逆に言えば他の最終決戦あたりの構想がオリジナルすぎて原作乖離待ったなしなんですよねぇ……。
――――夢を見ていた。
過去に見た、少し前に見た夢と同じ黄昏の浜辺にいる夢だ。
だけど今は明確に違うと言える、あの時見たような心安らぐ黄昏の夢じゃあないと。
なぜならば――――――。
『■、■、■、■■■■■』
俺がいるそこは前見た夢にもあった高台の上、かつて見た夢でも聞いた彼女の聞き慣れない言語の歌を断頭台に頭を乗せられた上で聞いていた。
固定されて動かない頭で視線を無理矢理に動かせば、そこには何十、何百もの人が集っている。
――――殺せ。
―――――異端を殺せ。
―――――――魔女を殺せ。
―――――――――罪深き者を殺せ。
―――――――――――ギロチンを血で満たせ。
見えている人たちが何を言っているのかは分からない、でもきっとそんなことだろう。
それを裏付けるかのように聞こえてくる彼女の歌声も、訳の分からない言語から知っている言語に聞こえてくる、そう、まるで民意に沿うように、言語が統一される様に。
『―――血、血、血。 血が欲しい』
『ギロチンに注ごう飲み物を』
『ギロチンの渇きを癒す為』
『欲しいのは、血、血、血―――――』
ギロチンの歌は歌われる。
だけど歌っているであろう彼女はこの目に映らない、映らないから何処から聞こえているのかと探して――――その間にギロチンは落ちてきた。
まるで腐った果実が落ちるように、ブツリと音を立てて首と胴体が永遠の別れを告げる。
だけど痛みはない。
それを伝える感覚は血を失い感覚を伝える手段を失っているからだ。
故に首から上は、意識は普通に反応して目は動く。
――――当然、血が噴き出る自分の胴体を見た。
ビクン、ビクンと心臓の鼓動に合わせるように首の切れ目から血が噴き出ていく様を見つめる。
それがおぞましく、目を逸らした先に血と同じかそれ以上に鮮やかな色の髪の色を見た気がした。
「――――――――」
それが何なのかは分からなかった、だけど知っているような気がして何なのかと考えようとしている間に意識が遠のいていき―――――――――。
――――目が覚める。
それは今まで見た夢の中で最悪の目覚めだった。
吐き気も酷いし気分も最高に悪い、頭が痛いし首は落ち着かない。
そんな最悪な状況下にあるせいで頭が働かない。
それでも理由は、原因は分かった。
ずっと、
「―――ボワ・ド・ジュスティス」
右腕を掻き毟る様に掴み、零れた言葉は腕に宿るそれを示している。
もう一か月も前になる了子さんの話以来求めていたソレ。
ギロチンをもっと強く扱う術を求めて、その結果がこの有様だった。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「ねえ蓮、響と何かあったの? というか何かしたの? そして顔色悪いけど大丈夫?」
絶不調な体調のまま、それでも何とか手伝いを受けつつ仕事を終わらせていつも通り余った時間に休憩を挟みつつ了子さんからの問題を解いていると突然未来が用務員室に来て、入ると同時に他に人がいるか調べていないこと確認して開口一番にそう言った。
言葉だけを捉えれば疑問を抱いていると言っていいがその口調には尋ねたこと全てに確信を抱いていることが分かる。
「―――いきなりどうした、響がどうかしたのか? それと顔色が悪いのは寝不足だ」
やっぱり隠せないかと今までの無駄になった努力を諦めつつ、それでも形式のような感じでそういった。
結果未来の眼が細められる、その表情から読み取れるのは若干怒っていますと言った様子。
「わかって言ってるでしょ蓮。 ここ一か月すれ違った時に露骨に顔を逸らしたり響に蓮の話題を降ったらちょっと身が硬くなったり蓮に響の事を尋ねた瞬間やっぱり硬くなったりしてるもん、分からない方が変だよ」
「お前が俺達をよく見てるのは分かったよ」
ずっと見ているとでも言いたいのか、未来の観察の徹底ぶりに母さんか何かかと言いたくなる。 諦めて息を吐いて少しなと前置きをして座っている席に深く体重を預ける。
怠い身体はそれに反応して休みを求めようと体を急かすが、ぐっとこらえて口を開く。
「意見の相違でちょっと喧嘩になってな、お互い譲れないもんだから引くに引けない感じでずっと変な意地になってるんだよ」
「……予想通りと言えばドンピシャ、でも何が原因なの?」
「悪いけどノーコメントで。 家族間の深い内容なんだ」
むすー。 と未来が頬を膨らませる、納得していないと言外に表し、無言になる。
俺としてもこれ以上話すことは出来ないから黙って向かい合い一秒、二秒……。
「……はぁ。 わかった、不承不承ながらそれで了承。 納得してあげる、でも蓮、解決した時は蓮から謝りなよ?」
先に折れたのは未来の方、だけど最後に言われた言葉には納得できない。
「……原因は響なんだが」
「男の子と女の子の喧嘩の時は男の子が悪いって相場が決まっちゃうの、ほら反省反省」
「―――考えとく」
ならよしと言って、未来が後ろ手にドアを開く。
「早く解決してね? 響ずっと考え込んでて最近寝不足なのか授業中に寝ちゃってるし」
「……ああ、わかってるよ」
「それと―――――」
「……どうした?」
最期に突然言いよどんだ未来に疑問の声を掛ける。
振り向いて、何か言おうとして、口を閉ざすその姿には不自然としか言いようがない。
「どうしたよ、一体?」
「―――ううん、なんでもない」
結局、そう言って、何も言わないまま未来が出て扉を閉める。
また俺だけになった部屋の中には数瞬前の静寂が戻る、だけどさっきまでより少しだけ重たい空気が残っていた。
「―――何か、あったけな? ……わかんねぇ」
未来が言わなかったことを考えて、暫くしても分からずそう呟いた。
あいも変わらず具合の悪い現状だといい考えも何も浮かばない。
寧ろ悪いことを、ギロチンの夢や響とのことを思い出す。
――――一か月前のあの夜、結局戦うことを選んだ馬鹿と、その後に起きたことを。
そう、結局俺は響が戦いに参加するという事を止められなかった。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「――――――ォオッ!」
「――――――ッ!」
暗然とした深夜の道路の上で二つの影が叫びながら異形を殺す。
それは俺と翼さんの姿、腕を一つ振るうごとに、足を一歩進めるごとに異形たるノイズを炭へと変えていく。
――――それは共に戦っているのではない。
事実として俺の方に何度か翼さんの攻撃である千の落涙や蒼の一閃などの技が掠めかけることもあったし、俺の割撃が翼さんの方へと向かうこともあった。
――――しかしそれはお互いが交戦状態であることを示しているのでもない。
言ってしまえば八つ当たり。
思い通りにいかない不条理を、なぜどうしての問いかけの答えを得られぬ不満をノイズにぶつけているだけに過ぎない。
この現場でのノイズはストレス発散のサンドバックの様であった。
しかしサンドバックと違うのは脆い事であり、結果八つ当たりでまき散らしている攻撃がフレンドリーファイアしかけていただけだ。
それでも結局お互いに攻撃は当たらない。 伊達に二年近くの間一緒に戦い続けたわけではない、その時間が、お互いの攻撃を当てることなく小型のノイズの九割九分を数分もかからずに殲滅する。
小型が消えた今、残っているのは全長5mほどの中型のノイズだけ。
大型のノイズは確認されなかった以上これがラストだ。
『――――――!』
「うる、せぇッ!」
ノイズの雑音に塗れたうめき声に吼え返し、同時にやって来た攻撃を跳躍することで避ける。
跳躍で見れたノイズの全体像を確認し、これを一撃で消し飛ばすのは自分には無理だと理解し、故に右腕に力を籠める。
「締めは任せるッ!」
ノイズを挟んで対面上にいる翼さんに届かせるように叫び、伝えて目の前のノイズの脚部を狙い、割撃を放つ。
落下しながらの一撃。故にその結果は狙いの場所より少し下を削ることになったが故に目論見通りの結果には届かない。
舌打ちを吐きつつ着地してからもう一撃撃つために腕を前に向けて攻撃を溜めようとして、―――――その瞬間。
跳躍の音と共に背後から何かが跳ね、ノイズを脳天から思いっきり殴り飛ばした。
その姿は一瞬だけだったが見間違えようがない。
なによりその直後の声がその人物を疑いようもなく告げる。
「お兄ちゃんッ! 翼さん――――今だッ!」
「――――ッ!」
「―――――――♪ッ!」
戸惑いと疑問、苛立ちに困惑といった感情をその瞬間だけは忘れ、溜めた力を放出する。
対面上で同時に行われたであろう翼さんの攻撃がノイズを中心に割撃と衝突して爆発を引き起こし、爆風をこちらに届けさせる。
煙が晴れた先にはいてほしくない後ろ姿があった。
「―――ひび」
「お兄ちゃんも、翼さんも聴いてくださいッ!」
口を開いて如何してきたと言おうとした瞬間機先を制し、響がそう声を上げた。
自然に口を紡ぐことになったのを確認し、翼さんも響へと顔を向けていることを見てから、響は口を開いた。
「私、今は足手まといかもしれないけれど一生懸命頑張りますッ! ノイズのせいでこれ以上誰かの涙を見たくなんかないんですッ!
生きるのを諦めさせない。 そのために、一生懸命奏さんのように戦って見せますッ! だから―――一緒に戦ってくださいッ!」
「ッ!」
「―――――――っ」
絶句する。
そして何よりも受け入れられない。
お前が戦いに出て未来に対してどうするんだとか、そもそもお前の力なんて必要ないとか言葉が幾つも出ては口から出る前に、それ以上の強い感情が駆け巡って霧散消失させる。
―――お前がそれを言っちゃいけない。 言わないでくれ。
そう思うほどに、直前のあの言葉には俺が、翼さんが受け入れられないであろう言葉が入っていた。
だからこそ――――。
「――――ええ、いいわ」
「っな!?」
「ほんとですかッ!?」
だからこそ翼さんが首肯して了承したことに一瞬驚き、直ぐに別の意味だと気付けた。
否、たとえ言葉の意味が理解できなくても、今この一瞬で気付けただろう。
そう思えるほどに、考える前に身体が動いていた。
全力で下半身に力を籠め、足に伝達させて一瞬で脱力しながら駆け出す。
翼さんが首肯した状態で目を細める姿が見え、その形の良い唇が動く瞬間と身体が戦闘態勢に入る瞬間を捉えた。
「貴女と私―――――戦いましょう」
「――――――え」
響が呆ける間に翼さんは太腿のシンフォギアの装甲部から柄を引き抜き、剣と成して切りかかる。
時間にしてコンマ一秒未満の早業、抜刀術のような神技。
元々0距離に近い、戦闘慣れしてない、まして攻撃されると考えてすらいなかったであろう響には当然避けられるものではなく。
故にその瞬間に俺が間に合い、割り込んで右腕でそれを受けることで事なきを得る。
「―――――っ!」
その一撃はいつもより数倍粗雑で、見かけによらぬ剣の重さを腕に伝え、痛みが奔る。
鈍い金属同士がぶつかり合う音と共に数えられないほどの火花が散るほどの一撃だった。
「――――ッ……何してんだよっ、翼さん!」
「―――意外ね、貴方ならわかると思ったのだけど」
「
意外だっていうのならそう思っていると言う表情をしてほしい所だ。
当然、どころか邪魔するのならまとめて切り捨てると言う意思しか目からは受け取れない。
それが否応なしに二年前を思い出させ、初めて会ったときの翼さんに戻っていると強く感じる。
だからこそ、あの時とは違い此方から問いかける。
「わかるさっ! だからこそ、何故と問いかけてるんだよ」
「禅問答に付き合う気はないわ。 退きなさい、私は彼女の覚悟を確かめなければならない」
「違うッ! あんたにそんな意思は感じられねぇよッ!」
瞳から読み取れるのは強い憎悪の意思だけだ。
もし、言葉の通り確かめるだけであれば、殺意ではない以上俺だって反応できなかったかもしれないのだから。
故にそう断じても、翼さんは態度を変えない。
「―――ええ、そうかもしれない。 客観的に見て、今の私がやっているのは確かに八つ当たりね」
「だったらッ!」
「だからはっきり言わせてもらうわ―――――立花響、私は貴女を認めない」
「――――え?」
状況に着いていけず呆けていた響が突然そう言われたことに呆然とする。
翼さんはその言葉を皮切りに激情を前面に打ち出し始めた。
「ええ、認められないわ。 確かに貴女が纏っているそれはガングニール、奏のギアよ。 でも、貴女のソレはシンフォギアではない」
そう、私は認められない。
――――了子さんが言っていた、この子の纏っているそれはシンフォギアを模した聖遺物の形成に過ぎないということ。
つまりそれは奏の力を模しただけに過ぎない。
私よりも強く、私を導いてくれた奏の模造品に過ぎない。
だからこそ、この弱く、儚いさまは奏には程遠く、受け入れられない――――。
「私は貴女を受け入れられない。 力を合わせ、共に戦う事など風鳴翼が許せるはずがない」
「―――だろう、なぁッ!」
剣を強く握りしめながら目の前の彼、立花響の兄である蓮はそう私の意思を肯定した。
後ろの彼女に伝えるように、剣の重みに顔を顰めながら答えを告げる。
「奏さんは翼さんにとって穢して欲しくない大切な存在、それを初めてあった奴、同じ力を持っているだけの奴に彼女を引き継ぐなんて言ってほしくないってことだろっ!」
「そうだ。 奏の意思を、奏の思いを何一つとして持っていない貴女がどうして奏の代わりに戦えると言うの? ――――それを、戦いを持って私に示して頂戴。 何をも貫く無双の一振り『ガングニール』。 そのアームドギアを戦いの覚悟を出しなさい」
「わ、私は人と戦いたくなんて……それに、覚悟とか、そんなの分かんないです……」
歯が軋み鈍い音を立てる――――まったく、目の前の彼女は何処までも私を腹立たせる。
初めて会った時の、二年前の力を持って浮かれていただけの蓮以上に目障りだ。
そんな様で、そんな様子でどうして――――
「覚悟を持たずに、遊び半分で戦場に立つ貴女が、奏の何を引き継いだと言えるのッ!」
「同感だ、だから――――」
何も言えずにいる彼女の代わりに蓮が答えた。
「もうこれ以上、戦場に立たせねえって言ってんだろっ!」
力任せに剣を思い切り投げようとする。
その力に合わせて力を抜き、剣の形成を消してその力を利用して背後に跳躍して距離を置いて再び構える。
「響が戦場に立たなけりゃ問題ないだろ。 俺が説得するから引いてくれ」
右腕を構えながら言う蓮の言葉に小さく嘆息する。
私が聴きたい言葉はそうじゃないと。
「ソレは貴方の答え。 だけど蓮、現に彼女はこれで二度、戦場に立っている。 一度目は自身のせいでないにしても今は自分の意思で。 もう、その話は過ぎたことよ」
「―――――ッ! そんなこと……」
苦虫を噛み締めたような顔をして否定しようとする。
だけど現実は既に出ている。 戦場に装束を纏い着ているのがその証。
故にこれ以上の問答は無意味。
「――――話は終わりね……いざ、参るッ!」
剣を構え、彼女の心を、戦意をへし折るために――――歌う。
《絶刀・アメノハバキリ》
『――――――――――っ!』
唄うことにより体が軽くなる。
今という今まで歌わなかったことによりその力を発揮できずにいた『アメノハバキリ』が歌われることにより真価を取り戻す。
すなわち神速の一振り、何をも切断する剣の本質を発揮する。
「――――――――――!」
唄いながら彼女へと一足で踏込、横に一太刀の元切ろうとする。
しかしその一撃はやはりと言うべきか蓮が防いだ。
それは想定の範囲内の出来事、だから直ぐに二の太刀を結ぶことは可能。
横薙ぎ払いから繋げて上段から一撃。
振り下ろされる剣の速度は常人の目で追える速度ではなく、しかしこれもまた、右腕で防がれる。
おそらく、今の二撃を初めて出会ったときであれば蓮は捉えられなかっただろう。
その成長に感心しつつ、しかしまだ甘いと断じる。
防がれた瞬間の右腕を剣で巻き取る様に絡ませ、上に上げる。
それによってバランスを崩したその瞬間に腹部に蹴りの一撃を叩き込んだ。
「グゥ――――ぉお!」
吹き飛ぶという、予想に反して堪えられる。
返礼と言わんばかりのヘッドバットを後転で避け、距離を開ける。
「―――っはっ! お、お兄ちゃんに翼さんやめてくださいっ! 人間同士で争うなんてダメですよッ!」
ようやく状況を掴んだらしい彼女が言った言葉に対して浮かぶのは苛立ちばかり。
状況を把握したのに状況が見えていないのかと怒鳴り散らしたくなる。
「「お前が原因のこの場でいう言葉かッ!」」
どうやら蓮も同じ感情を抱いていたらしい。
それに少しだけ笑いそうになりつつ、しかし彼女の折るために、その過程である蓮を倒すために再び構えをとり、攻め方を変える。
『千の落涙』、空中に剣を形成し、撃ち出すその技を展開して落とす。
対応するのは蓮の割撃。
しかしあれは一撃一撃の間隔は長い故に一掃すれど、次がない。
だから継ぐ前に次の太刀を撃ち出す。
次撃は『蒼の一閃』、割撃であれば防げるであろうこれは溜めが足りない故に防げない。
避けるにしても後ろには妹がいる以上それも出来ない。
蓮もそれをわかっているだろう、故に蓮が取った行動は――――。
「――――ッォオラァ!」
迎撃。
それも叔父様の一撃と同質のそれだ。
二年間の師事で得られたのであろうそれは蒼の一閃を断ち切り、砕ききった。
「グゥぅ―――!」
「お兄ちゃんっ!?」
その腕に少なくないダメージを刻むことを代償に。
威力を殺しきれずに喰らったのだろう、見えるレベルでの裂傷が右腕全体に広がっている。
それに気付いた彼女が蓮を庇うように前に出た。
「―――未熟ね、叔父様なら全力の一割ほど功夫で今の一撃を無効化するくらい訳ないわ」
「無茶苦茶言ってくれる……っ! 俺にあそこまでの理不尽求めんなッ!」
「治癒方面では貴方の方が理不尽だけど――――そう吠えることではないわ。 厳然たる実力差とはそう言うものだもの。 相性、奇策では乗り越えられるのは所詮その程度しか差がないってことなのだから」
さてと、一拍置く。
そして視線を前に戻して、再び彼女と交差する。
「―――問うわ。 貴女はまだ、戦わないとのたまうのかしら?」
「わ―――私は、戦いたくは……」
「ならばここから去りなさい、防人の道は、生半で進めるものではないッ!」
失望したというのが正しいのだろうか。
この期に及んでまだ、戦いたくないというその姿勢にそう思う。
でも―――少しだけ羨ましいとも思う。
そんな思いを抱きながら、剣を上に投擲して自身も跳躍、剣を巨大化させて足で押すその一撃『天の逆鱗』を彼女に目掛けて放った。
「響ィッ!」
「―――――ひっ」
蓮の悲鳴のような声と彼女の息を飲む声を聴きながら躊躇なく蹴りを推し進め刃が彼女へと進み―――――。
「ォォォオオオラァアアアッ! ! ! !」
当たりそうになる瞬間火山のような裂帛の気合いと共にその人が刃の前に割り込み、剣を殴った。
拳と刃が真っ向からぶつかり合い、刃が一方的に砕かれてはじける。
「――――っ叔父様っ!?」
「ォォォオオオオオオオオオッッ! ! !」
驚きの声は叔父様の攻撃についで発生した衝撃波に掻き消され、私は地に飛ばされることになった。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「全く何をやっているんだお前たちは……」
衝撃に吹き飛ばされ、崩れ落ちたところで呆れたという溜息が響く。
重厚な音を響かせるそれは師匠の声、先ほどまでいなかった人物の声が響くというのはつまり師匠に俺達は止められたという事だろう。
倒れ込んだ状態から起き上がろうとして、上に響が呆けた状態のまま乗っかっていることに気付いた。
「―――おい、響。 退いてくれ」
「う、え、ああっ! ゴメン、大丈夫お兄ちゃんっ! ていうより腕――――」
「問題ねえよ」
退いた所で俺も起き上がる。
心配そうに此方に目を向けていた響だけど、俺の腕を見て直ぐに首を傾げた。
「傷が……ない?」
「だから言ったろ、問題ないって。 それより――――」
顔を別方向、翼さんと師匠の方へと向けた。
俺が向いたからか響もそれに倣って向いて、翼さんがそこにいることに気づいた。
「あ、つば――――」
「行くな、響」
動こうとする前に腕を掴む。
どうしても、言わなきゃいけない、聞かなきゃいけないことがあるから。
「響、お前どうして俺と翼さんが戦ったのか、どうして翼さんが認められないって言ったのかわかってるか?」
「――――わかんない」
「なら話すのは辞めとけ、怒らせるだけだ」
「ど、どうしてそんなことが分かるの!?」
それが分からないから怒られるんだよお前は。
だけど――――。
「言うか馬鹿」
答えは言わない、言うわけがない。
「お前が自分自身でその答えを理解しない限りお前が一緒に戦う事なんて絶対に認められない」
たとえ理解したとしても認める気はない。
落ち込んだ顔をしても、不安そうな顔をしてもそれだけは認められないと最初から言っている。
でも―――それでもこれだけは言っておくことにした。
「響―――お前はお前でしかないんだよ」
お前は奏さんの代わりになれない、誰のだって代わりになれやしない。
なくしたものは、失ったものはもう、戻らないんだ。
「だからお前は戦わないでくれ、日常でいてくれ」
「――――――」
それでもその時、響が頷くことはなかった。
結局、戦いに参加することを未だに止めることは出来ていない。
次回・超人気のあの人が登場予定っ!
———何スちゃんではありません。
ついでに500人突破記念の番外編がほしいかどうかをちょっと活動報告で聞きたいと思います。