※リリース前に書き上げているのでネタバレはありません。
Pixvにも載せています。
これはFate/hollow ataraxiaが好きな作者がFate/Grand Order開戦を祝って書きました。
頭上で回るステンドグラス。彼と私が作り続けた絵は中央の一欠片だけが空いている。一つの
ここに来ないでほしい、という私の声に出せない本心を当然のように裏切り、アヴェンジャーは天の逆月に登ってきた。その姿はもはや輪郭すらおぼつかず、私には影にしか見えなかった。その影が言った。
「もうこの願いは終わりにしよう」
彼は本当にこの空白を埋めてしまう気なのだろうか。それはこの世界の終焉を、私たちの物語の終了を、決めてしまうというのに。
この世界が楽しくはなかったのだろうか。ここには彼が欲しかった幸せな日常があるのに。彼が望むのならば私はこの世界を続けるため何億回でも戦いを繰り返す。
「そりゃオレだってもう少しぐらいは続けたい。けどさ、オレは衛宮士郎だからな。間違ったことは正さないと気が済まないんだ。この願いは間違ってるだろ?」
この世界は、本当は終わりたくないと願った私の望みを、楽しい世界を見たいと願った彼が叶えたものなのだ。それをあの
私は思わず拳を握りしめて叫んだ。
「嘘だ! あなたはずっとこの世界で遊んでいたかった。隙間なんて埋めたくなかったハズなのに」
「そうだな。けど、もう大抵は飽きちまったから終わりでも見てみないと」
最後の一欠片がの聖杯の中心に埋まる。空白は無くなって絵が完成した。同時にステンドグラス全体にヒビが入って砕け散っていく。
「ああ、これで終わりなのですね」
頭上を見上げる。絵は光り輝く欠片となって私とアヴェンジャーに降り注いでいる。間もなく跡形もなく無に還るだろう。
それと同じく私と彼は共に消えるのだ。そう、私たちの運命はここで終わる。物語のエンディングに相応しい美しい演出だった。
だが、
バラバラになって消え去ったステンドグラスの背後からなにやらサイバーな立方体が現れた。その中央には光る繭のような球体が埋まっていた。
「え? あれは?」
「これはムーンセルオートマトン。事象選択樹・
立方体の中の輝く繭から、にゅるりと女の体が出てきた。頭には牛のような大きなツノが生えている。身につけている衣服は申し訳程度の布だけ。とても服と呼べず下着姿同然だ。
「なんですか、あなたは」
呆れながら女に問う。すると、この破廉恥な姿の謎の女は信じがたい名前を口にした。
「殺生院キアラ。私は
「アンリマユ? それはアヴェンジャーのことではないのですか?」
「あら、この楽園には起こりうる全ての可能性が含まれるのですよ。ほらそこにも」
殺生院キアラが私の隣を指差す。そちらを見るといつの間にか見知らぬ男女が立っていた。男は浅黒い顔に白い髪をしていた。聖堂教会のような神父服の上に赤い外套を羽織っている。もう一人の女は長い金髪を肩の下から三つ編みにし、紫色の衣の上に鎧を纏った少女騎士だった。手に持った大きな旗が風になびいている。
「貴方たちは?」
「我々はルーラーだ」
男の方が答えた。
「私は第三次聖杯戦争で召還されたルーラー、天草四郎」
続いて女の方も名乗った。
「私はルーマニアで起こった聖杯大戦で召還されたルーラー、ジャンヌ・ダルクです」
私は戸惑った。それは私が知っている聖杯戦争の情報とあまりに違っているからだ。
「ルーラー? そんなクラスは聞いたことがない。イレギュラークラスだというのですか? そうだとしても、そもそも第三次聖杯戦争で召還されたのはアヴェンジャーだったはず」
目の前の状況を理解しようとしてなんとか言葉を繋ぐ。そんな私の背後からまたしても別な者の声がした。
「それは平行世界のFateだからだよ」
振り向くとそこには一人の騎士の姿があった。金髪で青い衣に白銀の甲冑の青年。その姿は私が何度も戦ったサーヴァントにどこか雰囲気が似ているのだが。
「騎士王アーサーだ。セイバーのサーヴァントとして現界した」
「えええ! 私が知っているセイバーじゃない! あ、いえ……、確かにこちらの姿のほうがアーサー王のイメージ通りなのですが」
淫靡な姿で現れたもう一人のアンリマユ、二人もいるルーラー、男性のアーサー王。この世界はいったいどうしたというのか。
「そうだ。この世界はエンディングを迎えた。だが、終わることと続かないことは違うんだぜ」
影でしかなかったアヴェンジャーがまた実体化していた。全身入れ墨だらけの少年の眼がギラギラと危険な輝きを見せていた。呆然と彼を見つめる。
「アヴェンジャー……」
「だいたいさあ、バゼット、アンタまだ脱いですらいないだろ?」
アヴェンジャーは邪悪な笑みを浮かべながら両手の指をわきわきと動かしている。
「信じられない。貴方、本当に悪魔だったんですね」
私の背筋に冷たいものが流れた。思わず数歩後ずさる。いつになく身の危険すら感じた。するとアヴェンジャーの隣にいるもう一人の女アンリマユ、キアラがずいっと前に進み出た。私を迎え入れるようにゆっくりと手を広げ淫らに笑っている。
「恐れることはありません。さあ天上解脱、なさいませ」
「う……、うわあああああああああああああああ」
私は叫んで踵を返し、走り出した。
真っ暗な闇の中で水平に、光る境界線が伸びている。その地平線の彼方に光の点が輝いているのが見えた。そこへ向けて走る。まっすぐに、全速力で。
遥か後ろから微かにアヴェンジャーの声が聞こえた気がした。
「そうだ、そこには続きがある」
「っ———、あ———」
私は眠りから目覚め、ソファから身を起こした。
窓から部屋に明るい光が差し込んでいる。時刻は正午を回ったあたりだろう。
部屋の隅のテーブルに目をやる。そこにはいつもアヴェンジャーが座っていたはずだった。あたりまえだが彼はそこにいない。
そのテーブルに今は、ゲームとかマンガとかBlu-rayが山のように積んである。
「あれはいったい?」
テーブルに近づいて、まず、一番目立つBlu-rayの箱を手に取ってみた。
「Fate/stay night Blu-ray BOX……それにカーニバルファンタズム?」
その脇にある小さいパッケージはゲームらしい。
「Fate/たいがーころしあむ、Fate/Unlimited Codes、どうやらPSPのゲームのようだ」
更に高々と積まれた本の山。
「多くはstay nightやZeroのコミカライズのようですが、hollow ataraxiaのもありますね。氷室の天地……これは学園ものですね。プリズマ☆イリヤ……ま、魔法少女!? Fate/strange Fake……ギルガメッシュが!?」
そしてテーブルの上は一台のスマホがあった。何か着信があったらしく、ブルブルと震えていた。おそるおそる手に取って液晶をタップしてみる。暗い液晶に光が点ってソーシャルゲームの画面が映し出された。それは。
「これは、Fate/Grand Order?」
「さあ、聖杯戦争を続けようぜ。今度こそアンタの望みが———」
私の背後から空耳がきこえる。それはいつも一日目の夜に聞いていた声で、本当は一度も耳にしたことがないはずの親愛なる響きだった。
「続けようぜ」
空耳に違いない。
「マスター!」
「えっ? 貴方は、アヴェンジャー?」
後ろを振り向けば、そこには紛れもなく、あの弱くて口が悪くて信頼できないサーヴァントが居た。
「オレは消えないよ、マスター。さあいくぜ」
アヴェンジャーはスマホを掴んだ私の右手を引く。彼に手を引かれて私は一緒に外へ走り出した。ドアを開けて外に広がる光景を見て息をのむ。
「ああ……」
思わず目頭が熱くなり、涙がにじんでしまった。
「……アンリマユ、貴方は実に強欲だ」
「だから、最初から言ってるだろ、オレは偉い悪魔なんだって」
そこには色とりどりのセイバー達が並んでいた。青い衣に白銀の鎧のセイバー、白い百合のような鎧のセイバー、黒い甲冑に全身を包んだセイバー、赤いドレスの下着が透けてるセイバー、桜色の着物姿の和風なセイバー。
大きな盾を携えた少女のサーヴァントもいた。
他にも多勢の初めて見るサーヴァントたちがいた。
セイバー 「私は破壊するもの。殺戮の機械だ。戦いは、まだか」
ライダー 「武士として誠心誠意尽くさせていただきます。私、こう見えても天才ですから」
アサシン 「ボクは、善と誠実を信じる、けれど……オレは悪逆をこそ愛する!」
キャスター 「それでは最後の置き土産! 3、2、1、パァーーーン!! 世界は終わりィ!」
ランサー 「力を見せるがよい。ただの戦士ではいけない。できなければお前の命を貰うまで」
バーサーカー 「フゥゥゥゥゥゥゥゥ———! イスカンダルゥゥゥ!!」
アーチャー 「永遠の孤独こそが我が望み」
そう、これが終わりの後にある続き。
新しい聖杯戦争が、また始まる。
君と共に過ごした夜が明けてもFateは終わらない。
僕たちが願う限り、君たちが望む限り、この願望は叶えられ続ける。
聖杯戦争をこれからも続けよう。
さあ聖杯戦争を続けよう、TYPE-MOON。僕らの願いはまた叶う!