ラフィンアート・エイトライン   作:狂笑

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第四話 救出?

失神とは、脳の血流が瞬間的に滞り、機能が一時停止する現象だ。

虚血の原因は、心臓の血管の機能異常、貧血や低血圧、過換気など色々あるが、VR世界にフルダイブしている間は、現実の肉体はベッドやリクライニング・チェアで完全に停止している。

まして、このデスゲーム《SAO》に囚われているプレイヤーの体は現在各所の病院に収容されていると予想され、当然健康状態のチェックや継続モニタリング、必要に応じて投薬すら行われているはずだ。

肉体的な以上で失神するとは考えにくい。

つまり、いきなりパタリ、と倒れるプレイヤーはほぼ存在しないだろうし、もし現れたのならNPCの可能性を、クエストの可能性を疑うべきなのだ。

だが周囲を見渡してもどこにも他のNPCは見当たらず、近づいても遠ざかっても金色のクエスチョンマークは出てこない。

今俺の前で倒れた奴は何度見直してもグリーンカーソルしかない。

つまり、こいつはプレイヤーなのだ。

これが何かのクエストの合図ではないのだ。

まあ、そんなことはどうでもいい。問題はこいつをどうするか、だ。

 

助けるか、見捨てるか。

 

このフィールドはモンスターの湧くスピードが速く、もしここで俺が見捨てればコイツはモンスターに殺されるだろう。

だが、コイツを抱えながらモンスターと殺り合い、生きて帰れる自信はない。

この世界はデスゲーム。今日命があっても明日命があるかは分からない世界。

故に、皆生きるのに必死だ。

もしここで俺が見捨てたとしても、特に糾弾されることはなかろう。

だが、ここで見捨てるのは何かマズイする気がするのだ。

ふと時間を確認すると、日没までもう一時間を切っていた。

日が暮れるまでにこのフィールドからは立ち去ったほうがいい。

何処かの街に置いてあった攻略本にそう書いてあった。

通常よりも強い、夜行性のモンスターが徘徊し始めるからだそうだ。

仕方がない。死に急ぎのプレイヤーなぞそうはいないだろうし、コイツも死にたい訳ではないだろう。

情けは人の為ならず、ってことで、助けるか。

俺の持っていないマップデータとか持っているかもしれないしな。

覚悟(?)らしきものを決め、一応の言い訳を考えた俺は、周囲に他のプレイヤーがいないことを確認(誘拐犯に仕立てあげられないようにするため)すると、左肩に倒れたプレイヤーを、右肩に槍を担ぎ、一目散に《トールバーナ》郊外にある宿へ走っていった。

……隠蔽を発動させながら。

 

 

 

 

「ふう」

俺の宿の前に無事たどり着いた俺は隠蔽を解き、一息つく。

郊外にあるこの宿は、農家の二階部分全部である。

少々値段は高いものの、風呂ありシャワーありと、様々な特典がついている。

最大の特典は何と言ってもマックスコーヒー飲み放題である。

これがあるからここに決めたと言っても過言ではない。

何故この世界にマックスコーヒーがあるのかは不明だが。

茅場もマックスコーヒー好きだったりするのだろうか。

もしそうならマックスコーヒー談義とかしてみたい。

どんな談義だオイ。

 

担いできたやつを一旦、部屋のソファーに寝かせておき、俺は一旦自室に戻った。

ベッドに倒れこみながら何気なく、メインウィンドウを開く。

そこには――

 

「ついに来たか」

 

俺にとっては、召集令状の赤紙とも思える知らせ。

デスゲーム開始後初の会議、《第一層フロアボス攻略会議》開催の知らせだった。

 


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