遊戯王ARC―V TAG FORCE VS   作:鉄豆腐

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ユーゴ君がいらない子な今回、桜樹君を強くし過ぎた感がある。


第66話 融合?仲間か!

「立てるか?ユウ」

 

迫り来るアカデミアの魔の手、圧倒的な窮地の桜樹の前に、突然として現れた戦友、ユーゴがD-ホイールを傾け、手を差し伸べる。

何と言う事だ。桜樹は喜びと安堵が混ざった複雑な表情で渇いた笑みを放ち、その手を取る。夢や幻では無い。確かな暖かさがその手に伝わる。

ユーゴが桜樹を「よっと」呟いて立ち上がらせ、互いの視線が同じ高さとなり、交差する。ニィッと不敵に白い歯を剥き出しにするユーゴに対し、桜樹も自然と口元を吊り上げる。

 

「おま……お前何でここにいるんだよ……!?」

 

「ん、あー、お前がこんな風になってないか心配でな!来てやったぜ!」

 

「……嘘つけ……」

 

こんな状況だと言うのに、何時もの彼等の下らない言い合いが交わされる。それが桜樹には何とも嬉しく思える。馬鹿馬鹿しいけど止まらない。馬鹿馬鹿しいから、止められない。彼はここにいるのは気になるが、そんな事さえどうでも良いと思えてしまう。

 

「桜樹……そいつは……?」

 

桜樹の背後で守られていた同じユースのデュエリストが、突然現れたユーゴを見て、指を差す。彼等はユーゴを知らないのだ、それも仕方無いだろう。桜樹はふふんと鼻を鳴らし、誇らし気にユーゴに手を翳す。

 

「ああ、こいつはユーゴって言って――」

 

「融合?仲間か!」

 

「融合じゃねぇ!ユーゴ――」

 

ユーゴの名を聞いて、勘違いしたのか眼前のオベリスク・フォースが食い気味に問いただす。そして名を間違えられてはユーゴは表情を周りのマグマの如く怒りに染め、訂正すべくお決まりの持ちネタを口にしようとするのだが――今回はそれを桜樹が制し、前に出てオベリスク・フォースに向かって指をピッ、と差す。

彼が一体誰なのか、そんな事は分かりきっている。

 

「融合じゃねぇ!俺のダチだ!」

 

お決まりの台詞を自分なりにアレンジし、声高々に桜樹は叫ぶ。彼が何者かなんてこれだけで充分だ。呆気に取られるユーゴだが、桜樹の不敵な笑みを見て、ニィッと口角を吊り上げ、彼に並び立つ。バイザーを上げ、ヘルメットを外し、D-ホイールからデュエルディスクを装着し、ユーゴはオベリスク・フォース達に視線を移す。

 

「へっ、そう言うこった!悪いな、テメェ等のお仲間なんて願い下げだぜ!」

 

仮面の男達に向かい、盛大に啖呵を切るユーゴ。ここまで言われれば分かるだろう、オベリスク・フォースはデュエルディスクを構え、剣型のプレートを展開する。

 

「相手は2人、丁度良いな。やるぞ、ユーゴ」

 

「おいおいそんな状態で大丈夫かよ、なんなら俺1人で構わねぇけど?」

 

「お前みたいな馬鹿1人に任せておけるか、俺を誰だと思ってる?ユースクラス最強、桜樹 ユウだぜ?」

 

「ユースだかソースだか知らねぇが、俺にとってはヘッポコユウだぜ!」

 

「何ぃ!エアコンやらで散々迷惑かけて良く言ったなテメェ!」

 

「エアコン……あっ……」

 

「え、お前まさか……マジふざけんなよおい、ユーゴさん?ねぇちょっとユーゴさん!?」

 

「……」

 

「急に黙るなよ!」

 

敵を前に強気である事を示す為、軽口を交わすユーゴと桜樹。しかし段々とそれは普通の口喧嘩となっていき、更にユーゴの沈黙によって不穏な雰囲気となる。蘇るのは2回戦前の悪夢。「こいつマジかよ」とダラダラと冷たい汗を流す桜樹と「やっべ、まじやっべ(語彙力不足)」と同じく汗を垂らすユーゴ。こんな状況でアホなやり取りをする2人に、ユースのデュエリスト達は呆然と口を開け、オベリスク・フォースの2人組は痺れを切らしてツッコみを入れる。

 

「良い加減にしろ!どうでも良いから早くしろ!」

 

しかし、その言葉が地雷を踏んだ。

 

「どうでも良い……?上等だ。ユーゴ、お前は後回しだ!こいつ等ぶっ倒して財布撒き上げッゾ!」

 

「応よ!やったぜ!説教無しだ!」

 

「ちょっ、そんな事が許されると――」

 

オベリスク・フォース達が狼狽え、彼等のカツアゲをやめさせようと否定するも、最早時既に遅し。ユーゴと桜樹はその血走った眼をギラギラと怪しく輝かせ、ユラユラと幽鬼の如く不気味に立ち、デュエルディスクを構える。

そして2人は夢に出てきそうな程強烈な顔芸を披露し、オベリスク・フォースが「ひぃっ」と小さく叫ぶ。その姿は鬼か悪魔か。少なくとも人とは思えない。

 

「どうでも良いんダロォ!?その位の出費はよぉ!?」

 

「これだからトップスはぁ……!コモンズの侘しさを少しは味わえぇ!」

 

ヤバい、本当にこれはヤバい。死ぬ気で反撃しなければ髪の毛1本程度でも毟り取られる。雑草の1本も地に残さず刈り取られる。本能的な恐怖が身体を動かせ、デュエルディスクを構え直す。殺らなければ殺られる。正しくハンティング。4人は互いに色々と譲れぬものを賭け――闘いの火蓋を切って下ろす。

 

「「「「デュエル!!」」」」

 

1対1対1対1の不規則なバトルロイヤル、実質は2対2だが。先攻を取ったのは桜樹だ。今回はユーゴの得意なライディングデュエルでは無い為、ランダムとなる。

 

「俺は魔法カード、『魔導書廊クレッセン』を発動!デッキから3種類の『魔導書』と名のついた魔法カードを相手に見せ、相手はその中からランダムに1枚選び、俺の手札に加える。次のターンプレイヤーに選んでもらおうか、さぁ、どれを選ぶ?」

 

「……左だ」

 

「手札に加えたのは『グリモの魔導書』。発動し、デッキから『魔導書士バテル』をサーチして召喚」

 

魔導書士バテル 攻撃力500

 

現れたのは青い法衣に身を包み、眠た気に欠伸を押し殺し、紫色の『魔導書』をペラペラと捲る少年。桜樹のデッキは魔導デッキ、魔法使い族モンスターと『魔導書』カードを中心とし、サーチカードに富んだカテゴリだ。その強力さ故に、キーカード、いや、切り札と言えるカードが禁止カードとなってしまったが、それでも充分闘えるデッキだ。

 

「バテルの効果でデッキの『セフェルの魔導書』をサーチ、手札の『魔導書院ラメイソン』を公開し、墓地の『グリモの魔導書』を選択して発動。その効果を適用する。2枚目のセフェルをサーチ。そして手札の『ゲーテの魔導書』、ラメイソン、セフェルの3枚の『魔導書』を公開し、手札から『魔導法士ジュノン』を特殊召喚!」

 

魔導法士ジュノン 攻撃力2500

 

いきなりの大型の登場。純白の法衣を纏い、桃色の髪を靡かせ、『魔導書』を手にした理知的な女性のモンスターがフィールドに降り立つ。一見厳しい条件に見えるが、手札に『魔導書』をサーチする事が常なこのデッキでは扱いやすく、強力な効果を持ったエース級のカードと言える。

 

「フィールド魔法、『魔導書院ラメイソン』を発動!」

 

マグマ流れる赤い火山が、青い光の結界に覆われた白銀の塔へと姿を変える。公開したカードを直ぐ様発動する事で情報の損失を防いだ。

 

「カードを1枚セットし、ターンエンドだ」

 

桜樹 ユウ LP4000

フィールド『魔導法士ジュノン』(攻撃表示)『魔導書士バテル』(攻撃表示)

セット1

『魔導書院ラメイソン』

手札2

 

「俺のターン、ドロー!魔法カード、『テラ・フォーミング』により、フィールド魔法、『歯車街』をサーチし、発動!」

 

桜樹のフィールドが科学的で近未来的なラメイソンに対し、オベリスク・フォースのフィールドが古めかしい赤錆を帯びた歯車が回転する街へと変わる。未来と古代、全く異なる対極のフィールドが向かい合う。

『歯車街』は『アンティーク・ギア』モンスターのリリースを軽減するが、それはあくまでおまけ。このカードは破壊される事で、デッキの『アンティーク・ギア』を特殊召喚する。『アンティーク・ギア』にとって必須となるカードだ。

 

「更に永続魔法、『古代の機械要塞』を発動。そして魔法カード、『古代の機械射出機』により、破壊!そして射出機の効果でデッキから『古代の機械巨人』を特殊召喚!」

 

古代の機械巨人 攻撃力3000

 

要塞がガラガラと轟音を立てて砕け散り、中より2つの影が姿を見せる。1体は3メートル程の巨体を持つ、赤きモノアイを輝かせる銅の巨人。『アンティーク・ギア』のエースを担うモンスターだ。そしてもう1体は――。

 

「俺は要塞の効果で手札の『古代の歯車機械』を特殊召喚する!」

 

古代の歯車機械 守備力2000

 

巨人の肩にちょこんと乗る、小さな歯車を背負った玩具のようなモンスターが姿を見せる。『アンティーク・ギア』と『ガジェット』、2つのカテゴリを持ち、その架け橋となるモンスターだ。下級が心許ない『アンティーク・ギア』では頼れる1枚であり、上級へのリリース要員となれる。

 

「そして『古代の歯車機械』の効果発動。このカードのカード名を『グリーン・ガジェット』に変更!そして『グリーン・ガジェット』となった『古代の歯車機械』を対象に魔法カード、『機械複製術』を発動!対象の同名カードを2体まで特殊召喚する!」

 

グリーン・ガジェット 守備力1200×2

 

他の『ガジェット』に名前を変更する効果、そして変更されるのはカード名のみ。攻守は変わらないので『機械複製術』の効果範囲に収まり、2体の歯車がデッキから登場する。

 

「『グリーン・ガジェット』の効果でデッキより『レッド・ガジェット』をサーチ、そして魔法カード、『手札抹殺』発動!これで手札を入れ替えた……『古代の歯車機械』をリリースし、『古代の機械合成竜』をアドバンス召喚!」

 

古代の機械合成竜 攻撃力2700

 

古びた街の上空に、4つ首のキメラが錆びた歯車を回転させ、翼を広げて飛翔する。これで彼のフィールドに上級モンスターが2体、下級モンスターが2体と充分な展開を見せた。

やはり今回も強敵だ、と桜樹は改めて気を引き締める。自分がユーゴより弱い事は自覚している。だからこそ彼の足を引っ張る事無く、むしろ助けとならなければならない。

 

「カードを1枚伏せ、ターンエンドだ」

 

オベリスク・フォースG LP4000

フィールド『古代の機械巨人』(攻撃表示)『古代の機械合成竜』(攻撃表示)『グリーン・ガジェット』(守備表示)×2

セット1

『歯車街』

手札0

 

「へっ、やっと俺のターンか、ドロー!俺は墓地の『スピード・リバース』を除外し、墓地の『SRベイゴマックス』を回収し、特殊召喚する!」

 

SRベイゴマックス 守備力600

 

待ってましたと言わんばかりにデッキからカードを引き抜き、『手札抹殺』によって墓地に送られたカードを早速活用するユーゴ。彼のデッキは墓地発動が多い為、『手札抹殺』の効果はむしろ渡りに船だったと言う訳だ。墓地に『スピード・リバース』が無ければ折角のベイゴマックスを失っていたが。そうして現れたのは赤いベイゴマを幾つも繋げたモンスター、『スピードロイド』のキーカードだ。

 

「ベイゴマックスの効果で『SRタケトンボーグ』をサーチ!特殊召喚!」

 

SRタケトンボーグ 守備力1200

 

ユーゴのフィールドに竹トンボが飛び、空中で変形して小型のロボットとなる。緩い条件を持つが、それだけに1ターンに1度しか特殊召喚出来ないのが欠点だ。

 

「タケトンボーグをリリースし、デッキからチューナーモンスター、『SR赤目のダイス』を特殊召喚!」

 

SR赤目のダイス 守備力100

 

現れたのはその名の通り、赤い1の目を輝かせたサイコロのモンスター。本来ならば墓地発動のチューナーを出す所だが、相手は2人、焦ってしまう事は避けるべきだろう。それに暗次とのデュエルで『SR三つ目のダイス』を1ターンで攻略された事を反省しているのだ。実際、モンスター効果の発動は合成竜によって封じられている為、間違いでは無いだろう。

 

「赤目のダイスの効果でベイゴマックスのレベルを6に変更!」

 

SRベイゴマックス レベル3→6

 

「いけ!ユーゴ!」

 

「応!レベル6となったベイゴマックスにレベル1の赤目のダイスをチューニング!その美しくも雄々しき翼翻し、光の速さで敵を討て!シンクロ召喚!現れろ!『クリアウィング・シンクロ・ドラゴン』!!」

 

クリアウィング・シンクロ・ドラゴン 攻撃力2500

 

ミントグリーンの透明感溢れる翼を広げ、青と白のカラーリングに彩られた美しい竜が空に舞う。幻想的で、尚且つ力強さを感じさせるその竜の姿に、敵である筈のオベリスク・フォースまで見とれて息をつく。これこそがユーゴのエースカード。

ユーゴはこのモンスターを最も信頼し、憧れるデュエリストのプレイングを模倣し、守り続けている。今までこのモンスターが破壊された事など、数える程しか無いと言う事実が物語っている。

 

「そして『SRパチンゴーカート』を召喚!」

 

SRパチンゴーカート 攻撃力1800

 

ここでユーゴが召喚したのはパチンコとゴーカートを合わせた青い機械族のモンスター。『スピードロイド』の中では高い攻撃力を持ち、優秀な効果を内蔵したカードだ。

 

「手札の『SR電々大公』を捨て、パチンゴーカートの効果発動!『古代の機械巨人』を破壊!そして墓地の『SR電々大公』を除外し、墓地の赤目のダイスを特殊召喚する!」

 

SR赤目のダイス 守備力100

 

「そしてレベル4のパチンゴーカートにレベル1の赤目のダイスをチューニング!双翼抱く煌めくボディー、その翼で天空に跳ね上がれ!シンクロ召喚!現れろ!『HSRマッハゴー・イータ』!」

 

HSRマッハゴー・イータ 攻撃力2000

 

ユーゴが新たにシンクロ召喚したモンスターは派手なピンクのボディーを持つ羽子板だ。クリアウィングと共にユーゴの隣に並び立つ。これでシンクロモンスターが2体、上々な出たしと言った所か。

 

「墓地の『SRバンブー・ホース』を除外し、デッキから『SR三つ目のダイス』を墓地へ、カードを2枚伏せ、ターンエンドだ」

 

ユーゴ LP4000

フィールド『クリアウィング・シンクロ・ドラゴン』(攻撃表示)『HSRマッハゴー・イータ』(攻撃表示)

セット2

手札2

 

「俺のターン、ドロー!俺は魔法カード、『死者蘇生』発動!墓地の『古代の歯車機械』を特殊召喚する!歯車機械の効果を発動!罠カードを宣言し、封じる!」

 

古代の歯車機械 守備力2000

 

「そして速攻魔法、『地獄の暴走召喚』を発動!デッキから2体の歯車を特殊召喚する!更に速攻魔法、『サモン・チェーン』により、このターン、俺は3回まで召喚が可能!」

 

「暴走召喚の効果で俺は『古代の機械合成竜』を特殊召喚する!」

 

「……なら俺はジュノンを特殊召喚する」

 

古代の歯車機械 攻撃力500×2

 

古代の機械合成竜 攻撃力2700×2

 

魔導法士ジュノン 攻撃力2500×2

 

バトルロイヤルルールを活かし、自分のモンスターを増やしつつ、味方のモンスターを増やす見事な連携、だがこれで桜樹のモンスターも増えた。ユーゴのモンスターはエクストラデッキのモンスターの為、特殊召喚が出来ないが、それでも充分に巻き返せる。

 

「そしてフィールド魔法、『歯車街』を発動し、1体目の歯車をリリースし、『古代の機械巨人』をアドバンス召喚!」

 

古代の機械巨人 攻撃力3000

 

「続いて2体目の歯車をリリースし、『古代の機械熱核竜』をアドバンス召喚!」

 

古代の機械熱核竜 攻撃力3000

 

巨人の次は胸に桜色に輝くコアを抱く翼竜が『歯車街』の空に飛翔する。3つの目を光らせ、ギシギシと古びた体躯を唸らせる巨竜。リリースしたモンスターが『アンティーク・ギア』と『ガジェット』の名を持つ為、完全な姿を取り戻した。

 

「そして3体目の名を『グリーン・ガジェット』に変更し、リリース!『古代の機械巨竜』をアドバンス召喚!」

 

古代の機械巨竜 攻撃力3000

 

3度の召喚権を全て使い、オベリスク・フォースのフィールドに熱核竜とは異なる巨大な翼竜が舞う。これで最上級モンスターがフィールドに3体揃った。総攻撃力は9000、壮観と言える布陣だ。

 

「ターンエンドだ」

 

オベリスク・フォースH LP4000

フィールド『古代の機械巨人』(攻撃表示)『古代の機械熱核竜』(攻撃表示)『古代の機械巨竜』(攻撃表示)

『歯車街』

手札0

 

「俺のターン、ドロー!ラメイソンの効果で墓地の『セフェルの魔導書』をデッキの一番下に戻し、1枚ドロー!」

 

桜樹 ユウ 手札3→4

 

「装備魔法、『ワンダー・ワンド』をバテルに装備!攻撃力を500アップ!」

 

魔導書士バテル 攻撃力500→1000

 

「バテルと『ワンダー・ワンド』を墓地に送り、2枚ドロー!」

 

桜樹 ユウ 手札3→5

 

「俺はジュノンの効果発動!墓地の『魔導書』魔法カード1枚を除外し、フィールドのカード1枚を破壊する!3体のジュノンの効果で墓地のセフェル、グリモ、クレッセンを除外し、3体の『古代の機械合成竜』を破壊!」

 

3体のジュノンが手元の『魔導書』をペラペラと捲り、早口で呪文を詠唱する。すると天空がゴロゴロと不気味な音を鳴らす黒雲に覆われ、青い雷が3体のキメラを貫き、黒焦げにする。これこそがジュノンの持つ強力な効果。『ダーク・アームド・ドラゴン』を専用に調整した効果にオベリスク・フォースのモンスターは容易く散る。

 

「ぐっ……!」

 

「そして2体のモンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築!エクシーズ召喚!『魔導法皇ハイロン』!!」

 

魔導法皇ハイロン 攻撃力2700

 

星を散りばめた渦が発生し、2本の光が飛び込んだ途端、凝縮して爆発が起きる。中より白煙を引き裂き、現れたのは桜樹のエースカード。黒い法衣に身を包み、華美な装飾を施した杖を振る男。彼はその杖をスッ、と構え、英知の輝きを放つ。

 

「ハイロンのORUを1つ取り除き、効果発動!墓地の『魔導書』カードの数まで相手フィールドの魔法、罠カードを破壊する!オベリスク・フォースのセットカードを破壊!」

 

「何っ!?」

 

破壊されたカードは『聖なるバリア-ミラーフォース』。本当に仕事をしない。

 

「そして『召喚僧サモンプリースト』を召喚!守備表示に!」

 

召喚僧サモンプリースト 守備力1600

 

桜樹の手は止まらない。その手より召喚されたのは黒いローブに身を包んだ魔法使いの翁。このカードの登場と共に桜樹はユーゴに目を配らせ、ユーゴも何かを察したように頷く。

 

「魔法カードを捨て、サモンプリーストの効果発動!『魔導剣士シャリオ』を特殊召喚する!」

 

魔導剣士シャリオ 攻撃力1800

 

サモンプリーストが呪文を呟き、黒い球体を発生させる。そして球体にピシリとひびが走り、中より飛び出したのは白馬に跨がる青年剣士。

 

「更に墓地の『シャッフル・リボーン』を除外、ラメイソンをデッキに戻してドロー!」

 

このカードの登場を見て、ユーゴがマッハゴー・イータの効果を使う。

 

「マッハゴー・イータをリリースし、効果発動!フィールドの全てのモンスターのレベルを1つ上げる!」

 

クリアウィング・シンクロ・ドラゴン レベル7→8

 

魔導法士ジュノン レベル7→8

 

魔導剣士シャリオ レベル4→5

 

召喚僧サモンプリースト レベル4→5

 

グリーン・ガジェット レベル4→5×2

 

古代の機械巨人 レベル8→9

 

古代の機械熱核竜 レベル9→10

 

古代の機械巨竜 レベル8→9

 

「2体のモンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築!エクシーズ召喚!『魔導皇聖トリス』!」

 

魔導皇聖トリス 攻撃力2000→3200

 

2回目のエクシーズ召喚。レベル5となった2体の魔法使いを素材として召喚されたのは純白の法衣を纏い、巨大な盾と杖を持った美しき女性のモンスターだ。ユーゴのマッハゴー・イータがあったからこそ召喚出来たモンスター、その効果も強力だ。

 

「トリスのORUを1つ取り除き、効果発動!デッキをシャッフルし、5枚を捲り、その中の『魔導書』の数までフィールドのモンスターを破壊する!めくった中にあった『魔導書』は4枚!よって巨人と熱核竜、そして巨竜と『グリーン・ガジェット』を破壊する!」

 

魔導皇聖トリス 攻撃力3200→2900

 

トリスが杖から淡い光を放ち、それを受けた『アンティーク・ギア』モンスターが次々と崩れていく。あれだけ並べられていたオベリスク・フォースのモンスターも残り1体。とんでもないタクティクスだ。

 

「まだ残ってるじゃないか、ちゃんと掃除しないとね!魔法カード、『ワン・フォー・ワン』!手札のモンスターを捨て、デッキのレベル1モンスター、『エフェクト・ヴェーラー』を特殊召喚!」

 

エフェクト・ヴェーラー 守備力0

 

桜樹のターンはまだまだ終わらない。全ての手札を使い切り、彼が召喚したのはステータスの低いチューナーモンスター。白い翼を持つ天使のような小人だが、その種族は魔法使い、優秀な効果もあって新たに採用した1枚だ。

 

「魔法カード、『死者蘇生』!墓地の『魔導皇士アンブール』を特殊召喚!」

 

魔導皇士アンブール 攻撃力2300

 

「レベル5のアンブールにレベル1の『エフェクト・ヴェーラー』をチューニング!シンクロ召喚!『エクスプローシブ・マジシャン』!」

 

エクスプローシブ・マジシャン 攻撃力2500

 

シンクロ召喚、ユーゴとの交流を得て、桜樹が会得した新たな力が火炎を纏い、その純白の姿を見せる。だがまだまだ、桜樹はこれだけでは満足しない。彼はユーゴを越える為、更なる高みへ手を伸ばしたのだ。

 

「リバースカードオープン!魔法カード、『ミラクルシンクロフュージョン』!フィールドの『エクスプローシブ・マジシャン』と墓地のシャリオを除外し、融合!融合召喚!『覇魔導士アーカナイト・マジシャン』!!」

 

覇魔導士アーカナイト・マジシャン 攻撃力1400→3400 魔力カウンター0→2

 

シンクロモンスターを素材とした融合召喚、圧倒的なエネルギーの奔流をその身に宿し、桜樹のフィールドに現れる漆黒の鎧から青い光を放つ魔導士。

これこそが桜樹の奥の手、エクシーズ、シンクロ、融合の3つの召喚法をマスターした男の実力。正しくユースクラス最強に相応しい実力だ。

 

「……おいおい……こりゃ俺がいなくても良かったんじゃねーか?」

 

「そんな事無いさ、お前がいなかったら、俺はここまで強くなってない。見せてやるよユーゴ!俺の力を!『覇魔導士アーカナイト・マジシャン』の魔力カウンターを1つ使い、『グリーン・ガジェット』を破壊!」

 

覇魔導士アーカナイト・マジシャン 攻撃力3400→2400 魔力カウンター2→1

 

ついにオベリスク・フォースのモンスター達が全て破壊される。破壊されたカードは合計9枚、まるで嵐のように吹き荒れる魔法を受け、オベリスク・フォースの表情が歪む。

 

「これで終わりだ!ハイロンとトリスで1人目に、『覇魔導士アーカナイト・マジシャン』とジュノンで2人目にダイレクトアタック!」

 

オベリスク・フォースG LP4000→0

 

オベリスク・フォースH LP4000→0

 

激闘を制したのはユーゴと桜樹、次元を越えた絆の力は、アカデミアのコンビネーションをも越え、見事勝利をもぎ取った。

 

――――――

 

「良いのか?俺が離れてよ」

 

「あぁ、頼む。この大会には俺なんかより守らなきゃいけない子達がいるんだ。だから――」

 

「助けになってやってくれ、だろ?分かったよ、だけどお前達も無理すんなよ?」

 

「あぁ、早く帰って、エアコンの電源をOFFにしないとな」

 

「うぐっ」

 

オベリスク・フォースを退けたユーゴと桜樹。状況が漸く落ち着いた桜樹はユーゴと共に仲間達を外へと運び、ユーゴに頼みがあると切り出した。

その内容はこの会場で今尚闘う、ジュニアユースの選手達をアカデミアより守る事、自分よりもずっと実力が高いユーゴならと思って彼に依頼したのだ。ユーゴも桜樹の頼みならと快く引き受けた。

 

「まぁ、任せとけって!俺が何とかしてやるからよ!」

 

「お前も気をつけてくれよ。頼みはしたけど、ちゃんと無事で戻って来い」

 

「当然!じゃあ気をつけろよ!」

 

互いに信頼を含んだ言葉を交わし、ユーゴは白いD-ホイールに跨がり、火山エリアを駆けていく。その先に見据えたのは氷山エリア。親友の頼みを受け、ユーゴは突き進む。

だが彼は気づかない。道中――黒い甲冑を纏った男と入れ違った事を。

 

――――――

 

一方、氷山エリアでは、何とか柚子と合流したセレナが互いの衣服と髪型をチェンジしていた。事の発端は柚子の言葉だった。彼女はどうせ狙われているなら、と相手を混乱させる為、見た目を交換しようと切り出したのだ。

そうして黄色いリボンで何時ものポニーテールをツインテールに結び、舞網第2中学の衣装を纏ったセレナはSALと他のエリアを目指し駆け、ツインテールをポニーテールに結び直し、セレナの赤いジャケットを纏った柚子は遊矢達の下へ急ごうと思ったのだが――その時、彼女の前に現れた者は――。

 

「遊……矢……?」

 

アカデミアのものであろう、紫色の軍服に身を包み、獲物を狙うように紅の目を細める少年。その顔つきは幼なじみである柚子がほんの一瞬であるが遊矢に見間違う程に似通っているが、その口元には遊矢のものとは全く異なる歪んだ笑みが描かれている。

左腕に巻かれたデュエルディスクの形状は盾、それを視界におさめた柚子は直ぐ様デュエルディスクを構える。

 

「……君、本当にセレナかい?何だか賢そうに見えるんだけど」

 

「しっ、しつれーな!私はセレナだ!や、やっつけるぞぉ、きさま!」

 

「あはは、その平仮名っぽい感じ、セレナだ」

 

柚子とセレナの少しの顔つきを察してか、顎に手を当てうーむと唸る少年。不味い、柚子は直ぐ様眉を無理矢理吊り上げ、口調もセレナに似せる事でバレる事を防ぐ。

腹を抱えて笑う少年を見て、心の中でトホホと涙し、照れたのは内緒である。

 

「あの猿がいないのは気になるけど――まぁ、良いや、アカデミアに戻って貰うよ。力づくでね」

 

やはりアカデミアの敵らしい。恐らくはこの少年が遊矢の言っていた融合と言う少年だろうと思い、柚子はゴクリと喉を鳴らす。彼を迎え撃とうとしたその時――。

 

「見つけたぞ、ユーリ」

 

不意に透明感のある声が波紋のようにその場に響き渡る。どこかで聞いた事がある声、その出所を探し、少年と柚子は空を見上げる。

そこにはふわりと白いフードつきのマントを揺らし、鉄の仮面を被った男が跳び、トンと氷面に降り立つ。この男は確か――ナイト・オブ・デュエルの――柚子がそこまで考えた時、少年が眉をひそめ、不快そうに男を睨む。

 

「何?君、邪魔だよ。カードにされたいの?」

 

「邪魔しに来てやった」

 

少年、ユーリの言葉を受け、フンと鼻を鳴らし、皮肉で答える男。柚子はそんな彼に対し、どこか違和感、いや、むしろ慣れた感覚を覚える。

この透き通った声も、皮肉屋な所も、まるで――何故か男の背を心配そうに見つめる柚子に対し、男は少し顔を振り向かせ、ポツリと呟く。

 

「……瑠璃……いや……別人か、下がっていろ、君を傷つけたくない」

 

「え?貴方、瑠璃を知って――」

 

まるで、ユートのような台詞を放つ男。男の瑠璃と言う言葉に反応し、柚子が手を伸ばした瞬間、バサリ、男が纏ったマントを放り投げ、仮面と共に宙へと捨てる。後ろにいた柚子は彼が投げたマントを風によって被ってしまい、「わぷっ」と間の抜けた声を漏らす。

視界は真っ白、急いで柚子がもがく中、ユーリは紅の眼を見開き、「へぇ……!」と喜色を含んだ声を三日月のように吊り上げた口から放つ。

一体何が――漸くマントを脱ぎ捨て、「ぷはっ」と息を吐き出した柚子の眼前に存在したのは――。

 

「忘れたとは言わせんぞ――この顔を――!」

 

黒いジャケットを纏った背、肩にかけられた大きなヘッドフォン、黄金のデュエルディスクを左腕に嵌め、つばの欠けた黒い帽子を被ったその少年は――。

 

「コナ……ミ……?」

 

彼女の家で住む、居候と似ていた――。




人物紹介15

桜樹 ユウ
所属 LDS
昨年のチャンピオンシップの覇者。どうやって勝鬨君に勝ったのかは分からないが覇者ったら覇者。多分神判が制限とかだったんじゃないかなと思われる。後、勝鬨君が勝鬨ったのか。
覇者になってからは天狗になり、努力を余りしていなかったが、ユーゴを拾い、居候となってからはテーブルデュエルでユーゴにボッコボコにされ、リベンジを果たすべく努力を始める。そんな彼に影響され、ユースの皆も一層努力したとか。
今では融合、シンクロ、エクシーズを会得し、自他共にユース最強となる。
ユーゴとは息がぴったり合った親友であり、ライバル。因みにグレートモス使いの彼とは仲が良い。
使用デッキは『魔導』。エースカードは『魔導法皇ハイロン』。

おまけ

ナイト・オブ・デュエルの人「3回戦まで進んだか……試合前にウ○コしとくか……」ガチャ
黒いの「(デュエルを)やらないか」
ナイト・オブ・デュエルの人「」
この後めちゃくちゃデュエルをして仮面とマントを奪ったとか。因みに黒咲さんと同じ入り口で待機して遊矢君を探してたら眉毛の方を見つけたとか。赤いのについては知りません。

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