「またか…ワンパターンなのもあれだぞ、一」
左手で鞘に指をかけながら上から降ってくる瓦礫を見上げたままの相手は、数メートル先にいる僕のほうを向きながら、こちらに聞こえる音量で言ってくる。
「旋空弧月」
そう呟いた後に現れた半月状の斬撃により瓦礫は小さく刻まれ、僕への道が塞がることなく、相手がこちらに向ってくる。
「おっと、あぶねー」
相手は、右の路地から相手の腹めがけて飛んできたバイパーを何食わぬ顔で避けていく…まさか仕留められるとは微塵も思ってないけど。
避けられたバイパーは陰に隠してあった爆弾に着弾し、周りを煙幕が覆っていく。
「次は、右にいったか…また追わないといけないのか。なかなか面倒くさいな」
と言うことを煙のなかで言ってそうな相手を、バイバーを放った上でに放置して、右へと曲がっていく僕。
何度か路地を曲がっていき相手との距離を離したことを目視で確認した後、もう一度右に曲がる。そして、ばれないように顔だけ覗かせる…もうこっちに曲がって来たな、こんなことならレーダーでもう少し真面目に位置把握しとくべきだったわ。
息を吐きながら自分の行為を反省しながらこれからすることを頭の中で確認していく。
威力の確認はした。相手のシールド枚数も確認した。相手がどう動くかのイメージはできてる。那須先輩の動きも本人ほどでないにせよ真似はできてると自信を持って言えるぐらいにはやってきた。
「…よし」
両頬を手で叩いた僕は、相手が視認できる位置に移動する。
「へえ…那須の」
近づいてきた相手が驚いているのが分かる表情をしているのがここからでも分かる。
「バイパー」
そう言って現れる2つの円を描いているキューブの数々は、僕の周りを浮遊していく。
「さっさと跪け、格上野郎」
「やれるもんなら、やってみろ。一」
不敵に笑っている相手に襲い掛かるアステロイド。
太刀川さんとの5本目が始まる…。
ボーダー支援課室
那須先輩の家に寄った後、支援課室に戻り餅k…太刀川さんと待ち合わせてすぐに模擬戦をして帰ろうと思っていたのに…
「お前さ…最近どうなのよ」
「どうって、何がですか…」
2人してソファに座りながら、お茶を飲んでのんびりしていた…餅上手いな。
僕が窓の方を見ながら、小さい声でそう言うと、太刀川さんは、お茶うめえと言った後同じように窓の方を向いて
「いや、ほらあれだよ、あれ」
あれってなんだよ、それで通じるわけないでしょ…全くそんなんだから大学生活危ういんだよ。うん、なるほどあれって…あれか。
「単位は僕に頼んでも、手に入れられないですよ」
「お前な…そうじゃなくて、あれ」
そう言いながら、頭をくしゃくしゃされる僕…というか頭くしゃくしゃしながら、それにそれは風間さんに頼むから問題ないって言ってますけどまずいと思いますよ?風間さんのストレス的な意味で。
そして手を頭から離して、咳払いを1つしてから星を出しながら一言
「国近とどうなの…具体的にはいつ押し倒すの」
「いや、本当に何言ってんの…あんた」
決まったという顔でこちらを見てくるA級1位隊長。
僕が冷静にそう切り返すと、餅をもう一口頬張りながら言い返してくる。
「今の言葉を二ヤつきながら言う奴に言われたくないな」
「なっ!!」
…全然冷静じゃなかったようです、まあ知ってたけど。
そこで、ドンと机を叩いて立ち上がり太刀川さんを指さしながら言い放つ。
「あんた、二十歳超えてんでしょ、大人でしょ」
「そうだな…餅うめえ」
おー、身振り手振りすげーじゃねーよ…はい、僕が手を動かしてるからですね、知ってます。
そんな他人事みたいな態度取れるのも今のうちだけだから、この一言でお前を倒す!!
「何中学生の会話みたいなこと言ってるんですか!!もっと落ち着いた大人らしい会話をしてくださいよ」
もう一度机を叩いて、相手に突きつける僕…きまった。
その一連の動作を見終えた後、太刀川さんは最後の一口を放り込みながら言うのであった。
「いや、お前中学生だろ…別によくね」
そう言い放つと、ストーブの音だけが室内に響いていく。
「…行くか」
「…ですね」
太刀川さんが口を開いたことで僕達は動きだし、ブースに向うことにする。
1戦目
MAP選択は互いに拘らなかったので、市街地MAPでの戦闘になった。位置関係は正確なことはよく分からないけど、視界には入っていないのに加え、レーダーでもそれなりの距離を保っているように思える…まだシューターとしての距離でもないと言ったところだろう。
太刀川さんの間合いに入らずに一定の距離を保ちながら仕掛けるしかない…今日はハンドガンホルダーに入れてないしね。
レーダーを見ながら、今の状況の整理をしながら、自分の今日のやり方をもう一度頭の中で復唱しておく。
那須先輩にも手伝ってもらったんだから、今日こそは白星を獲りにいかなければいけない。これで何もできず、また負けましたじゃ本当に申し訳ないからな、うん。
「バイパー」
射程圏内に入るか入らないかの位置に太刀川さんが来たことを確認し、片手にキューブを浮かび上がらせ分割させていく。
そして上空に向けて放ち、目標の位置まで降下させていく弾道を引く…後は太刀川さんがこっちに来てくれさえすれば、問題ない…まあ近づかれたら終了だからそれには気を付ける必要があるけど。
そう思っていると、右の路地から太刀川さんが姿を現してくる。
「さて…始めようか」
当然のことながら、無傷での戦闘開始である。
「アステロイド」
太刀川さんがこちらにそう呟いてすぐに、弧月を両手で抜きながら踏み込んでくる。
僕は、それに合わせてフルアタックの構えをして、計60個ほどの弾を生成する。
「流石にそれなりの量あるな…」
「それはどうも」
一応の確認も兼ねているので、とりあえず15個の弾を放射。
太刀川さんは、それを左右両方の弧月で自分の身体から逸らさせていく。
「褒めてくれるなら、ついでにやられてくれるとありがたいですけど…ね」
相手の踏込が右にいき重心移動が始まっていくときを見計らい、10個程度の弾を腹の位置に狙いを定めて撃つ。
その弾道を見た太刀川さんは、軽く口角をあげながら、左の弧月を鞘に収めて左手をもう一方の弧月の峰に当てていく。
「まあ、出水ほどでもないけど…な」
右への踏み込みをやめ、後ろに軽く飛びながら向ってくる弾を一振りの攻撃で相殺させる。
「相変わらず、威力半端ないですね…あんたの旋空弧月」
「だろ」
…そのドヤ顔はどうかと思いますけど。
その会話をしてすぐ、踏み込んで左斜め上に斬り上げてくる。
「やっべ…」
一度左手を当てる予備動作を見てしまった分、一瞬出遅れてしまうが、弾を数発自分の前に飛ばして斬撃の受け流しをする。
「やるな」
「どうも…」
褒めるなら攻め続けるのはやめて頂きたいですね、本当に…弾数削らずに避けるはきついんですから。
踏み込みながら近づいてくる太刀川さんと一歩ずつ下がっていく僕…いくら弧月が耐久力がそれなりに高いと言ってもアステロイドで受け続ければ、消耗していくはずで、そうすれば片方のも引き出せるはず。
攻撃の応酬のなかで、互いに建物に背を向けている立ち位置になっている中、決めようと全ての弾を太刀川さんに向け、放射していく。
太刀川さんは、先に着弾する弾を受け流しながら、弧月を鞘に収めていき、反対の弧月を抜き、背中に刀を延長させていく。
その刀は建物を二等分、四等分としていき瓦礫が太刀川さんの周りに落ちていく。
「人の真似事とかないわ…」
「お前以外だって建物ぐらい利用するだろ」
瓦礫が飛んでくるアステロイドに当たり相殺していく。
ただ…それぐらいは動けることくらいは、こちらも分かってるわ。
心のなかでそう言いながら、キューブを生成しメテオラを放とうとする僕…しかし、
「数秒遅いぞ、一」
一呼吸早かった太刀川さんに真っ二つにされる。
「弾を最初から全弾放つとかしても良かったと思うぞ」
僕が緊急脱出(ベイルアウト)するなかで、僕の方を向きそう言い放ってくる。
…全弾したらしたで、全て受け流せるくせによく言うよ。
まあ今回は、オプションきちんと2つ入れてることが分かっただけいいかな…入れてないのに警戒するのは、前にやられたことだから特に嫌だしね。
『二階堂 ダウン』
そのアナウンスがMAPのなかで響いていく。
2戦目
「本当に厳しいな、これ…」
相手の刀が頬に
「メテオラ」
太刀川さんを一歩下げるために、弾速重視の一発を足元へ撃ちこむ。
「おっと」
その弾道を見て、当たる前に蹴り上げて下がっていく…多少浮き上がってるならいける。
「バイパー」
生じた煙を通り抜けて数発と、回り込んで数発。太刀川さんに着弾させようとする。
しかし、金属音が聞こえたのと同時に、煙を通ってきた刀が自分の右の肩をすり抜けていく。
「そんなんでやられるわけないだろ、一」
軽く笑っているように見える太刀川さんが、消えていく煙のなかで見えていく。
「分かってますよ…太刀川さん」
自分の身体に纏うようにアステロイドを浮遊させていく。
まずは、シールド一枚確認したから…後もう一枚か。
「じゃあ…いきますよ」
「ああ…来い」
このやり方トリオン消費激しいから使いたくないんだけどな…手札を切らないと、あちらもきらないからな。そう思いながら、前に浮遊しているアステロイドを全弾放射させる。
「おいおい、数多すぎだろ…」
「さっき全弾放射しろって言ったのは、どこの誰ですか…ね」
太刀川さんが片腕のみを下から上に動かしながら、弾を捌いていく…何度がこちらにも刀が届きそうになるが、後ろからの弾を飛ばし刀の方向性を変えていく。
「流石に厳しいな」
真正面に来た弾を弧月で相殺しながら、そう呟く太刀川さん…何発か捌くことができず、トリオンが漏れ出しているのが分かる。
「まだやりますよ」
後ろの弾で応戦しながら、前の弾を右手で補充していく。
太刀川さんはその様子を見て、僕の足元に矛先を変えていく。
「げっ」
いくら全身を纏うようにと言ってもぜいぜい自分の後ろ含め、腰あたりまでしか弾を浮遊させていない…足元にあると少し動きずらいし。
僕が何歩か右に下がって避けようとするものの、刃の形はそれを追いかけるように多少曲がっていく。
本部長然り明らかな変形しないけど、多少の円軌道にできるのはやめて欲しいな…足取られたし。
その様子を横目で確認しながら路地に曲がっていく太刀川さんに、アステロイドを放つが塀に阻まれ無傷で逃げられる。
現在、足からトリオンが漏れている…相手もだけど。そして、こちらの攻撃は弾数の火力に任せたトリオン消費度外視の攻撃。
相手のトリオンが先に底をつくってことはなさそうだし…やっぱり無理か。
「流石にやめないとか」
空を仰ぎながら一人そう呟いた後、太刀川さんを追いかけていく。
レーダーで確認をしながら、相手の位置にバイパーを放っていく。路地を数回曲がると、相手との位置が近くなっていく。
「メテオラ」
今の路地を曲がったと同時に、太刀川さんと僕の横にある両側の家が崩れていく。
この路地は、人が一人通ればいいぐらいの広さである。つまり、横に逃げ道など存在しない道。ここでの決め手は一直線上にある以上は、火力差だ…今のトリオンでどこまで行けるか分からないけど、相手の斬撃より多ければ、いける。
僕が、両手を下に向けると、1つのキューブが何分割にもされていく。
「アステロイド」
手から真っ直ぐに相手獲りにかかる光の筋の中で僕が最後に見たものは…
「2戦目も俺の勝ちだ…」
最後の一振りを終え、笑っている太刀川さんの顔であった。
3戦目
「ほらほら、2戦目の威勢はどうした、一」
「じゃあ、辺り構わず斬り落とすのやめてくださいよ」
アステロイドを自分の身体と斬撃の間に置くことで自分は無傷で済むものの、刃先がずれることで電柱やら塀やらが壊れ、電柱に関してはこちらに倒れてくる。
「この前の迅さんとの戦闘で、始末書類を処理してのは誰だとおもってるんですかね…」
自分の頬に旋空弧月が
「…」
左足を踏み込んでもう一発攻撃を延ばしてくる。
「…」
次の攻撃を避けた影響で当たった電柱が僕の真後ろに倒れ込む。
「…悪いな」
僕の右目に向かってくる斬撃を半身で
「そう思ってるなら、負けてくれないですかね」
次の踏み込みの瞬間を狙い、バイパーを放つ。
「そりゃ…無理だろ」
右のバイパーをシールドで防ぎながら、左のバイパーは弧月で弾道をずらしていく。
「ですね」
「ああ」
僕の両手の向き方で察したのか、太刀川さんは両方の一度閉まっていた片方の弧月を鞘から抜いていく。
「バイパー」
相手の四方を取り囲む形の射線を引いた弾は、その設定通り四方八方から獲りにかかる。
「やばいな…」
そう言いながらも、2つの弧月で捌きながら後退していく太刀川さん…どこが厳しいんですかね?
そして、太刀川さんはそのまま民家に逃げ込んでいく。
「アステロイド」
民家の塀も崩れる一方太刀川さんは、窓を割り、家に侵入する。
「バイパー」
その窓から、太刀川さんを追っていくバイパー…この感じは当たってないな、階段登って行ったな。
「メテオラ」
そう言って出現した光の束は、そのまま上空に飛んでいき、降下。太刀川さんがいる家の屋根に当たっていく。
一つの弾が着弾したことを確認したら、急いでその場を離れていく。
「こんなとこでいいか…」
距離を取った後、曲がった路地で2つの違う種類のキューブを発生させながら合わせていく。
5秒、10秒と過ぎていき、自分でもキューブが合成していく感覚が伝わっている…あと
「見つけた」
そう思っていると、声が聞こえたので上を見上げる…来た。
「お前の合成弾の速さは知ってる。30はないけど、20は超えんだろ…少し前から始めたとは言えまだまだだろ、実戦ではな」
屋根から伸びてくる刀が僕の身体を貫通する。
『二階堂 ダウン』
ベットに転送される。
4戦目
「やっぱハンドガン持ってないみたいだな、一」
4戦目では先程以上に早く太刀川さんと遭遇してしまった。そして先程と同様、アタッカーが戦う間合いにせず、旋空弧月の一択の攻撃になるように距離を保っていた。
しかし弾を放った瞬間に踏み込み、弧月で迫ってくる弾を無理やり捌ききり距離を自分の間合いに詰めてきた。
ハンドガン持ってないのが判明した理由は、近づいて機動力落としのレッドバレッドを撃ちに来ないからだろう…最近の太刀川さんとの模擬戦での削り取る策としていたのだから、急にその作戦を取らなくなったら疑問が浮かばないほうがおかしい。
しかも3戦目の最後、合成弾を作るためとはいえ、接近した際の策もないのもおかしいという判断なのかもしれない…合成弾を捨てて移動するか、実は誘い込みで機動力を封じる手段があるかぐらいがすぐに思いつく策だ。
と色々偉そうに言ったものの、そんなの戦争時のときだけで模擬戦なら関係ない。今後勝つ手段を増やすために、好き勝手やって負けられるからやれること、そして学べることがある。
…すいません、東先生の言葉です。自分の言葉みたいに言いました。
この言葉を僕なりに解釈すると
「まあ楽しめや」
となる…違いますね、知ってる。
太刀川さんの弧月を避けながら、そんなことを思っていると太刀川さんが踏み込んでくる。
「となると…お前このやり方で仕留めようとしてる?」
その踏み込みとともに、右の弧月を斜めに斬り降ろしてくる。
僕が一歩下がって、それを
「よく言いますね…レッドバッレドを足に撃とうが、腕に撃とうがそこ斬り落として片足、片腕で僕の攻撃凌ぎきれるくせに」
僕は、その攻撃を横に避けて、弾速重視の小さなアステロイドを一発、相手の肩に放つ。
「おっと」
その場で体を傾けるだけでアステロイドを避けて、距離を保って構えなおす太刀川さん。
そしてこちらを見て言ってくる。
「来いよ、一。全て斬り刻んでやる」
「うわ、怖すぎでしょ」
180の大学生が、戦闘で笑ってるとか怖すぎですよ。
「二ヤついている奴が言う言葉ではないな」
大きく一歩踏み込んでくる。
そこにアステロイドを上から放射させる。
それに対して、相手は片方の弧月をオフにしたのかシールドを上に置きながらそれを防ぎ、もう一本の刀で喉に向って突いてくる。
それを2歩下がり避けながら、キューブを発生させる。
「メテオラ」
僕が呟くと家が崩れていく。
「バイパー」
「旋空弧月」
一方は瓦礫の間を掻い潜り、もう一方は瓦礫そのものを破壊しながら攻撃を繰り出す。
「アステロイド」
肩に何発か互いに入っているのか、トリオンが漏れているのが確認できる。
「まだまだ」
軽く口元を上げながら、両方の弧月を振り、こちらに踏み込んでくる。
そして、近づいて間合いに入り、腕を獲りにくる。
それに対して、もう一度弾速重視の小さなアステロイドを1つ足元に放ち、体勢を崩させようとする。
しかし、重心をずらされながらも、下からの半月状の斬撃でアステロイドは、吸い取られるように相殺され、そのまま僕の喉元に延びてくる。
その攻撃を間一髪のところで避け切りながら
「メテオラ」
次の弾を補充し、足元にばら撒いていく。
「またか…」
笑った相手が煙で消えていくなか、もう一度バイパーを後ろに移動しながらバイパーを煙に向け放射する。
そして、後ろに回り込んで威力を高火力に調整したアステロイドで背中に撃つ。
「体勢を崩された時の対処の仕方を工夫しろ、一」
壁は2枚…1枚は壊れているのを目視で確認していると、すぐに…
「終わりだ」
頭を獲られる。
5戦目
刃と弾が交錯し、打ち消しあいものは打ち消しあい、相手の元へ届くものは多少の傷を生じさせる。
確認はしたいことは4戦全て使って確認できた。
攻め方も、トリオンを気にせず押し通していくやり方で統一してきた…近づいたときの自分の反応を同じにするために、距離を保った上での削り取りのトリオン切れも狙ってきた。
あとは、攻めきるだけだ。
「メテオラ」
相手の方を視界に入れたまま、下がりメテオラを家に向って放射。
当然、弾が当たった2つの建物は崩壊していく。
「またか…ワンパターンなのもあれだぞ、一」
瓦礫を見て、歩みを遅くしていく相手。
そして、刀を抜き切り、上空に攻撃を加える。
今回の瓦礫はこちらに目を向けないためのもので、相手を止めるつもりでやってない…まあ、そんなんで止まらないことは嫌でも分かってるけど。
瓦礫が相手を避けていったところで、相手の右側にバイパーが飛んでくる。
「まあ…そういうことだろうな」
刀で射線をずらし自分に当たらないようにしていく…普通に身体を動かして避けろよ、その方向で爆弾を設置してんだから。
少し不安になったが、その射線の一部が爆弾に当たり誘発を繰り返していく…全てとはいかないけどある程度周りは崩壊するだろう。
1つの建物が崩れたのを確認したとこで、右に曲がっていく。
後は、ここでトリオン気にせず攻めきるだけ…先程までとは動いていく方法は何か月もかけて学んで来た。
曲がった先で、後ろを確認する…もう来てるのね。
一度深呼吸をする。
「…よし」
手のひらで浮遊していたキューブは自分の周りに円軌道で浮遊していく。
「へえ…那須の」
相手の笑っている姿を横目で確認しながら、向い側の路地に移動する。
「なるほど…」
バイパーを相手に放つ僕…背を向けていて分からないけど、全て捌き終えてるのは分かる。
相手が近づいてくるのを背中で感じながら、路地を曲がっていく。そして、等間隔でバイパーを相手に向けて放つ。
相手との距離は縮まることも開くこともなく、一定の距離を保っている。
相手が隙を見て延ばしてきた攻撃を塀を利用して避けていく。
その壊れた塀の中から庭のようなところに侵入し、裏に回って塀を飛び越え逃げていく。
裏手に回るのも面倒だったのか、直進するために家が崩れていく音が聞こえる…刀一本で家を破壊すんなよ、これが現実の場所だったらどうするつもりなんですか…人の事言えないけどね。
その行動に自分の事を棚に上げて引きながら、バイパーを数射線飛ばしていく。
遠目からでも分かるくらいトリオンが漏れているのが分かる…このまま押し切れるか、いやないな、さっきも無理だったし。
駐車してある車を背後に置いて、旋空弧月を躱(かわ)してバイパーを追ってくる相手に放つ。
そしてその後、後ろに振り向き、残り弾数の半数ほどを相手の四方に向けて放っておき、左に曲がっていく。
相手がまだ捌ききれてないだろうときに、弾を飛ばしてそこに留まらせるようにさせておく。
とは言っても稼げるのは、せいぜいこの距離なら20秒くらいだけど…それだけあれば問題ない。
2つのキューブを合わせながら、走っていく。
シールドは、火力を調整させたアステロイドであの威力。これなら、2枚は壊れるはず。旋空は保持してる。後は追いこめるかどうかだ。
混ざり具合から言って後10秒あるかないか…何かまずいところがあるはず、絶対。こういうときに攻められると思って放って思考停止で終了だから、負けるんだ、きっと。何かある、あの人のことで忘れてることはあるはず。
最後の路地を曲がりながら、目を瞑りながら思考を巡らす…。
『せんせい。質問があります』
『どうした』
『えっと。こなみせ…んぱいの倒し方を教えてください』
あの時の小南先輩の僕の戦闘のイメージは…
『なんか、グワッて感じでとりあえずブンブン振り回すって感じです』
『もっと分かり易く言おう』
東先生、すいません…小学生なんてそんなもんです。
『…えっと、火力?が高くて、なりふり構わずに行く感じです』
『なるほど…じゃあどう攻めていく』
今更だけど、本当に言わせるのが得意だよね…いやそういうふうに教育されてるだけか、うん。
『火力が高いので直接構えないように、最悪逃げること。避けられないようなら、あらかじめ策をうっておいて同じ土俵で戦わないこと…です』
『それはできたのか?』
『…あははー』
この前のときは、弱いわねーって挑発されて突進したんだっけな…そしてそのことを顔から察して見直す作業を課されたな。
『作戦がその場で崩されるんだな』
『…はい』
お茶を出してくる先生。
『それで?』
『えっと…たくさん作戦を考える!!』
何故、これで僕はドヤ顔で来たのか…。
『あ…えっと、土俵?ってなんですか。ごめんなさい、質問ばっかりで』
『あはは、いいよ別に。ゆっくりこう』
『はい!!』
あの人、小学生相手に分かんない言葉使い過ぎでしょ…僕が馬鹿なだけですね、はい。それが分かってるのか知らないけど、言うだけ言って意味は自分で考えさせるし。まあそのおかげで嫌でも考えるようになったんだけどさ。
土俵に上がらせないために、重要なことは自分の持ってるものより相手の持ってるものを、相手が持っていないと思ってるものを持っていることが重要だというのが僕の出した結論。
知られれば、相手にこちらのやり口が自然に発見される。そして、自分が相手に踊らされないためには相手の手札とやり方を知ることが重要である。
復習をしながら、相手に見えないように弾を放っておく。
今まで、トリオンを気にせず攻め続け、距離を保ちながらトリオン切れを狙うように動けていたつもりだ…近距離での戦闘ではなく中距離戦で。近づかれたら終わりの一発勝負。途中トリオン切れではなく、仕留めようとした動きをしたてもその戦法の延長線上とみればおかしくはない。そして、こちらもトリオンを消費してるのだから、この場で逃げてる最中追いつかれたのならば、節約してるとしても不思議じゃない…というのが僕の自分勝手な考え、というより願望だな、うん。
「見つけたぞ、一」
問題は相手だ。
振り降ろされる刀は、僕の横を通り過ぎていく。
「…」
まず節約なんて思わない…というかこれは本当に単なる願望だし。
「やっべ」
刀が延びていく…どうにか頬に当たる程度で避け切る僕。
ただ1つ相手が、分かっていないことは…
「こっちのほうがまずいだろ」
僕の合成弾の作成の速さは確実に上がってるということだ。
「こっちだって成長してんだよ…」
相手が上空を見上げている中、トマホークが周りに着弾していく。
本当に長かった…最近だよ15秒切るのが当たり前になったの。
弾で顔は見えないけど、笑っているのが見える…。
相手の持ち物は旋空2つとシールド2枚。ふつうのB級隊員なら急な合成弾の対応なんてできず落とせるだろう。
だけど、相手は違う…本物の1位。そして、この人なら燃えたときこそ防御ではなく攻撃を選択する。
でも、1枚と2枚じゃ違う…もちろん初撃までの時間が。
2枚あったら1枚壊れた瞬間に初撃への準備を。
2枚目の破壊で攻撃を。
相手が踏み台を踏んで加速した時に、見えなそうな死角に移動し、スコープを覗き込む。
銃声が響く。
目の前には腕が消し飛んだ相手が、立ちつくしている。
『トリオン供給過多 太刀川ダウン』
初めて聞いたそのアナウンスとともに僕は大の字に寝そべる。
「いやー、負けたな」
腕を組みながら、笑っている太刀川さん。
「よく言いますね…わざとでしょ」
「まあ、でも立ち向かわせたら話は別だろ…負けは負けだ」
何この人かっこいい…バカなのに。
僕の表情を見て、太刀川さんはチョップをしてくる…そして、
「あれだな…」
「何がですか?」
僕を指差してくる。
「お前さ、金曜暇だったりする?」
星を出して言う太刀川さん。
第29話に続く。
以下 長いです。
まずこれどっかで見たことあるって方は、物好きみたいでこの小説をよく読んでくれてるとお思います、ありがとうございます。
それで、本題。
トリオン度外視で攻めてトマホークは那須さんがランク戦で使いましたね。
元はといえば、この攻め方は7月の段階で決まってまして、色々とそれらしきことを書いてきたとはいえ、ランク戦のときの解説で、那須さんの戦闘スタイルの先入観で自分と同じ事考えてると思わなかったみたいな下りを入れるのを忘れてました、すいません…まあはじめが気づかなかったのは変わりませんが。
というわけで、土日に該当箇所の加筆をしておきます。
後は、あれです。
ハンドガンの件で、活動報告で気づいたことによる新たな訂正案があるので、本誌を読んでいる方は見てくれると嬉しいです。
次は、初の同格戦の那須さん戦です、頑張ります。
メイン
アイビス バイパー メテオラ アステロイド
サブ
アステロイド メテオラ ハウンド バイパー
…ハウンド使うの忘れた(笑)。