遊戯王ARC―V TAG FORCE VS   作:鉄豆腐

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早いものでこの作品を書き始めて一年、文字数は増えたが語彙力も文章力も上がったと感じない。そんなこんなでヌルリと一周年を迎えました。……迎え……たよね?


第49話 勝つぞ、遊矢

始まった舞網チャンピオンシップ、2回戦、期待と興奮が混じった観客達の眼差しの中で、ただ1人、冷静にコロッセオの中心にいる2人のデュエリストを観察する者がいた。

腕を組み、静かに思考を続けるその少年、トレードマークの赤帽子にゴーグルを装着したその少年の名は--コナミ。

彼は選手入口よりアリトが出現した途端に帽子の奥の眼を瞠目し、今のようにただひたすらに無言を貫いている。一体アリトの何がそうさせるのかは分からない。

だがそんな彼の様子を気にした素振りもせずにコナミの子分である暗次が「兄貴兄貴」と嬉しそうに肩を揺する。それは隣の席に座ったねねも同じだ。

 

「あいつッスよ!俺のガッコーに転校して来た奴って言うのは!アリトのヤロー、大会に出てやがったのかぁ……」

 

「暗次君もコナミさんも昨日の試合見てなかったもんねぇ」

 

そう、実はアリトこそが暗次がボッコボコにやられたと言うデュエリストだったのだ。成程、確かに暗次達と同じ学校の制服を着ている。と言うか面白い位に似合っている。

河原で不良と喧嘩して友情を育んでそうだ。相手は暗次か暗黒寺か。コナミは嬉しそうに話をする2人に「ほう」と頷きながらもその視線を外す事はしない。

まぁ教えられなくとも--知っている、と言う事もあるが。

 

「……この勝負、今の遊矢には重いかもしれんな--」

 

静かに、目を細め冷静に分析するコナミ。明らかに遊矢の実力を上回る対戦者の登場。“あのカード”の気配は感じないが、アリトは強敵だ。

だがそれでも--このデュエルの勝負の行方は分からない。それこそがデュエルの醍醐味。

はてさて遊矢はこの試練、どう乗り越えるか。いずれにせよ目が離せない試合になりそうだ。コナミも期待に胸を膨らませ、このデュエルを見物する。

 

先攻はアリトだ。彼は手札より1枚のカードを取り出し、不敵に笑う。

 

「行くぜ!『BKヘッドギア』を召喚!」

 

BKヘッドギア 攻撃力1000

 

アリトが召喚したのはその名の通り頭にヘッドギアを装着した青い肉体のボクサー。その引き締まった肉体からは紫のオーラが流れている。

『BK』。八雲戦でも見たカテゴリだが、その前までは見る所か聞いた事すらないカードだ。その名や見た目から想像するにボクサー等をモチーフにしているようだが遊矢にはどう言った戦術が飛び出るか分からない。

だが見逃すつもりは無い。遊矢はクレバーにアリトの動向を観察する。

 

「ヘッドギアの召喚成功時、デッキから『BK』1体を墓地へ送る!『BKグラスジョー』を送り、続いて『BKスパー』を特殊召喚するぜ!」

 

BKスパー 攻撃力1200

 

途切れる事無く次の手へ、まるでワンツーの如く繰り出される2体目のモンスターは両腕を巨大なミットで覆った練習台となる『BK』。

ヘッドギアの拳をミットで防ぎながらコンビネーションが繋がれる。これでレベル4のモンスターが2体。遊矢の勘が正しいなら恐らくアリトが次に繰り出すのは威力のあるブローの筈だ。

 

「2体のモンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築!エクシーズ召喚!魂に秘めた炎を、拳に宿せ!『BK拘束蛮兵リードブロー』!」

 

BK拘束蛮兵リードブロー 攻撃力2200

 

やはり、遊矢の思った通り、眼前に登場したのはリードブロー、ジャブと言うには強力な効果を有したフィニッシュブローとなり得るモンスターだ。

その効果は八雲戦で見た通り、ORUを使っての広い破壊耐性と攻撃力を上げる2重効果。巨大な首枷を嵌めているからと侮るなかれ、その鈍重な姿は力を抑える為の拘束なのだ。

 

「まだまだ畳み掛けるぜっ!俺はリードブローのORUを1つ取り除き、『BKシャドー』を特殊召喚!そしてリードブローのORUが取り除かれた事で攻撃力アップ!」

 

BKシャドー 攻撃力1800

 

BK拘束蛮兵リードブロー 攻撃力2200→3000

 

リードブローの枷が1つ取り除かれ、伸びた影が逆巻いて人の形を作る。ファイティングポーズを取って現れたのは黒い拳闘士。

首に巻かれたマフラーがジャブによって発生した風で靡き、フワフワと漂う。

だがまだまだ、アリトの連打は続く。

 

「闘魂注入!魔法カード、『バーニングナックル・スピリッツ』発動!デッキトップを墓地へ送り、墓地から『BKグラスジョー』を守備表示で特殊召喚!」

 

BKグラスジョー 守備力0

 

巨大な拳を合わせて入場したのはガッシリとした力強さを感じさせる肉体を持つボクサー。超人染みた緑色の肌や筋肉とは裏腹に、ガラスの顎を持ってしまったモンスターだ。

だがサポーターであるアリトが有効に扱う事でその弱点も良い方向へと働く。何してもこれで再びレベル4のモンスターが2体、少々、いや、かなり面倒な事になった。

 

「おらおらぁ!次行くぜ!2体のモンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築!エクシーズ召喚!『BK拘束蛮兵リードブロー』!」

 

BK拘束蛮兵リードブロー 攻撃力2200

 

またもや現れるアリトの左腕。拘束番兵リードブロー、2体目の入場により更に突破が困難になった。これで計3回の破壊耐性、全て取り除いてもその先には攻撃力3800のモンスターが2体揃う事になる。

遊矢は冷や汗を掻きながらもどう突破しようかと策を練る。残念な事に彼のデッキには攻撃力3800を越えるモンスターは存在しない。『EM』は打点を上げる事には長けているが、破壊耐性が厄介だ。

 

「俺はカードを1枚伏せてターンエンド!この時、『サベージ・コロシアム』の効果でリードブローを破壊する代わりにORUを取り除く。さぁかかって来いよ遊矢!」

 

BK拘束蛮兵リードブロー 攻撃力3000→3800

 

BK拘束蛮兵リードブロー 攻撃力2200→3000

 

アリト LP4000

フィールド『BK拘束蛮兵リードブロー』(攻撃表示)

セット1

手札0

 

「面白いじゃないか……!俺のターン、ドロー!俺は『EMギタートル』と『EMラディッシュ・ホース』でペンデュラムスケールをセッティング!ギタートルの効果により1枚ドロー!」

 

榊 遊矢 手札4→5

 

2枚のカードが遊矢のデュエルディスクの両端に設置され、光のプレートが虹彩色に輝く。更にコロッセオの上空に魔方陣が描かれ、振り子が揺れる。

準備は上々、遊矢は不敵に笑い、手札を広げる。対するアリトは初めて相手取るペンデュラムに感動を覚えたのか、キョロキョロと空を見渡し、目を輝かせている。

 

「これがペンデュラム……!へへ、面白くなって来た……!」

 

「たっぷりと体験してくれよ!これが俺の得意のブロー、振り子の力をご覧あれ!揺れろ、魂のペンデュラム、天空に描け光のアーク!ペンデュラム召喚!『EMウィップ・バイパー』!『EMシルバー・クロウ』!」

 

EMウィップ・バイパー 攻撃力1700

 

EMシルバー・クロウ 攻撃力1800

 

フィールドに降り立つ2本の柱。コロッセオをエンターテイメントに彩るのは銀の毛並みの狼と毒々しい紫色の蛇。その姿は何処か愛嬌がある。

 

「まだまだ!『EMチアモール』を召喚!」

 

EMチアモール 攻撃力600

 

続いて現れたのはポンポンを手に2体を応援するモグラのチア。これでフィールドに3体のモンスターが集った。

遊矢は次なる手を打つ為にアリトのフィールドに立つリードブローを指差す。

 

「俺は1体目のリードブローを対象としてウィップ・バイパーの効果発動!その攻守を入れ替える!」

 

「脇が甘いぜ、カウンター罠、『エクシーズ・ブロック』!2体目のORUを1つ取り除き、モンスター効果を無効にし、破壊する!更にリードブローの効果により攻撃力アップ!墓地に送られたグラスジョーの効果で墓地のヘッドギアを手札に加える!」

 

BK拘束蛮兵リードブロー 攻撃力3000→3800

 

だがそれは届かない。遮るようにオープンされたカウンターがウィップ・バイパーの頬に吸い込まれるように捩じ込まれ、ウィップ・バイパーを墓地へと叩きつける。

強い、だがそれでも遊矢は歩みを止めない。たたらを踏みながらも爪先に力を込め、地を踏みしめる。こんな所でダウンはしない。

 

「効かないな!俺はシルバー・クロウと1体目のリードブローを対象としてラディッシュ・ホースのペンデュラム効果発動!リードブローの攻撃力をシルバー・クロウの攻撃力1800分、ダウンする!更にチアモールの効果により1000ポイントダウン!」

 

BK拘束蛮兵リードブロー 攻撃力3800→2000→1000

 

遊矢が拳を握り、左、右とワンツーのコンビネーションで振り抜く。それにシンクロするように遊矢の『EM』がリードブローへと襲いかかり、リードブローの攻撃力をダウンする。息を飲むカード効果の応酬。互いに譲るつもりなど毛頭無い。

 

「上等ぉ!だけどそんなテレフォンパンチで倒れるかよ!」

 

「そうでなくっちゃ困るぜ!バトルだ!シルバー・クロウでリードブローへ攻撃!この瞬間、シルバー・クロウの効果でフィールドの『EM』の攻撃力は300アップ!」

 

EMシルバー・クロウ 攻撃力1800→2100

 

EMチアモール 攻撃力600→900

 

更に追い込みをかける。ロープ間際に追い込まれたも同然のリードブローへとシルバー・クロウの鋭い鉤爪が炸裂し、アリトが土を抉りながら退く。

 

アリト LP4000→2900

 

榊 遊矢 LP4000→4300

 

「効いたぜ今の……!だけど『サベージ・コロシアム』の効果でお前は可能な限り攻撃しなければならない。残るチアモールの攻撃力は900!リードブローに攻撃して、2900のカウンターダメージを食らいやがれ!」

 

アリトの言葉通り、コロッセオの熱気に当てられたチアモールが飛び出して無謀にもリードブローに攻撃にかかる。だがそんな事を見逃す遊矢ではない。瞬時に手札に加えていたアクションカードをデュエルディスクに叩きつけ、ガードする。

 

「アクションマジック!『回避』!その攻撃を無効にする!」

 

「ッ!何時の間に……!?そうか、あのワンツーの時……!」

 

そう、先程、ラディッシュ・ホースとチアモールの効果を使用した時、遊矢は拳を振り抜くと共にアクションカードを掴み取っていたのだ。

何と言う抜け目の無さ、そして手の早さにアリトが舌を巻く。流石はエンタメデュエリストと言うことか、何時の間にかタネを仕込んでいる。

 

「俺は『サベージ・コロシアム』の効果で回復する」

 

榊 遊矢 LP4300→4600

 

「カードを1枚伏せてターンエンド。第1ラウンドは俺が制したぜ!」

 

榊 遊矢 LP4600

フィールド『EMシルバー・クロウ』(攻撃表示)『EMチアモール』(攻撃表示)

セット1

Pゾーン『EMギタートル』『EMラディッシュ・ホース』

手札0

 

「抜かしたな!俺のターン、ドロー!俺は『BKスイッチヒッター』を召喚!」

 

BKスイッチヒッター 攻撃力1500

 

新たに現れたのは右と左を交互に切り替える技巧派のボクサー。フードを被り、シャドーボクシングに徹する姿は正にプロと言える。

 

「スイッチヒッターの召喚時、墓地の『BKグラスジョー』を特殊召喚する!」

 

BKグラスジョー 攻撃力2000

 

「レベル4が2体……!」

 

「行くぞ遊矢!2体のモンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築!エクシーズ召喚!『BK拘束蛮兵リードブロー』!」

 

BK拘束蛮兵リードブロー 攻撃力2200

 

またしても姿を見せるアリトのエクシーズモンスター。鎖をジャラジャラと引き摺って首枷を嵌めた拳闘士が入場する。

厄介なモンスターがフィールドに召喚された。しかもチアモールは低い攻撃力を晒してしまっている。このままでは危険だ。遊矢はシルバー・クロウに騎乗してフィールドを駆ける。

 

「1体目のリードブローでチアモールを攻撃!」

 

「罠発動!『EMショーダウン』!2体のリードブローを裏側守備表示に変更する!」

 

リードブローがチアモールに接近し、殴りかかろうするも、すすんでの所でペンデュラムゾーンのギタートルとラディッシュ・ホースが割って入り、ゴングを鳴らす。それによってバトルは幕引き、アリトは息をつきニヤリと笑う。

 

「ゴングに救われたな、遊矢。俺はこのままターンエンドだ」

 

アリト LP2900

フィールド セットモンスター×2

手札1

 

「俺のターン、ドロー!チアモールを守備表示に変更し、バトル!シルバー・クロウでORUを失ったリードブローを攻撃!」

 

EMシルバー・クロウ 攻撃力1800→2100

 

EMチアモール 攻撃力600→900

 

榊 遊矢 LP4600→4900

 

シルバー・クロウの鉤爪が守備表示のリードブローへと炸裂する。これで残るリードブローは1体。順調に破壊出来ている。

とは言え油断は禁物だ。2体のリードブローを破壊しても、アリトの表情は陰る事無く、余裕を持っているのだから。まだ何か隠していると遊矢の嗅覚が反応している。ここからどう出るかが問題だ。

 

「カードを1枚伏せ、ターンエンド」

 

榊 遊矢 LP4900

フィールド『EMシルバー・クロウ』(攻撃表示)『EMチアモール』(守備表示)

セット1

Pゾーン『EMギタートル』『EMラディッシュ・ホース』

手札0

 

「これで終わりか!?もっと楽しもうぜ!俺のターン、ドロー!リードブローを反転召喚!そしてヘッドギアを召喚!」

 

BKヘッドギア 攻撃力1000

 

「ヘッドギアの効果でデッキのグラスジョーを墓地へ、グラスジョーの効果で墓地のシャドーを回収、リードブローのORUを1つ取り除き、特殊召喚!取り除いたグラスジョーの効果で墓地のヘッドギアを手札に!」

 

BKシャドー 攻撃力1800

 

「お次はこいつだ!2体のモンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築!エクシーズ召喚!現れろ、No.80!猛りし魂にとりつく、呪縛の鎧!狂装覇王ラプソディ・イン・バーサーク!」

 

No.80狂装覇王ラプソディ・イン・バーサーク 守備力1200

 

次に登場したのは何と『No.』。巨腕を構え、紫の外套を揺らす漆黒の覇王。襟部分には自身の数字である80の赤き刻印が輝いており、本物の『No.』である事を物語っている。

まさかアリトが『No.』の所持者である事を知らなかったのだろう、遊矢は目を見開いて息を飲んでいる。

 

「『No.』……!」

 

「魔法カード、『エクシーズ・ギフト』!ラプソディ・イン・バーサークのORUを2つ取り除き、2枚ドローする!」

 

アリト 手札0→2

 

「更にラプソディ・イン・バーサークの効果!このカードを攻撃力1200アップの装備カードとしてリードブローに装備する!」

 

BK拘束蛮兵リードブロー 攻撃力3000→4200

 

ラプソディ・イン・バーサークが音を響かせて変形し、リードブローに漆黒の鎧となって纏われる。堅牢なる鎧と巨大な腕、そして溢れ出る闘気がリードブローを更に強化する。

攻撃力4200、余りにも高い壁が遊矢の前に立ち塞がる。だが八雲の『No.』を見た後だ。この程度の数値では遊矢は諦めない。

 

「更に魔法カード、『鬼神の連撃』!リードブローのORUを全て取り除き、2回攻撃を得る!更にリードブローは自身の効果で攻撃力アップ!」

 

BK拘束蛮兵リードブロー 攻撃力4200→5000

 

「攻撃力5000……!」

 

「リードブローで2体へ攻撃!」

 

枷を全て外しリードブローは目にも止まらぬ速度でシルバー・クロウへ接近し、高速の連打を叩き込む。力強い巨腕は鋭い風切り音を鳴らし、2体を遊矢のエクストラデッキへと送り込む。

だが遊矢もただでは倒れない。少しでも反撃の準備を整えようとリバースカードをオープンする。

 

「永続罠、『臨時収入』!モンスターがエクストラデッキに加わる度にこのカードに魔力カウンターを乗せる!」

 

榊 遊矢 LP4900→1700

 

臨時収入 魔力カウンター0→1→2

 

アリト LP2900→3200

 

シルバー・クロウが消えた事で騎乗していた遊矢はクルリと回転して着地する。激しいダメージを負ったがまだLPが尽きた訳では無い。額から伝う汗を右手で払いながら何とか立ち上がる。

強い相手だ、思わず遊矢はニヤリと笑みを作る。

 

「俺はカードを伏せてターンエンド」

 

アリト LP3200

フィールド『BK拘束蛮兵リードブロー』(攻撃表示)

『No.80狂装覇王ラプソディ・イン・バーサーク』セット1

手札1

 

「盛り上がって来たな!俺のターン、ドロー!ペンデュラム召喚!『EMペンデュラム・マジシャン』!『EMシルバー・クロウ』!」

 

EMペンデュラム・マジシャン 守備力800

 

EMシルバー・クロウ 守備力700

 

遊矢がペンデュラム召喚したのは振り子を持った赤いマジシャンと鋭き鉤爪を地に食い込ませた銀狼。これで逆境を砕き、新たな道を切り拓く。まずはペンデュラム・マジシャンのサーチ効果、手札に加えるものは――。

 

「ペンデュラム・マジシャンの効果!ギタートルとラディッシュ・ホースを破壊し、デッキから『EMドクロバット・ジョーカー』と『EMリザードロー』を手札に!」

 

臨時収入 魔力カウンター2→3

 

「更にドクロバット・ジョーカーを召喚!」

 

EMドクロバット・ジョーカー 攻撃力1800

 

ステップを刻みながらコロッセオに踏み入ったのはギターを手にした奇術師だ。彼は手にしたギターをくるくると回転させる。

すると不思議な事にギターに穴が見え、その中より亀が四肢と頭を出す。

 

「ドクロバット・ジョーカーの召喚時、デッキからギタートルを手札に加え、リザードローと共にペンデュラムスケールをセッティング!ギタートルの効果で1枚ドロー!そしてリザードローを破壊し、更に1枚、臨時収入を墓地へ送り2枚、合計4枚のドローだ!」

 

榊 遊矢 手札0→1→2→4

 

大量のドローブーストをかける遊矢。0になっていた手札が4枚に回復すると言うまるでマジックのような光景に観客達が盛大な拍手を送る。

ここからが本番、エンターテイナーの腕の見せ所だ。

 

「とは言ってもちょっとヤバいな……!永続魔法、『補給部隊』を発動し、ドクロバット・ジョーカーでリードブローを攻撃!この際、手札の『EMバリアバルーンバク』を捨て、ダメージを0にする!『補給部隊』の効果で1枚ドロー!」

 

榊 遊矢 手札2→3 LP1700→2000

 

「カードを1枚伏せてターンエンド」

 

榊 遊矢 LP2000

フィールド『EMペンデュラム・マジシャン』(守備表示)『EMシルバー・クロウ』(守備表示)

『補給部隊』セット1

Pゾーン『EMギタートル』

手札3

 

「防戦一方か!?俺のターン、ドロー!バトル!リードブローでシルバー・クロウへ攻撃!」

 

アリト LP3200→3500

 

アリトの指示を受け、リードブローが瞬時にシルバー・クロウへ肉薄する。その巨腕より激しい拳打の嵐がシルバー・クロウに襲いかかり、その余波として土煙がモウモウと上がり、地面が捲れ上がる。

とんでも無い攻撃だ。モンスターが攻撃表示だった場合、もろに食らっていたと考えるとゾッとしない。だが遊矢も一方的に負けてはいない。その手を突き出し、反撃の準備を整える。

 

「速攻魔法発動!『イリュージョン・バルーン』!デッキの上から5枚をめくり、その中から『EM』モンスター1体を特殊召喚する!」

 

「通すかよ!カウンター罠、『ジョルト・カウンター』!その発動を無効にする!」

 

「くっ……『補給部隊』の効果で1枚ドロー!」

 

榊 遊矢 手札3→4

 

しかしどうにも反撃の機会を許してくれないらしい。こちらのタイミングを完全に読み切り、カウンターで返される。

遊矢と同じく優れた観察眼、そして嗅覚。それによって好機を感じ取ったのだろう。それを可能とするのは恐らく多大なる戦闘からなる経験。

歴戦の猛者だけが持つ後天的なものだ。

 

「俺はカードを1枚伏せターンエンド。もっと燃えさせてくれよ!」

 

アリト LP3500

フィールド『BK拘束蛮兵リードブロー』(攻撃表示)

『No.80狂装覇王ラプソディ・イン・バーサーク』セット1

手札1

 

「勿論さ!まだまだ闘える!もっともっと熱くなれる!俺のターン、ドロー!」

 

引き抜いたカードにチラリと目を配らせる遊矢。これならばこの状況を覆せる。遊矢は1人で頷きながら反撃の狼煙を上げる。まずは――このカードだ。

 

「押してもダメならもっと押す!『EMゴムゴムートン』をペンデュラムスケールにセッティング!これでレベル2から5までのモンスターを同時に召喚可能!そしてギタートルの効果で1枚ドロー!」

 

榊 遊矢 手札4→5

 

「ペンデュラム召喚!『EMラディッシュ・ホース』!『EMチアモール』!『EMオッドアイズ・ライトフェニックス』!『EMロングフォーン・ブル』!」

 

EMラディッシュ・ホース 攻撃力500

 

EMチアモール 守備力1000

 

EMオッドアイズ・ライトフェニックス 攻撃力2100

 

EMロングフォーン・ブル 攻撃力1600

 

遊矢の周囲に緑、ピンク、赤、青の4色に光輝く柱が降り立ち、地響きを轟かせる。光がまるで雨のように降り注ぎ、晴れたそこには大根の角を生やした馬とモグラのチアガール、炎の翼を広げた2色の虹彩の不死鳥に電話を頭にかけた牛のモンスター達と見ていて飽きない。

はてさてどんな演目を披露するのか、サーカス劇団のようなモンスターにアリトと観客達は目を輝かせ座長である遊矢の動向を見張る。

 

「まずはロングフォーン・ブルの特殊召喚時効果!デッキよりペンデュラムモンスター以外の『EM』を手札に加える!『EMスライハンド・マジシャン』を手札に加え、ロングフォーン・ブルをリリースして特殊召喚!」

 

EMスライハンド・マジシャン 攻撃力2500

 

ロングフォーン・ブルが頭にかけた電話を手に取り、『EM』を手札に呼び出す。応じたのは赤い派手な衣装に身を包み、白い仮面を被ったマジシャン。

右手には手品用の4つのボール、左手にはステッキを構え、下半身は青い水晶の振り子となっており、純白の翼が優しく包み込んでいる。

 

「手札の『EMジンライノ』を捨て、リードブローを対象にスライハンド・マジシャンの効果発動!対象のモンスターを破壊する!」

 

「絶好の餌食だな!お待ちかねの、カウンター罠、『エクシーズ・リフレクト』!エクシーズモンスターを対象とする効果を無効にし、破壊、そして800のダメージを与える!」

 

榊 遊矢 LP2000→1200

 

振り抜く豪腕。リードブローのカウンターがスライハンド・マジシャンの顎を狙い打つ。放たれた宝刀は吸い込まれるように、快音を響かせ、仮面を砕き、白い破片が飛び散って遊矢にダメージを与える。

やはりそう簡単に通してくれないらしい。だがこれは予想していた事だ。ここからが本番、効果での破壊が出来ないなら、戦闘による破壊を目指すのみ。攻撃力5000を――越える。

 

「まずはオッドアイズ・ライトフェニックスをリリースし、ラディッシュ・ホースの攻撃力を1000アップ!」

 

EMラディッシュ・ホース 攻撃力500→1500

 

第1段階、オッドアイズ・ライトフェニックスが炎となって消え、残った炎はラディッシュ・ホースを包み込み、その背より赤い翼が1対伸びる。紅蓮の両翼を得た天馬は蹄を鳴らして空を駆け、リードブローを睨み付ける。

 

「次!チアモールの効果でラディッシュ・ホースの攻撃力を更に1000アップする!」

 

EMラディッシュ・ホース 攻撃力1500→2500

 

第2段階、炎の翼を広げるラディッシュ・ホースへと地よりチアモールがポンポンを振り、両足を上げて応援し、鼓舞する。これでラディッシュ・ホースの攻撃力は2500、リードブローの半分となった。

 

「そしてラディッシュ・ホース自身の効果!このカードとリードブローを対象として発動!リードブローの攻撃力をラディッシュ・ホースの攻撃力分ダウンし、ラディッシュ・ホースは自身の攻撃力分アップする!」

 

BK拘束蛮兵リードブロー 攻撃力5000→2500

 

EMラディッシュ・ホース 攻撃力2500→5000

 

最終段階、ラディッシュ・ホースは自らの角を飛ばして爆発、四散した欠片がリードブローとラディッシュ・ホースへと降り注ぎ、リードブローの弱体化と自身の強化を促す。

くしくも両者の攻撃力が入れ替わる形となった。今度は5000の暴力的な数値がアリトの前に立ち塞がる。

その鮮やかなコンボに観客達は歓声を上げ、アリトも冷や汗を掻きながら信じられないものを見るように渇いた笑みを浮かべる。

 

「真正面から来やがった――!」

 

「ペンデュラム・マジシャンを攻撃表示に変更し、バトルだ!ラディッシュ・ホースでリードブローに攻撃!」

 

アリト LP3500→1000

 

遊矢 LP1200→1500

 

ラディッシュ・ホースが天を駆り、上空より勢い良く降下してリードブローを漆黒の鎧ごと貫く。

見事な突破の手を緩めず、遊矢はペンデュラム・マジシャンへと指示を飛ばす。

 

「ペンデュラム・マジシャン!ダイレクトアタック!」

 

「させるかよ!アクションマジック、『回避』!」

 

だがこれで終わらせてくれるような相手では無いらしい。アリトは手元よりアクションカードをディスクに叩きつけ、発生したバリアでその攻撃を防ぐ。

後少しで勝てたと考え、残念に思う遊矢もいるが――それ以上に、彼とのデュエルをまだまだ続けたい、この一瞬を少しでも長く味わいたいと楽しんでいる遊矢がいる。そして――それはきっと、アリトも同じ。

 

「もっともっと楽しもうぜ遊矢!まだ限界じゃないだろう!?」

 

「当然!俺はラディッシュ・ホースをリリースし、モンスターをセット!カードをセットしてターンエンドだ!」

 

榊 遊矢 LP1500

フィールド『EMペンデュラム・マジシャン』(攻撃表示)『EMチアモール』(守備表示)セットモンスター

『補給部隊』セット1

Pゾーン『EMギタートル』『EMゴムゴムートン』

手札1

 

「全開で行くぜ!俺なターン、ドロー!魔法カード、『貪欲な壺』!墓地の『BK拘束蛮兵リードブロー』3体、『No.80狂装覇王ラプソディ・イン・バーサーク』、『BKグラスジョー』をデッキに戻し2枚ドロー!」

 

アリト 手札1→3

 

「うっし行くぜ!魔法カード、『バーニングナックル・スピリッツ』!デッキトップをコストに、墓地のグラスジョーを特殊召喚!」

 

BKグラスジョー 守備力0

 

「そして『BKヘッドギア』を召喚!」

 

BKヘッドギア 攻撃力1000

 

「ヘッドギアの効果でデッキからグラスジョーを墓地へ、グラスジョーの効果でスイッチヒッターを手札に加え、2体のモンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築!エクシーズ召喚!『No.79BK新星のカイザー』!」

 

No.79BK新星のカイザー 攻撃力2300→2500

 

現れたのは2体目の『No.』。真っ赤に燃える鎧を纏い、王者の気風を感じさせる金を施し、背より4枚の翼が伸びたユニットを負い、拳にカイザーナックルを嵌めた、何処かヒーロー然としたモンスター。

左の脇腹に描かれたる赤き紋章は79、先程の『No.』より1つ下の数値を持っている。

 

「新星のカイザーはORU×100攻撃力をアップする!そして新星のカイザーの効果発動!墓地の『BKスパー』をORUとする!」

 

No.79BK新星のカイザー 攻撃力2500→2600

 

「そして魔法カード、『ハーピィの羽帚』を発動!これでペンデュラムは出来ないぜ!バトル!新星のカイザーでチアモールを攻撃!」

 

アリト LP1000→1300

 

襲いかかるカイザーの拳を受け、チアモールが破壊される。これでカイザーの攻撃力を大きく下げるモンスターは消えた。ペンデュラムも崩れた今、ラディッシュ・ホースによる突破も難しい。

 

「俺はこれでターンエンドだ」

 

アリト LP1300

フィールド『No.79BK新星のカイザー』(攻撃表示)

手札1

 

「俺のターン、ドロー!『金満の壺』を発動!エクストラデッキの『EMドクロバット・ジョーカー』と『EMギタートル』、『EMリザードロー』をデッキに加え、2枚ドロー!」

 

榊 遊矢 手札1→3

 

「よし、『EMモモンカーペット』と『EMビッグバイトタートル』をセッティング!これでレベル6から4のモンスターを同時に召喚可能!ビッグバイトタートルのペンデュラム効果で手札の『オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン』のレベルを1つ下げ、ペンデュラム召喚!『EMラディッシュ・ホース』!『EMオッドアイズ・ライトフェニックス』!雄々しくも美しく輝く二色の眼!『オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン』!」

 

オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン 攻撃力2500

 

EMオッドアイズ・ライトフェニックス 攻撃力2100

 

EMラディッシュ・ホース 守備力2000

 

上空の魔方陣より振り子が揺れ、3本の柱がコロッセオの中心に降り注ぐ。並び立つのは赤い馬と不死鳥、そして遊矢のエースモンスターである2色の眼を宿し、背に三日月を負った真紅の竜。

倒されても舞い戻る、振り子の軌道を描くモンスター達。その登場に会場が拍手喝采で受け入れ、遊矢が檄を飛ばす。

 

「オッドアイズ・ライトフェニックスをリリースし、ラディッシュ・ホースの攻撃力を1000アップ!」

 

EMラディッシュ・ホース 攻撃力500→1500

 

「そしてラディッシュ・ホースの攻撃力分、新星のカイザーの攻撃力をダウンし、『オッドアイズ』の攻撃力を上げる!」

 

No.79新星のカイザー 攻撃力2600→1100

 

オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン 攻撃力2500→4000

 

「バトル!『オッドアイズ』でカイザーを攻撃!螺旋のストライク・バーストッ!!」

 

遊矢が『オッドアイズ』の背に飛び乗り、跨がってドタドタと慌ただしい音を響かせて駆けさせる。

真紅の竜は雄々しい遠吠えを上げ、嘴のようなアギトに大気を集束、火炎へと変化させてカイザーへと吐き出す。

ボウボウと燃え上がる火の手より逃れる為、アリトは手を打つ。

 

「墓地の『ネクロ・ガードナー』を除外し、その攻撃を無効にする!」

 

恐らく『バーニングナックル・スピリッツ』のコストとして落ちていたのだろう。突如カイザーの前が陽炎の如く揺らめき、火炎に掻き消される。

どれだけ強大な力を向けようとこれでは無意味だ。遊矢は苦笑を溢して次の指示を飛ばす。

 

「ペンデュラム・マジシャンでカイザーを攻撃!」

 

アリト LP1300→900

 

榊 遊矢 LP1500→1800

 

ペンデュラム・マジシャンがその手に持った振り子を巨大化させ、鞭のようにしならせカイザーの鎧を砕く。強烈な打撃を受け、カイザーはコロッセオの後方に吹き飛ばされ塵埃を上げる。

これでアリトのモンスターを倒した――だと言うのに、彼はニヤリと口端を吊り上げ、不敵な笑みを浮かべる。

ああ、これは何かある。遊矢が危機を察知して息を詰まらせる。モウモウと立ち上がる煙の中に3つの影、やはり、予感は的中する。土煙が晴れ、そこに存在したのはカイザーの姿では無く、3体のモンスター。

 

BKグラスジョー 攻撃力2000

 

BKヘッドギア1000

 

BKスパー 攻撃力1200

 

「新星のカイザーが破壊された時、その時に持っていたORUの数まで、レベル4以下の『BK』を特殊召喚する!まだまだ俺の闘志は尽きないぜ!」

 

「……ははっ……!そう来なくっちゃな!俺はこれでターンエンド!」

 

榊 遊矢 LP1800

フィールド『オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン』(攻撃表示)『EMペンデュラム・マジシャン』(守備表示)『EMラディッシュ・ホース』(守備表示)セットモンスター

Pゾーン『EMモモンカーペット』『EMビッグバイトタートル』

手札0

 

「俺のターン、ドロー!『BKスイッチヒッター』を召喚!」

 

BKスイッチヒッター 攻撃力1500

 

「スイッチヒッターの効果!墓地の『BKシャドー』を特殊召喚!」

 

これでアリトのフィールドに5体もの『BK』が揃う。どれもレベル4、ともすれば答えは明確、あの3体は既にアリトのエクストラデッキに戻っているのだから。

 

「まずはグラスジョーとヘッドギアの2体でオーバーレイ・ネットワークを構築!エクシーズ召喚!魂に秘めた炎を拳に宿せ!『BK拘束蛮兵リードブロー』!」

 

BK拘束蛮兵リードブロー 攻撃力2200

 

再び闘技場に鎖のジャラジャラとした引き摺る音を鳴らし、首枷を嵌めた拳闘士が入場する。アリトの扱う『BK』の中でもエース級の力を秘めたモンスター、その耐性は厄介と言う他無いだろう。

しかもこれで終わりではない、レベル4の『BK』はまだ3体いる。

 

「俺はスパーとスイッチヒッターでオーバーレイ・ネットワークを構築!エクシーズ召喚!『BK拘束蛮兵リードブロー』!2体目!」

 

BK拘束蛮兵リードブロー 攻撃力2200

 

現れる2体目のリードブロー。これで更に布陣が堅くなり、突破は難しいものとなった。鉄壁のガードに強烈なカウンター。性格に反してクレバーな戦術、それこそがアリトの最大の武器なのだろう。

苛烈な攻めはそのおまけに過ぎない。こちらの武器をへし折る事がアリトのデュエルスタイルなのだ。

 

「魔法カード、『エクシーズ・ギフト』!リードブロー2体のORUを1つずつ取り除き、2枚ドロー!そしてリードブローの攻撃力はアップし、グラスジョーの効果でシャドーを手札に!」

 

アリト 手札1→3

 

BK拘束蛮兵リードブロー 攻撃力2200→3000×2

 

「更に1体目のリードブローのORUを取り除き、特殊召喚!リードブローの攻撃力は更にアップ!」

 

BKシャドー 攻撃力1800

 

BK拘束蛮兵リードブロー 攻撃力3000→3800

 

「そしてヘッドギアとシャドーでオーバーレイ・ネットワークを構築!エクシーズ召喚!『BK拘束番兵リードブロー』。3体目!」

 

BK拘束蛮兵リードブロー 攻撃力2200

 

3体目、最後のリードブローがコロッセオに入場し並び立つ。正に圧巻と言うしかない光景に観客達は興奮し、アリトに対してエールを送り、遊矢へこの状況をどう切り抜けるかと目を向ける。

その様子に遊矢は気づく事なく眼前のデュエルに無我夢中と言った表情でひたすら笑う。

楽しい、こんな状況でさえ、こんな逆境でさえ、デュエルが楽しくて楽しくて仕方無い。この胸の熱い鼓動が、激しく脈打つ血流が、自分がデュエリストである事を自覚させる。

 

「行くぜ遊矢ぁ!1体目のリードブローで『オッドアイズ』を攻撃!」

 

「来いアリトぉ!モモンカーペットがペンデュラムゾーンに存在する限り、俺の受ける戦闘ダメージは半分になる!」

 

榊 遊矢 LP1800→1150

 

アリト LP900→1200

 

一撃、閃光のような煌めきの後に渇いた音が襲来して『オッドアイズ』の胸の宝玉を穿ち、飛び散る破片が遊矢のLPを削っていく。

ペンデュラムゾーンのモモンカーペットが遊矢の前にひらりと舞い、破片を受け止めるも全ては防ぎ切れない。

 

「次!2体目のリードブローでセットモンスターを攻撃!」

 

「ッ!セットモンスターは『EMカレイドスコーピオン』、破壊される……!」

 

アリトLP1200→1800

 

二撃、疾風の如くリードブローが駆け、その拳を持ってセットモンスターの球体へと殴りかかる。

大地を砕きひひが走るそれを受け、セットモンスターがパタリと音を立てて表となれば、万華鏡の尾を持った蠍の姿。

 

「最後だ!3体目のリードブローでペンデュラム・マジシャンを攻撃!」

 

榊 遊矢 LP1150→800

 

アリト 1500→1800

 

三撃、枷をつけたリードブローはそれを利用して鎖をペンデュラム・マジシャンへと投げ、動きを封じる。ジャラジャラと重い鎖から逃れようとするペンデュラム・マジシャン。だが遅い、リードブローの鉄拳が鳩尾に抉り込み、ぐったりと力無く倒れる。

 

「カードを2枚セットしてターンエンド!さぁ来いよ遊矢ぁ!」

 

アリト LP1800

フィールド『BK拘束蛮兵リードブロー』(攻撃表示)×3

セット2

手札0

 

アリトから遊矢へとターンが回る。アリトのフィールドにはエクシーズモンスターが3体、3回の破壊耐性を持つリードブロー達。

それだけではない、アリトのフィールドに伏せられたセットカード、恐らくはカウンター罠の類いだろう。正しく鉄壁の布陣。

だがどんなピンチだろうと遊矢は諦めない。むしろこの状況の方が――。

 

『ワクワクする、か?』

 

「ッ!お前は――」

 

それは本当に、突然の事だった。デュエルディスクを構える遊矢の傍に、音も無く現れた新たなデュエリスト。

跳ねた前髪、草臥れたシャツとネクタイ、ボロボロに擦り切れたマントを羽織り、遊矢と良く似た顔立ちの、半透明のその少年は――。

 

『フ、やはり君は、デュエル馬鹿だ』

 

「ユート……何で……?」

 

ユート。エクシーズ次元から来た、レジスタンスに所属するデュエリスト。

決して折れない不屈の闘志を持った遊矢の友人。しかし彼は、ユーゴに敗北して消滅した筈、何故ここにいるのか分からない。そんな動揺を隠せずに慌てふためる遊矢。するとユートは苦笑を溢して説明を始める。

 

『やれやれ、俺もあの時漸く休めると思ってな。君の中の炬燵に入ってみかんを食べたりゴロゴロしていたんだが、家賃を払えぬ者は居させてくれないらしい。……先約が居たのか追い出され、表面に出てきたと言う訳だ』

 

「ええ……」

 

『そんな事よりアリトとデュエルらしい、しかも中々のピンチだ。だが――既に勝利の方程式は完成している。勝つぞ……遊矢』

 

フワフワと風船のように宙を漂いながら腕を組み、戸惑う遊矢へと笑みを浮かべるユート。

そんな彼の言葉に豆鉄砲を食らった鳩の如く呆けた顔で目を瞬かせる遊矢だが――暫くして、意味を飲み込んだらしい、遊矢もまた、不敵に笑う。

 

「当然!行くぜ!これが運命のラストドロー!」

 

遊矢とユート、2人がデッキトップへと手をかけ、勢い良く引き抜く。

 

「『かっとビングだ!俺達!!』」

 

口ずさむのは何時か何処かで闘った少年の台詞。胸に抱くのは自分だけの、デュエリストとしての闘志。

熱き火花が迸り、赤いアークの軌跡描く。舞台は終幕、ド派手な演出でこのスタジアムに、ここにいるもの全ての記憶に刻みつけるよう、遊矢は両手を翳す。

 

「Ledies and Gentlemen!お楽しみは、これからだ!!」

 

「……来たか……!エンタメデュエル!」

 

榊 遊矢のエンタメデュエル。その登場に待ってましたとばかりに会場が沸き立ち、期待を抱く。対戦相手であるアリトですら拳を握り締め、今か今かと興奮した様子ではしゃぐ。

その光景に遊矢は得意気な笑みを作り、ユートは苦笑する。準備は万端、見せようではないか、2人の力を合わせたデュエルを。

 

「さぁさぁまずは榊 遊矢の真骨頂!ペンデュラムをご覧あれ!揺れろ、魂のペンデュラム!」

 

『天空に描け光のアーク!』

 

「ペンデュラム召喚!」

 

EMシルバー・クロウ 攻撃力1800

 

EMペンデュラム・マジシャン 攻撃力1500

 

EMオッドアイズ・ライトフェニックス 攻撃力2100

 

EMカレイドスコーピオン 守備力2300

 

2人の声が重なり、魔方陣より4つの柱が流れ落ちる。この4本の柱とフィールドのラディッシュ・ホース、そして手札のこのカードこそが勝利へ繋ぐ方程式。

全てを出し切り、アリトを倒す。今出来る全てで限界を越える。その為に――はじめの一歩を踏み出す。

 

「まずはペンデュラム・マジシャンの効果発動!」

 

「させるかよ!カウンター罠、『エクシーズ・ブロック』!3体目のリードブローのORUを1つ取り除き、無効にして破壊!」

 

BK拘束蛮兵リードブロー 攻撃力2200→3000

 

「ならオッドアイズ・ライトフェニックスをリリースし、ラディッシュ・ホースの攻撃力を上げる!」

 

EMラディッシュ・ホース 攻撃力500→1500

 

「シルバー・クロウと2体目のリードブローを対象にラディッシュ・ホースの効果発動!」

 

「無駄無駄ぁ!カウンター罠、『天罰』!手札のアクションカードを捨て、無効にして破壊!」

 

互いに譲らぬカード効果の応酬、返される拳にたたらを踏みながらも遊矢は進む。まだ武器は残っている。必殺のフィニッシュブローは死んではいない。その瞳に赤い闘志の火種を宿し、燃え上がらせる。

 

「まだ終わってないぜ!『EMヘルプリンセス』を召喚!」

 

EMヘルプリンセス 攻撃力1200

 

登場したのは紫のツインテールを流し、マジックハンドとステッキを合わせたものと電話の受話器を持った美少女。

 

「さぁさぁご注目!これより出るのは俺の新たな仲間!ニューホープの登場です!」

 

『フ……』

 

「行くぜ!2体のモンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築!漆黒の闇より愚鈍なる力に抗う反逆の牙!」

 

「今、降臨せよ!エクシーズ召喚!現れろ!」

 

『「『ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン』!!」』

 

ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン 攻撃力2500

 

遊矢の背後に星空が広がり、中より黒き霧が立ち込める。鋭き尾、刃のような両翼を翻して、暗雲を切り裂き、赤き雷が激しくスパークする。

雄々しき咆哮を上げ、飛び出したのは漆黒の竜。遊矢にとって友から譲り受けた初めてのエクシーズモンスター。ユートにとってのエースカードが今、反逆の牙を研ぐ。

 

「そのモンスター……って何でユートがいるんだ……!?」

 

「『ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン』のORUを2つ取り除き、1体目のリードブローの攻撃力を半分にし、その数値分、このモンスターの攻撃力をアップする!」

 

『トリーズン・ディスチャージ!!』

 

BK拘束蛮兵リードブロー 攻撃力3800→1900

 

ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン 攻撃力2500→4400

 

ダーク・リベリオンの両翼に嵌め込まれた宝玉より赤き雷が四散し、リードブローより力を権奪する。より一層力を増したダーク・リベリオン。

しかしこれではアリトは倒せない。

 

「俺の墓地には『BKカウンターブロー』がいる!ダメージステップ時にこいつを除外する事で、リードブローの攻撃力は1000上がるぜ!」

 

「カウンターはもう出来ないさ!カレイドスコーピオンの効果!このターン、ダーク・リベリオンは特殊召喚されたモンスター全てに攻撃出来る!」

 

バチバチと火花と雷を迸らせ、ダーク・リベリオンが地を蹴り砕き、天を駆る。更に勢い良く降下してそのアギトで大地を抉りながら3体のリードブローに狙いをすます。

激しき轟音、飛び散る黒い炎、反逆の牙がコロッセオへと突き立てられる。

 

『「反逆の!ライトニング・ディスオベイッ!!」』

 

アリトLP1800→0

 

「……燃え尽きたぜ……真っ白な……灰のように……」

 

激闘に今、幕が下がる。




ナストラル『休めないの?』

黒いの「エクシーズ次元だけにブラックってか」

ナストラル『ぶん殴るぞお前』

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