「それで?ずーーーーーーーーーーーーーーーーーーっと連絡をよこさんかったお前さんが、今更何の用なんじゃ?」
イッキたち度外視で行われていた祖父喧嘩(?)もようやく気が済んだのか、自分の椅子に座って博士が尋ねる。
「なにって・・・イッキかロクショウから聞いてないの?」
「なんじゃと?」
チラリと、博士はイッキたちに目を向ける。そういえばまだ本題には入っていなかったな。
「心配性のアトムさんのことだ、大方イッキが例の犯人と戦ったって聞いて叱ってたんだろ?で、助け船にロクショウが現れたはいいが、懐かしさでそれどころじゃなくなった。そんな感じ?」
「むう・・・」
見事に、図星だ。
「ま、それならそれでいいさ。早いか遅いかの違いだけで、用件は一つだし」
そう呟くとメダロッチをかざして、博士の前に何かを転送する。それは、
「なんじゃ、このパーツは?」
「話の流れで気づこうぜ?イッキたちが戦い、ロクショウが仕留めた凶悪犯のパーツ、フルセットだよ」
「なに!?」
「んで、これが」
驚く博士をよそに、ポケットから取り出した六角形の石状の何かを机に置く。
「その犯人が付けていたメダルだ。アトムさんデータ欲しがってたでしょ?あげるよ」
「これが・・・いや、それよりもユウトよ。お前さんはどうやって・・・?」
「さっき言ったじゃん。ロクショウが仕留めたって」
「違う。ワシが言いたいのは『何故そんなことが出来たのか』じゃ」
「あ、そっち?」
まるでふざけているように笑っているユウトに対し、博士のほうは戸惑っている様子。いや、これは・・・既に分かっている答えを確認することに恐れている?
「ユウト、まさかお主は・・・あの日から前に進めておらんのか・・・?」
「・・・・・・」
恐る恐る問いかける博士に対し、ユウトはただ笑うだけで肯定も否定もしない。
だが二人の間ではそれで全てが伝わったのだろう。イッキには分からない二人の関係、そして過去と現在が。
「これは預かろう。じゃが・・・」
「ああ、返事は後でいいよ。アトムさんがどんな答えを出しても恨まないし受け入れる。ってか、アトムさんの手を借りれないのならそれはそれで嬉しいことだしね。ただ・・・」
相変わらず笑ったままで、雰囲気も声音も変わっていない。が、次のその言葉には有無を言わせないものがあって――
「オレのやってることを止めようとかそういうお節介はやめてくれ。いくらアトムさんでもそん時は容赦なく叩くから」
その言葉に、イッキも博士も何も返すことは出来なかった。
「さて、んじゃまあ夜も遅いけど・・・大丈夫か?なんならまた日を改めても」
「大丈夫。家には泊まってくるって話してあるし。
なによりここで話してもらわなきゃそのままズルズル聞かないままになりそうだしね」
「そっか。ま、否定できねえしお前がいいなら問題ないか。んじゃ、話しますかねオレの目的」
イッキの返しに肯定しながらまた笑う。声を上げずただ笑顔が多いだけではあるが、ユウトは笑うのが好きなのだろうか?それとも・・・
『・・・・・・』
チラッとロクショウの様子を伺ってみるが、当のロクショウは壁にもたれながらジッとユウトを見ている。我関せず、という感じだ。
「お前らが今日戦った化け物な、アレはオレが追ってる連中が作ってるメダロットなんだよ。普通のメダロットとは全然違うけど」
「ユウトが追ってる組織?」
「ああ。大体4年位前からずっと追いかけてて、最近になってようやく手掛かりを掴めた。
けどあいつら一筋縄じゃいかねえようなのばっかでさ、オレとロクショウだけだとかなりキツイってことも実感させられた。だからオレはお前の力を借りるために接触した。そんな感じだな」
ざ、雑な説明だなあ・・・
「というわけで、お前たちの力貸してくんない?」
「軽っ!というかもう少し詳しく説明してよ!」
「え、もうちょい詳しくって・・・オレも話したくないこと結構あるんだけど」
面倒そうに、眉をひそめるユウトだがこれは大事なことだ。というか協力を請われる立場なのだから当たり前のことなのだが。
「じゃあそれはそれでいいから、話せる範囲で話してよ。というかそういう約束したじゃないか」
「あ~・・・そういやそんな約束したなあ」
「だからせめて追ってる連中の名前とか、何で君はその連中を追ってるのかとか、そういうのを聞きたい」
「ふむ・・・だな、説明は下手だけど努力はする」
そしてユウトは語り始める。己が目的の一端を、そして先程戦った異形の正体を・・・
「奴らの自称だけど、オレが追ってる連中は、
――《悪魔》って名乗ってるんだ」
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
――時は少し遡る。
「すみません、大人用の切符を一枚お願いします―――ええ、他の用事が重なってしまってしまってこんな時間になったんですが、少しでも早く向こうに行きたいので―――彼女?ハハハ、違いますよ。でも・・・そうですね。僕の大切な親友がいるんです」
イッキたちがユウトの手紙に誘われて家を出たであろう時とほぼ同時刻、バイトを終えたあがたヒカルはメダロポリスにある飛行場に一人いた。
目的は勿論、昼間に博士に頼まれた案件。自身の親友でありライバルであり、メダロット社副社長にして二毛作財閥の御曹司――深く考えると自分とあまりに違いすぎて泣きたくなるのだが――である二毛作ユウキ。博士の話では今世間を賑わせている《野良メダロット大量失踪事件》の手掛かりを既に掴んでいるという話だが・・・
「・・・よし、切符の購入は完了だ。しかしヘブンズゲートまでの運賃1800円というのは苦学生にはなんとも痛い数字だなあ」
富豪や財閥が数多く暮らしている天空都市・ヘブンズゲート。地球で一番宇宙に近い町とも言われるこの町は、そのイメージから選ばれた人間しか入れそうもない印象があるがそんなことはない。メダロポリスからのみ出る飛行機でしか行けないとはいえ、切符を買えば誰でも訪れることが出来る。それも飛行機を使うことを考えれば、信じられない保に破格の値段だろう。
もっとも片道で子供は900円、大人は1800円と気軽にホイホイと行くには厳しい値段設定ではあるのだが。
などと考えていると赤い電車が音を鳴らして到着する。ヘブンズゲートへと向かう便だ。ある一定の距離までは電車として走り、加速がついたところで飛行機に姿を変えて大空へ羽ばたくのだ。
「・・・僕以外に乗客がいないな」
会社帰りのおじさんも、ちょっとセレブなお姉さんもいない。電車に乗る乗客はヒカルただ一人で、他には誰も見当たらない。
とはいえ、当たり前か。夜も遅い、とはいいがたいがこの時間帯。しかも行き先はヘブンズゲート。よほどの物好き以外は誰もいないだろう。
「って、僕が言えることじゃないな」
苦笑し、乗客がたった一人でも走ってくれる電車兼飛行機と運転手に感謝しながら乗り込んで座席に座る。
さて、到着まで大体2~3時間。時間もあるし今日も疲れたし、少し眠るかな。
「・・・ん」
不意に両目を開き、ヒカルは眠りから目を覚ます。今の時間は・・・メダロポリスから出発して一時間半といったところか。ヘブンズゲートまではもう少し時間がかかる。
「・・・なんだ?」
座席は快適で、眠気もあった。恐らくはヘブンズゲートに着くまで目を覚まさないだろうという妙な自信もあった。
だが、ヒカルは目を覚ました。と同時に今まで何度も経験しつつなるべく多くは経験したくない、なんとも言えない奇妙な感覚が体にまとわりついている。
周りを見渡してみるが、自分以外には人もメダロットもいない。人の気配もない。出発したときと何ら変わらず、自分と操縦室にいるパイロットとそのサポート、計3人しかいないだろう。
「いや、でも・・・」
慣れ親しんだこの感覚は無視できるものでも、楽観出来るものでもない。これはいわゆる虫の知らせ、或いは悪い予感。何度も修羅場を潜り抜けた者のみが持ち得る一種の危機察知能力・・・!
「参ったな。これが僕の想像通りなら・・・後手になった時点で殆ど詰んでる」
そう呟いた直後だった。
ガクンッ!
「っ!?やっぱりね!」
激しい衝撃と揺れが飛行機を襲う!
「なんだ!何が起きた!?」
先程まで順調だったはずの航空から一転、訳の分からぬ衝撃に襲われたことでパイロットが叫ぶ。
当然だ、気流に捕まったわけではないのだ。機体の不調でもなく、外部からの衝撃がいきなり飛行機を揺らした。
「分かりません!いきなり衝撃が・・・っ」
言葉が続く前に再び揺れが襲う。偶然ではない、これは・・・!
「すみません!大丈夫ですか!?」
「き、君は!」
取り乱しかける操縦室、そこにヒカルが入ってくる。少しでも現在の状況が分かるかもしれないし、なにより二人が心配だったのだが、
「何をしているんだ!この揺れはまだ続く、早く席に戻るんだ!」
「いえ、出来ません。恐らくこの飛行機は何物かからの攻撃を受けています!」
そう叫ぶ間にも、ガアンッ!と激しい衝撃が数度襲う。マズイ、このままでは飛行機が墜落する・・・!
「僕以外に乗客は!?」
「い、いやいない・・・」
「ならフライトは中止して引き返してください。このままだと僕たち全員御陀仏です」
「し、しかし・・・!」
突然のことにサブパイロットは戸惑っている。が、悩んでいる暇などない。
「早く!」
「・・・分かった」
「き、機長!?」
「これは緊急事態だ!パイロットとして、これ以上危険な状態は見過ごせん!」
機長の方はまだ幾分か冷静なようだ。ありがたい、この様子なら任せられる。
「ありがとうございます。それと貴方の方はこの番号に連絡してください。『あがたヒカルから聞いた』と伝えれば話を通してもらえるはずです。万一の時は座標の転送もお願いします」
「き、君は一体・・・!?」
「僕はこの騒ぎの原因を叩きます。最善は尽くしますが、万一の場合着水の覚悟を」
ヒカルへの問いは別のことを聞きたかったのだろうが、二人は了解したのか黙って頷く。それを確認して、ヒカルは操縦室を後にする。
「やれやれ、再会は別の機会かな」
一人で愚痴りながらも頭は既に切り替えている。敵の数、特性、分からないことは多く後手に回ったハンデも大きい。正直シャレにならない。
「・・・けどまあ、まだ詰みじゃないし」
殆ど詰んだ状態だが、完全な詰みには早すぎるし遠すぎる。
何故なら彼は《あがたヒカル》。何故なら彼は《快盗レトルト》。命のかかった修羅場など10年前から何度も何度も、嫌になるほど乗り越えている。
「さて、反撃開始だ!」
マントを羽織り、仮面を被り、一瞬でその姿を変えたヒカル、否、快盗レトルト。彼は今なお攻撃を続ける愚か者を撃退すべく、飛行機の外へとメダロットを解き放った。
真に申し訳ありません、蒼騎士です。実はこの後の描写をどうするか悩んでいて、現在も二つの展開を考えてどちらにすべきか悩んでいます。一応次の話はそう長くかけることはないと思いますが・・・・
とりあえず、ようやくヒカルの活躍・そして以前書いていたΩのプロローグ部分に当たる展開には入っていけそうなので、もう少しだけお待ちください。批判・感想はいつも通りハーメルン・小説家になろうのどちらでも構いません