戦姫絶唱シンフォギアAA   作:マアア

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遅れて申し訳ない。

それもこれもクリスちゃんの首が4、5回飛ぶのがいけないんだ……。




―――世界が揺れた。

それは小さな産声、だけど今までは曖昧にしか感じられなかったものがはっきりと感じ取れるようになった、そんなまだ小さな感覚だった。

だけど、それが今、どうしようもなく嬉しくて、だけど少しだけ悲しかった。

揺れた元凶へと目を向ければ、予想通りの光景が、彼がギロチンを構える姿が見える。

 

「貴方が言った通りなんだね■■■■■■――――また、戦うんだね」

 

彼はきっとそうするだろうと私は理解していた。

どんなに悲しくても、嘆いても、今ある大切なものを護るために戦う姿をずっと昔に見ていたのだから。

私はほとんど干渉できないけれど、それでも今もまだ、彼を見ていたから。

 

「―――頑張って、レン」

 

皆が戦うのは悲しい事、だけど私はレンが戦うと決めたのなら、ちょっと不公平だけど応援したい。

でも、それでもやっぱり彼と戦っている彼女も頑張って欲しいと思う。

 

「今は苦しくても――――いつか、きっと楽しい日々があるから」

 

ずっと苦しくても、どんなにつらい嘆きがあったとしても未来はきっと明るいはずだから。

今は争い事が多いかもしれないけれど、未来はそうじゃないと信じてほしい。

 

「―――私が皆を抱きしめたい、愛しい全てを抱きしめさせてほしい■■■■■■■ ■■■■■■■ (すべての思いに ) ■■■■■ ■■■■■■ ■■■■(巡り来る祝福を)

 

だから、そう―――生きることを諦めないで。

誰もいない黄昏の浜辺で、私は歌う。

 

「――――血、血、血 血が欲しい」

 

いつかきっと、来世には光があると信じてほしいと願い続けて、私は歌い続ける。

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

意識がはっきりと明瞭に加速する、身体全身に力が回り、五感を鋭く感じさせる。

空気の流れる音さえ分かり、味も理解でき、匂いすら捉え、目は敵の身体の挙動一分すら逃さず、腕は握り締めることで全身の調子が最高潮だと伝える。

 

―――今までになく、最高潮だと断じれる。

 

‘形成’に至ったからだろう。 今まで活動になった時にもあった昂揚感や全能感が目じゃないと思えるほどに今の俺の感覚は良いと感じられる。

その全てを使い、目の前の敵へと敵意と殺意を隠さずに滲ませ――――踏み込んだ。

 

「な、ん―――ッ!?」

「ォォォオオオオオオッ!」

 

一歩で距離を詰め切り、相手が認識して驚愕に目を見開くより先に腕を振り、ギロチンを落とす。

敵が逃げ切る前に切り落とすと振り下ろした一撃はしかし鞭で防がれ、交差して止められた。

だがその余波で、すでにクレーターとなっている地がさらに砕け、凹んでいく。

 

「ぎぃ―――ッ! 舐めんなぁッ!」

 

敵が初めて苦虫を噛み潰したかのような表情を浮かべ、距離を開けるためか蹴りをするのがゆっくり(・・・・)と見える。

つまり当然対処可能だ。

空気を思いっきり蹴り、反動で体が動き回転しながら相手の蹴りをギリギリで最小限に避ける、そしてそのまま回転に体全身を乗せ、再びギロチンを振るう。

 

「舐めてなんかねぇ――――ここで確実に仕留めるだけだッ!」

「それを、舐めてるってんだよッ!」

 

全力のバックステップと同時に両腕から繰り出される鞭の連撃。

ギロチンの形の関係上振り切るまで速度が乗るせいで回避は難しい、が出来ないわけじゃない。

振り終えるまで回避が出来ないならさらに早く動けばいいだけだ。

―――まだ、まだもっと強く、早く動ける。

その確信の元地面を強く踏み込み―――鞭が振るわれると同時に再び一歩で詰め切る。

 

「ッ!? くっそがあああァァァァァッ!」

「――――っ!」

 

押し切られるのを嫌ったらしい敵が強引に横に鞭を振るうのを体を前に逸らすことで避ける、だがその姿勢では攻撃するのは難しい上拳を握る気配を感じ、仕方なく一旦距離を置く。

 

「チィッ!」

 

苛立った表情、それは此方に勝機が出来、相手に焦りが出て押していることの証明と言えるだろう。

 

―――ならばやれる。

 

戦える、勝てる、勝ち筋が見える――――ならばここで倒す。

こいつをここで逃したら響や翼さんに被害が行くかもしれない、今確実に仕留めるべきだ。

故に再びギロチンを構え――――腰を落とす。

足に力を籠め直ぐに相手を射程に収めれるようにいつでも動かせるようにして――――駆けた。

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

――――芳しくねえな。

 

戦いの中、冷静な部分がアタシにそう告げる。

危険を知らせる感覚がマッハでアタシに次に来る攻撃を告げ、対処に動くより先にこいつは迫ってきやがる。

視覚でははっきりと捉えられる。

だけどそれはアタシの速度より圧倒的に早い、故に予想して―――。

 

「――――ォォオオオッ!」

「はな、れやがれッ!」

 

振るわれたギロチンをギリギリで避けることは可能、だが鞭を振るって距離を開けようとするとこいつもまたそれを避けて距離をさらに詰めようとしてきやがる。

鞭の範囲外である至近距離はこいつの攻撃範囲内、おまけに言うとアタシは近接戦が得意じゃねえ。

さっきまではアタシが‘形成’で、こいつは‘活動’だったから位階差によるゴリ押しが効いたが今は等位階、つまりゴリ押しは無理だ。

―――いや、それでもさっきまでならまだ出力差で勝てたかもしれねえ。

だけど人気者に喰らった絶唱、あれがボディブローのようにじわじわと響いて来てやがる。

 

アタシ自身は確かに絶唱を喰らっても無事だった。

それはネフシュタンの鎧が身を護りきったからで、つまりネフシュタンの鎧は大きくとは言えないまでも損傷した。

ネフシュタンの鎧には自動修復機構があるからそれだけならまだ問題はなかった。

が、代償として修復にエネルギーを回しているせいで出力が上がんねえのと、損傷を直すためにじわじわと体を蝕んできやがるのが問題だ。

身体を少し喰らってこいつは鎧の損傷を直す―――そこに痛みは存在して、アタシを削っていく。

それが集中力を削り、アイツに近づかれることを許し、危険へと追い込んでいく。

おまけに言うといくら移動は目で追えるとはいえ、だけど鞭を振って命中するまでにある程度時間があるアタシと違って攻撃に掛かる時間が腕を振るうだけのこいつに近づかれることは無防備になるってことで危険が過ぎる。

そこに即死が加わりゃ尚更だ、だが速度で負けている以上完全に離すことは出来ねえ。

 

――――だったら。

 

「――――ッ!?」

「逆に中に入りゃぁ振るえねえよなぁッ!」

 

至近距離はこいつの範囲、なら腕を振るうのにもギリギリなぐらいの超至近距離に近づきゃ問題ねえ。

何せこいつは待ってても近づいてくれるんだ、逆に近づくのはタイミング合わせりゃ丁度だ。

予想通りに驚愕に目を開いた様子、無防備な腹が目の前に晒されてる。

 

「喰らいやがれッ!」

 

そんな腹に目掛けて握り拳を後ろに引いて突き出し――――空振った。

 

「なッ!?」

「ワリィな―――想定内過ぎて驚くわ」

「てめ――――」

 

拳は避けられた、想定内つまり対処する為予め仕込まれていたってこと。

それはアタシの想定外、だが所詮聖遺物じゃねえ部位からの攻撃故に腹部へと放たれた相手の拳は避ける必要ねえと楽観視してまともに喰らい――――想定をはるかに上回る衝撃が鎧を抜けて伝わり、内側で何かが潰れるような音と共に吹き飛ばされた。

 

「―――ぉ、ガァッ!?」

 

壮絶な痛みに苦悶の声が漏れ、ショック症状で意識がちかちかするのを唇を噛むことで何とか抑え、目を開けば腹部を起点に吹き飛ばされているせいで見えるネフシュタンの鎧の腹部には何の亀裂も入ってねえのが見えた。

つまりどんな理論か知らねえが鎧を通して直接アタシを殴ったってことになる。

凄まじく痛ぇし口から血が噴き出すが、装着者の危険を判断してネフシュタンの鎧が直ぐに治癒し始めたのが幸いって所、じゃなかったらおそらく今の一撃でおそらく臓器の大半がイカレて再起不能になってただろう。

代償に更に身を削られるような痛みが響くが今はそっちに気を取られ過ぎる暇はねえ。

なんたって断頭台が足音立てて迫ってきているのが聞こえてくる。

前を向けば予想通り、アイツが踏み込み、こちらへとギロチンを振りかざしながら迫ってくるのが見える。

 

――――振るう余裕はない、おまけに言うとまだ吹き飛んでる最中、コンマ秒以下しか経ってない……避けらんねえぞ。

 

足を地に着け減速すりゃその瞬間アタシはさよなら待ったなし、断頭台の方から迫ってきて避けらんねえっていうこの火事場、アタシに出来る助かる選択はその瞬間に一つしか浮かばなかった。

 

――――チクショウ。

 

こんなんじゃダメだ、こんな様じゃあアタシの目的なんて果たせやしない。

そんな思いが溢れるのを我慢しつつ、唇を噛み締めながらアタシは撤退できるだろうその手段を迷わず選んだ。

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

―――鎧通しが上手くいった。

師匠に教え込まれた技の中であまり使用機会がなかったが故にぶっつけ本番で扱う事になったが上手く成功したことに少しだけホッとし、直ぐに意識を戻し決めに入る。

腹部を起点に吹き飛ぶその姿に追随するために更に強く、さらに効率よく踏み込み、地を抉り、一気に加速する。

狙うは一点、首一つ。

ギロチンは断頭の刃(ギロチン)だから、それが最も効率がいいと頭が叫ぶ。

故に――――。

 

「――――その首、置いてけッ!」

 

加速し、空気さえ置いて行って首を狩るために腕を振るう。

だが。

 

「断るに、決まってんだろッ!」

 

敵が鞭を振るう。

だけどそれは此方にではなく横へ。

自然と眼が追った先には――――響と翼さんがいた。

 

「――――ッ! く、そがぁッ!」

 

このままだとギアを纏っていない響たちが危ない。

響たちを護らなきゃならない、だけど敵も倒さなきゃならない。

 

 

 

――――思考は一瞬だった。

 

更に強く、更に前へと踏み込む。

一時の迷いを捨て――――相手が吹き飛ぶ中、響と翼さんに鞭が到達するより先に敵の元へとたどり着いた。

 

「っな!?」

 

想定外だったのかこいつは驚いたと言った表情をする。

だけど安心しろ――――響たちをちゃんと守った後に確実に首を刎ねてやるから。

振りかざして右腕をそのまま真っ直ぐに振りおろし、鞭を地面に叩き落とす。

切り落とすつもりでやったが流石に壊れることはなく、しかし響たちへと向かっていた鞭は基部から曲げられたせいで響たちに当たることなく地面に叩きつけられる。

そして、腕を返して首を狙い再び振るった。

 

「――――死ね」

「――――ぁ」

 

相手が何かを言うよりも早く腕は振り下ろされ、鮮血は舞った。

 

 

 

同時に、何か強い感情が何処かから流れ込んでくるようなそんな感覚がした気がした。

 

 

 

『パパ、ママ。 どうして――――――』

 

 

 

「あ、ガァァアアアアアアアアッ!!!」

「ッ!?」

 

一瞬の意識の暗転。

だけど咆哮に意識が直ぐに戻ってきて、目の前の現実を告げる。

 

「――――仕留めきれてない」

「当たり前、に決まってんだろぉがッ!」

 

胸部に鋭い裂傷、右から左に袈裟懸けになる様にギロチンの一撃が入った痕がある。

そしてそれは、狙ったはずの首に対する一撃は入っていないことを示している。

何故と考え、その姿をもう一度よく見ることで理解した。

胸部を抑えている手は右手、響と翼さんを狙った鞭を操っていた手。

左手は後ろ手に鞭を持ち、さらにその後ろの木々を鞭で貫いていた。

あれで強引に体を引っ張り、首への一撃を避けたのだろう。

仕留めそこなったことこそ以外―――だけど。

 

「――――ッチ、旗色が悪すぎんな」

「逃がすと思うか?」

 

斃せなかったのならもう一回やればいい。

今相手は治癒に時間を割かなきゃならない―――余裕と分は此方にある。

だが――――。

 

「ああ、退かせてもらうぜ」

「ッ! 飛んだだとッ!?」

 

それは予想していなかった動作。

ネフシュタンの鎧は飛行すら可能だという事実に驚愕を隠せない。

確かにシンプルだし有効な手だった。

事実俺は飛べないし跳べない。

いつかは空気すら踏めるという予感はあれど今じゃないと感覚が告げている。

故に手詰まりだ。

相手の撤退を指を銜えてみるしかない。

 

「―――今日は此処で退かせてもらう、だけど覚えとけ――――そこのギロチンの野郎ッ! テメエだけはアタシが必ずぶっ潰してやるッ!!」

「言ってろ、逆に今度こそ仕留めてやる」

 

敵の憎悪の篭った瞳と殺意が徐々に遠ざかるのを感じながら、今宵の戦闘はそうして幕を下ろした。

 

 

 

 

 

――――途端、ギロチンの形成は解け、身体から大きく力が抜け崩れ落ちようとする。

敵の攻撃による肋骨と腕の骨折、絶唱の余波とかくダメージを受け過ぎたし、物事が起きすぎて疲労の限界だ。

緊張感がほどけたことによる意識の安全のためのシャットダウンに抗うことも出来ず、ゆっくりと意識は落ちていき、地面に倒れ込みそうになり―――。

 

「―――ご苦労だった、蓮」

 

意識が落ち切る寸前、師匠がそう言いながら抱き留めてくれた気がした。

 




大体次から正式にクリスちゃんルートに入り始めます。
今までは細部の差はあれど大体共通ルートです。
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