遊戯王ARC―V TAG FORCE VS   作:鉄豆腐

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お待たせして申し訳ありません。言い訳がましいですが、少しばかり風邪をひいてしまってスマホを持つのも辛かった次第です。
皆様も風や熱中症にはお気をつけて下さい。


第52話 今すっごくワクワクしてる

舞網チャンピオンシップ、3回戦。1回戦、2回戦とは違い、そのルールは大きく異なる。まずはその舞台。

3回戦はスタジアム内では無く、このスタジアム周辺の市街がデュエルフィールドとなる。当然、アクションフィールドを展開して、だ。

使用されるアクションフィールドは『ワンダー・カルテット』。火山、氷山、遺跡、密林の4つの領域を持つフィールドだ。このフィールドで散布されるのはアクションカードだけでは無い。

何と、LDSが独自に開発したペンデュラムカードも含まれていると言うのだ。参加者はこのペンデュラムカードを最低2枚所持せねばデュエルを行えず、また、このカードを賭けてのアンティデュエルをする。

負けた者も再び2枚拾えばデュエルが可能となり、制限時間までにより多くのペンデュラムカードを奪い取った上位の者達のみが4回戦に進む。

ルールはバトルロイヤル、これは同塾の者も同じだ。既に行われているデュエルに乱入すれば、ハンディとして乱入ペナルティ、つまり2000ポイントのダメージを受ける。

制限時間は24時間、何と1日丸々使っての大混戦である。

 

「赤馬の奴がこんな無茶苦茶な事を考えるとはな」

 

「面白いじゃないか、俺、今すっごいワクワクしてるよ」

 

『何、君達より無茶苦茶ではないだろう』

 

デュエルフィールド、火山に面した選手入口にて、2人、いや、3人のデュエリストがデュエル開始の宣言を今か今かと待ちわびていた。

彼等の所属する塾は見る者全てを魅了し、笑顔にさせるエンターテイメントを信条とする、エンタメデュエルを学ぶ遊勝塾。尤も、1人は塾に所属していないが。

星のマークを描いたゴーグルを頭に装着し、舞網第2中学の制服を肩にかけ、カーゴパンツと動きやすさを重視した姿で屈伸するのは榊 遊矢。この大会で注目されている期待のデュエリストだ。

その隣で薄く笑い、「そうだな」と返事する少年はコナミ。赤い帽子とその上に装着したゴーグルがトレードマークであり、遊矢と同じく肩から赤いジャケットをかけている。

同門であり彼等は友達であり、ライバルでもある。だが彼等の胸中には今すぐ闘おうとする剣呑な空気は無い。

そして遊矢の隣でフワフワと浮かぶ、跳ねた前髪にボロボロに草臥れたシャツとネクタイ、黒いマントを纏い、半透明になっている、遊矢と似た顔立ちの少年はユート。エクシーズ次元のレジスタンスに所属するデュエリストだ。

 

「コナミは何処へ行く?俺はまず火山エリアを回ってから遺跡エリアに行こうと思ってるんだけど」

 

「オレは氷山エリアだな、他の場所は今まで行った事がある。遊矢は遺跡エリアか……多分7枚のペンデュラムカードが眠ってるぞ、あそこには」

 

『願いを叶えるドラゴンが出そうだな』

 

熱いマグマを噴出させる火山とは対照的に、落ち着き払い談笑する3人。もうすぐ試合が始まると言うのに、緊張感は無く、極めて自然体だ。

他の出場者が敵意の視線を送ってもお構い無し、ただ純粋に、デュエルの事だけを考えている。

そんな彼等の待つ入口に設置されたスピーカーより、ニコ・スマイリーの声が放たれる。

 

『お待たせしました!これより舞網チャンピオンシップ3回戦!バトルロイヤルを始めます!さぁ、皆様方、口上を謳い上げましょう!』

 

ニコの司会と共に、スタジアム内で見守る観客達、そして密林エリアの入口で勝鬨や暗次達が勢い良く口上を言い放つ。

 

『戦いの殿堂に集いしデュエリスト達が!』

 

次に口上を紡ぐのは氷山エリアの入口にて、右腕を天へ突き上げる、柚子や権現坂、日影や月影達。

 

『モンスターと地を蹴り、宙を舞い!』

 

お次は遺跡エリアのデュエリスト。目を閉じ、静かに待つ黒咲以外の全員、九庵堂達が高らかに口上を謳う。

 

『フィールド内を駆け巡る!』

 

そして最後は火山エリアで沸々と闘志を燃やすデュエリスト。コナミと遊矢が先頭に立って、ニヤリと笑い、躍り出る。

 

『見よ、これぞデュエルの最強進化形!』

 

『アクショーン……』

 

『デュエルッ!!』

 

ニコに続く形で会場の観客達、そして選手達が一体となってデュエル開始の宣言を上げる。入口より雪崩のようにフィールドへ流れ込むデュエリスト達。

光漏れる道へと駆けていく中--最後まで入口に残っているのは、遊矢とコナミだ。

試合が始まったと言うのに、微動だにせずに立っている。しかし、全ての参加者が入場した事を確認した後、コナミが遊矢へと拳を向ける。遊矢の隣のユートは空気を読んだのか、フッ、と薄く笑い、背を向ける。

 

「……勝ち上がるぞ」

 

「……ああ!」

 

拳をぶつけ合い、2方向へ別れて駆け出すコナミと遊矢。闘うのは今では無い。2人は誓いを胸に--それぞれの闘う道へと足を踏み入れる。

さぁ--デュエルを始めよう。

 

------

 

「いよいよ始まったなぁ、さぁ賭けようか、俺は昇に1000円だ」

 

「乗った!僕は勝鬨と黒咲さんに1000円!」

 

「テメ、勝鬨はずりぃだろ!黒咲さんもランクがちげぇよ!真澄は……どうせコナミか」

 

「ははははぁ!?急に何言ってんのよ!バッカじゃないの!?バッカじゃないの!?」

 

場所は先程とは変わってスタジアム内の観客席、そこでは遊勝塾のメンバーと共に、一体誰が一番多くペンデュラムカードを手に入れるかで賭けを始めていた。

刃は当然、弟子である権現坂に1000円賭け、北斗は優勝候補と名高い勝鬨と黒咲にそれぞれ1000円賭ける。真澄はどうせコナミに賭けるだろうと2人はやれやれとシラケるが、そんな彼等に真澄が顔を茹で蛸のように真っ赤にして、動揺しながら叫ぶ。

 

「いやだって……」

 

「気づかれないと思ってたのかよ」

 

「な、何よ。別にコナミとは友達……あれ?そう言えば私、友達になってって言って無い……あれぇ?」

 

「「……」」

 

どうやら地雷を踏んでしまったようだ。今更ながらにコナミと友達であるかと自問自答し、思わず涙目になってしまう真澄。残念な子である。

デュエル時とは打って変わってくすむ真澄へと2人は同情、そしてやっちまったと後悔の視線を送る。

しかしそこはフォローの刃。良からぬ空気を何とかしようとすかさずフォローを入れる。

 

「な、何言ってんだよ真澄ん。きっとコナミはお前の事、大事な友達と思ってるって!こんなに可愛い友達を持ってコナミは幸せな奴だなぁ!なぁ北斗!そうだよな!?なっ!?」

 

「あっ、ああ!そうだな!真澄ん可愛いよ真澄ん!」

 

落ち込む真澄んをどうにか励まそうと、北斗に「お前も協力しろ」と目で語り、タッグを組んで普段絶対言わないような事を言う刃と北斗。

そんな彼等の言葉に気を良くしたのか、真澄んはぐすぐすと目尻の涙を拭う。

 

「そっ、そうかなぁ……?」

 

「ほらあいつ口下手と言うか一々そんな事言う性格じゃないだろ!?」

 

「でもきっと心の中ではコナミと真澄んゎ……ズッ友だょ……!!」

 

北斗が最高に輝いた瞬間である。これなるいける!良くやった北斗!でも気持ち悪っ!と罵りながらも北斗のアシストに心の底で拍手を送る刃。

そしてズッ友宣言に心を打たれたのか、真澄んは目を見開き、何度も反芻する。そして漸く機嫌を良くしたのか、頬を桜色に染め、上気させながらも「ふーん」と唇を尖らせながら、耳につけたイヤリングをいじる。

 

「ふ、ふーん……?ま、まぁそうよね!別にコナミの事なんて何とも……思ってるちゃ、まぁ、思ってるけど……私とコナミは友達!ズッ友よね!」

 

「でも刃君と志島君、この前真澄んちゃんはキツい性格してて友達出来ないって言ってましたよね?」

 

ピキリ、ねねが突然放った爆弾発言により、真澄達が時間が止まったかのように凍りつく。ねねも言い終わって後で気づいたのか、あ、やっちまったと口に手を当て、気まずそうに目をそらす。

時既に遅し、真澄んはじわじわと目尻に涙を溜め、一気に決壊させる。その様はまるで流れ落ちる滝のようだ。

 

「ぶぇぇぇぇぇっ!!分かってたしぃ……!ぶぇっ、でもぉ……頑張ってもぉ……ぶぇっ、ダメだもんぅ……!」

 

「お前と言うのは!お前と言うのは!見ろ!真澄んがカバみたいに泣いてるだろ!キャラ崩れちまってるだろ!」

 

「頑張ってるんだよ!?友達の作り方とか言う本とか買ったんだぞ!真澄んは毒を吐くけど吐かれると弱い子なんだよっ!」

 

「ごっ、ごめんなさぁぁぁぁぁいっ!!違うんですぅ!たっ、確かに真澄んちゃんはちょっとキツいかもしれないけど、コナミさんはそっちの方が相性が良いかもしれませんよ!?ほらあの人デュエルで逆境に追い込まれると凄い笑顔ですし!」

 

カバのように「ぶぇぇぇぇぇっ!!」と泣き崩れる真澄んを指差し、自分達の事を全力で棚上げしながらバシバシともう片方の手で持った竹刀で床を叩く刃と、真澄んの両肩を掴み、慰める北斗。

一部残念過ぎる個人情報が漏れているが。そんな涙ぐましい真澄んの努力を聞いて、居たたまれなくなったねねはぶわりと涙を溢れさせ、真澄んへと謝罪し、全力でフォローする。何やらコナミがMの人みたいになっているがあながち間違いとは言えないのがコナミだ。

 

「良く気をつけたまえよっ!取り扱い注意なんだよ真澄んはっ!」

 

「ひぐっ……ぶぇっ……真澄んって言うなしぃ……!」

 

何とも混沌としている。そんな彼等の何時も通りの馬鹿馬鹿しいやり取りを隣で見ていたアユは溜め息をつきながらもある事に気づく。

 

「あれ--そう言えば、セレナお姉ちゃんは?」

 

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『さて、遊矢。まずはペンデュラムカードを探さないといけないが、ここは俺に任せてくれないか?』

 

「?何か妙案があるのか、ユート?」

 

火山エリア付近にて、遊矢はデュエルを行うにあたって条件であるペンデュラムカードを探すべく、フィールド内を駆け回っていた。だが1枚も見つからない。

まぁ、まだ始まったばかりと言う事もあるが、そんな遊矢へと、先程までずっと無言を貫いていたユートがスッ、と遊矢を制する。一体どのようなアイデアがあるのだろうか。

 

『俺が空から探そう。幸い俺の声はお前とコナミ、アリトしか聞こえないからな、安心してナビゲート出来る』

 

「飛行、ゴーストタイプか」

 

『雑用要員にするな』

 

どうやら浮く事を利用して空からカードを探そうと言う事らしい。何だかポケモンみたいだな、と思い呟く遊矢に対し、「空から探してくれ!」と常に雑用係になっている彼等を思い浮かべ、やめてくれと何とも微妙な顔をするユート。

ともあれ作戦としては良い案だ。遊矢は頼んだぞ!とその背を見送り、ユートは「やめてくれ」とぼやきながらもカードを探索する事に徹する。

 

「……遠くから見ると凄いシュールだな……」

 

まるでスーパーマンのようにマントを靡かせ、飛行するユートを遠目に見物しながら呟く遊矢。本当に一般人には見られなくて良かった。もしそうなっていたらSNS等で拡散されていただろう。コラに使われでもしたら遊矢の腹筋が堪えられそうに無い。

今彼の事を表すとしたら、名前はナストラマンユートだろうか。と本人の背を見ながら呆ける遊矢。

おっと、そろそろ彼を追わねばなるまい。そうしなければまたも彼に文句を言われるかもしれない。ユートは普段は心優しい少年なのだが、コナミ関係で荒む事もあるのだ。

待たせるのも気が退ける。遊矢は急いで彼を追う。

 

『あったぞ遊矢。こっちに丁度2枚、岩の間に隠れていた』

 

「凄い視力だな。ともあれこれで2枚ゲットだ!サンキューユート!」

 

ユートの言われるままに、岩場の影に隠れていた2枚のペンデュラムカードを手に取る遊矢。これでデュエルをするにあたっての準備は整った。

と、早速遊矢の元に、2人のデュエリストが登場する。

 

「俺の名は竹田!」

 

「俺の名は梅杉!」

 

「へぇ、待っててくれたって訳か……!良いぜ、デュエルしよう!」

 

『2対1、いや、闘う事は出来ないが俺もいる、存分にやれ遊矢!』

 

2対1の圧倒的不利な状況から始まるデュエル。だが遊矢もユートも臆す事等しない。3回戦最初のデュエルなのだ。幸先良く、彼等を思う存分に笑わせて、勝利を飾ろうでは無いか。ニヤリと不敵な笑みを浮かべ、遊矢はデュエルへ臨む。

 

「「「デュエル!!」」」

 

------

 

「さて、2枚揃ったが--相手はお前で良いのか?」

 

場所は変わり、火山エリアと遺跡エリア、その間に面するフィールドにて、コナミは2枚のペンデュラムカードを手にし、1人のデュエリストと対峙していた。

岩の影よりスッ、と現れ、意地の悪そうな笑みと共にデュエルディスクを構えるのは、コナミも良く知るデュエリスト。

頭に輝くQの字を模した黄金のメッシュ、小柄な身体ながらも、溢れんばかりの知性を纏うその少年の名は--。

 

「正解だよコナミ君。僕が君の一問目、難関だよ」

 

「上等だ、勝負といこうか、栄太」

 

九庵堂 栄太。本来有名な進学塾、明晰塾に所属する、キング・オブ・クイズの通り名を持つ強敵だ。

そう、彼も3回戦へ駒を進めていたのである。因みに対戦者達は口を揃えて「デュエル中はイライラして集中出来なかったけど、終わったら気味が悪い程紳士だった」と語っている。歩くストレス、九庵堂が最近新たに呼ばれ始めている通り名である。

それを聞いた本人はと言うと、「僕がイライラしてるみたいですねぇ、そんな事も考えずに呼ぶなんて、思考停止したお馬鹿さんかな?脳ミソつまってますぅ?」と一笑にふしている。

ともあれコナミの最初の相手は彼なのだ。コナミより心理フェイズを教わった彼は鬼に金棒、コナミも余計な事をしたものだ。だが相手にとって不足は無い。

 

「難関問題でも、突破するまでだ」

 

「そう言うと思ってたよ」

 

ガシャリ、互いにデュエルディスクを構え、ソリッドビジョンで構成された光のプレートを展開する2人。

やる気は充分、沸々と闘志を燃やす。

 

「「デュエル!!」」

 

始まるデュエル、先攻はコナミだ。デッキより5枚のカードを引き抜き、即座に2枚のカードを胸の前で翳す。

 

「オレは『慧眼の魔術師』と『曲芸の魔術師』でペンデュラムスケールにセッティングし、慧眼のペンデュラム効果により自身を破壊し、デッキの『竜穴の魔術師』を設置、揺れろ、光のペンデュラム!虚空に描け魂のアーク!ペンデュラム召喚!『刻剣の魔術師』!」

 

刻剣の魔術師 攻撃力1400→2800

 

1ターン目から飛ばしてペンデュラム召喚。今回は1体のみの登場だ。召喚されたのは『刻剣の魔術師』。フィールドのモンスターと自身を除外する事が出来る、コナミも重宝している優れた除去能力を持つモンスター。

そして実はこのモンスターにはもう1つ効果がある。それは手札からこのカードのみがペンデュラム召喚された場合、攻撃力が倍となる自己強化効果。

条件は厳しいものの、攻撃力2800はやはり頼れる数値だ。『賎竜の魔術師』を使えば再利用も可能となる。

 

「デッキトップをコストに、魔法カード、『アームズ・ホール』を発動。デッキから装備魔法、『妖刀竹光』をサーチ!カードを1枚伏せ、ターンエンドだ」

 

コナミ LP4000

フィールド『刻剣の魔術師』(攻撃表示)

セット1

Pゾーン『竜穴の魔術師』『曲芸の魔術師』

手札1

 

「それで終わりかい?僕のターン、ドロー!さぁ僕も始めようか!『ブンボーグ005』と『ブンボーグ006』でペンデュラムスケールをセッティング!」

 

「早速か!」

 

九庵堂が2枚ペンデュラムカードを翳し、デュエルディスクの両端にセッティングする。それによりディスクが虹色の輝きを放ち、天に2柱のモンスターが上る。

肩と両の手首にテープを巻きつけ、糊を装備したSDのロボットと輪ゴム鉄砲を構え、フテープラーの翼を広げたSDロボット。『ブンボーグ』が立ち塞がる。

 

「ペンデュラム召喚!『ブンボーグ002』!『ブンボーグ004』!」

 

ブンボーグ002 攻撃力500

 

ブンボーグ004 攻撃力500→1000

 

九庵堂の振り子の元に、2体の『ブンボーグ』が姿を見せる。

緑のボディを持ち、修正液の銃と消しゴムの剣を両腕に装備した小さなロボットと、カラーペンの光線銃と水彩道具の剣を構えた、これまた小型のロボット。両者とも攻守が低いが、油断は出来ない。

 

「『ブンボーグ002』が特殊召喚した場合、デッキから『ブンボーグ』カードをサーチ!『ブンボーグ003』を手札に!更に魔法カード、『機械複製術』!デッキから2体の『ブンボーグ002』を特殊召喚!」

 

ブンボーグ002 攻撃力500→1500×3

 

ブンボーグ004 攻撃力1000→2000

 

「効果で『ブンボーグ001』と『ブンボーグ・ベース』をサーチ!」

 

「ターン1制限が無いのか……!?」

 

更なる手札増強により九庵堂の手札が5枚となる。何よりコナミが驚愕したのは『ブンボーグ002』の効果が名指しでターン1制限されて無い上、同名がサーチ出来ると言う縛りの無さだ。

特殊召喚でしか効果を発揮できないとは言え、強力な効果だ。間違いなくデッキの核はこのカードだろう。

 

「良く分かったねぇ?そして002が存在する限り、このカード以外の『ブンボーグ』の攻守は500上がるのさ!僕は更に、『ブンボーグ001』を召喚!」

 

ブンボーグ001 攻撃力500→4500

 

お次は鉛筆のビームサーベルとシャープペンシルのトンファーを武器にした青い『ブンボーグ』。召喚時は攻撃力500だったが……次の瞬間、爆発的に攻撃力がアップし、コナミがぎょっ、とする。

レベル1モンスターにしては驚異的な数値だ。

 

「001は自分フィールドの機械族モンスターの数×500、攻守を上げる!そしてフィールド魔法、『ブンボーグ・ベース』を発動!『ブンボーグ』の攻守を500アップ!」

 

ブンボーグ001 攻撃力4500→5000

 

ブンボーグ002 攻撃力1500→2000×3

 

ブンボーグ004 攻撃力2000→2500

 

合計攻撃力13500。LPが2倍あろうと軽く吹き飛ばす数値だ。機械族である事と良い、コナミの脳裏にどこぞの流派が過る。

もしくは自身の持つ絶望を与える希望皇か。どちらにせよ並みの相手では叩き出せない攻撃力と言えよう。

 

「さぁ、バトルだぁ!『ブンボーグ001』で刻剣を攻撃ィ!」

 

「ッ!罠発動!『マジカルシルクハット』!お前の得意なクイズだ!当ててみろ!」

 

コナミがデッキより2枚のカードを引き抜き、突如白煙を上げ、現れたシルクハットに『刻剣の魔術師』と共に投げ込む。目にも止まらぬ速さでシャッフルされるシルクハット。到底常人には見抜けぬ速度だが--コナミが相手にしているのはキング・オブ・クイズ。

この程度の3択問題、大した問題では無い。

 

「フフ、僕に問題かい?乗ってあげるよ!『ブンボーグ001』で左のシルクハットを攻撃ィ!」

 

001がその手に持ったビーム鉛筆で左のシルクハットを貫く。ドスリとシルクハットに穴が空き、ハットが破け散ったそこには--見事正解、『刻剣の魔術師』が苦し気な顔で倒れる。

 

「ッ!キングだからか!?」

 

「キングだからだ!お次は残りのシルクハット!2体の002で『ブレイクスルー・スキル』と『妖刀竹光』に攻撃ィ!」

 

「何--!?」

 

シルクハットの中身のカードを一瞬で見抜き、『ブンボーグ』達へと指示を飛ばす九庵堂。修正液の白い弾丸がシルクハットを撃ち抜き、銃声が木霊する。

ハットの中身は答え通りの正解、良くコナミがハットに投げた瞬間に理解したものだ。

 

「……オレは墓地に送られた『妖刀竹光』の効果で『黄金色の竹光』をサーチ……良く分かったな、キングだからか?」

 

「キングだからだ!さっきのターン、『妖刀竹光』を手札に加えていたからねぇ、それに効果で攻守を上げる『ブンボーグ』に対抗するには無効化するしかないだろぉ?想像力が足りないよ」

 

やれやれ、とどこぞの民のように頭と両手を上げ、ひらひらと振る九庵堂。中々にイラッとする態度だ。少しずつストレスを蓄積させようとするその戦術は流石と言う他ないだろう。正に相手にしたくないデュエリストだ。

 

「……『光の護封霊剣』と言う考えは無かったのか……?」

 

「とぼけるなよ、知ってるんだぜ?2体でダイレクトアタック!」

 

九庵堂がガバッと手を突き出すと共に、その傍に控えていた『ブンボーグ』がその小さな身体を飛行させ、コナミへと迫る。

絶体絶命、しかしその場に光の剣が突き刺さり、『ブンボーグ』の行く手を遮る。

 

「墓地の『光の護封霊剣』を除外し、ダイレクトアタックを防ぐ……キングだからか?」

 

「キングだからだ!さっきのターン、『アームズ・ホール』のコストで送ってたろう?運が良いねぇ、僕にも少し分けて貰いたいよ。カードを1枚伏せ、ターンエンド。精々頑張ってくれよ?コナミくぅん?」

 

九庵堂 栄太 LP4000

フィールド『ブンボーグ001』(攻撃表示)『ブンボーグ002』(攻撃表示)×3『ブンボーグ004』(攻撃表示)

セット1

Pゾーン『ブンボーグ005』『ブンボーグ006』

『ブンボーグ・ベース』

手札3

 

立ち塞がる知性の王、九庵堂 栄太。その鋭い観察眼と推理力、そして煽りを受けてコナミは果たしてどうのような手を取るのか、そして、このデュエルの果てに待つのは、リアルファイトなのだろうか--そうならない事を、祈るばかりである。




人物紹介8

光津 真澄
所属 LDS
LDS融合コースに所属する少女。宝石商の娘らしく、その手のものには詳しい。
キツめで男勝りの性格ながら、実はロマンチスト。この作品では残念な子となっており、そこら辺は師匠譲りなのかもしれない。
最近は友達作りや友達との遊び方等と言う本を見て頑張っているらしいが、どう見ても空回りしている。あだ名は真澄ん。これは主に、残念モードに陥った時の事を指す。
デュエリストとしては成長したものの、そっち方面ではくすみっ放しである。
アニメでは百合になったりとネタに事欠かなく、作者としては興味深いが、そっちは絶対に報われないと思う。多分こっちも無理。
使用デッキは『ジェムナイト』。エースカードは『ジェムナイトレディ・ブリリアント・ダイヤ』。

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