ポケガイル   作:三概井那多

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エンディング後の一匹プレーが辛くてなかなかクリアできないで、空探検を最初からプレー始めました。

改めてみると、闇ディアってチョー格好いい!!

あ、新作の質問コーナーでケロマツでした
空探検ではリオルでした。

なので、この二匹は今作におけるキーキャラ扱いにします。(あ、キャラばれしちゃった)

アニメのZでゲッコウガがメガシンカする予定とか、
サトシのジュカインの復活とか、
色々と楽しみなXYZ編ですね!

では、第三話をご覧ください!


そして、彼はトレーナーを知り始める

シュルルル、と鋭く風が切るような鞭が襲い掛かる。

 

 

「ケロマツ、跳べ!」

 

 

鞭の攻撃がくると分かり、ケロマツに指示を出す。ケロマツは自慢の脚力を使い、跳び上がって見えない鞭の攻撃を避けることに成功する。

 

よし!上手くいった。

 

 

「ケロマツ、相手は姿を消しているから気を付けろ!」

 

 

しかし、今のは偶然……奇跡いってもいい。次はないと考えた方がいい。まず、相手の姿を何とかして特定しなければ攻撃はされ放題し、こちらの攻撃を当てることすらできない。

 

さぁて、どう炙り出してやろうか。

 

俺がどうするかと思考しているとケロマツは何を思ったのか、突然首回りの白い泡を千切り取って周囲のあちらこちらにばら撒き始めた。

 

 

「なにをやって……そういうことか!」

 

 

ばら撒かれた白い泡、雪のように地へと落ちていく。その泡は"ケロムース"と言われていてケロマツから作り出される特殊な泡で一見柔らかそうな泡に見えて実は粘着力が強く、そう簡単に溶けたり消えたりしない。

 

ゆえにーーー

 

『!?』

 

ーーー1度、触れてしまえばなかなか落ちることはない。

 

無数にばら撒かれたケロムースにくっつかれたことで不自然に宙に浮いた部分が出来上がる。これで姿を見えないが、的が出来上がる。

 

 

「ケロマツそこだ!」

 

「ケロッ!」

 

 

両手でエネルギーを貯めるよう構えをとり、そこからみるみると水の塊が出来上がる。ケロマツはソレを相手に向かって放つ。

 

 

「みずのはどうを使えるのか…」

 

 

放たれた"みずのはどう"は姿なき敵に直撃し、ドタタッタ!の激しく転げ回る音からしてかなりの威力の"みずのはどう"ということがわかる。

 

…って強ぇーな、おい! 初心者ようにしては結構強すぎじゃありませんかね? なに、今時の子は堪え性がないからすぐチー無双に走るからその傾向に合わせてんの?うん?

 

 

「お前、強いな……」

 

「ケロ……」

 

 

感嘆な一言を漏らすと、ケロマツはこちらへと体を向けて手を出して首を振るう。まるで『いや、自分まだまだですから』と語っているように見えた。

 

やだ、なにこの子格好いい!誰よ、ヒキガエルとか言った子。今すぐ謝りなさいよ!

 

本当に、人間臭いケロマツだった。……マツさんとか呼んでいいか?

 

そんなことを思いながら、姿なき敵が吹き飛ばされた方向に視線をかえると今まで透明だった奴の体が浮かび上がる。

 

そのポケモンは通常サイズよりも少々小柄でまだ子供のように思えた。しかし、自然の中で生きるには少しばかり異色で全身が紫であり、腹のギザギザとした部分だけが黄緑である珍しいポケモンーーー色違いの珍しいポケモンだった。

 

どんな場所でも体を同化させて色を変えることができるポケモン。

 

いろへんげポケモンのカクレオンだ。

 

 

「マジかよ……!」

 

 

思わず舌を巻く。

 

 

色違いの上に、本来姿を隠せないはずのお腹のギザギザ模様すらも消してしまうなんて特殊過ぎる。

 

これはまさに、そうーーー

 

 

 

「ステルスヒッキーそのものじゃねーか!!」

 

 

 

「ケロ?」

 

「はい? 君なにいってんの?」

 

「あ、いやなんでもないっす。はい」

 

 

思わず口からこぼれてしまい、ケロマツとユイガハマから「なにいってんの? 童貞なの?」みたいな視線を向けられてしまった。おい、童貞関係ないだろうが。

 

というかお前まだいたんだ。……状況が状況なだけにすっかり忘れていた。とりあえず心の中だけで謝罪をしておく。

 

 

「カクク!」

 

「ケロマツ避けろ!」

 

 

カクレオンの鞭ーーー舌が飛んでくる。ケロマツはポップ、ステップ、ジャンプの要領で難なく舌の攻撃をかわす。 さっきまでの攻撃はアレだったのか!

 

 

「"みずのはどう"」

 

「ケロ!」

 

 

両手に水の塊が出来上がり、それが放たれる。それにたいしてカクレオンは口を大きく開き、念力のでできた光線で対抗してくる。

 

"サイケこうせん"、先程カマクラが使っていた技と同じ技だ。

 

みずのはどうとサイケこうせんがぶつかり合い、相殺する。威力は互角。

 

 

「ーーーッ、しまった!」

 

 

技同士のぶつかり合いに注目してしまい、肝心のカクレオンの姿がない。再び、透明化させてしまった。

 

いや、慌てるな。透明化されたといえ、奴にはマーキング(ケロムース)がある。それを見つければ……。

 

 

「ケロッ!?」

 

「ケロマツ!」

 

 

一歩遅かった。ケロマツはアッパーでも食らったかのように地から弾け跳ばされる。"かげうち"だ。

 

宙へと飛ばされたケロマツは勢いを殺すためか、空中でくるくると回りながら着地する。

 

 

「"みずのはどう"」

 

 

ケロマツが体制を整うまでにマーキングを見つけておき、そのまま指示を出す。

 

しかし、放たれたみずのはどうは避けられてしまう。………的ができてもかわされるなら世話はないか。

 

このまま持久戦に持ち込んで、ヒラツカ助手の応援を待つという手もあるが、ぶっちゃけそこまでもつとは思えない。

 

幾ら、今日から俺たちがパートナー同士になることが決まっていても所詮はぶっちゃけ本番の即席チーム。まだ互いのことは知らないし、どういうように動き、動かしていいのか分からない。

 

技も、みずのはどうが使えるということしか知らん。

 

 

 

ーーーけど、

 

 

「ケロマツ、舌が飛んでくるぞ! 横に跳べ」

「ケロ!」

 

 

どうして、

 

 

「左にいる!みずのはどう!!」

「ケェェロッ!!」

 

 

お前はそんなにも

 

 

「ケロムースを使って衝撃を吸収しろ!」

「ケロッ!」

 

 

 

俺を信用できるんだよ。

 

 

どうして俺はお前を信頼しているんだ!

 

 

 

『それがトレーナーだから……』

 

「ッ!?」

 

 

これがトレーナーなのか?

 

 

「ケロッ!」

 

「!? ケロマツ!」

 

 

少し思考を止めてしまったせいでケロマツは舌の攻撃を受けてしまい、俺の元へ吹っ飛んできてケロマツをキャッチする。

 

 

「大丈夫か?」

 

「ケロ」

 

 

全然平気だというように、手をあげながら応答するケロマツ。……攻撃を受けて身体はボロボロなくせに。コイツ……。

 

さっさと決めねぇとカマクラの二の舞になっちまうな。

 

奴の方に目を向ける。今だに透明化しているがしっかりとマーキングしているため、奴の様子が何となく分かる。今はどうやらこちらの動きを窺っているようだ。

 

ここまでのカクレオンの力量としてはかなりのレベルと分かる。完全なる自然と同化するステルス能力に、遠距離からの鞭のような舌攻撃、かげうち、サイケこうせん、と、ここまでくれば遠距離間じゃあコイツ無敵を誇ってないか?言うくらいだ。ここで"ふいうち"とか使えればさらに完璧。

 

 

しかし、付け入る隙があるとすればそこにある。問題はケロマツが現状使える技のうちに、あの技のどちらかを使えばいいのだが。

 

 

「…………ケロマツ、今から言う技でもしお前の使える技があるなら、首を縦に振ってくれ、ないなら横に振ってくれ」

 

 

そう言って幾つかの技を挙げていく。現状で使える技を確認するのはこの方法しかない。

 

そうしてケロマツが首を縦に振ったのはーーー三つ。その内の二つは、今の欲しかった技はちゃんと入っていた。

 

すぐさまケロマツに策を伝える。そして。

 

 

「…………ケロマツ」

 

「ケロ」

 

 

最後に確認の意味を込めて、問いかける。ケロマツに対して……。俺自身に対して……。

 

 

「俺はまだお前のトレーナーじゃないし、これ以上カクレオン相手をする必要はない。つーか、もともとアイツを相手にする必要は実を言うとねぇんだわ。お前とあとコイツな、アイツから取り返した時点であとは逃げて警察に通報するなり何なりすればもうぶっちゃけ終わってんだ。お前が体を傷つける必要もなかった」

 

「…………」

 

 

手にもうひとつ盗まれたボールをケロマツに見せながら俺は語る。それをケロマツを黙って聞き入れて、俺は続ける。

 

 

「ほら、あそこに女がいんだろ、確かえーと、何だっけ? ま、いい。ホントはアイツがお前のトレーナーかもしれない」

 

「…………」

 

「もうあとはボールん中に戻って休んでくれてもいい。大丈夫だ、あとは俺が全力で逃げっから。逃げ足は俺の特技の一つだ」

 

「…………」

 

「そんでもって、また改めてアイツとコイツと俺たちのパートナー選択でもすればいい。出逢いはリセットできなくても関係はリセットできるからな。だからーーー」

 

「…………」

 

 

ケロマツは沈黙を保ったまま、見つ続ける。俺は構わず、ボールを取り出して言う。

 

 

「ーーーもう休んでいいぞ」

 

「ケロ!」

 

 

ボールに戻そうとすると、ケロマツは伸ばした俺の手を、ボールを弾く。コロコロと草っぱらに転がるボール。

 

 

「ケロッ!ケロケロ、ケロ!ケロケロケッ!!」

 

 

細めていた目を大きく開き、怒ったような様子で必死に訴えてくるケロマツ。もちろん、ポケモンの言葉なんかわかんねぇ俺にはケロマツが何を必死で訴えてくるのか分かんなかった。

 

けど、

 

 

たぶん、妄想で都合の良い自己解釈で、今一緒に戦った高揚感がそうだと思っているだけで、実際は全然で違うことを言っているかもしれないが。

 

けど、

 

 

まだ、一緒に戦いと訴えているのは俺の気の迷いせいではないよな。

 

 

ケロマツとの瞳が合う、真のある強い瞳。俺を信頼していると主張しているかのような、そんな強い瞳をしているように俺には見えた。

 

 

はぁー、と嘆息する。

 

 

「わかった。…………お前がまだ俺に付き合ってくれるってんなら……最後まで付き合ってくれねぇか?」

 

「ケロ!」

 

 

手の中から飛び出して前へと出るケロマツ。すると、突然ケロマツの青いオーラのようなものを身に纏っているように見えていた。

 

これは…………。

 

ケロマツのその小さな青い背には『任せろ』と語っているようにみえた。

 

 

……ああ、その……まぁ、なんだ。別に嬉しいとか全然思ってない。

 

 

……ただ、顔がやけに熱く感じるのは、たぶんさっきカクレオンの舌でぶたれたからなんだろう。

 

 

ヒリヒリとする頬をポリポリと掻きながらそんなことを思った。

 

 

「カララッ!」

 

 

カクレオンの舌攻撃がやってくる。相変わらずのステルス機能で目には見えず、耳に全神経を研ぎ澄ませて特定するくらいしか方法はない。隠密性にかけた陰湿な戦いといえる。

 

ーーーしかしそれじゃあ、まだ甘いな。

 

ニヤリ、と笑みをこぼす。

 

 

「ケロマツ! "えんまく"だ!!」

 

 

ケロマツは何処から出したのか、分からないが黒く丸い玉を取り出して、地面へと放(ほう)る。

 

途端に周囲は黒い煙に包まれて、辺り一体が見えなくなってしまう。ケロマツの姿も、カクレオンの姿も煙のなかへと呑み込まれてしまう。

 

 

「カララッ!?」

 

「え、何?突然見えなくなっちゃったんだけど!!」

 

 

驚いたカクレオンと、今まで俯瞰していた橋の上にいるユイガハマでもこの状況は理解できないのだろう。

 

さぁ、教えてやるぜ、カクレオン。本当の隠密性に掛けた

 

ーーー卑怯で汚ない陰湿な、最低な戦いをな。

 

 

「カクレオン、良いこと教えてやるよ。実はな、俺にはお前の姿が見えている」

 

「!?」

 

「ケロマツ!左に"みずのはどう"!!」

 

「カククッ!?」

 

 

ケロマツは俺の指示通りに動いたようで"みずのはどう"を放射音が聞こえる、その後、カクレオンに命中し、悲鳴と飛ばされて転げ回る音がする。第一プランは成功。

 

勿論、俺はカクレオンの姿なんか全然見えてないし、ケロマツの姿すらも見えない。ただのハッタリでしかない。

 

しかし、みずのはどうを命中したのは別に偶然ではない。えんまくを撒くことで視界を封じ、迂闊に身動きを取れなくしただけだ。あとは煙で見失う前に目をかけていたマーキングの場所へと攻撃。

 

 

「ハッ、まだ見えているぜカクレオン。ケロマツ、右120度の方向に"りんしょう"だ」

 

 

俺は鼻で笑うように嘘をはき、ケロマツに指示を出す。こう言っておけば、実際に見えないのに見えているとカクレオンは思い込んでくれる。

 

そして、技のチョイスも完璧である。

 

 

「ケロ~、ケロ~、ケロロロ~~」と、カエルの歌のリズムで輪唱が始める。……若干、音痴のような気がするがまぁ、それは気にしない。

 

 

それを食らったカクレオンは苦しむような呻き声を上げる。ダメージからか、それとも音ズレの嫌らしさか。もしかしたら両方かもしれない。

 

分かることは俺も聴いていて結構苦痛だということだ。

 

"りんしょう"は"みずのはどう"とは違い、音色であり、広範囲に発動できる技である。故に、ある程度ベタラメな方向へと指示を出しても当たることができる。

 

 

「ケロマツはもっと歌え!」

 

 

俺はケロマツはさらにりんしょうを続けるように指示を出す。すると快く思ったのか、ケロマツの輪唱が熱が入ったようにさらに激しく響き渡り、カクレオンの悲鳴も上がっていく。

 

 

…………下手くそな歌を熱唱して苦しませるなんて、どこのジャイアンリサイタルだよ。阿鼻叫喚も良いところだ。

 

 

「カララッ!」

 

 

ピュウ、しなう風を切るような音。音を止めようとしているのか、カクレオンが舌の鞭を無闇矢鱈に乱暴に振り回しているのだ。しかし、舌の鞭は空を切るばかりで何も当たったようすはない。

 

どうだ? カクレオン、見えないところからの攻撃の恐ろしさは? 今までされてきてことを逆にされている気分は? 他人から一方的に攻められるのは、最高に怖いだろ。

 

やられたらやり返す!倍返しだ!

 

 

りんしょうの威力は徐々に音が高くなり、共鳴し不協和音の合奏が奏でられる。

 

共鳴音? 合奏?

 

 

「から、カララ、…………カクククララァァァァン!!!」

 

 

聴くに耐えなくなった輪唱に痺れを切らした、カクレオンはサイケこうせんを放つ。すると、周囲に呑み込んでいた煙は消え去り、視界が晴れて見えた光景は。

 

 

「!?」

 

 

驚愕した顔をしたカクレオンーーーりんしょうのダメージからか透明化の能力解いているので俺たちにもはっきりと見えるーーーそこにいたの、大漁ケロマツで行われていたカエルコンクールだった。

 

 

「"かげぶんしん"……」

 

 

俺は答えあわせをするかのように呟く。

 

そう、これの大漁のケロマツのすべてはかげぶんしんだ。そして、りんしょうの威力が上がっていったからくりもここにある。

 

りんしょうは複数のポケモンが繰返し行っていけば、威力が上がる技。共鳴し、合奏のように放つことでそれだけ強い効果が発揮できる。そのためのかげぶんしんだ。

 

 

「カララッ!」

 

 

縦横無尽に舌の鞭を振るい、かげぶんしんたちをしらみ潰しに消していく。透明化を解かれた状態での攻撃そのものをかわすことは容易いがいかせん、量が多すぎて避ける動作がとりにくく、食らってしまう。

 

そして、全ての分身たちが消えてしまいカクレオンの目の前から何もいなくなる。

 

 

「?」

 

「お前の後ろだよ」

 

「!!」

 

 

カクレオンは反射的に後ろに振り返ると、時すでに遅し。両手で抱える水の塊を造り上げていた、青いオーラを纏ったケロマツがそこにいた。

 

 

煙幕で身を隠し、煙が晴れたとき時のためのかげぶんしんを囮にする。最大の威力のみずのはどうを零距離から放つために。

 

 

「"みずのはどう"!!」

 

「ケェロロロロロロォォォォーーー!!!」

 

 

俺の掛け声と共に、ケロマツの雄叫びを上げながらカクレオンへと放つ。

 

この距離から回避など皆無。あえなくカクレオンはみずのはどうに直撃して吹っ飛んでいく。

 

この威力、やはり。煙幕の時は見えなくて分からなかったが、ここまでの威力のみずのはどうに、あの身に纏っているような青いオーラ、…特性の"げきりゅう"か。

 

げきりゅうとは、御三家ポケモンたち共通の特性である。体力が残り少なかった場合、水タイプの技の威力が上がる特性であり、同系統の特性として"しんりょく"や"もうか"というものもある。

 

ん?待てよ。あのカクレオンの特性って……。

 

違和感を抱いたときだった。吹っ飛んだカクレオンは川へと落ちたのだ。そう、先日までの影響で荒々しく激しい流れをしている氾濫の中に。

 

 

あ、やっべ。威力強すぎた。

 

 

俺とケロマツは急いで川の近くまで駆け寄り、カクレオンの様子を窺う。

 

 

「カクク!? カララッ!!」

 

 

必死にもがいて強く流れに抗おうとするカクレオンだが、焦れば焦るほど力を入ってしまい逆に沈んでいってしまう。完全にパニックに落ちてしまい、結果溺れてしまう。

 

 

「ケーー」

 

「待て!」

 

 

今にでも飛び込んでこの氾濫の中へと入り、カクレオンを助けに行こうとするケロマツを引き止める。

 

 

「幾らお前が水タイプでも、そのダメージでこの川に突っ込むのは危険すぎる。止めろ」

 

「…………」

 

 

せめて川の流れが何時もみたく穏やかな状態なら行かせられたが、今は、普段優雅に泳いでいる川に住むポケモンが一匹も見られない状況。その中に行かせるのは危険すぎる。

 

ここはカマクラのねんりき……いや駄目だ。アイツもかなりダメージを受けているし、第一、素直に俺の言うことやカクレオンを助けてくれるとは思えない。

 

「ケロケロ!」と、じゃあどうするんだ!と言うようにケロマツは睨んでくる。

 

俺はケロマツから視線を外して、溺れかけているカクレオンに目を向ける。

 

物を盗み、他人に怪我を負わせ、悪行を重ねてきたポケモン。それに対して氾濫した中で溺れて散っていくのは、ある意味正しい最期なのかもしれない。

 

罪を犯した者はそれ相応の裁きを請けるのは当然であり、助ける道理はないはず。

 

 

 

しかし、それは本当にそうなのだろうか?

 

本来、野生のポケモンは群れで行動することが多く、人間に警戒して寄ってこないことが殆どであり、町のなかに入り込むなど人に馴れているポケモンくらいだ。

 

しかし、アイツはどうみたって人馴れしているようなタイプには思えない。人間相手にも容赦ない攻撃、盗みに入る度量。その行動からして一見、人間に恨みを持っている野生のポケモンに思えるが、それは違う。

 

 

これはあくまでも俺の推測なんだが、たぶんアイツはーーーボッチなのだ。

 

 

あのカクレオンは力量こそ素晴らしいが、サイズ的にみてまだ子供であるのだろう。人間への攻撃の加減の知らなさが言い証拠だ。

 

本来、まだ群れに過ごすくらいの時期。それなのにこんな森と町の中間には住んでいるのは、アイツが特種だからだろう。

 

通常の個体とは異なるポケモン。強くて色違いで姿を完全に消せる特種な個体。そんなやつがいれば群れから疎まれるのは当然である。

 

群から除外され、仲間から隔離され一人でいることを余儀なくされたのだろう。

 

悲しいことに、他とは違うということで一人となるという必然はポケモンの世界でも人の世界でも同じなのだ。

 

ゆえにアイツはどんな形であれ、繋がりがほしかったのだろう。物を盗むことで誰かに見つけて欲しかった。戦うことで自分をみてほしかった。

 

 

一人でいることの寂しさや孤独感、虚無感は恐ろしいほど心が沈んでいくのを感じたくないために。

 

 

ここで一旦、思考をやめる。

 

 

俺はいったい何を根拠にこんなことを考えているのだ?どうして、奴のことをまるで見てきたように語れるのだ。

 

俺はアイツのことは知らない。ただ、似たような境遇の何処かの誰かと重ねてみているだけであってーーー本当は何も関係ないのに。

 

 

今のは全て俺のただの妄想で悲劇を彩った、絵空事でしかない。

 

 

川の流れへと抗うことができず溺れ、沈んでいき、流されていくカクレオン。

 

 

ああ、クソ!

 

 

「!?」

 

 

この方法が一番効率的だ。

 

俺は川へと飛び込んだ。

 

 

荒々しく、速く、土砂で濁った川進むには苦難であり、人一人が泳いで抗うなんておこがましい自然の力。……だからなんだよ。

 

無様に格好悪くも必死になって泳ぎ、もがき、足掻く。

 

 

コイツの境遇とかどうでもいい。

 

コイツがやってきた罪なんてどうでもいい。

 

コイツが俺に対しての攻撃したことは……まぁ、許されないんだが。

 

 

けど、それでポケモンを一匹見捨ていい理由にはならないよな……。

 

 

俺は決死の覚悟で川の流れに逆らいながらも、カクレオンの元へ到達する。そのままカクレオンを抱き抱える。

 

 

「!?」

 

「グヘッ! こら、暴れんッギャアァーー!?」

 

 

パニックを起こしている、腕のなかで引っ掻き、噛みついては暴れ回るカクレオン。ってコイツ状態異常の方の混乱もしてないか?

 

目の焦点があっておらず我を忘れて自分にも攻撃する混乱状態。みずのはどうの追加効果がハッキリ出ている。

 

こんな非常事態に傍迷惑な効果発揮しやがってと、怒りを覚えるがしかし今から俺がすることを考えるとは逆にこれはチャンスである。

 

俺はポケットに手を突っ込みあるものを取り出す。それはモンスターボールだった。先程のカクレオンの巣に隠されていたボールは複数あり、その内の空ボールを一つをくすねて……もとい、借りてきたのだ。ほら、冒険における落ちた道具を使っていいというルールあるし。

 

 

「大人しく、捕まれ!」

 

 

ボールを軽く当て、吸い込まれていくカクレオン。完全に入りきったとき開閉スイッチが点滅を始める。

 

1…、2…、3…、と。 完全にボールの中に納まりきった。捕獲成功!

 

 

「カクレオン、Gだぶ!?」

 

 

某名言を高らかに上げようとして失敗した。それはそうだ。こんな氾濫した中で何をやってんだ俺は。

 

急いでボールを岸へと投げ込み、ついでに残りの2匹のボールも投げる。

 

 

「カラン!」

 

「ニャス」

 

「ファッコ!!」

 

 

投げた勢いで開閉スイッチが切れ、登場する三匹。あ、残っていたのってフォッコだったのか。

 

 

「ケロッ!」

 

 

すると、ケロマツはケロムースにこねり、ロープ状に造り上げて俺の手元を掴んできた。え、なにこのケロムース。万能過ぎない?

 

ケロムースの使いどころの良さに驚きつつも、 ケロマツに感謝する。流石、マツさんだ!超頼りになる! だけど、そんなことできるなら飛び込む前に教えてほしかった。

 

複雑な気持ちを抱きながら、俺はそれを頼りに岸へと泳ぐことにするだが、しかしカクレオンからのダメージに加え、カクレオンへの救助のために泳ぎ疲れために先ほどと同じくは川の流れに逆らえない。

 

 

しかも、

 

 

「ーーー!!」

 

 

歯を噛み締めて踏ん張ってくれるているケロマツだがそれも限界に近い。ポケモンとはいえ只でさえ、小さい体なのに、カクレオンは戦いでの傷が大きすぎる。

 

 

というか、ここでの俺たちのピンチって全部カクレオンのせいじゃねーか!

 

 

そう考えてしまっては元もこうもなく、仕方ないのでとりあえず、マツさん頑張ってくれ! と心の中でエールを送る。

 

 

しかし、俺の体重×川の流れの力の計算に小型のケロマツの決死の努力も虚しく、ズルズルと、流されていく。

 

 

ああ! マジで頑張ってくださいマツさん、諦めないで!!

 

 

俺のそんな淡い願いは呆気なく(泡だけに。アハハ、全然笑えない)手の力に限界がきたケロマツはケロムースのロープが離ーーー

 

 

「あッぶない!!」

 

「!? ぐいばばまま!!?」

 

 

ケロマツが放されて俺が流される直前に、いつの間にか橋から降りてきたユイガハマがケロムースを掴み取ってくれた。

 

 

コイツの存在、途中から完全に忘れてたな。

 

 

「ーーーッグ! ヒッキー…、もうちょっと!が、頑張れ!! 」

 

「ケロ!」

 

 

精一杯の力入れて引っ張るユイガハマとケロマツ。その様子を見かねてか、カマクラ、カクレオン、フォッコも加勢に入る。まるで綱引きでもやっているみたいに一列に並んで、引っ張る。

 

いや、この場合は大きなカブか。

 

どちらにしろ、これで助かる見込みが出てきた。

 

そう思い、足をバタつかせてケロムースを頼りに再び岸へ、岸へともがくように泳ぐ。

 

流れに沿うように泳いでいるため、体力の減りが半端ない。脚がガタガタと震え体全体が痙攣を起こし、視界は飛んでくる水の連続ですこぶる悪い。

 

しかし、その中でひたすら手を伸ばしてもがき、バタつかせて足掻く。例えその姿がどんなに惨めだろうと醜態だろう関係なく。

 

残り岸までわずかなところ へと到達する。

 

よし助かったと誰もが安堵した瞬間、

 

 

 

 

ーーーケロムースのロープがブチッ、と切れたのだ。

 

 

 

 

「だああああーーー!!!?」

 

 

氾濫した川は待っていましたといわんばかりの勢いで俺を呑み込んでいった。

 

激しい水中のなかで前後左右、上下感覚が無くなるくらいの混雑する。体が強引に押されるような引っ張れるような、目が舞う強力な流れは、いつ五体がバラけてしまっても可笑しくない。

地獄から落ちてきた一本の蜘蛛の糸、這い上がろうとした罪人はその糸が途中で切れてしまい、再び地獄へと堕ちてしまう。

 

それと同じ。

 

呼吸も苦しくなり、視界は薄くなり意識がだんだんと遠退いていく。

 

 

そんな最中、昔の光景が次々とアルバムのように捲られている不思議な感覚が襲われる。

 

 

所謂、走馬灯。

 

しかし、おかしなことにその走馬灯に写し出されたのはコマチでも、両親でも、カマクラで、ましてやスクール時代のやつでもなかった。

 

 

その人は、出会ったこそなかったがしかし、その事はよく覚えている。子供の頃に見た、別の地方のポケモンリーグ。そこに戦っていた赤い少年。

 

 

その人は笑っていた。どんな状況でも、諦めず、考え、ポケモンを信じて戦い、勝ち抜いて優勝した、その人ことを。

 

 

『ポケモン達を信頼して信用される、それがトレーナーだから』

 

 

インタビューにそう答えたことを鮮明に覚えている。

 

 

ハッ、よりにも寄って最後に思い出すのがこれかよ。 どうせならコマチの成長過程の姿を見た……あ、いややっぱり見たくない。そんな結婚式で見せられるようなやつ絶対に見たくない!コマチは何時までもお兄ちゃん一緒だ!

 

 

……この状況でも言ったら危なさが異常過ぎる発言だよな。

 

けど、案外思い出してよかったのかもしれない。ほんの少しだけどその意味を理解することができた。

 

……できる機会に出逢えたんだから。

 

完全に諦めムードのような川の流れに呑まれながら、最早足掻くこともせず濁流の中に散っていくの感じ、

 

 

「?」

 

 

突然体に何か違和感を覚え、目をを開けるとそこにはボロボロの体のケロマツとカクレオンがいた。

 

 

「!?」

 

 

はぁ!?何でコイツらがここに……まさか俺を助けるためにか!?

 

いや、百歩譲ってケロマツはまだ分かるけど、なぜカクレオンまで? コイツが助ける道理なんて何一つないはず。

 

疑問に思いながら、俺を掴んで必死で水面まで引き上げようとするカクレオンとケロマツ。

 

 

バカやめろ!

 

 

今にでも声をあげてそう言いたかった。

 

お前らまで巻き込まれる必要なんてないんだよ。俺が勝手にやって、そんで失敗したんだがらお前らまでここにする必要も何もないんだ!

 

 

だから、頼むから今すぐやめろ!今ならまだ、助かるはずだろ。

 

 

水タイプのケロマツなら俺は無理でもカクレオン一匹くらいならこの中から逃れられるはず。しかし、ケロマツはそれをしない。

 

当然だ。水中の中にいる以上、しゃべることのできない俺にはそう指示を出せないのだから。

 

しかし、このままじゃあ三人とも共倒れになっちまう。

 

 

「がッポボポーーー」

 

「!?」

 

限界がきたのか突然カクレオンが空気を吐き出し、苦しみ始める。ほら、みろ!俺だって何時までもつのか分からないんだ。ケロマツ、とっととそいつを連れて引き上げろ!

 

目でそう訴える。が、ケロマツはそれを無視しし、カクレオンも苦しみながらも俺を水面まで引き上げようとする。…コイツら、わかってて無視してんじゃねぇのか?

 

二匹は力を振り絞って俺を助けようとする。

 

なぜ、コイツらがここまで俺にしてくれるのかが分からない。今日出会ったばかりの……しかも片方は敵だった奴だ。

 

どうしてこんなに命がけになっても俺を救おうするのか、分からない。

 

 

けど。

 

 

グッと、ケロマツ達の手を掴む。

 

 

ここで俺が諦めてしまったら、コイツらも心中することになる。そんなの真っ平ごめんだ。

 

 

俺と心中していいのは、コマチだけだかんな!

 

 

俺は思考を巡らせる。

 

意識を保っていられるのももう、そう長くない。恐らく、後一分もない。

 

その一分でできること…………。

 

俺は2匹を抱き寄せて、一ヶ所へとまとまる。そのまま二人の顔を向けて口パクで指示を出す。

 

ポケモンを信用し、信頼される。それがトレーナーなら、

 

 

 

お前を信じるな!俺を信じろ!!

 

俺が信じる、お前を信じろ!!!

 

 

できるだけ大きくゆっくりと分かりやすいように口パクをする。

 

 

「!(コクリ)」

 

 

カクレオンとケロマツが顔を見合わせて頷き合う。…それは俺の考えが伝わった、と理解するぞ。

 

俺は川を流れ沿うようし、体の向きの動かし標準を合わせる。

 

まだだ、チャンスは一度きり。

 

 

「……ッ!」

 

 

呼吸ができないため、けたたましい危険アラームに言うには相応しい頭痛が発生する。身体中の血液が酸素を求めて、目を開けているだけでも苦痛だ。

 

頼む! あと少しだから、持ってくれよ!!

 

 

その願いが通じたのか、水面下に一つだけ露骨に剥き出ている、岩を発見する。

 

 

ーーーここだ!

 

 

俺は2匹をその場所に指を指す。スタンバっていた2匹は瞬時に反応し、"みずのはどう"と"サイケこうせん"の技を重ねるようにして繰り出す。

 

その衝撃に合わせて上へ上へと浮き上がっていく。

 

水の流れにおける原理で、どれだけ速くて荒々しい流れでも統一して方向を一緒になるときがある。それは水中で邪魔になる壁のようなものの存在。

 

流れがそれにぶつかれば方向の展開ができる。右に岩があればそれに沿って左へと、 左にあればそれに沿って右へと。

 

つまり、下に岩があれば、上へと流れが統一し、そこへ技の衝撃波を加えれば。

 

 

「ブッパ!」

 

 

水面へと上昇可能!

 

顔を外へと出した俺とカクレオンはすぐさま身体中に酸素を求め口を開くがいかせん、流れのせいで口に水が入ってくる。

 

 

「…………見つけた!」

 

 

何か聞こえ、空を見上げてみるとそこには大型ポケモンがいた。

 

大空のように青く歴戦で繰り返した鍛えられた体躯に、赤い翼を持ったポケモン。

 

ドラゴンポケモンのボーマンダと、その背に乗った白衣の女性、ヒラツカ助手の助け船だった。

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

「どうも、すいませんした」

 

「ケロケロ」

 

「カラン」

 

 

後日談というか、今回のオチ。

 

開口一番に深々と頭を下げては謝罪の言葉をだし、それにならってケロマツとカクレオンも頭を下げる。

 

ポケモン達も一緒に謝罪したことが印象に良かったのか、相手の女性も。

 

 

「いいのよ。こうして戻ってきたわけだし」

 

 

と、優しく返してもらっては「でも次はないわよ」と釘を刺され俺たちは再度謝罪する。

 

そう、俺たちはつい先日までカクレオンが盗んできた道具の数々を持ち主に返していた。

 

あの後、ヒラツカ助手から救助されそのまま、コマチとユイガハマの元へ戻っては二人からキツくお叱り受けて、体力と精神がグロッキーになりつつも、「話はまた後で」ということにで中断され、帰宅。

 

その後、帰宅後も卸したばかりの服がボロボロで帰ってきたことでおかんから説教受けつつ、面倒くさかったので旅にでることにしたと言ってことを終わらせようと思ったのだが、親父が満面の笑みで「二度と帰ってこなくていいからな!応援しているぞ!!」と気持ち悪いくらい、エールという名の絶縁宣言され、そこに「あ、コマチも付いていくから」とコマチの発言のおかげで、ぶちギレ、お父さんサイヤ人2くらいの勢いで俺をぶん殴られて、気絶しその日は終了。

 

翌日、筋肉痛なのかそれとも怪我の痛みなのか、分からない痛みで身体中を悲鳴あげながら起床し、二度寝を試みるがコマチの「お兄ちゃん、お・ね・が・い♪」とのあざとかわいい妨害にて断念。

 

その後、ヒラツカ助手と、ユイガハマとの合流し、改めてパートナー選択……というか、ケロマツが昨日の一件で俺を"親"という認識を完全にし、ユイガハマも「うん、二人息ぴったしだからいいよ」とフォッコを選択(ま、それがなくてもコイツは何だがフォッコを選んでそうだったが)。その後、カクレオンをどうするかという話になり、「普通に警察に突きだしていいんじゃねーの」と俺の発言に三者どころか、三匹(ケロマツ、カクレオン、フォッコ。カマクラはボールの中でおやすみ中)もドン引きされ、 カクレオンが俺の足にすりより、必死で「私かわいいアピール」で、訴えないで! としてくるのでそれに同情した三人が「手持ちにいれてやりなさい」とまるで俺が悪者扱いされたので、渋々手持ちに加えた。

 

ま、まぁ、色違いで完全ステルス能力とか即戦力であることは違いないのでありがたいんだが。

 

 

そして、カクレオンの盗んだものの数々を持ち主へと返し回る、今に至る。

 

 

「とりあえず、今ので最後か。……ったく、何でこんなにも盗んでだよ。もう日が傾いてんじゃねーか」

 

「カラカラ♪」

 

「笑ってんじゃねーよコラ」

 

 

ジョーイさんに突き出すぞ、この盗人ポケモン! お前のせいで、泥棒から足を洗った人みたい空気が度々が出て、「二度とやるんじゃねぇぞ!」と言われる度に「二度とやらないぞ」って一々改心するんだぞ。俺やってないのに……。

 

 

「あ、ヒッキー終わった? 」

 

「ああ、今終わったところだ。っつーか、ヒッキー言うな」

 

「そうなんだ。私も今終わったところ」

 

 

後半部分を聴き逃したのか、それとも無視したのか判断に迷いながらもユイガハマと合流。流石に数が数なだっけあって4人で手分けして道具の返却を行っていた。

 

 

「ん、あんがと。じゃあな」

 

「うん、それじゃバイバイ……って!何でここで別れるの!? 終わったんだし、一緒にいこうよ!」

 

「えぇー……」

 

「なんでそんな嫌そうなんだし。……もしかしてヒッキーって私のこと嫌い?」

 

 

後半部は小さくて聞き取りにくくかったが、何とか耳に入ったので聞かなかったことにする。ほら、まだ好きとか嫌いとかじゃないし。ただ、一緒にいて気まずくなったらまずいだけ。

 

少しうるっと瞳を湿らせて悲しいそうな表情をとるユイガハマ。いやそんな顔をすんなよ、俺が酷いことしたみたいじゃないか(事実)。

 

すると、ユイガハマの足元にいたフォッコが「うう~!」と唸ってケロマツとカクレオンが「ああ、

やっちゃった…」みたいな目で見てくる。ほら、こうなった。

 

 

ボリボリと頭を掻きむしりながらやれやれと息をはく。

 

 

「ほら、いくぞ」

 

「えっ?」

 

「別、ここで分かれる意味なんてないしな。二人と合流して早く終わらせて帰って休みたいんだよ」

 

「う、うん!一緒にいこ!」

 

 

一瞬で元気を取り戻したユイガハマ。ほら、これで良いだろと、三匹に目を向けると「ん~、三十点」というよう顔をされる。いや、お前らの基準厳しいだろ。ぼっちのなかでも満点のレベルだよこれ。具体的に女の子に気を使うってところハチマン的にポイント高いよ!

 

ポケモンたちの評価に納得いかないまま、俺たちは歩き出す。

 

 

「ね、怪我って大丈夫なの?」

 

「ん、ああ、全然駄目だ。身体中が悲鳴をあげて今にでも倒れそうだ」

 

「そう、よかった……って全然ダメなの!?」

 

「うわっ、ビックリした。急に大きい声出すなよ、体に障るだろ」

 

「あ、ごめん。……あれ?なんかおかしくない?」

 

 

首をかしげながら、「あれれ~、おかしいぞ~」みたいなことをいってくる。それにあと推理力と眼鏡と探偵バッチと男の子だったら名探偵になれたのにな。うん、必要なものが多すぎるな。

 

 

「えーと、それじゃあ旅に出るのはもう少し先になりそうな感じ?」

 

「いや、明日には出るつもりだが」

 

「え! 明日って、ずいぶんと急だね」

 

「ああ、早く出ないと俺の命にかかるからな」

 

「それって普通逆じゃない?安静して治ってから出れば良いのに」

 

「いや、家にいると『就職しろー』『働け!』『出ていけ!』って別の傷口開くだろ」

 

「怪我人相手に変な家だ!!」

 

 

驚愕するユイガハマ。俺もそれに頷きながら続ける。

 

 

「ああ、だからしばらく旅にでてほとぼり冷めたら「旅にいってきましたよ~」って空気で永遠に居座ることにするわ」

 

「それ旅立ちというよりも家出じゃん! っていうか考えが結構クズだ!!」

 

 

さらに驚愕するユイガハマ。え、旅立ちも家出も似たようなもんだろ。子供が無計画に親元を離れるなんて。

 

 

「あ、ってことはヒッキー一人で旅をするの?」

 

「ん、いやコマチも一緒。というか、俺が旅をするっていうよりもコマチの旅に俺が保護者で付いていくみたいなんもんだな」

 

「へぇ~そうなんだ。意外に良いお兄ちゃんだね」

 

「ああ、……コマチに近づく害虫の駆除するのは俺の生き甲斐だからな!」

 

「やっぱり、変だ!!」

 

 

愛重っ!というかキモッ!シスコン!と、言ってくるユイガハマ。違いますー。妹のことを考えているだけで別にシスコンとかじゃありませんー。

 

そんなことを思いつつ、隣では小声で「ここで誘えば、……あ、でもせっかくの二人兄妹の旅だし、あ、でも……」と頬を少し赤くしもじもじとしだしたユイガハマ。

 

一体なにいってんだコイツ?

 

 

そう思いつつ、観察しているとやがて意を決したように頬は赤いままだが真剣な顔をする。

 

 

「あのさ、ヒッキー! もしもよかったならなんだけど。その~、一緒にた「あ、お兄ちゃん!ちょっとこっち来て!」」

 

「お、おう」

 

 

コマチとヒラツカ助手を発見され、ユイガハマの台詞が遮られる。

 

何かトラブったのコマチとヒラツカ助手の以外の男性の姿がみえて少し討論しているように見える。

 

 

「なんだ?ユイガハマ、話は後で良いか?」

 

「あ、う、うん。ぜ、全然良いから!」

 

 

と、手をブンブン振り、テンパった様子で大丈夫と答えてくる。いや、全然大丈夫に見えないんだけど。なに、告白でもしようとしたの?

 

ハハハ、それは無いな。

 

だけど、ぜったいにそんなことはないと知りつつも、それでも期待してしまう、初で可愛い時代もありました。はい。

 

 

首をかしげつつ、コマチたちの元へと駆け寄る。

 

 

「お兄ちゃんたちも終わった? 残ったりしなかった?」

 

「ああ、残んなかったけど…なんかあったのか?」

 

「うん、私とヒラツカさんも返し終わったんだけど一人ね、自分も道具がなくなったから って言ってね。それでね」

 

「ああ、それでなんかもめてんのか」

 

 

聞いて納得。確かにこういった物が無くなったり、入れ替わったりするような事件によくある類いのものだ。他人の道具は見つかったのに自分のぶんだけはないパターンのやつ。

 

俺も昔、クラスメートの悪戯で道具を隠されたときに見つからず、その上隠した本人たちまで分からないという事態を味わったことがある。クソッ!ふざけんなよ。何あの笑って「ゴメンゴメン」の謝り方! ふざけんなよ、もっと真剣に謝罪しろよ!

 

 

「で、なんの道具だ?」

 

 

苦い思い出を思い出しながら、無くなったという道具がなんなのかを訊ねる。もしかしたら、別の人にその道具を誤って渡した可能性がある。そうなると色々と面倒臭くなってくるんだが。

 

しかしそんなことはなく、コマチが教えてくれた道具の名は俺も聞き覚えがあるものだった。

 

 

「うん、おまもりこばん」

 

 

そっか、おまもりこばんか。全く、そんな珍しい道具を無くすなんて本当にドジなやつだな。……え? おまもりこばん?

 

俺は橋の下で道具を物色していた時のことを思い出す。そして、そのあとのことを思い出す。川に流された際に何処かに行ってしまった金ピカの道具のことを。

 

だらりと嫌な汗がでてくる。ヤバッ、バレたらカクレオンじゃなくて俺が捕まりかねん、 知らんふりして誤魔化さないと!

 

 

「お兄ちゃんほら早くいこ」

 

「え、行くって何処に?」

 

 

突然、コマチが俺の手を引っ張り出してどこかへと連れていこうとし、それを全力抵抗する。

 

もしかしてバレてたの?それで警察につれていかれんの?

 

実の妹に警察に出頭させられるなんて嫌すぎる。

 

全力で抵抗する俺に不思議に思ったのか、首をかしげながらコマチは答える。

 

 

「ほら、橋の下のレオン君の住み処。見落としとかあるかもしれないからってヒラツカさんの指示でね」

 

「ああ、なるほど」

 

 

つまりこれから無い道具を探すという無限地獄を味わうことになるわけだ。

 

ちなみにレオン君というやたら格好いい名前はカクレオンのことな。コマチが勝手に言ってる。ついでにケロマツのことはケロ君とよんでいる。あの~、勝手にニックネームとか考えないでね。一応、俺のポケモンだし。

 

 

そんなことを思いつつ、俺たちは橋の下へと向かうことになった。

 

 

 

 

どうやら、俺たちの旅はまだまだ先になりそうだ。

 

 

 




トレーナーメモという名の現ポケモン設定。


・ケロマツ(マツさん、けろりん、ケロ君)

義理堅く武士道精神をもった忍のような人間くさい性格。(武士なの?忍なの?)二番道路でであった。ヒッキーの最初のポケモン。歌うのは好きだが、壊滅的な音痴。頑なにりんしょうを忘れようとしない。

特性:げきりゅう
特殊行動:万能ケロムース
現在使用技:煙幕、影分身、りんしょう、みずのはどう


・カクレオン(盗人、レオンくん、かくかく)
いたずら好きでさみしがりやな性格。二番道路でであった。
色違い(ポケダン弟仕様)で、完全ステルス能力、特性も変わっているという、珍しい個体で、ステルスヒッキーの代名詞を持つポケモン。不意打ち、闇討ち、影うち、なんでもござれのヒッキーを体現したかようなヒッキー好みのポケモン。

特性:へんげんじざい
特殊行動:ステルスヒッキー、舌攻撃、泥棒
現在使用技:かげうち、サイケこうせん、きりさく、泥棒


今のところ、こんな感じです。

ポケモンや登場人物が多くなってきたら、設定回みたいなものを作りたいと思っております。

では、次回はあのお方の登場です!
そのあとくらいにジム戦編を考えております。

ご愛読ありがとうございました!!
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