遊戯王ARC―V TAG FORCE VS   作:鉄豆腐

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おっぱい回。


第51話 月からの使者

ハイレベルな闘いが繰り広げられ、様々な戦略渦巻く舞網チャンピオンシップ2回戦。過去の大会を見ても、最高レベルと言って良いこの激闘も、いよいよ最終戦に突入する。

3回戦への出場資格を賭け、2回戦最後の試合が今、始まろうとしていた。

 

1人は見るもの全てを楽しませるエンタメデュエルを信条とした遊勝塾に所属する1番の問題児、3倍速の赤い悪魔こと、コナミ。

今日も今日とてトレードマークの赤い帽子を目深に被り、その上に装着されたゴーグルが太陽の光を反射する。肩にかけた赤のジャケットが風に靡き、鍛えられた両腕をだらりと力なく垂らしている。

緊張の欠片も見当たらない自然体、そんなコナミの正面で頭を抱えているのは1人の美女。

 

「……何でアンタまでいるのよ……隼だけでも驚きなのに……!」

 

腰まで伸ばされた桃色の長髪は首から下は紫に変色しているが、地毛なのだろう。無理して染め上げたかのような下品さは見受けられない。逆に彼女の大人びた、艶のある雰囲気に良く似合っている。

首元からは黒い外套を纏い、その両手にはすっぽりと肩までを覆うロンググローブを着けている。それ程露出が無い服装なのに色気を醸し出しているのは彼女の豊かな胸部のせいか、女性でも羨む程に均整の取れたプロポーションだ。

LDSエクシーズコースに所属する彼女の名は、瑠那。先程コナミの存在を目に止めてからずっとこの様子である。

 

「今日は知らん奴から失礼な態度を取られる日だな」

 

「知らない……?何よ、貴方まさか記憶喪失にでもなったって言うの?私の事を忘れたの?」

 

「いや、記憶は確かに曖昧な所はあるが……お前のようなおっぱいは知らん」

 

「ぬぁっ!?お、おぱっ……」

 

コナミに呆れたような態度を見せる瑠那に対し、コナミもまた首を傾げ、キッパリと告げる。コナミとしては瑠那のような立派に主張する2対のロケットを1度でも見れば2度と忘れる事は無いと断言出来るのだが……残念ながら瑠那のおっぱいとは初対面である。

ただコナミは小さい大きいで差別する気は無い、大は小を兼ねると言う言葉もあるだけだ。つまり、コナミはおっぱい星人である。

 

「良いわ……思い出させてあげる!この月からの使者の事を!」

 

「それは思い出させない方が良いのでは……?」

 

「う、うるさいわね!月に代わって成敗よ!」

 

「上等だ。ここで会ったのも月の光に導かれ、何度も巡り合ってミラクル、ロマンスだ!」

 

『な、何だか妙な雰囲気になって参りましたがデュエルを始めましょう!アクションフィールド、発動!』

 

剣呑な空気で馬鹿馬鹿しいやり取りを繰り広げる2人の対戦者に気圧されながらも、自らの仕事を果たす為にアクションフィールド発動のスイッチを押すニコ。

こんな変人とおっぱいを前にしても気を取り直して仕事をする姿は正にプロである。カチリとスイッチが押される音と同時にフィールドが緑生い茂る森に包まれ、空中に幾つもの光輝く6角形の結界が構成される。

アクションフィールド、『星守る結界』。瑠那の扱うエクシーズに関する効果を持ったフィールドだ。このカードの登場に、観客席で座る遊矢、の隣でフワフワと浮くユートが顎に手を当て、ふむ、と頷く。

 

『どうやらこのデュエルは瑠那の有利だな。彼がどう立ち向かうか……悪いが遊矢、俺は瑠那の応援をさせて貰う。コナミ負けろ……負けちまえ……!』

 

「お、おう。でもコナミだって負けないぜ!」

 

ぶつぶつと呪詛の如くコナミを睨んで呟くユートを視界に捉えながらも同じ仲間として、ライバルとしてコナミを応援する遊矢。

そんな彼等の様子を知らずに、コナミと瑠那はアクションデュエルの口上を紡ぐ。

 

「戦いの殿堂に集いしデュエリスト達が!」

 

「モンスターと共に地を蹴り宙を舞い!」

 

「フィールド内を駆け巡る!」

 

「見よ、これぞデュエルの最強進化形!」

 

互いにデュエルディスクを取り出し、その左腕に装着するコナミと瑠那。フィールド内を駆け、デュエルディスクよりソリッドビジョンで構成されたプレートを閃かせ、デュエルの火花を散らす。

 

「「アクショーン……デュエル!!」」

 

先攻はコナミだ。デッキより5枚のカードと言う名の剣を手に、頭の中で戦略を駆け巡らせる。この場に最も合った手はどれか、2秒で決定する。

 

「まずはこれだ。手札を1枚捨て、『ペンデュラム・コール』を発動!デッキより『魔術師』ペンデュラムモンスター2体を手札に加える。オレは『慧眼の魔術師』と『刻剣の魔術師』を手札に加え、墓地に送った『妖刀竹光』の効果により、デッキから『黄金色の竹光』を手札に!そして慧眼と刻剣でペンデュラムスケールをセッティング!」

 

初っぱなからのペンデュラム。コナミのデュエルディスクに虹色の輝きが灯り、左右に『魔術師』を内包した光の柱が上り、天空に魔方陣が描かれる。

最初から全開、サービス満載のプレイングを見て、観客達が最早聞き慣れたペンデュラムコールを上げる。正に魔法、『ペンデュラム・コール』と言った所か。

 

「これがペンデュラム……!」

 

「揺れろ、光のペンデュラム!虚空に描け魂のアーク!ペンデュラム召喚ッ!『E・HEROエアーマン』!『E・HEROブレイズマン』!」

 

E・HEROエアーマン 攻撃力1800

 

E・HEROブレイズマン 守備力1800

 

コナミのフィールドに登場したのは背にファンの翼を生やした青い『HERO』と炎の鬣を伸ばした赤い『HERO』。それぞれ対照的な2体だがその役割は似通っている。

 

「『HERO』……!」

 

「エアーマンの効果で『E・HEROシャドー・ミスト』を、ブレイズマンの効果で『置換融合』を手札に加える!更に装備魔法、『妖刀竹光』をエアーマンに装備し、『黄金色の竹光』を発動!フィールド上に『竹光』カードが存在する場合2枚ドロー!ドローした中にもう1枚だ。発動して2枚ドロー!」

 

コナミ 手札2→4→5

 

『HERO』モンスターを見て、憎々し気に目を鋭くして唇を噛む瑠那を無視し、急激なサーチとドローターボにより手札を増やすコナミ。

この『妖刀竹光』を利用したドローならば『マジカルシルクハット』による恩恵も受けられる。その為に採用されたカードだ。ビックリ箱のようなデッキだが、考え込まれて作成されている。

 

「オレは『E・HEROシャドー・ミスト』を召喚!」

 

E・HEROシャドー・ミスト 攻撃力1000

 

召喚されし3体目の『HERO』。エアーマンとブレイズマンの影から霧がモウモウと立ち上がり、美しい艶を放つ青髪が靡く。黒い鎧を線の細い身体に身に纏った闇属性の英雄が現れる。

 

「オレは2体のモンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築!我が戦いはここから始まる!白き翼に望みを託せ、現れろ!No.39!エクシーズ召喚!希望皇ホープ!」

 

No.39希望皇ホープ 攻撃力2500

 

コナミの背後に星の浮かぶ渦が巻き起こり、デュエルディスクから排出された黒枠のカードを掴み取ってプレートに叩きつける。

瞬間、フィールドに希望の咆哮を上げ、純白の翼を広げた皇が現れる。希望皇ホープ。

コナミの持つエクシーズモンスターにして『No.』の名を持つこのカードの登場に瑠那が下唇を噛み締める。

 

「出て来たわね……!貴方のエースモンスター……!」

 

「『妖刀竹光』の効果で『黄金色の竹光』をサーチ、オレはカードを2枚伏せ、ターンエンドだ」

 

コナミ LP4000

フィールド『No.39希望皇ホープ』(攻撃表示)『E・HEROブレイズマン』(守備表示)

セット2

Pゾーン『慧眼の魔術師』『刻剣の魔術師』

手札3

 

フィールドには攻撃を2回まで封じるホープにセットカードが2枚、そして残る手札も3枚。上々たる出だしだ。この布陣をどう突破するか、コナミは警戒と興味を抱きながら瑠那を観察する。その際、胸に目がいってしまうのはどうしようも無い。

 

「私のターン、ドロー!私は『星因士ウヌク』を召喚!」

 

星因士ウヌク 攻撃力1800

 

瑠那が召喚したのは白い鎧に金色の装飾を施した星の騎士。その腰からは蛇の尾のようなものが伸びており、見た目やそのモチーフは北斗の扱う『セイクリッド』モンスターと似通う点がある。

 

「ウヌクの召喚時効果により、デッキからウヌク以外の『テラナイト』を墓地に送る。私は『星因士デネブ』を墓地に送る。そして速攻魔法、『天架ける星因士』を発動!ウヌクを対象に、デッキから対象とカード名の異なる『テラナイト』を特殊召喚する!来て!『星因士ベガ』!」

 

星因士ベガ 守備力1600

 

次に瑠那が特殊召喚したカードはこと座の『テラナイト』。七夕の織姫を現すかの如くその姿には女性的なしなやかさがある。

 

「そして対象になったウヌクをデッキに戻し、特殊召喚したベガの効果!手札からベガ以外の『テラナイト』を特殊召喚する!『星因士アルタイル』を特殊召喚!」

 

星因士アルタイル 攻撃力1700

 

光輝く青き翼を広げ、わし座の『テラナイト』が上空を飛翔する。織姫星の導きにより現れる彦星。となると次に登場する『テラナイト』は当然決まっている。

瑠那はその形の良い唇で薄い笑みを作り、右手を振るう。

 

「アルタイルが特殊召喚した場合、墓地のアルタイル以外の『テラナイト』を守備表示で特殊召喚する!『星因士デネブ』!」

 

星因士デネブ 攻撃力1500

 

織姫、彦星が登場したならばその星を紡ぐのははくちょう座の『テラナイト』。真っ白な身体に白と金の鎧兜を纏い、右手で振るいしは螺旋の刃持つレイピア。8枚4対の翼を広げ、今、3体で夏の大三角形を構成する。

 

「デネブの特殊召喚時効果により、デッキの『星因士アルタイル』をサーチするわ。そして3体でオーバーレイ・ネットワークを構築!エクシーズ召喚!『星輝士デルタテロス』!」

 

星輝士デルタテロス 攻撃力2500→3100

 

瑠那の背後に銀河を散りばめた渦が広がり、デネブ、アルタイル、ベガが三角形の配置となって飛び込む。金色に光る三角形のゲートより飛び出したのは3体の力を合わせ、新たな力を持った『テラナイト』。

左腕にはデネブ、アルタイル、ベガの周りを回転していたリング、右腕には剣を持ち、背には黄金色の翼が輝き、尾のように広がった羽の3つで逆三角を作り上げている。

 

「ORUを持ったこのカードがモンスターゾーンに存在する限り、私がモンスターを召喚、特殊召喚した時、貴方はモンスター、魔法、罠の効果を発動出来無いわ。更にアクションフィールド、『星守る結界』は『テラナイト』エクシーズモンスターの攻守をORUの数×200アップさせる!これでデルタテロスの攻撃力は3100、そしてデルタテロスのORUを1つ取り除き、ホープを対象として破壊する!」

 

「ッ!墓地に送られたシャドー・ミストの効果により、デッキから『E・HEROプリズマー』をサーチ!」

 

デルタテロスが剣を振るうと同時にホープの足場に三角形の結界が現れ、そこから上る光がホープを貫き、破壊する。

しかしホープの影がコナミへと伸び、黒い霧がコナミのデッキから1枚のカードを渡す。フィールドのカードを破壊する効果。成程、単純ながらも強力だ。戦闘では滅法強いホープも効果で処理されては堪らない。

 

「さぁ、バトルよ!デルタテロスでブレイズマンを攻撃!」

 

「罠発動!『マジカルシルクハット』!デッキのモンスター以外をセットして特殊召喚!ブレイズマンもセット状態となり、シャッフルする!」

 

ここで発動されたのはコナミの新たなる武器。彼の戦略の幅を大きく広げる1枚の罠。その発動と共にコナミのフィールドにシルクハットが3つ現れ、ブレイズマンをすっぽり覆ってシャッフルする。運任せだが攻防自在に変化するコナミのデュエルにぴったりのカード。その登場に瑠那は迷う事無くデルタテロスに指示を出す。

 

「右のシルクハットよ!」

 

「残念、破壊されたのは『光の護封霊剣』だ」

 

しかし、シルクハットの中身は金色に輝く3本の剣。外れを引いた事でブレイズマンは無事となる。しかも『光の護封霊剣』は墓地から除外する事で相手のダイレクトアタックから身を守る効果がある。

 

「くっ……流石と言った所かしら……私はカードを3枚伏せてターンエンド!」

 

瑠那 LP4000

フィールド『星輝士デルタテロス』(攻撃表示)

セット3

手札1

 

「オレのターン、ドロー!勘違いしたままか、ならばデュエルで証明しようか。『慧眼の魔術師』を破壊し、『竜穴の魔術師』をセッティング!ペンデュラム召喚!『E・HEROプリズマー』!『慧眼の魔術師』!」

 

E・HEROプリズマー 攻撃力1700

 

慧眼の魔術師 攻撃力1500

 

振り子の軌道を描き、水晶の輝きを放つ多面体の戦士が登場する。『HERO』デッキの他、融合を軸とするデッキでも役立つカードだ。プリズマーは自らの鏡面を閃かせ、淡い光に包まれる。

 

「プリズマーの効果!エクストラデッキの『E・HEROジ・アース』を公開し、素材である『E・HEROオーシャン』を墓地に送り、その名を得る!リフレクト・チェンジ!更にブレイズマンの効果でデッキの『E・HEROフォレストマン』を墓地に送り、属性と好守を得る!」

 

E・HEROブレイズマン 守備力1800→2000

 

度重なる墓地肥やし、デッキ圧縮が冴え渡る。一見無茶苦茶に詰め込んだ化のようなデッキだが充分に実戦レベル。そしてコナミが扱う事によってそのレベルは格段に跳ね上がる。

 

「さぁお次はこれだ!魔法カード、『置換融合』!」

 

「『融合』……!何故貴方が……!」

 

コナミが発動したこのカードはルール上『融合』として扱うカードだ。その範囲はフィールド内と狭くなっているもののペンデュラムとは相性が良く、墓地から除外、同じく墓地の融合モンスターをエクストラデッキに戻し、1枚ドローする、コナミ向きのカードと言える。

『E・HERO』の融合体は融合召喚でしか召喚出来無い為、エクストラデッキに戻すのも頷ける。この『融合』の発動に瑠那は苦虫を噛み潰したかのような表情でコナミを睨む。一体どうしたと言うのだろうか、疑問に思うコナミだが今はデュエルの最中、その答えはデュエルを通して見つけるのみ。

 

「オーシャンと化したプリズマーと地属性のブレイズマン融合!融合召喚!『E・HEROガイア』!」

 

E・HEROガイア 攻撃力2200

 

大地を裂いて現れたるは地属性を司る漆黒の巨人。身体中に散りばめた紅玉が鈍い光を放ち、デルタテロスよりその黄金の輝きを奪う。

 

「ガイアの融合召喚成功時、デルタテロスを対象とし、その効果を発動!デルタテロスの攻撃力を半分にし、その数値をガイアに加える!」

 

「無駄よ!デルタテロスを墓地へ送り、カウンター罠発動!『神星なる因子』!その発動を無効にして破壊!更に私は1枚ドローする!」

 

瑠那 手札1→2

 

「そしてデルタテロスの第3の効果を発動!フィールドから墓地へ送られた場合、デッキから『星因士デネブ』を特殊召喚!」

 

星因士デネブ 攻撃力1500

 

「デネブの効果でデッキから『星因士ウヌク』をサーチ!」

 

「こちらの手を防いだ上で手数を増やすか……!ならばオレも墓地の『置換融合』を除外し、ガイアをエクストラデッキに戻し、1枚ドロー!」

 

コナミ 手札3→4

 

ガイアの効果を無効にした上で代わりのモンスターを特殊召喚し、サーチまで行う瑠那。しかしコナミも負ける訳にはいかない。同じく手数を増やし、次に備える。

 

「バトル!『慧眼の魔術師』で攻撃!」

 

「罠発動!『フローラル・シールド』!攻撃を無効にし、1枚ドロー!」

 

瑠那 手札3→4

 

「カードを2枚伏せてターンエンドだ!」

 

コナミ LP4000

フィールド『慧眼の魔術師』(攻撃表示)

セット3

Pゾーン『竜穴の魔術師』『刻剣の魔術師』

手札2

 

「生温い……以前の貴方ならば無理矢理にでもデルタテロスを破壊してバーンダメージを与えた上で複数のエクシーズモンスターを並べて攻撃した筈でしょう!」

 

「何それ怖い」

 

「スタンダード次元に来て腑抜けてしまった。記憶の失ってからの貴方はまるで別人よ!」

 

「オレは悪くねぇっ!」

 

真剣である筈のやり取りなのにコナミの受け答えのせいでシュールと化す会話。酷い温度差である。首を左右に振って叫ぶ瑠那を見て、観客席のユートは『腑抜けた方が平和な気がする』と天を仰ぐ。果たして瑠那の言うコナミはどれ程の殺意の塊なのだろうか。少し気になる所である。

 

「私のターン、ドロー!貴方に教わったデュエルで目を覚ましてあげるわ!永続罠、『神星なる波動』を発動!その効果により、手札のアルタイルを特殊召喚するわ!」

 

「ならば手札の『増殖するG』を切る!」

 

星因士アルタイル 攻撃力1700

 

コナミ 手札1→2

 

『テラナイト』の高速展開に対抗して強力なドローソースを発動するコナミ。『増殖するG』は手札から捨てる事で相手が特殊召喚に成功する度にドローする効果を持っている。

これにより瑠那が展開すればする程コナミは大量のドローカードを得られると言う事だ。

コナミのドロー運はとんでもなく高い。確実に目的とするカード、或いはこちらの布陣を崩すカードを引き抜くだろう。だが瑠那とて譲る訳にはいかない。崩せぬ布陣を敷くまでだ。

 

「アルタイルの効果で墓地のデネブ蘇生!」

 

星因士デネブ 守備力1000

 

コナミ 手札2→3

 

「デネブの効果でベガサーチ!そして3体のモンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築!エクシーズ召喚!『星輝士トライヴェール』!」

 

星輝士トライヴェール 攻撃力2100→2700

 

コナミ 手札3→4

 

3体の『テラナイト』が三角形を描き、1体の『ステラナイト』となってフィールドに顕現する。左手に光の剣を握り、右手に3つのリングを重ね、線を繋ぐ事で盾を構成したデルタテロスと似たエクシーズモンスター。

 

「トライヴェールがエクシーズ召喚に成功した場合、このカード以外のフィールドのカード全てを持ち主の手札に戻す!」

 

「ッ!全てだと……!?インチキ効果め……!」

 

コナミ 手札4→10

 

「貴方に言われたく無いわね!トライヴェールのORUを1つ取り除き、貴方の手札をランダムに捨てるわ!」

 

「刻剣が……!」

 

全体バウンスに加えハンデス効果。凶悪な効果を内蔵したエクシーズモンスターの登場に思わず戦慄するコナミ。一応トライヴェールにはエクシーズ召喚したターン、プレイヤーは『テラナイト』モンスター以外の特殊召喚を封じるのだがそんなものはデメリットには入らない。

しかも優秀な効果を持つ『刻剣の魔術師』が墓地に送られてしまった。

 

コナミ 手札10→9

 

「まだよ!私はまだ通常召喚を行っていない!『星因士ベガ』を召喚!」

 

星因士ベガ 攻撃力1200

 

「ベガの効果!手札の『星因士ウヌク』を特殊召喚!」

 

星因士ウヌク 攻撃力1800

 

コナミ 手札9→10

 

「ウヌクの効果で『星因士シリウス』を墓地に送り、2体のモンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築!エクシーズ召喚!『煉獄の騎士ヴァトライムス』!」

 

煉獄の騎士ヴァトライムス 攻撃2600→3000

 

コナミ 手札10→11

 

星の渦より現れたるは光を飲み込む闇の騎士。下半身は黒く重厚な鉄の馬のもの、身体中から薄紫の羽を何枚も伸ばし、その顔は騎士と言うより修道女。ねねの扱う『エルシャドール・シェキナーガ』やアノマリリスと同じものとなっている。

今までの『テラナイト』とは完全に方向性が違い、まるでキメラのように継ぎ接ぎで禍々しく、不気味なモンスターが現れた。

 

「魔法カード、『エクシーズ・トレジャー』!2枚ドロー!」

 

瑠那 手札3→5

 

「魔法カード、『暗黒界の取引』を発動。1枚ドローし、1枚捨てる。さぁ、バトルといきましょう!ヴァトライムスでダイレクトアタック!」

 

「防がせてもらう!墓地の『光の護封霊剣』を除外し、効果発動!このターン、相手モンスターは直接攻撃出来ない!」

 

闇の騎士が駆け、呪詛を呟き、暗黒を濃縮した球を撃つも、コナミの墓地より浮上した黄金の煌めきを見せる剣が防ぐ。防御される事は分かっていたが、使わせなければ前に進めない。

 

「メインフェイズ2、私はトライヴェールでオーバーレイ・ネットワークを再構築!ランクアップ・エクシーズ・チェンジ!エクシーズ召喚!『星輝士セイクリッド・ダイヤ』!!」

 

星輝士セイクリッド・ダイヤ 攻撃力2700→3300

 

コナミ 手札11→12

 

次なるエクシーズは星の渦に6つの点が出現し、光の線が結ばれていき、巨大な6角形のダイヤモンドを形成する。そしてその中より通り抜けたのは白亜の体躯を煌めかせ、銀河を散りばめた夜色の翼を翻した幻竜。

その気高き咆哮は天を震わせ、周りの木々を揺らす。その姿、そしてその名は北斗の操る切り札、『セイクリッド・トレミスM7』と幾つも相似点が見受けられる。

 

「私はカードを3枚伏せ、ターンエンド。こうなったら私の全てを出し切って貴方を倒す。荒っぽいけど、それが私達レジスタンスのデュエルでしょう?」

 

瑠那 LP4000

フィールド『星輝士セイクリッド・ダイヤ』(攻撃表示)『煉獄の騎士ヴァトライムス』(攻撃表示)

セット3

手札1

 

「ならばオレもデュエルで応えよう。オレのターン、ドロー!魔法カード、『暗黒界の取引』!魔法カード、『打ち出の小槌』!手札を交換。オレは『竜穴の魔術師』と『慧眼の魔術師』でペンデュラムスケールをセッティング!そして慧眼の効果で自身を破壊し、デッキの『曲芸の魔術師』をセッティング!これでレベル7から3のモンスターが同時に召喚可能!ペンデュラム召喚!『オッドアイズ・セイバー・ドラゴン』!『賤竜の魔術師』!『慧眼の魔術師』!」

 

オッドアイズ・セイバー・ドラゴン 攻撃力2800

 

賤竜の魔術師 攻撃力2100

 

慧眼の魔術師 攻撃力1500

 

コナミのフィールドを震撼させ、現れたる3体のモンスター。剣を背に負った白銀の竜。そしてその傍に仕える2体の『魔術師』モンスター。

先程までの『HERO』とは異なった空気を醸し出す3体に瑠那が警戒を深める。一体どう出て来るのか、見定めているようだ。

 

「まずは『賤竜の魔術師』の効果により、墓地の刻剣を手札に戻す!」

 

自身と相手モンスターを除外する効果を持つ『刻剣の魔術師』はどんなに強力なモンスターも対処出来る小回りの効くカードだ。

その効果によってセイクリッド・ダイヤを除外し、残るヴァトライムスに集中しようと思ったのだが……突如サルベージした刻剣が渦を巻いて消滅する。一体何が――?呆然とするコナミを尻目に、瑠那がクスリと艶のある笑みを溢す。

 

「残念だったわね。ORUを持つセイクリッド・ダイヤがモンスターゾーンに存在する限り、互いのプレイヤーはデッキからカードを墓地へは送れず、墓地から手札に戻るカードは除外されるわ」

 

「成程……これでは『E・HEROフォレストマン』も危険か……オレは『ジェット・シンクロン』を召喚!」

 

ジェット・シンクロン 攻撃力500

 

次にコナミが召喚したのは青と白のカラーリングが特徴的なエンジンを模したモンスター。背部から火を吹いて推進し、レベル1のチューナーが降り立つ。

 

「レベル4の『慧眼の魔術師』にレベル1の『ジェット・シンクロン』をチューニング!シンクロ召喚!『ジェット・ウォリアー』!」

 

ジェット・ウォリアー 攻撃力2100

 

空気を引き裂くような激しい音を響かせ、黒い戦闘機が木々を倒し、コナミのフィールドに着陸する。その際に空中で変形を繰り広げ、人型の機械戦士となってその鋭き刃のような脚で土を抉り取る。

重厚な黒のボディに似通わない軽快さを感じさせるシンクロモンスターだ。その効果も実に強力、コナミはその力によって逆転を狙う。

 

「シンクロ素材となった『ジェット・シンクロン』の効果でデッキから『ジャンク・コレクター』をサーチ!そして『ジェット・ウォリアー』の効果でセイクリッド・ダイヤをバウンス!」

 

「闇属性モンスターが効果を発動した時、セイクリッド・ダイヤのORUを1つ取り除き、その効果を無効にして破壊する!」

 

「闇属性……!?馬鹿な――!何を……っ!?」

 

『ジェット・ウォリアー』の属性は炎、セイクリッド・ダイヤの効果に適用する事は無いとコナミが動揺するがそれも束の間、突如『ジェット・ウォリアー』の影が這いだし『ジェット・ウォリアー』を飲み込んだのだ。これはつまり『ジェット・ウォリアー』の効果が無効化されたと言う事だろう。あり得ない展開に流石のコナミも勝鬨る。

 

「フフ、何が起こっているのか分からないって顔ね。貴方のそんな顔が見れるなんて思わなかったわ。答えてあげる。ヴァトライムスがモンスターゾーンに存在する限り、フィールド上の表側表示のモンスターの属性は闇に染まる!」

 

「何――!?つまりセイクリッド・ダイヤとヴァトライムスが存在する限り、オレのモンスターの効果は無効化されると言う事か……!?」

 

「そう言う事、ただしORUがある限りだけどね。攻撃力もダウンするわ」

 

星輝士セイクリッド・ダイヤ 攻撃力3300→3100

 

フィールド上のモンスター全てを闇属性に変化させるヴァトライムスと闇属性モンスターの効果を無効化するセイクリッド・ダイヤ。2体の『テラナイト』エクシーズによる強力なコンボによって次々とコナミの目論見が看破される。だがまだまだ、コナミの戦術は終わってなどいない。

 

「バトルで切り開く!」

 

「なら私は墓地の『仁王立ち』を除外し、攻撃をダイヤに絞るわ」

 

「誘っているのか?良いだろう!『オッドアイズ・セイバー・ドラゴン』でセイクリッド・ダイヤへ攻撃!」

 

「向かえ撃つ!行くわよ!セイクリッド・ダイヤ!」

 

互いに自らの竜に飛び乗り、騎乗するコナミと瑠那。とは言っても『オッドアイズ・セイバー・ドラゴン』は未だにコナミに心を開いていないのか、不服そうに喉を鳴らしているが。攻撃力はセイクリッド・ダイヤが上、無論コナミは無策では無い。両翼を広げ、天からこちらへと向かう竜へと迎撃の意志を現す。

 

「墓地の『スキル・サクセサー』を除外し、『オッドアイズ・セイバー・ドラゴン』の攻撃力を800アップする!」

 

オッドアイズ・セイバー・ドラゴン 攻撃力2800→3600

 

「こっちも罠発動!『鎖付き爆弾』!セイクリッド・ダイヤに装備し、攻撃力を500アップする!」

 

星輝士セイクリッド・ダイヤ 攻撃力3100→3600

 

「互角……!?ぐうっ……!?」

 

セイクリッド・ダイヤと『オッドアイズ・セイバー・ドラゴン』が大気を震わす熱戦を放ち、空中でせめぎ合って弾け飛ぶ。その威力を丸々内包したかのような余波が波紋となって広がって木々をなぎ倒し、結界を破壊して両者をも吹き飛ばす。互角の攻防、ダメージは入らないがその威力は凄まじい。

瑠那はリゲルによって守られていたが『オッドアイズ』に乗っていたコナミは大木にその身を打ち付けられてしまった。幸い大した怪我は無いみたいだが、無事に無言で立ち上がるこの男は一体何なのだろうか。

 

「流石ね。隼なら倒れていたわ」

 

「お前こそ相討ちに持ち込んでくれるとはな。オレはカードを2枚伏せてターンエンドだ」

 

コナミ LP4000

フィールド『賤竜の魔術師』(攻撃表示)

セット2

Pゾーン『竜穴の魔術師』『曲芸の魔術師』

手札5

 

未だに両者のLPは4000のまま、手に汗握る激しい闘い。LPに一切のダメージが入っていないと言うのに会場は火を灯したかのように盛り上がっている。

この状況を破るのは一体どちらか。観客は固唾を呑んで見守る。

 

「私のターン、ドロー!永続罠、『神星なる波動』を発動!効果で『星因士ベテルギウス』特殊召喚!」

 

星因士ベテルギウス 守備力1900

 

瑠那が特殊召喚した『テラナイト』はリゲルを鏡写しにしたかのようなモンスターだ。それも当然、このモンスターもリゲルと同じオリオン座の『テラナイト』なのだ。

 

「ベテルギウスの効果で自身を墓地に送り、墓地のデネブを手札に!そして『神星なる波動』を墓地へ送り、魔法カード、『マジック・プランター』発動!2枚ドローするわ!」

 

瑠那 手札1→3

 

「憶さず攻める!デネブを召喚!」

 

星因士デネブ 攻撃力1500

 

「この召喚時、手札から『幻蝶の刺客オオルリ』を特殊召喚!」

 

幻蝶の刺客オオルリ 守備力1700

 

「デネブの効果で3枚目のアルタイルをサーチ!魔法カード、『強欲で貪欲な壺』!」

 

瑠那 手札1→3

 

「そして2体でオーバーレイ・ネットワークを構築!エクシーズ召喚!『カチコチドラゴン』!」

 

カチコチドラゴン 攻撃力2100

 

大地を隆起させ、ダイヤモンドの身体を持つ竜が咆哮する。白銀の光沢を放つ『カチコチドラゴン』。その効果はモンスターを破壊した際、ORUを使い、追撃をかけるものだ。しかしコナミのモンスターは『賤竜の魔術師』。攻撃力は同じであり、相手はペンデュラムモンスター、墓地に送られない為、効果は発動出来ない。

 

「アクションマジック、『オーバー・ソード』!その効果により『カチコチドラゴン』の攻撃力を500上げる!」

 

カチコチドラゴン 攻撃力2100→2600

 

「バトルよ!『カチコチドラゴン』で『賤竜の魔術師』を攻撃!」

 

「罠発動!『マジカルシルクハット』!」

 

「またそれ――!?速攻魔法、『魔力の泉』!3枚ドローし、1枚捨てる!」

 

瑠那 手札2→5→4

 

「攻撃を中断し、メインフェイズ2、魔法カード、『精神操作』!賤竜のコントロールを奪い、墓地の『シャッフル・リボーン』を除外、賤竜をデッキへ戻してドロー!」

 

瑠那 手札3→4

 

「カードを1枚伏せターンエンドよ!『シャッフル・リボーン』の効果で手札を除外」

 

瑠那 LP4000

フィールド『煉獄の騎士ヴァトライムス』(攻撃表示)『カチコチドラゴン』(守備表示)

セット2

手札2

 

「フ、面白くなって来た!オレのターン、ドロー!魔法カード、『暗黒界の取引』!そしてペンデュラム召喚!『慧眼の魔術師』!『竜穴の魔術師』!『ジャンク・コレクター』!」

 

慧眼の魔術師 攻撃力1500

 

竜穴の魔術師 守備力2700

 

ジャンク・コレクター 守備力2200

 

強力無比なペンデュラム召喚。大量に特殊召喚されるモンスターを見て、瑠那はすかさず右腕を突き出し、その対策を披露する。

 

「この瞬間、ヴァトライムスのORU1つと手札1枚を捨て、その効果を発動!エクストラデッキのトライヴェールをヴァトライムスに重ね、エクシーズ召喚する!」

 

「相手ターンでの全体バウンスか!だがオレの方が1枚上手だったようだな!墓地の『ブレイクスルー・スキル』を除外し、ヴァトライムスの効果を無効にする!」

 

「――ッ!『マジカルシルクハット』の時ね!」

 

ヴァトライムスの再構築効果は墓地に7種の『テラナイト』があれば相手ターンでも発動出来るものだ。それを使ってエクシーズ召喚すればペンデュラム召喚を行った後のコナミには甚大な被害だっただろう。しかしコナミとてそう簡単には通さない。『マジカルシルクハット』で墓地に送った『ブレイクスルー・スキル』で見事回避した。

 

「やっぱり強い――!けど、倒せない程じゃない……!」

 

「言ってくれる。手札のアクションカードを捨て、『ジェット・シンクロン』を特殊召喚!」

 

ジェット・シンクロン 守備力0

 

「レベル7の『竜穴の魔術師』にレベル1の『ジェット・シンクロン』をチューニング!星海を切り裂く一筋の閃光よ!!魂を震わし世界に轟け!!シンクロ召喚!!『閃光竜スターダスト』!!」

 

閃光竜スターダスト 攻撃力2500

 

『ジェット・シンクロン』の身体が弾け飛び、1つのリングとなって『竜穴の魔術師』を包み込み、共に8つの星に変化して竜の星座を空に描く。星座は黄金の光を灯して浮かび上がり、煌々と輝く星屑を纏う竜を生み出す。歓喜の咆哮を上げる竜の登場に会場の全員が言葉を無くし、その美しい姿に見惚れる。

 

「そして『刻剣の魔術師』を召喚!」

 

刻剣の魔術師 攻撃力1400

 

フィールドに見参する片刃の剣を持った少年『魔術師』。その剣で刻むものは時、時間を操るその力は使い勝手も良く強力だ。火力が多いとは言えないコナミのデッキでは頼りになるモンスターだ。

 

「刻剣の効果発動!ヴァトライムスとこのカードを除外!」

 

「罠カード、『もの忘れ』!その効果を無効にし、守備表示にする!そんな半端なものじゃ揺るがない!」

 

「半端なもので倒せないなら、豪快にいかせて貰おう!墓地の通常罠と『ジャンク・コレクター』を除外し、その効果を発動する!オレが発動するのものは――『エレメンタルバースト』ッ!!」

 

「な――、そうか……!発動するだけだからコストは支払わないのね……!ならチェーンして罠発動!『威嚇する咆哮』!」

 

「ぶち撒けろ!バーストッ!!」

 

圧倒的火力。大地が捲れ上がり、噴出した火炎を帯びた岩石が豪風と落雷と共に瑠那のフィールドに降りかかる。激しい轟音を立てる天災はヴァトライムスと『カチコチドラゴン』を粉砕し、破壊の限りを尽くす。

これこそがコナミの新たなる武器。『エレメンタルバースト』。その効果は火、水、風、地属性のモンスターを1体ずつリリースして相手フィールドのカードを全て破壊すると言う。『サンダーボルト』と『ハーピィの羽帚』を合わせたような豪快なカードだ。

確かに属性多彩な『E・HERO』と『魔術師』を合わせたコナミのデッキなら正規発動も出来る。ペンデュラムによってリカバリーも効く。

だがコナミの狙いしロマンはこれ。『マジカルシルクハット』で落とし、『ジャンク・コレクター』でぶち撒ける。それによって自身のデッキの火力の低さを補おうと考えたのだ。

 

「粉砕!玉砕!大喝采!カードを1枚伏せ、ターンエンドだ!」

 

コナミ LP4000

フィールド『閃光竜スターダスト』(攻撃表示)『慧眼の魔術師』(攻撃表示)『刻剣の魔術師』(守備表示)

セット1

Pゾーン『竜穴の魔術師』『曲芸の魔術師』

手札1

 

「くっ!私のターン、ドロー!こんなデュエル……!」

 

知らない。心からそう叫びたい気持ちを抑え、歯軋りを鳴らす瑠那。彼女の知っているコナミとは似ているようで全く違うデュエル。

瑠那の知るコナミのデュエルは大胆にして豪快。レジスタンスと同じく、ギリギリまで諦めず、堪えて堪えて、圧倒的逆境から全てを破壊し、喰らい尽くす不屈のデュエル。突然にして死神の鎌が首に当てられている不気味な現象が起こるのだ。最初から殺意全開、火力全開で1ターンキルしてくる事も多々あるが。

しかし彼は似通っているものの、変幻自在、予想もつかぬビックリ箱のようなデュエル。何が起こるか分からない。そんなドキドキ、ハラハラ感がある。

次は何が来るのか、どんなカードが登場するかと驚きの連続だ。

気がつけば――彼女はそんな彼のデュエルに、飲まれていた――。

 

「フフッ、良いわ!なら私も全力で、貴方を倒す!見せて上げる!私のデュエルを!」

 

「2回戦でこれを使うとは思っても無かったな……!オレも全開でいく!」

 

「さぁ、行くわ!かっとビングよ!私!『星因士アルタイル』を召喚!」

 

星因士アルタイル 攻撃力1700

 

「アルタイルの効果でベガ蘇生!」

 

星因士ベガ 守備力1600

 

「ベガの効果!手札の『星因士シャム』を特殊召喚!」

 

星因士シャム 守備力1800

 

フィールドに集うわし座、こと座、矢座の3体の『テラナイト』。金色の輝きを放ち、白銀の鎧を纏いし高貴なモンスターをここまで扱うのは流石と言えよう。3角形の位置する因子を束ね、瑠那は一筋の輝士を放つ。

 

「シャムの効果!相手に1000ダメージを与える!」

 

コナミ LP4000→3000

 

「3体のモンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築!エクシーズ召喚!『星輝士トライヴェール』!」

 

星輝士トライヴェール 攻撃力2100→2700

 

3体のモンスターを素材に現れるトライヴェール。その効果によりコナミのフィールドのカードが全て弾き飛ばされる。コナミの扱った『エレメンタルバースト』のバウンス版、再利用を許す事になるが『閃光竜スターダスト』を有するコナミには実に効果的だ。なす術も無く流れを奪われてしまう。

 

「バトルよ!トライヴェールでダイレクトアタック!」

 

コナミ LP3000→300

 

3本の光がコナミの周囲で回転し、トライヴェールが剣を振るった瞬間に光が上り、コナミの全身を焦がす。多大なるダメージを受けたコナミは苦悶の表情で声を抑え、フラフラと千鳥足で何とか踏み止まる。

残るLPは300。1ターンで一気に追い込まれたが何――まだ負けた訳では無い。

 

「私はトライヴェールのORUを1つ取り除き、貴方の手札を1枚捨てる」

 

コナミ 手札6→5

 

「私はこれでターンエンド。どう来るかしら?」

 

瑠那 LP4000

フィールド『星輝士トライヴェール』(攻撃表示)

手札0

 

強い。コナミは感嘆の息を漏らし、薄い笑みを浮かべながらも率直にそう思う。

チャンピオンシップに出る前の彼なら負けていただろう。だがコナミは成長した。この大会に向け、何人ものデュエリストと出会い、闘い、その想いに触れてきた。その度にもっともっとデュエルをしたいと奮起したものである。

やはり、この大会に出場して良かった。今、この瞬間にもデュエルをして、強くなっていく。楽しくて堪らない。だからこそ、このデュエルに決着をつけよう。

新たなデュエルと出会う為に――まだ見ぬ強敵と、闘う為に。

 

「負けられないな!限界を越える!かっとビングだ!オレ!ドロー!」

 

引き抜かれるカード。虹色に描くアーク。未だ終わらぬ挑戦を続け、コナミは未来を切り開く。

 

「オレは魔法カード、『暗黒界の取引』!手札を交換し、『竜穴の魔術師』と『慧眼の魔術師』でペンデュラムスケールをセッティング!慧眼を破壊し、『竜脈の魔術師』をセッティング!ペンデュラム召喚!『曲芸の魔術師』!『竜穴の魔術師』!『刻剣の魔術師』!『慧眼の魔術師』!世にも珍しい二色の眼を持つ龍!『オッドアイズ・ドラゴン』!!」

 

オッドアイズ・ドラゴン 攻撃力2500

 

刻剣の魔術師 攻撃力1400

 

慧眼の魔術師 攻撃力1500

 

曲芸の魔術師 守備力2300

 

竜穴の魔術師 守備力2700

 

5体同時召喚。色鮮やかな5本の光がスタジアム全体を包み込み、コナミのモンスターである『オッドアイズ・ドラゴン』とそれを囲むように4体の個性豊かな『魔術師』が集う。

このカード達が今のコナミを明確に現すモンスターと言えよう。ペンデュラムモンスター、倒されても倒されても舞い戻る、振り子のようなモンスター達。どれだけ打ちのめされても、どれだけ逆境に陥っても、笑みを引き連れ立ち上がる。それがコナミのデュエルだ。

 

「……気をつけなさい。隼は、私よりもずっと強い」

 

「……黒咲 隼、か……いずれ奴とも闘いたいが――それは、オレの役目じゃない」

 

「……榊 遊矢君の事?確かに彼は強いけど、隼には――」

 

「黒咲に伝えておけ、遊矢は、面白い」

 

不意を突かれるような言葉。確かに黒咲 隼は強い。この大会でトップレベル、いや、最強ともいって良い。瑠那は良く知っているし、コナミとてそうだろう。

“強さ”では、榊 遊矢は黒咲 隼に劣るかもしれない。だが、デュエルと言うのは“強さ”だけで決まる単純なものでは無い。だからこそ面白くて、そしてそんな遊矢なら――。

 

「あぁ、だから私は負けたのね――」

 

「幸せだと思う事が幸せのように、負けると思った瞬間、負けるんだ。勝つと言うならかかって来い。オレは何時でも受けて立つ」

 

「フフ、本当に、あの人みたい――」

 

「――終わらせようか、刻剣とトライヴェールを除外し、バトル!全てのモンスターで攻撃!スパイラル――フレイムッ!!」

 

瑠那 LP4000→0

 

巨大な炎が渦巻き、瑠那を飲み込む。2回戦、最終試合――勝者は、コナミ。

 

――――――

 

「待っていた。まずは3回戦出場おめでとうと言うべきかな?」

 

選手入場入口にて、デュエルを終え、遊矢達の元へと帰ろうとするコナミへと語りかける男が1人、壁に背を預けていた。

鮮やかな銀髪に赤いフレームの眼鏡の奥に潜む鋭い眼。首に巻かれた赤のマフラーはユラユラと風に揺れている。

赤馬 零児。レオ・コーポレーションの若き社長にして、LDS最強のデュエリストが今再び、コナミの前に現れた。

 

「赤馬か……」

 

突然目の前に登場した珍しき訪問者を前にして、コナミは静かに、だが嬉しそうに呟く。それもその筈、コナミがこの大会に出場した理由には、この天才デュエリストとの再戦も含まれているのだ。

前回の中断では2人とも納得は出来ていない。ここで決着をつけるのかと、コナミがデュエルディスクを起動しようとするが。

 

「言っておくが、私はこの大会に出場しない」

 

「何……だと……!?」

 

降りかかる衝撃の事実、再戦と言う希望を与えられ、それを奪われると言うファンサービスを受けてコナミは愕然とした表情で絶望する。

 

「決着は舞網チャンピオンシップって言ったじゃないですかやだー」

 

「あれは嘘だ」

 

それでも納得出来ないコナミは零児の肩を掴んでガクガクと揺するが無情にも切り捨てられる。

嘘だとしたらどれだけ時間を置いているのだろう。完全に踊らされている。

 

「フ、悔しいだろうな。まぁ本当は忙しくて出られなくなってしまったと言う訳だ。一応私もプロだからな、それでお詫びとしてこれを渡しに来た」

 

「これは……カードか……許してくださいってかぁ?許してやるよぉ!」

 

零児より差し出される2枚のカードを受け取り、新たな、見た事も無いカードを手に入れた事により「わーい、わーい!」と幼い子供のようにはしゃぐコナミ。

現金な奴である。強い力を放つカードをデッキに組み込み、コナミはキリッとした表情で零児に向き合う。

 

「返さないよ?」

 

「随分と現金だな、まぁ良い、塩は送った。それで本題だが――」

 

「ほう、赤馬 零児もいるのか――」

 

「「――!?」」

 

それは、突然の事だった。コナミの背後に、まるで空間と言う名の壁を裂くように、白いフードとマントを羽織り、白い仮面を被った少年が現れ、零児の言葉を遮る。

音も気配も無く、そして何よりコナミに気づかれずに突如として現れた謎の男。その第3者による介入にコナミと零児が思わず振り返り、両者共に警戒を露にしてデュエルディスクを構える。一触即発の緊張感を走らせる2人を見て、やれやれと肩を竦める男。

どうやら闘志は無いようだが――それでも、薄気味の悪いこの男に対し、警戒は解けない。

何よりコナミのデュエリストとしての本能が危険信号を鳴らしている。もしかしたらこの男は、あの白コナミよりも――。

 

「何者だ。アカデミアの手の者か?何の用だ?」

 

そこで零児が漸くと言った様子で声を絞り出す。見れば彼の額からも大粒の汗が伝っている。あの赤馬 零児ですらも焦りを覚える事なのだ。そうさせるのはこの男の存在か――。

男は零児の問いかけにフ、と笑い。

 

「お前でも焦るか、まぁ良い。何者かは言えないが――そうだな、確かにアカデミアの者と言えばそうなる。何の用か、と言うのは知らせに来ただけだよ」

 

「……何をだ……?」

 

「舞網チャンピオンシップ――ルール変更のお知らせだ」

 

「何――!?」

 

「ルール変更点は単純、大会が暫く経ったその時、私達アカデミアより参加者を送ろう。そのデュエリストを倒せば君達の勝ち、逆に君達が倒れれば負け、そう、この街は――」

 

「戦場となる……!」

 

現れた謎の男から送られるルール変更。その挑戦状とも言える知らせに零児は内心で舌打ちを鳴らしながらも冷静を装う。少し不味い事になった。そもそもこの大会、アカデミアに対抗する戦力を選別する為に開かれたものだ。

だがその前に狙い済ましたかのように先手を打たれた。

だが今からでも遅くは無い。この男を捕らえ、情報を引き出せば――。

 

「さて、私は帰るとしよう」

 

「させるとでも?」

 

「……出来ないさ、今のお前達では、束になっても我等には勝てん」

 

ぐにゃり、男の言葉と共に背後に黒い渦が突如発生し、男の身体をすっぽりと覆い尽くす。先程の登場もこのせいだろう。コナミと零児が目を見開き、動揺した瞬間を狙い、男はフ、と小さな冷笑を放ちながらその場から溶けるように消えていく。

 

「さらばだ赤馬 零児そして――コナミ」

 

「ッ!?」

 

その言葉を最後に、男は消える。後に残されたのは拭えぬ不快感。そしてコナミは、仮面の男に言いしれぬ感覚を抱く。

怒りとも、悲しみとも異なる感覚。まるで喉に魚の骨が刺さったような気持ち悪さ。それでも――コナミは歩みを止めない。まだ見ぬ強敵を思い浮かべ――闘い続ける。

 

「所で、この間、君がLDSにやって来た時に割ったガラス代等だが――」

 

コナミは逃げた。

 

 




人物紹介7

瑠那
所属 レジスタンス
ユートや黒咲さんと共にエクシーズ次元出身のレジスタンスのデュエリスト。
漫画ZEXALのオリジナルキャラでおっぱいが大きい。本来はデュエルは得意分野では無く、レジスタンスでは主に機械類の開発を行っていた。
LDSでは潜入調査と社長を誘拐しようとしたが、ある日、黒咲さんが社長に連れられLDSに来て「わり、バレちったわ」的な事を言ったので頓挫。その後黒咲さんは腹パンされた。
ユートと同じくレジスタンス内では比較的常識人だが、玉にボケるので侮れない。
自ら月からの使者を名乗るロマンチスト。ユートがいない今、黒咲さんの暴走に頭を悩ませている。因みに黒いのは行方不明。逆に怖い。
使用デッキは『テラナイト』。エースカードは『カチコチドラゴン』。

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