戦闘員オペレーターのボーダー記録   作:チビメガネ

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第27話 B級ランク戦 第3戦 (4)

 那須先輩の全方位攻撃を受けながらも、川岸の方へ退かず受けきっている鈴鳴の2名。

 

 鳥籠を使い始める前にも受けた来馬先輩の左腕の傷が、鳥籠を使ったことで余計に広がってきてるように見える。

 いや見えるというとは違う…現に今も

 

「絶え間なく続く那須隊長による猛攻。非情にも来馬隊長の腕に当たり続ける」

 盾を一直線の軌道を描くことで破壊していくバイパー。そのうちの1つが来馬先輩の腕をかする。

 

 このままだと、トリオン切れで落ちるという可能性もあるか。ただこの攻撃は、那須先輩の自分のセンスを最大限生かした物量戦法だ。当然、自分のトリオンを大幅に消費する。従って、長期戦は厳しいことは言うまでもなく、短期戦で決める必要がでてくる。

 実際、那須先輩自身も三雲先輩と撃ち合っていたときよりも焦ってる様子だし…少しバイパーの射線選択が荒くなっているように思う。

 

 三雲先輩というと、那須先輩の背後を取って鈴鳴が攻撃したときを見計らい、攻撃している。

 やはり、自分で落とすつもりはないか…この場合は自分の力のみでと言った方が良さそうだが。

 

 

 そうなると玉狛、いや三雲先輩の作戦は、那須先輩をトリオン切れで落として、生存点も取るという判断でいいだろう。

 那須先輩もかする程度ではあるけれど、三雲先輩の攻撃が当たるようになってきている…当たらなかった最初の撃ち合いから考えれば申し分ない。

 

 三上先輩が、東岸4人の攻防を見て疑問を口にする。

「那須隊長が三雲隊長を狙わらないのは理由があるのでしょうか…鈴鳴第一の2人を相手にするより簡単な気がしますが」

 ある民家の屋根から、道路に立っている那須先輩に放たれるアステロイド。

 

 手持ちの弾が切れて、次の手持ちを生成しようとしたところを狙うとは。太刀川さんが防御の選択肢が消えたときに狙えばいいということを言ってたがこうやって画面を通して見ると、たちが悪いの一言だな。

 

 まあ、僕もその場面を誘ったときあるけど…。

 少し微笑んで、「二階堂君、性格悪いわね」と言われたのはいい思い出だ…思い返すと目が笑ってなかったな、先輩。

 

 僕が那須先輩との修行を思い出しているなか、太刀川さんが、雨取さんがいることを気にしてるんだろうと述べて三上先輩の疑問に答えていた。

 確かにそれが那須先輩としては一番だろうが、もう一つシューターとしての理由があると個人的に思うので補足することにする。

 

「それもありますが、三上先輩が言っていたことはできないんだと思います」

「…というと?」

 続きを言ってと目で促される。

 

「まず、三雲先輩を先に仕留めるという件ですが、これは見て明らかですね」

 民家の方向を一瞥して、狙いを定めてキューブを生成しようとしたとき、那須先輩の正面に弾道が10本強向っている。

 その鈴鳴の弾道を確認した三雲先輩が、すぐに弾速重視のアステロイドを撃つ。

 那須先輩は、前後からくる弾を前後に生成した丸い盾で防ぐ。当然だが、その防御に両手分を使ったためキューブの生成ができなくなる。

 その隙に鈴鳴から次の攻撃がきてしまい、那須先輩は余計にキューブの生成ができなくなってしまう。

 

 

「2人いて火力が高い鈴鳴第一の攻撃が想像以上に早くきてしまうということでしょうか?」

「はい、いくら三雲隊長を素早く落とそうとしても、隙が生まれてしまうのは明らかですからね。慎重にいきたいんだと思います。それと…」

 三上先輩の確認に頷いた後、続ける。

 

「三上先輩が言ってたもう一方の、回り込んで3人を射程に捕えるという方法ですが、その場合全方位の攻撃のための射線選択は使わないですからね」

 三上先輩が首を傾げているので続けようとする僕。

 

 しかしその必要はなかったようだ。

 

 移動しながら遮蔽物を使って射線を通さないように動く那須先輩。

 そして、その陰に隠れて那須先輩が、三雲先輩の背後以外を取り囲むバイパーを建物の下から屋根に向って襲わせる。

 当然であるが三雲先輩は後ろに飛び、屋根から道路に降りいき、自分を追いかけていく弾道を避けるように逃げていく。その後道路に降り、右に曲がったとしても襲ってくるその弾道をもう一度右に曲がり避けていく。そうすることで、民家の塀に当たり消えていくバイパー。

 

 逃げさせるために撃ったことで量の節約はできた。故にキューブはまだ残っている。そのキューブの量は鈴鳴に全方位攻撃できる量ではある。

 

「鈴鳴第一に再び全方位攻撃が襲う」

 その攻撃を自分たちの周りに半球の盾を発生させることで防ぐ鈴鳴の2人。

 

 那須先輩のその行動に納得したようで、なるほどと呟いた後三上先輩が続ける。

「攻撃をするために選択する弾道と逃げるために撃つために選択する弾道は違う…ということですね」

「はい」

 前の数回より弾数が少ないことを理解した鈴鳴が盾を素早く消し、攻撃に転じる。

 

 那須先輩に向った10本強の弾道は盾によって防がれたが、次の弾の生成までの時間を稼がせることに成功する。

 その姿を確認し、先程とは違う民家の屋根から弾速重視のアステロイドを再び放つ三雲先輩。

 それを当たるか当たらないかで右に避ける那須先輩。

 

「一見すると、この選択肢を取れば双方攻撃することができると思うかもしれません。しかし見て分かるように距離を置くために射線を引くと弾数が少なくなってしまいますからね。結果としてやりずらくなってしまう…だろ」

「…そうですね」

 いいとこ奪わないでくださいよ、迅さん。

 

「…となると、那須隊長が不利な状況に陥ったということでしょうか?」

 三上先輩は、こちらを見て質問をしてくる。

 

 不利な状況…ね。

「いや」

 画面に映るのは、息を吐きながら瞑った瞳を徐々に開けていく那須先輩である。その動作のなかではもちろんキューブを分割し、生成する。そのキューブは、浮かび上がり那須先輩の頭の先から腹の位置を30cmほどの幅を開けて浮遊する。

 

「お、いつもの那須の円軌道のやつじゃないな…というかこれは」

 その姿を見て、反応する太刀川さん。

 

「那須隊長は、攻撃に専念するようですからね…分からないですよ」

 僕が述べた瞬間、先程と同様鈴鳴に向って、弾が飛んでいく。

 

「那須隊長の猛攻が先ほどより早くなっている」

 鈴鳴も同様に、盾でそれを防ぎすぐに攻撃に転じようとするが先程よりも早くバイパーが降り注いでくる。

 

「一も今言ったけど、とりあえず那須は攻撃に専念するみたいだな。別に何の仕掛けもない。意識の問題だ」

 三上先輩がその言葉を聞いて、その意味を聞き返してきたので応じる太刀川さん。

 

「シールドの代わりに自分の背後を浮遊してるバイパーで、三雲の攻撃を相殺。できないなら動いて避ける。バイパーのクッションがある分自分に届くまでの時間があるから避けやすくなる…当たった分威力も減ってるしな」

 太刀川さんが述べた通り、三雲先輩の攻撃を自分の背後にあるバイパーで相殺しながら、鈴鳴の攻撃をし続ける那須先輩。

 ここまで、三雲先輩を無視とは…あっちから仕留める気満々だな、那須先輩。

 

「ただ、この攻撃方法ってこいつがたまに使うやつなんだよな、シールドをホルダーに入れないこと多いし」

 背後の弾が無くならないうちに、鈴鳴の攻撃を、建物を使って避けながら無くなったバイパーを補充。

 背後の弾が無くなりそうなときは、前の弾で鈴鳴の攻撃を殺しながら避け、補充を繰り返す。

 防御だけかと思わせて、ときどき牽制のために三雲先輩を攻撃。

 

 まあ防御と攻撃がどちらもできるってだけがこれの取り柄だからな…構わず攻撃しようという意思のあるとき以外はこれ効率悪いだけだし。

 ほら補充速度が命な分、トリオンのこと考えられないしね…トリオン消費激しい。

 

「鈴鳴第一の攻撃が上手くできなくなった隙に三雲先輩を狙う」

 まあこの状況だと、これもいい判断になるのか…焦ってる気もしなくもないけど。

 

「お前が那須とやり合ってたのは本当だったんだな」

「まあ、教えたわけじゃないんですけどね…いつの間にか使われてました」

 太刀川さんの呟きに反応する。

 …あの、わざわざマイク取って作戦室に入り浸ってたこと国近に言うわーとか言わないでいいと思うんですよ、今言うことじゃないでしょ、それ。

 

 那須先輩のトリオンが切れるのが先か、

 那須先輩が全員仕留めるのが先か

 

 

 そういう状況の中、三上先輩が話題を変える。

 

「雨取隊員が橋に向っていますが、これはどういう狙いなのでしょうか」

 西岸に移るつもりなんだろうなと思っていると、太刀川さんがその疑問に答える。

 

「雨取は、橋でやり合ってる空閑のサポートだろうな、1対2のほうがいい。まあさっきも言ったけど、那須の射程に入らないように移動してるのもあるだろが」

 サポートってのはあっているだろうけど村上先輩を撃つことはないだろうな。

 人が撃てるかは分からないけど、第2戦から今までの動きからして、地形変更だけが現在の雨取さんの仕事だろう、それだけは自信持って言える。

 

「さあ…どうかな」

 そう思っていると、迅さんが画面を見て呟いていた。

 

「何、お前見えてんの」

「さあー、どうかな」

 

 …西岸の画面に移っていく。

 

 

 

「一方西岸の川岸では、空閑隊員と村上隊員が斬り合っている」

 スラスターでレイガストを加速させ、横に振り切る村上先輩の攻撃を下にしゃがみ避ける空閑先輩。

 その後、一歩踏み込みながら下から上に斬り上げる。

 

 その攻撃を身体を後ろに傾け避けた後、村上先輩は、着地した瞬間を狙って後ろから勢いをつけながらレイガストを振り降ろす…スラスターも付与されている分速さが増している。

 空閑先輩は回転してがら飛び上がりながらスコーピオンを当てることでこれを無傷で()なす。

 

 しかし勢いまでは殺しきれなかったようで、空閑先輩は横の堤防まで飛ばされてしまう。村上先輩は、その様を目で追いかけながら踏み込んで弧月を振り降ろす。

 

「追い込まれたと思われた空閑隊員。ここでもぐらの爪(モールクロ―)村上隊員を襲う」

 空閑先輩が堤防に足をつけた箇所からスコーピオンが伸び村上先輩の首を掻っ攫おうとする。

 

「風間さんがたま~に使うよな、これ。スコーピオンが地面とか自分の体から伸びてくるやつ。なかなかやるなーあいつ」

 それ解説なんですかね…感想にしか聞こえないんですけど。

 

 

 その刃を避けながら一歩下がったところを、空閑先輩は堤防を蹴った勢いのまま左のスコーピオンを横に振り切る。これをレイガストで防御する村上先輩。

 

 これで終わりかと思ったが次の一手を打つ空閑先輩。

 

 レイガストを左腕のスコーピオンで使わせながら、右足を回しながら村上先輩の顔めがけて蹴りにかかる。

 体術による攻撃自体は戦闘体に効かないため避ける必要はないように思うかもしれない。

 だが、今回は違う。

 

 回した足の指先からスコーピオンを延長させた攻撃であるからだ。

 

 これを弧月で受け切る村上先輩。

 

 もう一撃と言わんばかりに、膝からもスコーピオンを真っ直ぐ延長させて首を狙う…これは首を右に傾けることで避け切る村上先輩。

 

 スコーピオンを合計3つ使用してるように見える人もいるだろう…というか知らない人はそのように考えても仕方はないと思う。

 

 スコーピオンは、先程太刀川さんが述べたように体から延長する攻撃方法が取れる…これはスコーピオン自体も使用者の想像通りに変形する仕様になっているからだ。

 

 その応用として体の中で枝のように剣先を分割させて体の外に出すという方法が取れ、結果としてスコーピオンを一度に二度使用してるように見える攻撃が完成するわけだ。

 

 これは、そのあれだ…

枝刃(ブランチブレード)

「そうそう、それ」

 …そうそう、それ。

 どうやら太刀川さんも分からなったようで、三上先輩が答えを教えてくれる。

 

 

 2人の斬り合いはというと、首への攻撃避けた村上先輩が、スラスターで押し返していたところであった。

 空中でその加速を受けてしまった空閑先輩は、勢いに押され後ろに飛ばされていく。

 

 村上先輩は加速の勢いが切れる前に飛ばされる空閑先輩に向け、レイガストを横にして投げつける。

 

 後ろに飛ばされている空閑先輩の後を追いかけるレイガストは、空閑先輩が橋を支えていた柱に衝突したのと同時に柱まで到達する。

 要するに空閑先輩は、柱とレイガストに挟まれ身動きがとれなくなったわけで、村上先輩の弧月が柱諸共空閑先輩を殺しにかかる。

 

 状況を察した空閑先輩は、後ろの柱をスコーピオンで斬り刻み、村上先輩の追撃を間一髪で逃げ切る。

 

 

「スコーピオンを上手く使っていますね。あの武器は、その性質上臨機応変に一秒一秒の戦況の変化に対応するしながら次の一手を打てる人向けですからね、いいと思います」

 この斬り合いを見て思わずそう述べる僕。

 

 その言葉を聞いて、確かに空閑は上手いとは思うけどと前置きをして口を挟む太刀川さん。

「ただ、村上は見たことある攻撃なんて食らわないしな…どんだけ上手かろうが鋭かろうが厳しい、いや無理があると言っても言い過ぎじゃないくらいだ」

 少し溜める太刀川さん。

 

「…あいつはただ単に強いんじゃない。下地がきっちりしてる、空閑には悪いけど正直無理だろう」

 太刀川さんはそう述べた後、お前もそう思うだろうと迅さんに振る。

 

 

「まあ、そうだな…良くても『8:2』だろうね、ただ」

 画面を見る迅さん。

 

 

 

「あいつだって乗り越えて手に入れてきたもんがある。俺は賭けるよ、遊真が勝つ方に」

 

 

 斬り合いのなかで数歩下がった空閑先輩の左手には小さな光の珠が出現する。

 

 

 

 





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