UBW~倫敦魔術綺譚 (未改訂版)   作:冬霞@ハーメルン

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たいへんお待たせしましたが、番外話の後編を投稿します。
久々に執筆を楽しませていただきました。矛盾が山程あるんですけど、申し訳ない、見逃していただいて、お楽しみください。


番外話 『戯神殿の崩落』

side Gray

 

 

 

 エルメロイ教室の談話室、のような広間は喧噪に包まれていた。

 机の上はたくさんの紙が広げられ、たくさんの図形や文言が書き込まれている。それを次から次へと生産しては、適当に散らばせているから置き場所なんてなくなり、資料の本や羊皮紙は既に床の上で塔を形成していた。

 エルメロイ教室の若手魔術師達はその間をひっきりなしに往復し、盛んに議論しては、ある程度の意見がまとまったところで部屋の奥にいる捜査本部へと報告しに行く。そしてまた、頭を抱えて戻ってくるのだ。

 捜査本部に詰めているのは総勢4人。“獣性魔術”のスヴィン・グラシュエード、“エルメロイのお姫様”ライネス・エルメロイ・アーチゾルテ、“時計塔唯一の日本人”である蒼崎紫遙、そして“雑用係”の半端者(グレイ)

 教室の学生達は何人かでチームを組んで意見を戦わせ、十分に叩いて纏めた上で捜査本部へと集約する。それを主に蒼崎さんとライネスさんで揉んで、スヴィンさんが纏めていく。

 久しぶりに、エルメロイ教室が全体でまとまって、ある事件に取りかかっていた。師匠は、不在にしているけれど。

 

 

「‥‥ダメだな。まるで実体がつかめない。そもそも資料が少なすぎる」

 

「そう愚痴るなライネス嬢。ここまでくると資料がないのが資料とも言える」

 

「それは屁理屈だぞ兄弟子。被害者の一人ぐらいなら魔術関係者だったから魔力の痕跡があった、で済んだ話だが、全員から僅かなりとも

痕跡が見つかった段階で明らかに魔術師がらみの事件だ。となると何も糸口がないというのは不自然すぎるだろう」

 

 

 トリムマウが淹れた紅茶を一口啜り、ライネスさんが大きく伸びをした。もう丸一日、こうして作業しているのだから疲れもする。魔術師は肉体に魔力を流して強化することができるから肉体的疲労には強いけれど、精神的疲労はまた別と師匠が前に言っていた。

 既にスヴィンさんは若干船を漕ぎかけているし、蒼崎さんも既に3箱目の煙草をーー現代魔術科(ノーリッジ)はプライベート空間以外は基本的に喫煙可だったーー空にしようとしている。他の学生達も、やや疲れた様子であった。

 

 

「仕方がない。こういう時は一回話を整理しよう」

 

「整理、ですか?」

 

「その通り。どこかでボタンを掛け違えてる可能性もあるからね。一度最初から、前提条件を洗い直すんだ。研究とかでもよくやるやり方だよ」

 

 

 新しい紙を取り出し、最初からこの事件の前提を整理していく。

 ロンドンで起こった連続猟奇殺人事件。被害者の特徴に共通性はなく、特別誰かに深く恨まれていることもないし、死ぬことで特別誰かが得するということもない。死因は失血死で、一様に喉、顎の裏二カ所を深く刺されている。凶器は包丁やナイフ、ハサミなど、家にあった刃物で、犯人を示す証拠の類は一つもない。

 被害者は喉の他にも、眼球を抉られた上で再びはめ込まれ、部屋は血と海水を混ぜたものを床一面にまき散らされて血の池のようだった。しかしそれ以外には、何も情報がない。事件が起こった場所も、家具の配置も含めて魔法陣には該当せず、そもそも魔力の痕跡は被害者にしか残っていなかった。

 

 

「やはりキーポイントは殺され方と、血の混じった海水でしょうか」

 

「そういえば君は鼻が良すぎて現場を見に行けなかったね、スヴィン。海水そのものというよりは、血の海という光景の方が鍵だろう。とはいえ血の池地獄なんて日本の概念だし、ただ海を形象したいのであればただの海水で事足りるからな。グレイ、君はどう思う?」

 

「拙は魔術師ではないので‥‥。やはり目に関連する儀式、なのでしょうか?」

 

「いや、念のためイヴェット嬢にも見てもらったが、そういう感じの儀式とは思えない、とのことだった。魔眼の大家であるローマン家と俺の意見が一致した以上、おそらく其処は考えなくていい」

 

「魔眼以外にも目をモチーフにした魔術、視線を媒介にする魔術の可能性を考えてみましたが、そこを追求したチームも成果なし。‥‥なんだフラット、戻ったのか。随分早いな」

 

 

 エルメロイ教室の双璧のもう片方、“最古参”のフラット・エスカルドスがしきりに鼻をこすりながら現れた。彼は「やっぱり捜査の基本は足! 事件は会議室じゃない、現場で起こったんですよ!」と言って最初に飛び出していったのだ。多分、こういう調べ物が苦手だからなんだろうけれど。

 

 

「やぁやぁル・シアン君。うん、戻ったよ。今日ばっかりは君の気持ちがよ~く分かったね。俺でもあの血煙、きっつかったもん。鼻が曲がるかと思ったよ!」」

 

 

 ハンカチに香水を染み込ませて吸い込みながら、異端の天才は朗らかに笑う。殆どエルメロイ教室を卒業した状態の蒼崎さんと違い、まだエルメロイ教室で現役の彼はあらゆる騒動の中心にいる。

 今回はライネスさんが持ち込んだ事件だったから遅れたけれど、かなり熱心に資料を読みふけっていたーーすぐに飽きたがーーので捜査には前向きだった。

 

 

「ル・シアンと呼ぶな! そんなことより、どうだったんだ現場は?」

 

「いやぁ思ったより酷かったねぇ!」

 

「感想じゃなくてだな!」

 

「スヴィン、疲れてるんだからあまり吠えるな頭に響く。それで、フラット?」

 

「あ、うん。やっぱり直接的に魔術に関わる痕跡は見つからなかったよ蒼崎くん。一応ちゃんと全部の現場回ったから、よっぽどユニークなやり方じゃない限り殺しそのものが何かに関わってるってことはないと思う。あまりユニーク過ぎても、普通の魔術基盤の恩恵が受けられないしね! でも殺しのやり方は分かったよ!」

 

「なに? それは本当なのかフラット?」

 

「もちろんですよ姫さま、ばっちりです。ずばり、暗示による自殺ですねアレ」

 

 

 暗示。一瞬にして捜査本部に緊張が走る。

 別に奇天烈なやり口ではない、とスヴィンさんが呟いた。魔術師にどうやってやったか(How done it?)は意味がない、の典型的な例だとも。

 確かにその通りかもしれない。普通、犯人が被害者を操って自殺させる、なんて一般人ではできようがない。魔術師にしかできないことの極めて分かりやすい一つの例だ。例えば密室殺人にしても、被害者を操って内側から鍵をかけさせて、自分で喉を突かせれば他殺の証明なんて不可能なのだから。

 

 

「成る程ね。となると“自殺させることに意味があった”というわけだ」

 

「どういうことですか、蒼崎さん?」

 

「普通、魔術師が起こしたこの手の事件の場合は、証拠の隠滅とか捜査の攪乱とか、人間社会に対しての隠蔽行為ってのはあまり行われない場合が多い。一般人が相手なら普通に呪うだけでも殺しの手段は特定できないし、社会的な手が自分に及ぶことを魔術師は重視しないからだ」

 

「例えば私がある一般人に怨みを持っていて、殺したとする。どう考えてもそいつが死ぬことで私に益がある。しかし私が犯人だという証拠なんて出てきようがない。ましてや大概の魔術師ってのは資産家で血筋も確かだから、そもそも社会の捜査とかは及びづらいし、警察とか社会とか、とるにたらないものだと考えている魔術師ばかりだ」

 

「ライネス嬢の言うとおりだ。だからわざわざ暗示なんて使って自殺にみせかけるってのは、捜査の攪乱や証拠の隠蔽というよりは、そもそも自殺させることに意味があったと考える方が自然だ。魔術師の世界ならね」

 

 

 最後の一本を吸い終わり、蒼崎さんは眉間に皺を寄せて新しい箱を空けた。続けて吸うつもりらしい。

 ここにルヴィアさんがいたなら「ここを火力発電所にでもするつもりですの!」なんて怒って取り上げただろうけれど、生憎と本家に所用があってロンドンを離れている。流石に煙くて耐えられなくなったのか、学生の一人が風を操って換気を強くした。

 

 

「しかし自殺が意味ある儀式ってのも、妙な話ですね?」

 

「そこだよ、スヴィン。自殺ってのは基本的に術者自身、あるいは自殺者が属する何らかの組織や集団に益する儀式に関わるものが殆どだ。こうやって場所も時期もてんでばらばらに自殺させて、何の意味がある?」

 

「自傷を必要とする儀式も傷そのものよりは、血や肉体等を削り取って儀式の糧とする方が重要。前に義兄が何かの講義で言っていたらしいがね。となると‥‥」

 

「それが分かったところで大した参考にはならないわけだ。何か、キーワードがあるはずだ。このすべての要素に。こうなったら魔術師も一般人もあるか。皆、何か思いついたことを直感的でもいいから教えてくれ」

 

 

 蒼崎さんの声が大きく広間に響き、皆が手を止めて難しい顔で思案を巡らせる。

 飛び出た眼球、顎の裏の刺瘡、カエルかなにかのような死に姿、血の海、暗示による自殺。自分では何も分からない。ただただ悍ましい、冒涜的な殺し方というだけだ。

 

 

「あの、ちょっといいかな」

 

「君は、カウレス・フォルヴェッジだったかな」

 

「はい。魔術には全然関係ないんですけど、一つ思い当たるところがあって」

 

 

 眼鏡をかけた、線の細い若者が手を挙げた。カウレス・フォルヴェッジ。エルメロイ教室の新顔で、魔眼蒐集列車(レール・ツェッペリン)の騒動のときも自分と一緒に師匠についていった、新進気鋭の魔術師。

 ライネスさんに手招きされ、ものすごく自信なさげに近寄ってくる。周りの視線が痛そうだった。

 

 

「俗な話で悪いんですけど、俺ホラーとかSFとか、最近の娯楽ってのが結構好きで‥‥」

 

「ほう。だから義兄とも話が合うのか」

 

「まぁある程度は。それで、現場の様子とか死体の写真とか見て思ったんですけど、これってクトゥルフ神話っぽいイメージの事件だなって」

 

 

 まったく聞き覚えのない言葉が、彼の口から飛び出した。ほとんどの人は全く分からない、といった風に首をひねっている。ただ一人、フラットさんだけがその言葉に強く反応した。

 

 

「へぇ! へぇへぇへぇ! カウレス君ってばクトゥルー好きだったんだ! いやぁ俺もざっくりとしか知らないけど、不思議な浪漫があるよねアレ! 冒涜的快楽っていうか、不明的恐怖っていうか! あぁなるほど、そういうことだったのかぁ!」

 

「おいフラット、なんだその、くとぅるふ神話というのは? 寡聞にして私は聞いたことないぞ」

 

「姫さまはまぁ、知らなくて当然かもね! かつて旧世界を支配していた外宇宙からの侵略者である神々、眠りについていた冒涜的な使徒が蘇って根源的な恐怖を人々に与えるっていうーー」

 

「待て待て待て。なんだその、旧世界とか外宇宙とか? どこの神話だ? アフリカか? オセアニアか? 宇宙ということは、マヤか?」

 

 

 今まで見たことがないくらいの困惑顔のライネスさんが、鼻息熱く語り始めたフラットさんを遮って聞く。自分も、フラットさんが何を言っているのかさっぱり分からなかった。うんうん、と頷いているカウレスさん以外の学生達も、また同じ。

 しかし蒼崎さんには何か得るものがあったのだろう。ほぅ、と一言、呟いた。

 

 

「ライネス嬢は知らなくて当然だ。俺も詳しいことは知らないけれど、それ、作家の創作物だよ。ルイス・キャロルとか、J・K・トールキンとか‥‥まぁ一緒にすると双方のファンが激怒するかもだけど、とにかく只の創作、娯楽小説さ。元はね。でも悪くないぞ、フラット、カウレス。おもしろい仮説だ。というか、ちょっと閃いたぞ」

 

 

 地図を持ってきてくれ、と頼まれて、ロンドンの地図を机の上に広げる。世界地図も、特に地中海付近を、と言われ、それも持ってきた。

 

 

「カウレス、クトゥルフに登場するキャラクターで、モチーフになったものがはっきり分かるのはあるか?」

 

「あ、はい。有名どころだけでいいですか? 俺も言うほど詳しくないんですよ」

 

「もちろん。そこに書き出してくれ」

 

 

 持ち運びできるサイズの黒板に、カウレスさんが名前と概要を書き上げていく。新顔、とは言ったがエルメロイ教室の一員。師匠の講義と個人指導を受けた学生として知識は十分以上にある。

 アザトース=天使アザゼル、ノーデンス=ケルト神話の医神、ブバスティス=エジプト神話の猫頭の天空神、ハイドラ=(おそらく)ヒュドラ‥‥

 それだ、と指揮官が呟いた。書き出した異邦の神々の名前の一つにペンで印をつける。

 

「おい兄弟子、いったいどういうことなんだ? 大衆向けの娯楽小説なんか、魔術師の事件に何の関係がある?」

 

「さて、どうにでも関係のこじつけようはあるさ。妥当なところだと、目くらまし。例えば大衆の目を背けるとか、同業者の目を背けるとか。それだけなら神秘の隠匿に熱心な、疑い深い魔術師ってだけなんだけど‥‥‥」

 

 

 にやり、と蒼崎さんが笑った。

 見当がついたとでも言いたげな様子で、別な資料を熱心に捲っていく。犯人たる魔術師を探すために用意していたリストだ。やがてぴたりと一人の魔術師の名前を指さす。

 

 

「‥‥ほう、コイツがどうしたのかな我が兄弟子?」

 

「いやなに、やり口も、動機も、犯人も検討がついた。ならば攻め口を考えるのが次の仕事だ」

 

 

 よしきた、と何人かの威勢のいい声。腕自慢(アタッカー)達も支援者(サポーター)達も、速やかに自分の部屋へと走る。武器なり防具なり礼装なり、そして護符(タリズマン)なり薬草なりを取りに行ったのだ。

 一度動き始めたエルメロイ教室はまるで一つの生き物だ。他の学科の、他の教室と違う一体感がある。普通、同じ教室で学んでいようち魔術師は魔術師。根本的に協力という発想はない。しかしエルメロイ教室は普通の魔術師とスタンスが違う。

 残った人たちは再度、地図を眺めながらああでもないこうでもないと作戦会議。ライネスさんは優雅に紅茶を、しかし隠しきれない好奇心から身を乗り出していた。

 大人がいないうちの、子ども達の悪巧み。少し無謀かもしれないけれど、その実力で無理を無茶まで引きずりおろす。

 

 

「まぁ単純に攻めるだけならエルメロイ教室のメンツで十分過ぎる。執行者の部隊とか、クロンの大隊とか、少なくとも複数人の連携のとれた魔術師が相手じゃなきゃ大丈夫だろう。となると-ーー」

 

「政治の話、となるわけだ。成る程そこからは私向きの話だな。任せたまえよ」

 

 

 にやり、にやり、と性格の悪そうな笑顔が増えた。解決の糸口を感じて集まってきた学生たちもゲッと呻いて一歩退く。気にしていないのは権力闘争に慣れているのか、あるいは肝っ玉が違うのかフラットさんとスヴィンさんだけ。

 あぁ恐ろしい。師匠について、ある程度はソウイウ世界も見る機会が増えましたが‥‥。慣れないし、慣れたくありません。

 

 

 

 

 ◆

 

 

 

 

 

 

 じっとりとした空気が肺に重い。屋内のくせに、砂漠の荒野のような陽射しを感じる。同時に海辺の洞窟のような湿気も。

 司令塔である俺の近くにはフラットとライネス、そしてグレイ嬢。フラットには俺の指示に応じて場を動かす一手を打ってもらう。あと突然なにをやらかすか予想ができないので側から離せない。そしてエルメロイのお姫様は自信満々のくせに場慣れしていないからだ。

 とはいえ彼女に対しては安心してもらう、以上の理由はない。戦闘能力だけを語るのであれば自律型の魔術礼装であるトリムマウがいれば自衛には十分に過ぎる。となるとこの場で最も危なっかしいのは俺ということになるのか? まぁ最悪フラットをけしかければよかろう。

 ちなみにグレイはスヴィンと距離を離すため、というわけである。

 

 

「ねーねー蒼崎くん。みんな配置完了したみたいだけど、まだ動かないのかい?」

 

「あぁ。儀式に入ろうとした瞬間に仕掛ける。リソースの全てを儀式に注げばイレギュラーが発生したときの対処の余裕がなくなるからな。そこが狙いどころだ」

 

「最高のタイミングで横合いから思い切り殴りつけるというやつだな。実に私好みじゃないか」

 

 

 この加虐主義者(サディスト)め、と心の中で呟き、機を伺う。

 ロンドン市街地に程近いこの廃館の地下には、ちょっとした体育館ほどの空間がまるで神殿のように仕立てあげられていた。眼下に広がるのは砂が敷かれ、数本の白亜の柱の残骸が聳え立つ異国の風景だ。

 その中心に中東風の衣装の男が立ち、今まさにその魔術回路を最大限に励起させようとしているところであった。そんなに年嵩ではない。ロード・エルメロイ2世より少しばかり歳上ぐらいだろうが、鬼気迫る迫力が若々しさ荒々しさを感じさせる。

 

 

「おい兄弟子。監視のジャン・プリュベールから連絡だ。まもなく最後の生け贄が喉を裂くぞ」

 

「あの、大丈夫なのでしょうか? その、被害者の方は‥‥?」

 

「安心したまえよグレイ。今の状況を聞いて確信した。奴は現場をリアルタイムで把握しているわけじゃあない。まぁ当然だな、結果など新聞を見ればすぐにわかる。わざわざ変な一手間を加えて追われるような下手を打つはずもないだろう?」

 

「ならば定刻に始めるということか。見てみろ奴の様子を。まさに待ちきれないといった感じだ」

 

「ふうむ、生憎と念願叶うことなく我々エルメロイ教室の手柄となるのだがな。実に滑稽な余興だぞコレは」

 

「‥‥君、さらに性格悪くなってないか? いや別にいいんだけどさ」

 

 

 各部への細工は流流抜群。御覧じる仕上げは今まさに目の前に。

 儀式の最後の現場にはジャン・プリュベールとモンパルナスのおフランスコンビが待機。生贄が喉を裂く寸前に割り込んで惨事を止める。外の見張りはグランテールが。情報工作の準備も万端、抜かりなし。

 ライネス嬢の解説通り、そもそも暗示とは傀儡と異なる。操作し続けるのではなく、事前に結果を叩き込むものだ。途中で暗示が解かれ、望む結果が得られなかったとしても、リモートしているわけではないから術者がそれを知る由もなかろう。

 

 

「間も無く時間だ、みんな。よく術者を見張れ」

 

「ル・シアン組から連絡! 匂いが濃くなった! 僕的にも、そろそろ!」

 

 

 現場組が動いた。生贄の昏倒に成功。

 各地に散らばったエルメロイ教室の生徒達からも次々とメールで符牒の連絡が届く。霊気の乱れの周期が合い始め、やがて整う。

 土地の霊気が騒めき始めた。生まれた砂紋は無秩序に、そして美しく絵を描く。

 教え込まれているのだ、自らに起こっていることを。此処は倫敦にして倫敦にあらず。赤き龍が守護する土地にして、さにあらず。救い主の死した後にして、遥か昔。其はブリテン人か、ローマ人か、ケルト人か、果たして。

 

 

「トリムマウの水銀盆、砂紋と一致。最後の生贄は不発だったから多少崩れてるな。奴も気がついているのかもしれんが、まぁ生贄はあくまで呼び水。儀式は止められまい。しかし強くなってきたぞ。―――よし、今だ」

 

楽しませてやれ(Make His Day)! グレイ!」

 

「アッド!」

 

『ヒヒっ、やぁってやるぜぇ!』

 

 

 カァン、と清涼な音が響いた。

 意思持つ魔術礼装、アッドが、死神の鎌(グリムリーパー)が、その石突を柱に突き立て、理を示した。

 いかに熟練の魔術師が、その手練れ手管を駆使して土地を調教しようとも、同じく周到に用意された濃密な神秘の前には乱れを生じる。詳しくは知らないけれども、少なくともアッドの持つ神秘は彼の魔術師の整えた場にあって完全に異質なのだから。

 

 

「な、なんだ?! 一体なにが起こった」

 

「―――台無し、ってことだよ。残念だったね、魔術師カドモン・ガレル。いや、大量殺人犯」

 

 

 隠蔽の魔術を解き、砂陣の端へと姿を現した俺たちを驚愕の表情で睨みつけた彼は、未だに状況を理解していない様子だった。

 近くで見れば大して特徴のない男だった。中東風だと思っていた浅黒い肌は、おそらく呪術的な意味を持つ塗料。どちらかといえば顔だちは西洋風で、刈り上げた黒髪の一房を伸ばし、編み上げた呪術的かつ精悍な印象を、落ち窪んだ眼窩と貪欲な瞳が台無しにしている。

 

 

「‥‥何者だ、貴様らは。私の神殿に立ち入って、いったい何のつもりだ」

 

「神殿,とはたいそうな言い方だな、Mr.ガレル。お初にお目にかかる。私はライネス ・エルメロイ ・アーチゾルテ。そう言えば、我々の正体も察しがつくというものだろう?」

 

「エルメロイ、まさか、エルメロイ教室か? 時計塔の爪弾きモノ、弱輩の魔術師崩れ共が何かの用だ」

 

「おやおや魔術師崩れ、ときた。そういうお前は神官気取り、か? この程度の工房を指さして神殿とは。いやいや爪弾きモノなんて控えめな言い方はよしてくれ。そのセンスでもっと、こう、気品ある喩えで呼んでくれたまえよ遠慮せず」

 

 

 おー、煽る煽る。

 水銀盆を出したままのトリムマウを従え、ライネス嬢の舌はノリにノリまくっていた。油断なく(アッド)を構えたままのグレイ嬢をどうぞ見習ってください。

 

 

「ライネスさん、止めた方がいいのではないかと、拙は、拙は」

 

「お楽しみを邪魔すると後が怖いんだよ彼女。とはいえまぁ、時間をかけても良いことはないしなぁ」

 

 

 手筈通り、スヴィンとエヴァン・シュヴァンクマイエルの荒事コンビがカドモン・ガレルを挟んで反対側に布陣。更に全体を見渡せるぐらいに程よく距離をとり、フラットが。

 エルメロイ教室で荒事に長けているのはルヴィアを除けばこのぐらいだ。もちろん彼女を含め、実戦経験は少ない。戦闘は魔術師の嗜みとはいえ本質ではなく、何より俺達はまだ学生だった。

 ちなみにイヴェット嬢にも来てもらおうかと思ったんだけど、彼女どうにも俺を避けてる。まぁ俺も彼女に魔眼は見せたくないし、仕方がない。戦力は十分すぎるほど揃っている。

 

 

「悠長に学業に励んでいればいい、神秘の継承の価値も解さぬ学生風情が。まさか私の儀式の邪魔をしにきたと? 何故だ?」

 

Why Done It(どうして)? それともHow Done It(どうやって)? どちらにしても,先ずはどうやって此処と、今迄を突き止めたかを解説しようか。教授(プロフェッサー)に倣って貴方の魔術を解体するのも、教室を率いる先輩としての務めだからね」

 

 

 トリムマウが水銀盆を差し出す。

 それはライネス嬢の意思に従い、薄く網のように広がって倫敦の街を模す。

 

 

「先ず一番難しかったのは場所だ。儀式魔術を離れた場所で複数回。礼うならば地理的な関係の考察は欠かせない。しかし貴方の儀式はポピュラーな魔方陣とは合致しなかった」

 

 

 月の巡り、星の運行、天体に関する普遍的な要素に由来するものであれば直ぐに分かる。もちろん現代の魔術師が、何の捻りもなくポピュラーなモチーフを使うことはありえない。しかし死をキーワードに逆さまにしても、人体に映し出して再度地理関係を確かめても一致しなかった。四大元素の方位ともバラバラ、おなじく人体に映し出しても変わらず。

 生命の樹(セフィロト)にも見出せなかった。天使に由来するならば犯行は4回で終わる。どうもカバラが由来の魔術ではない。ルリア神学も紐解いてみたが、ゾハルの概念とは図を描くモノではなく内的要因に因るところが大きい。星幽界(アストラル)神殿の形もしていないときた。

 

 

「というか、そもそも方位だけをエッセンスにするなら中心点をどこに想定しても距離がバラバラなのが理解できない。距離比を計算して方位をズラしても分からない。となると論理で解せる現代魔術に由来するとは考え難い」

 

「まぁその辺りは義兄上の得意分野だから、我々がみっちり勉強しているところだしな。誰か気づくよ」

 

「あぁ。だから場所だけをいくら考えても儀式の正体が掴めなかった。そこで―――」

 

「カウレス君の天才的な閃きがあったわけだ!」

 

「フラットの言う通り。何ら神秘を有さぬ現代の娯楽が、儀式の場所に、生贄の正体に繋がったわけだ」

 

 

 場所はヒントとしてあまりにも魅力的すぎて、誰もがそれを手掛かりに儀式の正体を探ろうとした。俺たちこそHow Done It(どうやって)に惑わされてWhy Done It(どうして)を見誤っていたわけだ。

 『どうしてその場所で』を気にするならば、同じくらい『どうしてそんな現場を作ったか』を気にする必要があった。

 

 

「―――クトゥルフ神話。完全に盲点だったよ。俺も俗世の娯楽には通じてる方じゃない。でもシェイクスピアやハンス・クリスチャン・アンデルセンを由来にする魔術もあるぐらいだ。大衆娯楽も魔術の考察の一助としては捨てたもんじゃあない」

 

 

 もっとも、魔術基盤そのものには成り得まいが、と俺は心の中で付け足した。そもそも俺の詠唱もオペラから取ってるしな。

 

 

「飛び出た眼球。蛙か何か、つまり両生類や魚類のような有様。更にはご丁寧に喉元の裂傷、つまり鰓のイメージ。あまりにも凌辱的、冒涜的な生贄の様子はイメージにピタリと一致したよ」

 

「血を混ぜた理由はよくわからないけど、海水ってのもポイントだったよね! 無惨に殺すんだったら生贄を苦しませる必要がある儀式かって思ったんだけど、暗示による自殺なら主体的な苦しみが得られないから、やっぱり結果だけが欲しかったのかな! でも絵面はちょっと娯楽としてはチープかな!」

 

「煽るなフラット。しかしその通りだ。生贄は祭壇に捧げるもの、ということを考えるとその場所を祭壇にしたかったわけだ。となると何がしか神話というキーワードが出てくるのは自然だった」

 

 

 とはいえ祭壇に何かを捧げるならば、捧げる神官や巫女がその場にいる必要がある。生贄を捧げられた神は直ぐに結果を出す必要があるのは、古今東西のあらゆる神話に共通のメッセージだ。

 ならば犯行は続く。四回の過去の犯行に加え、五回目。それを割り出すためには最後のWhy Done It(どうして)を紐解く必要があった。

 

 

「貴方はパレスチナの出身だ、そうだろう?」

 

「―――ッ?!」

 

「クトゥルフ神話はオリジナルな部分が多いけど、一部にモチーフを見出すことができる。カウレスがそれを覚えていて助かったよ」

 

 

 煙草の火が指し示す御名は、ヘブライ語で『Dagon』。

 古くは紀元前2000年以上前の、それこそイリアスで語られる時代にメソポタミアなどで信仰されていた農耕の神。世間一般では名前が殆ど浸透していないけれど、ペリシテ人の神といえば聖書に通じた人間ならばピンと来るかもしれない。

 旧約聖書において、その主人公はユダヤ人達だ。エジプトで迫害されていたユダヤ人達は、モーセに導かれて彼らの繁栄と安寧の約束の地、カナンへと向かう。そしてそのカナン地方に元々いた民族、部族というのがペリシテ人だった。

 最も有名なペリシテ人というのは巨人ゴリアテだろう。イスラエルの羊飼いであったダビデが投石で打ち倒したペリシテの兵士。その逸話に代表されるように、聖書の中でペリシテ人は常に悪役として描かれている。

 

 

「もちろん神々をモチーフにしたクトゥルフの化け物は他にもいる。けれど一番の大物がダゴンだった。まぁ勘だったから順番に他も調べるつもりだったけど、結果的には最速で当たりがつけられて良かったよ」

 

 

 トリムマウの水銀盆が輪郭を変える。模していた倫敦の街は地中海の東岸一帯へ。

 倫敦の街の、犯行現場の位置関係。それを縮尺をアレコレして当て嵌めれば、地中海東岸、即ち嘗てカナンと呼ばれていたペリシテ人の土地の街の位置関係と合致する。

 アシュドド、アシュケロン、ガト、エクロン。敬虔な信徒ならば一度聞いたことがあるかないか。多少の誤差はあろうが、時計塔の歴史の地図があればこそ、忽ちその真実が明らかとなる。

 

 

「だから最後の犯行現場は此処だったんだな。ペリシテ人達の土地の最後の一つは、ガザ。聖書でも最も有名な土地だ。なにせ、怪力サムソンの死に場所だからね」

 

 

 旧約聖書においてサムソンという敬虔な若者は、神の加護を怪力という形でその長髪に宿してペリシテ人の強敵であり続けた。しかし奸計により髪を切られて神力を失い、それでも最後は囚われていた神殿ごとペリシテ人達と心中するに至る。

 儀式において一番重要な場所は、一番強いモチーフを使うに限る。他の四つの土地に比べて、ガザの知名度は群を抜いていたから。

 

 

「しかし兄弟子よ。場所がわかったから速やかに手配して此処まで来たわけだが、私はまだ納得しきれていないんだよ。ダゴン自体は確かにメソポタミアの神の一柱ではあるが、その力を得るための儀式に何故、大衆娯楽を取り入れた? 儀式の隠蔽にしては陳腐すぎる。むしろ神秘の純度が下がるというものだろう?」

 

「それが最後の肝だった。神秘は悪戯に玩具にしても良いことはない。何度も繰り返し、読みこんだビデオテープが擦り切れたり伸びたりしてしまうように、本質から遠ざかってしまうから」

 

「びでおてーぷ?」

 

「それはいいから」

 

 

 そもそもメソポタミアの神話は、かなりマイナーな部類だ。

 神秘は古ければ古いほど濃い。それは、現に神秘そのものが継続していれば、だ。古い神殿の柱、長く祀られた御神体ならばそういうこともある。あるいは一時的にせよ英霊の座から英霊本体の影法師(ゴーストライナー)を呼び出すならば。

 現代において、魔術基盤とは往々にして理論だ。メジャーであることを強く求められる。理論は翻っていえば信仰で、特に自己に、あるいは他者に働きかける現代魔術においてはメジャーな信仰基盤がなければ効果は薄まる。人と喋ろうとするならマイナーな言語よりもメジャーな言語の方が良いに決まっている。

 あぁ確かに、彼は自称するように神官をモチーフにして、そして儀式は神殿をモチーフにして礼ったのだろう。でも先述の通り、遥か昔の存在すら朧げになってしまった失われた神秘を頼りにするなら、せめて何らかの霊媒を用意するべきで。

 

 

「そもそも彼、パレスチナ人だけど、ペリシテ人じゃないしな。ペリシテ人って概念、血筋的にはもう残ってないだろ流石に。まさか直系の神官の家系とかならともかく」

 

「紀元前の神代から続く神官の家系なんて、とうに伝承保菌者(ゴッズホルダー)扱いだ。有名すぎる。私が知らないなんてことはないだろう?」

 

「そう。だというのに敢えて古代の神秘をモチーフにするならば、どんでん返しが必要になる」

 

 

 アプローチの方法が違う。

 古いものを媒介にして、古いものを呼び出すなんてのは現代魔術では最高級の贅沢。そんなことができるならば、こんな胡乱なやり方は必要ない。

 新しいものを媒介にして、古いものを呼び出す必要がある。それも真っ当な手段ではなく、とびきりリスキーで、誰もやらないようなやり方で。

 俺は急に顔色を悪くしたフラットを指さして言った。もう一度、キーワードを寄越せと。

 

 

「冒涜」

 

 

 聴き慣れた声がした。一箱いくらの、俺のシガレットのそれではない、葉巻の香りも。

 

 

教授(プロフェッサ)?!」

 

「まったく、私のいない時に火遊びをしてくれる。ライネス、お前のことだぞ。シヨウ・アオザキもだ。どうしてこうなったのかは、イヴェットから粗方聴き尽くした。主犯共はたっぷり絞ってやるからな覚悟しろ」

 

 

 黄昏のように燃える深紅のコートに、朝日のように輝く黄色のストール。あらゆる苦悩を刻み込んだような厳つい眉間に、他人を拒絶するように角ばった手足。

 ロード・エルメロイⅡ世がそこにいた。やや汗ばんだ様で、そしてバツの悪そうに笑うイヴェット・レーマンを従えて。あの女、居留守を命じたのに簡単にゲロったな。

 

 

「道すがらウチの愚義妹が集めた資料は簡単に目を通した。Mr.カドモン・ガレル。考古学(アステア)の魔術師だったな。確かに貴方自身はパレスチナの出身である他、ペリシテ人の祭儀とは縁もゆかりもない。いくつか論文を出していることまでは確認できたが、な」

 

 

 ゆっくりと歩みを進め、俺の隣へ。そして一歩、前へ。

 この人はいつもそうだった。弱音も吐くし、文句も言うし、その実力は―――特に戦闘についいては―――俺よりも劣る部分すら多い。

 それでもこの人は、常に先頭へ、いや先陣へ立つのだ。今はいない誰かの隣に立つようにして。

 

 

「貴方自身がペリシテ人に縁ある者で、祭司の継承を狙うならば、正攻法が最も簡単だった。魔術基盤を殆ど独り占めできる。わざわざホラー映画みたいな小細工を弄する以上は、むしろ貴方は継承者ではなく簒奪者。儀式を陳腐化する、その本質は何か」

 

 

 今回は百点満点の推理だな。後始末を考えると頭が痛くなるが。そう睨みつけられても、もう肩をすくめてみせるぐらいしかできない。

 葉巻の先が俺を指す。その言葉の続き、佳境は譲ると。

 

 

「涜神」

 

 

 遂にカドモン・ガレルの顔面は蒼白を通り越して真っ赤となった。

 これが、これが教授(プロフェッサ)の見ている景色か。魔術を解体し、神秘を辱めない。まさにこの事件、本来ならば真に彼向きの事件だったのだろうに。

 

 

「いかに魔術基盤としてマイナーであっても、メソポタミア由来の魔術は数えきれない。直接ダゴン神に由来するものでなくてもね。ならばその繋がりを断つ。神秘を徹底的に冒涜し、凌辱し、手の届かぬ神体を"手の届く位階まで引きずり堕ろし、反転させる"」

 

Exactly(その通り)。こうして見渡せば、貴方の言う"神殿"はそのために、至極真っ当に、丁寧に作られている。この儀式場自体は素直なものだ。祭壇には仔羊の生贄まである。ちょっとイスラエルに寄りすぎてる気配はあるが、まぁ資料も少ないからな、仕方あるまい」

 

 

 多少、強い神秘を得る程度の儀式にしてはリスクが大きすぎる。それは俺も、エルメロイ教室の皆も理解していたことだった。

 魔術師というのは徹底的に利己主義な生き物だ。叶うならば、全てを自分一人で得たい。誰かと分け合うことなどしたくない。だから堕とした。他の誰も手が出せないように、手を出したくないように凌辱した。

 真っ当に儀式をしても得られるのは神威の一旦だけ。あるかないかも分からなくなってしまった古代の神々が相手ならば、もはや其れも怪しい。ならば自分一人だけの神にする。そのためにはゼロか、あるいはマイナスの成果すら予想できるリスキーな賭けをして、勝負(コール)までは漕ぎ着けた。

 

 

「ほう、ほうほうほう。それはそれは、ちょっと想像するには私はお育ちが良すぎたかな?」

 

「性格は向いてると思うよ。生き方はさておき」

 

 

 さて、と大量殺人犯に向き直る。

 哀れな魔術師だ。本来なんら、咎められるべきではないことだったはずなのに。たかだか一般人を四人ほど血祭りにしただけ。いや、プロフェッサは許さないか。彼は魔術を解体しても、神秘を貶めることは許さないだろう。それは彼の、いや、現代魔術師の矜持に反する。なにより濃密な神秘を見つめてきた、ロード・エルメロイ Ⅱ世ならば特に。

 

 

「さて、どう落とし前をつけるアオザキ?」

 

「ライネス嬢が既に手を回してくれています。依頼の形をとって、法制科未満の時計塔の窓口へ。まさか魔術師を警察組織(スコットランド・ヤード)に引き渡すことはできませんけど、何某かの処分をした旨を―――」

 

「違う。今この"神殿"をどうするのかと聞いているんだ.よく視ろ」

 

 

 はて。その言葉にぐるりと周りを"観る"。

 真っ当な儀式の結果、高められた神威。一握りとはいえ儀式魔術の結果、それなり以上に濃厚な神秘はいつの間に煮え立つ大釜の湯のように魔力の渦を生み出し始めていた。

 トリムマウの水銀盆は、ああ、グツグツ揺らめいている。これは。

 

 

「あー、これはマズイよ蒼崎君! 由来と意図はさておいて、始めてしまった儀式の出口がないと、これはどうなっちゃうか分かんないぞ!」

 

「慌てている場合かフラット! これは、術者本人に"天罰"を落とすぐらいじゃ済まないかもしれませんよ! 少なくとも俺達はどうにかなってしまうかも!」

 

 

 フラットに続き、スヴィンも焦る。そうだ、儀式とは始まりと終わりがあるもの。一度スタートしてしまった儀式は、途中で中断することはできない。術者へのフィードバックで済めば御の字、しかし今,周到に高められた神威には術者以上の矛先が必要だ。

 

 

「‥‥まぁ自明の理だな。涜神自体はありふれた概念だ。最大の魔術基盤たる聖書が良い例だが、あれは長い歴史の中に涜神を薄めている。また涜神の対象の信仰基盤もまた,聖書の信仰基盤で覆い隠した。このように乱暴なやり方では意図しない結果以外の出力は制御できん」

 

「プロフェッサ、これでは」

 

「いやお前、そもそも最初はどうするつもりだったんだ。百点満点は撤回かつ補習といったところだな」

 

「いつもグレイ任せにしている義兄上のセリフでもないと思うのだが?」

 

「それはいつも悪いと思っているが」

 

「いえ拙は別に」

 

「悠長にしている場合ですか。ああもう、術者も放心状態で,念入りに解体しすぎですよプロフェッサ!」

 

 

 最初はどうするつもりだったかって、そりゃ激昂して術者が真っ当な神威の振るい手になる予定だったのだ。そうすればブッ飛ばすだけで十分なのだから。いくら神威の一欠片を振るおうとしたって、今此処にいる戦力ならば十分に対処できるつもりだったのだ。

 カドモン・ガレルに最早そんな気概は残ってない。さもありなん、学生風情ならともかく時計塔の君主(ロード)が出張ってきたのだから,政治的にもどうしようもない"詰み"であることを理解してしまったのだ。プロフェッサはこともなげに振る舞うけど、普通の魔術師にとって本来君主(ロード)というのはそういう、雲の上の存在。もう何もする気が起きなくたって不思議ではない。いやもっと頑張れよ此処までやって来たんだから。

 放心状態の術者は、神降ろしの状態に似ている。自らを空骸と化して神で満たす。神に委ねる。薄れた神秘の中でのそれは『神のようなナニカ』という漠然としたものが相手になるけれど、しかし彼の意図が、涜神の目論見が、そのナニカに知れる。

 自然こうして神威が荒れ狂うのは、プロフェッサの言う通り、当然のこと。そして神威を支配するのではなく、空骸として委ねてしまった術者に個はなく、他の矛先が必要になることもまた。

 

 

「グレイ、どうだ」

 

「アッド」

 

『ヒヒっ、ちょっと無理。せめて形骸があればなぁ』

 

「そんな」

 

「ツケが回ってきたか義兄上」

 

「‥‥まったく、物事は二手先三手先を読んでおくものだ。そしてそれはレディ、君の得意分野のはずなのだがな」

 

 

 しかし荒れ狂う神威の嵐の中で、それでもプロフェッサは余裕をもって佇んでいた。

 呆れたように新たな葉巻に火をつけ、紫煙を喫む。いつもの課外授業のように、生徒達(オレタチ)に教鞭を振るう。

 

 

「実際、そんなに難しい話じゃない。涜神とは本来意図しない結末であるべきで、そうなると、この儀式場の本質は神話の再現だ。ここがガザに擬えてあって、神殿であり、相手がペリシテ人の神であるならば、最大の魔術基盤の加護を以って"既に周知の結果を導けばいい"。あとはどうだ、分かるかアオザキ?」

 

 

 その長い黒髪の一房を手に取り、ロード・エルメロイⅡ世は言った。

 魔術の本質は再現だ。俺たち魔術師は過去に向かって疾走するが故に、新たな理を追い求めながら失われた遺物の再現という矛盾を求める。故に過去の再現というのは、最も慣れ親しんだ概念で、それは時に容易に導かれる答えだった。

 ならば、ここに神話を問う。

 こうなったら、こうなる。そうなるべきだという信仰を以って未来を過去に変え、因果により確定させる。

 

 

「シュヴァンクマイエル!ライネス! 逃げる準備だ! 全員抱えられるか?!」

 

「補助が欲しい! 推進力と籠をくれ!」

 

「ライネス!」

 

「あまり見せたくはなかったが、仕方ない。トリムマウの一張羅(ドレス)でフォローしよう」

 

 

 チェコの動く石像(ゴーレム)使いの名家、シュヴァンクマイエル家の次期当主が彼の動く石像(スーパーロボ)を構築する。トリムマウが不定形の水銀へと姿を変え、ゴーレムの周りに触手のように広がった。

 俺の意図を読み取ったフラットとプロフェッサがゴーレムの近くへ。グレイとスヴィンは、よろしい、自分達で行けるな。

 

 

「スヴィン! やれ! "髪"だ! ―――Drahen(ムーヴ)

 

 

 ルーン石に祈りを刻む。ラテン語の頭文字をルーンに置き換え、数文字。変則的な数秘紋(ノタリコン)は青子姉譲り。普段は使わないけど、力ある言葉の置き換えは今まさに恩恵に預かる魔術基盤とも相性がいい。

 投げ渡された数個の小石を掴み、スヴィン・グラシュエートは疾駆する。

 

 

Pallida Mors(青ざめた死よ)

 

 

 一歩目で変質、二歩目で完成、三歩目は空を裂くように。

 誰もが内に秘めるとされる獣性。特にソレに着目し、延々と代を重ねて血と獣性を濃く煮詰めたグラシュエート家の最高傑作が吠えた。

 

 

Aequo pulsat pede(全て等しく訪ね往け)

 

 

 その魔術回路から、というよりは、全身の細胞一つ一つから小源(オド)を吹き出し、やがてその魔力の霧は獣臭を纏い、吐息を漏らし、爪牙を閃かせた。

 獣を模す。誰もが知る基本的な魔術の一つだ。

 猫の敏捷性を。犬の嗅覚を。鷲の如き視力を。だけど、普通ソレらは限定的で、しかし此の不世出の器たるスヴィン・グラシュエートは獣になりきり、獣を超える。

 

 

Pauperum tabernas regumque turris(盛貧栄衰の区別なく)!!」

 

 

 鋭く閃いた爪が、過たずカドモン・ガレルの一房編み上げられた黒髪を斬り落とした。ついでとばかり、その両眼と共に。

 絶え間なく地を揺らしていた神威の鼓動が一瞬、止まる。

 

 

「さて、Samiel、ここはラテン語で締めるとしよう。―――Placere mori cum Picitibus(彼よ、ペリシテ人と共に死に給へ)

 

 

 生贄を捧げた祭壇の端、たいした神秘も宿さぬだろう両柱を魔弾の射手(デア・フライシュツ)で叩き折る。

 今まさに無秩序に溢れ出ようとしていた神威の器に穴を空ける。“どうなるか分からなかった"未来を"こうなるものだったのだ"という過去へ書き換える。

 旧約聖書の士師記に曰く、髪を切られ神力を失った勇者サムソンは、ガザにあったペリシテ人たちの神殿へと連れ去られた。そして両眼を抉られ、鎖で戒められ、辱められた。しかしまさに彼らの神、ダゴンを崇める祭典の中。神へ祈り、再び神力を取り戻し、その最期は神殿の柱をへし追ってペリシテ人達と共に果てた。彼が今まで殺したであろうペリシテ人達よりも多くの数と共に。

 いかにメソポタミアの旧神の神威が高まろうと、世界最大の魔術基盤の論理を以て、強引に結末を押し付ける。乃ち之もまた涜神。カドモン・ガレルを生贄にして台無しにするというのは、なんて喜劇だろうか。

 

 

「いかん崩れるぞ、人間やめた奴(パワータイプ)以外は全員掴まれ! Go! シュヴァンクマイエルロボ!!」

 

 

 一張羅(トリムマウ)がフォローしつつ、本人自身の方が速いスヴィン以外をシュヴァンクマイエルのロボが掴み、出口へと突進する。

 もはやカドモン・ガレルは助からない。生贄にしてしまったから、もしかしたら最後まで野望を果たした夢を見ているのだろうか。ぴくりとも動かず膝をついた彼は、まるで祈りを捧げているかのようだった。

 

 

「やれやれ、みんな無事だな?」

 

「おれいまさいこうにテンションしてるぜ」

 

「瞬間的に魔力を使いすぎたシュヴァンクマイエル君が馬鹿になりかかってる他は大丈夫そうだよ!」

 

「‥‥カドモン・ガレルはダメだったか。本当は奴の身柄も確保しておきたかったが、まぁ、仕方あるまい。この事実だけでもエルメロイとして宣言すれば政治的な手札としては十分だ」

 

「おいライネス。まさかその役目を私に振るつもりではないだろうな?」

 

「いやぁ優しい義兄上を持って私は本当に幸せだとも。本当はちゃんと自分で始末をつけるつもりだったが、せっかく義兄上が言い出してくれたのだ、目上の者に華を持たせるのも義妹の勤めというものだろう?」

 

「―――ファック、覚えていろよ貴様。次の宿題は倍の量を用意してやる」

 

 

 フラットが器用に神威の余波を逸らしつつ、ようやくエルメロイ教室は安全な場所まで戻り、一息ついた。

 義兄妹がギャーギャー仲良く喚いている。ライネス嬢の言う通り、本来ならば全員でカドモン・ガレルを袋叩きにしたあとは簀巻きにしてお持ち帰りする予定だった。しかしまぁ、彼一人がいなくなったところで、時計塔の大勢には影響ない。考古学科(アステア)とはちょっと政治的なやりとりが必要だろうけど、それは貴族(ロード)にお任せだ。

 

 

「大丈夫か、スヴィン。助かったよ。あの一言でよく俺の意図を理解してくれた」

 

「いえ、事件の概要が掴めてからは、ちょうど士師記も読み返していましたから。蒼崎先輩のルーンもお見事でした」

 

「君の獣性魔術の美しさに比べれば手品みたいなものさ。とはいえ他の魔術基盤と喧嘩しづらく、誰でも使える技術だ。もしよければ今度空いた時間に教えてあげるよ」

 

「ありがとうございます」

 

 

 砂埃を多少吸い込んだらしく、スヴィンは鼻を擦っていた。シュヴァンクマイエルは元々ゴーレムの燃費がおそろしく悪いのに、短時間にブーストをかけたせいで魔力酔いを起こしている。

 振り返れば、神殿と称された地下の儀式場は完全に崩落。荒れ狂っていた神威は霧散し、悍ましい涜神の物語が紡がれようとしていた気配すら消え去っていた。

 

 

「‥‥よかったですね」

 

「グレイ?」

 

「酷い事件でしたが、阻止できて、よかったですね。‥‥いえ、一つだけ拙には分からないことがありましたが」

 

 

 だいぶ無茶苦茶に扱われたしいアッドが文句たらたらに騒いでいるのを気にもせず、物憂げな様子でグレイが口を開いた。

 

 

「あの神威、あの魔力、拙もたいへん恐ろしかった。儀式が成功してしまえば、あれ以上恐ろしいものが顕現してしまっていたのですよね? 涜神の結果、歪みきってしまったナニカが。そんなものが、あんなに簡単に顕れてしまって良いのでしょうか? 拙が普段、接しているものは、そんなに恐ろしく危ういものなのでしょうか? 生意気かもしれませんが、拙にはそうは思えないのです」

 

 

 元々、魔術師の世界には似つかわしくないほどに感受性の強い娘だった。それが今、怯えて、俺のジャケットの端を掴み震えている。

 彼女の異変を嗅覚で感じ取ったスヴィンが泡を食って近寄ってくるのをフラットが阻止する。気持ちは分かるけど、今は逆効果だぞスヴィン。

 

 

 

「‥‥レディ、君のその疑問は的確だ。正確に言うと、君はその感受性を以て真に理解している。あの儀式は成功する可能性の低いものであった、ということをな」

 

「師匠」

 

「人を呪わば穴二つ、という諺があるそうだが、まさしくその通り。ましてや呪う相手が神だ。なかなか成功するわけはないんだよ」

 

 

 誰かを呪う、というのは二番目に古い魔術(もくてき)だ、と教授(プロフェッサ)は続けた。一番古い魔術(もくてき)は祈りだが、とも。

 他者を呪いたいとき、その代表的な理由は自己の利益である。つまり天秤の均衡を無理やり崩し、他人を貶めて自分を持ち上げるのである。このとき大事なのは、両者が天秤で計られる存在でなければならない、ということだ。簡潔に言えば、本来は呪い呪われるという相対的な関係を作る以上、両者はある程度、対等の関係でなければならない。

 

 

「しかし教授、身分の低いものが権力者を呪う、なんてことも間々あります。両者の関係は必ずしも対等でなくてもいいのでは?」

 

「トリムマウのスカートのはしっこをつまみにワインをのみたい」

 

「誰か馬鹿になったシュヴァンクマイエルを黙らせろ、レディの教育に悪い。‥‥スヴィン、それもまた尤もな疑問だ。しかし何の脈絡もなく相手を呪って利益を得る、ということはありえない」

 

 

 例えば権力者を呪うことで自分の利益を得るならば、それは政治か、あるいは商売か。どちらにしてもお互いに共通して所有の可能性がある権力なり即物的な利益なり。つまり、相手が権力者であっても、少なくともゲームのステージは一緒なのだ。そういう意味で両者は対等だ。

 立場が、というより同じ舞台(ステージ)に立っているかどうか、を考えているわけだ。

 

 

「カドモン・ガレルは神を呪おうとした。神を呪って利益を得ようとした。衰退した旧神とはいえ、一介の魔術師が神威を天秤にかけて勝負ができるか?神と人が近かったギリシャ神話の時代であっても、少なくとも神威を賭け(ベットし)て、神々に勝負(コール)した英雄はいなかったよ」

 

 

 だからカドモン・ガレルがやろうとしたのは、最も原始的な呪いとはまた違うものだ。

 あれはむしろ―――

 

 

「利益を得られるはずもないステージで相手の一方的な破滅を願うような呪いはな、天秤の原理とはかけ離れている。それが齎す結果は犠牲でも生贄でもなく‥‥破滅、と言うんだよ」

 

 

 いわゆる祟り、というやつだな。日本の方が馴染みが深いんじゃあないか? 教授(プロフェッサー)の言葉に俺は頷いた。

 リスクもリターンも何もない祟りは、魔術の歴史上を見れば日本にこそありふれた概念だった。平将門、菅原道真、殺生石と枚挙に暇はない。

 意図してか,意図しないでか、カドモン・ガレルの魔術の本質は祟りへの変質だった。あるいは神を呪い、堕ちた神威と合一して力を振るう結果を齎すだろうことを想像すれば、真実それは祟りだろう。栄光ではなく破滅。それはカドモン・ガレルが望んでいるはずのないことだった。

 齎す結果が破滅なら、そこに術者本人の利益が生じる可能性など皆無なのだ。

 

 

「せめて涜神の結果、吐き出される呪いの矛先があればな。そうすれば天秤の両側に他人を乗せる、なんとも悪辣な漁夫の利を得られただろうに。だが生憎と大概の魔術基盤はそういうやり口に対しては十分な対策がしてあるものだ」

 

 

 破滅という結末を誰かに押し付けることができれば、なんとも魅力的だったろう。しかし魔術の基本が等価交換である以上、それにはロクでもない悪辣な論理(Fack'in Grand Order)が必要になる。

 そんなものを小器用にこなせるなら、そもそもこんな危ない橋を渡る必要もなかったのだ。

 

 

「これが結末だ。身の程を弁えなかった魔術師の末路、しっかり覚えておけ。わりとよくある流れだ。どんなに優秀な魔術師でも陥る可能性のある落とし穴だ。そう言う意味では,お前たちににとっても良い教材だったかもな」

 

 

 誰かのことを思い出しているのだろうか。新たな葉巻に火をつけ、紫煙を燻らせたロード・エルメロイⅡ世はひどく寂しそうな表情で呟いた。

 身の程に余る大望は、魔術師としてはありふれたもので。ならばありふれた結末だったのだろう。生憎と才能に溢れたエルメロイ教室の弟子達は、そういうことには比較的鈍感だった。それは俺も含めて。

 

 

「さぁ、講義は終いだ。こんな埃っぽいところからは速やかに撤収するぞ。ロクでもない後始末もあることだし、な」

 

 

 トリムマウが簀巻きにしたシュヴァンクマイエルを引きずり、俺たちは地下を後にした。

 ロクでもない始まりから、ロクでもない終わりだった。でもありふれた話だった。

 最初に感じていた興奮はとっくに冷めて、落ち着いた教訓だけを得た。そういうまとめ方が,この人は得意だった。

 もしかしたら死ぬほど後味の悪い話になっていたかもしれない。そういう意味では俺たちはやっぱり子どもだったのだろうか。

 こともなげにまとめてみせた、本人曰く、まだまだ小さい背中。しかしその背中は俺たちにとっては随分と大きかった。

 まだ子どもでいていいのかもしれない。けど、勿論その背中を超えなきゃいけない時は来る。

 彼にとっての偉大な背中のように、俺たちにとっては偉大な背中。

 ライネス嬢(エルメロイのお姫様)フラットとスヴィン(教室の双璧)も、まだまだだな、と顔を見合わせて笑った。それが一番の教訓だったのかも、しれない。

 

 

 

 

another act Fin.

 

 

 

 

 

 




最終話の更新の後、厳しいご指摘の数々頂いています。
ただ、私の中では彼は私が操る人形ではなくて、ちゃんと一人のキャラクターなのです。
それは彼に限らず、全てのキャラクター達は私が操ってるわけではなく、私の中で自由に動いている。舞台は私が用意していますが、たしかに生きているんです。
私は読者を騙したり、どんでん返しを楽しんでいるわけではなく、ありのままに動く彼らを書いているだけなのです。
だから彼の物語、まだ少しだけ続きます。そしてそれは決してバッドエンドではない、ご都合主義かもしれないけど、しっかりハッピーエンドなのです。
だから本編の方はあとエピローグを1話、追加して完結とします(小声)
もうしばらくお待ちください。

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