「では、二階堂。開発室での報告を頼む」
「はい」
城戸司令に言われ立ち上がって発言する僕。
「まず、先日の偵察型を送り込んだ国についてですが、掃討戦があった前日の木虎隊員が倒した爆撃型を送り込んだ国と同一である可能性が高いと思われます」
そこまで言い終えると風間さんが口を挟む。
「違う国という可能性はないのか?」
「はい、ないと思います。トリオン兵だけ見たら、違いはないように見えますがトリオンの体内での動きは各国で微妙ですが違います。僕はどちらも死骸しか見ていませんので分かりませんが、開発室のデータ照合が合ってるので間違いはないと思います」
「なるほど」
まあ、ほぼプログラミングのやしゃまるシリーズも本物とトリオンの動きかた違うしな…。
「となると…問題はどこの国が攻めてくるかになるわけか」
「はい」
そうですね…それですね本部長。
というかこういうことの正確なことが、迅さんのサイドエフェクトで分かんないのがな、本当に惜しいよな…まあ攻めてくるって分かるだけでも十分なわけだけどな。無いものねだってもあれだしね。
次に城戸司令が口を開く。
「持っているデータに可能性のある国はないわけか…」
「そう…ですね」
そこ分からないとダメですよね…だよね。
「鬼怒田さん達にも分からないんだ、君が気にすることではないよ」
「そう…なんですけど」
フォローをしてくれる本部長。流石は姉御が惚れた人やで。
でもほら、データまとめてるとそこ分かればなってやっぱり思うじゃないですか。そういう察知能力が欲しいな…。
一同静まってもうなす術がない…と思われたその時二人の人物が口を開く。
「うちの遊真に聞けばいいんじゃないか?」
「ですね、ボス」
いや二人とも待ってましたと言わんばかりの顔しなくても…というかあれかこういう本部側が言いづらいことは僕が言う立場なんだな。
中立ってそういうことでいいんだよね…たぶん。
「なるほど。ネイバーのことはネイバーにというわけか…」
「そういうこと風間さん」
風間さんの呟きに星を出しながらそういう迅さん。
「確かに遊真君に聞けば、どこの国が攻めてくるか分かるかもしれないな。爆撃型を今まで見たことなかったということは、使う国が少なかったからと考えることもできる。それなら特定が可能かもしれない」
「でしょ、忍田さん」
肯定してくれる本部長によし来たと言わんばかりの迅さん…元気だな。
城戸司令はまだ頷くのを渋っているといった様子だ。まあ組織の長が入隊を認めたとはいえ、どこまで認めるかって難しい話だよね。
入隊したら、骨までしゃぶる勢いで利用するって考えもできるし、
反対にあくまで特例処置であり、入隊認めて放置して、多少の距離を保つことが内部的に摩擦が起きづらいって考えもできる。
どちらかに偏らせるか、もしくは上手い位置で線を引くか…。
僕がとやかく言うことでもないので…というよりも何を言っていいか分からないのでただ見守っている。
城戸司令は数十秒ののち、重い口を開く。
「…いいだろう。空閑隊員に話を聞くということで話を進めよう」
協力という形になった。
そのまま話を進める城戸司令。
「では、明日の対策会議は、空閑隊員に話を聞きながら対策を進めるという形でいいか」
一同異議なしという感じで頷く。
「時間は少し遅める必要があるな…二階堂」
こちらを見る城戸司令。時間と言うと…なるほど。
えっと新入隊員は今日と変わらず基礎訓練があって…だから。
「遅くても午後の3時には終わっているかと思います」
うん確かあってるはず。
「よし…なら3時半に。場所は林藤支部長が使う場所を後で連絡する…でいいか」
「了解。城戸さん」
ラジャーという感じで手を頭にやる林藤支部長。
「あ、そうそう。うちの隊員もう一人連れてきていいですか、城戸さん」
もう終わりかなと思ったけど迅さんが話始める。
「宇佐美か」
林藤支部長がそう言う…宇佐美先輩を使うのか。
となると何かパソコン使うのは支部長の頭の中では確定事項か。
「いや、あいつもそうなんだけど、さ」
そう言ってこちらを見る迅さん。
「あの3人の中での誰か…ですか?」
「そそ。正確には遊真がいるから2人だけどね」
…迅さんの意図がイマイチ読めんぞ。
「偵察型と爆撃型二つの事案に関わってるやつがいるから何か役に立つかもしれないと思ってね」
二つの事案に関わってる…ああ。
「三雲君か」
…三雲先輩か。おお本部長と同じタイミング。
「ね。城戸さん、一人くらいいても損はないと思うよ」
サイドエフェクトの話はしないあたり、ただ単に話を聞かせたいんだろうな…なんでかは分からないけど、迅さんだし、何かあるんだろ。
「…いいだろう。では明日の3時半に。場所は追って連絡する」
とりあえず会議が終わる。
本部長達が出ていくなか、僕は城戸司令を呼び止める。
「なんだ」
「いや、その…」
改めて見つめられると流石に怖いな…。
「かなりの暴論なんですけど…」
一応前置きをしておく。
「敵にこちらの戦力が多少バレてる可能性がある…かもしれないです」
自分で口にして分かるけど本当に暴論だな…。
「どうしてだ」
少し目を見開く城戸司令。
「あくまで仮定の話ですが、偵察型に視覚による録画機能のようなものとかあったら掃討戦の件も敵国にバレているかな…と」
うん、自分で言ってて、何言ってるのって感じです。
「根拠はあるのか」
「…ない、ですね」
ないです。そこだけ自信があります。
「なぜ今伝えた?」
「いやーその、根拠ない推論…もとい妄想を全体の会議で言って場を乱すのは控えるべきかな…と」
妄想が原因で、かなりの被害出すのだけは避けるべきだし…。
「…なるほど。頭には置いておこう。下がっていいぞ」
「…失礼します」
…緊張した。
そういやこの後精神に疲れていたのに木虎先輩との件でもっと疲れたのは言うまでもない。
次の日 支援課室
「やはり、あそこのどらやきはべっかくだな」
「お気に召していただけて光栄です」
今僕は玉狛のお子様こと陽太郎と支援課室にいる。なんでも陽太郎も今日の対策会議に出るらしい。
理由は、『おれは、ゆうまたちのせんぱいだから』らしい…お前は玉狛支部でどの位置にいるんだ。
それで会議が預かってもらっていいと宇佐美先輩から言われたのでこうして預かってるわけだ。
まだ、支援課室も資料があり片付けるのも面倒なので、米屋先輩には頼まないんですかと聞いてみたら繋がらなかったらしい。それで僕に頼んだというわけだ。
まあその30分後に米屋先輩から、悪い寝てたと連絡があったらしいけど。というわけで後で合流することになった。
…ん?寝てたって返事は面倒だっただけじゃないかって?それはないと思う。
あの人は、基本模擬戦しか頭にないような人だけど、それ以外は…というかそれを除けば凄くいい人である。ちなみに模擬戦をフルアタックに変えれば出水先輩が完成する。
ただ駿はちょっと違う。模擬戦を迅さんに変えればいいんじゃね?と思うかもしれないがあいつはもっとひどい可能性がある。あいつの頭が検索エンジンになったとき、その予測変換は、
『○○ 迅さん』
『○○ 玉狛 迅さん』
で埋まる可能性がある。そう、あいつと迅さんは切っても切れない関係なのである。従って『緑川 駿 = 迅 悠一』という等式が成り立つ…のはないな、うんない。
そんなどうでもいいことを考えていると陽太郎がポケットに手を突っ込む。そして
「ほうびに、おれのとっておきをやろう」
「…どうも」
某有名棒状駄菓子をくれる…僕はコ○ポタが好きだよ!!
「陽介はまだなのか」
「先輩は…確かにもうそろそろか。じゃ行くか」
というか今更だけど…このカビバラの毛どうにかならい?後で片付けるの僕なんだけど。
「彼はどこにいるのですか」
「まあブースに行けばいいっしょ」
陽太郎の問いにそう答える僕。うん、だいたいあそこにいる。
三輪隊に行った方がエンカウント率低いってどういうことなんですかね…。
「しんにゅうたいいんが、おれのことをみているぞ。おれもゆうめいになったな、はじめ」
「まあ少なからず玉狛だからな…」
「さすがは、われらは、玉狛だ」
「おう」
…単にカビバラ乗ってるお子様が珍しいだけだと思うけど。
廊下をそんな会話をしながら歩いているとざわざわとC級隊員の声が聞こえてくる。
「どうしたのだ」
陽太郎がこちらに振り返り聞いてくる…聞こえてくる感じだと、ほう。
「駿とお前の後輩がブースでやってるみたいだな」
「なに!?せんぱいとしてみとどけなくては!!おさむか、ゆうまか」
目を見開いて焦る陽太郎。
「空閑先輩のほうみたいよ」
僕も見たいし急ぐか。
そんななかお子様はというと…
「いくぞ雷神丸」
「ふぅっ」
息を吐く雷神丸。
「ほらいそげ、雷神丸」
「ふうっー」
座り込む雷神丸。
「はやくしないとおわってしまう!!」
「ふおー」
欠伸をする雷神丸。
お前のサイドエフェクト意味ないのね…。
ブース
「お、はじめじゃん。お前も観戦?」
「まあそうですね、先輩を探すついでに」
米屋先輩と合流する…やっぱいたわ。
「…クソガキ様はどうしてあんな汗でびっしょりなんだ」
「子供の世界にも触れてはいけない世界があるんですよ」
「なるほど、よく分からん」
米屋先輩の問いに答える僕…分からなくていいと思いますよ?
そして…
「三雲先輩もいたんですか。こんにちは」
軽く頭を下げる僕。先輩も軽く頭を下げてくれる。
「どうして先輩がここに?」
「緑川に模擬戦やらないかって言われて…負けたんだけど」
ちょっと困った顔になる三雲先輩…ふむなぜ駿が。
「どうして模擬戦を?」
「よく分からないんだよね」
うーん、なぜに。
「なんか先輩言いました」
「いや、別に…自己紹介しただけだけど」
自己紹介…ほう。
「玉狛って言いました?」
「あ、うん」
…なるほど。どんだけあいつ好きなのよ。
これは、うん。
「同級生が本当に申し訳ありません。後で謝らせますんで」
深々と頭を下げる僕…あのバカ。もうちょい我慢しろよ。別に倒したって玉狛入れんし、嫉妬とかで喧嘩売んなよ…。
「いや、申し受け受けたの僕だから…」
いい人だ…そう言ってくれると本当に助かります。
でもそれでどうして空閑先輩とやることになったんだ…。
そんななか陽太郎は我慢できないのか米屋先輩に聞く。
「陽介。ゆうまはどうだ」
息切れをしながら聞く陽太郎…なに、あれだ。お疲れさん。
「いや白チビの圧勝そうだぞ」
マジか…駿相手に。まあ小南先輩に3本取れてる時点であれか、そうなるか。
いやもしかしたら小南先輩に対する相性がすこぶるいいだけかも…とかくだらないことを一瞬考えたりしたんだけど。
ないけどね?小南先輩に対する相性ってなんだよ。まあある意味癖強い人だけど特殊なことしてるわけじゃないし…でもほら僕も認めたくないじゃないですか、ね?
うっせ。僕にもそういう感情普通にあるんだよ。
あ…今ので、8-2か。動きがやっぱ違うな。
「そういや三輪隊、空閑先輩ひとりでボロボロだったみたいですね、聞きましたよ」
「うっわ。いまその話するかよ、お前。性格わりーな」
でこに手を当ててそういう先輩。
「自覚ありますんで」
僕が星を出しながら言うと…
「あればいいってことじゃねーだろ」
軽くでこピンされる僕。
「おっ。次始まるみたいだぞ」
「ですね」
9戦目が始まる。
…というか、これ。
「駿のやつ結構追いついてますね…お受け止めた」
「ま、緑川もつえーしな。そろそろこうなると思ったぜ」
最初はダメだったんか。
にしても数戦で掴むとは流石と言うべきか…駿も天才の部類だからな。脳内迅さんだけど。
これだといずれ空閑先輩レベルいくなー。いつになるかは分からんけど…あー首やられたわ。
「ふん、さすがはゆうま」
流石だけど…改めて見るとやっぱ凄さが分かるよね。本当にランク戦が楽しみで仕方なくなってきたな。
そんな感じで10戦が終わる…あとで記録を見て10戦見なくてわ。
数分後、駿がこちらに戻ってくる。
わりと清々しい顔をしながら来る駿に話しかける。
「よう」
「げっはじめじゃん」
げっとはなんだ、げっとは。人をゴキブリみたいに言うな。
まあ黒江だと、げっが軽い舌打ちに早変わりだよ、良かったねはじめ!!…よくないね。うんまったく先輩への尊敬の念が足らん。
え?僕に威厳が足らないだけ…否定できない。
「だいぶコテンパンだったな。後で見るわ」
「…見なくていいよ」
そんな不機嫌な顔しなくてもいいじゃんか。
じゃ俺やることあるからと行ってしまう…三雲先輩とこだ。
やだ駿のやつそこまで成長したのね、嬉しいと思っていたらどうやらそういう約束だったらしい。
空閑先輩から経緯を聞く僕…なるほどそれで駿とやることになったのね。
ちょうど空閑先輩の話が終わった頃に、
「どもども」
迅さんが来る。
「あ。迅さん」
駆け寄る駿…だからどんだけ好きなのよ。
こいつの対処?決まってる!!ほっとく。
「にしても相変わらずですね、駿のやつ」
うわーないわーと同級生を横目で見ながら米屋先輩に話を振る。
すると米屋先輩が何食わぬ顔で言う。
「お前のほうがひどいときあるけどな」
…何言ってるんですか。僕があんなになるわけないですよ?
「ハハハ。そんなことあるわけないじゃないっすか」
オペのとき?ハハハ何を言っとるのかね…はは。でもそんなにひどいの。あれより?嘘だな、うん。
「いや、マジで」
米屋先輩が、僕のないないみたいな顔を見てもう一度言う。
「…ホントに?」
ひどい自覚はあるよ。でもあれよりひどくは…あるかもな。
「おう、マジで」
念押ししてくる先輩。
「ですね」
「おう」
気を付けよう。
僕が今後の身の振り方を考えていると、迅さん迅さんが終わったので僕達は移動をすることにする。
ちなみに…
「わるいな、陽介。おまえとかまってやれなくて」
「いや別に気にしてねーよ」
という会話があったのは一応言っておく…ほら米屋先輩に見てもらう予定だったからさ。
その後会議室でレプリカ先生…空閑先輩の持ってる多目的型トリオン兵による今回の敵国の解説があった。
大規模侵攻まであと少し。