あと少し前にアンケートを取りましたがメインで進める話のヒロインがクリスちゃんに決定しました。
他三人も書きますがゆっくりになるかも。
すまない……カメ更新で本当にすまない……
昨日の戦闘から一夜明けて、若干寝不足気味ながらいつも通りに学校でのやるべきことを終える。
草刈、備品の確認、書類の運搬などそこ辺りは普通の用務員と変わらない。
ただ俺の場合は性別の関係で他の人よりも仕事が少なく割り振られていて、その開いた時間の分了子さんから宿題のように高校レベルの課題をいくつか出されている。
『せっかく暇なんだし中卒程度の頭じゃアレだから蓮君も少しはやっといたほうが苦労しないわよ?』
とは了子さん本人の弁。
ありがたいけれど、逃れたと思っていた勉強に追いつかれた様な気分で若干複雑だ。
おまけに言うと真面目に取り組まなきゃ分からない程度には難しい。
なんでも了子さんの自作の問題らしく基礎を踏まえたうえである程度応用を利かせるのが必須という難易度だ。
正直言って頭が痛くなってくるが、それでもノルマを終えるように真面目に取り組んで気が付けば放課後の時間になっている。
問題の達成率は順調と言った所。
だけど今日は放課後になり次第二課に行かなきゃいけないから、あと数問で終わるけれど切り上げる。
「それにこれ以上これで頭を悩ませたくないし、な」
筆記具を置いて、そっと鞄に荷物を纏め始めること数秒、準備を終えて、部屋の外へと出た直ぐ先に青い髪を揺らす彼女、翼さんが立っていた。
「―――翼さん」
「蓮、貴方に話がある」
一日置いての対面、如何したのかという問いかけに真正面から断ち切る様に一言、面と向かって翼さんはいきなりそう言った。
「いきなりなんだ? 俺は響を連れてかなきゃならないんだが?」
「そのことについてよ、彼女を連れて行くの、私に任せてくれないかしら?」
「どうして?」
「どうしても」
有無を言わせぬ口調は余り平時にあまり話さない俺でも感じとれるほどに、違和感を先端に出す。
交錯する視線には平時の倍以上の鋭さを感じさせ、嫌が応にも警戒心を沸き立たせる。
まるで初対面の時、初めて右手を起動させた時のような余裕のなさを前面に押し出させている。
自然と是という事を躊躇わさせられた。
だが――――。
「返答は―――?」
「まあ、構わない―――一応言っとくけど変なことしないでくれよ」
「ええそうね、ただ少し、尋ねるだけよ」
言葉を交わしたのはそれだけ、翼さんは歩いて去っていく。
その後ろ姿を眼にしながら、誰もいない通路でため息交じりに声を掛けた。
「――――緒川さん」
「はい、もちろんちゃんと見ておきますよ」
校内に部外者が目撃されてはいけない為か声だけを伝え、姿を見せないままその人、緒川慎次さんは役目を果たすため、気配を消したまま翼さんを追いかけて行った。
緒川さんがいれば最悪は起こり得ない、あの人の規格外さをそれなりに理解しているから安心して翼さんを響の元にいかせられた。
「―――さて、俺は先に行くかね」
まあやることが無くなり手持無沙汰になった俺は言葉の通り、いつもの乗り慣れたエレベーターへと向かった。
知られたくないことを知られ、知りたくないことを知りに、二課へ向かう。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「はぁ~い、それではぁ、先日のメディカルチェックの結果発表ぅっ!」
陽気な気の抜けた声が医務室の近くの部屋、二年前に俺が同じように検査結果を伝えられた部屋に響き渡る。
部屋には発言の主の了子さん、師匠、友里さんに藤堯さんたちに少し遅れてやって来た翼さんと翼さんに連れてこられた響に俺の7人がそろっている。
「じゃあまずはじめにぃ」
了子さんが発言と共に手に持った機器のボタンを押し、部屋の映像機器が響の体と、その模型映像を映し出した。
「初体験の負荷は残ってるけどぉ、とりあえず体に不調はないわねん、ちょっと懸念してた精神の方も普通に安定してるみたいよん」
映されたそれに付随するのは二年前の俺の時と同じで不調が多少あれど健康に支障なし、オールグリーンと示すものだ。
それに少しだけ、安堵のため息を吐く。
だが――――。
「でもぉ、響ちゃんもそんなことが聴きたいわけなじゃよねぇ?」
「はい、教えてください、この力が何なのか、奏さんが、翼さんが使っている力と、お兄ちゃんの腕とどんな関係があるのかを――――」
弦十郎さんと了子さんの視線を皮切りに翼さんと俺に視線が向かう。
翼さんはそれを受けて首に掛けているペンダント、シンフォギアを響に見えるように取り出して、掲げた。
俺もまた、右腕の裾を捲って力を籠め、腕を黒に染める。
「『アメノハバキリ』に『ボワ・ド・ジュスティス』。 我ら二課が所有する第一号、及び第六号聖遺物だ」
弦十郎さんが翼さんのペンダントと、俺の腕を指してそう言う、響はどういうことなのか、とよくわからないらしく?を浮かべ、了子さんが説明を継ぐ。
「聖遺物とは、現在の神話や民話に伝わる人間には作れない異端技術の結晶の事よ。 多くは遺跡とかに保管されてて、でも経年劣化が著しくってかつての機能を持っているものはほんとに希少なの」
「この刃、翼の『アメノハバキリ』も切っ先部、つまり極一部にすぎない」
「欠片に残ったほんの少しの力を目覚めさせる唯一の鍵が特定振幅の波長を浴びせること、すなわち歌う事よ」
「歌……そう言えばあの時確かに胸に歌が」
響は胸を抑えて初変身時を思い出しているのかそう言った、了子さんは頷き、続ける。
「放出された力をエネルギーとして固定化して鎧として身に纏ったのが翼ちゃんが纏っていたそれ、アンチノイズプロテクター『シンフォギア』なの」
「シンフォギア……」
思考が追い付いていないのか、半ば呆然としながら響はその名前を呟く。
説明をある程度立て続けに言って、了子さんも息を整えるために説明を止めたそれは一種の間であり、故に誰も喋っていない空白だ。
「だからとて……」
故に翼さんのその声は、
「誰でも歌えばシンフォギアをまとえるというわけではないッ!」
その表情と共にその部屋に鋭く響いた。
苦渋に満ちたような、苦虫を噛んだような表情が複雑な思いをその場にいた全員に伝える。
「誰でもは無理、なんですか?」
唯一、響を除いて。
了子さんは苦笑しながら頷き、師匠が立ち上がりながらそれはと続ける。
「聖遺物を起動させる歌を唄えるのは一握り、ほんのわずかな人間だけだ。 その人物たちを俺達は適合者と呼んでいる、それが翼だ」
わかったかな? と師匠が若干呆けた様子の響に問いかける。
あのぉ……と響は声を上げた。
「全然わかりません……」
ちょっと空気が固まる。
慌てたように響がでもと、繋げた。
「なんかよくわかんないけど―――一つだけ、聞きたいことがあります。 お兄ちゃんの腕はその……シンフォギアと違うんですか?」
「――――それは」
少しだけ師匠が言いよどみ、俺に視線を合わせる。
俺はそれに無言で頷くことを返答にした。
響に話を伝える以上聞かれることは覚悟していたから、だから今は話を続けることを促す。
首肯した師匠に次いで、了子さんが前に出た。
「ええ、勿論するわよんっ! 寧ろこっからが本番ってところよね、例えるなら今までは序曲でこれからフィナーレってところだものっ! それと蓮君の事は響ちゃんについてと一緒に説明しましょっか、せっかくの似た者兄妹なんだしそうしなきゃ二度手間だもの」
了子さんが再び手に持った機器を操作して、画面を切り替わる。
数瞬の間の後、響のレントゲン写真と俺のレントゲン写真が一つずつ、並べられた。
響のレントゲンの胸部には何かの欠片が映り、俺のレントゲンの右腕は真っ黒で何も映っていない。
「響ちゃん、あなたこの胸の破片に何か心当たりはあるわよね?」
「えっと、二年前の怪我です。 あの時私とお兄ちゃんもあそこにいて……」
「そっか……みんな、心して聞いて頂戴ね」
了子さんが唐突に、そう声色を変えて、真面目な表情でそう一言置いてから、告げた。
「胸部に複雑に食い込んで摘出不可能な物質。 調査の結果わかったんだけど―――響ちゃん、これはね、かつて奏ちゃんが纏っていたギア、第三号聖遺物であり、撃槍と呼ばれた『ガングニール』の欠片の一部だという事が判明したわ――――つまり、奏ちゃんの置き土産ね」
部屋の中に息を飲む音が響く。
誰もが一度口を閉ざして、その意味を理解していく。
だけどと了子さんは続けた。
「驚きはまだこれからよ―――――欠片でしかない『ガングニール』、この私が提唱した櫻井理論で生み出される『シンフォギア』ではなく、あくまで只の聖遺物である『ガングニール』が響ちゃんの歌で起動して、鎧として『形成』された。 つまり響ちゃんのあれは『シンフォギア』じゃないの」
「ちょ、ちょっと待ってくださいッ! アレが、あの戦装束がシンフォギアではないと言うのですかッ!?」
信じられないと言うように、認めたくないと言うように翼さんが血相を変えてそう了子さんに食い寄る。
返答として了子さんは頷くことで返す。
「そんなっ……!」
翼さんはふらつき、顔を抑えながら壁に手を掛け、フラフラとしながら部屋を退出する。
了子さんは目を伏せてから続けるわよと残った全員に声を掛けた。
「だから言ったのよ、蓮君と似てるって。 ――――体内に聖遺物を宿して、体内に溢れるフォニックゲインとアウフヴァッヘン波形を調律してシンフォギアの形として『形成』している……正直に言って予想外すぎて私でも知った瞬間持ってた書類をぶん投げたくなったレベルよ」
もっとも、そう了子さんは言葉を付け足す。
予想外ではあるが想定外ではないと。
「翼ちゃんが初めて『アメノハバキリ』を起動したときのように歌だけでも聖遺物を活動状態にまでは持っていくことは可能、本来そこから先にシンフォギアによるエネルギーの固定が必要だったんだけど――――融合症例、体内に聖遺物を宿している場合にはそれは不必要なんじゃないかって言うこと自体は考えていたわ、蓮君の前例があったからね」
「……エネルギーの放出と収束、確かに俺が普段やってる事か」
「そう言うことになるわね……でもレベルが違うわ。 蓮君は聖遺物を稼働させているけれど響ちゃんはギアとして形成している。 現状トータル出力は五分五分くらいだけどひょっとしたら蓮君も聖遺物の稼働率が上がれば形成できるのかも知れないわね―――まとめると響ちゃんと蓮君はこの世に二人しかいない融合症例第一・第二号ってこと。 世界初をワンツーフィニッシュで独占てところね」
若干明るめに、暗い雰囲気を押し流すように了子さんがそう言って、以上で説明は終わりと言った。
「何か聞きたい事はあるかしら? 考える時間はあるからじっくり聞いてもらってもかまわないわよん」
響に対してそう言う言葉を聞きながら、少し前の了子さんの発言について少しだけ考える。
すなわち、形成について。
形成、形を成すこと。
俺の聖遺物はまだ稼働しているだけに過ぎない。
故にその先、形成がある。
つまりあのギロチンを―――――――。
『■、■、■、■■欲しい』
「――――っ」
気分が悪くなる、思考にノイズが混じり、頭を降って右腕を少しだけ抑えた。
理由はよくわからないが気分が悪い。
今、あのギロチンの事を考えるのはよそうと動かし始めた頭を無理矢理止めた。
思考回路の渦を抜けて、前を向けば師匠が響と話をしていた。
何を話しているのかと耳を傾けようとして、普通に聞こえるボリュームでその必要はないと姿勢を戻す。
そして―――――。
「あの――――私の力をお役にたてることは、誰かを助けることを手伝うとか出来ますか?」
―――響のその言葉に、一瞬思考が止まった。
「響君がそう言ってくれるのであれば願ってもない、こちらからも「―――ダメだ」……蓮?」
自然と言葉が漏れる。
視線が俺へと集中するが、そんなものは気にならない、気に留める理由にならない。
「俺は反対だ響。 たとえ何があろうとそれだけは絶対に絶対譲ることは出来ない。 お前の手伝い? 冗談じゃない、そんなの必要ない」
「お兄ちゃん……でも」
「でももだってもねぇよ。 お前本気で言ってるのか?」
言葉が溢れ出る。
止まることを知らないし、止めようとも思えない。
響がこっちに来ることを了承できるはずないから、言葉は紡がれる。
「なんでお前が来る必要がある? いらねえよ」
「だって、手が足りないんでしょ? だったら私の力でも……」
「いらない、必要ない。 お前は未来と一緒に居ろ」
「……っ」
響が閉口する、それに畳みかけるように口を開く。
「たとえば未来と約束があってもこっちに用事が出来たらこっちの用事を優先しなきゃならない、響、お前未来に嘘を吐けるのか? 隠し事を出来るのか?」
「っ! それはお兄ちゃんには言われたくない、私も未来もお兄ちゃんが急にいなくなって不安だったし隠し事してたじゃんっ!」
「俺とお前とじゃ状況が違うだろッ! お前までこっちに来て未来を一人にする気かって言ってるんだよッ!」
「―――――っ!」
分かっている。
我ながら酷い独りよがりな発言だとわかっている。
それでも、だからこそ、だけど、響がこっち側に来るのを認めらない。
そうしないと本当に未来が一人になってしまうから、それだけはしてほしくない。
「……よく考えてくれ響、お前と未来は太陽と陽だまりだろ。 戦う必要はないんだ」
「――――――でも」
誰に似たんだか聞き分けがない様子の響の頭に腕を乗せる。
わしゃわしゃと撫でて、師匠へと目を向けた。
「……直ぐに決める必要はないだろ?」
「ああ、確かに今すぐでなくても大丈夫だ」
なら問題ない。
そう言おうとした瞬間――――――耳障りな警報が鳴り渡る。
「―――警報だとぉッ!」
全員、その場にいた全員が意識を切り替え、管制室へと急ぎ足を進める。
途中退出した翼さんも含めて合流して、ノイズの位置を調べ、モニターに映し出される。
「―――近いっ!」
リディアン近くの車道、高速道との切り替えのその場所にノイズの反応はあった。
「行きます」
翼さんは身を翻してそう言い、俺もまた追従して外へと駆け出した。
――――頼むから、来ないでくれよ、響。
そう祈りながらも、何処か、それを予感している気がした。
その部屋にいた全員が駆け出した、しかしながら彼女、櫻井了子はそのうち足をゆっくりと遅め、静かに壁に寄りかかっていた。
「―――まさか、形成位階とは……」
了子は呟き壁にもたれたまま眼鏡を取り表情を腕で隠す。
「―――まったく、未知が過ぎる……ック、アハハ、アハハハハハハハハ———————!」」
だからこそいいのだけれどと了子は笑った。
腕に隠された億、その瞳を金に染めて笑っていた。
「……さぁ~て、これから多分忙しくなるわよん」
それは十秒に満たないほんの少しの時間であり、過ぎたときにはすでに眼鏡を付けていつも通りに笑っている彼女しかいなかった。