戦姫絶唱シンフォギアAA   作:マアア

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シンフォギアの公式サイトに書いてある用語集の通りにしたら暗くなる仕様
次回でおそらく今度こそプロローグが終わります。





どうしてこうなるんだ。

どうしてこうなってしまうんだ。

本当に―――――。

 

「どうして、こうなっちまうんだよ」

 

張られた頬がズキズキと痛みを訴える。

コンクリートに預けた身体が冷たさを信号として送る。

頬から零れ落ちる滴が心の痛みを気持ちに届ける。

 

「どうして、大切な物ばかり―――――俺のせいで」

 

後悔の言葉、悔恨の言葉、悲嘆の言葉が溢れだす。

それを全て集約した言葉が漏れだした。

 

「なんで、大切な物(にちじょう)ばかり、すぐに壊れちまうんだよッ……!」

 

自分で壊してしまった望んでいたものの重さを、自分の考えが至らなかった結果の後悔にただ飲まれていた。

 

全ては後の祭り、故に思い出しても何の意味もない事だけどそれでもリフレインした。

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

大体十日ぶりに袖を通した制服はアイロンがきちんとかけられていた。

上下ともに着て、病人服を丁寧に畳み、洗濯が必要な下着などを入れたトランクを片手に持ってもう一度だけ全体を見回して忘れ物をしてないか確認してからすっかり慣れた病室を出て受付へと歩く。

直ぐにたどり着いた受付で手続きをして、俺こと立花蓮は怪我の治療を終え退院した。

 

その足で再び病室へと足を進め、俺の居た病室のさらに奥に配置されている病室へと足を運び、ノックをしてからドアを開いた。

 

「あ、お兄ちゃん……」

 

ベッドの上で起き上がっていた妹、響は俺を見るなりそう言いながら笑顔を見せる。

その姿はまだ点滴や包帯などが見えていて痛々しい。

だからその笑顔にはこちらに心配を掛けないようにという意図が丸見えで、

 

「――――おはよう響、無理はしてないな?」

 

だからこそ要らない心配を掛けないようにこちらも笑いかける。 そう言い返しながら座っている祖母ちゃんと母さんの横に付き、トランクを母さんに渡す。

 

「ん、任した」

「はい、任されたわ―――それと鞄ね」

 

代わりに渡されたのは学校用の鞄だ。

響の見舞いのついでに持ってきてくるとメールで送られたとおりちゃんと持ってきてくれたそれを受け取り、学校に行く準備は終わる。

 

「うぇ! お兄ちゃんもう学校に行けるのッ!? いいなぁー。 私も早く治して頑張らなきゃ」

「……っお前は大怪我してんだからちゃんと治してから来い。 無理されても心配するだけで誰も喜ばねえよ。 無茶すんな」

 

羨ましいと文句を垂れる馬鹿な妹に心配十割でそう言う。

こうでも言わなきゃこの馬鹿は無理にリハビリとかをして元気に見せようとするのが目に見えている。

 

「むー お兄ちゃんちょっとズルい」

「は、そう思うんならちゃんと寝てゆっくりと治せよ?」

 

頭を一度、二度と撫でて二回ほど軽く叩く。

しかし響は少しだけ不満な様子のまま。

 

「お兄ちゃんの方こそ無理してない? ちゃんと治ってる? あんなに血を吐いてたのに……」

「ああ、運よく骨折とかはしてなかったみたいでな、そう大事に至ってない。 重症は寧ろお前だ」

「わかってますよぉー」

 

言って響はブスーと頬を膨らませながら横になる。

なんとなく、もう一度だけ、髪を撫でることにした。

 

「――――それじゃ、行ってくる」

「ん、行ってらっしゃい、お兄ちゃんッ!」

 

お祖母ちゃんと母さんにも軽く頭を下げて、病室の出口へと足を進める。

 

「―――蓮」

 

出ようとドアに手を掛けた瞬間、鋭い声が響いた。

聞き慣れた声、だけど聴きなれてない鋭い声、お祖母ちゃんの声だ。

 

「お祖母ちゃん? どうしたんだ?」

「――――いえ、なんでもないわ」

 

優れない表情、下を向いたお祖母ちゃんと母さんに違和感と異常を覚える。

だが、

 

「――――そっか、なら行ってくる」

 

尋ねても言わないのはわかっている。

響の頑固さはお祖母ちゃん譲りだし、お祖母ちゃんが言わない以上母さんが何かを言うとは思えない。 だから何も言わずに病室を出ることにした。

カタンと音を立ててドアを閉めて、深くため息を吐く。

ズボンのポケットに入れた端末を取ろうとして、カサリとした紙の感触に触れ、そっちを取り出す。

出てきたのは端末と一緒に突っ込んだあの男、弦十郎の連絡先がかかれた紙。

 

「――――――っ」

 

あの日から一週間たった今日。

つまり連絡を返す日、だが俺は未だ戦うかただ保護されるかを決めかねていた。

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

「これは君の肉体をレントゲンで取ったものだ」

 

弦十郎は初めて会った次の日に再び来て、そう言って一枚のレントゲン写真を渡してきた。受け取れと言われ手で取り、目で見て確認する。

 

レントゲン写真に写る俺の体は頭蓋骨、腰の骨、両腕に罅が入っており両太腿及び両足及び両足首に肋骨4本が全部折れていた。

 

「……っここまで酷かったのか」

「ああ、それがお前が運ばれた当初の奴だ」

「……当初?」

 

含みがある言い方だ。

まるで続きがあるとでも言いたげな。

 

「そもそも考えて見ろ、両腕に罅が入っているのに何で腕を使えるのかと」

「あ……」

 

言われてみて当然のことに気付く。

そう。

両腕に罅が入っているならギプスで固定されて動けないようにされているはずだ。

なのに俺の腕は普通に動かせる。

そのことを理解したところで、再びレントゲン写真を渡される。

確認して、絶句した。

 

「―――――――」

「これは一昨日のレントゲンだ。 見ての通り、体の中の傷は全て癒えている。 今身体が痛んでいる理由は精神が肉体の回復に追いついていないだけだ」

 

弦十郎の言葉の通り、二枚目のレントゲンには体全身至って平凡な姿が映っていた。

怪我も、何の問題もない普通の男の姿が。

 

――――気味が悪い。

 

それ(自分の体)を見てそう思う。

まるで人外にでもなったような気がして。

絶句している中、弦十郎はさらにもう一枚、レントゲン写真を取り出した。

 

「……それは?」

「これはうちの聖遺物研究及び開発の第一人者が作った聖遺物の反応を示す場所を映すように作った……別種のレントゲンみたいなもんだと思ってくれればいい」

「――――」

 

これ以上あるのかと悪くなっていく気分の中辟易しつつ写真を手に取り、見た。

 

「それは五段階評価で分かれていて。何も反応しない段階から強く反応を示す段階に分けて黒、紫、赤、青、白になっている」

「――――赤以上しか見えないんだが」

 

体全身最低真っ赤、右腕に近づくにつれて青くなり、肘から先は白く輝いている。

つまり全身が聖遺物のような反応を出していた。

 

「詳しくはわからんが蓮君、君とボワ・ド・ジュスティスは物理的だけに留まらず精神的にも融合を果たして溶け込んでいるのだと推測されている。 故に見た目に変化はないが体の構造が根本から変わっており、それで体の治療速度が異常なまでに上がったとその第一人者は考えていた」

「……俺が、俺自身が、聖遺物『ボワ・ド・ジュスティス』って言いたいのか?」

「ああ、予想不可能、理解不可能なことにな。 俺はともかくその第一人者までも分からんと匙を投げるほどに不可解な出来事だ。 まったく物理法則とかそういうのもあったもんじゃない」

「……治るのか」

 

―――人間じゃなくなった。

普通じゃなくなった。

それは余りにも、受け止めるには大きすぎる事実だった。

それでも内心の動揺を押し殺して言葉を出した。

しかし感情と身体はそれを汲んでくれず、口から出た言葉は震えていた。

故に弦十郎にもそれに気付かれ、悔しそうな顔ですまないと再び謝られた。

 

「現状方法は見つかっていない。 だが、見つけ出すと約束する」

「――――信じて、いいのか?」

「……任せろ」

 

その言葉はとても弦十郎から言われたとは思えないほどに悔しさに満ちていた。

それでも――――今は信じるしかなかった。

結局その時わかったことは聖遺物『ボワ・ド・ジュスティス』の摘出は現状不可能だということと俺が人から外れたという事だけだった。

そして―――――。

 

 

 

 

 

『次は―――――』

「――――っぁ……もうそろそろか」

 

―――気が付けば電車に乗って寝ていたらしい。

目的の駅の直前、アナウンスが流れるころにタイミングよく目が覚め、起き上がりながらそう言った。

 

「……どうしろってんだ」

 

右腕を見て、夢で思い返したことに吐き捨てるようにそう零しながら停車した電車を降りた。

 

―――何故か、嫌な予感がした。

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

「―――――っ」

 

学校までの道を一歩歩くたびに奇妙な感覚を覚える。

むず痒くなると言うべきかざらつくと言うべきか、悪寒の様な感じ、嫌な予感のような感じが続いて止まらない。

 

「―――はは、サボり癖でもついたか? やっと日常に戻れるのに」

 

思わず言葉を零してそう笑い、自分で言って笑えないと吐き捨てる。

一度非日常を味わい、それでもう十分だと思ったが故に、平凡な日常に戻れることを楽しみに、学校に戻ることを楽しみにしていたはずなのになぜか嫌な感覚がする。

しかし足を止める理由はなく、ゆっくりとしながらも着々と進み、直ぐに学校に着いた。

 

「………」

 

袖をまくり、時刻を確認する。

二時間目が終わる直前、丁度10分休憩に入る前のタイミングだ。

 

「―――行くか」

 

そう自分に言い聞かせるようにして校門を潜り、下駄箱で上履きに履き替え、クラスへと歩を進めていく。

 

二階の階段直ぐの教室。

 

ゆっくりとドアに手を掛けて、開いた。

注目が集まり、ヒソヒソと小さくない声が教室に響き渡り、

 

――――言いようのない、汚濁の様な感情の奔流を感じる。

 

いうのであれば粘っこいと言うべきであろうか?

悪意を塗り固めた泥ような視線が俺に集まっていた。

 

だけど理由が分からない。

 

なんでそのような視線を、意思を向けられるのかが理解できず困惑しながら自身の席に向かい、荷物を置いて座った。

しかし、それでもざわつき、声が響き、やがて

 

『――――――――おい、アイツって』

 

嫌な静けさが一瞬やって来た中に少しだけ聞こえてきた人の声。

それは嫌な音を響かせ、聞こえてきた。

 

『ああ、ライブ会場のノイズ災害の生き残り、つまり人殺しだろ』

 

だけどその言葉が聞こえても、最初はどういうことか理解できなかった。

 

ライブ会場でのノイズ災害で生き残った奴は人殺し?

何の冗談だ?

 

そう純粋に疑問が生まれる。

だが、突っ伏した状況から顔を少し動かせば。

 

『――――ッ! やば、アイツ今こっち見たぞッ!』

 

顔を一斉に背けられ、静寂が生まれ、やがてまた小声で話が始まる。

 

―――話すのは無理そうだ。

 

元々人付き合いは良い方ではなかったがよくわかんない事が拍車を掛けて会話が不可能な状態になっている。

だが、

 

―――今はまだ休憩時間だ。

 

うちの学校の規則上休み時間に端末を弄っていても問題がない。

故にポケットから端末を取り出し、検索ワードにライブ会場の惨劇についてを入力した。

 

――――――入力してしまった。

 

便利なネット社会は直ぐに情報を提供してくれる。

今回調べたことはライブ会場での被害者について、そしてその原因、ノイズ以外の原因についてを。

 

 

知った瞬間、カバンを掴み、家へと全力疾走を始めていた。

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

ノイズ災害において恐ろしいのは、怖いのは死者が分からないことだ。

人々は全て灰になるノイズの厄災。

灰になった人が誰なのかは識別不可能であるしそもそもノイズが出現した時間帯に歩いていた人が誰だったのかなどを全て知るのは物理的に不可能だからだ。

 

―――だが、今回のライブで犠牲になった人物は12874人、そうはっきりとわかっていた。

 

入場するときに端末の中に入れたチケットデータの認証が必要となり、チケットの認証時に端末のデータも同時に記録される。

故に一時的とはいえその会場に来ていた全員の情報があった故に、反応がなくなった物、反応が返ってこないものを探せば死者行方不明者はおのずと知れたのだ。

端末の反応が完全にロストしたのは被害者の約三分の一。

つまりこれがノイズによって殺された人物だと考えられる。

ならば残りの三分の二、端末の反応が、返信がなかったはどうしたのか?

 

その答えが、ライブ会場で生き残った人たちに浴びせられる人殺しという言葉の真実だった。

 

――――命の危機にあった時の人の残酷性という答え。

 

誰よりも早く、自分は逃げようとした結果ドミノ倒しのように人は狭い出口に向かい、遅れたり、周りの人間に踏まれた人間などがやがて死に至った。

そうして当時ライブ会場にいた十万弱の人々から8千人という人員が命を消された。

それは紛れもなくノイズによる災害ではなく、人災だった。

 

死者の大半が生きていた人間が原因という事実。

それが、ライブ会場にいた人間への批難として言葉になったのが人殺し。

 

ああ、全く持って―――――。

 

「ふ、ざけん、なッ!」

 

息を切らせながら走りつつそう吐き捨てる。

ライブ会場にいた奴らは人殺し?

お前らのせいで死んだ・

何故お前達だけ助かった?

そんな発言馬鹿げているとしか言いようがない。

 

命の危機にあって冷静に行動できる人間なんてそういやしない。

助かるために誰もが一生懸命だっただけの話だ。

その過程で人死にが出たのは確かに悲しむべきことだ。

それでも―――。

 

『二人が生きていてくれた、それだけでいいのよ』

「助かったことを、生き残れたのを喜ぶのをダメっていうのは、ありえねぇだろッ!」

 

無責任に死ねという発言を調べたサイトで見た、生存者の家に落書きしたぜと投稿された物を見た、そんなのふざけている。 あってはならないことだ。

だから、そんなことが無い様にと家へと全力で走り――――。

 

大量の罵詈雑言が掛かれた紙を張り付けられた自宅を見てしまった。

 

「――――――――――ッ!」

 

怒りが沸騰して言語にならない。

歯をキツク食い縛り、怒鳴りそうになるのを堪えながら紙を乱雑に引きはがしていく。

五分ほどで手の届く範囲の紙を全て剥がし散らし、少しだけ落ち着いてから、家の鍵を開けた。

 

家の中は明かりをつけていないからか暗かった。

 

近くにボタンが無いのは知っているから明かりをつけるのは直ぐに諦めて靴を脱ごうとして、普段あまり見ないその靴を認識してしまう。

 

「――――まさか」

 

嫌な予想が鎌首を擡げる。

その靴は大型であり、自身の足のサイズより一回り程大きい。

立花家は五人暮らし、つまりお祖母ちゃんと母さんと俺と響―――そして。

そこまで考え、明かりがついているらしき唯一の部屋、居間へと駆け込み、ドアを開けて、絶句した。

考えた通りの現実に。

 

「――――なんで、どうして、なにしてんだよッ……親父ッ!?」

 

その部屋は記憶では小奇麗な部屋だった。

その部屋は酒瓶とツマミが散乱している薄汚い部屋だった。

その男は記憶では髭をキチンとそっている清潔感溢れる男だった。

その男は無精ひげを生やし、無気力な瞳の男だった。

 

「――――ぁあ?」

 

俺に気付いたらしいその男は酷く不機嫌そうなツラをして、此方を睨みつけるように顔を向けてきた。

それは2週間ほど前とは全然違う、変わり果てた親父の姿だった。

 




重たい(確信)
早く払しょくして戦闘描写とか日常描写に行きたいところ。


没ネタ——というよりも感想よりもしも父が水銀だったら?



———嫌な予想が鎌首を擡げる。
立花家は五人暮らし、そしてお祖母ちゃんと母さんは買い物に行っているはずであり、響は未だ入院中、なのに部屋に明かりがついている。
その部屋、居間へと駆け込み、ドアを開け、予想のななめを遥かに超越して90度に突き抜けた光景に絶句した。

「――――なんで、どうして、なにしてんだよッ……親父ッ!?」

その部屋は記憶では小奇麗な部屋だった。
断じてこんなアイドルポスター的にとられた金髪の女性が佇んでいる絵が所狭しと飾られた部屋ではない。
その男は記憶では————まあ変態だった。
だが砂をケースに入れたりビニール袋に空気を入れてコレクションしているようなレベルではなかった。

「―――知れたことを。 本気でそう言っているなら嗤うしかないな、愚息よ」

俺の発言を受けてその男はいつも通り道化師のような笑いを張り付けてこちらを向いた。


————2週間ほど前はまだまともだったはずだと思う。
まだこんなに変態じゃなかったと。

「これは我が女神のポスター、これは我が女神のあ・し・あ・と。 これは我が女神の口より零れた吐息。 いずれも聖遺物にたりうる私の女神コレクションだッ!」
「そんなのきいてるんじゃねえッ! なんだこれを居間に展開してるんだってことだよッ! つーか親父お前仕事どうしたなんで家にいるんだよッ!?」
「ああそんなことか、何仕事はクビになっただけのこと。 上司に『これ以上は付き合いきれんぞ』と言われたのだ」
「なにやってるんだよぉッ!?」

もうわけがわからない、どうしてだといいたい。
こんなの俺の求めた日常じゃねえと慟哭した。


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これはひどい(確信)
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