戦闘員オペレーターのボーダー記録   作:チビメガネ

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第30話 学生の本分は寄り道です!!  その2♪

 左に曲がること数メートル。店までもう少しだ…というか看板が見える位置まで来ている。

 

 曲がってから足が重くなっているのにも関わらず、歩くスピードをまったく先輩に対して僕は聞く。

「あの…先輩。本当に入ります?」

 やめません?

 清々しい顔でいじられるの分かるんですけど…帰るまで精神持つ気がしない。

 

 その問いかけに対して、先輩は、当然の一言を放つ。

「入るよー」

 …ですよね。

 

 観念するしかないか…今引き返すと言ったってねえ、あれだよ。この人は、違う方法で疲れさせてくるだろうし。

 

 例えば…家とか。

 それは僕の行きたい場所ですね。想像じゃなくて願望になってるよ…我ながら重症だよね、本当に今更だけど。

 

 僕が、これからのことと自分の手遅れとしか言えない思考回路に思わずため息を吐いていると、先輩が聞いてくる。

 

「何がそんなに不満なのー」

「いや…不満というかその」

 僕は、先輩から目を逸らしながら口ごもる。

 不満というわけではないし…半分自分の気持ち悪さですし。

 

「恥ずかしいじゃないですか、ね?」

「そうかな」

 そう言いながら、先輩は手を僕の顔の前に持ってくる。

 

「人前で手は繋いでるのにー」

 そして、先輩はニヤニヤしながら僕に言い放つ…ヤバいこれ早く切り上げないとれる!!

 

「早く、入りますよ。食べるんでしょ!!」

「はいはーい」

 繋いでる手を素早く離して、急ぎ足で店まで向かい、扉を開ける。

 

「いらっしゃいませー」

 鈴の音が扉を開くとともに聞こえる。

 

 …しまった、店内入ってしまった。

 

 

 ひとまず、あれだな。店内から出よう、話はそれからだな。

 敵の罠に嵌められたときには、冷静に状況を見つめて自分のできることを考える。ここで焦るのは敵の思う壺、まずは深呼吸。

 

 東先生の声で心のなかで復唱した後、辺りを見渡す。

 

 扉から真っ直ぐ何歩か歩くとレジがある…そこまでに椅子が6席ほど置いてある。おそらく席が空くのを待っている客のためにあるのだろう。今日は例の男(イケメン)がいるのにも関わらず待っている客がいない、凄く珍しい…。

 

「お客様…1名でよろしいですか?」

「ちょっと待って下さい。もう少し落ち着きます」

「は、はぁ…」

 普段はイケメンの影響で、女子高生が店外に出るほど列ができて、黄色い声が飛び交っている。きちんと列になっているあたり三門市の治安の良さが出ていると思う。(但し黒い服、黒いサングラス+マスクでガラス越しにイケメンを覗いていたA級5位の女子は除く)

 

 そう、女子高生はきちんと店内に入り拝んでいるのである…一人で食べていると少しうるさいので静かにして欲しいと思うときが多々ある。

 何度も言うが女子中学生の場合は女子高生とは違う。例を挙げると、この前ガラス越しに覗いていた女子は店内に寒いんだから入ればということを言おうと、店内から電話をした際には…

 

 

「なっ!!べ、別に見てたとかじゃないわよ!!…ええ。というか、別に烏丸先輩のバイト先なんていないわよ…そう、わ、私は今防衛任務よ。そんなオシャレなところにはいないわ。残念だったわね!!」

 といって立ち去っていくぐらいである。彼女らからしたら、イケメンは神々しいくて近寄れないのかもしれない。

 

 …何を防衛するんだろうか、あの時から凄く気になっている。

 

 

 大繁盛になった影響で、イケメンの給料はだいぶ上がり店内は改築までこぎつけるたようだ。イケメンさまさまだ、イケメンは世界を救うと店長が言ってた。

 

 

「改築して確かに大きくなったよな…」

「ええ…」

 本当に小さいころから常連の僕からしたら、ここまで大きくなってくれて嬉しい限りです…ん?

 

「いらっしゃいませ」

 烏丸先輩のご登場である。

 

 

 

 

「先輩。注文とか取りに行かなくていいんですか?暇じゃないでしょ」

 うん、サボるのはよろしくないですよ。

 

「今日は少なくてな…それで暇してたら、後輩が話しかけたのに無視する客が入って来たって言われてな。見てみたらお前だったといわけだ」

「ははは、すいません」

 ペコリと頭を下げる僕と、頭を軽く叩く烏丸先輩。

 

「1人でいいか。案内する」

「いや、大丈夫です。今日は少し遠慮します」

 そんな驚いた顔しないでよ、僕がパフェを我慢できないと思って…も仕方ないね。いつも息切らしながら来てますもんね。

 

「…熱あるのか、お前」

 手をでこに当ててくるイケメン…やめて!!周りの女子の視線が痛い。

 

「いえ、そうではなくてで「はじめくん、早いよ。急に走らないでよー」」

 僕が撤退を試みようとしてるなか、頬を赤くし息を切らしながら国近先輩が追い付いてきてしまう。可愛い…じゃなくて早く店内から出るべきだった、くそっ。

 

 

 国近先輩を見た烏丸先輩が一言。

「なるほど…」

 絶対この人スイッチ入ったよ。僕を見る目が小南先輩をからかうときと同じになったもん。

 

 僕がそんな危惧をしている一方、国近先輩は烏丸先輩の方を向いて言う。

 

「とりまるくん、こんばんはー」

「こんばんは国近先輩、お久しぶりです」

「そだねー」

 国近先輩が挨拶をすると、烏丸先輩がそれに応じる。

 

「はじめくんが何か言ってた?とりまるくん」

「ええ…」

 国近先輩の質問に、烏丸先輩は溜めてから言う。

 

「席に案内しようとしたら、遠慮しますと言われました」

「思ってた通り、はじめくんこの期に及んで逃げようとしましたなー」

 頬を人差し指でグリグリされる僕。

 

「いや、国近先輩。待って下さい、違います」

「ほうほう、聞きましょう」

 僕が言おうとしてるのを止めて、烏丸先輩が咳払いをして訂正をする…嫌な予感しかしない。

 

 

「一人でいると先輩が僕の座ってる席を探すのに苦労するからとりあえず先輩が到着するまで…遠慮しときます、だそうです」

「なるほど…それなら仕方ないね」

「ですね」

 お互いに星を出しあう先輩達…烏丸先輩はわざとなのは言わなくても分かるけど、国近先輩も分かってるな、これ。

 

「えっと…改めて。はじめくんお待たせ」

 国近先輩は僕の真正面に来て優しく笑いながら言う…もう言わなくても分かりますよね?

 

 そう言われた僕に烏丸先輩が耳元で言えと言ってくる言葉を言うことになる僕。

「全然待ってないよ、ゆ…先輩」

 そこは下の名前だろじゃねーよ、イケメン。そしてなんだよ、この茶番劇…やる意味ないだろ。

 

  僕の様子を見た烏丸先輩が小声で続けて言ってくる。

「その割に顔赤いぞ、はじめ」

「…恥ずかしいのには変わりませんよ!!」

 なんで急に名前呼びが出てくるんだよ…脈絡なさすぎるでしょ、前後関係は大切よ?

 それに…そんなに楽にステップ踏めたら苦労しないよ!!

  そして、次期待してるじゃねーよ、まだ続くのかよ。いきなりすぎて対処できないでしょうが…この店出たとき、生きてるかな。

 

「じゃあ、案内しますね」

 とりあえず満足したような顔をしながら、烏丸先輩は席への案内を始める。

 

 

 

 

 

 

 

「こちらがメニュー表になります」

「ありがとね」

「いえいえ…それでは注文が決まりましたら呼んでください」

 席に案内した後メニュー表を渡しながら、烏丸先輩はお決まりの言葉を言って去ろうとする。

 

「久しぶりだから分からないんだけど、オススメってなんだったっけ?」

 立ち去ろうとする烏丸先輩を呼び止めて、国近先輩は聞く。

 

「オススメは、当店売上一番の…」

 烏丸先輩は、そこまで言いかけて言い直す。

 

「いや、カップル限定の商品がありまして」

「おい、こら」

 そこまで言われて遮る僕。

 

「なんだ、はじめ。文句ないだろ、国近先輩に説明してるんだから」

「そうだよ、はじめくん。私が文句ないからいいんだよ」

「いや…この場に僕もいるから言い分ぐらい言ってもいいでしょ」

 そうだ、僕の意見も尊重すべきである、この2人はからかう気マックスだとこちらの意見はスルーするのだ。止めなくちゃならない。

 なぜなら、僕の心臓が持たないから!!

 

「言ってみろ」

 僕の顔を見て、意見を聞く気になったのか烏丸先輩は、促してくる。

 

「カップルじゃないでしょ。まだ先輩と後輩ですよ…全くいつまでもかららえると思ったら大間違いですよ。僕だって言うときは言うんですから」

 我ながら決まったな、うん。完璧。

 

 そう思いながら、一人目を瞑りながら頷いていると先輩達2人が固まっている状況になる。

 ふふふ、僕だって言うときは言うんだ…驚いてる感じではないな、どうしたんだろ?

 

 

「国近先輩聞きました?」

「うん、聞いたよ」

 …何か言いましたっけ、僕。

 

「すいません、先輩。録音機は持ってなかったです」

「問題ないよ、言ったということで1ヶ月はもつから」

「なるほど…確かに」

 ヤバい、何がヤバいって二人ともよく分からんけど本気だってことが。

 

「僕…何か言いました」

 目を開けて2人に聞く。

 

 咳払いをして、烏丸先輩が言う。

「カップルじゃなくて…の後なんて言ったか考えてみろ」

 否定してたなかで言ってたのは…うん。

 

 僕が腕を組みながら考えていると、烏丸先輩が答えを言ってくれる。

「お前、『まだ』先輩と後輩だって言ってたぞ」

 …マジで?

 

 それを聞いた僕は、手を右へ左へ動かし始めて、

「それは、そのあれですよ。ええ…その」

 『それは』までは聞こえる音量だったのに、『その』を言ったときには小声になってしまった。

 

「どう変わっていくか楽しみですね」

「今回の戦いでは負けましたが、はじめく…二階堂隊員としては成長を見込める1戦です。次回が楽しみですね」

 そこ、2人して親指立てなくていいから!!

  その感じは、余計に恥ずかしいから!!

 

 

「あはは、キャパシティがオーバーしちゃったかな?突っ伏してるよ…うん。これお願いねー」

「分かりました。出来次第持ってきます」

「よろしくねー」

 僕がテーブルに突っ伏してる一方、国近先輩は注文をしていた。

 

「自分で言ったんだから、照れるのはどうかと思うよ」

 数秒の後、顔を上げた僕に言ってくる先輩…そうですね、僕も流石にそれはどうかと思います。

 

「でも…今の段階で、まだと言い切るということは色々と考えてるってことだよね、お姉さんは感心しました」

 …どうしてそういう考えに至るのでしょうか?

 まだって単なる願望だと思うんですよ、思春期男子的に。

 

「いや、そういうわけではないと思いますよ?」

 あくまで他人事のように言ってしまう僕…へタレって言うな!!

 

 それに対して、先輩の返答はというと、

「んー?何か言った?」

 難聴ってそういうことではないと僕は思うんですよ?

 そういうのがヒロインに希望を持たせちゃうんだよ?分かってる?…って僕ヒロインじゃないか、性別的に。

 

「いや、別に…何でもないです」

「そっか。じゃあ期待してるよー」

 

 

 

「お待たせしました。当店のストロベリーパフェでございます」

 僕の告白へのハードルが上がるなか、パフェがテーブルに置かれる。

 

 

 

 

 

「さて…食べましょうか」

 袖を捲り始める先輩…可愛い、じゃなくて言いたいことが1つ。

 

「スプーンが1つなんですけど」

「そだね」

 いや、そだねじゃなくてですね。

 

「烏丸先輩!!どういうことですか。スプーンたくさんあるでしょ。持ってきてください!!」

   ちょっととりまる!!どういうことよ!!スプーンは2つって言ったじゃない!?

 

「今日ほら混んでるだろ?それでスプーン足らなくて…すまない」

 何その、無駄な演技力…というか混んでない言ってたじゃないですか。

 それにスプーンが足らないって店としてもどうなのよ。

 

「そうなの?」

「ええ…こちらの不備です」

 舌打ちすんなよ、そういう無駄な演技力いいんだ。早く持ってこいや。

 

「じゃあ仕方ないね」

「はい」

 2人して星を出す…仲良いですね。

 

「では…楽しんで」

「りょうかーい」

 烏丸先輩は離れていく。

 

 

「さて…食べますか」

 スプーンをついに持ってしまう先輩…覚悟を決めよう。

 

 いいかこれはあれだ、ここでグチグチやってたら店の回転率悪くなるから食べるだけだから…ほら今日混んでるし。

 そう、これは決して先輩と食べさせてもらいたいから口を開けようとしてるのではない…嘘です。凄くしたかったです。

 

「はい、あーん」

「はい」

 生クリームが口の中に広がる…いつもより味が分からない。ただ甘ったるいことだけは分かる、それだけは…ね?

 

「どう?」

「…おいしいです」

 味なんてろくに分からないですね。

 

「分かってないでしょ、ほれもう一口。はい、あーん」

「はい」

 生クリームを付けたイチゴを口に入れられる僕。

 無理やり入れるのやめてください!!…この人楽しんでるよ。

 

 先輩が次はどうしよと悩んでるなか、隣の席の客が手を真っ直ぐ挙げて店員を呼んでいた。

 

「これをお願いします!!」

「ストロベリーパフェでよろしいですね?」

「はい!!」

  注文を聞きに来た女性店員に言うその男子…こっち睨まないでよ、怖いよ。

 

「はい、コンフレークの部分」

「どうも」

 …正直恥ずかしさより、怖さが勝ってるんだけど。

 すいません、やめますから睨まないで。

 

 殺される勢いだったので、先輩に言うことにする。

「あの…先輩。やっぱりやめません?色々まずいですって」

 後ろに般若が見えるのは気のせいじゃない…はず。

 

「気にしない、気にしない。ほい、あーん」

 気にするなってほうが無理なんですけど。後ろからオーラ見たいの見える…気がする。

 

 そこで、国近先輩が言うのだった。

「那須ちゃんの家入ったよね?」

 …へ?

 

「あれは…その不可抗力じゃないですか」

「ほうほう」

 肘をつきながらスプーンをくるくる回す先輩。

 

 というか

「…誰から聞いたんですか」

「んー、本人だよ?」

 女子の情報網が怖いよ…ヤバ過ぎでしょ。

 

「言うことはあるかね?」

「…黙って食べます」

「よろしい」

 差し出されるスプーンに口を開ける僕。

 

 

 そして、先輩はあの客のほうを向いて一言。

 

「…というわけだから、ね。邪魔しないでね?」

「…了解しました」

 これでもかと笑顔の先輩の顔から目を逸らしながら言う男子。

 

 

 

 

 

 

「ストロベリーパフェお持ちしました」

 沈黙を破ったのは、女性店員の声だった。

 

 

 

 

 

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