ポケガイル   作:三概井那多

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ポケダンの発売前に投稿予定がいつの間にか10月に

フワライドのあやしかぜとか、ビブラーバの大地の力、通路の中のヨルノズクの貫通ゴッドバードに苦しめられて運悪くエンディングまで結構時間がかかってしまった……。

けど、今作は私的には面白かった!


では、第二話をご覧ください。


ユイガハマユイはちょいちょい出てくる

常識的に考えても突然、なんの前触れもなく、脈略もなく、唐突に、テーブルが跳ぶなど絶対にあり得ないのだが。

 

しかし、本当に跳んだのだ。

 

強い風が吹いてテーブルが動いたり、地震が発生してテーブルが揺れたことならまだ理解できるし、何ならヒラツカ助手がボールを投げると同時に、ちゃぶ台返しの要領でテーブルを思い切りにブン投げたなどといったいきなり傍迷惑な自分自慢の力業を見せつけてきたくらいならまだ許せる。

 

あ、いや、最後のは普通にそんなことされたら困るけど。

 

しかし、強い風も地震も起きなければ、突然ヒラツカ助手が自分自慢を始めたわけでない。

 

本当に、何か、強引に力業で押されたように、ゴトン!と、音を上げてはテーブルが跳び上がったのだ。

 

 

「うわっ!?」

 

「キャア!」

 

 

コマチとユイガハマが驚きの悲鳴を上げて、席から大きく仰け反って地べたに腰についたが受け身をそこそこに何とか回避したようだ。

 

そして俺は、ちょうど跳び上がったテーブルの真正面に座っており、回避手段も回避運動もとる術なく、あえなくテーブルに直撃したのだ。

 

 

「ごべっぶ!!?」

 

 

テーブルが顔面ドン、と衝撃のショックで後ろへとーーー悲しかな、テーブルの勢いが強かったのかそれとも元々劣化がきていたのか、本来あるはずの椅子の弾力性が全くと働かず、ボキッと嫌な音とともにーーー後頭部ドン。

 

 

痛ってててえぇぇぇぇーーー!!!!

 

 

後頭部を手で抑えながら痛みを堪えきれず、ゴロゴロと激しく転がり回わす。

 

え、何、今日何度目のドンシリーズなの!? 俺、ドンに嫌われてるの?それとも愛されているからこんなにドン喰らう羽目になるの?そんな愛なんぞいらんぞ!

 

 

「お兄ちゃん大丈夫? というか、生きてるの?」

 

俺の身を案じてか心配そうに声をかけてくるコマチ。痛み絶え絶えに小声で返す。

 

 

「コマチ…………もう俺、働きたくない……」

 

「あ、いつも通りなら大丈夫だね」

 

「コレっていつも通りなの!? 明らかに可笑しくこと言っているんだけど、ほんとは病院に搬送した方がいいじゃないの?頭大丈夫?」

 

 

俺とコマチのやり取りに驚きの声を上げるユイガハマ。

 

心配してくれるのは素直に嬉しいんだが、最後の一言は少々馬鹿にされていると思うのは俺の気のせいか?

 

 

「大丈夫? えーと、こういう時は脳神経起こしてるって言うんだっけ?」

 

「脳震盪な。脳神経は常に働いてるっつーの」

 

 

訂正、馬鹿にされているのでなくてただの馬鹿だった。

 

何とか起き上がり体の隅々まで怪我はないかチェックしてみるが、目立った外傷は見当たらない。うむ、流石は伊達にカマクラからドンシリーズを食らってないな。むしろ、喰らい過ぎて逆に体質がおかしなっているまである。

 

あら、俺って何時からスーパーマサラ人になったのかしら。

 

怪我が気になるというよりもテーブルと一緒に飛んできた珈琲とオレンジジュースで服が若干汚れたことが気になるんだが。オニューなのにこれ染みになったりしないかしら?

 

 

「君らは怪我はしてないか? 特にヒキガヤ」

 

 

ヒラツカ助手も無事だったのか、心配そうに俺たちに聞いてくる。

 

 

「えぇ、まぁ」

 

「あ、はい。ちょっと、お尻打ったたけど平気です」

 

「コマチも平気です」

 

 

どうやら、四人とも体を打ったくらいで大怪我を負わなかったらしい。一応、俺って一番被害あったのに……。あ、無事なら無事でいいんだが。

 

 

「そうか、ならよかった。しかし、今の一体なんだったんだ?」

 

 

安堵するかのように、ほっ、と息を吐くヒラツカ助手。しかし、すぐさま表情を変えて今起こったことの現状把握を始める。俺もそれに倣うようにして思考を回し、意見を出す。

 

 

「風…………ではないっすね」

 

「ああ、風にしては強すぎる。それに我々の肌には感じなかった」

 

「はい。……コマチ!」

 

 

自然の風でないならと、ある可能性を考えてコマチを呼ぶがコマチも俺と同じ考えを至っていたようでそれを確認している最中だった。

 

 

「ほいほい、……大丈夫! カーくんちゃんとボールの中に入ってるよ!」

 

「そうか……」

 

 

一番可能性が高かったのは俺たちの連れてきたポケモンーーーニャスパーのカマクラが"ねんりき"を使って悪戯をしてきたという線だったが、どうやらそれは違ったようだ。

 

…………俺への被害率が高かったから有力犯だったんだけどな。

 

しかし、これはただの自然現象というのは不明な点が多すぎる。明らかにポケモンの仕業であることは明白だ。

 

問題はどうやって、そして何の目的で俺たちを襲った、かだ。

 

 

「お兄ちゃんどうしたの? いきなり土下座して」

 

「土下座じゃねぇよ。しゃがんで形跡がないか探してんだよ」

 

「お兄ちゃん、やめてよ!人前で小銭が落ちてないか調べるのは!」

 

「それも違う!」

 

 

俺がいきなり体を屈めたせいで変な勘違いをするコマチ無視して、検証を始める。目で観るだけでなく実際に手に触れて地面の感触も確かめる。ーーーしっかりと綺麗に並べられた、石畳の地面。

 

 

「これじゃあ駄目だな」

 

「何がダメなの?」

 

「ん、ああ、あなーーーうわ、ビックリした」

 

「え、何それ酷くない?」

 

 

隣から声が聞こえたのでてっきりコマチかと思って顔を向けるとそこには白い帽子被った少女の顔があったので驚いてしまった。

 

その事に心外と言わんとばかりにぷくっと顔を膨らませる少女。ちょっとかわいい。

 

 

「距離が近い近い。ちょっと離れてくんない」

 

「え、あ、ごめん……」

 

 

近距離だったことに気づいたのか、少し頬を赤く染めて一歩ずれるユイガハマ。

 

ふぅー、あぶねぇー。もう少しで好きになって告白して振られちゃうところだった。振られちゃうのかよ。

 

天然(アホな子)系美少女の男子のツボついてくる高さ異常。うっかり恋に落ちちゃうレベル。

 

その様子を一部始終見ていた第三者たるコマチとヒラツカ助手は微笑ましそうに「ほぅほぅ、なるほどなるほど」と何を頷いていらっしゃるんでしょうね。

 

ホーホーは夜行性だからこの時間帯はまだ寝てますよ。

 

 

「で、何を調べていたのお兄ちゃん?」

 

「ん、ああ。"あなをほる"の形跡だ」

 

「あなをほる? あー、つまりあれか?君は、今のをあなをほるで起こった現象と思ったのか?」

 

「ええ。まぁ、結局のところはその予想は外したんっすけど」

 

俺の考えを瞬時に理解したらしく、ヒラツカ助手に合わせて返答する。

 

風でもなく、念力でもないならば、直接的な物理技でかつ姿を見えない技と考えれるのが妥当だろう。そして、考えられる技として三つほど候補が上がり消去法で絞った結果、あなをほるだったのだが、残念ながらそれは違うようだ。

 

 

「地面に穴なんてありませんし、それにこんなガッチリと煉瓦で固められた地面ならあなをほるで貫通するのは少し難しそうっすね。仮にできたとしてもその時に多少の地鳴りやらが起きてもおかしくないですし」

 

 

そういうことでこの線は消えてくるが、しかしテーブルが何かにぶつかるような音があったのは事実である。

 

他に不自然なところがないかと辺りを見渡してみる。

 

時刻は午後一時を少し過ぎたところで少し遅めの店のなかで昼食取っている客が数名いるが、テラス席には俺らと他にもう二組。カップルらしき男女二人組(リア充爆破しろ)と、母親らしき女性とその子供思える男の子と女の子の三人組。その二組とも被害あった様子はなく、むしろこちらで何が起こったのかと好奇な目で向けられた。

 

うっせい!コッチ見んな、見せもんじゃねーぞ!

 

他人から目線に当てられるのが苦手で、神経質で敏感ボッチな僕。はい。

 

どうでもいいけどさっきから隣で俺以上に恨みがましいそうな目でカップル達を見ては、「私も何時かはああなってああなるんだ!」と親子たちに目線を変えて苦汁の顔になり変わる、百面相の白衣の人が怖いんだけど。

 

他に怪しい人(隣の人を除く)、あるいは怪しいポケモンがいないかと見回たすが特に怪しいものは見当たらない。

 

 

一体、今のはなんだっ…………ん、待てよ。

 

 

「………ポケモン、ポケモンはどこにいるんだ?」

 

「え、……あ!」

 

 

俺の呟きにユイガハマが反応する。再度、周囲を見回して確認するがやはりいない。本来いるはずのポケモンたちが今この場にいないのだ。ヒラツカ助手がボールから出したはずの俺たちが貰うことになっていたポケモン達の姿が。

 

ユイガハマが戸惑いながら言う。

 

「っていうことは今のって、ドロボーの仕業ってことになるの?」

 

「え、何?それじゃあ狙いはポケモン達だったの?」

 

「ああ、おそらくそういうことになるだろう。ボールすら無くなっている現象からすれば」

 

コマチとユイガハマの疑問にヒラツカ助手は肯定し、俺もそれに頷く。

 

確かに俺らを襲った理由としては考えられる最大の要因として上げられるのはポケモンだった思う。

 

新人トレーナーに用意されているーーー所謂、御三家と言われているポケモン達は通常では入手が困難なポケモン達なのそうだ。故にマニアの間では重宝し、また裏ではそれに目をつけたポケモンハンターといわれる犯罪者との高額な取引が行われていることもあるそうだ。

 

俺とヒラツカ助手が難しい顔をしていたことで察したのか、ユイガハマの表情も徐々に不安になっていく。

 

 

「そんな!……折角の初めてのポケモンができると思って楽しみにしてたのに………どうにかならないんですか?」

 

視線を落としながら今にも泣きそうな弱々しい声になりながらも必死で訴えてくるユイガハマ。それに対して優しい声で宥めるヒラツカ助手。

 

 

「落ち着くんだユイガハマ。とりあえずまだ盗人の仕業だと決まった訳でない。この辺りをよく探してみてよう。それで見つからなかった場合はジュンサーさんにも連絡をいれて捜索願いも出しておくから」

 

「そうですよユイさん。何か見落としがあるかもしれませんし。もうちょっと探してみましょう!」

 

「あ、うん。…………ゴメン。ちょっと大袈裟だったよね。そうだよね、きっと見つかるよね」

 

 

ヒラツカ助手とコマチのフォローのおかげでどうにか落ち着いて、調子を戻そうとするユイガハマ。

 

しかしそれも所詮はただの空元気でしかない。一度、落ちいった不安は誰からどう言われようとなかなか払拭されない。気休めの言葉は気休めでしかないのだ。

 

これは明らかに犯罪の可能性が高い。早急に対応するべきはずなのだが、ヒラツカ助手は「ジュンサーさんに連絡する」というカードを切らないのは、それを極力使いたくはないのだろう。夢と希望を溢れんばかりの想いを胸に抱えた少女の最初のスタートから躓けさせたくないのだろう。

 

頭をガシガシと掻きむしる。

 

まぁ、『探す』にしろ、『捜す』にしろ、どっちみちやることは同じなのだからやるしかないんだが。

 

すると、ちょいちょいと服の袖を引っ張られてそちらへと視線を移すとコマチが何か気づいたような真剣な表情をしていた。

 

 

「ねぇ、お兄ちゃん。これってもしかしてあれじゃない? 」

 

「あれってなんだよ」

 

「ほら、さっきニュースでやってた物が無くなるってカマイタチやつ」

 

「ん、……ああ」

 

 

コマチに言われてあることを思い出す。先ほど家に出る前にニュースでやっていた。ここ最近、物がなくなる事件が頻発しているらしい。

 

カマイタチ事件。

 

これはポケモンの技の"かまいたち"の方でなく、カマイタチ現象をベースに名付けられている。

 

多くの人が知っていると思うので説明は簡略化するが、

 

 

転んでしまう

 

体に切られたような感覚が痛みが走る

 

痛覚の場所を確認すると何もない。

 

 

 

以上、この三つの条件をカマイタチ現象といい、その事件にも同じようなことが起きておる。そして、それは今の俺たちの現象と等しく同じであり、具体的には、

 

 

テーブルが跳ぶ

 

軽い怪我を負う

 

ボールが無くなる

 

 

と、こんな具合に。

 

あれ? 思ったよりも踏んだり蹴ったりの事件じゃねーか。俺だったからよかったものの一歩間違えれば結構な大惨事を巻き起こすところだった。これも、スーパーマサラ人としてなせる技なのか……。俺、メイスイタウン出身なんだけど。

 

 

「ということは同一犯であるの可能性もあんのか?」

 

 

うん、そうかもと頷くコマチ。

俺は飛ばされたテーブルの元へと行き、何らかの形跡がないか調べてみる。倒れた円台の外テーブルと足の折れた椅子(やっぱり折れたのか)になにか怪しい所はないかと念入りに調べてみる。すると、テーブルを足の辺りから台の裏にかけて奇妙な感触がした。

 

でも、この感触は…………。

 

 

「お兄ちゃん、今度はどったの?」

 

「ああ、コマチあの『あの~』」

 

 

ハモってしまった。誰だと振り返り、確認すると店員らしき女性が困ったような顔をしていた。

 

 

「お客さま方大丈夫でしょうか?何か在られましたか」

 

「ああ、こちらは大丈夫だ。ちょっとした事故のようなもので。すまないがテーブルと椅子を一つ駄目にしてしまった」

 

 

どうやら、騒ぎを聞きつつけ店員さんが様子を見に来たようだ。ヒラツカ助手が店員を相手にしつつ、俺たちに向けて。

 

 

「この場は私が事情を話しておくから、君たちはポケモンたちを探しておいてくれ」

 

 

と、ヒラツカ助手が言い、俺たちはそれに従うことにする。

 

 

「分かりました。んじゃあ、おねが、い」

 

 

礼を言って立ち去ろうと思ったのが、目に入った光景に驚いて言葉が詰まってしまう。

 

ヒラツカ助手のよりも後方、ちょうど店から出て町へと降りる階段付近。ーーー無くなったと思っていたはずのボールが発見したのだ。

 

いや、驚いてそれだけじゃあない。浮いていたのだ。

 

地面スレスレの低空ではあるが確実に宙に浮いており、そしてそのボールは逃げ去るように走っていった。

 

 

「逃がすかよ!」

 

「ヒキガヤ!?」

 

「お兄ちゃん!?」

 

「え、何々?どうしたの!?」

 

 

急に駆け出した俺ことに驚きの声を上げる三人に説明している暇などなく、それを無視してボールの行方を追っていく。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

ボールの行方を追って行き、気がつけばメイスイタウンの北にあたる、この町の一番の名所にして2番道路とメイスイタウンから裂くように流れる川を繋ぐ橋の下。……より正確に言うならば2番道路側の橋の下にいた。

 

こちら側は町側と違って2番道路と、さらに奥にはハクダンの森があるので好戦的な野生のポケモンが出現が多く、ポケモンを持っていない子供は「近づくな」と言われている町の大人達から耳が痛くなるほど言われている。

 

そして川は先日までの雨の影響か、いつもよりも川の流れが速い上に水位も高かく、荒々しかった。

 

 

「どこにいった」

 

 

橋の下に降りていく光景を追いかけるまではよかったが、階段を降りているのに見失ってしまった。

 

周囲を見回し、ボールがないかと探してみるが、ボールどころかポケモンの姿も人らしき姿も何処にも見当たらない。

 

 

「お兄ちゃん!」

 

 

声が上から聞こえてきて見上げてみると、息を切らしたような様子で見下ろしていたコマチとユイガハマ。どうやら俺を追ってきたようだ。

 

 

「もう、いきなり走り出してどうしたの?」

 

「ボールを見つけて後を追ったんだよ」

 

「え、それじゃあポケモンは見つかったかんじなの!?」

 

 

俺の言葉を聞いて反応するユイガハマ。「いや、また見失った」と答えると遠目からでも分かるくらい肩を落として露骨にがっかりする。

 

その隣で「これだからごみぃちゃんは」とコマチが呟いているように見えたのはたぶん気のせいだろう。

 

いやだって俺頑張って追跡したよ。誉められどすれど責められる理由など皆無なはずだ。

 

俺はなにも悪くない!世界が悪い!

 

 

「そっからボールとかなんか怪しいもんとか見えないか?」

 

「怪しいもの?ちょっと待ってね」

 

 

コマチとユイガハマは首左右に動かしながら周辺の様子を探り始める。

 

視点を変えるというよりも視野を広めると言ったほうが近いかもしれない、見失ったボールの行方を橋の上にコマチとユイガハマならもしかして見つかるかもしれないと思ったのだが。

 

 

「ううん、全然見当たらないよ!」

 

「そうか」

 

 

案の定、見つからなかったらしい。まぁ、相手の姿が見えない時点で探すのは普通に困難だよな。

 

しかし、この姿を見えないということはキーポイントであることは間違えない。それと同時に、カフェのテーブルにあった、ある証拠のおかげで大分犯人像は浮かび上がってきた。

 

恐らく、犯人はゴーストタイプのポケモンで間違えない。しかも野生である可能性が高い。

 

ゴーストタイプにはある特有の能力があり、それが自信の姿を消せることができる。

 

浮かんで移動したボールはあれは最初、俺がよく見る(喰らっているともいう)"ねんりき"類いのエスパー技でも使って浮かび上がったんだと思っていたんだが、それにしては技の継続時間と射程距離が長過ぎる。

 

カマクラの念力の射程距離は十メートルに届くかどうか、その上継続時間は約三分程。それをベースとして考えてみるとして、トップクラスのエスパータイプ、フーディンやメタグロスを使ったとしよう。たぶん、軽くカマクラの4倍以上は越えているだろう。

 

しかし、それでも無理がある。

 

ここからカフェまでだいたい五キロ弱あるし、その上ここまでボールの動きなのだが途中で止まったり変則的に動きを変えるなど不規則な盤面が多くでくわした。近距離ならともかく遠距離でここまでの操るなど不可能に近い。

 

なら、単純に念力を使うよりも姿が見えない状態で運ばれていたというほうが納得できる。

 

そして、更にゴーストタイプとして決定づけられるのはテーブルから跳び上がった時の件、アレはポケモンの技のーーー

 

 

「ーーーッ!?」

 

「お、お兄ちゃん!?」

 

 

俺はその場から吹っ飛んだ。いや何かに足を囚われてから弾かれるような感覚に襲われて吹っ飛ばされたのだ、テーブルと同じように。

 

 

「ーーークッ!」

 

 

地面に落ちる際にちゃんと受け身をとり、なんとか衝撃をそらすことに成功した。これ以上、意味もなくダメージを受けるのはごめんだっーうの。

 

急いで起き上がって体制を立て直し周辺の様子を探る。何もいない。

 

 

やっぱり、今のは!

 

 

「お兄ちゃん、今度はどうしたの!?」

 

「犯人だ。犯人が攻撃してきた!」

 

 

周辺の様子を探りながらコマチに返答をする。

 

 

「え、えぇ!? でも今の何も見えなかったよ?」

 

「訳は後で説明すっから今はヒラツカさん呼んできてくれ!」

 

「う、うん分かった!ちょっと待てて!」と言い残してコマチが駆け出して行く音が響く。

 

よし、とりあえずコマチたちの安全は確保できた。あとはどうやって足止めするからだが。

 

足下周辺に視線を下げてあるものを見張る。

 

すると、予想通りにそれが俺の足下へと伸びてくる。避けようかするが気づくのに一歩遅かった俺は再び、足に何かが囚われるような感覚が襲われる。そしてーーー。

 

「ーーーッ! クッソ!!」

 

そこから弾かれるように吹っ飛ばされる。

 

 

やっぱり、この技は"かげうち"か!

 

 

ゴーストタイプには珍しい物理技で先制攻撃ができるという特徴を持ち、自身の影を伸ばしその影が相手に重なることでダメージを負わせる技という、大変俺好み技だ。

 

この技こそ、カフェでテーブルが跳び上がった時の正体だ。"かげうち"の影がテーブルの影と重ね合わせられ、弾けとんだのだ。

 

それが真相。

 

故にこれは、

 

 

 

カマイタチ事件ならぬ、かげうち事件なのだ!!

 

 

 

……うん、これは今はどうでもいいか。

 

そして、かげうちがくると分かればもうこっちもんだ。

 

飛ばされた俺は受け身をとってすぐさま体制を立て直しては、クラウチングスタートのように地を蹴りだして全力疾走で駆ける。

 

例え、姿が見えなくても、技がかげうちと分かれば影が伸びてきた方向に向かえば犯人は存在する。

 

そして発見。

 

そこには何も存在しないのに、影だけが存在する場所。つまりは姿の見えない犯人の居場所。

 

俺はそこへと全力で突っ込み、大きく手を伸ばーーー。

 

空を切るような鋭い音が唸り上げ、俺の顔面に何かがヒットし勢いのあまりに転げ回る。

 

 

「痛ってぇぇ~~!!?」

 

 

思わぬ反撃を受けた。いや、マジ今の何?なんか鞭状のもので打たれた感覚なんだけど?

 

何とか痛みを堪え立ち上がり、影を確認する。もちろん影はない。

 

 

「クソ、あと一歩のところで!」

 

 

当たった部分をさすりながら悪態つく。かげうちばかりに警戒して他の技が来るのを完全に失念していた。普通に考えれば思いつく思い付いて当然のことを。

 

「ねぇ、君大丈夫なの!?」

 

「……なんでお前はそこにいんの?」

 

 

空から声が聞こえて見上げてみるとヒラツカ助手を呼びにいったはずのユイガハマがいた。

 

 

「あ、コマチちゃんから何かあったときのためにって!」

 

「ああ、そういうことか」

 

 

ユイガハマの一言でコマチのことを考えを察した。

 

 

「いいか、そこでじっとしていろよ。絶対に降りてくるんじゃあねーぞ!」

 

「え、でもこれ…………」

 

 

ユイガハマが何かを言いかけるがそれどころではなかった。再び空を切るような音がし、反射的にそこから転がるように身を避ける。

 

避けた場所から、ビシッ!と鋭い音がなり、草を切り裂く。

 

 

「クッ!」

 

 

俺はその場からダッシュして逃げるが、相手はそれを許さない。乱れるような攻撃の連続は雨のようにしてやまない。

 

 

「ねぇ!ーーー」

 

 

必死になって逃げ惑いながら思考を回す。この攻撃は音と受けた体の傷からして鞭状の技。

 

咄嗟に思いつくのが、つるのむち、パワーウィップ、の二つの草タイプ技となる。さらにそこから考えると相手はゴースト、草タイプのポケモンでありそれに該当するのがボクレー、オーロット、バケッチャ、パンプキンの4匹の絞られる。

 

 

 

 

しかし、おかしかな。

 

 

しなる、空を切り裂く鋭い音が襲ってくる攻撃を避けきれずに一発受けてしまい、三再目の転倒。

 

「ちょ、話をーーー」

 

転び失せながら、どういうことだとまるでピヨピヨパンチが食らったかのように頭の中が混乱する。それもそのはず。

 

 

俺のスクール時代の本で読んだ記憶が正しければ。

 

 

 

 

 

お前ら。つるのむちもパワーウィップもおぼえないだろ!!この改造厨が!!

 

「おわっと!?」

 

倒れていても尚も追撃の手は止むこともなく、むしろ徐々に加速していくように思えてくる。

 

姿を見せずに不意打ちのみで勝負を決めようなんて卑怯なやつだ! 俺好み過ぎて結構好感度上がっちゃうぞおい!

 

「ねぇ、聞いてる!」

 

状況は悪くなる一方。攻撃の手は激しさを増すばかりで休める暇なんてないし、相手のポケモンの正体も今だに掴めない。攻撃を受けきれずに体も限界近い。

 

……なんで俺、こんなに普通にポケモンの技を受けてんだろう?

 

「だから、ほんとうにもう」

 

せめて、ポケモンの一匹さえいれば状況が一変するというのに。何か、手はないのかーーー、

 

 

 

「もう、本当

 

 

 

話聞けえぇぇぇーーー!!!」

 

突然の落雷でも落ちたのかと思うくらいの怒声で、俺も相手も攻撃の手を止めてしまいそちらに視線を向けると大声を出して疲れたのか、呼吸を整えているユイガハマ。

 

 

「ヒッキー!!」

 

 

ヒッキー? 誰それ。もしかして俺のこと言ってんのか。

 

そう、疑問に思うもユイガハマは何かを投げてくるので、キャッチ。

 

良いコントロールしてんじゃん。野球選手になれるぞ。

 

キャッチしたものを見てみるとそれはモンスターボールだった。

 

 

「…………」

 

「それ、もしも時のためにコマチちゃんから預かって! でも、最終手段だからとか言っていたけどそれってどういう、ってなんで嫌そうな顔してんの!?」

 

「別に……」

 

「超不服そうだ!?」

 

 

驚きの声をあげるユイガハマ。いや、だってねぇ~。

 

手の中にあるボールを見つめる。

 

確かにこの状況を打破するためにポケモンの一匹でも入ればいいと思っていたとはいえ、…………コイツかぁ。

 

状況がよくなるどころか下手したら二体一の状況になりかねんぞ。

 

 

「グベッ!?」

 

 

足下から囚われるような感覚が襲い直後、弾け飛ばされる。"かげうち"だ。迷っている間にいい的になってしまった。

 

ちくしょ、背に腹は代えられんか。

 

 

「出てこい!カマクラ!!」

 

「ナャス!」

 

 

切り札、ニャスパーこそカマクラの導入!

 

 

俺が地面に着地すると、再び鞭を振るうかのような鋭い音が向かってくる。

 

 

「カマクラ!"リフレクター"だ!」

 

「ニアァ~~~ス」

 

「カマクラさん!!?」

 

 

カマクラは指示を聞かずに大欠伸をしている。その間にハチマンは20のダメージを受けた。ハチマンは目の前が真っ白になった…………。

 

 

 

 

 

 

 

いやいやいやいやいや!

 

マジでふざけんなこのバカ猫危うく死にかけたじゃねーか!指示を聞かないって交換されたポケモン気取りか!バッジ持たないと言うこと聞かないのか、あぁん!!ボッチだから交換できないし、ユンゲラーとかは交換系進化は仲間にしないの。

 

……進化したいのに進化させられないとか可愛そうすぎるだろう。

 

 

「ニャ、ニャ、ニャス♪」

 

「なに笑ってんだコラ!?」

 

 

俺の状況を見て心底愉快そうに、バカにするかのように笑いだすカマクラ。ほんと、終いにはしばき倒すぞバカ猫。

 

ほら、ユイガハマなんてあきれた顔になってんじゃん。

 

少しでもコイツに期待した俺がバカだった。大人しくボールの中へと引っ込めようかと思い、ボールに手をかけるが少し遅かった。

 

カマクラに"かげうち"がヒットしたのだ。

 

 

「ニャス!?」

 

「カマクラ!」

 

 

ヒットしたカマクラは運良く俺のいるところへと綺麗に弧を描きながら飛んでくる、ソレを俺はキャッチする。

 

 

「大丈夫か?」

 

「ニャ~~ス!!」

 

「今の攻撃は俺じゃねーからとりあえずその爪引っ込めてくんない?」

 

 

鋭い目を更に鋭くさせて今にでも襲ってきそうな気迫を見せるカマクラ。……そういうのは俺でなく、バトル中の相手にしてくんないかな?

 

 

「! 今度こそ頼むぞ、…"リフレクター"」

 

「ニャス!」

 

 

あの鞭のような鋭い音が聞こえて、カマクラに指示を出す。すると防衛本能からか、今度は素直に従ってくれた。

 

俺たちに囲うように青白い壁が展開され、無事に鞭の攻撃を防ぐことができた。よし!

 

 

コレで防御は万全。あとは……。

 

 

「ニャス!」

 

「あ、コイツ!」

 

 

カマクラは飛び出しては、手当たり次第に"サイケこうせん"を放って敵を炙り出そうとしている。しかし、幾らなんでも見えない相手にそんな無謀なことを通用するはずなどなく。逆に、鞭の攻撃と"かげうち"の連発に受けることになる。

 

リフレクターの効果で半減できているとはいえ、エスパータイプにゴーストタイプは相性が悪すぎる。

 

 

「ニャス~~!!!」

 

 

自分は当たらないのに相手が一方的に当たることが気に食わないのか、地団駄をしながらイライラとサイケこうせんを連発するカマクラ。

 

うーん?アイツってあんなに怒りっぽいやつだっけ? いや、いつもはもうちょっとこうグータラでやる気のない、ちょっとやしょっとことじゃ面倒臭くて怒らない印象があるのに。

 

えーと、確か、飯やるのを忘れたときは念力でブン投げられて、昼寝の邪魔されたときはサイケこうせんで吹っ飛ばされて、無理矢理風呂に入らせようとしたら身体中を引っ掻きまわされて傷を受けて……、うん、思い返してみれば見るほど結構乱暴なやつだった。

 

しかし、今カマクラが出鱈目に暴れまわってくれるおかげで相手はカマクラを警戒しなければならなくなったのだ。

 

 

ーーーつまり、チャンスが訪れた。

 

 

俺はこのチャンスを活かすべく、力強く地を蹴りだす。状況を打破するべくにはこの手しかない!

 

あの姿の見えないポケモンは野生である可能性が高い。確かに、技の使い方や能力の使いどころが上手く、一見、トレーナーの指示を受けたような繊細な動きを見せているが実はそれは違う。

 

奴のバックにはトレーナーなどついていない。

 

何故なら、今ここで奴が俺たちと戦う必要などないのだから。

 

例えば、家の留守中に泥棒に入ったとして、そこで運悪くも家主が帰ってきた場合、攻撃しようと考えるか? 答えはNOだ。

 

その場合は息を潜めて隠れて隙を見つけて逃げるはず。もし仮に、攻撃する時が存在するならば、それだけ追い詰められた状況になってはどうしてもという場合のみに限られる。無意味なリスクを負う必要はない。

 

それなのにその場から止まり、相手を迎撃しようと攻撃をしてくる。それは何故か?

 

 

考えられることは一つーーー逃げられない理由があるから。

 

 

「さぁ、どこだ。どこにある!」

 

 

俺はそこへとたどり着き、辺りを探る。俺の考えが正しければここに隠されているはずだ。

 

 

俺は橋に降りたとき、完全に奴のことを見失ってしまった

ーーー姿を見えない相手に追跡?

 

 

急に見えない攻撃に始められ、苦しまれた

ーーー追跡はできたのに攻撃は避けることが困難だった?

 

 

それもそのはず、奪われたボールが忽然と消えてしまったのだ。

 

もちろん、物が忽然と消えるなど急にひっくり返るテーブル並みにあり得ないことだ。ボールは隠されたのだ。

 

 

何故、急に隠す必要があるのか?それはーーー

 

 

 

「見つけた!」

 

 

俺は橋の下、橋を支える柱には少しヒビが入っており小型のポケモン二匹ぶんくらいなら入れそうな穴を発見。いや、やっぱり一匹しか入れない。その中を覗くと、様々な道具で埋め尽くされていて、中に入るには一匹が精一杯なところ。

 

それはーーーいつも隠している場所に隠してしまい、その近くに敵が出没してしまったために、巣を守る防衛本能が働いたためだった。

 

 

俺はその中から探しだし発見。

 

 

それは、ピカピカと黄金に光輝き、最も美しいのは真円であるはずなのに誰もが魅力される、楕円。一攫千金という儚い夢を叶えたという伝説の道具。そう、それは"おまもりこばん"。俺が長年求めていた道具ーーー

 

「ニャス!!」

 

サイケこうせんの流れ弾が飛んできて、危うく食らいそうになったがギリギリのところで届かず、当たらなかった。……今の流れ弾だよね?結構な威力だったのも流れだったからだよね?ね!

 

おまもりこばんをポケットにそっとしまい、改めて探しだす。え、ポケットにしまったのは安全策として一時的に保管ということ理由があって、俺が身に付けているのは別に他意があるわけではないよ。別にパクってないよ。ホントホント、ハチマン、ウソツカナイ。

 

 

再度探しだしては発見。あった!コイツらだな

 

 

それらしきボールは発見すると俺はすぐさまに手に取って、橋の下からでる。

 

橋から出ると普段ならだらだらと情けない様子を見せるカマクラが、ぼろぼろの状態で苦渋の表情で顔をしかめていた。

 

 

「ーーーッ! 戻れカマクラ!!」

 

 

俺はカマクラのボールを取り出して、カマクラを戻す。

 

 

「ったく、お前そんなキャラじゃねーだろうが。時間稼ぎなんて。…………とんだひねデレかよ」

 

 

カマクラが収まったボールを見つめながら、ボリボリと頭をかきながらぼやく。

 

コイツ、ボールを取りに行くためにわざと暴れまわって時間を稼ぎしてたな。

 

普段なら俺のことがどうなろうと知ったこっちゃないってスマした顔をするくせに。ったく、…………かっこよすぎるだろうが。

 

 

しなる鋭い音が飛んでくる。

 

 

「出てこい!」

 

 

ボールの開閉スイッチを切り、放ると青い影が走り、鞭の攻撃を防いでくれる。

 

シュッタっと、やたら格好いい足音をたてて着地し、こちらへと視線を向ける。

 

それは全身が水色で、首回りだけ白い泡ようなマフラーを身に付けており、軽快そうな動きができそうな体つきでまるでバネを仕込んだように高く跳べそうな脚力をもったポケモン。

 

「ケロ!」

 

あわがえるポケモンのケロマツだ。二匹のうちの一匹はコイツだったのか。……コイツもしかして、寝てないか?

 

じっくりと見つめてみると、瞳を閉じているのでなくただ細めているだけだった。

 

 

「ケロ?」

 

「あ、えーと……俺はヒキガヤハチマンだ。お前のパートナー………かどうかはまだ分からんけど、とりあえず今困っているから手を貸してくれるか?」

 

「ケロ!」

 

 

快く返事をしてくるケロマツは手を伸ばしてくる、どうやら握手のつもりらしい。ーーー随分と、人間臭いケロマツだ。

 

……別に断ってくれも構わなかったんだが。だってお前らを取り戻して時点で俺のやることはもう終わったんだし。

 

ああ、けどなぁ。

 

と、手に納めたボールを見つめながら嘆息を吐くかのよう息をし、力を込める。

 

まぁ、あれだな。仕方ない、俺もそんなキャラじゃねぇけど。でも、ほらアレだからな。……いっちょ、カマクラに見習なって、らしくないことでもすっかな。

 

 

泥棒退治でも。

 

 

 

 

 




最初の一匹はヒキガエルくんことケロマツです!
はい、皆さんの予想通りでしたね!

三話目はできているので、今日から明日には投稿します


ご愛読ありがとうございました!


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