「荒船。逃げてねーで首よこせよ」
そんなことを言ってるかは定かじゃないけど、銃を乱射しながら荒船先輩に近づく諏訪さん。
荒船先輩はシールドを自分の前に作り防御しながら後ろに下がっていく。
この通路は、想像以上に建物の高さがあって射線が通りづらい。
荒船隊は建物がなくなった位置まで下がって諏訪さんを仕留める算段だろう。
まあ、荒船先輩にのみ注意を向かせるために押されてる振りをしてるというのもあるだろうけど。
「くる」
駐車してる車の陰に隠れ諏訪さんの射撃を防いでる荒船先輩を見ながら、古寺先輩が一言。
「いや、これは
東先生の解説で半崎先輩が構えてる映像が映る。
その言葉通り、荒船先輩を仕留めにかかっている諏訪さんの頭に銃弾が届き、頭が消し飛ぶ…ことはなかった。
「食らっていない!!諏訪隊長は生きているぞ」
声の大きさが今までで一番大きくなっている武富先輩。
諏訪さんはそれを頭の前にのみ発生させたシールドで防御していたため、頭が飛ぶことはなかったのだ。
諏訪さんのシールドの扱い方で解説席が盛り上がってる中、こちらはというと
「諏訪さんだな」
「ですね」
「そうですね」
諏訪さんコールが米屋先輩の呟きから発生していた…うん、諏訪さんだね。
食らっていないことが分かった荒船先輩は、ガードレールを飛び越え下の通路へ行く。
諏訪さんもそれに続いて下の通路へ飛び込む。
そこから、再び2人の追いかけっこが始まる。
ただ、荒船隊の狙いは変わらないようで、次は穂刈先輩が構えてる映像が映る。
「もう一発」
古寺先輩の言葉通り、穂刈先輩のイーグレットが諏訪さんの片足を飛ばす。
「流石の諏訪隊長も2発目は防げないか」
その映像を見て叫ぶ武富先輩。
そんななかこちらはというと、当然…
「諏訪さんだな」
「ですね」
「そうですね」
諏訪さんの確認作業をしていた。
荒船隊各隊員の位置が正確に割れたことにより、諏訪隊は初めからとはいえ、玉狛第二も荒船隊に的を絞る形で動き始める。
諏訪隊のほうは、堤さんが半崎先輩を獲りに、笹森先輩は諏訪さんと一度合流している…2人で獲るつもりらしい。
玉狛第二のほうは、空閑先輩はバックワームを着て半崎先輩のもとへ動く。そして、三雲先輩はというと諏訪隊のように2人で狩るのかと思ったらそういうわけでもなく、多少離れた位置を取りにかかっている。雨取さんは位置が分からないように高台には向かわず、下の方で動いてるといった様子だ。
いい感じでばらけたな…荒船隊はいつもの形になっていないし、諏訪隊もばらける形になった。最初からこれが狙いか…。
僕がそんなことを思っていると、画面の映像が変わる。
「そろそろ、白チビが来るころだな」
半崎先輩の狙撃位置に空閑先輩が現れる。
上に登ってきた速さのまま、自分の間合いまで近づき、首を取りにかかる。
「おー、よく避けたな」
しかし急所を外しながら、それを躱す半崎先輩。
「加賀美先輩がログを渡したんだと思います。荒船先輩も最近ブースにはいないですから、いつどこで誰とやって…ということまで資料として纏めたんだと思いますよ。今言った3つのうち1つでも分かってたら絞ること簡単ですけどね、分かってないと地味アンド地味ですから、僕達の仕事です」
「何であれあんなめんどうなの?」
そんな睨まれても僕分かんないですよ、米屋先輩。
空閑先輩の手によって、半崎先輩が落ちるかと思ったけど、堤さんが来て2人に銃を向け、乱射。
その結果…
「半崎隊員、
半崎先輩が落ちる。
穂刈先輩が遠かったという理由もあるだろうけど、半崎先輩を先落とすのは正解かもね。あの人正確性半端ないし、1km先狙撃とかやろうとしてできるもんじゃない。
というかボーダーってスナイパー組本当におかしいよね、当真先輩とか奈良坂先輩も言わずもがな、佐鳥先輩も実際やばいし。
空中でツインスナイプ…いや、アクロバット佐鳥ハイパーマスターキャノン(本人命名)を決めてくるあたり十分変態だし。でもその名前はないと思います。
本当に変態多いよな…ボーダー。
まあ色々言ったけど、半崎先輩も十分変態の部類に入るので落としとくべき存在なのは間違いない。
僕がボーダーのスナイパーのレベルを確認していると、続けて堤さんが空閑先輩を落としにかかっているところだった。
それを縦横無尽に動き回り、避ける空閑先輩。
そして…
「やるなー白チビ」
「…」
グラスホッパーを使って堤さんの体勢を崩しそのまま後ろに回り込みながら胴体綺麗に2つにする。堤さんが落ちる。
駿と同じで負けず嫌いだよね、本当に…。
解説席でも初戦で使わなかったグラスホッパーの話になり、駿が
「昨日教えました、はじめも一緒に」
「なんと普通に覚えたてだった」
うわー言っちゃたよ、あの子。ほれ見ろ、隣の女の子が睨んでくる、待て話せば分かる。
「先輩、何してくれてるんですか」
やめて、そんな目でみないで。
するとそれを見かねて米屋先輩がフォローしてくれる。
「気にすんな、黒江。どうせパフェ奢ってもらったんだ」
フォローじゃなくて事実だった。
だから、ね。その目やめようか、ね。
最後の砦古寺先輩はというと
「荒船さんとこ行くみたいですよ、玉狛」
「おっマジか」
普通に観戦してました。
古寺先輩の言う通り、空閑先輩は荒船先輩に近づいていく、ただそれ以上近づくと…
「ただ、荒船に限って言えばあいつは元アタッカーですからね」
荒船先輩が弧月を抜く。
高台に向おうとする空閑先輩のを弧月を抜いて応戦することで止めにかかる荒船先輩。
ここが高台に行くための階段ということもあり、一直線上である。従って射線を邪魔するものない。スナイパーからしたらやりやすいの一言だ。
まあスナイパーから見てやりやすいってことはアタッカーから見たら不利なわけで、
「スコーピオンじゃ斬り合いはきついよな」
「射線も通ってますしね…ただ」
米屋先輩と古寺先輩もこの反応である。
そのことは空閑先輩も分かってるのか、荒船先輩の死角に回り込み斬り合いにならないように階段を下がり続ける。
ただ、古寺先輩が思ってる通り、
「スナイパーから見て、荒船先輩と一直線上に位置するように動いてますね…荒船先輩相手に射線もすぐ気にするあたり凄いですよね」
「やっぱり戦闘慣れしてるよね」
僕の言葉に頷く古寺先輩。
ただ、そうならないように荒船先輩も動きながら、応戦。
「ようやく一発通ったね」
「ですね」
回り込む中弧月を受けて横に移動したところに一発…しかしこれは避けられて家の塀に当たる、髪にはかすったけど。
次は、階段の高低差を利用して、体重を弧月に乗せて振り降ろしたのを避けたところを1発、これを避ける空閑先輩。しかし、そのままもう一度斬りかかる荒船先輩の攻撃をスコーピオンで受け止めてしまう。
「白チビも2対1じゃきついな」
「スナイパーいるといないじゃ変わりますからね」
スコーピオンで受け太刀はね、何度もは厳しい。
狙撃に注意しながら上手く死角を取る空閑先輩。
「獲った」
「いやーまだだよ」
思わず声に出した言葉を否定してくる米屋先輩。
どうしてと思ったのも束の間、答えはすぐに分かった。
「バックワームを目隠しに使って攻撃」
右後ろにいる空閑先輩を弧月で一突き…外れたけど、これで裏も取りずらくなったな、空閑先輩的には本当にきつくなってきたな。
こっちが荒船先輩のほうだけに注目してると、古寺先輩が新たな話題を振る。
「諏訪隊はアタッカー別行動みたいだね」
「穂刈先輩を仕留めにですか…」
よく見たら諏訪さんは、荒船先輩狙いみたいだし。ここで、上から2人仕留めるつもりなんだな。
三雲先輩は、何かしらあるんだと思ってたけどこういうことだったのね、なるほど。
「メガネボーイもなかなか狡いな」
「位置取りが上手いって言ってくださいよ」
性格悪いみたいに言うのはよくないですよ。
でもこの2つのことがあれば、空閑先輩はやりやすくなる。駿が空閑先輩推しで解説してるけど…後で荒船先輩に告げておこう。
そんななか、笹森先輩側はというと、三雲先輩の射線のおかげで穂刈先輩に早く追いつくことができた。
「お、笹森が追い付いた。これで獲ったな」
「いや、これだけで終わらないですよ」
穂刈先輩なら…ここで。
予想通り穂刈先輩が、空閑先輩の方角を向き、
「穂刈隊員が捨て身で狙撃」
空閑先輩の左肩を撃ち抜く。
その一撃を受け荒船先輩が距離を詰め仕留めにかかる。
空閑先輩はその動きを見て、下がりながら上向きのグラスホッパーを発生させる。
ただ、荒船先輩もそれを読み切り、斬り上げにかかる。
しかし
「荒船隊長、足を斬られた!!トリオンの漏れが警告されています」
両足を持ってかれる…フェイクか。
「流石、白チビ」
「上手い…ですね」
こちらのアッタカ―2名も文句なしで褒めてるし。
ただ、そこに
「片足の諏訪隊長が到着。屋根から2人を撃ち始めた!!」
諏訪さんが到着する。
笹森先輩もカメレオンで消え、三雲先輩もその現場に向かって動き始める。雨取さんも動いてるし、ここからが玉狛の勝負か。
「笹森が消えたな…白チビ狙う気だろうけど」
米屋先輩が画面を見ながら言う。
「まあ大丈夫でしょ。先輩の従姉は伊達にオペレーターやってないですよ…タグ付けミスもないだろうし、その位置把握も指示も誤差はないようなもんですよ」
「それな」
先輩、軽いです。何なら今から宇佐美先輩の凄さについて懇切丁寧に1時間教えてあげましょうか?
いらない…そりゃそうですね。
ただ、笹森先輩も一筋縄ではいかないようだ。
「空閑先輩の動きが止まった。どうなっているんだ!!」
「笹森が武器を使わずに空閑を抑えたんでしょう。これで諏訪が空閑を落とすの援護ですね」
「なるほど」
僕知ってるよ、これ先生絶対に「だが…」と思ってるやつだ。
先生の推測通り、諏訪さんの狙撃位置から後ろの建物がいとも容易く全て崩壊する。理由は当然
「玉狛の砲撃が轟音とともに襲い掛かる。やはり威力がおかしいぞ!!」
「玉狛は射線が関係ない。密集したところにこそ、その火力を生かせる」
建物が崩壊するときを狙って、空閑先輩が笹森先輩を、位置を補足された雨取さんを荒船先輩が落とす。
そして
「2人になったところを撮りにかかる諏訪隊長と空閑隊員の両名。軍配はどちらにあがるのでしょうか」
「アタッカーは敵を仕留めるために近づかないといけないですからね。それに今回は空閑の動きは予測できる。いくら諏訪の機動力が落ちていたとしても待てるガンナーに分がある」
東先生の凄さを改めて知った気がします。
「確かに東さんの言う通り、空閑隊員が近づいている!!そして、読み切った!!これはやはり…と言ったところでしょうか、東さん」
「ええ、勝負ありです…」
空閑先輩がグラスホッパーを使って移動する位置に銃口を向ける諏訪さん。
「玉狛の勝ちです」
諏訪さんの頭をアステロイドが貫く。
2月4日(金) B級ランク戦第3戦前日 那須邸
「それで二階堂君は何か意見ある」
ベットに横たわっている那須先輩に質問を投げかけられる。
あ、皆さんどうも二階堂一です。
こんなシーン目撃しちゃダメらしいです。
いや、那須先輩のパジャマ姿をとかではなくてですね。つい2分前まで日浦先輩泣いてたんですよ、引っ越しの件で。
ええ、まあ僕の存在軽く無視なのはいいんですけど、ほらああいうシーンって赤の他人が見てていいかというと違うと思うんですよ。
実際、まだ頬赤いし。
志岐先輩が、
「茜、二階堂くん見てるよ」
と言うのがいけないんだ。
そりゃあれですよ。その後「うわぁーー、見ないでー」ってぶたれたんですよ。
おかしい…那須先輩もあれですよ、絶対こうなるって分かってて部屋入れたね。
ぶたれたとき笑ってたし、うんやっぱおかしい。
熊谷先輩なんてまだ口抑えてるし、くそ。
まあいいや、それより
「体調大丈夫なんですか。急に今日の任務お願いって連絡きたときは驚きましたよ」
そう今日は那須隊任務だったらしいけど、那須先輩が任務時間には用があるということで臨時に僕が呼ばれたわけだ、ほら那須先輩もシューターだし。
それで、一緒に来いと言われたので行くことにした、僕も個人的に報告することあったし。
「ええ、大丈夫そう。今日はありがとね」
ベットに横たわったまま軽く頭を下げてくる那須先輩。
「いや、別にいいですよ。そのための支援課ですし」
「そう言ってくれると助かるわ」
微笑みながらそう言ってくれる那須先輩…そこまで感謝されれると逆に照れ臭いです。
僕は、机に置いてある麦茶の入ったコップを一口飲む…勘違いしないでね。今ここにある麦茶きちんと僕が台所で注いだやつを部屋までもってきたんだからね。女子にそういうことさせちゃダメって宇佐美先輩言ってたもん、だから決してパシリじゃないから、勘違いしないように。
そして那須先輩は再び僕に聞いてくる。
「それで明日の事なんだけど、何かいい作戦あるかしら」
いやー、答えられないんですよ、それ。だって僕第3戦解説なんですもん。その人が作戦考えちゃ色々まずいんですよ…那須先輩も分かって聞いてるんだろうな、笑ってるし。
というか、僕が連れてこられたのって絶対さっきのシリアスモード回避のためでしょ、そんな気がする。まあお役に立てて光栄です…でいいのか?
僕が頭に手を当て困った顔をしていると熊谷先輩が詰めてくる。
「玲に教えてもらったんだから、それくらいバチあたんないでしょ」
それ言われるときついです。困った…とりあえず礼を言わないとか。
「秋口から太刀川さん対策の練習に付き合ってくれてありがとうございます。どうにかなりそうです」
立ち上がって頭を下げる僕。
それを聞いて興味津々と言った様子で
「もう戦ったの?」
そう聞いてくる那須先輩…どんだけ気になるんですか。
「いえ、今日この後です」
「そう」
残念な顔をする那須先輩。
いや嬉しいですけど、どんだけ勝ってほしいんですか…まあ頼んだ僕が言うのもあれだけど。
「でも先輩…いや先生。必ず初白星をあげてくるんで待っててください」
「楽しみにしてる」
敬礼をする僕に微笑んで言う先輩。
それを聞いた日浦先輩が目を見開きながら言う。
「二階堂くんは太刀川さんと戦うんだ、凄いな」
目を輝かせてる日浦先輩。
…あれ、僕が那須先輩に頼んだとき日浦先輩いなかったっけ。いた気がしたんだけど。
すると、熊谷先輩が呆れたように息を吐く。
「茜…あんたあんとき作戦室に全員でいたでしょうが」
「え!!いつの話ですか」
衝撃といったご様子の日浦先輩。
そこで、志岐先輩が入ってくる。
「熊谷先輩。そのとき茜は猫の映画見て泣いてましたよ」
「はあ、茜」
ああ…そういえばそうだった気がする。
それを聞いた日浦先輩は手をわちゃわちゃさせながら
「に、二階堂くん。ごめーーん」
立ち上がって素早いお辞儀をする。
「いや、別に謝ることでもn「茜、これはいけないことだよ」」
僕が気にしなくていいですよと言おうとしたら、志岐先輩が割って入ってくる。
「ど、どうしたらいいですか」
涙目で志岐先輩を…正確にはパソコンのアイコンを見る日浦先輩。
「それは…」
「は、はい」
溜める志岐先輩に唾をのむ日浦先輩。
その答えは…
「脱げばいいんだよ」
「脱ぎませんよう!!」
THE・即答だった。
流石はライトニングを頻繁に使う先輩だ、速い。これが奈良坂先輩の弟子の威力か…違うな。
僕が何言ってんだこの人的な目で志岐先輩…のアイコンを見ていると熊谷先輩から声を掛けられる。
「何事もなかったしてないで、玲にいうことあるでしょ」
また呆れた感じで言う熊谷先輩。
バレましたか…そりゃそうだ。
「麦茶吹いてすいませんでした。お風呂沸かしてきます」
「よろしくね」
風呂を沸かしに下に降りる僕…くそ志岐先輩め、昨日オンラインで負けたこと絶対根に持ってるよ。
「どう?終わった」
脱衣所で一息ついていると、扉を開けて那須先輩が聞いてくる。
「はい、終わりました」
「そう、ありがとね」
「いえ、こちらこそすいません」
頭を下げてくる先輩に、思わず僕も素早く頭を下げる僕。
「小夜ちゃんには私からも言っとくわ…あの子茜ちゃんと仲良いから」
「いえいえ、那須隊オペレーターを発掘した身としては仲良さそうにしてる分には嬉しいですよ」
発掘っていっても優秀なオペとして熊谷先輩に紹介しただけだし、そこからは熊谷先輩の説得力ですよ。
「そう言ってくれると助かるわ」
笑ってくれる那須先輩。
そして動きが止まる那須先輩…どうしたんだ。
「二階堂くん」
「はい」
向かい合う形になる僕達。
そして那須先輩から一言。
「ここ脱衣所なんだけど…いいかしら」
「も、もうしわけありませんでした。すぐ出ます」
慌てて扉の方に向う僕。
「あ…このシャンプー買ってきてもらえる」
「了解です」
チラッと見て確認して出る僕。
「ふーあぶねー、後一歩で犯罪者だった、あぶねー」
思わず扉の前で倒れ込みながら言う僕。
「あれ、もう終わったの」
そこに現れたのは熊谷先輩である。
僕は立ち上がりながら返事する。
「はい、もう少しで迅さんと一緒にセクハラで捕まるところでした」
「ああ…まあ玲も二階堂君が本気でするとは思ってないわよ」
思ってたらショックです。
まああれだ、この後まだ仕事あるし。
「それじゃ僕行きますね」
「帰り?お疲れ様」
いや、そうじゃなくて
「シャンプー買ってきます」
僕の答えに溜息をつく熊谷先輩…何?
「何ナチュラルにパシられてるのよ」
「「…」」
「行ってきます」
「…ええ、行ってらっしゃい」
ランク戦は明日である。