遊戯王ARC―V TAG FORCE VS   作:鉄豆腐

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サブタイからネタバレするドジッ子。


第94話 皆大好き、ブルーノちゃん

輝く星々が浮かぶ、漆黒の宇宙、そこにかけられた見えない橋を、2人はD-ホイールで渡り、疾駆していた。

1人は赤い帽子にゴーグルを装着し、同じく赤のジャケットを羽織り、山羊のような捻れた角が伸びた重厚な黒のD-ホイール、グラファ号に搭乗したコナミ。

そしてもう1人は白いフードつきのマントを身に纏った顔の見えない決闘神官、まるで修正テープのような近未来的なD-ホイールを操る彼は――ジョニー。

コナミは彼に懐かしい思いを抱きながら、このデュエルを楽しんでいた。だが負ける訳にはいかない。ターンはジョニーへと渡り、彼はデッキよりカードを引き抜く。

 

「僕のターン、ドロー!僕は魔法カード、『マジック・プランター』を発動!『リビングデッドの呼び声』を墓地に送り、2枚ドロー!」

 

ジョニー 手札0→2

 

「『カードガンナー』を召喚!」

 

カードガンナー 攻撃力400

 

ジョニーのフィールドに現れたのは透明なガラスのヘッドから覗くカメラアイのサーチライト、両手に備えた赤い大砲、下半身の青いキャタピラとどこか玩具のようなモンスター。可愛らしいが、これ1枚で墓地肥やしドローが出来る優秀なモンスターだ。また打点も下級の中でも高いものとなる為、攻撃の面でも頼りになる。

 

「魔法カード、『機械複製術』!効果は知ってるな?デッキから2体の『カードガンナー』を特殊召喚!」

 

カードガンナー 守備力400×2

 

「ここで更にか……!」

 

回る回る、恐ろしい程良く回る。とんでもないデッキの回転度だ。何より『機械複製術』が2回も成功する等、割りとふざけているとしか思えない。

 

「『カードガンナー』の効果でデッキトップから3枚を墓地に送り、攻撃力を1枚につき500アップ!『カードガンナー』は3体!よって9枚を墓地に送る!」

 

カードガンナー 攻撃力500→1900×3

 

ここに来て9枚もの墓地肥やし、コナミにとって羨ましい限りだ。本気でこの墓地肥やしギミックを投入してみようかと迷う。カテゴリに属していないのが悩み所だ。それにコナミは機械族をデッキに余り投入していない。

 

「バトル!ブレード・ガンナーでガイアを攻撃!」

 

ブレード・ガンナーが光の剣を振るい、ガイアの重厚な鎧を真っ二つに切り裂く。守備力2600とかなり高い壁だが、ブレード・ガンナーの攻撃力の前では無意味だ。

 

「2体目のブレード・ガンナーで攻撃!」

 

「墓地の『光の護封霊剣』を除外し、このターンのダイレクトアタックを防ぐ!」

 

続く攻撃、これを受けては敗北してしまう。コナミはブレード・ガンナーの攻撃を防ぐ為、どこからか飛んで来た光の剣を手に取り、ブレード・ガンナーの剣と鍔競り合う。しかし流石のコナミでもモンスター相手では分が悪い。更に2本の光の剣が飛んで来て、ブレード・ガンナーを弾き飛ばす。

 

「フ、そうでなくてはな!墓地の『シャッフル・リボーン』を除外し、1枚ドロー!カードを1枚セット、ターンエンドだ!」

 

ジョニー LP3600

フィールド『TGブレード・ガンナー』(攻撃表示)×2『カードガンナー』(守備表示)×2

セット1

手札0

 

ジョニーのフィールドには強力なアクセルシンクロモンスターが2体、破壊されれば1枚ドローする『カードガンナー』が2体、この布陣を覆す。気合いを込め、コナミがデッキよりカードを引き抜く。

 

「オレのターン、ドロー!魔法カード、『HEROの遺産』を発動!墓地のノヴァマスターとガイアをエクストラデッキに戻し、3枚ドロー!」

 

コナミ 手札3→6

 

1枚のカードで一気に3枚ものドロー。条件として『HERO』を素材に要求する融合モンスターが2体必要だが、その分に身合った強力なカードだ。

 

「3枚のドローか……!」

 

「そして『E・HEROエアーマン』を召喚!」

 

E・HEROエアーマン 攻撃力1800

 

「効果で『E・HEROブレイズマン』をサーチ!そして『妖刀竹光』をエアーマンに装備!『黄金色の竹光』を発動し、2枚ドロー!もう1枚、2枚ドロー!」

 

コナミ 手札→4→6→7

 

「ここで更にか……!」

 

更に畳み掛けるようなドローブースト。これによりコナミの手札が7枚まで膨れ上がる。とんでもない爆発力だ。これには流石のジョニーも不敵な笑みを崩さずにはいられない。

 

「賤竜の効果で『竜脈の魔術師』を回収!速攻魔法、『揺れる眼差し』を発動!スケールを破壊し、相手に500のダメージを与え、デッキから『慧眼の魔術師』をサーチ!」

 

ジョニー LP3600→3100

 

「オレは竜脈と慧眼をセッティング、慧眼を破壊し、デッキから『竜穴の魔術師』をセッティング、ペンデュラム召喚!『貴竜の魔術師』!『慧眼の魔術師』!『E・HEROブレイズマン』!」

 

貴竜の魔術師 守備力1400

 

慧眼の魔術師 守備力1500

 

E・HEROブレイズマン 守備力1800

 

コナミのフィールドに現れる3体のモンスター。純白の高貴な衣装を纏い、紅玉を嵌め込んだ音叉を持った『魔術師』と『慧眼の魔術師』。そしてブレイズマン。エアーマンを合わせ、これでコナミのフィールドに4体のモンスターが揃った。

 

「ブレイズマンの効果で『置換融合』をサーチ!レベル4の慧眼にレベル3の貴竜をチューニング!シンクロ召喚!『オッドアイズ・メテオバースト・ドラゴン』!!」

 

続けてシンクロ召喚、ライブラリアンのいない今この時を見逃さず、コナミが一気に仕掛ける。灼熱の炎を纏い、雄々しく咆哮を上げるのは真っ赤に彩られた2色の虹彩の竜。このモンスターが周囲から降りかかる流星を破壊し、コナミを導く星となる。

 

「メテオバーストの効果でペンデュラムゾーンの『竜穴の魔術師』を特殊召喚!」

 

竜穴の魔術師 守備力2700

 

息もつかせず次の手へ。コナミの背後からついて来る光の柱が1つひび割れ、中から錫杖を持った『魔術師』が登場し、メテオバーストの上に飛び乗る。

 

「レベル7のモンスター2体でオーバーレイ・ネットワークを構築!エクシーズ召喚!『オッドアイズ・アブソリュート・ドラゴン』!!」

 

オッドアイズ・アブソリュート・ドラゴン 攻撃力2800

 

更に現れる二色の眼の竜、今度は自身をも氷結させた青銀の竜だ。雄々しく咆哮し、コナミに檄を飛ばす。

 

「罠発動!『ハイレート・ドロー』!自分フィールドの機械族モンスターを全て破壊し、その数だけドロー!そして墓地の『仁王立ち』を除外し、攻撃対象を『カードガンナー』に絞る!『カードガンナー』は破壊された時、1枚ドローする。よって計4枚のドロー!」

 

ジョニー 手札0→4

 

「何――ッ!?」

 

先を見越し、コナミの手を回避しつつ、大量の手札をドローするジョニー。とんでもない男だ。これでは攻撃が出来ない。

 

「くっ、2体のモンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築!エクシーズ召喚!『No.39希望皇ホープ』!」

 

No.39希望皇ホープ 攻撃力2500

 

「『妖刀竹光』の効果で『黄金色の竹光』サーチ!魔法カード、『エクシーズ・ギフト』!ホープとアブソリュートのORUを2つ取り除き、2枚ドロー!」

 

コナミ 手札5→7

 

「魔法カード、『星屑のきらめき』!墓地のブレイズマンと『クリバンデット』を除外し、メテオバースト・ドラゴンを蘇生!」

 

オッドアイズ・メテオバースト・ドラゴン 攻撃力2500

 

「手札を1枚捨て、『ジェット・シンクロン』蘇生!」

 

ジェット・シンクロン 守備力0

 

「俺はレベル7のメテオバーストにレベル1の『ジェット・シンクロン』をチューニング!シンクロ召喚!『閃光竜スターダスト』!」

 

閃光竜スターダスト 攻撃力2500

 

「来たか……!」

 

星が竜の形を描き、星屑と共に浮かび上がる。現れたのはコナミの持つ最強のシンクロモンスター、このデュエル中、コナミが認めさせねばならないドラゴンだ。

 

「オレはカードを2枚セットし、ターンエンドだ」

 

コナミ LP2400

フィールド『オッドアイズ・アブソリュート・ドラゴン』(攻撃表示)『閃光竜スターダスト』(攻撃表示)『No.39希望皇ホープ』(攻撃表示)

セット2

Pゾーン『竜脈の魔術師』

手札3

 

「僕のターン、ドロー!デッキトップを墓地に送り、墓地の『グローアップ・バルブ』を特殊召喚!」

 

グローアップ・バルブ 守備力100

 

次はレベル1で墓地から自己蘇生が可能なチューナーモンスターだ。植物に目が生えたような不気味な姿をしている。

 

「『TGラッシュ・ライノ』を召喚!」

 

TGラッシュ・ライノ 攻撃力1600

 

「レベル4のラッシュ・ライノにレベル1の『グローアップ・バルブ』をチューニング!シンクロ召喚!『TGワンダー・マジシャン』!3体目!」

 

TGワンダー・マジシャン 攻撃力1900

 

「効果で『竜脈の魔術師』破壊!」

 

「チッ――!」

 

「魔法カード、『シンクロクラッカー』!ブレード・ガンナーをエクストラデッキに戻し、その攻撃力以下の相手モンスターを破壊!」

 

「スターダストの効果でこいつを守り、墓地の『仁王立ち』を除外し、攻撃対象をアブソリュートに絞る!そしてアブソリュートの効果で『オッドアイズ・ボルテックス・ドラゴン』特殊召喚!」

 

オッドアイズ・ボルテックス・ドラゴン 攻撃力2500

 

ブレード・ガンナーが全武装を持ってコナミのモンスターを殲滅し、爆煙より氷の結晶が砕け飛び、雷鳴を纏った深緑の翼竜が飛翔する。更に翼竜は竜巻のブレスをブレード・ガンナーへと放つ。

 

「ボルテックスの効果でブレード・ガンナーをバウンス!」

 

「『スキル・プリズナー』でブレード・ガンナーを守る!面白いな……カードを3枚セットし、ターンエンドだ」

 

ジョニー LP3100

フィールド『TGブレード・ガンナー』(攻撃表示)『TGワンダー・マジシャン』(攻撃表示)

セット3

手札0

 

「オレのターン、ドロー!魔法カード、『アームズ・ホール』!デッキトップをコストにデッキから装備魔法、『妖刀竹光』をサーチし、スターダストに装備!『黄金色の竹光』で2枚ドロー!」

 

コナミ 手札2→4

 

「『慧眼の魔術師』と『刻剣の魔術師』でペンデュラムスケールをセッティング!慧眼を破壊し、竜穴をセッティング!ペンデュラム召喚!『竜脈の魔術師』!『賤竜の魔術師』!」

 

竜脈の魔術師 攻撃力1800

 

賤竜の魔術師 攻撃力2100

 

強力なアクセルシンクロに対抗する為、コナミが全てを振り絞って加速する。ペンデュラム、融合、シンクロ、エクシーズ、持てる全てを出しても届かない。だから――新たな力を、コナミは望む。

 

「賤竜の効果で『竜穴の魔術師』を回収!デッキトップをコストに『グローアップ・バルブ』を蘇生!」

 

グローアップ・バルブ 守備力100

 

「レベル4の竜脈にレベル1の『グローアップ・バルブ』をチューニング!シンクロ召喚!シンクロチューナー、『アクセル・シンクロン』!」

 

アクセル・シンクロン 守備力2100

 

コナミのエクストラデッキから1枚のカードが排出され、その手に掴んでデュエルディスクに叩きつける。フィールドに現れたのは燃えるような真紅のボディを煌めかせたどこか見覚えのあるD-ホイールを模したモンスター。白コナミとのデュエルで創造されたは良いものの、アクセルシンクロが出来ない為に使用を封じていたカードだ。これでアクセルシンクロを――。

 

「罠発動!『TG1―EM1』!ワンダー・マジシャンとスターダストのコントロールを入れ替える!」

 

「ボルテックスの効果でエクストラデッキの竜脈をデッキに戻し、無効にして破壊!」

 

「だったら―もう1枚だ!君のスターダストは頂いていく――!」

 

「なっ!?」

 

ここで発動される2枚のコントロール奪取カードが1人と1枚を引き裂く。1枚はボルテックスが雷で串刺しにするが、もう1枚の発動は通ってしまう。コナミのフィールドにワンダー・マジシャンが、ジョニーのフィールドにスターダストが移る。最悪だ。

どうするどうするとコナミが汗を垂らし、思考の海に落ちる。手は――ある。手札の1枚、フィールドのセットカード、そして『アクセル・シンクロン』。奪われたスターダストを取り戻す為、カード達に線が結ばれ、一筋の方程式となる。

 

「『アクセル・シンクロン』の効果でデッキの『ジェット・シンクロン』を墓地に送り、レベルを1つ上げる!」

 

アクセル・シンクロン レベル5→6

 

「カードを1枚セットしてターンエンドだ!」

 

コナミ LP2400

フィールド『オッドアイズ・ボルテックス・ドラゴン』(攻撃表示)『アクセル・シンクロン』(守備表示)『TGワンダー・マジシャン』(攻撃表示)『賤竜の魔術師』(攻撃表示)

『妖刀竹光』セット3

Pゾーン『竜穴の魔術師』『刻剣の魔術師』

手札2

 

どうやら諦めた訳では無いようだ。ジョニーは背後のコナミの様子を除きながらニヤリと笑う。沈むどころか燃えるような覚悟、やはりこうで無くては面白くない。何かを仕掛けて来るならば、真正面から迎え撃つまで。

 

「僕のターン、ドロー!」

 

「罠発動!『妖怪のいたずら』!フィールドの全てのモンスターのレベルを2つ下げる!」

 

オッドアイズ・ボルテックス・ドラゴン レベル7→5

 

アクセル・シンクロン レベル6→4

 

TGワンダー・マジシャン レベル5→3

 

賤竜の魔術師 レベル6→4

 

TGブレード・ガンナー レベル10→8

 

閃光竜スターダスト レベル8→6

 

「レベルを……?一体何を――」

 

これで『アクセル・シンクロン』、『妖怪のいたずら』と2枚のカードが線で繋がった。次は――。

 

「もう1枚だ!罠発動!『シンクロ・マテリアル』!相手フィールドのスターダストをシンクロ素材に出来る!マリッジブルー?上等だ!そんな不安も消し飛ばす!オレの下へ、帰って来い!」

 

「これは――!?」

 

3枚目、『シンクロ・マテリアル』が更に線を繋ぎ、スターダストへと結ばれ、再び『アクセル・シンクロン』へと結ばれる。

コナミの叫びはまるで愛の告白、奪われたスターダストを取り戻す。そんな彼の魂に、スターダストの胸がドクンと高鳴る。繋がれた輪の線は堅く、赤い糸の指輪へと。星屑の竜は今、主人と共に――昇華する。

 

「そして『アクセル・シンクロン』は相手のメインフェイズにシンクロ召喚が可能!行くぜ、クリアマインド!」

 

ゴウッ、コナミを中心として風が逆巻き、空気の層がズレていく。どこまでも透明で澄んだ心――その中で、コナミは数多のデュエリストを思い起こす。

今まで闘って来たライバル、肩を並べた戦友、仲間達との絆、そして最後に彼の背を押すのは――グラファ号Rに込められた、暗次との絆。

今までの全てが線となり、コナミに結ばれて力となっていく。込み上げる熱き想いは、黄金の光を放つ。

 

「レベル6のスターダストに、レベル4の『アクセル・シンクロン』をチューニング!星流れる痕に紡がれる全ての想い……!絆と共にこの世界を満たさん!アクセルシンクローッ!!」

 

加速、加速、加速。流れる星達よりも速く、光よりも速く。絆は集束し、コナミの背から流れていく。その姿はまるで――流星。

 

「消えたっ……!」

 

コナミの姿が消失、そして――ジョニーの背後から、黄金の光が駆け抜け、一気に追い抜く。赤いジャケットを纏ったその背、その上空には黄金に輝く星屑の竜の姿。

 

「光来せよ!『真閃光竜スターダスト・クロニクル』!」

 

真閃光竜スターダスト・クロニクル 攻撃力3000

 

今ここに、コナミのアクセルシンクロモンスターが生み出された――。

 

「それが……君の答えか……」

 

「そうだ!これがオレの、いや、オレ達の答え!墓地に送られた『妖刀竹光』の効果で『魂を吸う竹光』をサーチ!」

 

「ならば見せてみろ!その力を!バトル!」

 

「墓地の『仁王立ち』を除外し、攻撃対象をスターダスト・クロニクルに絞る!」

 

「ブレード・ガンナーで、スターダスト・クロニクルに攻撃!」

 

襲い来る熱線、光の銃撃、漸く出て来たが、スターダスト・クロニクルには打点を上げる効果も、破壊を防ぐ効果も無い。だから――コナミが何とかする。

 

「罠発動!『スキル・サクセサー』!スターダスト・クロニクルの攻撃力を400アップ!」

 

真閃光竜スターダスト・クロニクル 攻撃力3000→3400

 

ジョニー LP3100→3000

 

迎撃、攻撃力が逆転し、スターダスト・クロニクルのアギトから放たれる熱線がブレード・ガンナーごと消し飛ばす。これでジョニーのフィールドはがら空き。

 

「面白い……!カードを1枚セットし、ターンエンドだ!」

 

ジョニー LP3000

フィールド

セット2

手札0

 

ジョニーがニヤリと笑い、コナミの背を見つめる。何時の間にか弱くなった彼、強さと引き換えに彼は大事なものを培っていた。

コナミは変わった、彼を知る者から見れば明らかに。コナミを知るジョニーが見て、明らかに彼は人間らしくなったのだ。これからもコナミは壁とぶつかり、悩み、迷うだろう。だが――そんな人間らしい彼も悪くは無い。

最早恩は返した。後は――このデュエルを、楽しむのみ。

 

「オレのターン、ドロー!行くぞジョニー!」

 

「来い!コナミ!」

 

「バトルだ!スターダスト・クロニクルでダイレクトアタック!」

 

「罠カード、『波紋のバリア―ウェーブ・フォース―』!相手のモンスターを、デッキに戻す!」

 

「ボルテックスの効果で慧眼をデッキに戻し、無効!」

 

「甘い!罠カード、『ブレイクスルー・スキル』!その効果を無効!」

 

ボルテックスが雷で水のバリアを串刺しにしようもするも、ジョニーの援護によって翼が封じられる。これでは、白コナミの時の過ちと同じ――。

 

「もう、間違えない!スターダスト・クロニクルの効果!墓地のスターダストを除外し、このモンスターは効果を受けない!スターダスト・クロニクルで、ダイレクトアタック!流星煌閃撃!!」

 

ジョニー LP3000→0

 

スターダスト・クロニクルが黄金のオーラを纏い、ジョニーを貫く。0を刻むLP、決着――コナミの眼前の宇宙が晴れ、光が差す。どうやら出口のようだ。喜ばなければならないのだろうが――少し、迷ってしまう。彼とのデュエルが終わり、ここで別れる事に。

だがジョニーはそんなコナミの背を押す為、自らのD-ホイールでグラファ号Rを押し、加速させる。

 

「君の仲間が、待っている」

 

「――ッ!ありがとう――ブルーノ……!」

 

そんな彼に応える為にも、コナミは前に進む。何もこれが一生の別れになる訳じゃない。デュエルをしていれば、またきっと、何時かどこかで会えるから。決闘神官ジョニー、自らの友、ブルーノに感謝を示し、進む。前へ、前へ、光差す道へと――。

 

「また会おう――コナミ」

 

風がジョニーのフードを飛ばし、その顔が明らかとなる。青い髪に青い瞳、長身が特徴的な彼。その表情は――皆が大好きな、ブルーノの晴れやかな笑顔だった――。

 

出会いと別れ、数多くの一期一会を繰り返し、コナミは進む。この先にはまだ見ぬデュエリスト、そしてかつて共に闘った友もいるのだろう。何が起こるか分からない未来へと、コナミはワクワクを抑え切れず、駆ける。さぁ、行こう――シンクロ次元へと――。

 

――――――

 

「バレてしまいましたね、正体」

 

「良いんだ、彼はきっと、最初から分かっていて知らない振りをしていたんだから」

 

コナミが去った後、ブルーノはD-ホイールを停止し、阿久津と話し込んで感傷に浸っていた。何時だって彼は誰かを支え、その背中を押して来た。それが不満と言う訳では無い。むしろ――彼はそれが誇らしく思っている。迷いながらも、仲間の絆で道を拓き、走っていく人間が大好きだからこそ、彼は応援してしまう。

 

「さて、次に彼と会うのは、何時になるかな」

 

遠い目で空を見上げる。その視線の先には、キラリと流れる6つの流れ星。

 

「頑張れよ」

 

何時か彼は、どうしようも無い残酷な現実に直面するだろう、間違う事だってあるだろう、だけどきっとその時には、今彼と共に歩む友が、彼を正してくれる。そう信じて――ブルーノはD-ホイールを疾駆させる。

 

「さぁ、僕もトップ・クリアマインドを取り戻そう、まだまだ始まったばかりなんだ、人生と言う、ライディングデュエルは!」

 

D-ホイールで光の橋を渡り、彼は駆け抜ける。その背に輝くは、彼の眩しい笑顔のような、太陽。

 

「ライディングデュエル、アクセラレーションッ!!」

 

第2章 DIMENSION OF CHAOS 完

 

 

 

 

――少年は、夢を見る、とあるデュエリストの夢を。靄がかかった誰かの記憶を。

彼は、赤き竜の痣を持つデュエリスト達と共に歩む。冥界の王の目覚めを目論む、死者と闘い、神を操る瞳を持つデュエリストと闘い、未来からやって来たデュエリストと闘い、未来の救う救世主と闘い――ああ、何て素晴らしい人物なのだろうと、少年は彼に憧れる。

 

彼が救った、未来があった。彼が導いた、英雄がいた。彼と歩んだ、友がいた。光満ちる、暖かき道。自分も彼のようになりたいと心から想う。

 

そして彼は――赤き竜の痣を持つデュエリストと闘う。

 

彼が救った、未来があった。彼が導いた、英雄がいた。彼と歩んだ、友がいた。同時に、その道はあったのだ。

 

彼が奪った、未来があった。彼が壊した、英雄がいた。彼が裏切った――友がいた。

 

そして少年は、夢から覚める。

 

 

 

 

 




これにて2章は完結です。
この章では黒咲さんと神楽坂がボスキャラだったのでチャンピオンシップの最終戦VS素良きゅんとかスッキリとしない所があったと思います。この点は大きく反省。次の章ではちゃんとスカッと晴れやかな気持ちになれるよう努力します。
ミエルちゃんや大漁旗君、日影の兄者の活躍が書けなかったのが心残り。彼等のファンの人は申し訳ありません。

3章からですが、当然シンクロ次元に入り、今までシリアス続きだったのでゆるく行きたいと思います。2章では遊矢君とコナミ君中心、2章の裏主人公として黒咲さんのキャラを浮き彫りしていきました。
3章からは遊矢君を中心とし、コナミ君は添えるだけ、3章の裏主人公にはジャックがなります。と言っても現行キャラの活躍を奪わないように気をつけたいと思いますが。
他には沢渡さんが活躍したり、シンジ君やセルゲイを活躍させたいです。

では話を読んでくれた読者の皆様方、お気に入り、感想、評価をくださった方々に感謝を。
ありがとうございます。

ご要望があったので活動報告にてコナミ君のデッキレシピを乗せました。興味がある人は見てね。



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