村上先輩の弧月が、先程より鋭くなったことで熊谷先輩の動きが乱れてくる。
熊谷先輩が首に狙いを定め、踏み込み斬りかかる。
冷静にシールドで受け流し、後ろに足を捌き、同様に首を狙う村上先輩。
危うく首を落とすところだったが、シールドで凌ぐ熊谷先輩。
そして、すぐに踏み込んで右腕を殺しにかかる。
「日浦隊員が落とされ、均衡が崩れたかと思われた三つ巴の戦い。現在不利になると思われた熊谷隊員が押している展開になっている」
「いや、これは…まずいな」
三上先輩の解説に苦言を呈す太刀川さん。
相手の刃の上を滑るように動かしながら刃の方向を変える。その動きの中で、身体は相手の背後を取るように動く。
「焦ってるな、くまのやつ。空閑が戻ってくるかもしれないから仕方ないとはいえ」
相手が自分の横に来たところでスラスターを用いて横に振り、胴体を2つにしようと試みる。
「間一髪。飛ばされながらも弧月で防ぎ切った」
弧月を盾にしてかろうじて防ぐ熊谷先輩。
「もう一度攻めかかる熊谷隊員」
足が地面についたのも束の間。村上先輩に踏む込む。
「俺は、トリオン体のこととかよく分からないけど…」
踏み込んでは避けられを繰り返す画面を見ながら話し始める太刀川さん。
「トリオン体の戦闘に元の身体能力が関係ないだろうし、実際ふつうのときより動ける感じはあるけど…」
右に捌かれて踏み込み、左に捌かれても踏み込み。ときには踏み込まずに突いてみるが避けられる熊谷先輩。
しかし村上先輩の方も決して余裕を持ってというわけでもなく、自分の両手の武器を使い分けて捌き、当たるか当たらないかの位置で避けていく…相手が斬り落そうとする瞬間に避けるわけだから体勢を崩しやすいか。
そう思うと、隙を突くためにやってるわけだから余裕はあるのか、いや余裕というより冷静に落としやすいように考えながら動いてる様子だな、真剣な顔してるし。
動向をただ見守っていると、太刀川さんが続ける。
「ただ…まああれだ。動きの癖ってのはやっぱり出る。くまは自分から突っ込んでスタイルじゃないわけだし、普段しないような方法を取ろうとしてるなら、なおさら…」
熊谷先輩は弧月の持ち手の指を軽く動かし、視線を相手の方に向けて踏み込み、切り落とそうとする。
たが…
「仕留めようとするときの癖は出やすい」
その一撃はシールドで捌かれる。
そして、村上先輩が体勢を崩した熊谷先輩に向って、斬り降ろす。
「村上隊員、冷静にこれを躱す。熊谷隊員の腕を落とした」
無情にもシールドも破られ、熊谷先輩の腕が落ちる。
その様子を見た太刀川さんが再び口を開く。
「くまのやつやばいな…」
熊谷先輩の基本スタイルは、両手持ち弧月にシールドだ。自分から突っ込んでというのではなく、相手の機会を窺いあるいは誘って技を出させて返し技や捌きなら相手を狙う戦法である。
並の相手なら心配はないだろうけど、相手が村上先輩であれば話は別だ。今述べたスタイルをするなら速さに追いつく必要がある。おそらくその心配だろう。
しかし、今の流れから考えてそのスタイルに戻れるのか…か。太刀川さんも気になるのか、ただ見守ってる様子だし。
ただ、そう思ったのは間違いだった。
何歩か下がり、息を整える熊谷先輩。そして、顔を上げ村上先輩のほうを見る。
その様子を見た村上先輩は、弧月を握り直しながら息を吐き軽くその場で飛んだあと、斬りかかる。
「いや…くまのやつ多少は落ち着いたみたいだな」
あんたなんで不敵に笑ってんのよ…。まあ、僕も良かったと思ってるけど。
村上先輩の弧月を右に捌いた後、踏み込んで押し返す熊谷先輩。
何歩か下がる村上先輩。
次の瞬間に熊谷先輩が放ったものは…
「村上隊員にメテオラが襲い掛かる」
メテオラである。
「日浦隊員と同じく橋の爆破用のやつですね。村上隊員に対して普段絶対にしないような戦い方をするのはいい選択です」
補足をする迅さん…太刀川さん普通に、おーとかいって楽しんでる。
それに…と言った後続ける迅さん。
「熊谷隊員も先ほどとは違って、頭を冷やせましたからね。まだ分かりません」
シールドに当たるようにメテオラを撃ち、その軌道の後ろを追って、村上先輩に斬りかかる。
横に捌くことで対応し弧月を受け止めた村上先輩は、そのまま後ろに下がる。
そこをメテオラで追撃をする熊谷先輩。
「勝てるかは変わらんけど、くまのやつずいぶん様になってるな」
その動作を繰り返しながら2人は、橋の方へと下がっていく。
橋の方へ下がるのは先ほど、三上先輩や太刀川さんが述べたように空閑先輩のことを気にしてだろう…ただ待ちか。
太刀川さんの解説通り東岸に行くのを捨てた理由はなにか、だな。
合流はいい手ではあると思うんだけどな…東岸で唯一全員いるのが玉狛だけってだけでも十分有利だ。心配な点は、那須先輩含め射程持ちに対して空閑先輩がどう間合いに入っていくことであるが、2人いればというより三雲先輩なら何かしら対策を講じて入らせるであろうからおそらく問題ないだろう。
そうであるのに待ちを選択させたのは、この2人どちらかが東岸に行くのを防ぐためなのは明らかだ。
熊谷先輩が行けば、余計に那須先輩が手を付けられなくなる、最悪全滅も十分にあり得る話だ。
村上先輩が行けば、言わずもがな。鈴鳴が揃って、東岸はおそらく全滅。
この状況を避ける判断だろう…。
そういう考えに僕の頭ではなってしまうわけだが、そうなると1つ。
合流の1手を捨ててまで東岸に残って見えてる勝ち筋はなんなのか…そこだ、本当に。
アイコンを見る限り、東岸ではいつの間にか来馬先輩が那須先輩と鉢合わせし始めてる。三雲先輩はそれを見て、多少の距離を取り始めてる…最初からやるつもりなかった、いやアステロイド撃ったころからか。
やっぱり鉢合わせる気があったってことか…自分は落とすつもりないということのか。
いや、落とすつもりがあるにせよ、自分が落ちても生存点だけでもってことか…雨取さんの攻めてる動きではないし。
東岸の鈴鳴が那須先輩と相討ち、まあどちらかが生きてたとしても雨取さんさえ生きてれば問題ない…かな。
那須先輩は落とせる順にという様子…那須隊が雨取さんの位置が把握できてないのもあるだろうけど。
鈴鳴は那須先輩しか相手できない状況。
自分はこの2チームが逃げないようにと。
生存点狙いだとすると、空閑先輩は時間稼ぎじゃなくて、本当に勝ちにいかせる判断なのかもしれない。時間稼ぎだと空閑先輩が負けて村上先輩か熊谷先輩が東岸にきたときのことも考える必要がある…この動き方は空閑先輩が勝つことを前提としてる様子だし。
僕が1人で考えている中、村上先輩と熊谷先輩の斬り合いに動きが合ったようである。
「熊谷隊員、攻めから一転。距離を置いている」
橋の方に下がりながらも、メテオラを生成し放ち続ける熊谷先輩。
「くまのやつ攻め方変えてきたな」
「村上隊員には、レイガストのシールドがありますからね。初めは防御した隙を狙っていましたが、シールド自体を壊す攻め方に変えてきた」
熊谷先輩が落ち着いたことが嬉しいのか、状況を楽しんでいる太刀川さんと補足をする迅さん。
村上先輩が弧月で踏み込んだときは下手に出ず、自分の弧月で捌いて下がって、メテオラを放射。防御するなら、そのままメテオラの放射を続けようとする熊谷先輩。
それに対し弧月で斬り込んだ後、レイガストで川岸の方向へ押し込む村上先輩。その動きで体勢を崩しながら川岸に落ちる村上先輩。
その体勢のままメテオラを、下から村上先輩の方向に飛ばす。
しかし…
「決まったな」
村上先輩が川岸に向け、スラスターをONにする。
『戦闘体 活動限界
熊谷先輩が落ちる。
「熊谷隊員の置き土産も効かず」
村上先輩が自分のレイガストに仕掛けてあったメテオラを察知して、足で蹴り上げてから手に握り直す映像を見て、三上先輩が解説する。
そして道路に戻っていく村上先輩。そこには当然、
「両エースがここで相見える。この展開について…二階堂君」
空閑先輩がいる。
…ここで僕に振るんですね。太刀川さんとかに振るんじゃないんですか。
まあ、意図としては上手く東岸に繋げろってことということなんだろう、たぶん1人で考え込んでるのを見透かされてたな、小型高性能組は伊達じゃないな。
一息吐いてから述べることにする。
「先程太刀川さんも言っていましたが、玉狛には合流という手も十分にありました。そうであるのに待ちを選択したということは、村上隊員を東岸に行かせないためというのは明らかです」
「そうなると…玉狛第二が何かしらの策がある、ということでしょうか?」
今更だけど、三上先輩に丁寧な対応されると不思議な感じだ。
まあ今はどうでもいいや。
「はい、おそらく。空閑隊員が村上隊員に勝てるかどうかは分かりませんが、東岸は東岸でやろうという三雲隊長の判断だと思います」
「なるほど…ということは始まったとき以上に東岸が鍵を握るということですね」
「そうですね」
僕が肯定をした後、三上先輩は東岸の解説に移る。
「さて…東岸では鈴鳴第一と那須隊長の射撃戦が始まっている。那須隊長が圧倒している状況か」
「那須隊は、後1人になってしまいましたからね。那須隊以外の各隊に1ポイントである今なら十分に巻き返せますからね」
那須先輩が来馬先輩に近づき仕留めようとしている。
那須先輩のバイパーを、建物を障害物にして躱す来馬先輩。
遮蔽物があることでバイパーの弾道を防げてはいるが、来馬先輩は攻められずにいる。
『鳥籠』
那須先輩によるバイパーによる全方位攻撃のことを那須隊ではそう呼んでいる。
誰がつけたのかは知らないけど、おそらく志岐先輩の趣味だ、絶対そう…まあそんなことは今どうでもよくて。
先ほども太刀川さんが述べたように、那須先輩が射線選択可能ということと、出水先輩ほどでないものの弾数を確保できるからこそできる技である…その分トリオンを使うのは言うまでもないが。
あと、余談ではあるが、那須先輩の射線選択は理詰めではあると思う…威力とか最後の詰めの部分はセンスというか適当かもしれないが。
それに対して出水先輩は、本当に適当である可能性がある。
射線選択とか威力とか含め…
あっちいって、むこういって、そっちいって、こうやって、あっちいって、ずどーん
…くらいしか考えていない可能性すらあるので、那須先輩の引きかたは、僕は好みである。
話が逸れたが、何が言いたいかというと誰しも射線選択自体に目がいってしまうことがこの技の大きな点であるということだ。
射線選択…というか全方位にばかり目を向けるとどうなるかというと
「来馬隊長動けない。那須隊長の猛攻になす術がないか」
「全方位による攻撃を少しでも和らげようと、建物内に移動しても逆に退路を塞がれるだけです」
三上先輩の言葉に補足する僕。
そう、全方位を防ごうと建物の中に入ったところで、相手の逃げ道を余計に減らすだけである…状況は有利になるどころか、不利にしかならない。
ここで、熊谷先輩が隠れていたら弾道の間を掻い潜り落とされる…今来馬先輩のように弾道が見やすい位置にいなかったらなおさら厳しくなる。
アタッカ―のことを気にしながら、バイパーも気にするのは並の隊員じゃできない。
そして、それに加え
「次々に降り注ぐバイパーをシールドを使って防御するしかない来馬隊長」
「数発だけ弾速を遅く設定したんですね」
もう一度僕が補足する。
全方位にしなくていいというのは、それだけ違うことを考えられる時間が与えられるということだ。弾速、威力等に割り振れれば攻撃の幅が広がるのは言うまでもないだろう。
建物で動けなく、シールドで防御しかできない状況で、シールドを展開しないところから日浦先輩が狙撃する…こちらが攻撃できないところで、遠距離と中距離から弾が飛んでくるのはもう防ぎようがない、本当になす術がない。
…というか今思ったら、建物内にカメレオンで潜んでたら手を付けられなくないか。
風間さんに相談しよう。
僕が風間隊に入って建物に誘い込めば勝てる隊ないんじゃないか…きたな、これ。
1人風間隊に入隊を心のなかで固めていると、その隊のオペレーターが続けて述べていた。
「来馬隊長。どうにか建物から脱出。別役隊員と合流する模様」
今いる建物から来馬先輩のアイコンが出て来て、太一先輩のアイコンの近くに行っていた。
ただ建物を出たところで変わらないだろう。それを思ったのは、僕だけではないらしく太刀川さんが口を挟む。
「鈴鳴の合流はスナイパーからしたらありかもしれないが、那須相手じゃ厳しいぞ」
「…というと?」
三上先輩が続けるよう促す。
ああと言った後、
「おそらく来馬は、太一と合流して二人掛かりでやるんだろうが、相手の手数が多くなってしまう以上は厳しいぞ」
シールドを自分たちの周りに発生させて凌いだ後、数の優位からの火力差からで押し切ろうとするが、相手の弾はすぐ来てしまう。
「いくら2人分の火力差があっても次の一手がすぐ削られるんじゃ威力も半減だ」
撃ち続けようとする鈴鳴の攻撃を止めろと言わんばかりに早く襲い掛かるバイパー。
「ただ那須隊長の攻撃も当たらないのも事実ですからね」
ただ、迅さんが口を開いたときの弾道は前数回とは違った。
その弾道は、シールドを広く展開してるため、防御が甘くなったところを一点集中の一直線の軌道を描く。
「…ただ那須隊長はその対策もしているようです」
盾が崩れ、降り注ぐバイパー。
…あんた、その解説はずるすぎだろ。
ワールドトリガーのSSが多くなってますね、ゲーム効果かもしれませんが嬉しいです。
ランキングに入ればもっと盛り上がると思うので頑張ってください。
↑僕は意地でも細々と続けていくので(乗る実力もないので)他力本願で行きたいと思います(笑)
というかこの作品以外の方が普通に面白いので、ぜひ読んでくださいね。
以上
ワートリが盛り上がればそれでいい信者のチビメガネでした。