ラフィンアート・エイトライン   作:狂笑

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自身の中で奉仕部に見切りをつけ、部員を批判する。

これは八幡をラフコフ堕ちさせるための第一歩なので、御容赦ください。


第二話 決別とログイン

修学旅行、戸部からの依頼と海老名さんからの依頼。

これらを果たすため、俺は俺のやり方で解決した。

だがそれは――奉仕部崩壊の始まりだった。

 

 

 

 

俺が悪い。勝手に信頼して、勝手に任された気になっていた。俺の独断で動いた。

そして俺のやり方は否定された。

いつからだろう、この関係を失いたくないと思ったのは。

何かあればすぐに切ることができる関係だと思っていたのに。

だけど――

 

――もう、いいんだ――

 

いずれは失う関係だったのだから。ただそれが早まったにすぎない。

延命させることに意味はない。

だから俺は――諦めた。

 

 

 

諦めると不思議なものだ、アイツらに対する不満が次々に浮かんでくる。

 

『……まあ、あなたに任せるわ』

 

雪ノ下は確かにこう言った。だから俺は俺のやり方を貫き通した。それこそ、俺に一任されたと思って。

 

『あなたのやり方、嫌いだわ』

 

なのに雪ノ下はこう言った。

おかしいじゃないか。あのセリフは俺に一任したと考えてもいいじゃないか。それを否定するならもう自分でやってくれ。自分で考えてくれ。だって、俺のやり方が嫌いなんだろ?

俺はお前に合わせてやり方を変える真似はしないから、俺のやり方が嫌いなら、お前のやり方でやれよ。

 

 

 

『人の気持ち、もっと考えてよ……』

 

確かに俺はお前の気持ちを一ミリたりとも考えなかった。

だけどさ、考える必要ってあったのか?

海老名さんの依頼はともかく、戸部の依頼は奉仕部への依頼だ。

それを承諾した以上、私情を挟んではならない。奉仕部という組織人として動かなければならない。

だから、考える必要はない。

 

 

俺はもう疲れた。休ませてくれ――

 

あの日以来、俺は奉仕部に足を運ばずにいた。

運ぶ気にすら、ならなかった。

 

 

 

 

 

 

 

「おし、十二連勝。材木座、お前このゲーム弱すぎ」

 

「なにー、また我の足利義輝が負けただと―」

 

今俺は材木座の家で『BUYUU~歴史上の猛者たち~』というテレビゲームをやっている。

これは歴史上の猛者から五人選択し、それを指揮して戦うゲームだ。

材木座は足利義輝を大将に足利尊氏、足利直義、上杉謙信、柳生宗矩の組み合わせ。総大将クラスばかりだ。

ちなみに俺は徳川家康を大将に柳生十兵衛、本多忠勝、源義家、渡辺守綱だ。

……千葉の関係者、本多忠勝だけかよ。それも数年間上総大喜多の城主だっただけだし。

 

 

「ところで八幡よ、明日のことなのだが……」

 

明日、それは世界初の仮想大規模オンラインロールプレイングゲーム、通称VRMMORPGであるソードアート・オンラインが予定より約二週間遅れで開始されるのだ。

夏に商店街の抽選会でナーヴギアを当てた俺は、元々持っていた材木座と一緒に学校休んでまでしてソフトを手に入れたものだ。

 

遠い目をしながら回想していると、材木座が告げる。

 

「どうやら、明後日に鹿児島で曾祖父ちゃんの十七回忌があるらしいのでな、明日の午前中に家を出るそうだ。すまぬが、明日ログインできそうにない」

 

「そうか」

 

別に一緒にやる約束はしていなかったし、法事なら仕方がない。

なにより、沈んでいた俺を引き上げてくれたのだから、それで十分だ。

 

修学旅行後、他人に勝手に期待した癖に勝手に裏切られたと思って失望し、そんな自分に苛立っていたとき、材木座のこの発言が、俺を正当化させてくれた。

 

「お主の話を聞いて思ったのだが、雪ノ下氏も由比ヶ浜氏もお主を理解している気になっているだけではないのか。

我は『プギャーwww』と言ってやりたい。これはあくまでも我の見解だが、あのご仁どもは、いざ自分の想いと違う不都合なことが起きるとすぐ否定。お主の立場が低いことを利用して好き勝手しているし、可愛いから許してくれると勘違いしている。言っていいこと悪いこと、やっていいこと悪いことが色々な意味でわかっていない。お主から切って当然ではないか?」

 

だから俺は、今も平然としていられる。

もしかしたら、そう振る舞っているだけかもしれないが。

 

 

 

 

 

二〇二二年十一月十九日、土曜日の十三時

 

俺は自室のベッドの上で、ナーヴギアを被り、電子によって作られた異世界へと行く魔法の呪文を唱えた。

 

 

「リンク・スタート」

 

 

これから俺に待ち受ける、様々なことを、この時は知るよしもなかった。

 

ただ一つ言えるのは、仮に知っていたとしても、行動は何も変わらなかったということだ。

 




うん、今回失敗したかも。

すいません

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