守備力3800
小さな悪魔の導き、それが黄泉の国より武神を呼び戻す。メタリックな深緑のボディが光で反射し、振るわれる薙刀の刃先が刃へと向けられる。
「ハッ、やるじゃねぇか……!だが何故キュウ―Bを蘇生しなかった?」
「その答えはこれだ!スサノ―Oの効果発動!『グローアップ・バルブ』の効果のコストとして墓地へ送られた『ガトムズの緊急指令』をセットする!」
「ッ!見抜いてやがったか……嫌な弟子だよ全く……!俺はレイジグラをリリースし、ソウザに罠耐性を与える!カードを1枚伏せ、ターンエンドだ」
刀堂 刃 LP3300
フィールド『X―セイバーソウザ』(攻撃表示)×2『XX―セイバーフォルトロール』(攻撃表示)×2『X―セイバーボガーナイト』(攻撃表示)
『炎舞―「天キ」』×2『幻獣の角』×2セット1
手札1
「俺のターン、ドロー!俺は2体目の『超重武者タマ―C』を召喚!」
超重武者タマ―C 攻撃力100
「チッ、キュウ―Bか!」
「違うな!俺が素材とするのは――レベル4!ボガーナイト!」
「ッ!」
「レベル4のボガーナイトにレベル2のタマ―Cをチューニング!雄叫び上げよ。神々しき鬼よ!見参せよ。悪の蔓延る戦場に!シンクロ召喚!いざ出陣!『超重神鬼シュテンドウ―G』!」
超重神鬼シュテンドウ―G 守備力2500
地響きと共に赤き装甲をした鬼が降り立つ。側頭部には天に反り立つ2本の角、胸には青白い宝石が埋められており、肩には黄色いユニットが装着されている。そして腰からは左右4本、合計8本の吹奏楽器のようなものが伸びており、右手には巨大な金棒を持っている。正しく赤鬼、酒天童子が現代に蘇る。
「シュテンドウ―Gがシンクロ召喚に成功した時、相手フィールドの魔法、罠カード全てを破壊する!」
「チッ、ダーク・フォースが……!」
「全く、抜け目ない師だ!俺はシュテンドウ―Gでボガーナイトを攻撃!」
刀堂 刃 LP3300→3100
シュテンドウ―Gが金棒で大地を砕き、激しい破壊と共に地割れを起こしたコンクリートがボガーナイトへ突き刺さる。更に地の底から2つの影が飛び出し、フィールドを駆ける。
白銀の鎧を纏い、真紅のマントを靡かせたその剣士は――。
「この瞬間、罠発動!墓地の2体のガトムズを蘇生!2体でソウザを攻撃!」
XX―セイバーガトムズ 攻撃力3100→4000
その正体は『XX―セイバー』の総司令、ガトムズだ。それぞれ二又の剣を煌めかせ、刃を合わせ、前任の司令、2体のソウザへと大剣を振るう。ソウザも2刀の剣をクロスさせて防ぐが――バキィィィィィンッ!力強い剣技は2刀の剣を粉々に砕き、その喉元を切り裂く。
刀堂 刃 LP3300→2500→1700
「スサノ―Oでフォルトロールを攻撃!クサナギソード・斬!」
刀堂 刃 LP1700→900
更にガトムズの背後よりスサノ―Oが飛び出す。振るわれる薙刀による斬撃がフォルトロールの赤い鎧を切り裂く。
「この瞬間、LPを500払い、墓地のパロムロを蘇生!」
刀堂 刃 LP900→400
X―セイバーパロムロ 守備力300→0
「クククッ、ハハハッ!やっぱこうでなきゃな!サイコーだぜ!お前とのデュエルは!」
「俺もだ!俺はガトムズ自身をリリースし、相手の手札を捨てる!」
刀堂 刃 手札1→0
「スサノ―0の効果で『幻獣の角』をセットし、ターンエンドだ」
権現坂 昇 LP3100
フィールド『超重荒神スサノ―O』(守備表示)『超重神鬼シュテンドウ―G』(守備表示)『XX―セイバーガトムズ』(攻撃表示)
セット1
手札0
「俺のターン、ドロー!俺はフォルトロールの効果でレイジグラ蘇生!」
XX―セイバーレイジグラ 守備力1000→900
「レイジグラの効果でフォルトロール回収!そして魔法カード、『貪欲な壺』を発動!墓地のソウザ3体とガトムズ、そしてボガーナイトをデッキに戻し2枚ドロー!」
刀堂 刃 手札1→3
ここに来てドローカードとループの為のソウザの回収を行う刃。
「レベル6のフォルトロールにレベル1のパロムロをチューニング!シンクロ召喚!『X―セイバーソウザ』!」
X―セイバーソウザ 攻撃力2500→3200
「フォルトロールを特殊召喚!」
XX―セイバーフォルトロール 攻撃力2400→3000
「レイジグラをリリースし、ソウザにソウザに1つ目の効果を与え、フォルトロールでレイジグラ特殊召喚!」
XX―セイバーレイジグラ 守備力1000→900
「レイジグラの効果でフォルトロールを回収!更にチューナーモンスター、『チューニングガム』を召喚!」
チューニングガム 攻撃力400
刃が召喚したのはスティック状のガムの包装紙から飛び出す緑色のガム。空中で粘土のように顔が作られるが――その顔は無駄にリアルでキモい。
「レイジグラを対象に『チューニングガム』の効果発動!レイジグラはこのターン、チューナーとなる!そしてレベル6のフォルトロールにレベル1のレイジグラをチューニング!シンクロ召喚!2体目!『X―セイバーソウザ』!」
X―セイバーソウザ 攻撃力2500→3200
「フォルトロールを特殊召喚!」
XX―セイバーフォルトロール 攻撃力2400→3000
「フォルトロールの効果でレイジグラ蘇生!」
XX―セイバーレイジグラ 守備力1000→900
「レイジグラの効果でフォルトロール回収!レベル6のフォルトロールにレベル1の『チューニングガム』をチューニング!シンクロ召喚!3体目!『X―セイバーソウザ』!」
X―セイバーソウザ 攻撃力2500→3200
「レイジグラをリリースし、2体目のソウザに1つ目の効果を与え、手札のフォルトロールを特殊召喚!」
XX―セイバーフォルトロール 攻撃力2400→3000
「フォルトロールの効果でエアベルン蘇生!」
X―セイバーエアベルン 攻撃力1600→1900
「レベル6のフォルトロールにレベル3のエアベルンをチューニング!白銀の鎧輝かせ刃向かう者の希望を砕け!シンクロ召喚!出でよ!『XX―セイバーガトムズ』!!」
XX―セイバーガトムズ 攻撃力3100→4000
刃のフィールドに揃う4体のシンクロ『X―セイバー』モンスター。そのとんでもないソリティアループにより繰り出される展開力はLDSの中でも1、2を争うだろう。しかもこの中の2体のソウザは戦闘を介さずに相手モンスターを破壊する効果を得ている。
「最後に手札より3枚目のフォルトロールを特殊召喚!」
XX―セイバーフォルトロール 攻撃力2400→3000
「バトルだ!ガトムズでシュテンドウ―Gを攻撃!」
権現坂 昇 LP3100→1600
ガトムズが二又の剣を振るい、シュテンドウ―Gの金棒ごとその厚い装甲を容易く切り裂く。シュテンドウ―Gは爆発し、爆風が権現坂の頬を撫でるが――それでも不動。権現坂は狼狽える事無く、仁王立ちして期を待つ。
「2体のソウザでガトムズとスサノ―Oを攻撃!この瞬間、ソウザの効果を発動する!」
戦闘を介さない効果破壊、それによりスサノ―O達が切り裂かれ、3体目のソウザの刃が権現坂の喉元へ届こうとする――その、瞬間。
「それを――待っていた!相手がバトルフェイズ中に魔法、罠、モンスターの効果を発動した時、墓地より『超重武者装留ビッグバン』を除外してその効果を発動!」
「その、カードはッ!?」
「そう、俺達の最初の闘い、ガトムズによって手札から捨てられ、勝負を引き分けにしたカード!それが今、この激闘に決着をつける!ソウザの効果を無効にし、破壊。そしてその後――フィールドのモンスターを全て破壊し、お互いのプレイヤーは1000のダメージを受ける!」
「ッ、ハハッ最高、最高、最高だ!やっぱデュエルは楽しいなぁ!昇!」
「あぁ、俺もそう思う。刃――!」
権現坂の墓地より青いフレームに覆われ、中に黄色く輝く球体状のエネルギーを抱いたモンスターが登場し、その懐かしい姿に刃が笑い、それにつられ、権現坂も笑みを浮かべる。
そして――ビッグバンのエネルギーが激しく点滅し、膨れ上がり――超爆発が、フィールドに震撼する。崩れ行くフィールド、轟音に巻き込まれていく互いのモンスター。塵埃が立ち込める中――最後に、立っていたデュエリストは――。
権現坂 昇 LP1600→600
刀堂 刃 LP400→0
『激闘、決着ゥー!第1回戦、第3試合を制したのは――権現坂道場所属、権現坂 昇選手ゥゥゥゥゥ!!』
弟子は今――師を越えた――。
――――――
「刃、これは返しておこう」
デュエルが終わり、ロビーにて、権現坂は1枚のカードを刃へと差し出していた。そのカードは『XX―セイバーガトムズ』。刃の切り札であり、先程のデュエルで権現坂のフィールドへ渡っていたモンスターだ。デュエルディスクにそのままだったので返そうとしたのだが――刃はニヤリと悪戯っ子のような笑みを浮かべ、竹刀を両肩に担いだままヒラヒラと右手を振る。
「次の勝負までとっときな。その時は俺が勝って返してもらうからよ」
「……!フ、ならばこのカードは一生俺のものだな」
「何だとぅ!最後まで生意気な弟子だな、こんにゃろぉ!」
笑い合い、掴み合う2人のライバル師弟。何時かまた、闘う時へと向い――そして、ここにもまた、火花を散らすデュエリストが2人。
「次は僕達のデュエルだ。真澄と刃のようにはいかないよ――?」
「――漸く、オレのターンか――」
迫る第4試合、対戦カードは――遊勝塾所属、コナミ対、LDS所属、志島 北斗――。
人物紹介4
権現坂 昇
所属 権現坂道場
不動のデュエルを志すデュエリスト。アクションデュエルの時代、動かずに自分のデッキのみを信じ、フルモンで構成されたデッキで闘う。
遊矢や柚子とは幼なじみであり、刃とは師弟関係。男と言うより漢。
デッキは『超重武者』、エースカードは『超重荒神スサノ―O』。
刀堂 刃
所属 LDS
ソリティアとループをたしなむシンクロ使い。
権現坂の師であり、この作品では二階堂道場の元塾生。暗次とねねとは幼なじみで親友。
案外コナミと一番相性の良い奴であり、コナミが無茶苦茶やっても止めたり、友達でいてくれる人。
デッキは『X―セイバー』、エースカードは『XXセイバーガトムズ』。1枚は権現坂に託された。