メダロットΩ   作:蒼騎士

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第3話:招かれざる脅威・後編

『ギイイイイイイ!』

 

体を切り裂く音、そして痛みによる絶叫が響き渡る。その声から、傷は決して軽くないであろうことは伝わってくる。

が、それは自分のものではない。痛みは自身に届いておらず、絶叫も自分の口から出たものではない。その事実に疑問を抱き、薄っすらとイッキは目を開けて・・・

 

「!?」

 

真っ先に目に映ったのは先程までイッキごとメタビーを貫かんとしていた《ソレ》が両腕を切断された姿。そして、純白の体に一際映える血の如く真っ赤な右腕。

 

『・・・ユウト、どう切り分ければ?』

「頭と胴体、右腕・左腕、後は足・・・まあメダロットと同じ感じで。一応ソイツもそうだろうし」

『承知』

 

返事は一言、次の瞬間には真っ赤に染まった刃がゆらりと揺れて・・・

 

 

 

『――散れ』

 

 

逃げる間すら、与えられなかった。僅か数秒、ほんの短い時間で《ソレ》の体は何十にも切り裂かれ、そして最後には意趣返しだとばかりにその体を貫き・・・

 

 

『ギィイイイイイイイイイイイイイイイイッッ!!!』

 

耳を覆いたくなるような断末魔の叫びを上げ、《ソレ》は完全に沈黙した。

 

 

 

 

 

「――――」

 

呆気ない、呆気なさ過ぎる幕切れにイッキもメタビーも言葉を失う。こちらもダメージはほとんどないため、結果だけを見れば大したことのない相手のように見えるかもしれない。

だが違う。こちらの攻撃がほとんど通用せず、掠るだけでも危険な攻撃手段を持った謎の相手。その特性だけではなく、向かい合ったものにしか分からない恐ろしさや《メダフォース》すら通用しなかったという事実。自分たちだけしかいなかったなら間違いなくやられていたのは間違いなく・・・

 

(そんな相手を、こんなあっさりと倒すなんて・・・)

 

これはやはり自分たちの実力の程を確かめていたのだろう。仮にイッキたちがどうなろうが、ユウトとロクショウはこの相手を制することが出来るから。

 

「――――ッ」

 

それが分かり思わず拳を握り締める。自分たちの実力に自信は持っていたし、何が相手でもよほどのことがない限り負けないと思っていた。

それがなんだ、この様は。相手が悪かった、なんて言い訳にならない。下手をすればイッキはともかくメタビーもは無事では済まなかった。自分たちを品定めしていたユウトたちより、メタビーを危険な目に合わせてしまった自分の不甲斐なさに腹が立つ。

 

『・・・ふむ』

 

一方でイッキのそんな思いなど全く気付くことなく、ズブッと嫌な音を立ててロクショウが《ソレ》の体から何かを取り出す。大きさとしては小石よりも小さく、独特な形をしたそれは・・・

 

『ユウト』

 

ポイっと、無造作にそれをユウトへと投げ渡す。ユウトは取りこぼすことなくそれを受け取り、まじまじと観察する。

 

『とりあえずは害にはならんと思うが、どうだ?』

「大丈夫だろ。死んじゃいねえけど、脳みそだけなら問題ない。つーかこうして見んのは初めてだけどやっぱり同じなんだな」

『ああ。ほとんど同じといっていい、詳しくはなんとも言えんがな』

「そこらへんは専門家に任せるしかねえだろ。

・・・それより早く剣を仕舞え。気持ち悪くなってくる」

 

苦い顔をしてひどい事を言うユウトだが、恐らくここに他の人間がいても同じことを言うだろう。恥ずかしい話、その声を聞いて顔を上げたイッキも思わず言葉を失ってしまったのだから。

ロクショウの、《ドークス》の体は白を基調とし、ところどころに青いラインが入っている。それは基本的なKWG型のカラーリングで、無論彼もその例に漏れない。

が、先程までは確かにそうだったはずのロクショウの体は、右腕武装《フォーバイス》・・・刃を出した瞬間から、肘から刃の先にかけて真っ赤な血の色に染まっている。しかしこれは返り血というわけではない。なぜならメダロットは血を流さない、流すとしてもそれはオイルであり、決して赤くはない。無論のことイッキもユウトも切られてはいない。つまりは・・・

 

『・・・すまない』

 

短く言ってロクショウは刃を戻す。するとさっきまでの見た目が嘘のように、ロクショウの右腕も他の体と同じように白く戻った。これは、一体・・・

 

「さて、と」

 

考えはその言葉で打ち切られる。気付けばイッキのすぐ近くまでユウトはやってきていた。

 

「ユウ・・・」

「合格点だぜ、イッキ。それにメタビー。アレ相手に《メダフォース》を使うって選択肢は間違いじゃない。結果的には通用しなかったわけだが・・・それもやり方の問題だしな」

「・・・やり方?」

「ああ。ようは時間のかけ過ぎって話。ロボトルならそれで良いだろうけど、今回はそれじゃダメだったんだ」

 

それでも気付くだけすげえけどさ、と苦笑するユウト。だがなんだろう、彼の雰囲気はまるで、

 

「なんにせよ、お前らはオレの期待を裏切らなかった。だから約束は守るよ、お前の聞きたいことに答えられる限りは答えてやる」

「・・・本当?」

「勿論、自分で持ち出した約束は破んないさ。

けどその前に・・・っ!」

 

急に真顔になり、ユウトの腕が振りあがって、

 

「グッ!」

『イッキ!?テメエ、何しやが・・・!』

 

いきなりの蛮行にメタビーが吼えるが、ロクショウがその肩を掴んで取り押さえる。その間にユウトは床に転がったイッキの胸倉を掴んで立ち上がらせ、

 

「馬鹿かテメエは!?相棒がピンチだったからって、体投げ出す馬鹿がどこにいんだっ!?」

「え!?いや、あの・・・」

「ただのメダロットの攻撃でさえ人間が食らったら死んじまうようなもんがあんだぞ!?それをよりによってアレを相手に・・・死にたかったのか、そうなのか、ああっ!?」

「いや、あの、僕は」

「何も考えてなかったってか!?お前の無謀な行動でどういうことになるか、全く思いつかなかったわけだな!?」

「僕は!メタビーを助けたくて・・・!」

「お前が飛び込んで助けられるって?おーおーそりゃ凄いですね。相棒が勝てなかった相手をお前は何とか出来ちゃうんだ?凄いねえ、物凄い馬鹿だねえ!!」

「っ!?」

 

この・・・黙って聞いてれば・・・!

 

「じゃあ他にどうすればよかったのか教えてよ!?そこまで言うなら君は凄い解決策持ってんだよね!?」

「なんだ逆切れか!?オレはお前らと違ってあの程度のやつ何とかできるんだよ、一緒にすんなボケ!」

「僕らに戦わせるよう仕向けたのは君だろ!逆切れって言うならそっちの方だ!」

「んだと、この・・・っ!」

 

もう一度拳を振り上げようとするユウト。だがその拳は途中でロクショウに抑えられて、

 

『熱くなりすぎだユウト。イッキの言うとおり、この状況を演出したのは俺たち。ならばイッキたちには責める理由はあっても俺たちから責められる理由はない』

「っ!」

『こんなこと、俺が言わなくても分かっているだろう?それでもまだ喚くなら俺が相手になるが?』

「・・・・・・」

『どうする?』

 

ユウトはしばらくロクショウを睨み付けていたが・・・

 

「・・・悪かった」

『それはイッキに言え』

「・・・悪い、イッキ。言い過ぎた」

「・・・・・・」

『なんなら一発殴り返してもいいぞ。それでお相子だ』

「・・・いや、いいよ」

 

言い方はどうあれ、自分がとった行動が愚かだったことに変わりはない。それにこのやり取りをこれ以上続けたくはなかった。

 

『イッキ・・・』

「大丈夫、心配しないでメタビー」

『あ、ああ・・・じゃあちょっと休むけどいいか?』

「うん、お疲れメタビー・・・」

 

そのままメタビーをメダロッチに戻す。さっきから口数も少なかったし、見た目以上に疲れはたまっていたのだろう。

 

『では、そろそろ行くか?』

「・・・ああ」

 

ロクショウの襲撃から始まったこの場での騒動は一応の決着を見た。ならば話は次の段階に進めなければ。

 

「行くって・・・僕らへの説明は?」

「心配すんな、話はそこでしてやる。丁度いいしな」

「丁度いいって・・・どこ?」

「決まってるだろ」

 

 

 

 

「メダロット研究所さ」

 

 

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

 

――メダロット研究所

 

 

カタカタカタカタカタ・・・・

 

 

「おじい様、少しよろしいですか?」

「ん?」

 

孫娘の登場に、作業をしていた手を一時止める。時刻は21:00過ぎ、眠るにはまだ多少早く、作業を止めるにも中途半端な時間だ。

 

「どうしたナエよ?ひょっとしてレトルトを空へ送ったことに不満でもあるのかの?」

「いえ・・・ヒカルさんは強い人ですから。何も心配はしていません」

 

メダロット博士の大切な孫娘・・・ナエはヒカルとは幼馴染の関係に当たる。最近では互いの仕事上昔ほどの付き合いはなくなっているが、共にメダロットが大好きなもの同士として――あるいはそれ以上の感情もあるかもしれないが――よき友人関係を築いている。ひょっとしたら、そのうちヒカルが結婚を申し込みにくる、なんて未来もあるかもしれない。

 

「・・・そんなことは絶対に認めんがな」

「?どうしましたおじい様?」

「ああ、いやいやなんでもないぞ。して、何の用じゃナエよ?」

 

この研究所では祖父と孫、というよりは一研究者とその助手だ。ならば当然研究関係の用事だろう。が、そんな急ぎの用事もなかったような・・・

 

「いえ・・・私、ではなくイッキ君がおじい様に会いに来ていまして」

「何?イッキがわしにじゃと?」

 

珍しい、というより初めてのことだ。夜遅く、とまでは言わないまでもこんな時間にイッキが尋ねてくるなど・・・

 

「(軽い用事ならば日を改めるはず。なのに今来たということは、何かあったということか・・・?)

分かったわい。ここまで通してくれ」

「分かりました」

 

 

 

 

 

 

「こ、こんばんわ博士。こんな時間にすみません・・・」

「それは構わんが・・・どうしたのじゃイッキ。別に怒っとるわけではないが、何故日を改めて来ようとは思わなかったのじゃ?」

 

数分後、一人博士の研究室にやってきたイッキを前にして優しく尋ねる。その口ぶりから、本当に怒ってはいないのだろう。

 

「その・・・博士は《野良メダロット大量失踪事件》については知ってますか?」

「!?ああ、勿論知っておる」

 

というよりそのためにヒカルを空へ飛ばしたのだ。当然イッキも知っていることではあろうと予想できたが、こんな夜に来たということは、

 

「お前さん、何か知っとるのか?」

「いや、その・・・さっきまで犯人らしきものと戦ってたというか・・・」

「なんじゃと!?」

 

それは、予想の斜め前を行く言葉で、

 

「このバカもんが!今回の事件、ただの事件ではないのじゃぞ!?分かっておるのか!?」

「は、はい。痛いほど思いしらされました・・・」

「こうして無事じゃったからよかったものの・・・む?メタビーは、メダロット達は大丈夫なのか!?よくみればお前さんの顔も少し腫れておるではないか!まさか此度の犯人は三原則が・・・?」

「あ、皆は無事です。この腫れもそれとはあんまり関係ないですし・・・まあ三原則は外れてるとは思いますけど」

「なんという・・・」

 

頭が痛くなってくる。が、この少年の今までを振り返ればこの展開もそう珍しいものではない・・・のか?なんにせよ、また厄介ごとに関わっているらしい。

 

「まったく・・・お前さんの人生は波乱万丈じゃな」

「返す言葉もありません・・・」

「じゃが・・・無事なのじゃな?」

「少なくとも今は大丈夫です」

「そうか・・・」

 

ゆっくりと立ち上がりイッキの前へ。彼にとって大切な五人目の孫のような少年の頭をゆっくりとなでる。

 

「無事でよかったわい・・・」

「・・・はい」

「・・・それで、その犯人とやらはどうなったのじゃ?」

「あ、それは」

 

 

 

『ここに、持ち帰ってきました』

 

 

 

「!?」

 

突然側に現れたメダロットの出現に、博士の顔が物凄い表情になる。不謹慎ながら、写真を撮って保存したいほどに。

 

「あ、ロクショウ。彼は?」

『・・・研究所内を探検中だ。もう少ししたら来る』

「そ、そう」

『・・・勝手なヤツで申し訳ないな』

「いや、そんな・・・って博士?」

 

気付けば博士は先程からジッとロクショウを見たまま固まっている。その目はサングラスに覆われていて見えないが、恐らく驚愕に見開いていて・・・

 

「博士?」

「・・・・・・・・・ロクショウ、か?」

 

次に出てきた言葉は、ロクショウの名前。口にした本人すらも、目の前にある光景が信じられない、そんな様子だ。

 

『・・・お久しぶりですアトム殿。恐らく、貴方の頭に浮かんでいる「ロクショウ」で間違いないはずです』

「この雰囲気、《ドークス》のパーツ・・・そうか、お主は「アキト」の元にいた「ロクショウ」なんじゃな?」

『はい。その節は大変お世話になりました』

「・・・そうか」

 

言葉と共に宙を仰ぎ、もう何度目になるか分からない沈黙。目が見えないのでなんともいえないが、ひょっとしたら博士は泣いているのかもしれない。

 

「えっと、知り合い?」

『俺にとっては恩人の一人だ。この《ドークス》のパーツもメタビーの《サイカチス》同様、俺専用に拵えてくれたものだ』

 

なるほど、そういう繋がりが。ということは、

 

「じゃあユウトも博士の知り合いなの?」

「ユウトじゃと!?」

 

その名前にバッと博士が顔を戻す。凄いな今の、動作としては頷きなのに早すぎて見えなかった。

 

「あやつも来ておるのか!?」

「ええ、っていうか助けてくれたって言うか襲われたって言うか・・・」

 

そのときだった。

 

「いやあ、すげえなあこの研究所!流石はアトムさんの研究所だね!」

 

大きな嬉しそうな声をあげてキラキラ目を輝かせながらユウトが入ってくる。その姿にロクショウは頭を抱え、イッキは口を開けたまま閉じられず、博士は・・・

 

「いやあ、伝説のメダロットやメダルがずらりと並ぶ展示場!サンプルをとるために様々な形式で行われる模擬テスト!全部同じ顔の白衣の研究員!すげえな、ここはもう遊園地と同じと言ってい」

「このバカもんが!!」

「がは!?」

 

ゴチンッと、見ているこっちまで星を見て激痛に叫びそうな拳骨を受けてその場にしゃがみこむユウト。

 

「~~~~っ、ってえなこのクソジジイ!歳考えろよ元気すぎんだろうが!?」

「誰がクソジジイじゃ!?相変わらず口が悪いヤツめ・・・生きておるなら連絡くらいせんか、このバカもん!」

「便りがないのが何よりの元気な便りって知らねえの?アトムさん、幾ら歳だからってボケるのは流石に早いよ?」

「口の減らない・・・お前なんてこうじゃ!」

「いふぁい!ふぁなふぇふょふぁふぉむふぁん!(痛い!離せよアトムさん!)」

 

ギャーギャーワーワーと、二人で騒ぎ出すユウトと博士。その光景を目の前にして・・・

 

「えーっと・・・僕はどうすれば?」

『本当に、申し訳ない・・・!』

 

イッキたちは、ポカンと成り行きを見守るしかなかった。




皆さんお久しぶりです。私生活で色々ありましたが、小説を書ける程度には回復したので溜めていた3話を連続更新しました。
ただ・・・・以前書いていたときにもあった事なのですが、いかんせん実力が伴わぬためにキリよく終わらせようと思うと、話数が更に増えるor今回のように文字数が以上に増えるという状況になってしまい、今回も後半2話は文が非常に長くなってしまいました。精進しないとな・・・・
さて、ようやく3話目を挙げられたところでなんなのですが、また更新スピードは落ちるかもしれません。今まで休んでいたから早めに挙げたいのですが・・・とりあえず次回予告。


ユウトは博士と知り合いだった?驚くイッキを前にして、ユウトは自分の目的を遂に語りだす。何故この町にやってきたのか?現れた脅威、そして《野良メダロット失踪事件》との関係は?
一方、博士の指示で天空都市へと飛んだレトルトの前にも新たな脅威、そして信じられない現実が待ち受ける・・・!


まあ予定ですが、こんな感じで今書いてます。前のを知ってる人は分かるかもしれませんが、ようやくレトルトさんの活躍がありますよ。

それでは今回はここまで!意見・感想は「小説家になろう」の蒼騎士の活動報告や本小説の感想に送っていただけると嬉しいです。ではでは、また~
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