蝉の声を聴きながら、汗だくで夜まで遊んだ……
そんな時期、みなさんにもありましたよね?
どことなく懐かしさを感じてくれたらうれしいです。
何となく書きたくなったので!やった!反省はない!
「さてと!行ってみるかな!」
一人の少年が虫取り網と虫かごを手に走り出す。
時刻は午前の4時46分、当然殆どの子供は寝ている時間だしかしこの少年。
米田 豊(こめだ ゆたか)には関係ない、豊は自分の近所の山にあるカブトムシを捕獲するため田舎道を自転車で走っている。
今日から夏休み!当然小学生の豊にも夏休みの宿題が有る、豊はカブトムシを研究することにしたのだ。
「さーて、カブトはいるかな?」
まだほんのり薄暗い山の中を虫取り網でかき分けながら奥に進む、気分はまさに探検家。
「ん?なんだこの匂い?」
カブトムシを探しながら山を探検中この山では嗅いだことのないにおいがした。
「なんか……焼けてる?」
山火事という単語が一瞬頭をよぎるが、豊に逃げるという選択肢は存在しなかった。
「火事か?火事か?」
自信の好奇心のままに無謀ともいえる行動に出る、何かが燃える匂いに自ら向かっていったのだ。
「あ!これは!」
薄暗い視覚が開けた場所に出る。
木がなぎ倒され、見た事もないような道具の破片が大量に散らばっている。
その中で微かに動く物が有った。
「生き……もの?」
豊がそれに近づく、それは全く見た事もない生物だった、1メートルに満たないような全長、茶色い体にドラム缶のような胴体そこから生える長細い2本の腕、指の数は4本で人間から小指がなくなったような手の形、胴体からは直接顔があり、二つの大きな黒い目と人間の様な口をしていた。
「おい、お前大丈夫か?」
豊はその生物に話しかける。
その生物は聞いたこともない音をだし、腕を動かした。
「ほら、家から持って来たヤツやるよ!飲め!」
自身の腰に下げていた水筒を謎の生き物に差し出し、キャップを開けあいた口にお茶を流し込んだ。
お茶が効いたのか、その生物はよろよろと立ち上がった。(足は無いので起き上がったの方が正確か)
「お前どこから来たんだ?家は何処だ?」
豊が生物に話しかける、やがて生物はゆっくりと空を指さした。
「へー、空に住んでんのか!あ!そうだ俺豊!お前名前は?」
豊が生物に話しかけるが、やはり生物は謎の音を出すばかりで豊には理解できる言葉が無かった。
「んー名前が無いんじゃ呼びにくいな……じゃ、今からカブ助!」
豊は生物に名前を付け持ち上げた。
「おまえ、軽いな……ダイエットのし過ぎだぞ?俺んち来いよ!一緒に朝飯食おうぜ?」
豊がカブ助を抱いたまま、自分がふもとに止めた自転車まで向かっていった。
「とーちゃーん!ただいま!」
豊が自分の家のドアを開ける、豊の家は高級寿司屋、父親は朝早くから今日の準備に取り掛かっている。
「おう!豊か!今日は良い魚が入った、後でシャケ焼いてよるからな?」
魚を吟味しながら話す。
「父ちゃん!見てこれ!カブ助ってんだ!」
抱きかかえていたカブ助を父に見せる。
「おおう!なんだこりゃ?宇宙人か!?」
父親が驚く。
「うちゅーじん?何それ?」
「コイツは地球の生物じゃねーな!」
父親がカブ助をためすすがめつ見る。
「ま、いいか。おい、一緒にめし食うか」
父親は茶碗に米を盛り始めた。
「いっただきまーす!」
豊が勢いよく米をかきこむ。
「おう、よく噛めよ?」
父親が注意するがまったく気にも留めない。
「ん?カブ助食わないのか?」
殆ど手を付けないカブ助に豊が気付く。
「どうやら、箸がダメみたいだな……ちょっと待ってろ」
暫くして父親が握り寿司を持って来た。
「本当は俺の晩酌のツマミだったんだがな」
これなら食えるだろうと差し出した。
おそるおそるマグロに手を付ける、口に居れた瞬間クワ助に大きな衝撃が走る。
「さび抜きにしたんだが……気に入ったみたいだな」
うれしそうに口角を上げる。
「久しぶりに誰かに寿司握った気がしたぜ」
「父ちゃん……」
豊が何とも言えないといった表情で父親を見る。
「さ!メシ食ったら宿題やれよ?」
「解った!ごちそうさん!」
豊は元気よく立ち上がるとクワ助を連れて自分の部屋に向かった。
「ふー、こんなもんか……」
豊が夏休みに友(友というより宿敵だが)を数ページ終わらせて休憩しようとした時下から声がした。
「帰ってくれ!」
父親の怒声だ。
「まーた来てるのか……」
「おやおや、ずいぶん閑古鳥が鳴いてますね?」
やせ形の眼鏡のかけた嫌味な男がわらいながら立っている。
「悪いが今日も、考えを変える気はねぇ!」
きっぱりと言い張る。
「そろそろ、意地を張らずにウチに来てくださいよ?待遇は良くしますよ?」
正直に言えはこれは企業からの引き抜きだ、嫌味な男は王手寿司チェーン天狗寿司の社長。
しかしその実態は企業の力を使い魚市場を独占し、個人経営の他の企業をつぶし自身の傘下にしてきた非常にグレーな企業である。
「ま!そんな事言っていられるのはこれを見るまでですよ」
男が一枚のチラシを取り出す。
「寿司屋の……イベント?」
「そうです、この辺の寿司屋を集めて食べ比べが行われるんですよ」
再びニヤリとする。
「俺がわざわざ出場するとでも?」
当たり前の判断である。
「おや?良いんですか?コレある意味チャンスじゃないですか?ウチに勝てるかもしれない最後のチャンスですよ?」
「う……」
「こんな大舞台で活躍したら、お客さん帰ってきてくれるかもしれないですよね?お父さんから継いだ店なんでしょ?さてと、一日考えてくださいね?」
男は懐から扇子を取り出し帰って行った。
「父ちゃん……今の」
豊が父親に話しかける。
「最後のチャンスか……やるしかねーよな」
自信の息子を見てついに覚悟を決める。
しかし
「うわぁ!」
「父ちゃん!」
父親は道端で足を滑らし腰を打ってしまった。
「この腰じゃもう無理だ……すまない」
自宅のベットで父親の涙を豊は初めて見た。
「おれ、おれがやるよ!」
豊が父親に自身決意を話す。
「出来る訳ねぇ!俺は10年以上かかってここまで来た!できるわけがないだろう!」
父親が怒鳴りつける。
一瞬豊が怯えるが……
「父ちゃん!俺生まれてからずっと父ちゃんの技見てんだよ!やって見せる!」
「勝手にしろ!」
怒鳴る声は恐ろしかったが、目には先ほどと違う涙が浮いていた。
「くそ!うまくいかない……」
豊が台所で苦戦していた、10年以上見ていたが思ったようにいかなかった。
「ん?カブ助か……悪いけどいま忙しいん……」
カブ助が豊の前に寿司を差し出した。
「え!?これ……うまい!いったいどうして!」
カブ助の差し出した寿司は間違いなく父と同じ味だった。
「たった1回食べただけなのに!?」
豊は驚きを隠せなかった。
「カブ助、もう一回やってくれ!」
寿司ネタを差し出すと細い腕と指で寿司を握りだした。
「完璧だ!クワ助!俺と一緒に参加してくれ!」
豊の瞳に希望が見え始めた。
遂に迎える寿司イベントの日!
「おや?今回は子供が参加ですか?」
天狗寿司の社長がわらいに来る。
「うるさい!絶対優勝してみせる!」
小学生とは思えない表情で豊が言う。
「ハイハイ、頑張ってください?せいぜいね?あははは!」
再び懐から扇子を取り出し帰って行った。
「さ!カブ助!仕込みからだ!」
豊が父のまねをして袖をめくる。
(勝てる訳ないのに……馬鹿だねー)
天狗寿司の社長が笑う、実はこのイベントの出場社は10社中9社つまり豊以外の会社が天狗寿司の傘下。
殆ど結果は決まっているのだ。
「いらっしゃい!いらっしゃい!」
豊が客を呼び込み、カブ助の握った寿司をふるまう。
順調だったが……
「ああ!す、寿司のネタが無い!」
そう天狗寿司はこの一帯のほぼすべての魚を牛耳っている、他の店に比べ寿司ネタがなくなるのは当然と言えた。
(どうする、かんがえろ!きっと何か……そうだ!)
過去の日常の出来事を振り返る。
「カブ助、お前はこのまま寿司のシャリだけを作ってくれるか?なるべく多くだ」
豊の言葉にうなずきカブ助はシャリだけを握る。
(頼む……うまくいってくれよ……)
豊が珍しく神に祈り、最後の食材の前に立つ。
「いやーそろそろあの店も終わりだな」
天狗寿司の社長が笑う、しかし……
「社長大変です!あの店が急にぶり返しました!」
部下が多急ぎで駆けつける。
「ナニ!までネタが有ったのか!?」
「はい!しかもすごい人気なんです!コレです!」
部下が一貫の寿司を差し出す。
「これは?鯛?」
白身が乗っており表面が軽くあぶられている。
「どれ……うまい!なんだコレは!?独特の触感に……爆発するような旨味があふれてくる!うえに乗っているのは岩塩か!?一旦薄味の実にまぶし身を絞めたのか!微かにレモンの香りも……」
社長自身すっかりその寿司の味に惚れてしまった。
そして結果イベントは豊たちの優勝で収まった。
「豊……良くやってくれた」
一言父親が豊に褒めてくれた、その一言は豊にとって何よりも欲しかった一言だった。
「豊……カブ助はどこだ?」
「父ちゃん……カブ助は……寿司になったよ」
豊がしみじみといった。
「そうか、庭に墓作ってやんねーとな」
後日庭に小さな塚が作られた
「寿司にその命をささげたカブ助、ここに眠る」
犠牲者はいつもそうだ、文句だけは美しいけど……
10年後豊のその後を知る者はいない。
この作品は友人に
「宇宙人が目の前に現れたらどうする?」
という質問をされたので。
「焼いて食う」
と答えたら馬鹿にされたのでついイラッとして書きました。
みんな食べないの!?
ツチノコとか、かば焼きにして食いたいなー。