後編の方もすぐに挙げます!
結局あれから聞き込みを続けたり、また辺りを調べ回ったりしてみたが特に情報は得られなかった。最初のときのように見慣れない人を見たという話もなく、
「・・・今日はここまでにしよっか。これ以上は何も見つかりそうにないし」
「仕方ないわね・・・明日こそ特ダネのネタを見つけてみせるんだから!」
「はは・・・・・・」
正直、もう巻き込まれるのは御免だがまた巻き込まれるんだろうなあ、と思いつつ苦笑するも燃え上がるアリカは特に気にした様子はない。そんな姿は昔から変わっておらず、別の意味で苦笑てしまう。
「じゃあアリカ、また明日ね」
「そうね、また明日」
「うん。お休み~・・・・・・ふぅ」
そのままアリカが無事に自宅へ入っていくのを見届け、一人息をつきつつ自分も自宅へと入る。母さんはどうやら買い物に出かけているらしく、家の中は静まっている。
丁度いい、手洗いをして自室へ向かい
「さて・・・」
先程手に入れ、ポケットに入れておいた紙を取り出して改めて読み直してみる。一通り目を通して内容を確認するが、当然先程と変わっていない。つまり・・・
「メダロット、転送!」
左手に着けていたメダロッチが輝き出し、電子音と共に光球がイッキの前方に現れる。
光が収まった頃、姿を現したのは燈色に輝く一体のメダロット。右に一つ、左に二つの銃身。力強いカブトムシの角を模した特長的で大きな砲塔。機体名《サイカチス》、世界でただ一式しか存在しない天領イッキ専用メダロットのパーツだ。
そしてそれを装備しているのはイッキが初めて手に入れたメダロットにして最高の相棒、《メタビー》である。
『あ~~、やっと狭っ苦しいメダロッチから開放されたぜ!おいイッキ、お前もっとオレを自由にさせろよな!』
「お前を自由にさせたら色んな人の迷惑になるだろ。それよりメタビー、調子はどう?」
軽口を叩き合いながら相棒の具合を尋ねる。普段から気をつけているとはいえ、パーツのメンテナンス等を一メダロッターのイッキが本格的にやるのは難しい。もっとも日常的にロボトルをしていても問題が起きるようなことはほとんど無い。メダロッチのステータス画面でも問題はなかったので気にする必要は無いのだが、イッキは常に実際の体の状態は本人達にちゃんと尋ねるように心掛けている。
『あ?全然問題ねーよ。いつでも戦えるぜ!』
「そっか、なら安心だ」
『相変わらず心配性だよな~、オレが後々に響くようなヘマする訳ねぇだろ?』
「どうだかね。指示するこっちとしては毎回ロボトルする度にヒヤヒヤもんだよ。危なっかしくてね」
『そりゃお前の指示が悪いんだよヘボマスター!』
「ヘボッ・・・お前なあ、そろそろ僕を・・・」
ギャーギャーと言い合うイッキとメタビーの関係は、一般的なマスターとメダロットの関係と比べて喧嘩友達のような要素が強い。彼らの関係性が悪いというわけではないが、互いに遠慮が無い・自然体で付き合えるという点ではやはりこの二人に軍配が上がるだろう。
「・・・まあいいや。お前の調子が良いなら僕としても心強いし、安心して前を任せられる」
『なんだ?そういう言い方珍しいな。面倒事か?』
「かもね。お前もメダロッチの中で少しは話を聞いてたと思うけど・・・」
そこで手に持っていた紙をメタビーに渡す。首をかしげながらもメタビーも紙を受け取りその内容に目を走らせて、
―――面白いものを見せてやるよメダマスター、そしてマザーより生まれし《レアメダル》。これを読んだ日の19:00きっかりに自然公園キャンプ場まで来な。探し物が見つかるかもよ?例えば《犯人》とかな・・・・
・・・・・・・・・・・・・・
『怪しいな』
「怪しいよね」
『けど悪戯じゃね?』
「やっぱり悪戯かなあ・・・」
《メダマスター》・・・メダロッターとしての究極の称号であるその名を持っているのはイッキを含めて二人だけ。名が知られているということも含めればイッキだけにほぼ限定される。
つまりイッキに宛てた物なのは間違いないが、内容自体は悪戯だろう。そもそも「これを読んだ日の~~」と書かれてあるが普通そんなのいつになるか分からないし。
「けど、《レアメダル》のことを知ってる」
『・・・・・・』
「メダマスターと違って、これを知ってるのは僕達とヒカルさん。それに博士やナエさん、ユウキさんくらいのはずなんだ」
そして今挙げたメンバー全員、このような悪戯をする理由が無い。というよりあってもこんな雑なやり方はしないだろう。
『・・・そう言われりゃ、確かに気になるな』
「だろ?これが悪戯なら・・・無駄足になるけどそれでいい。でも」
『真実なら、何かあるかもしれない。だからオレを呼び出したわけね』
「うん。悪いけど力を貸してくれる?」
スッと右手をメタビーに差し出す。主人としてではなく対等の友として。
それにメタビーは表情があるのならニヤリとしたであろう仕草でイッキの手を強く握る。彼もまた信頼し合う相棒として。
『ったく、一々聞く必要なんかねーだろ。付き合ってやるよ、どこだろうとな』
時刻は16:43、夕飯を食べて準備をしてから向かえば丁度いい時間だろう。とりあえず一度メタビーを戻し、イッキはどう言い訳するか考え始めた。
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――19:00
『誰もいねーな・・・』
夕食後、「ちょっと博士に呼ばれてるから」と誤魔化して――もし本当に犯人を見つけた場合、後で博士の元に行くことにはなるはずなので半分は嘘ではない――指示通り林の中に来たイッキ達。が、薄暗い以外は特に何も無い。時間帯も時間帯だし、明かりは一応灯っているとはいえ辺りは薄暗く、ぶっちゃけ不気味である。
「やっぱりただの悪戯だったのかな?それとも場所を間違えた?」
『よく考えりゃキャンプ場って範囲広すぎだよな。もっと詳しい場所とか地図にでも書けなかったのかよ・・・』
これはやはりただの悪戯かもしれない・・・なんか近くで烏が鳴いてるようにも聞こえるし。うん、悪戯だな、そうに違いない。そう思った矢先、
「・・・ん?」
フッと今まで辺りを照らしてくれていた明かりが唐突に消え、辺りが真っ暗になる。
『なんだ・・・?』
メタビーも何か感じたのか警戒態勢に。よく考えてみればキャンプ場なのにさっきアリカと来たときには燃えていたキャンプの火も消えている。つまり今ここにはイッキ達意外誰もいないということか?これは偶然なのか、それとも・・・
シュッ・・・!
『!? 下がれイッキ!』
それは唐突に、上から黒い影がイッキ達に襲い掛かり、それを殴りつける形でメタビーが迎撃する!
メタビーの拳と影がぶつかり合い、ガキィッという激しい金属音と衝撃で弾け飛ばされたメタビーだが、素早く体勢を立て直しイッキの前に躍り出ると襲撃者を真っ直ぐ睨み据え、
『クソッ、なんだコイツ速え・・・っ!!』
しかしメタビーが視線を向けたときには既に襲撃者は次の動きに移っており、周りの木々を利用し縦横無尽に動き回る。その動きは素早いなんて言葉では片付けられない。不意打ちでの一撃とはいえ、その後の離脱までの流れで敵の姿の一部でさえ視認出来ていないなど初めてこと。この速さ、まさかメタビー以上か・・・!?
「メタビー、《バリスタ》を!」
『ダメだ!確かに《バリスタ》は絶対ヒットの《火薬》属性持ちだが、そもそも相手が誰か分からねえと当てようがねえ・・・グッ!』
ガキィッッ
イッキの指示に対する返事のため後ろを向いたために、今度は後方から襲い掛かってきた襲撃者の一撃をよろめきつつもギリギリ逸らすことに成功する。上手くガードしているはずのメタビーがよろめくほどの威力、そして未だ視認出来ないほどの驚異的なスピード・・・偶然だが、もしイッキへの返事を返すために後ろを見ていなければ今の一撃で終わっていた可能性もある。
「メタビー!?」
『大丈夫だ!けどコイツ不意打ちばっかとはいえ強え・・・長くは保たねえぞ!』
縦横無尽に迫りくる襲撃者の攻撃。今はまだ何とか凌げているが、メタビーの集中力が途切れた瞬間にやられてしまうだろう。そして今は執拗にメタビーのみを狙いイッキには一切危害を加えてこないように見えるが、メタビーを倒せばイッキが狙われる可能性もあり、
(落ち着け!僕が冷静さを失ったらそれこそ勝てない・・・何のために僕はここにいる?メタビーを助けるためだろう!)
自分の頬を叩き、イッキは顔を引き締める。頭の中で現在分かっている情報を一瞬で組み立て、考察し・・・
(二脚型のメタビーの機動性が十全に発揮されるこのフィールドでメタビー以上に動ける・・・ということは敵も二脚型で間違いない。そしてメタビーに接近して攻撃を加えその威力はメタビーが防ぎきれないほど、つまり格闘タイプないし格闘技に重点が置かれているメダロット・・・なら!)
「メタビーッ、とにかく撃ちまくれ!」
『何言っ・・・分かったよ!』
躊躇いは一瞬にも満たない。一見やけくそに見える指示だが、なんだかんだ言いつつ数年間共に戦ってきた相棒同士、イッキの考えを理解し左腕の装備《ブラスター》からガトリングを辺り一面に乱射する!
放たれた《ガトリング》の嵐は巻き添えを食わぬため距離をとって木の裏に隠れたイッキを除いて、上下左右全ての方向に襲い掛かる!しかし相手の姿どころか、位置の検討すらついていない状態での射撃。「下手な鉄砲も数撃てば当たる」のことわざ通りにはいかず、全ての弾丸は空を切り、地面に跳ね返って大量の土煙を巻き上げるだけに終わる。
つまり、短時間ながらも互いの視界はほぼ完全に封じられた。
(気休めにしかならないけど・・・けど多分これで分かる)
突然の襲撃者、その正体が。イッキが考えている通りだとすれば恐らくこの敵は・・・
ジャッ・・・・!
微かに聞こえる風切音、そして揺れ動く風。襲撃者は土煙など意にも介さず、正確にメタビーへと襲い掛かる。
―――思ったとおりだ。
「メタビー!左前方を思いっきり殴りつけろ!」
イッキの指示が素早く響き、メタビーは躊躇うことなく指示された方向に向かって右腕を突き出す!
『!?』
この時、初めて襲撃者が動揺した気配が辺りに伝わる。咄嗟に攻撃を止めて後ろに跳び退ろうとするが、
『捕まえたああああああ!!』
もう遅い。メタビーの突き出された拳が襲撃者に直撃し、その威力で周りの土煙ごと一気に吹き飛ばした!