DECADE ~記憶を辿る旅~ 作:ソルラス
力を壊す魔
『IS』。
それは、人が作り、人に与えられた力。
その翼を得た人は、天へと飛びだった。
しかし、力を手に入れた人は大逸れた心を抱き始める。
ましてや、神がそれを許すわけがない。
そんな冷酷な神から、正しい人を守る存在がいた。
その名は………『アギト』。
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とある学園。
此処に限らず、世界ではある事件の話題で持ちきりだった。
それは[謎の怪人にISが破壊されている]ということ。
「やっぱり写真とかもあるし本当なのかな……」
「ニュースとかでもやってるしね……大丈夫なのかな」
「まだ日本には現れていないみたいですけど……」
クラスの女子達がそんな風に話しているのを用務員が聞き耳を立てていた。
「……『アンノウン』か」
来流である。
「『IS』にアンノウン……奴らの考えは分かるけどな………」
話は数時間前に遡る。
この世界にやって来た鎮守府はこの『IS学園』に隣接して建っていた。
来流はIS学園の用務員ということになっているらしく、此処でこうして働いているということだ。
そもそもISというのは天才科学者、『篠ノ之束』が作り上げた駆動鎧。
本来は宇宙空間での活動を想定された兵装であり、現在は軍用兵器や競技用として使われることが主。
自己進化や強力な力を持つが欠点としてこれは女性にしか扱えない。
IS操縦者を養成するこの学園に在籍する『織斑一夏』のみが唯一無二の男性操縦者だということだ。
「(その織斑一夏は今は休校中……絶対にソイツがこの世界での重要人物だから接触は取っておきたいんだけどな……)」
「手が止まってますよ来流さん」
ふとそこで顔を上げるとそこには大和ともう一人、スーツの女性がいた。
「あ……大和に『千冬』さん」
「仕事中に考え事とは感心しないな」
女性の名は『織斑千冬』。一夏の姉であり、嘗ては世界最強のIS操縦者であった。
今はこの学園の教師を勤めている。
ちなみに大和は艤装の経験があるため、実技教師ということになっている。
「……まあ、色々あるんですよ。それより……」
「ああ。これから授業だ。お前の掃除の腕は一夏に負けず劣らずだからな。頑張ってくれ」
「じゃあ来流さん。行ってきますね」
「ああ」
二人を見送った来流は掃除を再開する。
それをしつつも彼は目まぐるしく思考を働かせていた。
「(接触はできないまでも情報は欲しい……となると……)」
結論が至った来流は掃除のペースを早める。
一切雑にはなっていないのが彼らしい。
放課後、一人の女子生徒が竹刀袋を持って歩いていた。
名は『篠ノ之箒』。篠ノ之束の妹だがいい感情は抱いていない。
彼女は一夏に恋しているのでここ最近は彼の休校によって落ち込んでいる。
一度、立ち直らせそうと行ったのだが彼のただならぬ状態に何も出来ずにいた。
「(一夏………心配だ……)」
こうした気持ちは自分がやっている部活の剣道に当てるしかない。
そんな心情で彼女が剣道場に入る。と、
「…………えっ!?」
剣道場は完璧なまでに綺麗になっていた。
塵一つ落ちていないレベルである。
「……誰が……?」
「俺だよ。篠ノ之箒」
そこにいたのは来流だった。
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その頃、外国ではIS部隊が怪人と戦っていた。
「怯むな! ISはこのような怪物に負けやしない!!」
蟻のような怪人はISの武装に撃たれ、斬られて倒れていく。
しかし怪人側も怯まずに攻撃を仕掛けてくる。
ISの防御機能があるため、そこまで被害は出ていないが数が多く少しずつ圧されていく。
「くっ……一体何匹居るのよ!!」
「気持ち悪い……!」
「退くな!! 力では此方が勝っている!! 押し返せ!!」
指揮官が命令して怪人に対して攻撃を仕掛ける。
その時。
「ぐあっ!?」
IS部隊のうちの一人のISが破壊された。
更に部隊に次々と被害が出ていく。
「な、なんだ!! どうしたお前達!!」
慌てて指揮官が周りを見渡す。
そんな彼女の目の前に突如影が……。
「ひっ………ギャアアアアアアア!!」
ドサリと倒れる襲撃者。
その周囲には無惨に破壊されたISの残骸があった。
「………」
鋭い大鎌鋏を持った怪人が蟻怪人に合図を出すと蟻怪人は解散して消えていく。
「…………人間に余計な力は必要ない」
そう言って怪人は東……日本の方角を見た。
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「ほら」
「あ、ありがとうございます……」
「敬語は要らない。そんなに年齢は違わないしな」
「………そうか」
来流から受け取ったお茶を一口飲む箒。
「…………一夏って奴が心配なのか」
「っ! べ、別にそんな」
「口では隠していても行動は誤魔化せない。表情とさっきの剣の迷いを振り切るような動きで分かる」
「………………」
黙りこんでしまった彼女を横目で見ながら来流は問いかける。
「………ソイツのこと、大切なんだな」
「ああ……いつもなら彼奴は何があってもすぐに立ち直れる……だけど今回は凄く大変そうで………何があったのかも話してくれないから……余計に心配だ」
「………そうか」
気丈そうに見えるがやはり少女故に精神もまだ弱いのだろう。
こんな彼女にあまり無茶はさせたくはないが来流は聞くしかない。
「……なあ、その一夏ってどんな奴なんだ?」
「……え?」
「(ソイツの不調も異変が原因かもしれない……なら酷かもしれないが……)」
直後。
ドガァン!!!
「ッ!? なんだ!?」
「爆発!?」
見ると、ISが使用できる場所である第二アリーナから煙が上がっていた。
「まさか………! 箒!?」
来流が止める間もなく、箒は走っていった。
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第二アリーナでは世間で話題になっている怪人が襲撃しにきていた。
「グオオオァァァァァ!!」
「ああもう!! なんなのよいきなり!!」
「愚痴を溢している暇があったら撃退しろ!!」
ツインテールの少女、『風鈴音』のIS『甲龍』、眼帯を巻いた『ラウラ・ボーヴッヒ』の『シュバルツェア・レーゲン』がそれぞれの武装を展開。
衝撃砲とレール砲を放つがジャガーのような怪人はすぐさま回避。
「そこですわ!!」
と、『セシリア・オルコット』が『プルー・ティアーズ』による放射状の一斉射を放つ。
しかしジャガー怪人はその光の檻すらかわしきった。
「そんな!? ッきゃあ!?」
「!! 二体目!?」
猛禽類に似た翼を携えた怪人はセシリアに強烈な一撃が放つ。
「セシリア!!」
「箒さん!!」
そこに駆けつけた箒が『紅椿』を装着。
二振りの刀、『空裂』と『雨月』で切りかかるが、
「シャアアア!!」
「くっ!? 邪魔をするな!!」
ジャガー怪人が飛びかかって箒の攻撃を阻害する。
刀を抑える腕力は相当なもので紅椿にも匹敵している。
「ッ……この……」
「グルル…………ガアッ!?」
突如、ジャガー怪人が怯んだ。
ライドブッカーを構えた来流が発砲したのだ。
「よ、用務員の……?」
「ジャガーロードにファルコンロードか………好き勝手はさせないぞ。変身!!」
[KAMEN RIDE DECADE]
ディケイドに変身した来流はジャガーロードと殴りあう。
そこに飛行していたファルコンロードも加わるがディケイドは二体の攻撃をいなしていた。
「な、なんですのアレは……?」
「IS……じゃない? 別の何か……?」
「ハッ!! りゃあ!!」
殴られて後ずさったジャガーロードは俊敏な動きでディケイドを翻弄する。
「猫科には猫科で相手してやるよ」
[KAMEN RIDE OOO]
軽快な音楽と共にディケイドに赤・黄・緑のメダルが装着。
タカ・トラ・バッタの『仮面ライダーオーズ タトバコンボ』に変身した。
「な、なんなのさっきの音楽……」
「歌は気にするな」
[FORM RIDE OOO RATORATA]
更に全身が黄色く、姿も変化したライオン・トラ・チーターの『ラトラーターコンボ』に。
そのままジャガーロードにも負けない速さで走り、腕部のトラクローで切りつける。
「ギャアアア!!」
「まだまだぁ!!」
そのまま高速で動き、連続で動く暇も与えずにジャガーロードを切り裂いていく。
やがて、蓄積したダメージに耐えきれなくなったジャガーロードは頭上に光の輪が浮かび上がり、爆発して死んだ。
爆炎から出てきたDオーズはディケイドに姿を戻してファルコンロードに目をやる。
空中から迫ってくるファルコンロードに対して冷静にカードを装填。
[ATTACK RIDE BRASST]
ライドブッカーから放たれたマゼンダの光弾がファルコンロードに命中。
失速して落ちてくる所をソードモードで斬る。
「ギャアアッ!!」
地面に倒れたファルコンロードはすぐに立ち上がって飛び、逃げ出そうとする。
「あっ、待て!!」
再びディケイドが狙い撃とうと構える。
が、
「!? ガッ……」
突如矢のように飛来した影が逃げるファルコンロードに飛び蹴りを叩き込む。
それを食らったファルコンロードは爆死。
降りてきた襲撃者は濃緑で生々しい生物的な皮膚と鋭い角と凶悪な顔つき、二枚のマフラーを巻いていた。
「あ、アナザーアギト……?」
『仮面ライダーアナザーアギト』。
本来の『アギト』とは異なり、不完全、或いは歪んだアギトとされているライダーである。
「……………」
「……なあお前……」
アナザーアギトに声をかけるディケイド。
だが相手は答えずに跳躍してその場から姿を消した。
「な……!? …………なんだったんだ……」
変身を解除した来流はアナザーアギトの去っていった方角を見ていた。
ふと周囲を見渡すと箒達が警戒している。
「……来流。お前は何者なんだ……?」
「……俺はこの世界を救いに来た」
来流は真っ直ぐに箒を見て頼む。
「織斑一夏に会わせて欲しい。今すぐに」
IS学園の屋上から見下ろす影はそんな来流を嘲笑う。
「世界を救いに……笑わせてくれるじゃない。一度は破壊したというのに」