戦姫絶唱シンフォギアAA   作:マアア

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ようやくラストにメインヒロインが出た並み感。
最もまだ敵ですが。




 

 

 

走り去ったお兄ちゃんに声を掛けることも出来ずに立ち尽くすだけだった。

本当は私も行かなくちゃいけない、さっきそう言ったんだから、そう宣言したんだから誰かを、人を護るために行かなきゃいけない。

でもそれだと未来との約束を破ることになっちゃう。

迷い、戸惑っている間に後ろから走る音、多分未来の音が聞こえてきた。

 

「お待たせっ! 響――――あれ、蓮は?」

「あ、えっと……お兄ちゃんは用事があるみたい」

「ふぅん……」

 

はいと鞄を渡されて受け取った所で目の前に手が伸ばされる。

 

「行こ? 早くしないと間に合わないよ?」

「うん……」

 

ゆっくりと腕を伸ばして、手を取ろうとしたところで未来はさっと手を引いた。

手へと移していた視線を前に向ければ少しだけ不満げな未来の顔が目に映って、何か怒らせるようなことをしたっけとちょっと不安になった。

 

「響、何か私に隠し事してるでしょ?」

「そ、そんなこと……っ」

「―――ほんと、こういう所ばっかり似るんだから」

 

少し呆れたという様子で未来がため息を吐く。

 

「ご、ごめんね。 未来」

「いいよ、別に。 蓮で慣れてるし」

 

正直に言って申し訳なく思っての謝罪はあっさりとそう流される。

そこに更に申し訳なさを覚えるけどそれ以上にお兄ちゃんが未来に嘘を何度もついてることに後でお話しなきゃなあと一つ覚えておくことにする。

それに、やっぱり未来に隠し事は出来ないよねともはや当然の納得さえ覚えた。

そんな一つの決心と、納得している間に未来はそれでと言葉を紡いだ。

 

「響も蓮の用事みたいに大切なことが何かあるの?」

「……うん」

 

嘘は吐きたくない。

だから小さく、控えめにだけど頷く。

 

―――怒る、よね。

 

未来の顔を見ることが怖くて俯いたまま、じっと耐えるように目を閉じて。

聞こえてきたのは溜息だった。

 

「行ってもいいよ、響」

「……え?」

 

溜息のあとに言われた言葉が一瞬信じられなくて目を開く。

すこしだけ笑いながら、未来は続けて口を開いた。

 

「だから行ってもいいよ。 大事な用なんでしょ?」

「……でも、未来との約束があるし」

「あのね、響」

 

未来はそう一度区切って、私の手を握って、繋いだ。

そして顔の高さまで持ち上げて、追った眼が自然と未来と視線を交わす。

見える表情は、ほんのちょっぴりの寂しさを混ぜた、でも迷いのない真剣な顔だった。

 

「確かに響と一緒に流れ星を見ようって言ったよ……でも、その約束を優先して、響の笑顔が曇る所なんて見たくない。 響にも、蓮にも、私は笑顔でいてほしいの。 その場凌ぎの笑顔でなんとなく傍観してる姿より、本当の気持ちで向かい合っていて欲しい。 だから、そこが今私のいる場所じゃないのなら、私は響に行って欲しい」

「―――――っ未来ッ!」

 

我慢できない。

手を握ったまま未来に抱き着く。

慌てた声が聞こえたって、知るもんかと。

 

「ひ、響っ!?」

「―――ゴメン、でもありがとう未来。 やっぱり未来は、私の陽だまりだよ」

「……うん」

 

言葉に表せない嬉しさを全身を使って愛おしいと抱きしめる。

繋いだ手と手が、そして体全身を通して未来の優しさを受け取る。

それを無駄にしないために―――私は、決心した。

 

「―――行ってくる、未来」

「うん、行ってらっしゃい、響」

「ありがと――――絶対に、こんど一緒に流れ星、見ようねっ!」

 

―――その時は、三人で一緒に見よう。

そう改めて決めて私は日常を脅かす敵を倒すために―――走った。

ほんの少しの寂しさを交えた、何故か少しだけ頬を赤く染めた未来を残して。

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

ノイズ対策機動班、つまりシンフォギア奏者に俺や響と言った融合症例の人間の活動には大きく制約が課されている。

それは人目に着かないこと、つまり目撃されないことだ。

シンフォギアと完全聖遺物、これは日本というこの国において9条、武力を持たないことを明言しているあの条約に抵触すると言われているからだ。

故に――――ノイズの反応を検知した時、また場所を確認した時に避難誘導がある程度すみ、監視カメラなどにジャミングを入れるなどの間現地に入るのは少しだけ待たなければいけない。

そう、今この瞬間、目の前の通路に入った先の駅の構内に溢れているだろうノイズを倒すために動けない今が、少しだけ歯がゆいこの間が、苛立ちながら待ち続けているこの間がとてもキツイ。

 

―――自身が何も出来ないと感じるから。

 

求めた力を得ても、何も出来ないと感じるからこの時間は本当に嫌だ。

終わって、改めて出撃となって動いていればその間は集中して何も感じずに済む。

だけど今は――――苛立ちを抑えるために拳を握り締めるしかない。

 

沸々と募る苛立ちに、まだかまだかと焦る心が時間の流れの残酷さに苛立つ。

平常にしか流れないそれに。

 

「………ぁん!」

 

そんな時だからこそ、その声に気付くのにワンテンポ遅れた。

 

「お兄ちゃぁーんッ!」

「――――響?」

 

だけどその声を間違えるはずがない。

妹の声を間違えるほど俺はあいつを大事にしていないわけがない。

故に何故としか言いようがない。

あれだけ未来といるように言ったのになぜここに来たのかと。

 

「はぁ……っ! はぁ……っ! ふぅ……! ――――お待たせ」

「待ってねぇしどうして来たんだっ!―――未来はどうした?」

 

問いかけに対して帰ってきたのは苦笑と、隠しようのない嬉しそうな笑みだった。

 

「未来に言われてきた。 私が行きたいところ、私が全力を出せる場所、私がやりたい場所に行ってきなって送り出されちゃったから……今、私は此処に来たんだ」

 

そう言った響の目は真っ直ぐで、疑いようもない満ちた笑みで、此処に来たことの怒りと困惑を萎えさせるような代物だった。

故に返せたのは溜息ひとつ混じった皮肉位。

 

「ったく、後で未来の方に行っとけばよかったとか後悔すんなよ?」

「じゃあ私はお兄ちゃんに、私がいてよかったって思わせてあげるから」

「――――やれるなら好きにしろ」

 

お前がいるだけで、俺が全力を出すのは決まってるのだから。

とっくの前に出来ていることをしたり顔でやる姿に少しだけ笑い―――その時通信が入る。

 

『こちら弦十郎、駅構内の監視カメラの通信の途絶、及び避難誘導が完了―――後人がいたら随時知らせてくれ――――皆、任せたぞ』

「「任されたッ!」」

 

そう威勢よく言ったのは同時。

そしてその祝詞のような起動の言葉を言ったのもまた同時だった。

 

「――――『活動(assiah)』」

「『――――――――――――(Balwisyall Nescell gungnir tron)』」

 

 

 

《撃槍・ガングニール》

 

 

 

二課を経由せずに直接の出撃だから、制服ではなく私服の右腕部分は紐解かれるように解れ、書き換えられ、その内側から黒赤の腕が現れる。

同時に視界ははっきりと、クリアになっていき、耳は空気を裂く風の音さえはっきりと聞こえ、指は大気の僅かな流れさえ捉える。

そして――――響もまた、その身をガングニールのギアと変え、歌を鳴り響かせる。

視線が交差し、お互いに問題がない事を確認して、前を向いた。

 

「―――ついて来い」

「お兄ちゃんこそ」

 

伝え合う言葉と同時、地下に入る通路へと一足に落下するように駆けだした。

 

『―――――――♪!』

 

歌声が響く。

響の歌声が音を奏でて――――体に響く。

今までは許せなかったそれを受け入れて、奥底からじんわりと熱が登るような気がした。

それが何なのかと知る間に―――会敵する。

 

『■■■■■■■!』

「ォオ―――――ッ!」

『―――――――♪!』

 

ノイズの発する雑音に対するようにこちらも声を張り上げ、響の歌声が響く中、階段下にいるノイズへと階段から飛び跳ねて上から殴り掛かる。

振りかざした拳を地を殴りつけるように直撃させて、ノイズを破砕する。

炭素が飛び散る中直感に従って回し蹴りを振るい、二、三匹に命中するのを感じながら感覚に集中して、敵がどこから襲いかかって来るかを捉え―――避ける必要がないと理解する。

 

「うわっとと―――やッ!」

 

転ばないようにと俺より一足遅れてやって来た響が跳びかかってくるノイズへとタックルをかまして倒す。

そのまま倒れ込む響に襲い掛かろうとするノイズを力を放出して割断することで起き上がるまでの時間を稼ぐ。

 

「―――まだいけるな」

「全然っ! へいき、へっちゃらっ!」

「なら―――ッ!」

 

行くぞという前に目の前に特徴的なノイズがいることを捉え、真っ先に再度溜めた割撃の力を放出する。

しかし跳ねるように避けられ代わりにそのノイズは背中に着いた房のような丸い球をこちらに飛ばしてきた。

 

「―――伏せろッ! 響!」

「え、うわわっ!?」

 

響が伏せるのと、俺が前に出て腕を組んで意識を防御に高めるのは同時であり、その爆発が起きたのはその次の刹那だった。

至近距離で起きた爆発はその小型性と、現実の手榴弾などのタイプではなく炭化させる機能を爆風と共にまき散らすものでありながら少なくない物理的ダメージをこちらに確実に与えてくる。

そして、その攻撃方法を用いるノイズは一種しか現状確認されておらず、厄介と呼ばれるタイプのノイズだ。

 

「―――チッ! ブドウ型かっ!」

 

悪態を吐いて煙が晴れるのを待ち、視界の端に紫色のそのノイズがいるのを確認する。

ブドウの房のような物を背に着けているその形からブドウノイズと呼ばれるそいつは数いる等身大ノイズの中で対処が一番面倒くさい。

 

「―――ケホ……お兄ちゃん、大丈夫?」

「全然平気だ、けどあれは逃げられると面倒だ。 追うぞっ!」

 

何より逃げ足が速く、その上爆弾は自動回復する。

何度も何度も距離を置かれては爆弾を投げつけを繰り返すあれは放って置けば公共物への被害も計り知れない、故に最優先で潰さなきゃならない。

駅の構内を駆け下り、駅のホームからレールの上へと逃げて行ったそれを追いかけ、途中に妨害しようとした他のノイズを一蹴しつつ追いかけ続ける。

 

見えなくなりそうな姿を見失わずに追いかけて、ブドウノイズのブドウたる由縁の爆弾が再生したところでブドウノイズは上へとその爆弾を投擲した。

 

「この、始末書もんだぞオイっ!」

「怒るとこそこなのッ!?」

 

冗談は置いても地下鉄の線路上を破壊されればしばらくの間運休になるのは事実だし少なくないお小言を師匠が貰うことになる。

おまけに言うとブドウノイズに地下から上に逃げられる―――つまり地上に逃げられると厄介所ではない。

上へと跳ねる姿に急いで追いつこうと見上げれば黒光りする昆虫のように跳ねまわって逃げながら爆弾を投擲する姿が見えた。

舌打ちしつつ、溜め終えた力を放出する。

結果爆弾を破壊するだけ破壊することに成功し、地上まで穴が開ききっており逃げ去る姿が見えた。

 

「クソッ――――!」

「あっ――――」

 

悪態を吐いて駆けあがろうとして、少しだけ響が呆然と声を出した一瞬に集中していた意識が少しだけ解れ、見上げた空に流れ星が落ちるのが見えた。

 

「―――っ」

 

それが少しだけ頭に引っかかる。 が、今はノイズを倒すのを優先するために首を振り払い上へと駆け昇っていった。

 

 

 

 

 

あっという間に上り終えた先、開けた視界にはうっそうとした森が茂っていた。

直ぐ様また意識を集中してノイズがどこに行ったのか探そうとするそれより先に、その歌声が響いていた。

 

 

 

《絶刀・アメノハバキリ》

 

 

 

響く歌声の発生源は後方。

振り向けばブドウノイズが一閃の元に断たれている姿。

倒したであろう人物は残心を取り、刃を握る防人。 翼さんその人だ。

 

―――この場に残るノイズの感覚はない。

 

故にちょっと遅れて出てきた響が上に上がった時には既に終わったと言って差し支えがなく、だからこそ翼さんは此方へと少なくない敵意と、別の感情を籠めた瞳で見やる。

 

「―――意外ね、貴方は私と同じ考えを持っていたと記憶していたのだけど」

「……響についてか」

 

翼さんが俺と同じ考えで、なおかつ外れて敵意のような感情を持つのはそれしかないだろう。

たしかに、俺と響の今の様子を見れば心変わりがあったと考えるのは当然。

だが――――。

 

「変わっちゃいねえよ。 ただ、護るなら近い方がいいだけだ」

「それじゃあ護れないわね、それでは―――誰も守れない。 私のように、誰も助けられない」

 

奏を護れなかった私のように、そう付け加えて、断言と共にこちらに伸びるのは剣。

意思と、考えは一月前に交わしている。

違うのは俺の立ち位置のみ。

故に今回は響ではなく俺に戦えと言っているのだろう。

つまりメインは俺と、翼さん。

響に害はいかないだろうと意識を外して、

 

「お兄ちゃんも、翼さんも待ってくださいっ!」

 

構えようとした瞬間に響が隙間を縫うように前に立った。

止まった俺とは逆に、翼さんは止まらない。

 

「退きなさい。 貴女と話はしていないわ。 覚悟なく、戦場に立つ貴女と話す言葉はない」

「――――ッ! 私だって……」

 

言葉で切り捨て動こうとした翼さんは、しかしその瞬間響が一歩も引かずに前に出たことでようやく動きを止めた。

 

「私だって、護りたいものがあるんですッ!」

 

前に一歩踏み出し、腕を伸ばして響はそう断言した。

それは不定形で、あやふやだった前とは違う響の意思。 『覚悟』と言えるだろう。

事実、その言葉に翼さんも足を止め、こちらだけを射抜くように発していた敵意を響に対しても発し始めたのだから。

 

「ならば―――試してあげるわ」

 

故に翼さんのお前も倒すという意味の言葉に即座に響の前に出て構える。

響もまた慣れないながら拳を握り、腰を落とす。

翼さんがいつ踏み込んできてもいいように警戒を前面に押し出し、一足一動を見逃さないように意識を極限まで張り巡らせる。

弦のように張りつめた糸みたいな意識が索敵を研ぎ澄ませ―――――

 

 

 

―――そこに第三枠が乱入するのを知覚した。

 

「へぇ……面白そうな事やってんじゃねぇか」

 

声に反応して、翼さんも響も気付いたのかそちらへとすぐさま体を向ける。

そいつは、木々の中から悠然と歩いてきた。

 

「―――そんな」

 

暗いそこから一歩ずつ歩いて輪郭が露わになっていき、翼さんの息を飲む、信じられないと言った声が響く。

だけど、俺にはそれに気を取られる余裕がなかった。

 

「―――――っぁ」

 

息を荒げる、血液が速くなる。

四肢に余分な力が入り、意識が翼さんと向き合っていた時以上に集中して、思考が加速する。

一挙一動一足一手も目が離せない。

それほどに、それほどまでに直感が、こいつは危険だと告げていた。

 

「なぁ……あんた等、アタシも混ぜろよ?」

「ネフシュタンの鎧ッ!?」

 

翼さんが声に出して読んだその鎧の名。

影から完全に露わになった謎の少女が着こむその白い鎧は俺の腕と同じ完全聖遺物。

だけど明確に位階が違うと感じられるほどに、動物的直感が警鐘を鳴らしていた。

 

 

 

――――さて、これでようやく二つ目に至るかね。

 

加速する思考の中、唐突に此処ではないどこかで聞いた誰かの声が響いた気がした。

 




そろそろ、ようやく形成出来そう。

正直に言って活動の戦闘は描きづらいんですよね。
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