遊戯王ARC―V TAG FORCE VS   作:鉄豆腐

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忘れていましたが禁止制限は以前のものを使っています。90話まではこのままで。
ところでアニメのズァークは5色のてんこ盛りカードとか。めっちゃ欲しけど裁定がクソ面倒臭そう。
ダベリオンも覇王バージョンになるし何で絵違いをあれにしてくれなかったんだ。


第70話 はぁ?何だこいつ

「俺のターン、ドロー!」

 

続く榊 遊矢&黒咲 隼VSオベリスク・フォース・サンダー&オベリスク・フォース・エアーのデュエル。激しさを増す中、ターンプレイヤーのサンダーがデッキより1枚のカードを引き抜く。これで手札は2枚、さて、どう出て来るか。

 

「魔法カード、『強欲で貪欲な壺』を発動!デッキの上から10枚を除外し、2枚ドロー!更に『貪欲な壺』を発動!墓地のドラゴン・バスター2体と『サンダー・ドラゴン』を回収し、2枚ドロー!」

 

オベリスク・フォース・サンダー 手札1→3→4

 

「俺様はフィールド魔法『ユニオン格納庫』を発動!処理として『Z―メタル・キャタピラー』をサーチ!そして魔法カード、『予想GUY』!デッキから通常モンスター、『X―ヘッド・キャノン』を特殊召喚!」

 

X―ヘッド・キャノン 攻撃力1800

 

発動されたのは自分フィールドにモンスターが存在しない事を条件にした、デッキからレベル4以下の通常モンスター1体を特殊召喚するカード。これによりフィールドに召喚されたのは、両肩に黒光りするキャノン砲を伸ばした青と黄のカラーリングのロボット。

 

「更に『Y―ドラゴン・ヘッド』を召喚!」

 

Y―ドラゴン・ヘッド 攻撃力1500

 

次に登場したモンスターは真紅のボディを輝かせる機竜。その巨大な翼を広げ、天へと飛翔し、ライズ・ファルコン達を睨み付ける。これでX、Yの2体が揃い――。

 

「『ユニオン格納庫』の効果により、ドラゴン・ヘッドにデッキの『Z―メタル・キャタピラー』を装備!」

 

Y―ドラゴン・ヘッド 攻撃力1500→2100

 

Zがフィールドに登場する。黄色いボディにモノアイを光らせ、キャタピラを回転させる機械族のモンスター。ギャリギャリと音を立てて走行し、ドラゴン・ヘッドと合体する。

 

「刮目しろ!フィールドの『X―ヘッド・キャノン』と『Y―ドラゴン・ヘッド』、そして『Z―メタル・キャタピラー』を除外し、融合召喚!『XYZ―ドラゴン・キャノン』!!」

 

XYZ―ドラゴン・キャノン 攻撃力2800

 

ガシャン、3体のモンスターが分裂して天へと飛翔し、稲妻を放つ。メタル・キャタピラーの身体へとドラゴン・ヘッドが合体し、更にヘッド・キャノンがその上に降り立つ。

3体合体、完成、『XYZ―ドラゴン・キャノン』。ABCと対を為す融合モンスターが肩のキャノンを唸らせ、雄々しく吠える。

 

「また合体モンスター……!」

 

「ふん、今度はさっきのものよりマシに見えるが……」

 

「俺は更に墓地のA、B、Cを除外し、融合召喚!『ABC―ドラゴン・バスター』!!」

 

ABC―ドラゴン・バスター 攻撃力3000

 

更に姿を見せる2頭の機竜。これでABCとXYZ、2体の合体モンスターが揃った。だがこれだけでは終わらない。合体ロボと合体ロボが2体揃ったならば――2体で合体するのがお約束と言うものである。

 

「とくと見るが良い!愚か者共!これが俺様の切り札!2体のモンスターを更に合体!融合召喚!『AtoZ―ドラゴン・バスターキャノン』!!」

 

AtoZ―ドラゴン・バスターキャノン 攻撃力4000

 

2体の融合モンスターに使用されたA、B、C、X、Y、Zの6体が分裂し、再びヘッド・キャノンの両肩にメタル・キャタピラーのパーツが角のように伸び、黒光りするキャノン砲にバスター・ドレイクのカノンが合体してレールガンとなる。更に両腕にバスター・ドレイクとクラッシュ・ワイバーンの身体がアームとなって装着される。脚になったメタル・キャタピラーの腕よりバスター・ドレイクとクラッシュ・ワイバーンの首が伸び、その下に合体したのはドラゴン・ヘッド、バスター・ドレイクとクラッシュ・ワイバーンの翼と首を得、更に下にはアサルト・コアが輝きながら尾を振るう。

 

「6体合体だと……!?DからWはどこへいった!?」

 

『カッコE』

 

「フハハハハ!これこそが我が最強の僕!さぁ行け!ドラゴン・バスターキャノン!ライズ・ファルコンに攻撃ィ!」

 

「罠発動!『RR―レディネス』!このターン、俺の『RR』は破壊されな――」

 

「ヴァカめ!手札を捨て、ドラゴン・バスターキャノンの効果発動!相手のモンスター、魔法、罠の発動を無効にし、破壊する!更に分離して攻撃へ――」

 

「移っても構わんさ!ライズ・ファルコンが破壊される前に!罠発動!『仁王立ち』!ライズ・ファルコンの守備力を2倍にし、除外してこのモンスターに攻撃対象を絞る!」

 

RR―ライズ・ファルコン 守備力2000→4000

 

隼の発動した『RR』最強の防御札、レディネスの効果がドラゴン・バスターキャノンの放つレールガンによって封じられ、そのままライズ・ファルコンを丸ごと呑み込む。手札を1枚捨てる事で発動される究極の無効化効果。これでは気安く行動する事が出来ない。

 

黒咲 隼 LP4000→3100

 

「ぐ――!」

 

「ククク、かわすか、だが俺にはまだ1枚手札が残っている。ターンエンドだ精々足掻け!」

 

オベリスク・フォース・サンダー LP1000

フィールド『AtoZ―ドラゴン・バスターキャノン』(攻撃表示)

『ユニオン格納庫』

手札1

 

これで次のターン、遊矢は1度だけだがカードの発動を封じられてしまった。やはり侮れない強敵だ。だが、遊矢はそんな彼のデュエルに心を踊らせれている事に気づく。彼等の扱う、見るも楽しい合体ロボットカード、それは確かに――エンターテイメントだと。

 

様々なモンスター達が変形し、合体を繰り返す、男のロマンが詰まったデュエル、それは確かに面白い。6体合体、こんなロマンが感じられるカードがフィールドに登場したのだ。もう遊矢はドキドキワクワクを止められない。

 

だがそれだけで遊矢は満足出来ない。もっともっと盛り上げたい。いや、違う、遊矢の中のエンタメデュエリストの性が言っているのだ。このデュエル――目立つのは俺だ――と。案外遊矢も負けず嫌いと言う事か。

 

「Ledies and Gentlemen!お楽しみは、これからだぁっ!!」

 

両手を咲き誇る花のように広げ、天に向かって雄々しく叫ぶ。突如放たれた開演の口上。その主たる遊矢へと、3人の視線と言う名のスポットライトが注がれる。

だがその表情にあるのは驚きと戸惑い。それもそうだ、隼は兎も角、オベリスク・フォースの2人はエンタメデュエル等、知る筈も無い。

 

「はぁ?何だお前」

 

思わずサンダーの口から呆れたような言葉が放たれる。それも仕方無いだろう、突然こんな事をする少年を前に、驚かない方が珍しい。しかも彼等が警戒しているのはどちらかと言うと隼だ。

彼はレジスタンスの生き残りにして、今まで何人ものアカデミアの兵を倒して来た為、その実力を知られ、要注意人物とされているが、遊矢は別、2人も遊矢の事はおまけ程度にしか考えていない。つまる所、隼に比べ、侮られているのだ。

しかし遊矢にはそんな事は関係無い。

 

「貴方達のフィールドには変形、合体を繰り返し、男達のロマンを擽るモンスター、ドラゴン・バスターキャノンとマグネット・バルキリオンが揃い、Mr.黒咲のライズ・ファルコンが倒されてしまいました!私もエースカードである『オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン』が封じられ大ピンチ!」

 

「ほう、分かってるじゃないか!そうだろう、そうだろう!俺のドラゴン・バスターキャノンは格好良いだろう!」

 

「待て遊矢、俺のライズ・ファルコンは倒されていない。休んでいるだけだ。あと急な名字呼びはこう、クるものがある」

 

「俺もいるぞ!」

 

外野がうるさいが今は無視だ。遊矢は左目を閉じ、ウィンクを飛ばし、右手の指をパチンと鳴らす。良い感じに興味が集まって来た。

 

「しかし!このエンタメデュエリストである榊 遊矢!助手である隼と共に見事この危機を乗り越えて見せましょう!」

 

「助手……ほう、それで何を手伝えば良い……工作なら任せろ!」

 

「ふん――面白い、出来るものならやってみろ!」

 

隼がワクワクと笑みを浮かべて遊矢へと振り向き、サンダーが口端を吊り上げ、挑発的な態度を取る。ならば――お言葉に甘え、このデュエルを更に盛り上げて見せようと、遊矢は閉じた目を開き――灰色に染まった瞳を輝かせる。

瞬間、それを見た隼は目を見開いて息を呑む。これは自分とのデュエルでも発現された状態、遊矢とユートのエクシーズ。

 

『俺のターン、ドローッ!!』

 

引き抜かれる1枚のカード、さぁ見せようでは無いか、勝利への方程式を。

 

「魔法カード、『エンタメ・バンド・ハリケーン』!自分フィールドの『EM』モンスターの数まで相手フィールドのカードをバウンスする!俺の『EM』は2体!ドラゴン・バスターキャノンとマグネット・バルキリオンをバウンス!」

 

「手札を捨て、その効果を無効に!」

 

「ドクロバット・ジョーカーを召喚!」

 

EMドクロバット・ジョーカー 攻撃力1800

 

遊矢の手から召喚されたのは『EM』におけるキーカード。遊矢のデッキの3大カテゴリ、『オッドアイズ』、『魔術師』、『EM』の内1枚をサーチする強力なカードだ。今までのデュエルでも彼に大きく貢献し、自身の重要さをこれでもかと言う位アピールしている。

継ぎ接ぎだらけのハットに黒い仮面、トランプのマークを散りばめた燕尾服を纏う金髪の道化師は、その口元に頼もしい笑みを描き、自身の立つ地をコツコツと爪先で叩く。

 

「ドクロバット・ジョーカーの召喚時、デッキから『EMギタートル』をサーチ!」

 

するとパタリと地面が捲れ上がり、巨大な石板が登場する。まるで古代エジプトの壁画のように、石板に描かれていたのは人間達に火炙りにされているギタートル。ドクロバット・ジョーカーが瞬時に右手の指を鳴らすと、ポン、と石板が煙を上げ、晴れたそこにあったのは1枚のカード。ドクロバット・ジョーカーは即座にその1枚を遊矢に投げる。

 

「俺は更に『EMギタートル』と『EMリザードロー』の2枚でペンデュラムスケールをセッティング!ギタートルとリザードローの効果で2枚ドロー!」

 

榊 遊矢 手札7→8→9

 

『そして『EMレ・ベルマン』をセッティング!』

 

「ペンデュラム召喚!『EMリザードロー』!」

 

EMリザードロー 守備力100

 

更なる展開、遊矢が上空の魔方陣へと手を翳し、孔が開き、中より2本の柱がフィールドに降り注ぐ。現れたのはカードの襟巻きを巻いた蜥蜴。これで遊矢のフィールドには4体のモンスターが揃い、騒がしく、慌ただしくなる。

 

『レ・ベルマンのペンデュラム効果!』

 

「自分フィールドのペンデュラム召喚されたモンスターのレベルを1つ上げる!」

 

EMヘイタイガー レベル4→5

 

EMインコーラス レベル3→4

 

EMリザードロー レベル3→4

 

フィールドにベルの音が響き渡り、ドクロバット・ジョーカー以外のモンスターのレベルが1つずつ上がっていく。一見して意味の無い行動に見えるが――隼は見抜く。遊矢と、そしてユートの狙いを。

 

「レベル4となったリザードローとドクロバット・ジョーカーの2体でオーバーレイ・ネットワークを構築!」

 

『漆黒の闇より愚鈍なる力に抗う反逆の牙!今、降臨せよ!エクシーズ召喚!』

 

「現れろ!『ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン』!!」

 

ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン 攻撃力2500

 

黒雲が遊矢のフィールドを覆い尽くし、赤き雷鳴が轟く。鈍い光が煙を引き裂き、中より現れたのは漆黒の竜。刃の如く鋭く尖った翼を広げ、妖しく輝く逆鱗を震わせるユートのエースカード。その体躯に走る深紅の血流を閃かせ、サンダーのドラゴン・バスターキャノンを睨む。

 

「ダーク・リベリオンのORUを2つ取り除き、効果発動!ドラゴン・バスターキャノンの攻撃力を半分にしてその数値分このカードの攻撃力をアップする!トリーズン・ディスチャージ!」

 

「フン、凡才が考えそうな事だ!ドラゴン・バスターキャノンを除外し、除外されている『XYZ―ドラゴン・キャノン』と『ABC―ドラゴン・バスター』を特殊召喚!」

 

XYZ―ドラゴン・キャノン 攻撃力2800

 

ABC―ドラゴン・バスター 攻撃力3000

 

ドラゴン・バスターキャノン最後の効果が発動される。自身の融合を解除し、素材となった2体に分裂する『融合解除』を内蔵した効果により、ダーク・リベリオンの雷撃が不発となる。

高笑いし、勝利を確信するサンダー。しかし遊矢の手は止まらない。直ぐ様手札の2枚を翳し、追撃をかける。

 

『ならばこれはどうかな?魔法カード、『融合』を発動!』

 

「何ぃ!?」

 

これでダメでも次の演目がある。雪崩の如く襲いかかる遊矢のエンタメ、手を変え品を変え、千変万化のエンターテイメントが華々しく披露される。

彼の背後に青とオレンジの渦が巻き起こり、その中へとピンクのカバと『ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン』が吸い込まれていく。

 

「手札の『EMディスカバー・ヒッポ』と『ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン』を融合!」

 

『融合召喚!出でよ!野獣の眼光りし獰猛なる龍!『ビーストアイズ・ペンデュラム・ドラゴン』!』

 

ビーストアイズ・ペンデュラム・ドラゴン 攻撃力3000

 

『ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン』の眼が『オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン』のように2色に輝き、その身体を発光させて姿を変えていく。青い体毛が生え、獣骨の鎧を纏い、額に黄金の眼が開く。これぞ遊矢とユート、2人の力を重ね、合わせた力。ペンデュラムからのエクシーズ、エクシーズからの融合。今まで培って来たものが一直線に結ばれ、振り子のように揺れる。

 

「ペンデュラムにエクシーズ、それに融合だと……!?貴様、一体幾つの召喚法を……!」

 

「バトルだ!ビーストアイズでドラゴン・キャノンを攻撃!」

 

『ヘルダイブバースト!』

 

野獣の眼を持つ竜のアギトより、赤き熱線が放たれ、ドラゴン・キャノンに襲いかかる。ドラゴン・キャノンもその肩の砲門より黄金のレーザーを放ち、応戦するも――灼熱の炎が、それを食らい尽くし、サンダーを貫く。

 

オベリスク・フォース・サンダー LP1000→800

 

「ビーストアイズの効果により、素材となったディスカバー・ヒッポの攻撃力、800のダメージを与える!」

 

「これが、エンタメデュエル……!ククク、合格だ榊 遊矢!だが覚えていろ!下には下がいる事を!次に勝つのはこの万じょ――」

 

オベリスク・フォース・サンダー LP800→0

 

オベリスク・フォース・エアー LP3100→2300

 

黒咲 隼 LP3100→2300

 

相変わらずの高笑いをその場に響かせ、遊矢を睨み、右手の指を突きつけるサンダー。彼が沢渡のように遊矢のエンタメデュエルを越えるリベンジの言葉を残し、極太の熱線に呑み込まれ――敗北した事により、光の粒子となってアカデミアに強制送還される。

残されたのは、カランと音を立て、地面に落ちるオベリスク・フォースの仮面。砕け散るそれを見て、エアーが遊矢を射抜くように睨む。

 

「――まさかサンダーを倒すとは――面白い……!」

 

「ッ!俺はカードをセットし、ターンエンドだ」

 

榊 遊矢 LP4000

フィールド『ビーストアイズ・ペンデュラム・ドラゴン』(攻撃表示)『EMヘイタイガー』(攻撃表示)『EMインコーラス』(守備表示)

セット1

Pゾーン『EMギタートル』『EMレ・ベルマン』

手札5

 

サンダーを倒し、残る敵はエアー1人。2対1ならば有利に進む筈だ。しかしそう簡単には事を運ばせてくれない。

この男、エアーとて、サンダーに負けず実力者。いや、もしかすると――サンダーよりも、その実力は高いかもしれない。サンダーを倒し、ユートとのエクシーズが解除され頬を緩める遊矢だが、直ぐに目を見開き気を引き閉める。何故なら――目の前のエアーが赤く迸る程の闘気を纏っていたから――。

 

「ッ!もしかしてこれ、今の状態じゃ無くなったらヤバいんじゃ無いか?」

 

『仕方あるまい、どう言う条件でああなるか分からない上、長続きしないからな』

 

思わず不安になって呟く遊矢に、エクシーズが解除され、ふわふわと遊矢の側を浮遊するユート。先程までの状態はユートの意志も明確に現れ、とんでも無い集中力と2人分の閃き、ドロー力が得られるのだが、そんな強化が何時までも続く筈が無い。それが無くなった今、この男を倒せるかどうか。しかし、そんな不安となる遊矢に、ユートがフッ、と薄い笑みを浮かべる。

 

『安心しろ。俺達には――頼れる友がいる』

 

「――そうだな」

 

隣で共に闘う友に視線を移し、遊矢も頷く。黒咲 隼、サンダーにもエアーにも匹敵する、強力なデュエリスト。遊矢は闘ったからこそ、その強さを知っている。

鉄の意思、鋼の強さ、その力と向き合ったからこそ、これ以上心強い仲間はいない。それに――彼は、遊矢と闘った時よりも、更に強くなっている。

それが、遊矢には嬉しい。絆をもう1度得たからこそ、彼が強くなった事が嬉しい。

 

「俺のターン、ドロー!まずは墓地の『電磁石の戦士』3体を除外し、ベルセリオンを特殊召喚!!」

 

電磁石の戦士マグネット・ベルセリオン 攻撃力3000

 

「ベルセリオンの効果で墓地のδを除外し、榊 遊矢のセットカードを破壊!」

 

「罠発動!『スキル・プリズナー』!このターン、インコーラスを対象を取るモンスター効果から守る!」

 

「魔法カード、『手札抹殺』!手札を入れ換え、更に魔法カード、『強欲で貪欲な壺』を発動!デッキの上から10枚を除外し、2枚ドロー!」

 

オベリスク・フォース・エアー 手札3→4

 

「そしてバルキリオンをリリースし、墓地の『磁石の戦士α』、β、γを特殊召喚!」

 

磁石の戦士α 攻撃力1400

 

磁石の戦士β 攻撃力1700

 

磁石の戦士γ 攻撃力1500

 

「更に再び3体をリリースし、バルキリオンを特殊召喚!!」

 

磁石の戦士マグネット・バルキリオン 攻撃力3500

 

「ベルセリオンの効果発動!墓地の『磁石の戦士α』、β、γ、δ2体を体を除外し、黒咲のサテライト・キャノン・ファルコン及び榊 遊矢のモンスター、そして『EMギタートル』、『EMレ・ベルマン』を破壊!バトルだ!マグネット・バルキリオンで黒咲に攻撃!」

 

「墓地の『RR―レディネス』を除外し、ダメージを0に!」

 

エアーのフィールドのマグネット・バルキリオンが駆け抜け、隼のフィールドに襲い来る。しかし彼の前に透明のバリアが発生し、攻撃を防ぐ。ダメージが0となるならば――ターゲットは変更される。

 

「マグネット・ベルセリオンで『EMインコーラス』を攻撃!」

 

「ぐっ――!」

 

続けてマグネット・ベルセリオンが遊矢のフィールドに向かい、インコーラスへと槍を振るう。貫かれ、光の粒子となって消え去るインコーラス。だが――これで終わりじゃない。

「インコーラスの効果でデッキから『EMロングフォーン・ブル』を特殊召喚!」

 

EMロングフォーン・ブル 攻撃力1600

 

現れたのは角に電話をかけた牡牛のモンスターだ。ジリリと受話器を鳴らし、仲間を呼び込む。

 

「効果で『EMバリアバルーン・バク』をサーチ!」

 

「速攻魔法、『瞬間融合』!フィールドのマグネット・バルキリオンとマグネット・ベルセリオンで融合!融合召喚!『超電導戦機インペリオン・マグナム』!!」

 

超電導戦機インペリオン・マグナム 攻撃力4000

 

突如空間に亀裂が走り、渦が発生する。2体の磁石の戦士はその中へと飛び込み、それぞれ分裂し、6体の『マグネット・ウォリアー』となり、再び合体する。

上半身はマグネット・バルキリオンを基調とし、ベルセリオンの装甲を纏い、下半身は馬のようになり、翼を伸ばした姿。更に右手には鋭さを増した磁石の剣を握り、左肩にはバチバチと青い雷が散るレールガンを背負っている。

6体合体、完成、『超電導戦機インペリオン・マグナム』。『マグネット・ウォリアー』最強にして、エアーの切り札が降臨した。

 

「インペリオン・マグナムでロングフォーン・ブルを攻撃!」

 

「く――!手札の『工作列車シグナル・レッド』の効果発動――」

 

「インペリオン・マグナムの効果により、モンスター、魔法、罠の効果を無効に!」

 

「バリアバルーン・バクを捨て、戦闘ダメージを0に!」

 

「遊矢!」

 

インペリオン・マグナムの左肩のレールガンより雷が迸り、青い砲弾となってロングフォーン・ブルを撃ち抜く。バリアバルーン・バクによってダメージは防がれるが、強烈な爆風が遊矢を吹き飛ばし、遺跡の壁へとその身を打ち付け、隼が心配の声を上げる。

 

「まだだ!速攻魔法、『融合解除』!インペリオン・マグナムをデッキに戻し、素材となるバルキリオンとベルセリオンを特殊召喚!」

 

磁石の戦士マグネット・バルキリオン 攻撃力3500

 

電磁石の戦士マグネット・ベルセリオン 攻撃力3000

 

更なる追撃、素材での攻撃、バトルフェイズ中の融合、そして解除と畳み掛けるような展開。激しい火花が散る一瞬に、2人は息を呑む。やはり、この男は強い。

 

「バルキリオンでダイレクトアタック!」

 

「手札から『EMジンライノ』を捨て、バリアバルーン・バクを蘇生!」

 

EMバリアバルーン・バク 守備力2000

 

お次はとぼけた顔をした風船のようなバク。『EM』では優秀な壁となり、遊矢を守ってくれる頼れる仲間だ。

 

「くっ、バルキリオンで攻撃!」

 

「墓地の『EMジンライノ』を除外し、その破壊を防ぐ!」

 

「なんて固い……!ベルセリオンで攻撃!」

 

押しても引いても遊矢の鉄壁の布陣は崩せない。歯を食い縛り、強引に突破した頃にはもう手数が尽きている。

そんな彼だからこそ、黒咲は負けたと思ったのだ。ふんぎと粘る遊矢を見て、黒咲がその口元に笑みを浮かべる。

 

「メインフェイズ2、魔法カード、『融合』!再びバルキリオンとベルセリオンを融合!融合召喚!『超電導戦機インペリオン・マグナム』!!」

 

超電導戦機インペリオン・マグナム 攻撃力4000

 

再びエアーのフィールドに姿を見せる最強の『マグネット・ウォリアー』。青い稲妻を迸らせ、火花を散らす磁石の戦機。圧倒的な威圧感を放つその姿に遊矢は思わず後ずさる。強い、確かに他のオベリスク・フォースより遥かに強い。だがそれでも――遊矢は信じる。隼の勝利を。

 

「ターンエンドだ」

 

オベリスク・フォース・エアー LP2300

フィールド『超電導戦機インペリオン・マグナム』(攻撃表示)

『禁止令』

手札0

 

「……」

 

スッ、と瞼を閉じ、隼は思考する。何故だろうか、圧倒的に不利な状況、確かに今までならばそれでも不安は無く、鼻で笑い飛ばし、自らの力に任せて相手を組伏せて来ただろう。

たが今は――それ以上に脱力し、リラックスしている。張りつめた弦のような感覚は無い。楽しい、デュエルをするのが楽しいのだ。思わず微笑む。やはり、こうで無くてはデュエルじゃない。

だがまだまだ満足出来ない。もっともっと面白くなれる、もっともっと高みに飛ぶ為に――。

 

「さぁ、反逆のエンターテイメントを始めようか!俺のターン、ドロー!行くぞ!魔法カード、『RUM-ソウルシェイブ・フォース』!LPを半分払い、墓地のフォース・ストリクスを特殊召喚し、2つ上のランクのエクシーズモンスターへとランクアップする!」

 

黒咲 隼 LP2300→1150

 

「無駄だ!インペリオン・マグナムは1ターンに1度、モンスター、魔法、罠の効果を無効にし、破壊する!」

 

隼の発動した一発逆転の一手、『RUM』がインペリオン・マグナムの放つ斬撃により切り裂かれ、真っ二つにされる。これではLPを失っただけ。しかし、隼のエンタメデュエルは幕を上げたばかり、終わって等いない。

 

「お楽しみはこれからだ!俺は墓地の『RUM-レイド・フォース』と手札の『RR―バニシング・レイニアス』を除外し、『RUM-ソウルシェイブ・フォース』を回収し、再び発動!墓地の『RR―レヴォリューション・ファルコン』をランクアップさせる!ランクアップ・エクシーズ・チェンジ!『RR―サテライト・キャノン・ファルコン』!」

 

黒咲 隼 LP1150→575

 

RR―サテライト・キャノン・ファルコン 攻撃力3000

 

この程度で不屈の闘志は燃え尽きない。それどころかLPを燃やし、隼は更なる高みへ昇る。墓地より火炎に包まれたレヴォリューション・ファルコンが現れ、大気圏を突破し、その灰色の翼に純白の装甲を纏い、宇宙の彼方から砲門を向ける。

 

「サテライト・キャノン・ファルコンの効果で相手の魔法、罠を破壊し、ORUを取り除き、インペリオン・マグナムの攻撃力をダウン!」

 

超電導戦機インペリオン・マグナム 攻撃力4000→0

 

「これが――エンタメデュエル――!」

 

天上に明滅する、赤き太陽のような光を見上げ、エアーが呟く。これが黒咲 隼のエンタメデュエル、その光の奔流が――全てを呑み込む。

 

「サテライト・キャノン・ファルコンでインペリオン・マグナムへ攻撃!エターナル・アベンジ!」

 

オベリスク・フォース・エアー LP2300→0

 

決着、勝者――榊 遊矢&黒咲 隼――。

 

――――――

 

「よう、お前も負けたか」

 

榊 遊矢と黒咲 隼との激闘後、アカデミアにて、長い廊下の壁に背を預け、エアーの帰還を待っていた男がそこにいた。暗がりで顔に影が射し、その表情は分からないが、どうやらエアーを馬鹿にして笑っているらしい。

 

「……お前だって負けただろう……」

 

「フン、俺様はまだ本気を出していない!」

 

「ふ、そうか……で、これからどうする?」

 

「奴からの任務であるスタンダード次元の実力は充分理解した……後はシンクロ次元だが……折角だ、ここを去る前に、あのハゲの企みを台無しにしてやろう」

 

「と、言うと――プロフェッサーの集めている少女の解放か」

 

エアーの問いかけに男、サンダーがニヤリと笑みを浮かべて頷く。だがそれには門番であるデュエリストを倒さねばならない。仕方無いかとエアーは溜め息をつき、懐から3枚のカードを取り出す。

 

「……何だ、それは?」

 

「ん、これか?スタンダードに着く前にプロフェッサーの部屋からくすねて来たカードだ――」

 

――――――

 

一方、スタンダード次元、火山エリアにて、桜樹 ユウは他の出場者を保護する為、フィールドを駆けていた。ユーゴには早くここから離れるようにと言われたが、彼の中にある良心や正義感が満身創痍の身体を突き動かしていたのだ。そうして行動を開始する内に、彼は意外な人物と合流していた。

紫色の癖毛に鋭い目付き、身体中に獣傷を負いながらも逞しい肉体を持つ少年、その名は――。

 

「そっちは大丈夫か、勝鬨?」

 

「ああ、どうやらここには誰もいないようだな」

 

勝鬨 勇雄。一眠りした為か、見事回復した彼は権現坂と別行動に移り、桜樹と共にオベリスク・フォースの迎撃をしていた。昨年のチャンピオンシップ優勝者と準優勝者のタッグだ。敵う者はいない。

 

「調べてないのは火山エリアの西側か」

 

「そうだな……しかし、お前……変わったな……」

 

勝鬨が積極的に人助けをする光景を見て、桜樹が呟く。そう、勝鬨は変わった。実際桜樹の知る勝鬨は試合中リアルファイトを挑んで来てフィールドを破壊し、足を滑らせその下敷きになって気絶した男なのだが。

 

「むっ、その話は止めろ、むず痒い」

 

照れたように頬を掻く勝鬨。彼にとってリアルファイトで勝利して来た事は黒歴史のようなものなのだ。と、談笑する彼等の前に――ガシャン、と金属音が響く。

鉄と鉄が擦り合う音に、2人は思わず振り向く。そこにいたのは、刺々しい漆黒の鎧兜を纏う、鉄仮面の男。彼は左腕に嵌めた黄金のデュエルディスクを構え、激しい闘志を剥き出しにする。

 

「デュエル――」

 

今再び、覇王と覇者がぶつかり合う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




これで今年の更新は終わりです。次回はちょっと遅くなると思います。
では皆様、良いお年を。

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