戦姫絶唱シンフォギアAA   作:マアア

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なんか短い気がするけど気のせい。
クリスマスのクリスちゃんprprとかお正月の姫は自主規制クリスちゃんとか書こうとしたけど家族にディフェーンスされたのも気のせい。




 

 

 

時間が止まればいいと思った。

 

あの時、ただ無為に生きてきた今までの人生の中で確かに熱を持った、最高の瞬間に。

無論、人生の最後、死ぬ時にならなきゃ本当にあの時が最高だったかなんてわからない。

 

でもあの時、二年前のライブコンサートの時、初めて俺は生きていると実感した。

繰り返し繰り返し続く只の日常、気分が悪い事も、楽しい事も確かにあった日常。

でも飽きた、いや飽き果てても続く日常に初めて現れた留めておきたい大事な瞬間。

 

それより昔には一度か二度訪れただけの大切な刹那。

それに対して初めて芽生えた、俺位の年齢なら一度は掛かる麻疹みたいな病気、そんな病気に罹った瞬間だった。

 

楽しい刹那を失うのが恐ろしい。

大切な刹那を失うかもしれない、その先にある未知が恐ろしいなんて発想(おもい)

 

 

 

そう――――あの時、二年前に患った疾患。

 

今までの居心地の良い刹那から一転して落ちた地獄絵図という未知。

 

今まで、あまりにも居心地が良かったから、特別何かがあるわけじゃない平々凡々とした毎日だったから、人生に一度殺人鬼に出会う様な出来事なんて位珍しい出来事なんて起きるわけがないと思っていた。

 

ノイズなんて、俺の人生(はなし)に端役にすらならないと思っていた。

否、それ以上に可笑しいとさえ思った。

俺の望む人生に出てくるはずがないその存在。

それでいてあるのが普通という違和感。

例えるなら誤植みたいで、あの時ノイズが出るなんてありえないと感じていた。

 

まるで誰かがお芝居に茶々を入れたような感覚。

本来起こり得る筈のない所に唐突に混じった異常。

 

だけどそれはリアルを侵して、罅割れを入れてくる。

 

 

 

―――思い出す。

 

 

 

眩暈のように霞む視界の中でも焼きつく様に映る響の一秒ごとに薄くなる顔色を。

零れ落ちていく命の証と、戦乙女の奏でる歌が混ざりあう瞬間を。

 

 

――――時間が止まればいいと思った。

 

大切な刹那が目の前で消えていくのが嫌だった。

なんでこんな目に遭わなきゃならない。 ふざけるな。 どうして。

そんな言葉を吐き捨てながら只何も出来ずに死んでいく妹を見るのが辛かった。

大事な、最高の瞬間を永劫に味わうのではなく、大切な人に死んでほしくないから時間が止まるのを渇望した。

 

だけどそれ以上に、俺さえいなければこんなことにならなかったと吐き気を催した。

 

俺が居なければ響は避難誘導に従って逃げた。

俺が居なければ響は俺を背負って動こうとする蛮行なんてしなかった。

俺が居なければ響はガングニールの欠片を胸に受けることはなかった。

俺が居なければ、おれがいなければ――――。

 

 

 

「は? バッカじゃねーの、お前」

 

閉塞した思考に突然声を掛けられ、声を掛けてきた方へ向く。

気付けばここはいつかの夢で出てきたあの黄昏の浜辺だった。

そして、そこに立っていたのは男だった。

 

首まで伸びた金髪、袖のない赤いコート、伸びた腕に奔る入れ墨。

見た目どう見てもチンピラで、実際チンピラみたいなそいつを俺は知っていた。

 

そう、何度も夢で見てきた男だ。

 

「お前、自分がいない話を考えてなんになるんだよ? 考えてもみろ、お前の小説(人生)に主役がいないのにどうやって話を書くんだ?」

「あ、し、ろう?」

 

ノイズが奔る様に、雑音が混じる様に分からなかった名前を何故か(・・・)普通に口から出して、そいつはイエスとでもいうように大仰に頷き、いつも通りに皮肉気な笑みを浮かべた。

 

「そう、俺は遊佐司狼。 そしてお前は藤井蓮だ」

「藤井? 違う、俺は――――!」

 

そこまで言って、苗字が浮かばないことに気付いた。

理屈は分からないが十五年以上慣れ親しんだ苗字が喉元まで出かかっているのに何故か言えない。

頭の中に文字は浮かんでも発音が雑音に塗れたように言い方を塗りつぶされている。

まるで――――。

 

「まるで藤井蓮が正しい名前みたいだ?」

「っ!?」

「何驚きました! みたいな顔してんだよ、おい。 お前の考えてることが俺に分からないとでも思ってんのか?」

 

愉快そうに口を曲げ、しかし目は全く笑わせずに司狼は腕を開いて肩を竦める。

だけどそれ以上に何かがズレて行くように可笑しくなっている気がして、気分が悪い。

 

「べっつにぃ? お前が可笑しいのは元からだろ? 何もかもが既知であることをよしとして、ただ単に平々凡々な日常を求めている根っからの狂人。 それがお前、藤井蓮だろ?」

「ち、違う!」

 

思わず違うと叫ぶ/わかっているのに。

俺はそんな名前じゃないと否定する/本当は否定できない。

わからない/わかる。

俺は■■蓮だ/俺は藤井蓮だ。

 

「いいや、違わないね。 その首の契約と今のお前のどこを見て、■■蓮だって言えるんだよ」

「俺は――――俺は―――――」

 

――――■よ■まれ、お■は■しい――――

 

そんなこと、望んではいなかった、はずだった。

 

「俺は――――誰なんだ?」

 

徐々に暗く歪んでいく視界の中、明るい朱色の髪が視界を掠めた気がした。

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

――――白い天井が見える。

 

「――っぁ……は」

 

息を漏らすと目の前が少しだけ白く曇り、口に呼吸器が付けられていることに気付く。

電信音が一定の音を響かせているのも分かって、そこで初めて、また病院にいるという事に気付いた。

起き上がろうとした瞬間に大分寝ていたのか体全身の神経がビリビリと痛みを訴えるのを感じて、一旦力を抜いてゆっくりと起き上がる。

白い、一人用の病室。

 

―――まぎれもない二課ご用達の病院だ。

 

そこまで理解して、久しぶりに動くらしいことを示すかのようにビリビリと痛む右腕をゆっくりと持ち上げて、呼吸器を取った。

 

「ぁ、あー、あ、い、う、え、お……よし」

 

多少の痛みを訴えつつも問題なく喉がちゃんと機能するのを確認して、一週間は眠っていないことも同時に理解する。

そして―――。

 

「立花蓮――――俺は、立花蓮だ」

 

自身に言い聞かせるように、自分の名前を名字からフルネームでいう。

夢とは違い、スムーズに発音出来たことを確認して、ほっと息を吐いた。

 

「夢――――なんだよな」

 

遊佐司狼という存在も、藤井蓮という名前も夢の産物だ。

そう言い切ろうとして、だけどそんな気がしないと感じる。

 

「……わかんない事は後で考えるか」

 

頭を振って、ベッドの近くに供えられたナースコールへと手を伸ばす。

体全身が訴える痛みが聖遺物の力で徐々に勝手に治っていくのを感じながらナースコールを掴み―――その延長線上にある鏡を見て固まる。

 

「―――なん、だよ……これ」

 

鏡に映る俺の姿、病人服のシャツは首元が肌蹴ていて――――その首に斬首痕が奔っているのがくっきりと映っていた。

 

『その首の契約と今のお前のどこを見て、立花蓮だって言えるんだよ』

 

夢で司狼に言われた台詞が頭に過ぎる中、身体は自然にナースコールを押し込んでいた。

 

 

 

 

 

 

「やっはろー! 蓮君元気かなぁ? 出来る女こと櫻井了子が検診にきたわよぉー!」

 

ナースコールを鳴らした後すぐにやって来た医者による検診をオールグリーンでスルーして、元の病室に戻されて五分と経たずに彼女、了子さんはやって来た。

 

「……検診はさっき終えたはずですけど」

「んもう! わかってるくせにぃ……あまり女の子を焦らすもんじゃないわよ? とまあそれはさておき私がやる検診なんて一つに決まってるじゃない!」

「……聖遺物関連、ですね」

「もっちろん! と、言いたいところだけれど残念ながら検査はもう終わってるのよねー……寝てる間に。 今日は暇だったから弦十郎君たちの代わりにお見舞いがてらその検査結果を見せに来たのよん」

 

そう言って了子さんが手提げバッグの中から取り出して見せてきたのは一枚のレントゲン写真であり―――全身が青に染まっている物だった。

 

「だいぶ前に見せたっきりだけどかつて、二年前のレントゲンが全身真っ赤でこれより一段階聖遺物の反応が弱かったのよねぇ―――稼働率も5%に上がったし大分躍進したわね」

「―――そうですか」

「あら、元気がないわねぇ? どうかしたのぉ? お姉さんに話て見なさい」

「……実は」

 

話さなきゃならないような気と話しちゃいけない気の両方がして、気付けば夢の事は話さずに、首の痕の事を告げていた。

 

「んー正義の柱は結構調べてきたけど初めての現象ねぇ」

 

始めはおちゃらけた表情で聞いてた了子さんが大分眉根を顰めてそう返した。

わかるわけないかと思い、だけど分かるのではないかと少なからず思っていたのか落胆して、ため息を吐いた。

 

「……むぅ、まあとりあえず関係ありそうなことを調べておくわ。 まったく、完全聖遺物(正義の柱)はまだまだ謎が多いわねぇ」

「……よろしくお願いします」

「はいなぁー……と、そう言えば最後にちょっとだけ、蓮君に質問あるんだけど」

「――なんですか?」

 

立ち上がり、病室のドアに手を掛けたまま振り向いて此方を見た了子さんが表情を感じさせない笑みで、口を開いた。

 

「メルクリウスって、聞き覚えあるかしら?」

「―――――っ!?」

 

言葉を脳が理解して、処理した瞬間頭痛が響く、頭が処理した言葉の理解を拒否して、嫌悪感が奔り―――拒絶する。

 

「し、らな、い。 です」

 

絞り出した声は細く、掠れていたが了子さんには届いたらしく、了子さんは頷いて振り向いた。

 

「じゃ、またこんどね。 グッバァーイ」

 

言葉を残して了子さんが去っていき、ドアが閉まる。

同時に身体がぐらりと傾き、滲んだ脂汗を拭かず、ベッドに倒れ込んだ。

 

「―――了子さん、アンタ一体何を知ってるんだ?」

 

言葉は病室に響く――――誰にも届かないまま。

 




アホタルの出番当初の予定ではあった気がするのも気のせい。
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