DECADE ~記憶を辿る旅~ 作:ソルラス
IS学園にアンノウンが襲撃しに来てから一時間後。
来流と大和は一夏の家に向かっていた。
「来流さん。いくら仕方ないといっても簡単に事情をバラすというのはどうなんでしょうか……」
「ディケイドは全ての世界においてイレギュラー。警戒したりするのも仕方ないし、だったらちゃんと話さないとだろ」
「まあ……そうですけど」
「それに今回は相手が相手だからな。こっちも隠していられないだろ」
「う、うーん……」
「まあまあ二人とも、落ち着いて」
そういって『シャルロット・デュノア』が二人に声をかける。
彼女は一夏と親しい友人(一夏側はあくまでそう思っているがシャルロットは彼に惚れている。)であり、今の一夏に会わせるなら彼女が一番だろうという判断で同行している。
「それより仮面ライダーにアンノウンかあ……そんなのがこの世界で生まれてるなんて」
「……悪かったな」
「君が謝ることじゃないよ。顔も知らない一夏の為にここまでしようとする人が悪いわけないし」
「……そうかな」
確かにこの世界を正常に戻す為というのもある。
しかし来流は個人的に一夏という存在を助けたいとも思っているのだ。
無論、会ったこともなければ話にしかことしか知らない。
それでも来流は………。
「ほら、着いたよ」
電車から降りた三人はシャルロットの案内で一夏の家に向かう。
念のために言うと千冬に許可は取ってある。
と、駅を出るところで来流が通行人とぶつかってしまい、相手のバックを落としてしまう。
派手に中身が散乱する。
「あ、すみま」
「ちょっとアンタ!! 何処を見て歩いてるのよ!! 拾いなさいよ!! ほら!!」
女性は書類やペンなどを足で蹴り飛ばしながら来流に命令する。
そんな彼女に大和は苦言を言おうとするが来流はそれを制して拾い始める。
「全く!! 男の癖にどんくさい奴ね!! 会社に遅刻したらアンタのせいよ!!」
そんな文句を聞き流しながら来流は考える。
「(この世界は元々歪んでるんだな……)」
ISは女性にしか扱えない。
この世界でそれが浸透している以上、女性が優位になるのは当然とも言える。
「……はいどうぞ」
「フン!!」
バックを受け取った女性はさっさと歩いて行ってしまった。
「………女尊主義者か、嫌なもんだな」
「……なんか、ごめんね」
「さっきのシャルロットじゃないがお前が謝ることじゃないだろ」
「まあそうだけど……なんか同じ女としてね」
女尊男卑が当然の世界。
力を手に入れた人間は傲り、他を見下す。
来流が最も気を付けていることだが普通の人間はそれができないのだろう。
「………まあいいさ。行こうぜ」
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数分後、シャルロットに連れられて到着したのは一軒の家だった。
「此処が一夏の家だよ」
「そうか……なんか普通の家だな」
そんな感想を聞きながらシャルロットはインターホンを鳴らす。
「一夏? 居る?」
『……シャルロットか……?』
その返事が聞こえた直後、扉が開き、青年が顔を出した。
やつれた顔のこの青年が『織斑一夏』である。
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あまり食事も取ってないという一夏の為に大和とシャルロットがキッチンを借りて昼食を作っている。
そんな中で来流は一夏と話をしている。
「………今世間で起きてる事件は知ってるよな」
「………ああ。怪人の事件だろ?」
「………知ってるならもう聞くけどな……お前、『アギト』に覚醒しているだろ?」
その言葉を聞いた一夏がビクッと大きく反応する。
そして頭を抑えて踞る。
「………俺は、戦いたくない……」
一ヶ月前の話である。
一夏の所有するIS、『雪羅』がアンノウンに狙われた。
無論一夏は雪羅を使って反撃をした。そしてその強力な攻撃力でアンノウンを倒すことは成功したが、敵の最後の一撃を食らい、雪羅が再起不能にされてしまう。
一夏にあまり怪我はなかったが、その後彼には大きな異変が起きる。
夜になると心身に異常が起き、体が変化していくのだという。
その"人間ではないもの"に変わっていくことが彼は恐ろしいのだという。
「…………それは、確かに怖いよな」
クウガの暦は元から吸血鬼の力を宿していたため、クウガという人外に慣れていたのだろう。
しかし一夏はいくら特別な男性操縦者とはいえ紛れもない人間なのだ。異形の自分に慣れろというのは酷だろう。
「………アギトの力はアンノウンと戦える力だ。お前なら皆を助けられるんだぞ?」
「………無理だ……ISだけでこんな世界になっているんだ……アギトの力は強大過ぎるから差別されるに決まっている……」
「………………」
来流もそれには否定できない。
既に差別が存在する世界では更なる差別が発生するのは非常に容易い。
「………まあそうだよな」
箒達から聞いた一夏の印象とは全く違う彼を見て精神的に相当疲弊しているのだろうと見た来流はそれ以上の追及はしなかった。
「一夏。来流さん。ご飯出来たよ」
「ああ。食べるよ。一夏もほら、ちゃんと食べないと体持たないぞ」
「………ああ」
そこに向かう途中で来流は思考を巡らせていた。
「(一夏がアナザーアギトかと思ったが違うみたいだな……となるとアレは……)」
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一夏の家から退出し、シャルロットとも解散した来流と大和は鎮守府に帰ってきていた。
「…………そうですか」
事情を聞いた大和は重々しく呟く。
彼女もまた、人のようで人ならざる艦娘。かつては世間から不信されて差別視された事がある。
「一人で生きていける人など何処にもいない。だからこそ彼はそれを恐れているのだろう」
「提督……」
「しかしな。だからこそ人は仲間を助けずにはいられない。一人にならないためにもな」
「…………私達も同じです。一人で戦える艦娘はいませんから」
「それはその『アギト』とやらも同じだろう。一夏とやらもいずれは立ち直れる」
「…………そうですかね」
「そうとも。…………ところで来流は何処へ行った?」
「えっと……会わなければならない人がいると……」
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「………何か用か? 来流」
来流が呼び出した女性は彼の元にやって来るなりそう訊ねた。
それに対して来流は真っ先に切り出す。
「………アナザーアギトの正体は貴方ですか? 織斑千冬」
小細工一切なしの質問。それを受けた千冬は微かに笑って、
「ああそうだ。よくわかったな」
「今日、一夏の様子を見て何となくそう思ったので。確証までは掴んでませんでしたよ」
「そうか。行動力はあるんだな。ならばそれに私も応えて全てを話そう」
千冬は夜空を見上げながら語り始めた。
「後から聞いた話だが一夏がアギトに覚醒したのとほぼ同時期に私も覚醒した。姉である私は一夏と同じようにアギトの力があったのだろうな」
「………まあ、ありますね。その力で日本に現れたアンノウンを倒していたと」
来流の言葉に頷く千冬。
「だが私が目覚めたアギトは不完全だったんだ。正直な話、私だからこそ戦えているだけで負担がかなり大きい。いずれは変身もできなくなるだろう」
「なら何故戦っているんですか?」
「一夏が立ち直るまでの時間稼ぎ……とでも言おうか。アギトの力は皆を守れる希望だが本人には恐怖や不安が大きい。まだまだ一夏は未熟だからな……それまでは私が守るさ」
「…………弟思いなんですね。でも………」
と、来流は別の方向を見る。
「………もう十分じゃないですかね。一夏が踏み出すために必要な最後の要素は貴方だと思いますよ」
「……………そうだろうか」
「肉親の言葉はよく響きますよ。それに一夏にとっても貴方は特別な存在ですから」
「……………そうかもな。一度彼奴に喝を入れ直してみるかな」
千冬がフッと笑い来流も微笑む。
直後、
ドゴォーーン!!
「!? アンノウンか!?」
「くっ………」
咄嗟に千冬が変身しようとするが来流がそれを制す。
「貴方は一夏の元へ」
「お前………」
「最後の時間稼ぎは、俺がしますよ」
「………すまない」
千冬がバイクに乗って走り去っていく。
一方の来流はIS学園の門前に辿り着いた。
「おっと、団体さんの見学はお断りしますよ」
「!! 何者だ!!」
大量のアントロードを引き連れたクワガタ怪人、スタッグロードは来流を見るなり怒鳴り付ける。
「ただの警備員だ……変身!!」
[KAMEN RIDE DECADE]
ディケイドに変身した来流。
そしてその後ろにISを纏った箒、セシリア、鈴、シャルロット、ラウラが滞空する。
「加勢するぞ。来流」
「一人でこの大群は流石に大変でしょ」
「敵のリーダーは任せましたわよ」
「……助かるぜ。よし、行くか!!」
[KAMEN RIDE FORZE]
全身から煙を噴出させ、白い宇宙服のような『仮面ライダーフォーゼ』に変身したディケイド。
[ATTACK RIDE UTYUU KITA]
「宇宙………キターーー!!」
「な、なにそれ?」
「お約束って奴だ。行くぞ!!」
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一夏の家に到着した千冬。
早速中に入ると一夏の部屋の扉を開く。
「!! ち、千冬姉……?」
「一夏。外に来い」
そういうと千冬は庭に出る。一夏も何の事だか分からずに付いていく。
「一夏………IS学園がアンノウンに襲撃された」
「……………」
「今は応戦しているが奴らを倒せるのはアギトである一夏、お前だけだ」
「………無理だ……俺には人間じゃなくなるなんて耐えられない……」
「……篠ノ之達が危険な目に逢っているんだぞ」
「………だとしても俺はそんなの………」
俯いて目を逸らす一夏。
そんな彼を千冬は………、
バギッ!!
「ぐっ!?」
容赦なく殴った。
「ち、千冬姉……!?」
「情けないぞ一夏!! 何時からお前はそんな情けない男になった!!」
そういうと千冬は両腕を腹の前で交差させ、仮面ライダーアナザーアギトに変身した。
「ち、千冬姉!? それは……!!」
「私とお前には同じ血が流れている。不完全な私ですら出来ることをお前ができないはずがない!!」
アナザーアギトは拳を握って構える。
「お前は常に真っ直ぐなところが良い所だった。だが今のお前はそれすら無くしている。来い一夏。此処でお前の目を覚まさせてやる」
「千冬姉……俺は……」
「安心しろ。お前がどうなろうと私が支えてやる」
千冬の真っ直ぐな顔を見て一夏は決意を固める。
そしてゆっくりと立ち上がると腰に『オルタリング』が現れる。
そして真っ直ぐに右手を伸ばし、
「………ありがとう。千冬姉………変身!!!」
そして、一夏の体は金色に包まれた―――――
仮面ライダーアギト→織斑一夏
仮面ライダーアナザーアギト→織斑千冬