だけど次の話あたりで本編が進んでいきますよ。
というわけで今回は日常回です。
追記
大幅加筆しました。
おだやかな日常回からいつもの日常回に進化しました感。
時刻は昼過ぎくらいだろうか?
今日はリディアンの始業式という事もありもう学校自体は終って今は殆ど自由な時間だ。
新任の用務員である俺も今日は一通り説明を聞いた所で書類運びなどの雑用があるわけもなく、必然的にこの時刻にはもう休みになって、だから今――――――。
「―――――それで? 何か言うことはあるかな、蓮?」
「……悪かった、いやホンと、まじで悪かった」
もう他の用務員の方が先に帰ったところで、未来と響に捕まり用務員室で正座させられていた。
ちょっと、少しと言わず大分見誤っていた。
未来のその怒り具合を。
「……また気を逸らしてるね、蓮。 一体何を考えているのかな? さぞ大事な事なんだよね?」
「――――ごめんなさい」
「私は謝罪を求めてるわけじゃないんだよ? どうしていなくなったのか、何をしていたのかをちゃんと聞きたいだけなんだけどなぁ?」
なら今すぐその低い声と笑い声をやめてくれ。
そんな言葉を噛み殺して未来の後ろで顔を引き攣らせている響にアイコンタクトを送る。
――――響、どうにかして未来の怒りを抑えられないか?
――――ゴメン、無理。 まじ無理。
「今度は目を逸らしてる……随分と余裕なんだね―――蓮?」
「……ごめんなさい」
ダメだこれ、今の俺に未来は手におえない。
故にとりあえずいまするべきことは全身全力での謝罪だった。
―――俺、呪われてんのかね。
「最後は意識を逸らして……学習能力がないんだね、蓮。 締めなおす?」
「――――ほんとすみませんでしたッ!」
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「それで、改めて聞くけど蓮はどうしてここで年齢詐称して働いてるの?」
「ああ、それについては――――まあ、色々と」
心の中でぼやく事すら許されず大体10分ほど未来の説教を受けて、ようやく未来の気が少し収まったところで改めて用務員室の席に着いてから話し始めた。
内容は変わらない。
この二週間の間にどうしていたのか、どうやってリディアンの用務員に着いたのか、そしてどうやって年齢を誤魔化したのかとかそう言う話だ。
だから俺が返せる言葉は一つ――――詳しく言えないという事だけだ。
「色々って、その色々が何かを聴いてるんだよ、お兄ちゃん」
「……悪い」
「―――まさかとは思うけど、危ない事でもしてるの、蓮」
当たっているが故に少しだけ虚を突かれた。
未来がジッと此方を真剣な瞳で射抜く。
少しだけ、乾いた笑いを漏らした。
「―――はは、面白い冗談言うな、未来。 一介の用務員にそんな危ない事なんて……いや結構あるか」
「え、あるのッ!?」
冗談だと思っていたらしい響が驚きと不安を少しだけ眼に浮かべ、食いついてきた。
それに対して片目を閉じて是と肯定する。
「ああ、色々とな。 たとえば重たい荷物運びとか草刈とか」
「それ全然危険じゃないじゃんッ!?」
「いやいや、意外と危険だったりするぞ? 特に草刈り機は油断すると指飛ぶし」
「うそ、マジッ!?」
「まじまじ」
一瞬不安にさせてから冗談のようなたいしたことないそれを繋ぐことでテンポよく、ノリよく響と会話を繋げ始めていく。
そのテンポに着いて行けず少しだけ未来がぶすりと頬を膨らませるが、しかし会話に入れずやがて――――。
ぐぅぅっと、直ぐに小さくないお腹の音が鳴り響いた。
目の前で口を開けたまま顔を紅潮させていく様から響の腹の音だと一目でわかる。
俺か、未来か、どちらからともなく自然と口元を緩め、開いた。
「飯、食いに行くか。 久しぶりだし奢るよ」
「い、いや良いよお兄ちゃん! 私けっこう食べるしほ、ほら、お兄ちゃんもそんなにお金持ってないで――――」
「あ、じゃあ私は奢ってもらおうかな。 二週間姿くらましてたお詫びに」
「未来ッ!?」
ちょっと裏切られたと大げさな反応をする響の頭へと手を伸ばし、ゆっくり動かす。
わしゃわしゃと撫で、軽く二回ポンポンと叩いてから、置く。
「あんまり心配すんな。 ほら、俺はもう働いてるしお前ら二人食わせるぐらいへいきへっちゃらだからさ。 せっかく久しぶりに会えたんだしこんな時ぐらい遠慮すんな」
「む、むぅ……わかったッ! じゃあふらわーに行こ! 最近行ったお好み焼き屋なんだけどあそこのおばちゃんのお好み焼きはほっぺ急降下作戦って思えるぐらい絶品なんだよッ!」
一旦決まれば一直線、なんだかんだでそうと決まった時にすぐ動く響は立ち上がって、案内するよといいながら用務員室を出た。
未来も鞄を持って立ち上がり追いかけようとして――――。
「蓮、さっきの事だけど、本当に変な、危険なことしてないよね?」
そうドアノブに手を当てて背中を見せた姿勢のまま、真っ直ぐ顔をドアへ向けて言った。
「さっきは響がいなかったから言えなかったのかなって思ったんだけど……本当は危険な事をしてるとか」
―――誤魔化しきれるわけないか。
そう思いながら、少しだけ顔を横に背けて、でも返答は変わらない。
「―――そんな危険なことしてないさ」
「答える気がないんだね。 扉に映ってるよ、蓮。 蓮って嘘を吐くとき、ちょっと後ろめたいことがある時にいっつもそうやって、一拍おいて顔を背けて誤魔化す」
「……悪い、けどそこまで危険じゃない。 それは絶対に絶対だ」
「無茶してないって言い切れる?」
「無理はしてない」
それは真実だ。
俺という個人が危険に落ちることは殆どあり得ない以上無理は起こり得ない。
ノイズという生物が人間の天敵なのであればそのノイズの弱点といえるフォニックゲインを全身から発している俺はあいつらの天敵そのものなのだから。
「――――分かった、だけど蓮、最後に一つだけ聞かせて。 蓮は、二年前のあの時の事、覚えてる?」
少しだけ小さく、震えるような声で俯きそうになりながらも未来が踏み込み、尋ねらたソレ。
それを当然、理解できる。
二年前のあの時、俺と未来で共通であの時と呼べるのはきっと『あの時』しかないから。
――――俺が未来を、響を護る。
そう誓ったあの時。
俺の日常を奪わせないと決心したあの時。
家族を、
災害から、人から護ると言ったあの時の事だと言われなくとも一瞬で思い出せる。
だから告げる。
「―――忘れるわけないだろ、お前も響も絶対に護ってやる、たとえどんだけ無茶しようとそれだけは絶対に絶対譲れないからな」
それはもう一つの『その時』を思い出させる。
それは俺と、響の共通の出来事であるあの二年前の災害の時。
俺は弱くて、響が死にかけたその時、俺と響が災害で生き残った者として周りから殺人者と言われ始めたその時。
あんな惨めな、情けない思いはもうしない。
そう誓った言葉だから、俺が言った言葉を聞いた未来はドアを開いて、振り向いた。
護りたいと思った満面の笑みを、陽だまりの様な暖かい笑みを浮かべて。
「――――そっか、なら今は私は待ってるよ。 蓮が今度こそ、もう絶対ちゃんと帰って来るならもう何も聞かないであげる」
「……ありがとな、未来」
それを護りたいと思ったから、それを護るために戦うと決めたのだから。
だから――――。
「絶対約束する」
「うん、信じてる。 それじゃ、いこっかッ!」
「ああ、そうだな。 響が待ちくたびれてそうだ」
腕を曳かれて、若干早足で二人並んでドアの外へと歩き出して行った。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
遅れたことに響に文句を言われつつ、学校からバスに乗らず歩いて十分ほどでその店、お好み焼き屋『ふらわー』に着いた。
建物と建物の間にある小さめの個人経営の店らしいそこ。
響たちの評判に反して少ない店内の人影は隠れた名店だからかそれとも昼を少し遅く過ぎたころ間からか。
少し測りながら響たちに引っ張られるまま店内へと足を運び、ソースの良い匂いと焼ける音に自然とあたりだと感じた。
「おやいらっしゃい……お嬢ちゃんたちよく来るねぇ……と、こりゃまた随分と背の高い美人さんを連れてきたもんだ。 お嬢ちゃんのお姉さんかい?」
「お姉さっ……ぷふ」
「お、おばちゃんっ……れ、蓮は! ……っくあはははっ!」
店主らしい女性が顔を見るなり意外そうに、身長が高い女性だと言って、響と未来が全力で笑いを堪え始めた。
俺自身若干顔が引きつるのを自覚しながら、なるべく冷静にと言い聞かせて一礼する。
「は、初めまして、響の
「お、おや? お兄さんだったのかいッ!? そ、それは失礼したねえ。 まあとりあえずお好きな席に座ってちょうだいな」
「是非そうさせていただきます。 ……ほら二人とも、いつまで笑ってんだ。 迷惑になるだろ」
「わ、わかった……ぷふッ! お、お姉ちゃん」
「う、うん……れ、蓮お姉さんっ」
ちょっと腹が立ってきた。
笑っている二人に軽く凸ピンを叩き込み、カウンター席に三人並んで座る。
お冷が出されたタイミングでようやく二人の笑いの渦を止まった。
「はーっ! はーっ! ちょっとマジでお腹痛いかもッ!」
「しょ、しょうがないけど実際蓮って響と似てるもんね!」
「お前ら……ッ! ――――はぁ。 ……飯食いに来たんだからさっさと選べよ、俺は二人に任せるから」
ちょっと所ではなく正直に言って疲れた。
なんだかんだで収まってないさっきの話に飯食いに来たのに何で疲れなきゃならんのかとため息を吐いて、そう二人に任せることにした。
「ん、わかったッ! おばちゃん、前と同じのおねがーいッ!」
「私も、蓮もそれでお願いしますっ!」
「あいよ。 直ぐできるからまっててちょうだいな」
店主さんはそう言って生地の準備をし始めてから二分ほどで焼き始めた。
直ぐに分かるほどに香ばしい匂いが立ち籠め始め、自然とお腹が食わせろと欲求を上げる。
まだかまだかと、しかしゆっくりと待ちたいと思いながら水を飲みつつお腹が空いて集中しているからか三人無言で待ち、十分ほどで直ぐに焼き上がり直前まで言ったのか店主さんがこっちを向いた。
「切り分けはそっちでするかい、それともこっちで?」
「んー……こっちでいい?」
「私は構わないよ、蓮は?」
「あっ、できれば切り分けてもらったほうがいい。 ほら、あんまりうまく分けられないし店主さんの方が慣れてるだろうし」
「ん、了解したよ。 でも店主さんじゃなくておばちゃんでいいよ、そう気取らないでさ」
そう言いながらぱぱぱと腕を動かして焼き終えたらしいお好み焼きを三枚の皿に盛り付け、ソースと海苔と鰹節をふりかけてから店主さん……おばちゃんは此方に皿を出した。
「はい、お待ちどうさま。 温かいうちにちゃんと噛んで食べるんだよ?」
「はぁーいッ! ではでは皆様、お手を拝借してぇー」
「なんか違うだろそれ―――」
「あ、ははは……」
響の間違った知識に未来と一緒に苦笑いしながら、両手を合わせた。
そして同時に――――。
「「「いただきますッ!」」」
楽しい昼餉の時間は始まった。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「――――美味かった」
予想外というべきか、予想以上というべきか兎にも角にもお好み焼き屋『ふらわー』のおばちゃんが作るお好み焼きは響や未来が絶賛するのも分かるほどに美味だった。
予想以上に美味しすぎてお代わりしてしまうほどに。
「いやー食べましたねぇ。 ……というよりお兄ちゃん凄いよ、あんなに食べれるなんて」
「そうだよね、私も蓮があんなに食べるなんて思わなかったな。 あれ一枚で一人前位の分量あるのに」
「俺はお前達と違って肉体労働中心だからな、最近運動を多めにしてるのもあって結構燃費悪いんだ」
事実少し前まで、リディアンが始まる前までは師匠の修行していた時は今よりさらに量を取っても足りなかったぐらいだ。
「へぇ―――つんつん」
「……お前、何してんだ?」
少しだけ考え事をしようとした瞬間に響が腕を突いていた。
二三回ほど突いたと思ったら酷く驚いた表情をして、
「うわ、ほんとだっ! お兄ちゃんそうは見えないけど筋肉が凄いことになってるっ! かっちかちだよ!」
「それ、ほんとっ!?」
「いや、ちょっと二人ともやめ――――っ!」
響と響の言葉に反応した未来の二人がかりで突かれる。
正直に言って擽ったいからやめさせようと腕を動かし、ひょいと避けられて腹を突かれた。
「うわ、こっちも硬いよ響っ!」
「え、ほんとだっ!」
「だから二人ともやめろって!」
擽ったいどころではなく変な声がでそうになるのをどうにか堪え、タイミングを見て頭にチョップを放つ。
鈍い音が二つ鳴り、ようやく二人は頭を抱えて止まった。
「うう、暴力はんたーい!」
「そういうことは家でやれ、ここ辺りだと悪目立ちするだろうが」
二人とも調子に乗って忘れてるのかもしれないがここはまだ店の前だし道の真ん中だ。
はっきり言って迷惑になっているだろうし周りの目を引く。
そういって二人を軽く小突くと、唐突に未来が固まった。
「あ、はは。 そうだよね……って――――あ」
「うぇ? 未来、どうかしたの?」
表情が固まり、徐々にヤバいと言った様子に歪んでいくのは何処からどう見ても何かを忘れていたのだろう。
というよりたった今俺も思い出したんだが――――。
「今日は始業式ってのもあって寮の点呼が速いんじゃなかったか? 確か3時15分ぐらいで、今は――――2時55分だな」
「うぇ!? や、やばいよ未来どうしようっ!」
「と、とりあえず急いで走ろっ! そうすればまだ間に合うからっ!」
慌て始めた二人に苦笑しながら気を付けろよと言葉を送る。
急いで走る準備をしながらも二人は笑って、勿論と返した。
「じゃあねおにちゃん! また機会があったら一緒にいこ―――!」
「じゃあね蓮っ! あまり無茶はしないように――――!」
「うわちょ未来はや、まってぇ!」
ドタドタと全力で駆ける二人に呆れながらやはりこうじゃないとと思う。
そう、こんないつも通りの日常を再びしたいと願ったんだから。
「今度こそ―――」
右腕を開いて、握り締めた。
もう取りこぼさない、怪我させない、危険な目に遭わすもんかと誓う。
此処なら守れるから、ここなら安全だから。
「奪わせない、護るんだ」
そう誓った。
もう絶対、危険な目になんか合わせないと。
そう誓った、はずなのに。
「ノイズの反応検知――――ッ!? アウフヴァッヘン波形確認っ!」
「データ照合……これってッ!?」
二課の中、誰もが驚いたその事態。
ノイズの反応を検知して、場所を特定して映像が回ると同時に聖遺物の反応を示すアウフヴァッヘン波形が現れた。
「ガングニールだとぉッ!?」
それがなんなのかは聞いていた。
あの時、二年前に奏さんが扱っていたシンフォギア、その聖遺物である撃槍については。
だけどそんなことはどうでもいいとさえ思っていた。
「なんで―――――」
唇が震える、映像の様子を信じられないと脳が読み取りを拒否する。
「どうして――――――」
映るのはあの時見た奏さんのシンフォギアと同一の衣装。
だが、纏う人が違う。
「どうしてお前が―――――ッ!」
オレンジの髪、跳ねかえった癖っ毛、顔の全体的なパーツは俺と同じ、似ているそいつは何処をどう見ても、どこからどうみてしまっても、
「なんでお前がギアを身に纏ってんだよ――――響ッ!?」
それは俺が