遊戯王ARC―V TAG FORCE VS   作:鉄豆腐

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親父のデュエルを見て長いけど結構面白かったと思いました。良いぞ親父!(手のひら返し)。
でもユーリ君の謎ビームとホモホモしい発言で腹筋が崩壊しました。ビームいらんやろ、リアルファイトすんなし。ねっとりとした発言は完全に狙ってる(確信)。
期待不安の未来が待っているため、私は再び手のひらをセットしてターンエンドだ。カウンター罠、中断はやめてくれ(震え声)。


第65話 歴史は繰り返す

遊矢と隼の危機に現れた救世主、アリト。好戦的な笑みを浮かべ、両手を合わせてポキポキと骨を鳴らす彼の登場に、遊矢は思わず表情を綻ばせる。それはユートも同じだ。

絶体絶命、そんな時に颯爽と見参した彼は正に救いのヒーロー。粋な事をしてくれる。彼と最初に会ったのもこんな状況だったか。

 

目を細める遊矢の隣でポカンと呆ける隼。当然だろう、彼は遊矢とアリトのデュエルを見ているとは言え、アリトとは知り合いでは無いのだから。遊矢とデュエルを行う前ならば、何故敵であった彼が遊矢を助けるのか、と疑問に思っていただろう。

 

しかし、今なら分かる。これが榊 遊矢 の持つ力、彼の魅力なのだと。彼とデュエルをしたからこそ、彼の人となりを知っているからこそ、助けたいと思い、助けようとするのだ。デュエルで繋ぐ絆、これこそがデュエルが本来持つ力だろう。

 

『しかし、良く彼が来ると分かったものだな』

 

「ん、ああ……なんか、カードがそう言ってる気がしてさ……」

 

「カードが……?……しかし、大丈夫なのか?認めたく無いが、オベリスク・フォースの実力は本物だ。奴1人で3人を相手に……」

 

「大丈夫」

 

隼の疑問も尤もだろう。彼は敵であるからこそ、オベリスク・フォースの高水準に纏められた実力を知っている。精鋭部隊の名は伊達では無いのだ。

いくらアリトが強いとは言え、それを3人も――と言葉を続けようとする隼を遮り、遊矢はやんわりと否定する。大丈夫、この一言だけは、何よりも確かに、有無を言わさぬ強さが、アリトに対する信頼が見てとれる。

 

「大丈夫……」

 

だから隼は信じる事にした。遊矢の信じるアリトを。信頼出来る友が信頼する友を。信じる力、それが遊矢の強さの1つなのだとしたら――隼もまた、その力を身につけようと。

 

「俺達はまぁ、ゴロゴロして休もうぜ?たまには力を抜いた方が良いだろ?今は休む事が先決だ、とっとと回復して、今度はアリトを助けよう」

 

「……フ、そうだな」

 

「へっ、お茶でも飲んでゆっくりしてな!ここは俺が何とかするさ!」

 

敵を眼前にして、完全にリラックスする遊矢。そんな彼を見ていると、隼は気を張り詰める事が馬鹿らしくなって力を抜く。確かに、自分は力を抜くべきなのだろう。

ここは信頼出来る仲間が何とかしてくれる。そう思えば無理をする必要もない。

 

「寝坊してコンビニに飯買いに行ってたらこんな事になってんだもんなぁ、相変わらずお前の周りは騒がしいぜ、遊矢」

 

そう言って右腕に下げていたレジ袋を地面に下ろすアリト。中からは食欲をそそる焼肉のタレ独特の濃い匂いが、白い煙と共に遊矢達の鼻腔に運ばれ、思わず2人はじゅるりと涎を垂らす。そう言えば、昼以降は何も食べていなかった、と腹の虫が鳴り響く。

 

「おい隼、焼肉弁当入ってるぞ」

 

「腹が減っては何とやらだ、奴も俺達の為に持って来たのだろう、食ってやらねばな」

 

『遊矢、俺にも供え物で良いから』

 

「おいそれ俺のぉ!」

 

ガサガサとアリトの許可なく勝手にレジ袋を漁り、ハイエナの如く弁当を囲む遊矢と隼。気のせいか隼は早口な上、言葉が多くなっている。

「7:3な」とか、「ふざけるな、俺の方が腹が減ってる。俺が6でお前が4だ」やら、「供えろ、たたるぞ」と騒ぐ彼等に対し、所有権を主張するアリト。彼等の前にレジ袋を置いたのが運のツキである。

遊矢と隼の魔の手を止めようとするも、痺れを切らしたオベリスク・フォース達がそれを遮る。

 

「良い加減にしろ!貴様1人で我等を相手取るとほざいたと思いきや……!」

 

「ちょっと待って!?今マジでヤバイから!」

 

「待たん!我等が待つのは身内の危機とトイレの時のみだ!」

 

「貴様を倒し、エクシーズ次元の残党、黒咲 隼を始末する!」

 

まさかの横槍、仮面の奥の表情を怒りに染め、デュエルディスクを構えるオベリスク・フォース達をアリトが何とか宥めようとするも無意味。

隼はと言うと自分の名を呼ばれた事に反応し、焼肉を頬張りながらも「呼んだ?」と呑気に顔を上げている。

アリトとしては知らない奴に自分の飯を食われているのだ。その間の抜けた顔に右ストレートを食らわせたかった。だが残酷な事に、それは叶わない。アリトは「ああもう仕方ねぇ!」と声を張り上げ、自棄気味にデュエルディスクを構える。

 

「「「「デュエル!!」」」」

 

先攻はアリトだ。早くデュエルを終わらせなければと焦りを浮かべながらも5枚の手札に目を通す。良い引きだ、これならば何とかなるかもしれないと口元を緩める。

 

「俺は『BKヘッドギア』を召喚!」

 

BKヘッドギア 攻撃力1000

 

アリトが召喚したのは『おろかな埋葬』を内蔵した『BK』だ。その名の通り、頭にヘッドギアを装着し、青く鍛え抜かれた肉体を持ったボクサーの入場だ。

 

「ヘッドギアの効果でデッキの『BKグラスジョー』を墓地に送る!そして魔法カード、『バーニングナックル・スピリッツ』により、デッキトップをコストに蘇生!」

 

BKグラスジョー 守備力0

 

次に入場したのは緑の肉体を持つ巨漢だ。高い攻撃力を有しているものの、打たれ弱いガラスの顎、しかし『BK』では必須と言えるカードだ。

 

「2体のモンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築!エクシーズ召喚!魂に秘めた炎を、拳に宿せ!『BK拘束蛮兵リードブロー』!!」

 

BK拘束蛮兵リードブロー 攻撃力2200

 

早速彼の扱うエクシーズモンスター、リードブローの登場、素早い展開に隼も「ほう」と感心する。その口元には焼肉のタレがついているが。

首枷をつけ、鎖をジャラジャラと引き摺る拳闘士。初手としては良い手だ。その効果を知らないオベリスク・フォースは低い攻撃力を嘲笑う――事無く、僅かに警戒している。流石はアカデミアの精鋭と言う事か、油断はしてくれない。

 

「リードブローのORUを1つ取り除き、『BKシャドー』を特殊召喚!」

 

BKシャドー 攻撃力1800

 

リードブローの周囲で回転するORUが弾け、枷が外れる。そして枷の影が蠢き、新たなボクサーとなる。

シャドーボクシング、リードブローの型を模倣するように、影の拳闘士が現れる。だがそれだけではない。リードブローの枷が外れ、ORUとなっていたグラスジョーもまた墓地に送られたのだ。そのジャブは止まらない。

 

「ORUを失った事でリードブローの攻撃力が800アップ!そしてグラスジョーの効果で墓地の『BKスパー』を回収!」

 

BK拘束蛮兵リードブロー 攻撃力2200→3000

 

「そしてフィールドに『BK』が存在する事で『BKスパー』を特殊召喚!」

 

BKスパー 攻撃力1200

 

次なる『BK』は両腕にミットを装着した『BK』のサポーター、軽い召喚条件を持ちながらも、その後に続くのはバトルフェイズを封じる誓約だ。使い所は限られる。

だが先攻1ターン目なら苦にならない。

 

「2体のモンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築!エクシーズ召喚!『BK拘束蛮兵リードブロー』!!」

 

BK拘束蛮兵リードブロー 攻撃力2200

 

2体目のリードブローの登場、これで3回までの破壊耐性を得た。3人を相手にしても充分に防げる布陣だ。これがアリトの恐ろしい所だろう。攻撃を防ぎ、次のカウンターに繋ぐ。長期戦に対するスタミナもある。

 

「カードを2枚伏せ、ターンエンドだ」

 

アリト LP4000

フィールド『BK拘束蛮兵リードブロー』(攻撃表示)×2

セット2

手札0

 

「俺のターン、ドロー!俺はフィールド魔法、『歯車街』を発動!そして魔法カード、『融合』を発動!手札の『古代の機械猟犬』2体を融合!融合召喚!『古代の機械双頭猟犬』!」

 

古代の機械双頭猟犬 攻撃力1400

 

現れたのは猟犬をグレードアップした双頭の猟犬。その青錆を纏ったモンスターの攻撃力は僅か1400、少ないが、『簡易融合』等で召喚出来るとなれば上等だろう。

 

「まだだ!俺は魔法カード、『二重召喚』を発動!このターン、俺は2回の召喚権を得る!まずは『古代の歯車機械』を召喚!」

 

古代の歯車機械 攻撃力500

 

続けるようにオベリスク・フォースの手札から歯車を背負った小さなモンスターが現れる。ボルトやモーターを組み込んだ下級モンスター。攻撃力は低いももの、その効果はコンボ性に富んでいる。

逆に攻撃力が低いからこそ、下級として活かす事が出来る。デュエリストの腕が試されるカードだ。

 

「そして『古代の歯車機械』をリリースし、手札から『古代の機械合成竜』をアドバンス召喚!」

 

古代の機械合成竜 攻撃力2700

 

『古代の歯車機械』がバラバラに解体され、『歯車街』からパーツ現れ、次々と組み合わされていく。キリキリと機械が擦れ合う音が鳴り、新たに生まれたモンスターは3つ首、いや、尾も合わせ4つ首の合成機竜。歪な姿をした竜が、それぞれの首を唸らせ、翼を広げてアリトを睨む。

 

「こいつは『ガジェット』モンスターをリリースした事で相手モンスター全てに攻撃が可能となり、『アンティーク・ギア』モンスターをリリースした事で戦闘破壊出来ないモンスターも除外する!」

 

「チッ、リードブローのカウンターもすり抜けるって訳か……」

 

全体攻撃に加え、破壊出来ないモンスターも除外する効果、何の因果か、アリトが展開したリードブローの天敵と言える効果だ。厄介な事この上無い。得意のカウンターも4つの首で封じられてしまう。

 

「俺はこれでターンエンドだ」

 

オベリスク・フォースD LP4000

フィールド『古代の機械双頭猟犬』(攻撃表示)『古代の機械合成竜』(攻撃表示)

『歯車街』

手札0

 

「俺のターン、ドロー!まだ地獄は始まったばかりだ。俺は魔法カード、『古代の機械双造』発動!墓地の『古代の機械猟犬』2体を効果を無効に特殊召喚!」

 

古代の機械猟犬 攻撃力1000×2

 

「そして魔法カード、『融合』を発動!フィールドの2体の猟犬を融合!融合召喚!『古代の機械双頭猟犬』!」

 

古代の機械双頭猟犬 攻撃力1400

 

「またそいつか……」

 

「歴史は繰り返すってな。『古代の機械猟犬』を召喚!」

 

古代の機械猟犬 攻撃力1000

 

「召喚時、相手に600のダメージを与える」

 

アリト LP4000→3400

 

オベリスク・フォースD LP4000→3400

 

オベリスク・フォースF LP4000→3400

 

微々たるダメージが彼以外のLPを襲う。バトルロイヤルルールなので同じオベリスク・フォースである2人も巻き込んでしまうが、こればかりは仕方無いだろう。何より3対1のこの状況、味方を巻き込もうと、アリトさえ倒せば彼等の勝利となるのだ。

 

「そして猟犬の効果でフィールドの2体の猟犬を融合!古の魂受け継がれし機械仕掛けの猟犬達よ、群れなして混じり合い、新たなる力と共に生まれ変わらん!融合召喚!『古代の機械参頭猟犬』!」

 

古代の機械参頭猟犬 攻撃力1800

 

次に登場したのは『古代の機械双頭猟犬』の進化形態。深緑に染まった体躯は鉄となり、歯車を背負った3つ首の猟犬。

仲間を呼び合うかのような遠吠えを放つ獣機達の存在にアリトを警戒を示す。

 

「フィールド魔法、『歯車街』を発動する。このカードは破壊された時、デッキから『アンティーク・ギア』を特殊召喚する。」

 

厳かな遺跡がキリキリと歯車が回転する街へと姿を変えていく。中々味のある街だ。尤も住民に破壊されるが。

 

「そして速攻魔法、『サイクロン』を発動する事で破壊!破壊された『歯車街』の効果でデッキより『古代の機械熱核竜』を特殊召喚!」

 

古代の機械熱核竜 攻撃力3000

 

ギシギシと縄が締まるような音が響く。巨大な歯車の街がガラガラと崩れ落ち、核になっていたモンスターが空へと飛翔する。ギシギシと鳴り響くのは――翼だ。桜色のエネルギーを胸に抱いた、3つ目の機竜の羽音、ボロボロに虫食い穴が空いた翼を翻し、錆びたアンティークの竜がフィールドに降り立つ。

 

「ターンエンド」

 

オベリスク・フォースE LP4000

フィールド『古代の機械参頭猟犬』(攻撃表示)『古代の機械熱核竜』(攻撃表示)

手札0

 

「俺のターン、ドロー!魔法カード、『融合』を発動!手札の3枚の『古代の機械猟犬』を融合!融合召喚!『古代の機械参頭猟犬』!」

 

古代の機械参頭猟犬 攻撃力1800

 

「魔法カード、『融合回収』!墓地の猟犬と『融合』を回収、そのまま召喚!」

 

古代の機械猟犬 攻撃力1000

 

「効果で相手にダメージを与える!」

 

アリト LP3400→2800

 

オベリスク・フォース D LP3400→2800

 

オベリスク・フォース E LP4000→3400

 

「効果でフィールドの『古代の機械参頭猟犬』と『古代の機械猟犬』を融合!融合召喚!『古代の機械究極猟犬』!」

 

古代の機械究極猟犬 攻撃力2800

 

ついに現れる多頭を伸ばし、胸にアギトを持ち、背に刺を、そして3本の尾を振るう、ワインレッドの狂犬。究極の名を刻んだカード、並び立つ2頭、3頭、そして多頭の姿は正に圧巻。

部隊だけあってそのチームワークは凄まじいものがある。間違いなく強敵、遊矢はワクワクと言った様子で目を輝かせ、隼は「俺にもあれ位出来る」と謎の対抗意識を燃やし、当の本人であるアリトは「ふぅん」と鼻を鳴らし、闘志を剥き出しにしている。

 

「効果で自分以外のLPを半分に!」

 

アリト LP3400→1700

 

オベリスク・フォースD LP3400→1700

 

オベリスク・フォースE LP3400→1700

 

「カードを1枚伏せ、ターンエンドだ」

 

「この瞬間、罠発動!『裁きの天秤』!俺のフィールド、手札のカードとお前達のフィールドのカードの差分ドローする!」

 

「……成程、多対1を活かしたか」

 

アリト 手札0→4

 

オベリスク・フォースF LP3400

フィールド『古代の機械究極猟犬』(攻撃表示)

セット1

手札1

 

「3対1だってのにこれだけとはシケてやがんぜ!俺のターン、ドロー!魔法カード、『エクシーズ・ギフト』!リードブローからそれぞれ1つORUを取り除き、2枚ドロー!」

 

アリト 手札4→6

 

BK拘束蛮兵リードブロー 攻撃力3000→3800

 

BK拘束蛮兵リードブロー 攻撃力2200→3000

 

「更に魔法カード、『エクシーズ・トレジャー』発動!2枚ドロー!」

 

アリト 手札5→7

 

「さぁ、行くぜ!魔法カード、『バーニングナックル・スピリッツ』を発動!デッキトップを墓地へ送り、グラスジョーを特殊召喚!」

 

BKグラスジョー 守備力0

 

バトルが許された、勝負となる2ターン目、アリトは拘束を解かれたようにギアを上げ、カードをデュエルディスクに叩きつける。

 

「『BKビッグバンテージ』を召喚!」

 

BKビッグバンテージ 攻撃力1100

 

「ビッグバンテージの効果で『BK』のレベルを墓地のシャドーと同じ4に変更!」

 

BKビッグバンテージ レベル2→4

 

「2体のモンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築!エクシーズ召喚!『BK拘束蛮兵リードブロー』!」

 

BK拘束蛮兵リードブロー 攻撃力2200

 

リングに降り立つ3体目のリードブロー。これでリードブローは全て使い切った。強力で場持ちの良いモンスターであり、アリトの左腕とも言えるカードだけある。

だがまだまだ、アリトは止まる事なく次の手に出る。

 

「3体目のリードブローからORUを1つ取り除き、『BKシャドー』を特殊召喚!」

 

BKシャドー 攻撃力1800

 

BK拘束蛮兵リードブロー 攻撃力2200→3000

 

「効果で墓地に送られた『BKグラスジョー』により、墓地の『BKシャドー』回収!」

 

繰り返されるアリトのワンツー、右左とリズムを刻むように手を突き出しては戻す。単調と言えば単調だが、洗練されたそれは黄金のパターンと化す。手札を減らさずフィールドを増やす。見本のようなプレイングだ。

 

「もう一撃!2体目のリードブローのORUを1つ取り除き、『BKシャドー』を特殊召喚!」

 

BKシャドー 攻撃力1800

 

BK拘束蛮兵リードブロー 攻撃力3000→3800

 

「2体のモンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築!エクシーズ召喚!現れろNo.80!猛りし魂にとりつく、呪縛の鎧!狂装覇王ラプソディ・イン・バーサーク!」

 

No.80狂装覇王ラプソディ・イン・バーサーク 守備力1200

 

お次はアリトが持つ『No.』の1枚。巨腕を構え、紫の外套を揺らす漆黒の覇王。自身の刻印である80の赤き紋様は襟に描かれており、その身に纏う気迫の後押しをしている。

 

「更に魔法カード、『RUM-リミテッド・バリアンズ・フォース』発動!」

 

「うええ!?」

 

「ランクアップ……!?馬鹿な、あれはエクシーズ次元の限られた者にしか開発出来ない筈……しかもリミテッド・バリアンズ・フォースだと!?」

 

怒濤の展開、アリトの放つ新たなカード、『RUM』にその目を見張る遊矢とユート、隼。遊矢は彼の扱う『RUM』が黒コナミと同じものだと驚愕し、隼はそれに加え、何故彼が『RUM』を持っているのかと息を詰まらせる。

 

「1体のモンスターでオーバーレイ・ネットワークを再構築!ランクアップ・エクシーズ・チェンジ!現れろ!CNo.80!魂を鎮める旋律が、十全たる神の世界を修復する!我にすがれ、葬装覇王レクイエム・イン・バーサーク!」

 

CNo.80葬装覇王レクイエム・イン・バーサーク 守備力2000

 

黒金から白金へ、ワインレッドの輝きを放ち、覇王はその身を変化させる。狂気を葬り、その気迫を更に増し、鉄をも砕く鋼の拳を振るう、アリトの『CNo.』。迸る闘志を纏ったこのカードこそ、全てを葬るアリトのグローブ。

 

「『CNo.』……奴は何者だ……!」

 

『……アリト……』

 

その表情を強張らせ、激しく動揺するユートと隼。遊矢とて驚いている。だが――アリトの信頼が無くなった訳では無い。彼が何者だろうと、遊矢に口にすべき答えは決まっている。

 

「何者かって……?あいつは俺の――友達だ……!」

 

「行くぜ!レクイエム・イン・バーサークのORUを3つ取り除き――『古代の機械究極猟犬』と、『古代の機械双頭猟犬』、そして『古代の機械合成竜』を除外!」

 

「何――!?」

 

ターン1制限の無い除外効果、素材にラプソディ・イン・バーサークが存在し、ORUが有る限り暴虐を尽くす強力無比な効果、レクイエム・インバーサークの背より紫の光が降り注ぎ、オベリスク・フォース達のモンスターを異次元へと誘う。

 

「更にレクイエム・イン・バーサークを攻撃力2000アップの装備カードとして、3体目のリードブローに装備!」

 

BK拘束蛮兵リードブロー 攻撃力3000→5000

 

白金の覇王が変形し、その鎧と巨腕をリードブローへ装着させる。素材が無くなっても味方モンスターの強化へと繋がると言うのは有り難い。

 

「そして3体目のORUを全て取り除き、魔法カード、『鬼神の連撃』発動!このターン、対象のモンスターは2回攻撃が出来る!」

 

BK拘束蛮兵リードブロー 攻撃力5000→5800

 

「さぁ、バトルだ!1体目のリードブローで3人目に攻撃!」

 

「ッ、ハッ!馬鹿め!どれだけ攻撃力を上げても無駄だ!罠発動!『聖なるバリア-ミラーフォース』!」

 

リードブローがその拳を振るうも、3人目のオベリスク・フォースが発動したカード、最強の攻撃反応系と名高いミラーフォースが拳を防ぐ。

アリトのリードブロー達は既にORUが尽きている。このままではカウンターでアリトのモンスターが破壊されるだろうが――遊矢にはわかる。これは、アリトの思い通りだ。

 

「待ってましたぁ!カウンター罠、『ジョルト・カウンター』!その効果を無効にして破壊!」

 

引き抜かれし伝家の宝刀、アリトの十八番、カウンターが炸裂する。雷神が放つ、稲妻の如き一撃。拘束より解かれたリードブローの右ストレートがオベリスク・フォースの頬を抉り、軽々とその身体を吹き飛ばす。

 

オベリスク・フォースF LP3400→0

 

「がはぁっ……!?」

 

「2体目のリードブローの攻撃!がら空きのお前にダイレクトアタック!」

 

返しの左、軸足に力を入れて踏み込み、溜めに溜めた一撃をがら空きの腹へと叩き込む。ボッ、まるで腹部が円を描いて刈り取られたような錯覚が1人目のオベリスク・フォースに襲いかかり、ぐったりと力なく倒れる。

 

オベリスク・フォース LP1700→0

 

「ぐぼっ……!」

 

「フィニッシュブロー!3体目のリードブローで『古代の機械熱核竜』に攻撃!上乗せだ!手札の『BKカウンターブロー』を除外し、攻撃力を1000アップ!」

 

BK拘束蛮兵リードブロー 攻撃力5800→6800

 

長く続いた猛攻もこれで終焉、ありったけの全てをたたみかけ、拘束から光速に変化したリードブローの拳が熱を帯び、赤き火炎を発火させて『アンティーク・ギア』最強級のモンスターに向かう。

巨竜も迎撃すべく歯車を回転させ、迎え撃つ。ガンッ!鈍い音が激しい衝撃と共に響き渡り、火花が散る。

刹那――ミシミシと頭部からひびが走り、鉄をも砕く拳が全てを貫く。

 

オベリスク・フォース LP1700→0

 

「ぐわぁぁぁぁぁっ!!」

 

振り抜かれた怪腕、勝者、アリト。2ラウンドKO勝ち。しかし何もこれだけでは終わらない。3人のオベリスク・フォースを倒した直後、更に時を狙い澄ましたかのように、次々とオベリスク・フォースが規則正しく軍隊らしく地を踏み鳴らし、アリトへ歩み寄る。これではキリが無い。

だがそれでも――アリトはここから一歩も退かない。その背には守るべき友、アリトは再びカードを振るう為、両の拳を顔の側まで上げ、構える。

 

「お楽しみは、まだまだこれからってか……!」

 

タオルは投げない。リングに上がるチャレンジャーを迎え撃つ為、王者はその熱き闘志を拳に宿す。

 

――――――

 

一方、火山エリアのとある一角、ここでもまた、アカデミアからの刺客、オベリスク・フォース達を迎撃すべく、闘う者達がいた。LDSより集結された、ユースで名を馳せる強者達、しかしそんな彼等でも、倒しても倒しても次々と現れるオベリスク・フォース達とのデュエルの連続で疲弊し、立ち向かう者はたった1人。

息を切らし、デュエルディスクを構える彼は、倒れた仲間達を守るように前に立つ。その勇者の名は、桜樹 ユウ。前回の舞網チャンピオンシップの優勝者である。

 

「桜樹……もう言い!俺達の事なんて見捨てて逃げろ!いくらお前でもこんなボロボロで多数の相手に敵う筈が無いだろ!」

 

「馬鹿言うな……グレートモスを出すような才能溢れる奴を置いて逃げたら、社長にドヤされちまうぜ……!」

 

桜樹の背後で倒れるデュエリスト達は逃げるように促すが、桜樹はその顔に不敵な表情を貼りつけたまま微動だにしない。否、動けないのだ。

彼のプライドが、仲間達を置いて自分1人だけ逃げる事を許さない。例え自身がどうなろうと、それだけは出来ない。それに――。

 

(それに……そんな事をしたら、あいつに顔向け出来ないぜ……!)

 

朦朧とする意識、靄がかかったように曇る視界。限界を越えて尚、彼は立つ。笑う膝を叱りつけ、闘志を燃やす、正に勇者の姿。

だが敵は待ってはくれない。ニヤリと残酷な笑みと共に歩み寄るアカデミア。

 

ここまでか――諦めが脳裏に過った瞬間――ドシュン――!空より降り立つ、白きボディを煌めかせた機体――キィィィィンッ、とタイヤの駆動音を響かせ、桜樹の前に姿を見せたその背は――見慣れたもの。

現れた彼は、バイザー越しでも充分に伝わる程の怒気を放ち、仮面の男達を睨み付ける。

 

「……テメェ等……それ以上俺のダチに近づいてみろ……アンティークなんて言えねぇ程スクラップにしてやる……ッ!」

 

朦朧とする意識、靄がかかった視界、全てが晴れていく。目覚めた彼の眼が捉えたものは――友の、背中。

 

 

 




最近ピンチの時に仲間が現れる描写が多い気がする。もうちょっと工夫せねば。次回は桜樹君が大活躍します。

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