戦姫絶唱シンフォギアAA   作:マアア

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遅れてしまって申し訳ありません。
ここ最近リアルが忙しいのです。


雑音と不協和音と・Ⅰ

 

ノイズはいなくなった。

私にはもう何が何だかよくわからないうちに終わった。

けれどわかったことを簡単にまとめるならどこかの制服を着たお兄ちゃんや私と似たような、奏さんと似たような衣装を着た翼さんはノイズを倒す力を持っているということ。

だけど二人に、お兄ちゃんと翼さんは酷く思いつめた表情をしていて、とてもそのことを聴けそうになかった。

 

どうしよう、と思っているうちにサイレンみたいな音が集まってきて、この場所を囲い始めた。

それが聞こえてようやくノイズが本当にいなくなったんだと実感できて、深く息を吐いた。

 

「はぁ―――――おわった、んだよ……ね?」

 

私自身がそう判断したからか、緊張が固まって、束になっていたみたいに足と膝が思い出したかのようにガクガク震える。

発言に対する返答は、背後から響いた声が答えだった。

 

「お疲れ様、はいこれ、あったかいものどうぞ」

「あっ……はい、あったかいものどうも」

 

振り向いた先にはお兄ちゃんと似た制服姿のお姉さんがいて、あったかいものをくれた。

紙コップに入ったそれを渡されて、両手でもって少しだけ飲む。

 

「――――ぷしゅぅ」

 

ほっと一息、あったかいものを飲んでリラックス。

変な声が口から漏れ出るくらいに気が抜けて、少しだけ最後に残っていた張りつめた意識が霧散する。

それがトリガーだったのか、その瞬間いまの今まで身に纏っていた衣装が突然はじけた。

 

「うえ、あっと!?」

 

着る時と同じで一瞬ではじけた衣装、脱げると同時に制服を着た姿に戻っていてちょっと便利だと思うけれどあまりにも突然だったから折角貰ったあったかいものを手から離しながらバランスを崩し、あったかいものが落ちるのがゆっくりと見えた。

急いで手を伸ばそうとするけど間に合いそうになくて。

 

「っと、ほら、気を付けろ」

「あ……ありがと、お兄ちゃん」

 

気が付けば目の前に立っていたお兄ちゃんがあったかいものを落ちる前にキャッチして、私の手を取ってくれた。

再び渡されたあったかいものに向けていた目を前に向けて――――でも、目線が合わない。

 

「――――お、お兄ちゃん?」

「――――――」

 

喋らないお兄ちゃんはそっぽを向く。

その表情と、目からわかるのは憤激、つまりかなり怒っていること。

 

「え、えーっと……どうかしたの?」

「っ!」

 

何か悪いことしたっけ考えても浮かばないから何気なく尋ねた言葉にお兄ちゃんは凄く、酷く、怒ったような悲しんでいるような表情を取り繕えず、その感情を溢れださせた。

 

「どうかしたじゃねぇだろっ! なんでお前こんなとこでこんなことしてんだよっ!」

「―――――えっだ、だって女の子がっ!」

 

怒鳴り声、大きな声、周りにいる人たちが皆こっちに注目してるけど、そんなこと気にする余裕はなかった。

だって、この怒鳴り声は、怒りの声は――――悲憤に満ちている。

そんな声を、そんな表情をしてほしくないから、理由を伝える。

 

「理由はわかるさ、いつも通りの人助けだろ? オマエの趣味だもんな。 だけど――――心配するこっちの身にもなれ馬鹿ッ! ――――俺が、お前が現場にいると知ってどんだけこっちの肝が冷えたと思ってるんだよ……」

「――――ぁ」

 

言われて初めて、ようやく自分がどうして怒られているのか理解できた。

身体を引っ張られて、胸に抱かれて初めて、お兄ちゃんが震えていることに気付いた。

その震えは恐怖だと思う。

もし仮に―――お兄ちゃんが急に死んだとすれば、死ぬような危険にあったとすればと考えてみて、一瞬で産毛が立つほどの恐怖を覚えたから、危ない、危険なことはしてほしくないと思った。 それは多分きっとお兄ちゃんも同じなんだろう。

だから危険な場所に行ったことを怒っている。

 

「――――ごめんなさい、本当にゴメン、お兄ちゃん」

 

わかったから、自然と身体を預けながら謝った。

優しくだけどしっかりと確かめるように抱いてくれるお兄ちゃんに、優しく温めてくれる()に身を任せて、頭を撫でられながらしっかりと、そう謝った。

 

「――――今回は許す。 だから俺に、未来に不安を掛けるようなことすんな、馬鹿」

「……馬鹿って何さ、おっきくなったお兄ちゃん」

「馬鹿は馬鹿だろ、大馬鹿だ。 こんなところ、所まで行きやがって―――――これから大変だぞ?」

 

そう言ってお兄ちゃんが抱きしめるのを解いて離れる。

ちょっとだけ名残惜しくて腕を伸ばして――――。

 

 

 

―――ガシャンと音を立てて腕に金属の輪っか、手錠がかけられる。

 

「……へ?」

 

突然も突然、なんでいきなり腕に手錠を掛けられたのかと一度腕を見てからもう一度前を向いて、気付けば目の前に優しそうな男性が申し訳なさそうな顔をして立っていた。

 

「申し訳ありません、今、貴女を直ぐに寮に返すことは出来ません。 任意ではないですが同行をお願いします」

「へ、え、えぇ!?」

 

訳が分からないうちに先導されて車の前へ、分が分からないから周りを見渡してお兄ちゃんを見つけて助けを呼ぼうとして――――。

 

「ん、未来か? 響を見つけた。 馬鹿やってるところ説教して、終わり次第返すから安心しろ―――じゃな」

「そう言えば未来に連絡するの忘れてたッ!? そこはありがとうだけど内容がうれしくないよっ!

「安心しろ響―――一時間ぐらいで済むと思うぞ、多分」

「多分ってなにっ!?」

 

結局、訳の分からないまま車に押し込まれてどっかに行くことになっちゃった。

 

――――私絶対呪われてるっ!

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

結局怒れなかった俺は甘いんだろうか?

車に乗って移動すること五分、リディアンに着いた俺たちが教員棟のエレベーターを使って二課に移動するまでの間にそんなことを考え続けていた。

命を危険に晒すような危ない事をしたのに結局怒れず、触れて実感があることに安堵するだけで終わらせることになった。

どうだろうかと横を見れば響が急発進して下に降りるこのエレベーターに驚いたのかへっぴり腰になっているのが見える。

そんな姿から目を外してさらに横を見ればあの場所、さっきまでいた工場の時よりずっと険しく、深く悩んでいるような表情を見せる翼さんがいる。

更に目を動かせばいつも通りの緒川さんがいる。

 

――――まあ、今は考えない方がいいか。

そう思い顔をエレベーターの外に向ければ何度か見て慣れたその壁画がある。

 

それは赤。 赤い、朱い、炎の紅蓮。

それは白。 速く、早く、疾い狂獣。

それは黒。 固く、重く、貫く黒鉄。

その中央に黄金。 万色が煌めく百獣の王。

 

称えよ、崇めよ、賛美せよ。

ひれ伏し、その黄金の威光に打ち震えよ。

それ以外は許さぬ、それ以外は認めぬ。

逆らうものは許さないとでも言う様な迫力を、威圧を持った壁画。

 

 

「――――――っ」

 

やはりと言うべきか、やっぱりと言うべきか。

この壁画を見るとなぜか酷く不快なような、気持ち悪いような、敵意のような言葉にならない感情がこみ上げる。

理由は分らんしわかりたくもないがとにかく見ていて気持ちのいいものじゃないと感じる。

絵自体は素晴らしいはずなのに、まるで合わない。

まるで西瓜と天麩羅を同時に食べるような気持ち悪さ。

それに頭に軽い疼痛すら覚え、右腕が少しだけ疼く。

いつまでも見ているとどうにかなってしまいそうで、自然と視線を外して再び響を見た。

 

「―――あ、あの……翼さん?」

 

ようやく衝撃から抜け出せたのか普通に立っている響は遠慮がちに軽く笑いながら翼さんにそう声を掛けた。

 

「愛想笑いなどいらないわ」

 

対する返答は鋭い刃のような言葉。

響が困ったような顔をし、翼さんが悩むような表情から少しだけ鋭さを見せ、前を向いた。

同時にエレベーターが着いたことを示す音が鳴り響く。

 

「この先に―――――微笑など不要なのだから」

 

そう言って翼さんはエレベーターのドアが開いた先の通路へと一歩踏み出し、緒川さんもそれに続く。

 

「お、おにいちゃん……」

「……大丈夫だ、そんなに悪い所じゃない」

 

少しだけ不安そうな表情をした響の頭をそう言いながら撫で、腕を引っ張って俺達もエレベーターのドアを潜り抜け―――――。

 

 

 

「ようこそッ! 立花響君。 人類最後の砦、特異災害対策機動部二課へッ! ! !」

 

 

 

微笑などない、満面の笑みを浮かべた師匠率いる二課の面々がクラッカーを鳴らして立っていた。

 

「……はへ?」

「……はぁ」

「……なにしてんだ、てか俺の時と違うというより女尊男卑がすぎるだろ」

 

響は状況について来れず呆け、翼さんは気勢を削がれたかのように呆れて溜息を洩らし、俺は師匠が予想の斜め上の対応をしていたことにちょっとぼやいた。

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

予想以上に予想外が過ぎてもう訳が分からな過ぎて爆発しちゃいそうだ。

クラッカーの嵐にもまれながらそんな言葉が頭に過ぎる。

夕方にノイズに襲われて、全て終わったら手錠を掛けられて学校に運ばれて、その先に学校の地下に着いたと思ったら何故か既に知れ渡ってる私の名前が書かれた垂れ幕が下りると共に歓迎会が始まっていた。

 

突然すぎる事態に呆けていて、だからそのまま歩いてきた女性に対して反応できなかった。

 

「さあさあ笑って笑ってっ! お近づきの印にツーショット写真っ!」

「えっ、て嫌ですよっ!? 手錠したままの写真なんて絶対悲しい思い出になっちゃいますしっ!」

 

言って肩を抱いて写真を取ろうとした女性の腕の中からするりと抜けだす。

色々突然が過ぎるけどようやく考えられるぐらいに頭が回復したから色々疑問が過ぎって、とりあえず声を上げる。

 

「そもそもなんで私の名前を始めてあう皆さんが知ってるんですかっ!?」

「我々二課の全身は政府直轄の機関でな、この手の事はお手の物さ」

 

現実逃避みたいにとりあえずまず突っ込めたソコに対する問いかけにそんな言葉を返してくれたのは最初に私に対してクラッカーを鳴らしたマジシャンみたいな帽子を被って笑いながら立っている男の人。

とりあえず言葉をそのまま鵜呑みにすれば政府直轄組織だから調べられたってこと。

ちょっと凄いし肩書きがかっこいいかもと思ってしまう。

だけどさっき一緒に写真を取ろうとした女性が見慣れた鞄を持っていて――――。

 

「――――ってそれ私の鞄じゃないですかっ!?」

「ああ、回収させて貰った」

「それってつまりさっきの話は鞄の中を見たからわかっただけじゃないですかぁっ!?」

 

そういうことだっ! と笑いながらサムズアップするその様子にさっきの感心は飛んでいき、プライバシー侵害に対するちょっとの怒りの感情ももう怒る気力すら削がれた、だからもう色々諦めて深くため息を吐く事しか出来なかった。

 

 

 

 

 

暫くしてお兄ちゃんがこっちに来て腕の手錠を外してくれて、改めて私はお兄ちゃんとこの男の人と女の人と改めて向き合った。

 

「―――では、改めて自己紹介だ。 俺は風鳴弦十郎、ここ、二課の責任者をしている」

「そして私は出来る女と評判の櫻井了子ッ! 自他ともに認める世紀の大天才よんっ! よろしくねっ!」

 

向き合って二人、弦十郎さんと了子さんは挨拶をしてくれた。

私もそれにお辞儀を返しながら頭を下げる。

 

「ああ、頭を下げる必要はないぞ、むしろこっちは色々お願いする側なんだからな」

「お願い……」

 

お願いと言われて、何かあっただろうかと考えて色々インパクトがありすぎて忘れていたそもそもここに来た原因を思い出す。

胸に浮かんだ言葉、胸を貫いた光、そしてオレンジ色の装束。

どれもこれも未知だったあのほんの数十分前の出来事を。

 

「教えてくださいッ! あれはなんなんですかっ!」

「んーそれを教える前にお願い事が二つあるの」

 

私の疑問にそう返した了子さんは再び目の前に歩み寄ってきて、私を抱きしめるように腰から引き寄せた。

 

「ち、近いで―――――」

「一つ目は今日会った出来事はこの場にいる人以外には誰にも言わないで欲しいってこと。 蓮君以外の家族や友達には誰にも言っちゃいけないわ」

「―――――誰にも、ですか?」

「ああ、そうだ」

 

突然抱き寄せられたことへの困惑を忘れて、疑問符のような言葉を浮かべた私にそう返したのは少しだけ眉間に皺を寄せたお兄ちゃんだった。

 

「俺は一応二年前から此処に所属してるけれど今日まで誰にも、響や未来に対してすら言ってこなかっただろ」

「二年前―――――」

 

そう言えばと合点がいく。

二年前以来お兄ちゃんは少しどころじゃなく学校生活が不真面目だった。

二、三日に一回はいなかったし、いたとしても授業を突然サボったり。

理由を聞いても教えてくれなかったからちょっと所じゃなく未来と一緒に大分怒ったけど今になって見れば少しだけ納得できた。

 

―――――でも、それでも、少しでいいから教えて欲しかったと思うのは、未来には教えたいと思うのはダメなのだろうか。

 

「そろそろ続けてもいいかしら?」

「―――あ、はい。 大丈夫です」

 

ちょっとだけ思ったことを今は直ぐに振り払う。

先に聞くべきはこっちだろうと。

そう思い、前を向くと同時に私の返答を聴いた了子さんは私をグイッとさらに強く抱きしめるように体を密着させて、耳元に唇を近づけた。

 

「二つ目は―――――まずはちょっと服を脱いじゃいましょうか」

「……え?」

 

理解することにたっぷり十秒。

理解してフリーズした思考を戻すのにさらにもう五秒。

表情が赤面していくのを感じながら喉から声が悲鳴として出そうになって、

 

「了子さん、俺の時もそうだけどその言い方は辞めてくれ」

「うぇっ!? お兄ちゃんも言われたのっ!?」

 

更に投下された爆弾に驚愕することになって折角落ち着いた思考がまた沸騰し始めた。

とりあえず、今私が何を言うべきかはわからないけどこれだけは言える。

 

「私、絶対呪われるぅーーーーっ ! !」

 

主に訳の分からないことが集中してくるように神様に意地悪されている気がすると、そう思った。

 




次話投稿も遅れると思いますがゆっくり待っていただければ幸いです。
追記
活動報告にヒロインについての投票があります。
もしよろしければご確認ください。
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