戦姫絶唱シンフォギアAA   作:マアア

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悲報・蓮君形成は次話に持越し。
翼さんと何スちゃんの戦闘のことを書いていたら一話分になってしまった感。




 

 

 

吹き飛ばされて、木々に激突して苦悶と共に吐いた息。

そこには私が受けた苦痛と、羞恥の念が篭っていた。

 

―――未熟。

 

我がこと故に余計に恥ずかしくなってしまう。

あの鎧の少女の強さを、強大さを全く見抜けなかった自身の不甲斐なさを恥じるばかりだ。

完全聖遺物と聞いて蓮の強さを考え、それを前提にして相手を甘く見ていた自身の楽天的な発想にいっそう唾を吐きたくなる。

相手は蓮よりも、そしておそらく自身よりも数段上の相手だという事実を認識するための代償は重くついた。

 

「―――っぐぅぁ……」

 

それでも、立ち上がることは可能だ。

それはつまりいまだ私の剣は折れたといえず、防人であり続けているという事の証明に他ならない。

故に今から、微塵の油断も隙もなくあの敵を倒しに行く。

そのために――――――。

 

 

 

《絶刀・アメノハバキリ》

『―――――――ッ!』

 

 

 

歌を唄い、奏のギアを纏う彼女へと届こうとしていた宝石状の鞭を打ち払った。

 

「えっ――――あ、翼さんッ!?」

「早く蓮の元に行きなさい―――邪魔よッ!」

 

一合。

やはりそれだけで剣が砕かれる。

それはとても悔しく、歯噛みしたくなるような出来事だ。

アームドギアは覚悟の形、それはこの身が防人であることの証明、私が私であることの証明ともいえる。

それなのにその防人の剣がこうもあっさりと砕かれるとは―――そんなことがあってはならないのに。

そう思うからこそ―――青の一閃を撃つときに作る大太刀、平時に扱うアームドギアよりずっと強靭なそれを形成して敵へと切りかかる。

 

「おっと、負け犬と思ったが意外といい気迫してんじゃねーか」

「戯言を――――ッ!」

 

嘲笑うその姿に覚えた苛立ちを心に留め、怒りを今だけは切り離して剣を振り抜く。

相手もそれに対応して宝石状の鞭を振り抜き、火花が散り、地が衝撃で砕けるが――――剣は砕けない。

 

「へぇ―――今度は砕けねぇか?」

「防人の剣をなめるなッ!」

「そうかい―――なら見してみろやァッ!」

「そうさせてもらうッ! 『―――――――!』」

 

歌を唄いがら交差した鞭を払い跳躍。

そのまま太刀を振り抜き青の一閃を敵へと振りおろす。

巨大なノイズさえ一撃で屠るそれ緒ニヤリと笑いあっさり砕かれる、がその隙に脚部の剣から力を放出して加速―――体重を乗せた一撃を頭上から振り下ろす。

命中すればたとえどれほどの力であろうと流石にただでは済まないであろうという確信を持った一撃だ。

相手もそれをわかったのだろう、笑いを消したのが見える。

故に、この一撃は当たれば決まると確信する―――――。

 

 

「ッチ! 流石にきついかぁ……なら、ギア一段階あげっかッ!」

「―――ッ!?」

 

その一撃さえ命中すれば仕留められるだろう。

そう確信を持って放ったその一撃は敵の呟きと共に先ほどまで以上に比べ物にならない、目で追えぬほどの速度で払われた鞭で容易く弾かれ、亀裂が入る音がした。

大太刀は私の作るアームドギアの中でも最硬。

それにあっさりと亀裂が入る事実に驚愕は隠せない。

 

「これが、完全聖遺物のポテンシャルッ!?」

「ネフシュタンの力だと思ってくれるなよォ? アタシの頂上はまだこれからだァッ!」

 

落下する中バランスを取り距離を取ろうとする前に跳躍からの蹴りが飛んでくる。

蒼穹ゆえに避ける間もなく放たれた蹴り、しかし咄嗟に大太刀を前に構え――――。

 

砕かれ、吹き飛ばされた。

 

「―――――っぅぁ!」

「つ、翼さんッ!?」

 

大太刀で防いだため多少で済んだ痛みに呻きつつ吹き飛ぶ中、奏のギアを纏った彼女が声を掛けるのが聞こえて少しだけ歯噛みする。

 

―――なぜ逃げていないのあの子はッ!?

 

現状が見えていないのか、蓮を抱えて早く逃げればいいのに何故残っているのか?

疑問を携えたまま受け身を取り、木に着地する。

その間に敵は彼女と蓮へと顔を向け、腰に付けていた装飾のように見えたソレを取り出した。

 

「お前はこれとでも遊んでなぁ! ま、逃げたらそいつを貰うけどな」

 

声と共に取り出されたその杖から光が放射されたように見えた瞬間、其処に極彩色の異形、中型ノイズが広がる。

しかもあれは――――!

 

「っ! 早く蓮を連れて逃げなさいッ!」

「ハッ! 遅えよバァーカ」

 

あの子が蓮を庇うように構えた瞬間、そのノイズは粘性の白色の液を吐きだしあの子と蓮を纏めて木に拘束した。

 

「う、嘘ッ!?」

「―――――ッチィ!」

 

――――あの子、どこまで足を引っ張ればッ!

 

苛立ちが募る、その苛立ちを振り切れぬまままた敵へと新たに空中にアームドギアを形成して落としつつ切りかかる。

 

「お前の相手は――――ッ!」

「っとと、アイツは囮か!」

 

声と、空中からの風切音に気付いたのか若干焦った様子で振り向いた敵は宝石状の鞭を持って落涙を全て打ち払う。

その間に全力で駆けぬけ――――鞭の範囲外、すなわち内側に潜り込んだ。

 

「そんなものではないッ! 私だろうッ!!」

「しま―――――ッ!」

 

0距離格闘戦、それに置いて下手な剣は使えない、否普通の剣であればこいつの鞭の操作範囲内に入る。

故にそれより狭い範囲でも使える脇差状に形成した剣を用いて袈裟懸けに振り抜く。

その驚愕の表情と躱せないという確信の元、確かに感触は――――あった。

 

 

 

確かにあったのだ。

だがそれは予想を超えた感触だった。

 

「――――馬鹿な」

 

例えるのであれば岩に剣を当てたような硬い感触。

脇差のように作られた剣が砕け散る先、見えた鎧には傷一つついていない。

自信はあったそれのその結果に今度こそ真っ白になった頭に響いたのは―――嘲笑。

 

「った。 とかいうと思っていたのかよ? のぼせ上がるなよ、人気者ォ!」

「――――ぉがァッ!?」

 

意識の空白を生み出した代償は腹部に強烈に入った膝蹴りか、苦悶の声を上げ吹き飛び、受け身すら取れずに地面に倒れ込む。

無様に崩れ落ちたそのざまに、敵は嘲笑を響かせる。

 

「誰もかれもがちやほやしてくれると思ってんのかぁ? そもそもアタシの狙いはアイツ等だ」

「ぁ――――な、んだと」

 

苦悶に満ちながら、それでもその言葉を聞いた瞬間、嫌に冷静になれた。

私の様子に気付いていないのか、敵は上機嫌に饒舌なまま口を開く。

 

「わかんねぇのかぁ? アタシの目的は聖遺物と融合してるアイツ等なんだよ、正規適合者なんて端からお呼びじゃねぇんだよ、自意識が過剰すぎんだろ、なぁに・ん・き・も・の?」

「――――そうか」

 

―――そうだったのか。

―――ああ、なんて道化。

―――馬鹿らしくて、馬鹿らしい。

何処までも私の事を小ばかにした敵の言葉を噛み砕いて思考が回る。

端から私などお呼びではなかった、そんな事実が頭の中を一周廻ってもはや何も言う言葉が見つからないほどに静かになる。

ゆっくりとふらつきながらそう立ち上がれば、見えるは相手の怪訝そうな表情。

 

「んだよ、もっとこう面白い反応すんのかと思ったのに……ビビってんのかぁ?」

「―――違う」

 

―――ああ、初めてだ。

今まで、生涯生きてきた中で、これ以上に私が澄んだことはないと思えるほどに今この瞬間、私の脳は澄んでいる。

 

「確かに、私は自信が過剰だったのかもしれん。 友は守れず、鎧は奪われ、防人の任など到底果たせてなどいない―――――だが」

 

だけどそれ以上に――――私の意識は熱くなっている。

澄みきって、真っ白になるまで加熱した怒りがマグマのように煮えたぎり、それを通り越して太陽のように真っ白に溢れ出す。

 

「それならば汚名はそれでいい、未熟な私には自信過剰はお似合いだ。 故に―――未熟者らしく、出し惜しみなく過去の汚名を返上しよう」

 

言ってしまえば紐が切れたのだ。

堪忍袋の緒が切れた。

私の中で縛っていた理性の最後の欠片が仕事を止め、切り札を使うことを是とした。

その力が命を奪うものだとしても―――過去の過ちを繰り返すことに比べれば、また守ることが出来ないかもしれないという事を考えれば――――この力を振るうには安すぎる代償だろう。

 

 

「―――立花ァ! 蓮ッ!」

 

――――なぜならこの身は。

 

「月が出ている間に終わらせる―――聞くがいいッ! 防人の歌、その生きざまをッ!!」

 

――――一振りの刃にして、防人の剣であるが故に。

 

護るための力を振りかざすことに躊躇いなど覚えようはずもない。

故に―――私は切り札を切ることを決めた。

だから、察したのであろうおじ様達の声が響く耳に着いている通信機器の電源を切った。

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

「――――テメェ……まさか」

 

翼さんの叫びの意味を真っ先に理解したのは敵だったのだろう。

俺と響が突然の発言の意味を理解しようとしている間に少しだけ焦った様子の敵は鋭く鞭を振り―――翼さんはそれをギリギリで避け、上からアームドギアを落とす天の落涙を放った。

 

「―――ッチ! 付き合えるかッ!」

 

焦っているらしい敵が片方の鞭を振った後ゆえに振り戻す前に振ってきた天の落涙に対してもう片方の鞭で払う。

 

「さっさと終わらせ――――ッ! んだよコレッ!?」

 

直撃コースを全て打ち払い、翼さんのやることに警戒しているらしい敵が此方へと目標を変えようと振り向こうとした瞬間―――体を動かせず、始めて驚愕の声を上げた。

その技は紛れもなく俺が何度も喰らったことのあるあの技、動きを拘束するその技だ。

そして、その技を使った所でようやく翼さんが何をしようとしているのか理解できた。

なぜならその技以外に敵を倒せる可能性を持つ技はなく、その技以上に時間がかかる故に拘束する必要がある技などないのだから。

それを理解したが故に、焦りが込み上げ、口から言葉となって溢れる。

 

 

「翼さんッ! まさか―――絶唱をッ!?」

「―――それが、防人の務めだ」

 

 

『絶唱』

シンフォギアの機能の一つにして諸刃の剣。

ダメージフィードバックが尋常ではないその技を翼さんが切ることを選択したのだ。

表情を見せぬまま、前を向いて翼さんが歩き、敵の両肩に手を置いて――――口を開いた。

 

戦場に(Gatrandis babel ziggurat edenal)刃鳴( Emustolronzen fine el baral zizzl)

 

かくして絶唱は必中の構えを見せ、今まで翼さんが歌っていた歌とは違い、詠われる。

同時に、上で今まで困惑の表情を浮かべていた響が突然何かに気付いたように顔を上げた。

 

「この曲―――あの時奏さんが……まさかッ!?」

 

そしてようやく理解したらしい響の顔に浮かんだのは俺と同じ焦り。

だけどこのノイズの粘性の液による拘束は変化を見せず―――何もできないまま見つめているうちに戦姫は絶唱を歌った。

 

裂き(Gatrandis babel ziggurat edenal)誇る( Emustolronzen fine el baral zizzl)

「ッ―――ァァァァァアアアアアアアアアッ! ! ! !?」

 

アメノハバキリのシンフォギアから光が広がり、過剰放出されたエネルギー(断つ力)が敵を裂く悲鳴が響く。

 

その光に俺達も飲み込まれ—————。

 

 




次話は絶対形成できるッ!





————はず。
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