メダロットΩ   作:蒼騎士

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プロローグ終・後

「メタビー追撃!」

『分かってる!』

 

ジャキィッ、と殴りつけた方向に両腕に備えられた銃口を向け、そのまま一気に乱射!右腕の単銃《フューザー》と左腕の二連機関銃《ブラスター》が再び火を噴き、今度は襲撃者に全て命中する!

 

――手応えありだ。コレで決着かは分からないが、少なくともしばらくの間は先程までと同じようには動けないダメージを与えたはず。その証拠に土煙が晴れたそこには、膝をついて下を向いている襲撃者の姿があった。

 

『・・・何故、俺の位置が分かった?』

 

どこか電子的で低い声響き渡る。ここに来て初めて襲撃者が言葉を発したのだ。時間がかかったとはいえメタビーが初めて与えたダメージ、それが思いのほか強力だったために回復するための時間稼ぎか、それとも・・・

 

「まず、君がメタビーの位置を最初から把握できていることは分かってた。こんな周りが見えない暗闇の中で、君は正確にメタビーを攻撃していたからね。

邪魔をされない限りどんな場所でも正確に相手を把握する能力、十中八九君の能力の一つは《索敵》だ」

『・・・・・・』

 

反応はない。隙を狙っているのか、それともまだ動ける状態ではないのか?イッキはまだ視認出来ていないが、一度攻撃を命中させたメタビーの方は相手を完全に『敵』として捕らえることに成功しているだろう。ならば今度は自分達の方から仕掛けるべきか・・・?

 

(・・・いや)

 

一瞬浮かんだその考えを首を振って打ち消す。

攻撃された後、この襲撃者は疑問を投げてきた。つまりこの敵は本能のままに獲物を襲うただの獣ではなく、知性を有した戦士ということになる。言葉が通じるのならば無理に戦う必要はない。ロボトルが大好きなイッキだがそれも場合によりけりだ。状況と相手次第で色々変わるし、単なる傷つけ合いなど好まない。

 

(無関係とは思えないけど、彼があの手紙の主かどうかもまだ分からない。会話を繋げることで相手の情報を聞きだすことが出来れば・・・)

 

そのことはメタビーも気付いているのだろう。ガサツで短絡的なように見えるメタビーだが――実際その通りなのだが――馬鹿ではない。仮に気付いていないとしても、イッキの思惑は何となく分かっているはずだ。イッキの指示を待たずに攻撃を仕掛けないのも、恐らくそういった理由からだろう。

 

「次に君の戦闘スタイル。射撃音は全くしなかったし、一撃一撃がメタビーを弾き飛ばしかねない威力で、しかもメタビーが反応し切れないほどのスピード。格闘主体なのもすぐに分かった。

だけど厄介だったのはこの暗闇。特徴や戦い方が分かっても、姿が見えなきゃ意味ないから」

『・・・成程。先程の銃撃は土煙を巻き起こして俺の視界を封じるのではなく、僅かな音とと風の流れをより明確にさせ、俺の位置を特定しやすくするための布石だったということか』

 

視界が満足に働かないロボトルでは、《索敵》能力を持つメダロットがいない場合は音や空気の流れなどが重要な意味を持つ。それらの要素を素早く、且つ正確に把握することが暗闇の戦いを制するといっても過言ではない。

 

「暗闇での戦いは先生に《ダークロボトル》で散々しごかれたからね・・・」

『良い師匠がいたということか。どうやらメダマスターの称号は伊達ではないらしいな』

 

しみじみと呟くイッキに、どこか笑うような襲撃者。そのとき、雲の間より月が姿を現して、三人がいるこの公園を淡く照らす。同時に襲撃者の姿が遂に明らかになって、

 

「・・・やっぱり、君は」

 

月光により照らし出された公園に浮かび上がるのはイッキとメタビー、そして月光をその体に浴びて純白に輝く一体のメダロット。

脚部も腕部も、そして頭部も全て純白。しかし頭パーツには天を突き刺すがごとく真っ直ぐに伸びた青い二本の角。恐らくはコレこそが《索敵》の能力を持ったパーツなのだろう。

対して両腕のパーツは肩こそ尖り、両腕を手甲のように覆うパーツはあるが、武装らしき装備は一切見られない。だがメタビーを吹き飛ばしたということは、ただの肉弾ではないはずだろう。つまりあの両拳は《ハンマー》か?いや、違う。この形状、《索敵》能力・・・間違い無い、このメダロットは

 

 

 

「――KWG型メダロットの一体、だね」

 

 

KWG型メダロット・・・それはカブトムシをモチーフにしたKBT型メダロットと対を成し、クワガタムシをモチーフとし、共にメダロット界を代表するメダロットシリーズでもある。

メタビー達KBT型メダロットが射撃能力と攻撃性、パワーを追求したシリーズであるのに対し、KWG型は格闘性能と《索敵》によるサポート性能、そして比類なきスピードを追求しているという正に対極となるコンセプトの元に開発されている。共通点があるとすれば代表シリーズであるが故に機体の種類が他のシリーズと比べて圧倒的に多いこと、そしてそれに反比例するように種類ごとの生産数がごく僅かといったところか。つまり、

 

『ヘッ、こいつは驚きだぜ。オレ達に不意打ちかましてそれなりに渡り合うってだけでも珍しいのに、まさかそれが超々激レアなメダロットだったなんてなあ。』

「うん、僕も研究所で展示されているの位しか見たこと無いよ。これがKWG型かぁ・・・」

 

思わぬ激レアなメダロットを前にして、自分達を襲ってきた相手だというのに思わず呆けてしまう。それも仕方が無いかもしれない、イッキはこの数年間世界中のあらゆるメダロッター達、果ては宇宙人とすらもロボトルしているが、KWG型メダロットは見たことはあっても戦ったことは一度もなかったから。

 

『如何にも、我が名はロクショウ。KWG型メダロット《ドークス》を身に纏いしメダロットだ』

 

対する襲撃者、ロクショウの方もゆっくり立ち上がってこちらに話しかけてくる。戦意がもう無いのか、それとも・・・

 

『突然の襲撃、すまなかったな。しかしお前たちの実力を正確に測るためには必要なことだったのだ』

『あ、オレ達を測るだあ?いきなり何ふざけたこと言ってんだお前?』

『言葉通りの意味だ。俺達はお前たちの力を知らなければならなかったのだ、これからの為にもな・・・』

 

スッと、右腕を水平に掲げてメタビーを見据えるロクショウ。それを見て二人も再び臨戦態勢を取ろうとするが、

 

 

『――遅い』

 

 

右の一閃、咄嗟だったとはいえメタビーはそれを素早く後ろに跳び退ってギリギリ躱そうとするが、

 

『グッ!?』

 

ガクリと苦悶の声を上げながらメタビーは膝をつく。見ればメタビーの胸、そこに鋭い斬り傷が奔っており火花が激しく飛び散っていた。

 

「メタビー!大丈夫か!?」

『あ、ああ・・・大丈夫だ。

ヘッ、レアメダロットが聞いて呆れるぜ。不意打ちじゃねえとオレ達に勝てないのかよ!?』

 

さすがにこの行動は完全にメタビーの怒りに火を点けたらしい。その声音はいつに無く激しく、人間だったならば視線だけで相手を殺さんばかりに睨み付けているだろう。

が、対するロクショウの方は一切気にした様子も無くその戦意を受け流している。

 

『不意打ち、闇討ちは戦での常套手段だ。そもそも戦いが終わったなどといった覚えも無い』

『テメエ・・・・・・ッ』

『やはり甘すぎる、か・・・・』

 

スッと右半身を前に出し、ロクショウが構えを取る。先程までの不意打ちによるものではない、これは・・・

 

『お前たちの認識は甘すぎる。が、不意打ちによって負けたのでは納得しそうも無いようだな』

「何を・・・」

『仕方ないからお前たちに合わせてやる。真正面からかかってこい』

 

それは挑発か自信か。どちらにせよ冗談の口調ではなく、その言葉で更にメタビーの戦意が高まっていく。

 

『・・・調子に乗ってんじゃねえぞクワガタ野郎』

『俺は至って真面目だが?

ああ、そうか。「不意打ちされたから負けたんだ」という言い訳が無くなって純粋な実力で敗れることが怖いのだな。気が付かなくてすまなかった』

 

 

――それが、決定的な引き金となった。

 

 

『ぶっ飛ばす!!』

 

ロクショウの言葉は挑発となり、怒りとなってメタビーの体を駆け巡る。この敵が何者か、どんな意図を持って襲ってきたかなど最早どうでもいい。今はこの目の前の白いクワガタを、捻じ伏せることさえ出来ればそれでいい!!

 

「ダメだっ、メタビー!!」

 

イッキの静止も届かず、メタビーは真っ直ぐにロクショウへと襲い掛かる。が、

 

『実に乗せ易い、それに直線的な動きだな・・・この程度で、』

 

フッと、その場で一瞬跳ねたと思ったときにはメタビーの目の前まで瞬時に間合いを詰める!同時に力強い踏み込みと共に右腕を振り抜き、

 

『俺を倒そうなどと、自惚れにも程がある!』

 

 

シャッ・・・・・・!!

 

 

「メタビーッ!?」

 

言葉と共に宙を舞うのはメタビーの左腕。ロクショウ目掛けて振り下ろされる筈だったメタビーの左腕は肩口から綺麗に消失し、突如体の重みが半分消えたことで体勢が崩されてしまう。

だがロクショウの動きは止まらない。メタビーの体勢が戻るまでの僅かな時間、ロクショウの右腕が目にも留まらぬ速さで宙に何本もの線を描き・・・

 

『・・・期待外れ、か』

『ガッ・・・・・・!』

 

激しい音と共にメタビーが崩れる!一瞬にして行われたのは六度の斬撃、その全てがメタビーの体を捉えて、

 

 

ガシィッ

 

 

 

『・・・ム?』

『つか・・・まえたぜ・・・ッ!』

 

崩れ落ちる寸前、メタビーがもたれかかるような形でロクショウにしがみ付く。同時に逃げられないように右腕でロクショウの腕を掴み、そして決して放さない。いや、これは・・・

 

『成程。謀られたのは俺の方、ということか・・・ッ!』

『動きの速いヤツってのは、面倒だからな・・・イッキッ!!』

 

叫ぶメタビーの背後では、メダロッチを素早く操作しているイッキの姿。この状況で最も有効的な技は・・・

 

「メタビー、《バリスター》発射!」

『喰らいやがれええええええええええええ!!』

 

メタビーの頭パーツ、カブトムシの角を模した二又の砲塔から零距離でミサイルが放たれる!

激しい爆発音と衝撃が二体に襲い掛かり吹き飛ばす。ロクショウは咄嗟に右腕を盾にして身を守ろうとするが、

 

『グウウ・・・・ッッッ!』

 

格闘攻撃のリスクにより防御行動は意味をなさない。盾にするどころか衝撃を抑えることも出来ずに右腕パーツは粉砕され、更に爆風が左腕パーツをも破壊する!

 

「よし、コレで両腕の武装は破壊した!」

『へッ、どんなもんだ・・・!』

 

ロクショウ同様、衝撃と爆風により少なからずダメージを負っているメタビーだが、こちらはミサイルを撃った直後イッキの操作によって防御行動をとることに成功しておりダメージを最小限に抑えることに成功している。そしてそれ以上に自分達を散々コケにしてくれたロクショウに対し甚大なるダメージを与えられたことによる嬉しさがダメージよりも大きいのだろう。

 

「まさかお前が怒ったフリで相手に組み付くなんて騙し討ちするとは思わなかったよ」

『やられたらやり返せ、ってやつだ。上手くいったろ?』

「無茶しすぎだこのバカ!一歩間違えば大怪我じゃすまなかったぞ!?」

『ウルセエなあ、上手くいったんだからいいじゃねえか・・・それにKWG型ってのは攻撃武装が両腕しかねえだろ。もう勝負ついたも同じだしさ』

 

そういわれれば確かにそうかもしれない、KWG型はKBT型と違い攻撃武装が少ないのも特徴の一つだ。

念のため注意深く辺りを見渡してみるが、援軍の姿もマスターと思われる人物の姿も見えない。となると懸念事項であるアレは無いと見ていいだろう。

 

『・・・勝負がついた?KWG型には武装が少ない?

馬鹿が、一体何年前の話をしている』

 

そのとき二人の耳に静かなる声が響き渡る。素早く振り返った二人の目に映ったのは青く輝き始めたロクショウの姿。これはあ、まさか・・・!?

 

『だから・・・お前たちは甘いのだッ!!』

 

響き渡るロクショウの怒声。間違いない、これはメダロットの必殺技。どんな状態であろうとも、能力次第では一発で逆転できる奥の手。

 

「《メダフォース》!?そんな、マスターがいないのに使えるの!?」

 

今まで何人・何体もの敵と戦ってきたが、この必殺技は数少ない例外を除いてマスターのいないメダロットには使えなかった筈だ。だからその可能性を排除していたのに・・・!

 

(まずい、今のメタビーがメダフォースを喰らったら・・・!)

 

確実にやられる。しかも恐ろしいことに一度発動したメダフォースは止める術も、避けることもできない。こちらもメダフォースを、いや無理だ。間に合わない・・・!!

 

「メタビー!!」

『クソッ・・・!』

 

既に覚悟を決めたのか、メタビーはメダフォースを耐える姿勢をとっている。しかし無謀だ、今の自身の状態をメタビーも分かっていない訳がない。

 

『自分たちの甘さに悔やみ、そして沈むがいい!』

 

青い光がロクショウの右腕に集まっていく。やがて光は収束し、そして・・・

 

『終わりだ!メダフォースはつ・・・・』

 

 

 

 

「――ストップ!止めろロクショウ!!」

 

 

 

「『『!?』』」

 

その直前、新たな声が響き渡る。それにより今にも発動しそうだったロクショウの刃は霧散し、三人の視線が声がした方に向けられて、

 

「熱くなりすぎだこのバカ。らしくないぜロクショウ?」

 

そう言いながら、暗闇から現れたのはイッキとそう歳の変わらないであろう一人の少年だった。その髪は四方八方ツンツンと刎ねており、その左腕にはイッキがしている白いメダロッチと対になりそうな黒いメダロッチがはめられている。

 

『・・・何故止めた?』

「お前オレが頼んだこと見事に忘れてやがるな・・・オレが様子見に行ってる間、お前にはこの二人の実力を測るよう頼んでた筈だぞ?」

『だからそうしている』

「やりすぎだっつってんだボケ。今のお前の状態を見れば二人の実力は大体分かる、十分合格点だ。だろ?」

『フン・・・』

 

・・・なんだこのやり取りは?見たところこの少年はロクショウのマスターなのか?いや、それよりも

 

(助かった・・・?)

 

もし彼の声が無ければ、ロクショウのメダフォースがメタビーを切り裂いていた筈だ。もしロクショウが件の犯人ならそのまま・・・

 

(ってそうだ!もし彼がロクショウのマスターなら・・・)

 

彼もまた危険人物の可能性がある。その可能性に気が付いたのだろう、黙ってはいるがメタビーも臨戦態勢をとって、

 

「悪かったな二人とも。このバカに代わって謝罪するよ」

 

一切の毒気も無く、悪意も無い真摯なその謝罪がイッキ達の戦意を霧散させる。

どういうことなんだ?彼はロクショウのマスターで、、だったら自分達を襲わせたのは彼の指示の筈で、

 

(一体、どういうことなんだ!?)

 

 

 

 

 

―――これが、後に戦友になり親友になり、そして忘れられない存在となる、陸奥ユウトと天領イッキの出会いだった。




何かキリが悪いようなんというか・・・変な終わり方になったかもしれませんね、すみません。


さて、予定以上に長くなってしまいましたがようやくプロローグ終了です!以前某所で載せていたイッキとユウト達との出会いとは別の形にしてしまったので、時間がかかってしまいました・・・なのでこの先の展開も若干違います。その辺りは楽しみにしていてくださるとありがたいです。




次回予告!
突如現れた謎の少年とロクショウ。彼らは語る、自分たちはイッキ達に会いに来たのだと。
「お前たちの力を貸してほしいんだよ。な、勇者!」
果たして彼らは何者なのか、その本当の目的とは?

次回、《謎の少年・ユウト》 乞うご期待!





次はもうちょい早く挙げられるといいなあ・・・・
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