戦姫絶唱シンフォギアAA   作:マアア

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GX第五話を見て高ぶったまま投稿




ライブ当日、いっそ清々しくなるほどに照る日の下で俺と響は待機列の中にいた。

其処に呼んだ当事者の姿は、未来の姿はない。

 

「―――――――」

「…………」

「――――――」

「……お兄ちゃん」

「――なんだ?」

「未来来ないね」

「ああ……」

 

沈黙して待ち、座して待ち、暑くなって耐えきれずについに響が言葉を漏らす。

溜息が、響いた。

 

「……メールはしたのか? 待ち合わせ時間はもう30分も過ぎてるだろ?」

 

何度も確認したから待ち合わせ時間に間違いはない。

仮に響が間違えたとしても俺も確認している以上間違いはあり得ない。

故に何か理由があるのではと尋ね、しかし響の首は横に振られる。

 

「送ったけどかえって来てないよぉー……どうしちゃったのかな?」

 

二人そろい、また同時にため息を吐く。

瞬間、噂をすればというのか、

 

『――――――♪』

「……着信、未来からだ」

 

聞き慣れた音楽が携帯端末から鳴り響き、電話の着信を告げる。

電話を送ってきた主を表すところには待ちわびた人物の名前が記されていた。

迷わずボタンを押して電話を繋ぎ、耳に当てる。

 

「――――もしもし、未来か?」

『もしもし、蓮!? 響はちゃんと一緒にいる?』

「いや、いるけどお前こそどうした?」

『あ、それが響に連絡かえしたんだけど電波が悪いのか繋がらなくて……あ、私なんだけど……とりあえずまずはゴメンなさい、急に用事が入っちゃって行けなくなっちゃった』

「―――マジで?」

 

誘った本人が行けなくなる事態にどうしたのかと困惑し、話を聞くうちに直ぐに納得する。

理由は至極簡単、家族が怪我をして病院送りになったから見舞いに行くのだ。

 

「盛岡の祖母さんがか……わかった、けど俺と響はツヴァイウイングあんまり知らないぞ?」

『今日知ればいいじゃない、知らないなら。直接目で見て、味わえばこそいいとわかると思うよ……それじゃあ響にもゴメンって言っといて、もうお父さんが車出しちゃうから』

「ああわかった、気を付けてな」

 

通話が切れ、改めてもう一度、ため息を吐いて響を呼ぶ。

 

「未来からの電話だよね、なんて言ってたの?」

「盛岡のお祖母さんが怪我をして今から会いに行くから来れないってさ。それと響、端末になんか繋がんなかったらしいんだが」

「え、あれ? 電源がオフになってる。あちゃー、そりゃ繋がんないよね…………それにしてもどうしようお兄ちゃん。私達ツヴァイウイング知らないのに。なんかここにいるの場違いな気がするよぉー」

「気持ちはわかるからまず落ち着け」

 

電源がオフになった端末を片手にガックシと頭を垂れてうにゃーと声を上げる響の頭を数度撫でる。

同身長、というには自身の丈はすこし小さいが垂れている頭を撫でるぐらいは当然当たり前に出来る。

数度撫で、響が頭を上げたところで再び口を開いた。

 

「未来が二人でもいいから楽しめってさ、言葉を重ねるより知らなくても直接目で確かめて、味わえば一瞬でわかる、とりあえずは楽しめればいいだろ」

「……うん、それもそうだよね。こんなにいっぱいの人が楽しみに待ってるぐらいだし凄いんだよね、楽しみですなぁッ!」

 

落ち込んでいたのも数瞬、直ぐに元気になって大きな声でそう叫んだ響に本人は気付かぬうちに周りからなんだと自然に目が集まる。

 

「……一瞬で元気になりすぎだ、単純馬鹿妹」

「バカとは酷いよっ! ちっちゃいお兄ちゃんッ!」

「身長については禁句だろうがぁッ!」

 

恥ずかしさを誤魔化すように出た悪態に返された言葉はカウンターアタックとなって胸に突き刺さった。

軽い口論が始まりながら、始まりまで時間は流れていく。

 

 

 

――――大きな運命の波に、俺と響は知らずからめ捕られていった。

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

始まる数分前、チケットに記されていた立見席の場所を把握し、俺たちが飲み物だのお手洗いだのと準備を終えてそこについて、少し待っている間に響と雑談をして時間を潰していた。

なんのとりとめもない会話を楽しむように、その実何も考えずに話しているだけで始まる前の数分という僅かな時間が経ち、会場が一瞬暗くなって始まりを告げるカウントダウンが始まる。

 

「わわ!? 急になんか出たよお兄ちゃんッ!」

「もうすぐ始まるんだよ、ほら周りを見て見ろ――――」

 

カウントが減るごとにサイリウムの発光が会場を満たしていく。

それを見て響も、俺もサイリウムを折って発行させて再び舞台上のカウントダウンを見る。

着々と減っていき、60から始まったそれはもう10を割ろうとしていた。

 

『10!』

 

『9!』

 

『8!』

 

カウントダウンを会場の全員が声に出して引き継いでいた。

気付けば響もそれに参加していて、若干遅れた気分になりながら俺もそれに参加することにした。

 

『3!』

 

『2!』

 

『1!』

 

0のカウントがされると同時。

会場を音が満たした。

序曲、曲が始まる前の前奏が流れ、同時に下から上がってくる二人の少女。

控えめに言って美人なその二人は並び、立ち、腕を広げる。

 

――――たったそれだけで会場に爆声が上がった。

 

そして歌い始めた瞬間――――――世界は彼女たちのステージになった。

彼女たちが紡ぐ声、その声が響かせる音、その音が織りなす曲の名は――――。

 

 

 

《逆光のフリューゲル》

 

 

 

 

――――――それは何と言えばいいのだろうか?

数ある言葉、賛美の言葉が幾つも浮かび上がろうとし、その全てが言葉として形になる前に霧散する。

まるでそう、それらの言葉程度で言い表せないとでもいうように全てが消え、残ったのは。

 

「――――凄い」

 

とても陳腐でありがちな言葉。

言うだけなら小学生でも言えるレベルの単純な言葉で、しかしそれ以上の言葉で表すのは無粋だった。

 

『究極であればあるほどそれを言い表す言葉もまた窮極になる』

 

かつて誰かにそう言われたことを思い出し、それがこういう事なのかと実感し、改めて言葉として自然にその賛美が漏れる。

 

「これが……ツヴァイウイング」

 

天羽奏と風鳴翼という二人が織りなす世界。

引き込まれ、抗わずにその奥までもっと、ずっと、永遠に味わいたいと思い、もっと聞こうと耳を澄ませて、

 

 

 

『―――――――』

 

 

 

唐突に、音が響いた。

 

「――――っ」

 

微睡から急に現実に引き戻されたようにハッとして、周りを見渡す。

見渡せど、誰もかれもがツヴァイウイングの歌を聴いていて、だれも声を掛けた様子はない。

 

――――だったら幻聴なのだろう。

 

そう判断し、だが、

 

『―――――――――』

 

再び脳に直接情報を送る様に音が響いた。

再び周りを見渡してもツヴァイウイングの歌に熱中する人の歓声しか見えないし聞こえない。

 

『―――――――――』

「どうなっていやがる……?」

 

苛立ち、悪態を吐いて、それでもなお音は頭に響き続ける。

音。

いや、違う。

これは―――。

 

「……声、詠唱?」

『――――■■(Atziluth)――――』

 

掠れて聞き届けられず、声と認識できずに音としか認識できないその感覚を知っていた。

故に音の出る感覚を理解して、それが何かを唱えるものだと気付く。

 

■■■■■■■(Res novae Also sprach Zarathustra)

「―――――ぉッ!?」

 

それは少し前に、一月前に見た夢の中で誰かが名前を呼ぶときに走るノイズのようなソレと似ていたから気付けたソレ。

そして、完全にそうだと認識できた時、急に黒く、重く、暗転するように目の前が暗くなった。

そうなった時、気が付けばツヴァイウイングの歌声も、頭に鳴り響いていたその声も、詠唱も、音は全て聞こえなくなっていた。

 

そして―――――視界が戻った時には唐突に、目の前に赤い髪に青い瞳、褐色の肌を戦装束のようなもので身を包んだ男いた。

 

「―――――――」

 

唐突に現れた男に何故か何かを言おうとして、言わなければならない気がして口を開こうとして気付く。

右を左を、前をみて、呆然としながら口を開いた。

 

「世界が……止まっている?」

 

目を見開いた後の世界はそのままの色を持ちながら凍結していた。

俺以外、響も、誰もかれも、興奮している表情のまま、ツヴァイウイングを見つめたまま止まっていた。

普通なら目の前の男よりも真っ先に気付くべき異常事態。

だけどなぜかそちらに反応するよりも目の前の男についてを優先しなければならないような気がして、

 

『―――起動した』

 

そう思っているうちに男は口を開いた。

重厚な、どこか神々しい雰囲気を纏い、神意のような何かをまき散らしながら男は信託を告げるように語り告げる。

 

『―――お前が■■■■■か?』

 

その音は、一番重要であろうその部分はやはり、何故かノイズに塗れ聞こえなかった。

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

「おーい! お兄ちゃんてばぁッ!」

「―――――――ぁ」

 

気付けば横にいたはずの響が目の前で体を揺らしていた。

少しふらつき、それを押さえて改めて向き合う。

 

「どうしたんだ?」

「どうしたんだ? じゃないよもうッ! お兄ちゃんが曲の途中で急にペンライトを落としてぼうっとし始めて、揺らしても全然動かないから心配してたんだからねッ!」

「ああ……悪い」

 

言われて先ほどまで流れていたメロディが、逆光のフリューゲル終わりそうになっていることに気付く。

そのことに心の底から勿体ないと思い、

 

「あの刹那を、永遠に味わえたらいいのに」

 

気付けばポツンとそんなセリフを零していた。

 

「……お兄ちゃん頭ぶつけでもしたの?」

「……は?」

「いや……まさかお兄ちゃんの中の中学二年生の心が溢れたの? 変な事急に言い出して」

「いや、俺たちそもそも中学二年生だろ」

 

だが確かに言われて疑問に思う。

そんなことを今まで思った記憶はない。

そもそも興味がなかったからだ。

なのに急に、流れるように口から出た。

 

どうしてなのか、なぜなのか?

そう考えても理由が分からないからそのうち悩むのを止めようとして。

 

『――――――――――――――!』

 

警報が鳴り響いた。

 

「っ……!」

「え、この警報って、まさか……ッ!?」

 

響の不安の声が聞こえるのと同時、その警報の原因が、理由が、ライブ会場に溢れだした。

 

それは極彩色の異形。

人型、なめくじ型、ブドウ型と様々な体型をとり、人型からトラック以上の巨体とサイズもバラバラなそれ。

それは災厄の一つに、災害の一つに数えられながらもその中で唯一特異の称号をもつ化物。

 

「ノイズ……だとッ!?」

 

特異指定災害『ノイズ』がライブ会場を満たそうとしていた。

 




感想、訂正などあったら送っていただけると助かります
プロローグはあと一、二話続く、かも。


追記、補足説明的なもの。
上に———■■(Atziluth)―――とありますが実際にはしてません。
そこあたりの話についてはおそらく次に説明できると思うので待っていただけると助かります
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